(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177082
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】パラメータ算出装置、パラメータ算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 23/14 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H02P23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089786
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】蓑島 紀元
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(72)【発明者】
【氏名】岩井 良樹
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB07
5H505DD05
5H505JJ03
5H505JJ06
5H505JJ17
5H505JJ25
5H505LL24
5H505LL34
5H505LL39
5H505LL40
(57)【要約】
【課題】スキューを有する誘導電動機のパラメータを比較的短い時間で、かつ、精度よく算出する。
【解決手段】スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出し、基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出し、第2インダクタンスに対する第1インダクタンスの増減率を算出し、二次元磁界解析及び誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出し、第3インダクタンスに増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出する第1インダクタンス算出部と、
前記基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出する第2インダクタンス算出部と、
前記第2インダクタンスに対する前記第1インダクタンスの増減率を算出する増減率算出部と、
二次元磁界解析及び前記誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、前記基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出するパラメータ算出部と、
前記第3インダクタンスに前記増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする補正部と、
を備えるパラメータ算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラメータ算出装置であって、
前記第1インダクタンス算出部は、前記基準断面において、第1ステータ電流、第1ロータ電流、及び前記第1ステータ電流と前記第1ロータ電流との第1位相差に対応する第1ロータ磁束及び第1ステータ電圧を算出し、前記他の断面において、第2ステータ電流、第2ロータ電流、及び前記第2ステータ電流と前記第2ロータ電流との第2位相差に対応する第2ロータ磁束及び第2ステータ電圧を算出し、前記第1及び第2ロータ磁束並びに前記第1及び第2ステータ電圧に基づいて前記第1インダクタンスを算出し、
前記第2インダクタンス算出部は、前記第1ロータ磁束及び前記第1ステータ電圧に基づいて前記第2インダクタンスを算出する
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパラメータ算出装置であって、
前記第1インダクタンス算出部は、
二次元磁界解析により、前記第1ステータ電流及びすべり周波数から前記第1ロータ電流及び前記第1位相差を算出する第1位相差算出部と、
二次元磁界解析により、前記第1ステータ電流及び前記第1ロータ電流において、前記第1位相差を基準とする複数の位相差に対応する複数のロータ磁束を算出するとともに、前記複数の位相差に対応する複数のステータ電圧を算出し、前記複数の位相差と前記複数のロータ磁束との対応関係を示すロータ磁束マップを作成するとともに前記複数の位相差と前記複数のステータ電圧との対応関係を示すステータ電圧マップを作成するマップ作成部と、
前記第1位相差と、前記他の断面に対応するスキュー角とに基づいて前記第2位相差を算出する第2位相差算出部と、
を備え、
前記ロータ磁束マップを参照して、前記第1位相差に対応するロータ磁束を前記第1ロータ磁束として取得するとともに前記第2位相差に対応するロータ磁束を前記第2ロータ磁束として取得し、
前記ステータ電圧マップを参照して、前記第1位相差に対応するステータ電圧を前記第1ステータ電圧として取得するとともに前記第2位相差に対応するステータ電圧を前記第2ステータ電圧として取得し、
前記第1及び第2ロータ磁束の平均値を算出するとともに前記第1及び第2ステータ電圧の平均値を算出し、
前記第1及び第2ロータ磁束の平均値並びに前記第1及び第2ステータ電圧の平均値を前記誘導電動機に対応する電圧方程式に代入することにより前記第1インダクタンスを算出し、
前記第2インダクタンス算出部は、
前記ロータ磁束マップを参照して、前記第1位相差に対応するロータ磁束を前記第1ロータ磁束として取得し、
前記ステータ電圧マップを参照して、前記第1位相差に対応するステータ電圧を前記第1ステータ電圧として取得し、
前記第1ロータ磁束及び前記第1ステータ電圧を前記電圧方程式に代入することにより前記第2インダクタンスを算出する
