(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177098
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20231206BHJP
【FI】
F01N13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089818
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都築 裕介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
(72)【発明者】
【氏名】戸市 進之介
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA00
3G004DA23
(57)【要約】
【課題】凝縮水を効率的に排出することができる排気装置を提供する。
【解決手段】内燃機関からの排気ガスが流入する排気装置は、排気部材と、貯水部と、分岐部と、連通部と、を備える。貯水部は、排気ガスが通過する排気流路を構成する排気部材の下方に位置し、排気部材内に溜まった凝縮水を貯留する。分岐部は、排気流路から分岐する分岐流路を構成し、排気流路と、貯水部により形成される貯水空間と、を繋ぐ。連通部は、排気流路と繋がる分岐部の第1開口よりも下流側において、排気流路と、貯水空間と、を連通させる。分岐部は、第1開口から離れて位置する当該分岐部の第2開口が貯水空間内における凝縮水が溜まり得る位置に配置されるように、貯水空間内に延び出す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスが流入する排気装置であって、
排気ガスが通過する排気流路を構成する排気部材と、
前記排気部材の下方に位置し、前記排気部材内に溜まった凝縮水を貯留する貯水部と、
前記排気流路から分岐する分岐流路を構成し、前記排気流路と、前記貯水部により形成される貯水空間と、を繋ぐ分岐部と、
前記排気流路と繋がる前記分岐部の第1開口よりも下流側において、前記排気流路と、前記貯水空間と、を連通させる連通部と、
を備え、
前記分岐部は、前記第1開口から離れて位置する当該分岐部の第2開口が前記貯水空間内における前記凝縮水が溜まり得る位置に配置されるように、前記貯水空間内に延び出す、排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気装置であって、
前記分岐部は、前記排気部材から前記貯水空間内まで延びる管である、排気装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気装置であって、
当該排気装置は、マフラであって、
前記第1開口は、前記排気部材に含まれるインレットパイプに設けられる、排気装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の排気装置であって、
前記排気部材に設けられ、前記排気流路の流路断面積を縮小する絞り部を更に備え、
前記絞り部は、排気ガスの流れ方向における前記分岐部と前記連通部との間に位置する、排気装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の排気装置であって、
前記第2開口は、複数の排気口により構成される、排気装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排気装置であって、
前記複数の排気口は、盤状の形状を有するヘッドの下面に設けられる、排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排気ガスが流入する排気装置が知られている。排気装置には、排気ガス中の水分が凝縮した凝縮水等が溜まる。このような凝縮水は、排気装置の腐食の原因になり得る。このため、排気装置内に溜まった凝縮水は、排気装置外に排出されることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、排気管の外壁からの熱及び排気管に形成された通気孔から流れ出る排気ガスの熱によって、排気管の外側に一体的に形成された部屋に溜まった凝縮水の気化を促進することで、排気管の外に凝縮水を排出するように構成された内燃機関の排水装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した排水装置では、部屋に溜まった凝縮水の量が少ない場合、凝縮水と排気管との距離が遠くなる。このため、排気管の外壁からの熱及び排気管の通気孔から流れ出る排気ガスの熱が凝縮水に伝わりにくくなり、効率的に排水が行われにくいという問題があった。
