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特開2023-177113トンネルの出来形管理方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177113
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】トンネルの出来形管理方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20231206BHJP
   G01C 7/06 20060101ALI20231206BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01C15/00 104A
G01C7/06
G01B11/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089838
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA52
2F065AA53
2F065BB08
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF11
2F065FF61
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL62
2F065MM07
2F065MM16
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】設備コストの低減、省人化、作業効率の向上を図り、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る。
【解決手段】トンネル2の床面2Cにトンネル2の長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール4上に移動可能に台車装置40を配置し、トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナー14を台車装置40に取り付け、二次覆工がなされたのち、台車装置40をレール4上で移動させ、3次元レーザースキャナー14による3次元形状の計測を行ない、3次元レーザースキャナー14で計測された3次元形状データと、トンネル2の設計データとに基づいてトンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール上に移動可能に台車装置を配置し、
前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーを前記台車装置に取り付け、
二次覆工がなされたのち、前記台車装置を前記レール上で移動させ、前記3次元レーザースキャナーによる前記3次元形状の計測を行ない、
前記3次元レーザースキャナーで計測された前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成する、
ことを特徴とするトンネルの出来形管理方法。
【請求項2】
前記管理情報は、前記3次元形状データに基づく前記トンネルの断面図と、前記設計データに基づく前記トンネルの断面図とを比較した画像情報を含む、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネルの出来形管理方法。
【請求項3】
前記トンネルの所定箇所に基準ターゲットを配置し、
前記3次元レーザースキャナーは前記基準ターゲットを計測することで前記トンネルの基準点を取得し、
前記管理情報の生成に先立って、前記トンネルの3次元形状データは、前記3次元レーザースキャナーの機械中心を原点とする機械座標系から前記基準点を原点とする前記トンネルの現地座標系に変換される変換処理がなされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のトンネルの出来形管理方法。
【請求項4】
前記レールは、互いに平行して延在する一対のレール体で構成され、
前記台車装置は、前記一対のレール体の一方に移動可能に配置された第1台車装置と、前記一対のレール体の他方に移動可能に配置された第2台車装置とを備え、
前記3次元レーザースキャナーは、前記第1台車装置に取り付けられた第1台車用3次元レーザースキャナーと、前記第2台車装置に取り付けられた第2台車用3次元レーザースキャナーとを備え、
前記3次元形状データは、前記第1台車用3次元レーザースキャナーおよび前記第2台車用3次元レーザースキャナーで計測されたそれぞれの3次元形状データが合成されることで生成される、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネルの出来形管理方法。
【請求項5】
掘削されたトンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール上に移動可能に配置された台車装置と、
前記台車装置に取り付けられ、二次覆工がなされたのち、前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーと、
前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成する情報処理装置と、
を備えることを特徴とするトンネルの出来形管理装置。
【請求項6】
前記台車装置は、前記レールの延在方向に沿った長さを有し、
前記3次元レーザースキャナーは、切羽面と反対側に位置する前記台車装置の長さ方向の端部に設けられている、
ことを特徴とする請求項5記載のトンネルの出来形管理装置。
【請求項7】
前記3次元レーザースキャナーは複数個設けられ、
前記各3次元レーザースキャナーは、前記トンネルの周壁面をその周方向に沿って分割して計測するように前記台車装置に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項5または6記載のトンネルの出来形管理装置。
【請求項8】
前記台車装置は、前記台車装置を前記レールに沿って自動的に移動させる駆動装置を備えている、
ことを特徴とする請求項5または6記載のトンネルの出来形管理装置。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記トンネルの半径方向において前記スライドセントルの型枠部材の内側に配置されている、
