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特開2023-177081パラメータ算出装置、パラメータ算出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177081
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】パラメータ算出装置、パラメータ算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/14 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H02P23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089785
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 紀元
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(72)【発明者】
【氏名】岩井 良樹
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB07
5H505DD03
5H505DD05
5H505JJ03
5H505JJ05
5H505JJ17
5H505LL22
5H505LL29
5H505LL34
5H505LL40
5H505LL45
5H505MM14
(57)【要約】
【課題】磁界解析を用いて誘導電動機のパラメータを算出する際、ロータの温度の変化幅が比較的大きい場合において、磁界解析の回数増加を抑制する。
【解決手段】ステータ電流と、ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、すべり角周波数ωsを二次抵抗Rrで除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比ωs/Rr、または、すべり角周波数ωsとの対応関係を示すパラメータマップを作成するマップ作成部2と、パラメータマップを参照して、ステータ電流と、すべり角周波数ωsを変化後の二次抵抗Rr´で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比ωs/Rr´、または、すべり角周波数ωsを変化前の二次抵抗Rrに対する変化後の二次抵抗Rr´の変化率Aで除算した値であるすべり角周波数変化率比ωs/Aとに対応するパラメータを算出するパラメータ算出部3とを備えてパラメータ算出装置1を構成する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ電流と、前記ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、前記すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成するマップ作成部と、
前記パラメータマップを参照して、前記ステータ電流と、前記すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを算出するパラメータ算出部と、
を備えるパラメータ算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラメータ算出装置であって、
前記パラメータ算出部は、Rr´を前記変化後の二次抵抗とし、Aを変化率とし、Rrを前記変化前の二次抵抗とする場合、下記式1を計算することにより前記変化後の二次抵抗を求め、その求めた変化後の二次抵抗に基づいて、前記すべり角周波数二次抵抗比を求める
Rr´=A×Rr ・・・式1
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパラメータ算出装置であって、
前記パラメータ算出部は、Aを変化率とし、α2をロータの温度係数とし、T2´を変化後のロータの温度とし、T2を変化前のロータの温度とし、Tbをロータの基準温度とする場合、下記式2を計算することにより前記変化率を求め、その求めた変化率に基づいて、前記すべり角周波数変化率比を求める
A=(1+α2×(T2´-Tb))/(1+α2×(T2-Tb)) ・・・式2
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項4】
プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、誘導電動機のパラメータを算出するパラメータ算出方法であって、
前記プロセッサは、
ステータ電流と、前記ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、前記すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成し、
前記パラメータマップを参照して、前記ステータ電流と、前記すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを求める
パラメータ算出方法。
【請求項5】
プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、誘導電動機のパラメータを算出するためのプログラムであって、
前記プロセッサに、
ステータ電流と、前記ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、前記すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成するステップと、
前記パラメータマップを参照して、前記ステータ電流と、前記すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを求めるステップと
を実行させるためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電動機のパラメータを算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導電動機のパラメータを算出するパラメータ算出装置として、二次元磁界解析や三次元磁界解析などの磁界解析(磁場解析)にステータ電流及びすべり角周波数を入力することで、インダクタンス、二次抵抗(ロータの導体抵抗)、ステータ電圧、ロータ電流、及びロータ磁束などのパラメータを算出するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、ロータの温度が変化すると、パラメータが変化してしまうため、ロータの温度が変化する度に磁界解析を再度行う必要がある。