【0006】
本開示の一局面は、凝縮水を効率的に排出することができる排気装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気ガスが流入する排気装置であって、排気部材と、貯水部と、分岐部と、連通部と、を備える。排気部材は、排気ガスが通過する排気流路を構成する。貯水部は、排気部材の下方に位置し、排気部材内に溜まった凝縮水を貯留する。分岐部は、排気流路から分岐する分岐流路を構成し、排気流路と、貯水部により形成される貯水空間と、を繋ぐ。連通部は、排気流路と繋がる分岐部の第1開口よりも下流側において、排気流路と、貯水空間と、を連通させる。分岐部は、第1開口から離れて位置する当該分岐部の第2開口が貯水空間内における凝縮水が溜まり得る位置に配置されるように、貯水空間内に延び出す。
【0008】
このような構成では、排気装置内に溜まった凝縮水が貯水部に貯留され、分岐部に流れ込んだ排気ガスが貯水部に流れ出す。これにより、排気部材の排気流路の凝縮水による閉塞を抑制することができ、かつ、貯水部に溜まった凝縮水を分岐部から流れ出る排気ガスの熱を利用して蒸発させることができる。また、排気ガスが排出される分岐部の第2開口が貯水空間内における凝縮水が溜まり得る位置に配置されるため、当該第2開口が凝縮水と接触又は近接しやすい。これにより、分岐部の分岐流路を通過する排気ガスの熱が凝縮水に伝わりやすくなるため、凝縮水の蒸発効果が高まり、排気装置における凝縮水の排水性を向上させることができる。したがって、排気装置内に溜まった凝縮水を効率的に排出することができる。
【0009】
本開示の一態様では、分岐部は、排気部材から貯水空間内まで延びる管であってもよい。このような構成によれば、排気部材に管を繋げることによって、容易に排気流路から分岐する分岐流路を設けることができる。また、管の長さを調整することによって、貯水部の貯水空間内における第2開口の位置が調整しやすい。
【0010】
本開示の一態様では、第1開口は、排気部材に含まれるインレットパイプに設けられてもよい。このような構成によれば、マフラの排気流路の上流でマフラ内に溜まった凝縮水が排出されるため、マフラの排気流路の下流まで凝縮水が流れ込むことを抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様は、排気部材に設けられ、排気流路の流路断面積を縮小する絞り部を更に備えてもよい。絞り部は、排気ガスの流れ方向における分岐部と連通部との間に位置してもよい。このような構成では、分岐部の下流、かつ、連通部の上流に絞り部が設けられることによって、絞り部よりも上流側の排気流路内の圧力が高まり、排気流路から分岐流路に排気ガスが流れ込みやすくなる。このため、分岐流路から排出される排気ガスの熱を利用した凝縮水の蒸発効果を高め、排気装置における凝縮水の排水性を向上させることができる。
【0012】
本開示の一態様では、第2開口は、複数の排気口により構成されてもよい。このような構成によれば、分岐部の第2開口が複数の排気口により構成されることによって、分岐流路に流れ込む排気ガスと凝縮水との接触面積を大きく持ちつつ、同一の接触面積を有する場合にも第2開口が1つの排気口により構成される場合と比較して1つ1つの排気口を小さくすることができる。その結果、第2開口から排出される排気ガスの流量を当該分岐流路に流れ込む排気ガスの流量と同様に維持して凝縮水の蒸発を効率よく行いつつ、複数の排気口によって圧力を分散させて第2開口から排気ガスが排出されることにより生じ得る異音を低減することができる。
【0013】
本開示の一態様では、複数の排気口は、盤状の形状を有するヘッドの下面に設けられてもよい。このような構成によれば、ヘッドの下面に複数の排気口が設けられるため、広い範囲において、凝縮水内に排気ガスを吹き込む、又は、凝縮水に対してより近い位置から排気ガスを吹き付けることができる。その結果、凝縮水の蒸発効果を高めることができる。また、貯水空間におけるより低い位置に複数の排気口が位置するため、貯水部内に貯留される凝縮水の量が少ない場合にも、凝縮水の蒸発効果が得られやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一部の図示が省略又は透過的に示された状態のマフラを示す模式的な斜視図である。