ことを特徴とする請求項5または6記載のトンネルの出来形管理装置。
【請求項10】
前記レールは、互いに平行して延在する一対のレール体で構成され、
前記台車装置は、前記一対のレール体の一方に移動可能に配置された第1台車装置と、前記一対のレール体の他方に移動可能に配置された第2台車装置とを備え、
前記3次元レーザースキャナーは、前記第1台車装置に取り付けられた第1台車用3次元レーザースキャナーと、前記第2台車装置に取り付けられた第2台車用3次元レーザースキャナーとを備え、
前記情報処理装置は、前記第1台車用3次元レーザースキャナーおよび前記第2台車用3次元レーザースキャナーで計測されたそれぞれの3次元形状データを合成することによって前記3次元形状データを生成する、
ことを特徴とする請求項5または6記載のトンネルの出来形管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳地などにおけるトンネルの出来形管理方法および装置に関する。
【0002】
従来から山岳地の岩盤を掘削して車両や鉄道が通る空間を構築するためにトンネル工事が行われている。
この場合、3次元レーザースキャナーを用いて掘削後あるいは一次覆工後のトンネルの3次元形状を計測し、その計測結果からトンネルの断面形状を演算し、計測された断面形状と設計された断面形状とを比較してトンネルの出来形を評価し、その評価結果に基づいて掘削作業の修正を行なうなどしてトンネルの施工を管理することが開示されている(特許文献1参照)。
また、一次覆工後に掘削した空間内にアーチ状のコンクリート(二次覆工)を構築し、3次元レーザースキャナーによりトンネルの3次元形状を計測し、その計測結果からトンネルの出来形を評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5631512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなトンネルの3次元形状の計測に際しては、作業員が手作業で3次元レーザースキャナーを架台と共に運搬してトンネルの坑内に配置したり、あるいは、3次元レーザースキャナーを搭載した車両(自動車)を作業員が手作業で操縦して移動させ配置したりしていることから、架台や車両といった設備が必要となり、それらの設備を取り扱う手間がかかる不利がある。
また、作業員が3次元レーザースキャナーを手作業で配置するために、トンネル坑内の現場で長時間にわたって作業する必要があるため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたもので、本発明の目的は、設備コストの低減を図ると共に、省人化および作業効率の向上を図り、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利なトンネルの出来形管理方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、トンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール上に移動可能に台車装置を配置し、前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーを前記台車装置に取り付け、二次覆工がなされたのち、前記台車装置を前記レール上で移動させ、前記3次元レーザースキャナーによる前記3次元形状の計測を行ない、前記3次元レーザースキャナーで計測された前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記管理情報は、前記3次元形状データに基づく前記トンネルの断面図と、前記設計データに基づく前記トンネルの断面図とを比較した画像情報を含むことを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記トンネルの所定箇所に基準ターゲットを配置し、前記3次元レーザースキャナーは前記基準ターゲットを計測することで前記トンネルの基準点を取得し、前記管理情報の生成に先立って、前記トンネルの3次元形状データは、前記3次元レーザースキャナーの機械中心を原点とする機械座標系から前記基準点を原点とする前記トンネルの現地座標系に変換される変換処理がなされることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記レールは、互いに平行して延在する一対のレール体で構成され、前記台車装置は、前記一対のレール体の一方に移動可能に配置された第1台車装置と、前記一対のレール体の他方に移動可能に配置された第2台車装置とを備え、前記3次元レーザースキャナーは、前記第1台車装置に取り付けられた第1台車用3次元レーザースキャナーと、前記第2台車装置に取り付けられた第2台車用3次元レーザースキャナーとを備え、前記3次元形状データは、前記第1台車用3次元レーザースキャナーおよび前記第2台車用3次元レーザースキャナーで計測されたそれぞれの3次元形状データが合成されることで生成されることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、掘削されたトンネルの床面に前記トンネルの長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール上に移動可能に配置された台車装置と、前記台車装置に取り付けられ、二次覆工がなされたのち、前記トンネルの3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナーと、前記3次元形状データと、前記トンネルの設計データとに基づいて前記トンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成する情報処理装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記台車装置は、前記レールの延在方向に沿った長さを有し、前記3次元レーザースキャナーは、切羽面と反対側に位置する前記台車装置の長さ方向の端部に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記3次元レーザースキャナーは複数個設けられ、前記各3次元レーザースキャナーは、前記トンネルの周壁面をその周方向に沿って分割して計測するように前記台車装置に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