【0004】
そのため、上記パラメータ算出装置では、ロータの温度の変化幅が比較的大きい場合、磁界解析の回数が増加するという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-26595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、磁界解析を用いて誘導電動機のパラメータを算出する際、ロータの温度の変化幅が比較的大きい場合であっても、磁界解析の回数増加を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態であるパラメータ算出装置は、ステータ電流と、前記ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、前記すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成するマップ作成部と、前記パラメータマップを参照して、前記ステータ電流と、前記すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを算出するパラメータ算出部とを備える。
【0008】
これにより、ロータ温度の変化により二次抵抗が変化しても、パラメータマップを再度作成する必要がないため、磁界解析の回数増加を抑制することができる。
【0009】
また、前記パラメータ算出部は、Rr´を前記変化後の二次抵抗とし、Aを変化率とし、Rrを前記変化前の二次抵抗とする場合、下記式1を計算することにより前記変化後の二次抵抗を求め、その求めた変化後の二次抵抗に基づいて、前記すべり角周波数二次抵抗比を求めるように構成してもよい。
【0010】
Rr´=A×Rr ・・・式1
【0011】
また、前記パラメータ算出部は、Aを変化率とし、α2をロータの温度係数とし、T2´を変化後のロータの温度とし、T2を変化前のロータの温度とし、Tbをロータの基準温度とする場合、下記式2を計算することにより前記変化率を求め、その求めた変化率に基づいて、前記すべり角周波数変化率比を求めるように構成してもよい。
【0012】
A=(1+α2×(T2´-Tb))/(1+α2×(T2-Tb)) ・・・式2
【0013】
また、本発明に係る一つの形態であるパラメータ算出方法は、プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、誘導電動機のパラメータを算出するパラメータ算出方法であって、前記プロセッサは、ステータ電流と、前記ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、前記すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成し、前記パラメータマップを参照して、前記ステータ電流と、前記すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを求める。
【0014】
また、本発明に係る一つの形態であるプログラムは、プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、誘導電動機のパラメータを算出するためのプログラムであって、前記プロセッサに、ステータ電流と、前記ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、前記すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成するステップと、前記パラメータマップを参照して、前記ステータ電流と、前記すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、前記すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを求めるステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁界解析を用いて誘導電動機のパラメータを算出する際、ロータの温度の変化幅が比較的大きい場合において、磁界解析の回数増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態におけるパラメータ算出装置を示す図である。
図2】実施形態におけるパラメータ算出方法を示すフローチャートである。
図3】実施例1におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。
図4】実施例1におけるパラメータマップの一例を示す図である。
図5】実施例1における整理後のパラメータマップの一例を示す図である。
図6】実施例1におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。
図7】実施例2におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。
図8】パラメータ算出装置のハードウェア構成を示す図である。
図9】変形例1におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。
図10】変形例1におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて実施形態の詳細を説明する。
【0018】
図1は、実施形態におけるパラメータ算出装置を示す図である。
【0019】
図1に示すパラメータ算出装置1は、誘導電動機のパラメータとしてステータの自己インダクタンスLs、ロータの自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM、及び二次抵抗Rr(ロータの抵抗)などを算出するものであって、マップ作成部2と、パラメータ算出部3とを備える。
【0020】
図2は、実施形態におけるパラメータ算出方法を示すフローチャートである。
【0021】