【
図3】ヘッドを下面側から見た模式的な平面図である。
【
図4】ヘッド及び貯水部周辺を拡大した模式的な斜視断面図である。
【
図5】排気流路を排気管が構成する排気装置を示す模式的な斜視断面図である。
【
図6】排気流路を排気管が構成する排気装置を示す模式的な断面図である。
【
図7】貯水部がケース部材から離れて設けられるマフラを示す模式的な断面図である。
【
図8】貯水部がケース部材から離れて設けられる別の形態のマフラを示す模式的な断面図である。
【
図9】ヘッドを有しない分岐部における下流側の端部の側面に複数の排気口が設けられる構成を示す図である。
【
図10】ヘッドを有しない分岐部の底面に複数の排気口が設けられる構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1及び
図2に示すマフラ100は、車両に搭載された内燃機関の排気ガス流路を構成する排気システムに用いられる排気音を低減する装置であり、内燃機関から流入する排気ガスを外部に排出するものである。なお、マフラ100が搭載される車両としては、特に限定されないが、ガソリン車、ディーゼル車、水素エンジン車などが挙げられる。マフラ100の内部には、消音空間が形成される。マフラ100は、後述するセパレータ20によって当該消音空間が区分けされることで当該マフラ100の内部に形成される複数の部屋を排気ガスが通過することによって消音効果を発揮する。以下の説明では、マフラ100が車両に搭載された状態において、車両を基準に上下方向を表現する。
マフラ100は、ケース部材10と、セパレータ20と、インレットパイプ30と、アウトレットパイプ40と、貯水部50と、分岐部60と、を備える。
【0016】
本実施形態では、ケース部材10は、略楕円形の側面を有する楕円柱状に形成されている。なお、ケース部材の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、ケース部材は、円柱状、四角柱状等に形成されていてもよい。ケース部材10は、アウタシェル11と、2つのアウタプレート12,13と、を有する。アウタシェル11は、マフラ100の中心軸に直交する断面形状が略楕円形状を有する筒状の部材である。2つのアウタプレート12,13は、略楕円形状の板状部材であり、アウタシェル11の両側端部の開口を塞ぐように、互いに対面した状態で配置される。アウタプレート12は、内燃機関から排気される排気ガスをケース部材10内に導入するインレットパイプ30が挿通される貫通孔を有する。アウタプレート13は、ケース部材10内を通過した排気ガスをケース部材10外へ排出するアウトレットパイプ40が挿通される貫通孔を有する。
【0017】
セパレータ20は、ケース部材10の内部に配置され、ケース部材10の内部の消音空間を第1空間101及び第2空間102に仕切る略楕円形状の板状部材である。セパレータ20は、2つのアウタプレート12,13の間に位置し、2つのアウタプレート12,13と略平行に配置される。セパレータ20は、インレットパイプ30が挿通される貫通孔、アウトレットパイプ40が挿通される貫通孔、及び、当該セパレータ20を貫通する
図1に示す貫通孔201を有する。
【0018】
これにより、インレットパイプ30を介して流入した排気ガスが第2空間102に入り、貫通孔201を通過して第1空間101に入る。その後、排気ガスは、アウトレットパイプ40を介してケース部材10内から排出される。本実施形態では、ケース部材10、インレットパイプ30、及び、アウトレットパイプ40が、排気ガスが通過する排気流路を構成する。
【0019】
貯水部50は、ケース部材10の下方に位置し、排気ガス中の水分が凝縮することでマフラ100内、すなわちインレットパイプ30及びケース部材10内に溜まった凝縮水を貯留する。本実施形態では、貯水部50は、一面が開口した略直方体の箱状の部材であり、開口側がアウタシェル11の下方側の面であるアウタシェル11の底面の一部に溶接等によって固定される。なお、貯水部50は、アウタシェル11の底面の湾曲に沿って、開口側の縁が湾曲を有するように形成されている。本実施形態では、貯水部50は、ケース部材10における第1空間101の下方、すなわち、インレットパイプ30の下方に位置する。