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項4】
請求項2に記載のパラメータ算出装置であって、
前記第1インダクタンス算出部は、二次元磁界解析により、前記第1ステータ電流及びすべり周波数を用いて、前記第1ロータ電流及び前記第1位相差を算出する第1位相差算出部を備え、
三次元磁界解析を用いて、前記第1ステータ電流及び前記第1ロータ電流において、前記第1位相差に対応する第3ロータ磁束及び第3ステータ電圧を算出し、前記第3ロータ磁束及び前記第3ステータ電圧を前記誘導電動機に対応する電圧方程式に代入することにより前記第1インダクタンスを算出し、
前記第2インダクタンス算出部は、
前記第1ロータ磁束及び前記第1ステータ電圧を前記電圧方程式に代入することにより前記第2インダクタンスを算出する
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項5】
請求項3に記載のパラメータ算出装置であって、
前記マップ作成部は、前記第1ロータ電流の実効値または基本波を用いて、前記複数のロータ磁束を算出するとともに前記複数のステータ電圧を算出する
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項6】
請求項3に記載のパラメータ算出装置であって、
前記マップ作成部は、前記複数の位相差と前記複数のロータ磁束と前記ロータの位置との対応関係を示す前記ロータ磁束マップを作成するとともに前記複数の位相差と前記複数のステータ電圧と前記ロータの位置との対応関係を示す前記ステータ電圧マップを作成する
ことを特徴とするパラメータ算出装置。
【請求項7】
プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、スキューを有する誘導電動機のパラメータを算出するパラメータ算出方法であって、
前記プロセッサは、
スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出し、
前記基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出し、
前記第2インダクタンスに対する前記第1インダクタンスの増減率を算出し、
二次元磁界解析及び前記誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、前記基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出し、
前記第3インダクタンスに前記増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする
ことを特徴とするパラメータ算出方法。
【請求項8】
プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、スキューを有する誘導電動機のパラメータを算出するためのプログラムであって、
前記プロセッサに、
スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出するステップと、
前記基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出するステップと、
前記第2インダクタンスに対する前記第1インダクタンスの増減率を算出するステップと、
二次元磁界解析及び前記誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、前記基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出するステップと、
前記第3インダクタンスに前記増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとするステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電動機のパラメータを算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スキューを有する誘導電動機では、誘導電動機の軸法線方向の断面の違い、すなわち、スキュー角の変化によって、ステータに流れる電流とロータに流れる電流との位相差が変化すると、誘導電動機のパラメータが変化する。
【0003】
そこで、スキューを有する誘導電動機のパラメータを算出するパラメータ算出装置として、三次元磁界解析(三次元磁場解析)を用いてパラメータを算出するものがあるが、三次元磁界解析に比較的長い時間がかかるため、パラメータの算出に比較的長い時間がかかるという懸念がある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0004】
また、他のパラメータ算出装置として、誘導電動機の軸法線方向の複数の断面に対してそれぞれ二次元磁界解析を行うことにより、パラメータを算出するものもあるが、誘導電動機の軸法線方向の断面の数が比較的多くなる場合、上記パラメータ算出装置と同様に、パラメータの算出に比較的長い時間がかかるという懸念がある。関連する技術として、特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-26595号公報