まず、ステップS1において、マップ作成部2は、ステータ電流と、ステータ電流及びすべり角周波数に基づいて求められる誘導電動機のパラメータと、すべり角周波数を二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、すべり角周波数との対応関係を示すパラメータマップを作成する。
【0022】
次に、ステップS2において、パラメータ算出部3は、パラメータマップを参照して、ステータ電流と、すべり角周波数を変化後の二次抵抗で除算した値であるすべり角周波数二次抵抗比、または、すべり角周波数を変化前の二次抵抗に対する変化後の二次抵抗の変化率で除算した値であるすべり角周波数変化率比とに対応するパラメータを算出する。
【0023】
ところで、ステータ電流やすべり角周波数が変化すると、誘導電動機の電流・電圧特性が変化し、誘導電動機のパラメータが変化してしまう。そのため、ステータ電流やすべり角周波数の変化幅が比較的大きい場合、ステータ電流やすべり角周波数を入力とする磁界解析の回数が増大する懸念がある。
【0024】
そこで、実施形態のパラメータ算出装置1では、ステータ電流及びすべり角周波数と、パラメータとが対応付けられているパラメータマップを予め用意しておき、そのパラメータマップを参照して、ステータ電流及びすべり角周波数に対応するパラメータを算出している。そのため、ステータ電流やすべり角周波数が変化する度に磁界解析を行うことないため、磁界解析の回数の増加を抑制することができる。
【0025】
また、ロータの導体に用いられるアルミニウムや銅は温度変化により抵抗値が変化する。すなわち、ロータの導体に電流が流れることによってロータの温度が変化すると、二次抵抗が変化する。例えば、変化後の二次抵抗と変化前の二次抵抗との関係を下記式1に示す。なお、Rr´を変化後の二次抵抗とし、Aを変化率とし、Rrを変化前の二次抵抗とする。また、変化率Aは、下記式2により求められる。α2をロータの温度係数とし、T2´を変化後のロータの温度とし、T2を変化前のロータの温度とし、Tbをロータの基準温度とする。
【0026】
Rr´=A×Rr ・・・式1
【0027】
A=(1+α2×(T2´-Tb))/(1+α2×(T2-Tb)) ・・・式2
【0028】
また、ロータの温度変化によっても、誘導電動機のパラメータが変化してしまう。
【0029】
そこで、実施形態のパラメータ算出装置1では、ロータの温度変化を考慮してパラメータマップを参照している。
【0030】
ここで、誘導電動機の電圧方程式を下記式3に示す。なお、Vdsをステータd軸電圧とし、Vqsをステータq軸電圧とし、idsをステータd軸電流とし、iqsをステータq軸電流とし、idrをロータd軸電流とし、iqrをロータq軸電流とし、Rsを一次抵抗(ステータの巻線抵抗)とし、Rrを二次抵抗(ロータの導体抵抗)とし、ωを電源角周波数とし、ωreをロータの角周波数とし、Lsをステータの自己インダクタンスとし、Lrをロータの自己インダクタンスとし、Mをステータとロータとの間の相互インダクタンスとする。
【0031】
【数1】
【0032】
上記式3において、ロータ電流とステータ電流との関係を抽出したものを下記式4に示す。なお、ωsをすべり角周波数とする。また、「すべり角周波数ωs=2×π×すべり周波数fs」の関係式により、すべり角周波数ωsをすべり周波数fsに置き換えてもよい。また、「すべりs=(電源角周波数ω-ロータの角周波数ωre)/電源角周波数ω」の関係式により、すべり角周波数ωsをすべりsに置き換えてもよい。
【0033】
【数2】
【0034】
また、上記式1に示すように、変化前の二次抵抗Rrを変化率A倍して変化後の二次抵抗Rr´とする場合、上記式4は下記式5となりRr´をARrに置き替えて整理すると下記式6となる。
【0035】
【数3】
【0036】
【数4】
【0037】
上記式4と上記式6を比較すると、二次抵抗Rrが変化率A倍に変化したときのロータ電流(idr´,iqr´)は、二次抵抗Rrを変化率A倍させず、すべり角周波数ωsを1/A(=Rr/Rr´)倍することで求められることがわかる。すなわち、二次抵抗Rrが変化率A倍に変化したときのパラメータは、二次抵抗Rrを変化率A倍させず、すべり角周波数ωsを1/A(=Rr/Rr´)倍したときのパラメータと等しくなる。
【0038】
そのため、二次抵抗Rrが二次抵抗Rr´に変化したときの誘導電動機のパラメータを、ロータの基準温度におけるパラメータと、1/A(=Rr/Rr´)倍したすべり角周波数ωsとに基づいて算出することができる。
【0039】
そこで、実施形態のパラメータ算出装置1では、ステータ電流と、すべり角周波数ωsを二次抵抗Rr´で除算した値を示すすべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr´)またはすべり角周波数ωsを変化率Aで除算した値を示すすべり角周波数変化率比(ωs/A)を用いて、パラメータマップを参照している。これにより、ロータ温度の変化により二次抵抗が変化しても、パラメータマップを再度作成する必要がないため、磁界解析の回数増加を抑制することができる。
【0040】
<実施例1>
図3は、実施例1におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。
【0041】
まず、マップ作成部2は、ステータ電流(ids,iqs)及びすべり角周波数(ωs)を入力とする磁界解析(二次元磁界解析または三次元磁界解析)を行い、ロータ電流(idr,iqr)、ステータ電圧(Vds,Vqs)、及びロータ磁束(Φdr,Φqr)を得る。なお、実施例1や後述する実施例2で扱われるステータ電流、ロータ電流、ステータ電圧、及びロータ電圧はそれぞれ実効値とする。また、電流や電圧の座標系は、dq軸座標系に限らない。
【0042】
次に、マップ作成部2は、上記式3、下記式7、及び下記式8などに示す電圧方程式にステータ電圧(Vds,Vqs)、ステータ電流(ids,iqs)、ロータ電流(idr,iqr)、及びロータ磁束(Φdr,Φqr)などを入力して、自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM、及び二次抵抗Rrを求める。なお、idsはステータd軸電流とし、iqsはステータq軸電流とし、idrはロータd軸電流とし、iqrはロータq軸電流とし、ωは電源角周波数とし、Rsはステータの巻線抵抗とする。
【0043】
【数5】
【0044】
【数6】
【0045】