【0020】
貯水部50によって覆われるアウタシェル11の底面には、排気流路に含まれる第1空間101と、貯水部50により形成される貯水空間501と、を連通させる連通部110が設けられる。連通部110は、インレットパイプ30が構成する排気流路と繋がる後述する分岐部60の第1開口61よりも下流側において、第1空間101と貯水空間501とを連通させる。本実施形態では、連通部110は、アウタシェル11を貫通する貫通孔である。
【0021】
分岐部60は、インレットパイプ30により構成される排気流路から分岐する分岐流路を構成する円管状の部材である。分岐部60は、インレットパイプ30が構成する排気流路と、貯水空間501と、を繋ぐ。具体的には、分岐部60は、第1空間101内に配置され、インレットパイプ30の下方側の面から下方に延び出し、連通部110と隙間を有するように当該連通部110を挿通して貯水部50の貯水空間501内まで延びる。すなわち、分岐部60における下流側の端部は、連通部110を介してケース部材10外に延び出し、貯水部50内に挿入された状態にある。分岐部60は、第1開口61と、第2開口62と、を有する。第1開口61は、分岐部60における上流側の端部、すなわちインレットパイプ30との接続部分に設けられ、インレットパイプ30により構成される排気流路と分岐流路の上流とを連通する。第2開口62は、分岐部60における下流側の端部に設けられ、第1開口61から離れて位置し、貯水空間501内における凝縮水が溜まり得る位置に配置される。第2開口62は、分岐流路の下流と貯水空間501とを連通する。
【0022】
本実施形態では、分岐部60の下流側の端部には、円盤状の形状を有し、中空状であるヘッド70が設けられる。ヘッド70は、当該ヘッド70の円形状の下面71が貯水部50の底面51と近接して対向するように、貯水部50内に配置される。
図3に示すように、第2開口62は、複数の排気口621により構成され、ヘッド70の下面71に設けられる。複数の排気口621は、ヘッド70の下面71を貫通する円形状の複数の貫通孔である。
【0023】
これにより、
図1及び
図2に示すように、インレットパイプ30を介して流入した排気ガスの一部が第1開口61を介して分岐部60に流れ込む。そして、
図4に示すように、分岐流路を通過した排気ガスは、第2開口62である複数の排気口621から貯水部50の貯水空間501内に排出される。貯水部50に溜まった凝縮水の界面がヘッド70よりも高い位置にある場合、すなわちヘッド70が凝縮水内に潜り込んでいる場合には、排気ガスが凝縮水内に直接吹き込まれる。
【0024】
上述したように貯水空間501内に排出される排気ガスの熱によって、貯水部50に溜まった凝縮水を蒸発させる。凝縮水が蒸発してできる蒸発水は、貯水部50の上方に位置する連通部110を通過して第1空間101に入る。その後、蒸発水は、アウトレットパイプ40を介してケース部材10内から排出される。このように、マフラ100内に溜まった凝縮水が排出される。
【0025】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態では、マフラ100内に溜まった凝縮水が貯水部50に貯留され、分岐部60に流れ込んだ排気ガスが貯水部50に流れ出す。これにより、インレットパイプ30等における排気流路の凝縮水による閉塞を抑制することができ、かつ、貯水部50に溜まった凝縮水を分岐部60から流れ出る排気ガスの熱を利用して蒸発させることができる。また、排気ガスが排出される分岐部60の第2開口62が貯水空間501内における凝縮水が溜まり得る位置に配置される。具体的には、ヘッド70の下面71と貯水部50底面51とが近接して対向するように、ヘッド70が貯水部50内に配置される。このため、当該第2開口62が凝縮水と接触又は近接しやすい。これにより、分岐部60の分岐流路を通過する排気ガスの熱が凝縮水に伝わりやすくなるため、凝縮水の蒸発効果が高まり、マフラ100における凝縮水の排水性を向上させることができる。したがって、マフラ100内に溜まった凝縮水を効率的に排出することができる。
【0026】
(1b)本実施形態では、分岐部60は、円管状の部材である。このため、インレットパイプ30に円管状の部材を繋げることによって、容易にインレットパイプ30が構成する排気流路から分岐する分岐流路を設けることができる。また、分岐部60の長さを調整することによって、貯水部50の貯水空間501内における第2開口62の位置が調整しやすい。