【特許文献2】特開平7-319945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、スキューを有する誘導電動機のパラメータを比較的短い時間で、かつ、精度よく算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態であるパラメータ算出装置は、スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出する第1インダクタンス算出部と、前記基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出する第2インダクタンス算出部と、前記第2インダクタンスに対する前記第1インダクタンスの増減率を算出する増減率算出部と、二次元磁界解析及び前記誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、前記基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出するパラメータ算出部と、前記第3インダクタンスに前記増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする補正部とを備える。
【0008】
スキューを有する誘導電動機の場合、ステータ電流とロータ電流との位相差が誘導電動機の軸法線方向の断面(スキュー角)毎に変化するため、ステータ電流とロータ電流との位相差により算出されるインダクタンスについても誘導電動機の軸法線方向の断面毎に変化する。このことを利用して、誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応する位相差により算出される第1インダクタンスと、基準断面に対応する位相差により算出される第2インダクタンスとを算出し、第2インダクタンスに対する第1インダクタンスの増減率を算出し、二次元磁界解析及び電圧方程式により算出される第3インダクタンスに増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする。これにより、補正後のインダクタンスを三次元磁界解析により算出されるインダクタンスに近づけることができるため、インダクタンスの算出精度を向上させることができる。また、二次元磁界解析を用いてインダクタンスを算出する構成であるため、三次元誘導磁界解析を用いてインダクタンスを算出する場合に比べて、インダクタンスの算出にかかる時間を短くすることができる。
【0009】
また、前記第1インダクタンス算出部は、前記基準断面において、第1ステータ電流、第1ロータ電流、及び前記第1ステータ電流と前記第1ロータ電流との第1位相差に対応する第1ロータ磁束及び第1ステータ電圧を算出し、前記他の断面において、第2ステータ電流、第2ロータ電流、及び前記第2ステータ電流と前記第2ロータ電流との第2位相差に対応する第2ロータ磁束及び第2ステータ電圧を算出し、前記第1及び第2ロータ磁束並びに前記第1及び第2ステータ電圧に基づいて前記第1インダクタンスを算出し、前記第2インダクタンス算出部は、前記第1ロータ磁束及び前記第1ステータ電圧に基づいて前記第2インダクタンスを算出するように構成してもよい。
【0010】
また、前記第1インダクタンス算出部は、二次元磁界解析により、前記第1ステータ電流及びすべり周波数から前記第1ロータ電流及び前記第1位相差を算出する第1位相差算出部と、二次元磁界解析により、前記第1ステータ電流及び前記第1ロータ電流において、前記第1位相差を基準とする複数の位相差に対応する複数のロータ磁束を算出するとともに、前記複数の位相差に対応する複数のステータ電圧を算出し、前記複数の位相差と前記複数のロータ磁束との対応関係を示すロータ磁束マップを作成するとともに前記複数の位相差と前記複数のステータ電圧との対応関係を示すステータ電圧マップを作成するマップ作成部と、前記第1位相差と、前記他の断面に対応するスキュー角とに基づいて前記第2位相差を算出する第2位相差算出部とを備え、前記ロータ磁束マップを参照して、前記第1位相差に対応するロータ磁束を前記第1ロータ磁束として取得するとともに前記第2位相差に対応するロータ磁束を前記第2ロータ磁束として取得し、前記ステータ電圧マップを参照して、前記第1位相差に対応するステータ電圧を前記第1ステータ電圧として取得するとともに前記第2位相差に対応するステータ電圧を前記第2ステータ電圧として取得し、前記第1及び第2ロータ磁束の平均値を算出するとともに前記第1及び第2ステータ電圧の平均値を算出し、前記第1及び第2ロータ磁束の平均値並びに前記第1及び第2ステータ電圧の平均値を前記誘導電動機に対応する電圧方程式に代入することにより前記第1インダクタンスを算出し、前記第2インダクタンス算出部は、前記ロータ磁束マップを参照して、前記第1位相差に対応するロータ磁束を前記第1ロータ磁束として取得し、前記ステータ電圧マップを参照して、前記第1位相差に対応するステータ電圧を前記第1ステータ電圧として取得し、前記第1ロータ磁束及び前記第1ステータ電圧を前記電圧方程式に代入することにより前記第2インダクタンスを算出するように構成してもよい。
【0011】
また、前記第1インダクタンス算出部は、二次元磁界解析により、前記第1ステータ電流及びすべり周波数を用いて、前記第1ロータ電流及び前記第1位相差を算出する第1位相差算出部を備え、三次元磁界解析を用いて、前記第1ステータ電流及び前記第1ロータ電流において、前記第1位相差に対応する第3ロータ磁束及び第3ステータ電圧を算出し、前記第3ロータ磁束及び前記第3ステータ電圧を前記誘導電動機に対応する電圧方程式に代入することにより前記第1インダクタンスを算出し、前記第2インダクタンス算出部は、前記第1ロータ磁束及び前記第1ステータ電圧を前記電圧方程式に代入することにより前記第2インダクタンスを算出するように構成してもよい。
【0012】
また、前記マップ作成部は、前記第1ロータ電流の実効値または基本波を用いて、前記複数のロータ磁束を算出するとともに前記複数のステータ電圧を算出するように構成してもよい。
【0013】
また、前記マップ作成部は、前記複数の位相差と前記複数のロータ磁束と前記ロータの位置との対応関係を示す前記ロータ磁束マップを作成するとともに前記複数の位相差と前記複数のステータ電圧と前記ロータの位置との対応関係を示す前記ステータ電圧マップを作成するように構成してもよい。