記台車装置は、前記台車装置を前記レールに沿って自動的に移動させる駆動装置を備えていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記情報処理装置は、前記トンネルの半径方向において前記スライドセントルの型枠部材の内側に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記レールは、互いに平行して延在する一対のレール体で構成され、前記台車装置は、前記一対のレール体の一方に移動可能に配置された第1台車装置と、前記一対のレール体の他方に移動可能に配置された第2台車装置とを備え、前記3次元レーザースキャナーは、前記第1台車装置に取り付けられた第1台車用3次元レーザースキャナーと、前記第2台車装置に取り付けられた第2台車用3次元レーザースキャナーとを備え、前記情報処理装置は、前記第1台車用3次元レーザースキャナーおよび前記第2台車用3次元レーザースキャナーで計測されたそれぞれの3次元形状データを合成することによって前記3次元形状データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、二次覆工を行なうために使用される既存の移動式型枠であるスライドセントル用のレール上を移動する台車装置を設け、この台車装置に3次元レーザースキャナーを取り付けるため、従来のように架台や車両といった大掛かりな設備を設ける必要がなく、また、3次元レーザースキャナーと設備の配置作業やそれらの撤去作業が不要となるため、設備コストの低減、省人化、作業効率の向上を図る上で有利となる。
また、3次元レーザースキャナーが台車装置に搭載されているため、3次元レーザースキャナーと設備の配置作業やそれらの撤去作業のために作業員がトンネル坑内の現場で長時間にわたって作業する必要がないため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、管理情報は、3次元形状データに基づくトンネルの断面図と、設計データに基づくトンネルの断面図とを比較した画像情報を含むものとしたので、それら2つの断面図を比較することでトンネルの施工の品質管理を的確に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、管理情報の生成に先立って、トンネルの3次元形状データは、3次元レーザースキャナーの機械中心を原点とする機械座標系から基準ターゲットに基づいて取得された基準点を原点とするトンネルの現地座標系に変換される変換処理がなされるようにしたので、基準ターゲットを配置するといった簡単な作業でトンネルの3次元形状データを的確に取得する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、第1、第2台車用3次元レーザースキャナーによってトンネルの3次元形状データを計測できるため、第1、第2台車用3次元レーザースキャナーのそれぞれによってトンネルの周壁面を分割して計測することができる。そのため、トンネルの周壁面の全周にわたって3次元形状データの計測をきめ細かく正確に行なう上で有利となる。また、第1、第2台車用3次元レーザースキャナーによってトンネルの3次元形状データを計測できるため、トンネルの周壁面の3次元形状データの計測に要する計測時間の短縮化を図れ、計測動作の効率化を図る上で有利となる。また、第1、第2台車装置を別々のレール体上で走行させるので、第1、第2台車装置のコンパクト化、軽量化を図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、3次元レーザースキャナーは、切羽面と反対側に位置する台車装置の長さ方向の端部に設けられているので、3次元レーザースキャナーによるトンネルの3次元形状の計測を的確に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、各3次元レーザースキャナーがトンネルの周壁面をその周方向に沿って分割して計測するので、周壁面の全周にわたって3次元形状データの計測をきめ細かく正確に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、駆動装置により台車装置をレールに沿って自動的に移動させることができるので、計測作業の効率化を図る上で、また、作業者の負担を軽減する上でより有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、トンネルの壁面の一部が落下しても、情報処理装置を取り扱う作業者の作業員は、型枠部材で保護されるため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係るトンネルの出来形管理方法が適用されるトンネルの正面断面図であり、スライドセントルを用いて二次覆工のコンクリートが打設された状態を示す。
図2】第1の実施の形態に係るトンネルの出来形管理方法が適用されるトンネルの正面断面図であり、台車装置に取り付けられた3次元レーザースキャナーによってトンネルの3次元形状を測定する状態を示す。
図3図2の側面断面図である。
図4】第1の実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置の構成を示すブロック図である。
図5】トンネルの基準断面図と実測断面図とを重ね合わせて表示した管理情報の一例を示す説明図である。
図6】第1の実施の形態に係るトンネルの出来形管理方法のフローチャートである。
図7】第2の実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置の正面図である。
図8図7の側面図である。
図9】第2の実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置と共に、出来形管理方法について図面を参照して説明する。
まず、山岳地における一般的なトンネルの施工について説明する。
山岳地においては、発破工法や機械工法などの従来公知のさまざまな工法によってトンネルの掘削が行われる。
例えば、発破工法の場合には、発破作業終了後、現場作業員によりバックホウや削岩機を用いた掘削作業が行われ、発破作業および掘削作業によって発生した掘削ずりはホイールローダやダンプトラックなどの重機によりトンネルの坑外に搬出される。