【0027】
(1c)本実施形態では、分岐部60の第1開口61は、インレットパイプ30との接続部分に設けられる。このため、マフラ100の排気流路の上流でマフラ100内に溜まった凝縮水が排出されるため、マフラ100の排気流路の下流まで凝縮水が流れ込むことを抑制することができる。
【0028】
(1d)本実施形態では、分岐部60の第2開口62が複数の排気口621により構成される。このため、分岐流路に流れ込んだ排気ガスと凝縮水との接触面積を大きく持ちつつ、同一の接触面積を有する場合にも第2開口が1つの排気口により構成される場合と比較して1つ1つの排気口621を小さくすることができる。その結果、第2開口62から排出される排気ガスの流量を当該分岐流路に流れ込んだ排気ガスの流量と同様に維持して凝縮水の蒸発を効率よく行いつつ、複数の排気口621によって圧力を分散させて第2開口62から排気ガスが排出されることにより生じ得る異音を低減することができる。
【0029】
(1e)本実施形態では、円盤状の形状を有するヘッド70の下面71に複数の排気口621が設けられる。このため、下面71における広い範囲において、凝縮水内に排気ガスを吹き込む、又は、凝縮水に対してより近い位置から排気ガスを吹き付けることができる。その結果、凝縮水の蒸発効果を高めることができる。また、貯水空間501におけるより低い位置に複数の排気口621が位置するため、貯水部50内に貯留される凝縮水の量が少ない場合にも、凝縮水の蒸発効果が得られやすい。
【0030】
なお、第1実施形態では、マフラ100が排気装置の一例に相当し、ケース部材10、インレットパイプ30及びアウトレットパイプ40が排気部材の一例に相当する。
【0031】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図5及び
図6に示すように、第2実施形態では、排気ガスが通過する排気流路を構成する排気部材である排気管10a内に溜まった凝縮水を排出する排気装置100aについて説明する。
【0032】
図5及び
図6に示す排気装置100aは、排気管10aと、貯水部50aと、分岐部60aと、を備える。
排気管10aは、円筒状の部材である。排気管10aは、絞り部20aと、上流部30aと、下流部40aと、を有する。上流部30aは、排気管10aの上流側の排気流路を構成し、下流部40aは、上流部30aよりも下流側の排気管10aの排気流路を構成する。絞り部20aは、排気管10aにおける上流部30aと下流部40aとの間に設けられる。絞り部20aは、排気管10aの排気流路の流路断面積を縮小する。本実施形態では、絞り部20aは、排気管10aにおける、排気管10aの一部が周方向において排気流路の内側に向かって凹んだ部分である。すなわち、絞り部20aは、排気管10aにおける、上流部30aの縮径する下流側端部と、下流部40aの縮径する上流側端部と、が繋がることによって形成される部分である。絞り部20aは、排気ガスの流れ方向における後述する分岐部60aと連通部110aとの間に位置する。
【0033】
貯水部50aは、排気管10aの下方に位置し、排気管10a内に溜まった凝縮水を貯留する。貯水部50aは、一面が開口した略直方体の箱状の部材であり、開口側が排気管10aの下方側の面の一部に溶接等によって固定される。本実施形態では、貯水部50は、絞り部20a、上流部30aの一部及び下流部40aの一部を覆うように、排気管10aの下方に位置する。なお、貯水部50aは、上流部30a及び下流部40aの下方側の面の湾曲に沿って、開口側の縁が湾曲を有するように形成されている。
【0034】
貯水部50aによって覆われる下流部40aの下流側の面には、下流部40aが構成する排気流路と、貯水空間501aと、を連通させる連通部110aが設けられる。連通部110aは、上流部30aと繋がる後述する分岐部60aの第1開口61よりも下流側において、排気流路と貯水空間501aとを連通させる。連通部110aは、下流部40aを貫通する貫通孔である。
【0035】