【0014】
また、本発明に係る一つの形態であるパラメータ算出方法は、プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、スキューを有する誘導電動機のパラメータを算出するパラメータ算出方法であって、前記プロセッサは、スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出し、前記基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出し、前記第2インダクタンスに対する前記第1インダクタンスの増減率を算出し、二次元磁界解析及び前記誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、前記基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出し、前記第3インダクタンスに前記増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする。
【0015】
また、本発明に係る一つの形態であるプログラムは、プロセッサを備えるパラメータ算出装置において、スキューを有する誘導電動機のパラメータを算出するためのプログラムであって、前記プロセッサに、スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第1インダクタンスを算出するステップと、前記基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、第2インダクタンスを算出するステップと、前記第2インダクタンスに対する前記第1インダクタンスの増減率を算出するステップと、二次元磁界解析及び前記誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、前記基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、第3インダクタンスを算出するステップと、前記第3インダクタンスに前記増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとするステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スキューを有する誘導電動機のパラメータを比較的短い時間で、かつ、精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態におけるパラメータ算出装置を示す図である。
【
図2】スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の互いに異なる3つの断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差を示す図である。
【
図3】実施例におけるパラメータ算出装置を示す図である。
【
図4】実施例におけるパラメータ算出方法を示すフローチャートである。
【
図5】パラメータ算出方法を説明するための図である。
【
図6】パラメータ算出方法を説明するための図である。
【
図7】パラメータ算出方法を説明するための図である。
【
図8】パラメータ算出方法を説明するための図である。
【
図9】パラメータ算出方法を説明するための図である。
【
図10】パラメータ算出方法を説明するための図である。
【
図11】パラメータ算出装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図12】ロータ磁束マップ及びステータ電圧マップの他の例を示す図である。
【
図13】第1インダクタンス算出部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて実施形態の詳細を説明する。
【0019】
図1は、実施形態におけるパラメータ算出装置を示す図である。
【0020】
図1に示すパラメータ算出装置1は、スキューを有する誘導電動機のパラメータとして、ステータの自己インダクタンスLs、ロータの自己インダクタンスLr、ステータとロータとの相互インダクタンスMを算出するものであって、第1インダクタンス算出部2と、第2インダクタンス算出部3と、増減率算出部4と、パラメータ算出部5と、補正部6とを備える。
【0021】
第1インダクタンス算出部2は、誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、スキューが考慮された第1インダクタンス(自己インダクタンスLs´、ロータの自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´)を算出する。
【0022】
第2インダクタンス算出部3は、基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、スキューが考慮されていない第2インダクタンス(自己インダクタンスLs´´、自己インダクタンスLr´´、相互インダクタンスM´´)を算出する。
【0023】
増減率算出部4は、第2インダクタンスに対する第1インダクタンスの増減率Rを算出する。
【0024】
パラメータ算出部5は、二次元磁界解析(二次元磁場解析)及び誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、基準断面に対応するステータ電流とロータ電流との位相差に基づいて、補正前の第3インダクタンス(自己インダクタンスLs´´´、自己インダクタンスLr´´´、相互インダクタンスM´´´)を算出する。
【0025】
補正部6は、第3インダクタンスに増減率Rを乗算した結果を補正後のインダクタンス(自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM)とする。