次に、マップ作成部2は、複数のステータ電流及び複数のすべり角周波数に対して、図3に示す処理を繰り返し行うことで、自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM、及び二次抵抗Rrをそれぞれ複数得る。
【0046】
次に、マップ作成部2は、図4(a)に示すように、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数ωsと、自己インダクタンスLsとの対応関係を示すパラメータマップMLsを作成する。
【0047】
また、マップ作成部2は、図4(b)に示すように、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数ωsと、自己インダクタンスLrとの対応関係を示すパラメータマップMLrを作成する。
【0048】
また、マップ作成部2は、図4(c)に示すように、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数ωsと、相互インダクタンスMとの対応関係を示すパラメータマップMMを作成する。
【0049】
また、マップ作成部2は、図4(d)に示すように、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数ωsと、二次抵抗Rrとの対応関係を示すパラメータマップMRrを作成する。
【0050】
次に、マップ作成部2は、ステータ電流毎に各すべり角周波数(ωs1、ωs2、ωs3、・・・)を図4(d)のパラメータマップMRrで除算した値を求め、図4(a)、図4(b)、図4(c)の各パラメータマップを図5に示すパラメータマップ(Mp1、Mp2、Mp3、・・・)へ整理をする。
【0051】
次に、パラメータ算出部3は、図6に示すように、図4(d)に示すパラメータマップMRrを参照して、ステータ電流(ids,iqs)及びすべり角周波数ωsに対応する変化前の二次抵抗Rrを求め、その求めた二次抵抗Rrとロータの温度(T2)を上記式1及び式2に代入して、変化後の二次抵抗Rr´を求める。
【0052】
また、パラメータ算出部3は、すべり角周波数ωsを二次抵抗Rr´で除算することで、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr´)を求める。
【0053】
また、パラメータ算出部3は、図5に示す各パラメータマップのうち、ステータ電流(ids,iqs)に対応するパラメータマップを参照して、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr´)に対応する自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、及び相互インダクタンスM´を求める。
【0054】
そして、ロータの温度がさらに変化した場合、その変化後のロータの温度T2を用いて、変化後の二次抵抗Rr´を求めるとともに、その二次抵抗Rr´を用いてすべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr´)を求め、そのすべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr´)及び図5に示すパラメータマップを用いて自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´を求める。
【0055】
このように、実施例1に示すパラメータ算出装置1は、ロータ温度が変化しても、磁界解析を行うことなく、ロータ温度の変化が考慮された二次抵抗Rr´を求めることができるとともに、パラメータマップを用いてロータ温度の変化が考慮された自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´を求めることができる。
【0056】
<実施例2>
図7は、実施例2におけるパラメータ算出方法を説明するための図である。なお、実施例2において、図4(a)に示すパラメータマップMLs、図4(b)に示すパラメータマップMLr、図4(c)に示すパラメータマップMM、及び図4(d)に示すパラメータマップMRrを作成するまでのマップ作成部2の動作は、実施例1におけるマップ作成部2の動作と同じであるため、その動作の説明を省略する。
【0057】
実施例2におけるパラメータ算出部3は、図7に示すように、図4(d)に示すパラメータマップMRrを参照して、ステータ電流(ids,iqs)及びすべり角周波数ωsに対応する変化前の二次抵抗Rrを求め、その求めた二次抵抗Rrと変化率Aを上記式1に代入することにより変化後の二次抵抗Rr´を求める。
【0058】
また、パラメータ算出部3は、すべり角周波数ωsを変化率Aで除算することで、すべり角周波数変化率比(ωs/A)を求める。
【0059】
また、パラメータ算出部3は、図4(a)に示すパラメータマップMLsを参照して、ステータ電流(ids,iqs)及びすべり角周波数変化率比(ωs/A)に相当するすべり角周波数に対応する自己インダクタンスLs´を求める。
【0060】
また、パラメータ算出部3は、図4(b)に示すパラメータマップMLrを参照して、ステータ電流(ids,iqs)及びすべり角周波数変化率比(ωs/A)に相当するすべり角周波数に対応する自己インダクタンスLr´を求める。
【0061】
また、パラメータ算出部3は、図4(c)に示すパラメータマップMMを参照して、ステータ電流(ids,iqs)及びすべり角周波数変化率比(ωs/A)に相当するすべり角周波数に対応する相互インダクタンスM´を求める。
【0062】
そして、ロータの温度がさらに変化した場合、その変化後のロータの温度T2を用いて、変化後の二次抵抗Rr´を求めるとともに、その二次抵抗Rr´を用いてすべり角周波数変化率比(ωs/A)を求め、そのすべり角周波数変化率比(ωs/A)及び図4に示すパラメータマップMLs、MLr、MMを用いて自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´を求める。
【0063】
このように、実施例2に示すパラメータ算出装置1は、実施例1に示すパラメータ算出装置1と同様に、ロータ温度が変化しても、磁界解析を行うことなく、ロータ温度の変化が考慮された二次抵抗Rr´を求めることができるとともに、パラメータマップを用いてロータ温度の変化が考慮された自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´を求めることができる。