分岐部60aは、上流部30aにより構成される排気流路から分岐する分岐流路を構成する円管状の部材である。分岐部60aは、上流部30aが構成する排気流路と、貯水空間501aと、を繋ぐ。具体的には、分岐部60aは、上流部30aの下方側の面から下方に延び出し、貯水部50aの貯水空間501内に配置される。分岐部60aは、第1開口61aと、第2開口62と、を有する。第1開口61aは、分岐部60aにおける上流側の端部、すなわち上流部30aとの接続部分に設けられ、上流部30aにより構成される排気流路と分岐流路の上流とを連通する。第2開口62は、分岐部60aにおける下流側の端部に設けられ、第1開口61aから離れて位置し、貯水空間501a内における凝縮水が溜まり得る位置に配置される。第2開口62は、分岐流路の下流と貯水空間501aとを連通する。
【0036】
第2実施形態では、上述した第1実施形態と同様に、分岐部60aの下流側の端部には、ヘッド70が設けられる。ヘッド70は、当該ヘッド70の円形状の下面71が貯水部50aの底面51aと近接して対向するように、貯水部50a内に配置される。ヘッド70の構成は、第1実施形態の構成と同様であるため、同一符号を用いて説明を省略する。
【0037】
これにより、上流部30aを介して流入した排気ガスの一部が第1開口61aを介して分岐部60aに流れ込む。そして、分岐流路を通過した排気ガスは、第2開口62である複数の排気口621から貯水部50aの貯水空間501a内に排出される。
【0038】
上述したように貯水空間501a内に排出される排気ガスの熱によって、貯水部50aに溜まった凝縮水を蒸発させる。蒸発水は、貯水部50aの上方に位置する連通部110aを通過して下流部40aに入り、当該下流部40aを介して排気管10a内から排出される。このように、排気装置100a内に溜まった凝縮水が排出される。
【0039】
[2-2.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の(1d)及び(1e)の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0040】
(2a)本実施形態では、排気管10a内に溜まった凝縮水が貯水部50aに貯留され、分岐部60aに流れ込んだ排気ガスが貯水部50aに流れ出す。これにより、排気管10aの排気流路の凝縮水による閉塞を抑制することができ、かつ、貯水部50aに溜まった凝縮水を分岐部60aから流れ出る排気ガスの熱を利用して蒸発させることができる。また、排気ガスが排出される分岐部60aの第2開口62が貯水空間501a内における凝縮水が溜まり得る位置に配置される。具体的には、ヘッド70の下面71と貯水部50a底面51aとが近接して対向するように、ヘッド70が貯水部50a内に配置される。このため、当該第2開口62が凝縮水と接触又は近接しやすい。これにより、分岐部60aの分岐流路を通過する排気ガスの熱が凝縮水に伝わりやすくなるため、凝縮水の蒸発効果が高まり、排気装置100aにおける凝縮水の排水性を向上させることができる。したがって、排気装置100a内に溜まった凝縮水を効率的に排出することができる。
【0041】
(2b)本実施形態では、分岐部60aは、円管状の部材である。このため、上流部30aに円管状の部材を繋げることによって、容易に上流部30aが構成する排気流路から分岐する分岐流路を設けることができる。また、分岐部60aの長さを調整することによって、貯水部50aの貯水空間501a内における第2開口62の位置が調整しやすい。
【0042】
(2c)本実施形態では、排気管10aに絞り部20aが設けられ、絞り部20aは、分岐部60aの下流、かつ、連通部110aの上流に位置する。これにより、絞り部20aよりも上流側の上流部30aが構成する排気流路内の圧力が高まり、当該排気流路から分岐流路に排気ガスが流れ込みやすくなる。このため、分岐流路から排出される排気ガスの熱を利用した凝縮水の蒸発効果を高め、排気装置100aにおける凝縮水の排水性を向上させることができる。
【0043】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0044】
(3a)上記第1実施形態では、一面が開口した箱状の貯水部50がケース部材10に溶接により固定される構成を例示した。しかし、貯水部の構成は、これに限定されるものではない。例えば、貯水部は、ケース部材におけるアウタシェルの底面の一部が下方に凹むことによって形成されるように、ケース部材と一体的に構成されていてもよい。また、例えば、
図7に示すマフラ100b及び
図8に示すマフラ100cのように、貯水部50b,50cがケース部材10b,10cから離れて設けられてもよい。
【0045】
例えば、