【0026】
実施形態におけるパラメータ算出装置1では、スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の各断面におけるステータ電流とロータ電流との位相差がそれぞれスキュー角分ずつずれるという原理を利用し、三次元磁界解析より解析時間が短い二次元磁界解析を用いて、三次元磁界解析と同等の精度で、インダクタンスを算出する。
【0027】
図2は、スキューを有する誘導電動機の軸法線方向の互いに異なる3つの断面にそれぞれ対応するステータ電流とロータ電流との位相差を示す図である。なお、
図2では、ロータにスキューが施されていることが理解し易いようにステータ及びロータの一部を示している。また、
図2では、誘導電動機の軸方向中央付近における軸法線方向のステータ断面及びロータ断面を中面(基準断面)とし、中面より上方(他の断面)における軸法線方向のステータ断面及びロータ断面を上面とし、中面より下方(他の断面)における軸法線方向のステータ断面及びロータ断面を下面とする。また、基準断面は、上面または下面を採用してもよく、特に限定されない。例えば、上面を基準断面とする場合、中面及び下面が他の断面となる。また、下面を基準断面とする場合、上面及び中面が他の断面となる。
【0028】
例えば、スキューを有する誘導電動機において、ステータ電流及びすべり周波数を入力とする三次元磁界解析からステータ電流とロータ電流との位相差を得る場合を想定する。
【0029】
この場合、中面における第1ステータ電流(idsM,iqsM)と第1ロータ電流(idrM,iqrM)との第1位相差(ΔθM)に比べて、上面における第2ステータ電流(idsU,iqsU)と第2ロータ電流(idrU,iqrU)との第2位相差(ΔθU)は小さくなる。また、中面における第1位相差(ΔθM)に比べて、下面における第2ステータ電流(idsL,iqsL)と第2ロータ電流(idrL,iqrL)との第2位相差(ΔθL)が大きくなる。そのため、第1位相差に基づいて算出されるインダクタンスと、第2位相差に基づいて算出されるインダクタンスとは互いに異なる。例えば、ステータ電流とロータ電流との位相差が第1位相であるときにステータ電流及びロータ電流が最も流れ易くなる場合、第2ステータ電流及び第2ロータ電流は第1ステータ電流及び第1ロータ電流に比べて流れ難くなるため、上面または下面におけるインダクタンスは中面におけるインダクタンスに比べて大きくなる。
【0030】
このように、スキューを有する誘導電動機の場合、誘導電動機の軸法線方向の断面を基準断面から他の断面に切り替えると、すなわち、スキュー角を変化させると、ステータ電流とロータ電流との位相差が変化するため、ステータ電流とロータ電流との位相差により算出されるインダクタンスについても誘導電動機の軸法線方向の断面毎に変化する。このことを利用して、誘導電動機の軸法線方向の基準断面と他の断面にそれぞれ対応する位相差により算出される第1インダクタンスと、基準断面に対応する位相差により算出される第2インダクタンスとを算出し、第2インダクタンスに対する第1インダクタンスの増減率を算出し、二次元磁界解析及び誘導電動機に対応する電圧方程式により算出される第3インダクタンスに増減率を乗算した結果を補正後のインダクタンスとする。これにより、補正後のインダクタンスを三次元磁界解析により算出されるインダクタンスと同等な精度で算出することができるため、インダクタンスの算出精度を向上させることができる。また、二次元磁界解析を用いてインダクタンスを算出する構成であるため、三次元磁界解析を用いてインダクタンスを算出する場合に比べて、インダクタンスの算出にかかる時間を短くすることができる。
【0031】
<実施例>
図3は、実施例におけるパラメータ算出装置を示す図である。なお、
図3において、
図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付している。
【0032】
図3に示す第1インダクタンス算出部2は、第1位相差算出部21と、マップ作成部22と、第2位相差算出部23とを備える。
【0033】
図4は、実施例におけるパラメータ算出方法を示すフローチャートである。
【0034】
まず、ステップS1において、第1位相差算出部21は、二次元磁界解析を用いて、第1ステータ電流及びすべり周波数に基づいて、第1ロータ電流及び第1位相差を算出する。例えば、
図5(a)に示すように、第1位相差算出部21は、
図2に示す中面において、第1ステータ電流(idsM,iqsM)及びすべり周波数(ωs)を入力とする二次元磁界解析を行うことで、第1ロータ電流(idrM,iqrM)及び第1位相差(ΔθM)を得る。なお、実施例で扱われるステータ電流、ロータ電流、ステータ電圧、及びロータ電圧はそれぞれ実効値とする。
【0035】
次に、
図4に示すステップS2において、マップ作成部22は、第1ステータ電流、第1ロータ電流、及び第1位相差を基準とする複数の位相差を入力とする二次元磁界解析を行うことで、複数のロータ磁束及び複数のステータ電圧を得る。また、マップ作成部22は、複数の位相差と複数のロータ磁束との対応関係を示すロータ磁束マップMΦを取得するとともに複数の位相差と複数のステータ電圧との対応関係を示すステータ電圧マップMvを作成する。
【0036】
例えば、
図5(b)に示すように、マップ作成部22は、第1ステータ電流(idsM,iqsM)、第1ロータ電流(idrM,iqrM)、及び第1位相差(ΔθM)を基準とする複数の位相差(ΔθM
+2、ΔθM
+1、ΔθM、ΔθM
-1、ΔθMM
-2)を入力とする二次元磁界解析を行うことで、複数のロータ磁束(「Φ2d
+2,Φ2q
+2」、「Φ2d
+1,Φ2q
+1」、「Φ2d
0,Φ2q
0」、「Φ2d
-1,Φ2q
-1」、「Φ2d