【0064】
<パラメータ算出装置1のハードウェア構成>
図8は、パラメータ算出装置1として用いられる情報処理装置(コンピュータ)のハードウェア構成例を示す図である。
【0065】
図8に示す情報処理装置100は、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103、読取装置104、通信インタフェース106、及び入出力インタフェース107を備える。なお、これらの構成要素は、例えば、バス108を介して互いに接続されている。
【0066】
プロセッサ101は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサおよびマルチコアであってもよい。プロセッサ101は、メモリ102を利用して例えば上述のパラメータ算出方法の手順を記述したプログラムを実行することにより、パラメータ算出装置1の機能を提供する。
【0067】
メモリ102は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでよい。記憶装置103は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。なお、RAMは、Random Access Memoryの略称である。また、ROMは、Read Only Memoryの略称である。
【0068】
読取装置104は、プロセッサ101の指示に従って着脱可能記憶媒体105にアクセスする。着脱可能記憶媒体105は、例えば、半導体デバイス(USBメモリ等)、磁気的作用により情報が入出力される媒体(磁気ディスク等)、光学的作用により情報が入出力される媒体(CD-ROM、DVD等)などにより実現される。なお、USBは、Universal Serial Busの略称である。CDは、Compact Discの略称である。DVDは、Digital Versatile Diskの略称である。
【0069】
通信インタフェース106は、例えば、プロセッサ101の指示に従って通信ネットワークを介してデータを送受信する。
【0070】
入出力インタフェース107は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、オペレータ又はユーザからの指示又は情報の入力に用いられる。
【0071】
プロセッサ101により実行される各プログラムは、例えば、下記の形態で提供される。
【0072】
(1)記憶装置103に予めインストールされている。
【0073】
(2)着脱可能記憶媒体105により提供される。
【0074】
(3)プログラムサーバなどのサーバから通信ネットワークを介して通信インタフェース106へ提供される。
【0075】
なお、情報処理装置100のハードウェア構成は、例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の機能部の一部または全部の機能がFPGAおよびSoCなどによるハードウェアとして実装されてもよい。なお、FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。SoCは、System-on-a-chipの略称である。
【0076】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0077】
<変形例1>
上記実施例1または実施例2においてマップ作成部2では、パラメータマップを作成する際、上記式3、式7、式8に示す電圧方程式を用いて自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM、及び二次抵抗Rrを求める構成であるが、図9に示すように、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr)と、ステータ電圧との対応関係を示すマップM1、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr)と、ロータ電流、との対応関係を示すマップM2、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr)と、ロータ磁束との対応関係を示すマップM3、ステータ電流(ids,iqs)と、すべり角周波数ωsと、二次抵抗Rrとの対応関係を示すマップM4を作成してもよい。
【0078】
また、マップ作成部2は、磁界解析のステップ毎のロータの位置情報も用いて、マップM1~M4を作成するように構成してもよい。
【0079】
この場合、パラメータ算出部3は、図10に示すように、マップM4を参照して、ステータ電流とすべり角周波数ωs、ロータの位置に対応する変化前の二次抵抗Rrを求める。
【0080】
また、パラメータ算出部3は、マップM1を参照して、ステータ電流、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr)、ロータの位置に対応するステータ電圧(vds、vqs)を求める。
【0081】
また、パラメータ算出部3は、マップM2を参照して、ステータ電流、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr)、ロータの位置に対応するロータ電流(idr、iqr)を求める。
【0082】
また、パラメータ算出部3は、マップM3を参照して、ステータ電流、すべり角周波数二次抵抗比(ωs/Rr)、ロータの位置に対応するロータ磁束(φdr、φqr)を求める。
【0083】
次に、ロータの温度(T2)を上記式1及び式2に代入して、変化後の二次抵抗Rr´を求め、変化後の二次抵抗Rr´及び前記ステータ電圧、ロータ電流、ロータ磁束とステータ電流から上記式3、式7、式8に示す電圧方程式を用いて自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´を求める。
【0084】
<変形例2>
誘導電動機にスキューが施されている場合、マップ作成部2は、スキューを考慮してパラメータマップを作成するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 パラメータ算出装置
2 マップ作成部
3 パラメータ算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10