図7示すように、マフラ100bでは、ケース部材10b及び貯水部50bは、第1空間101と貯水空間501bとを連通する連通流路を形成する連通部110bによって、距離が離れた状態で繋がる。連通部110bは、ケース部材10bと貯水部50bとを接続する筒状の部材である。マフラ100bの構成では、分岐部60は、インレットパイプ30の下方側の面から下方に延び出し、連通部110bと隙間を有するように当該連通部110bを挿通して貯水部50bの貯水空間501b内まで延びる。すなわち、分岐部60における下流側の端部は、連通部110bを介してケース部材10b外に延び出し、貯水部50b内に挿入された状態にある。
【0046】
これにより、インレットパイプ30を介して流入した排気ガスの一部が第1開口61を介して分岐部60に流れ込み、分岐流路を通過した排気ガスが第2開口62から貯水部50bの貯水空間501b内に排出される。そして、貯水空間501b内に排出された排気ガスの熱によって、貯水部50bに溜まった凝縮水が蒸発する。蒸発水は、貯水部50bの上方に位置する連通部110bを通過して第1空間101に入り、その後、アウトレットパイプ40を介してケース部材10b外へ排出される。このように、マフラ100b内に溜まった凝縮水が排出されてもよい。
【0047】
また、例えば、
図8示すように、マフラ100cでは、ケース部材10c及び貯水部50cは、第1空間101と貯水空間501cとを連通する連通流路を形成する連通部110cによって、距離が離れた状態で繋がる。連通部110cは、ケース部材10cと貯水部50cとを接続する筒状の部材である。マフラ100cの構成では、分岐部60は、インレットパイプ30の下方側の面から下方に延び出し、ケース部材10cを貫通し、分岐部60の下流側の端部に設けられるヘッド70が貯水部50cに貫通した状態にある。そして、連通部110cは、分岐部60が貫通する位置とは異なる位置、本実施形態では、分岐部60よりも下流側の位置において、第1空間101と貯水空間501cとを連通する。
【0048】
これにより、インレットパイプ30を介して流入した排気ガスの一部が第1開口61を介して分岐部60に流れ込み、分岐流路を通過した排気ガスが第2開口62から貯水部50cの貯水空間501c内に排出される。そして、貯水空間501c内に排出された排気ガスの熱によって、貯水部50cに溜まった凝縮水が蒸発する。蒸発水は、貯水部50cの上方に位置する連通部110cを通過して第1空間101に入り、その後、アウトレットパイプ40を介してケース部材10c外へ排出される。このように、マフラ100c内に溜まった凝縮水が排出されてもよい。
【0049】
なお、上記第2実施形態の構成においても、上述したマフラ100b,100cと同様に、貯水部が排気管から離れて設けられてもよい。
【0050】
(3b)上記各実施形態では、貯水部50,50a~50cは、略直方体の箱状の部材であったが、貯水部の形状はこれに限定されるものではない。例えば、貯水部の底面は、アウタシェルの底面又は排気管の下方側の面に沿って湾曲していてもよい。また、例えば、貯水部は、ドーム状を有していてもよい。
【0051】
(3c)上記各実施形態では、分岐部60,60aの下流側の端部に円盤状のヘッド70が設けられる構成を例示した。しかし、例えば、分岐部の下流側の端部には、ヘッドが設けられていなくてもよい。
【0052】
例えば、
図9に示すように、下流側の端部が閉塞した状態にある管状の部材である分岐部60dにおける下流側の端部寄りの側面63dに、複数の排気口621により構成される第2開口62dが設けられていてもよい。
【0053】
また、例えば、
図10に示すように、下流側の端部が閉塞した状態にある管状の部材である分岐部60eにおける底面64eに、複数の排気口621により構成される第2開口62eが設けられていてもよい。
【0054】
(3d)上記各実施形態では、分岐部60,60aの下流側の端部に円盤状のヘッド70が設けられ、ヘッド70の下面71に複数の排気口621が設けられる構成を例示した。しかし、ヘッドの形状及びヘッドにおける複数の排気口が設けられる面はこれに限定されるものではない。例えば、ヘッドは、四角形、六角形などの多角形状の盤状の形状であってもよい。また、例えば、ヘッドの上面及び側面の少なくとも一方にも複数の排気口が設けられていてもよい。
【0055】