-2,Φ2q
-2」)及び複数のステータ電圧(「Vds
+2,Vqs
+2」、「Vds
+1,Vqs
+1」、「Vds
0,Vqs
0」、「Vds
-1,Vqs
-1」、「Vds
-2,Vqs
-2」)を得る。
【0037】
この場合、マップ作成部22は、
図5(c)に示すように、位相差(ΔθM
+2)とロータ磁束(Φ2d
+2,Φ2q
+2)とを対応させ、位相差(ΔθM
+1)とロータ磁束(Φ2d
+1,Φ2q
+1)とを対応させ、位相差(ΔθM)とロータ磁束(Φ2d
0,Φ2q
0)とを対応させ、位相差(ΔθM
-1)とロータ磁束(Φ2d
-1,Φ2q
-1)とを対応させ、位相差(ΔθM
-2)とロータ磁束(Φ2d
-2,Φ2q
-2)とを対応させたロータ磁束マップMΦを作成する。
【0038】
また、マップ作成部22は、
図5(d)に示すように、位相差(ΔθM
+2)とステータ電圧(Vds
+2,Vqs
+2)とを対応させ、位相差(ΔθM
+1)とステータ電圧(Vds
+1,Vqs
+1)とを対応させ、位相差(ΔθM)とステータ電圧(Vds
0,Vqs
0)とを対応させ、位相差(ΔθM
-1)とステータ電圧(Vds
-1,Vqs
-1)とを対応させ、位相差(ΔθM
-2)とステータ電圧(Vds
-2,Vqs
-2)とを対応させたステータ電圧マップMvを作成する。
【0039】
次に、
図4に示すステップS3において、第2位相差算出部23は、第1位相差と、他の断面に対応するスキュー角とに基づいて、第2位相差を算出する。
【0040】
例えば、
図5(e)に示すように、第2位相差算出部23は、第1位相差(ΔθM)と、中面から上面までのスキュー角により求められる、ステータ電流とロータ電流との位相差(Δθ
+2)とを加算することで、上面におけるステータ電流とロータ電流との位相差である第2位相差(ΔθM
+2)を求める。
【0041】
また、第2位相差算出部23は、第1位相差(ΔθM)と、中面から中面までのスキュー角により求められる、ステータ電流とロータ電流との位相差(0)とを加算することで、中面におけるステータ電流とロータ電流との位相差である第2位相差(ΔθM)を求める。
【0042】
また、第2位相差算出部23は、第1位相差(ΔθM)と、中面から下面までのスキュー角により求められる、ステータ電流とロータ電流との位相差(Δθ-2)とを加算することで、下面におけるステータ電流とロータ電流との位相差である第2位相差(ΔθM-2)を求める。
【0043】
次に、
図4に示すステップS4において、第1インダクタンス算出部2は、ロータ磁束マップを参照して、第1位相差に対応するロータ磁束を第1ロータ磁束として取得するとともに第2位相差に対応するロータ磁束を第2ロータ磁束として取得し、ステータ電圧マップを参照して、第1位相差に対応するステータ電圧を第1ステータ電圧として取得するとともに第2位相差に対応するステータ電圧を第2ステータ電圧として取得する。また、第1インダクタンス算出部2は、第1及び第2ロータ磁束の平均値を算出するとともに第1及び第2ステータ電圧の平均値を算出し、第1及び第2ロータ磁束の平均値並びに第1及び第2ステータ電圧の平均値を誘導電動機に対応する電圧方程式に代入することにより第1インダクタンスを算出する。
【0044】
例えば、
図6に示すように、第1インダクタンス算出部2は、
図5(c)に示すロータ磁束マップMΦを参照して、上面における第2位相差(ΔθM
+2)に対応するロータ磁束(Φ2d
+2,Φ2q
+2)を第2ロータ磁束として求めるとともに、中面における第1位相差(ΔθM)に対応するロータ磁束(Φ2d
0,Φ2q
0)を第1ロータ磁束として求めるとともに、下面における第2位相差(ΔθM
-2)に対応するロータ磁束(Φ2d
-2,Φ2q
-2)を第2ロータ磁束として求める。
【0045】
また、第1インダクタンス算出部2は、
図5(d)に示すステータ電圧マップMvを参照して、上面における第2位相差(ΔθM
+2)に対応するステータ電圧(Vds
+2,Vqs
+2)を第2ステータ電圧として求めるとともに、中面における第1位相差(ΔθM)に対応するステータ電圧(Vds
0,Vqs
0)を第1ステータ電圧として求めるとともに、下面における第2位相差(ΔθM
-2)に対応するステータ電圧(Vds
-2,Vqs
-2)を第2ステータ電圧として求める。
【0046】
また、第1インダクタンス算出部2は、ロータ磁束(Φ2d+2,Φ2q+2)と、ロータ磁束(Φ2d0,Φ2q0)と、ロータ磁束(Φ2d-2,Φ2q-2)との平均値であるロータ磁束(Φ2dA,Φ2qA)を演算するとともに、ステータ電圧(Vds+2,Vqs+2)と、ステータ電圧(Vds0,Vqs0)と、ステータ電圧(Vds-2,Vqs-2)との平均値であるステータ電圧(VdsA,VqsA)を演算する。
【0047】
また、第1インダクタンス算出部2は、下記式1及び式2に示す誘導電動機に対応する電圧方程式に、ロータ磁束(Φ2d,Φ2q)及びステータ電圧(Vds,Vqs)としてロータ磁束(Φ2dA,Φ2qA)及びステータ電圧(VdsA,VqsA)を代入することで算出される自己インダクタンスLs、ロータの自己インダクタンスLr、及び相互インダクタンスMを、スキューが考慮された第1インダクタンス(自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、及び相互インダクタンスM´)とする。なお、idsはステータd軸電流とし、iqsはステータq軸電流とし、idrはロータd軸電流とし、iqrはロータq軸電流とし、ωは電源角速度とし、Rsはステータの巻線抵抗とする。
【0048】
【0049】
【0050】