(3e)上記各実施形態では、第2開口62,62d,62eを構成する複数の排気口621が円形状の貫通孔である構成を例示したが、複数の排気口の形状はこれに限定されるものではない。例えば、複数の排気口は、楕円形状、四角形状などの形状を有してもよい。また、第2開口は、複数の排気口によって構成されていなくてもよく、例えば、第2開口は、1つの排気口であってもよい。
【0056】
(3f)上記各実施形態では、分岐部60が円管状の部材であったが、分岐部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、分岐部は、円管状以外の管状であってもよい。また、例えば、分岐部は、管状の部材を用いない構成において、排気流路から分岐し、貯水空間内まで延びる分岐流路が形成されるような構成であれば、特に構造は限定されるものではない。
【0057】
(3g)上記第1実施形態では、分岐部60の第1開口61がインレットパイプ30に設けられていたが、第1開口が設けられる場所はこれに限定されるものではない。例えば、第1開口は、アウトレットパイプに設けられるように、分岐部がアウトレットパイプから延び出すようにアウトレットパイプと連通して接続されていてもよい。
【0058】
(3h)上記第2上記実施形態では、絞り部20aが排気管10aの一部が周方向において排気流路の内側に向かって凹むように構成されていたが、絞り部の構成はこれに限定されるものではない。例えば、絞り部は、円筒状の排気管10aの内部に配置され、複数の貫通孔を有する円形状の板状部材であってもよい。また、例えば、絞り部は、円筒状の排気管の内壁から当該排気管の中心軸に向かって延び出す壁状の部分であってもよい。また、例えば、絞り部は、排気管に固定されるバルブであって、当該バルブの開弁又は閉弁によって、排気管内の圧力を変更可能であってもよい。
【0059】
(3i)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
内燃機関からの排気ガスが流入する排気装置であって、
排気ガスが通過する排気流路を構成する排気部材と、
前記排気部材の下方に位置し、前記排気部材内に溜まった凝縮水を貯留する貯水部と、
前記排気流路から分岐する分岐流路を構成し、前記排気流路と、前記貯水部により形成される貯水空間と、を繋ぐ分岐部と、
前記分岐部の前記排気流路と繋がる第1開口よりも下流側において、前記排気流路と、前記貯水空間と、を連通させる連通部と、
を備え、
前記分岐部は、前記第1開口から離れて位置する当該分岐部の第2開口が前記貯水空間内における前記凝縮水が溜まり得る位置に配置されるように、前記貯水空間内に延び出す、排気装置。
【0060】
[項目2]
項目1に記載の排気装置であって、
前記分岐部は、前記排気部材から前記貯水空間内まで延びる管である、排気装置。
【0061】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の排気装置であって、
当該排気装置は、マフラであって、
前記第1開口は、前記排気部材に含まれるインレットパイプに設けられる、排気装置。
【0062】
[項目4]
項目1又は項目2に記載の排気装置であって、
前記排気部材に設けられ、前記排気流路の流路断面積を縮小する絞り部を更に備え、
前記絞り部は、排気ガスの流れ方向における前記分岐部と前記連通部との間に位置する、排気装置。
【0063】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか1項に記載の排気装置であって、
前記第2開口は、複数の排気口により構成される、排気装置。
【0064】
[項目6]
項目5に記載の排気装置であって、
前記複数の排気口は、盤状の形状を有するヘッドの下面に設けられる、排気装置。
【符号の説明】
【0065】
100,100b,100c…マフラ、10,10b,10c…ケース部材、10a…排気管、11…アウタシェル、12,13…アウタプレート、20…セパレータ、20a…絞り部、30…インレットパイプ、30a…上流部、40…アウトレットパイプ、40a…下流部、50,50a~50c…貯水部、51,51a…底面、60,60a,60d,60e…分岐部、61,61a…第1開口、62,62d,62e…第2開口、63d…側面、64e…底面、70…ヘッド、71…下面、100a…排気装置、101…第1空間、102…第2空間、110,110a~110c…連通部、201…貫通孔、501,501a~501c…貯水空間、621…排気口。