すなわち、第1インダクタンス算出部2は、中面において、第1ステータ電流、第1ロータ電流、及び第1位相差に対応する第1ロータ磁束及び第1ステータ電圧を算出し、上面または下面において、第2ステータ電流、第2ロータ電流、及び第2位相差に対応する第2ロータ磁束及び第2ステータ電圧を算出し、第1及び第2ロータ磁束並びに第1及び第2ステータ電圧に基づいて第1インダクタンスを算出する。
【0051】
次に、
図4に示すステップS5において、第2インダクタンス算出部3は、ロータ磁束マップを参照して、第1位相差に対応するロータ磁束を第1ロータ磁束として取得し、ステータ電圧マップを参照して、第1位相差に対応するステータ電圧を第1ステータ電圧として取得し、第1ロータ磁束及び第1ステータ電圧を誘導電動機に対応する電圧方程式に代入することにより第2インダクタンスを算出する。
【0052】
例えば、
図7に示すように、第2インダクタンス算出部3は、
図5(c)に示すロータ磁束マップMΦを参照して、中面における第1位相差(ΔθM)に対応するロータ磁束(Φ2d
0,Φ2q
0)を第1ロータ磁束として求める。
【0053】
また、第2インダクタンス算出部3は、
図5(d)に示すステータ電圧マップMvを参照して、中面における第1位相差(ΔθM)に対応するステータ電圧(Vds
0,Vqs
0)を第1ステータ電圧として求める。
【0054】
また、第2インダクタンス算出部3は、上記式1及び式2に示す電圧方程式に、ロータ磁束(Φ2d,Φ2q)及びステータ電圧(Vds,Vqs)としてロータ磁束(Φ2d0,Φ2q0)及びステータ電圧(Vds0,Vqs0)を代入することで算出される自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、及び相互インダクタンスMを、スキューが考慮されていない第2インダクタンス(自己インダクタンスLs´´、自己インダクタンスLr´´、及び相互インダクタンスM´´)とする。
【0055】
すなわち、第2インダクタンス算出部3は、第1ロータ磁束及び第1ステータ電圧に基づいて第2インダクタンスを算出する。
【0056】
次に、
図4に示すステップS6において、増減率算出部4は、第2インダクタンスに対する第1インダクタンスの増減率を算出する。
【0057】
例えば、
図8(a)に示すように、増減率算出部4は、自己インダクタンスLs´を自己インダクタンスLs´´で除算した結果を、ステータの自己インダクタンスに対応する増減率RLsとする。
【0058】
また、
図8(b)に示すように、増減率算出部4は、自己インダクタンスLr´を自己インダクタンスLr´´で除算した結果を、ロータの自己インダクタンスに対応する増減率RLrとする。
【0059】
また、
図8(c)に示すように、増減率算出部4は、相互インダクタンスM´を相互インダクタンスM´´で除算した結果を、ステータとロータとの相互インダクタンスに対応する増減率RMとする。
【0060】
次に、
図4に示すステップS7において、パラメータ算出部5は、二次元磁界解析及び誘導電動機に対応する電圧方程式を用いて、基準断面に対応するステータ電流及びロータ電流との位相差に基づいて、補正前の第3インダクタンス(自己インダクタンスLs、ロータの自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM)を算出する。
【0061】
例えば、
図9に示すように、パラメータ算出部5は、第1ステータ電流(idsM,iqsM)と、ステップS1で求めた第1ロータ電流(idrM,iqrM)及び第1位相差(ΔθM)を入力とする二次元磁界解析を行うことで、第1ロータ磁束(Φ2dM,Φ2qM)及び第1ステータ電圧(VdsM,VqsM)を得る。
【0062】
また、パラメータ算出部5は、上記式1及び式2に示す電圧方程式に、ロータ磁束(Φ2d,Φ2q)及びステータ電圧(Vds,Vqs)として第1ロータ磁束(Φ2dM,Φ2qM)及び第1ステータ電圧(VdsM,VqsM)を代入することで算出される自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、及び相互インダクタンスMを、第3インダクタンス(ステータの自己インダクタンスLs´´´、自己インダクタンスLr´´´、及び相互インダクタンスM´´´)とする。
【0063】
そして、
図4に示すステップS8において、補正部6は、第3インダクタンスに増減率Rを乗算した結果を補正後のインダクタンス(自己インダクタンスLs、ロータの自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM)とする。
【0064】
例えば、
図10(a)に示すように、補正部6は、自己インダクタンスLs´´´に増減率RLsを乗算した結果を補正後の自己インダクタンスLsとする。
【0065】
また、
図10(b)に示すように、補正部6は、自己インダクタンスLr´´´に増減率RLrを乗算した結果を補正後の自己インダクタンスLrとする。
【0066】
また、
図10(c)に示すように、補正部6は、相互インダクタンスM´´´に増減率RMを乗算した結果を補正後の相互インダクタンスMとする。
【0067】
なお、入力値である第1ステータ電流及びすべり周波数を他の値に変更する場合、その変更した第1ステータ電流及びすべり周波数について、
図4に示すステップS1~ステップS8を再度実行する。
【0068】
実施例のパラメータ算出装置1では、誘導電動機の軸法線方向の中面に対応する第1位相差並びに上面及び下面に対応する第2位相差により算出される第1インダクタンス(自己インダクタンスLs´、自己インダクタンスLr´、相互インダクタンスM´)と、中面に対応する第1位相差により算出される第2インダクタンス(自己インダクタンスLs´´、自己インダクタンスLr´´、相互インダクタンスM´´)とを算出し、第2インダクタンスに対する第1インダクタンスの増減率Rを算出し、二次元磁界解析及び電圧方程式により算出される第3インダクタンス(自己インダクタンスLs´´´、自己インダクタンスLr´´´、相互インダクタンスM´´´)に増減率Rを乗算した結果を補正後のインダクタンス(自己インダクタンスLs、自己インダクタンスLr、相互インダクタンスM)とする。これにより、補正後のインダクタンスを三次元磁界解析により算出されるインダクタンスと同等な精度で算出することができるため、インダクタンスの算出精度を向上させることができる。また、二次元磁界解析を用いてインダクタンスを算出する構成であるため、三次元磁界解析を用いてインダクタンスを算出する場合に比べて、インダクタンスの算出にかかる時間を短くすることができる。
【0069】
<パラメータ算出装置1のハードウェア構成>
図11は、パラメータ算出装置1として用いられる情報処理装置(コンピュータ)のハードウェア構成例を示す図である。
【0070】
図11に示す情報処理装置100は、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103、読取装置104、通信インタフェース106、及び入出力インタフェース107を備える。なお、これらの構成要素は、例えば、バス108を介して互いに接続されている。
【0071】
プロセッサ101は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサまたはマルチコアであってもよい。プロセッサ101は、メモリ102を利用して例えば上述のパラメータ算出方法の手順を記述したプログラムを実行することにより、パラメータ算出装置1の機能を提供する。
【0072】
メモリ102は、例えば半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでよい。記憶装置103は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。なお、RAMは、Random Access Memoryの略称である。また、ROMは、Read Only Memoryの略称である。
【0073】
読取装置104は、プロセッサ101の指示に従って着脱可能記憶媒体105にアクセスする。着脱可能記憶媒体105は、例えば、半導体デバイス(USBメモリ等)、磁気的作用により情報が入出力される媒体(磁気ディスク等)、光学的作用により情報が入出力される媒体(CD-ROM、DVD等)などにより実現される。なお、USBは、Universal Serial Busの略称である。CDは、Compact Discの略称である。DVDは、Digital Versatile Diskの略称である。
【0074】
通信インタフェース106は、例えば、プロセッサ101の指示に従って通信ネットワークを介してデータを送受信する。
【0075】
入出力インタフェース107は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、オペレータ又はユーザからの指示又は情報の入力に用いられる。
【0076】
プロセッサ101により実行される各プログラムは、例えば、下記の形態で提供される。
【0077】
(1)記憶装置103に予めインストールされている。
【0078】
(2)着脱可能記憶媒体105により提供される。
【0079】
(3)プログラムサーバなどのサーバから通信ネットワークを介して通信インタフェース106へ提供される。
【0080】
なお、情報処理装置100のハードウェア構成は、例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の機能部の一部または全部の機能がFPGAおよびSoCなどによるハードウェアとして実装されてもよい。また、FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。SoCは、System-on-a-chipの略称である。
【0081】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0082】
<変形例1>
入力値である第1ステータ電流及びすべり周波数がそれぞれ複数用意される場合、それら第1ステータ電流及びすべり周波数に対して、同時に、
図4に示すステップS1~ステップS8を実行してもよい。
【0083】
<変形例2>
図4に示すステップS2において、二次元磁界解析に第1ロータ電流を入力する際、ステップS1で算出された第1ロータ電流の基本波を入力してもよい。
【0084】
<変形例3>
図4に示すステップS2において、ロータ磁束マップ及びステータ電圧マップを算出する際、
図12に示すロータ磁束マップMΦ´及びステータ電圧マップMv´のように、ロータの位置情報を含ませてもよい。このように構成する場合、実施例で扱われるロータ電流、ステータ電圧、及びロータ電圧に空間高調波成分を含ませることができる。
【0085】
<変形例4>
図4に示すステップS4において、第1インダクタンスを算出する際、
図13に示すように、第1ステータ電流(idsM,iqsM)、第1ロータ電流(idrM,iqrM)、第1位相差(ΔθM)を入力とする三次元磁界解析を実行することで、ロータ磁束(Φ2dA,Φ2qA)、ステータ電圧(VdsA,VqsA)を求めてもよい。このように構成する場合、
図4に示すステップS3を省略することができる。
【0086】
<変形例5>
増減率を算出する際、予めスキュー量以上となる位相での二次元強制電流解析結果を準備しておくことで、解析をすることなくスキュー量を変化させたパラメータを算出することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 パラメータ算出装置
2 第1インダクタンス算出部
3 第2インダクタンス算出部
4 増減率算出部
5 パラメータ算出部
6 補正部
21 第1位相差算出部
22 マップ作成部
23 第2位相差算出部