掘削ずりの搬出後、鋼製支保工の建込みがなされ、ついで、切羽面近傍のトンネルの周壁面およびトンネルの床面に対してコンクリート吹き付け機によりコンクリートの吹付けがなされ、コンクリートによる一次覆工がなされる。
次に、ロックボルト挿通孔が周壁面に削孔されたのち、ロックボルト挿通孔にロックボルトが打設され地山の安定化が図られる。
また、トンネルが所定の長さ分掘削される毎に、トンネルの床面にレールが敷設され、移動式型枠であるスライドセントルをレール上で移動させ、周壁面に対向してスライドセントルを配置し、周壁面とスライドセントルとの間にコンクリートを打設することで覆工作業が行われ、コンクリートによる二次覆工がなされる。
このようなトンネルの掘削作業と覆工作業が繰り返してなされることでトンネルが施工されていく。
以下では、トンネルの掘削を発破工法を用いて行なう場合について説明するが、トンネルの掘削を機械工法などの発破工法以外の工法によって行なう場合についても本発明は無論適用可能である。
【0009】
トンネルの出来形管理は、トンネルの掘削作業後、一次覆工後および二次覆工後においてそれぞれトンネルの3次元形状を計測し、計測したトンネルの3次元形状に基づいてトンネルの出来形を評価することによってなされる。
本実施の形態では、掘削作業後、一次覆工後のトンネルの出来形管理については、従来技術と同様に、人手を用いて3次元レーザースキャナーを運搬設置してトンネルの3次元形状を計測することでなされる。一方、二次覆工後のトンネルの出来形管理については、本発明が適用され、台車装置に取り付けた3次元レーザースキャナーを利用してトンネルの3次元形状を計測することでなされる。
【0010】
本実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置10(以下単に出来形管理装置10という)について説明する前に、図1を参照してスライドセントル12について説明する。
スライドセントル12は、地山1に掘削されたトンネル2の床面2Cにトンネル2の長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール4上に移動可能に配置されるものであり、スライドセントル12は、レール4の延在方向に沿った長さと、レール4の延在方向と直交する幅とを有している。
なお、レール4は、トンネル2の長手方向と直交する幅方向に間隔をおいて互いに平行して床面2C上に敷設された一対のレール体4A、4Bを含んで構成されている。
スライドセントル12は、台車部18と、型枠部材20と、ジャッキ22とを含んで構成されている。
台車部18は、レール4上を走行する複数の車輪1802と、正面から見て門型を呈し、複数の車輪1802を支持する台車本体1804とを備えている。
台車本体1804は、正面から見て左右両側に位置する一対の側面部1804Aと、一対の側部の上端を接続する上面部1804Bとを備えている。
型枠部材20は、トンネル2の天端に対向する天端部2002と、天端部2002の両側にヒンジ2006を介して連結されトンネル2の側部に対向する一対の側部2004とを備えている。
ジャッキ22は、台車本体1804の上面部1804Bと型枠部材20の天端部2002との間に設けられた複数の天端側ジャッキ2202と、台車本体1804の一対の側面部1804Aと型枠部材20の一対の側部2004との間に設けられた複数の側部側ジャッキ2204とを備えている。
各天端側ジャッキ2202および各側部側ジャッキ2204が伸縮することで型枠部材20の天端部2002および一対の側部2004はトンネル2の半径方向に拡縮する。
すなわち、各ジャッキ22が伸長することによって、型枠部材20とトンネル2の天端および両側の側部との間に二次覆工のコンクリート6を打設するアーチ状の打設空間が形成される。
また、打設空間に打設されたコンクリート6の硬化後、各ジャッキ22が収縮することで型枠部材20は打設されたコンクリート6から脱型される。
型枠部材20が脱型されることで、スライドセントル12はレール4上で移動可能となる。
なお、トンネル2の二次覆工を行なう際、スライドセントル12は、切羽面2Aから300m以上離間した箇所に配置されている。
【0011】
次に、本実施の形態に係る出来形管理装置10について説明する。
図2図3に示すように、出来形管理装置10は、レール4上で移動可能に設けられた台車装置40と、台車装置40に取り付けられた3次元レーザースキャナー14と、情報処理装置16(コンピュータ)とを含んで構成されている。なお、図3においては、図面の簡素化を図るため、スライドセントル12については、型枠部材20のみを示しており、台車部18およびジャッキ22の図示は省略している。
台車装置40は、レール4上を走行する複数の車輪42と、正面から見て門型を呈し、複数の車輪42を支持する台車フレーム44とを備えている。
台車装置40は、予めスライドセントル12を挟んで切羽面2Aと反対側(抗口側)に配置されており、少なくともスライドセントル12によるコンクリートの打設時(二次覆工時)には、打設作業に支障がないように、スライドセントル12から離間した退避位置に移動されている。
本発明の一実施の形態では、台車フレーム44は、正面から見て左右両側に位置する一対の側部フレーム46Aと、一対の側部の上端を接続する上部フレーム46Bとを備えている。
なお、台車装置40は、後述する3次元レーザースキャナー14が取り付けられた状態でレール4上を移動できればよく、台車装置40の構造は限定されるものではない。
【0012】
また、本発明の一実施の形態では、図3に示すように、台車装置40は、台車装置40をレール4に沿って自動的に移動させる駆動装置41を備えている。
また、駆動装置41に設けられた操作部を作業者が操作することにより台車装置40の移動方向や移動速度、移動量を制御するようにしてもよい。
このように駆動装置41を設けると、人力によって台車装置40を移動させる必要がなく作業者の負担が軽減される。
また、駆動装置41によって台車装置40を自動的に移動させる際にその移動速度を一定に制御するようにすれば、後述する3次元レーザースキャナー14を用いたトンネル2の3次元形状の計測作業を効率的に行なう上で有利となる。
なお、駆動装置41は、例えば、モータなどの駆動源から供給される回転駆動力によって車輪42を回転駆動させてもよく、あるいは、台車装置40に取り付けたケーブルをトンネル2の床面2Cなどに設置した巻上装置によって巻き上げることで台車装置40を牽引して移動させるものであってもよく、従来公知の様々な構成が採用可能である。
【0013】
図2図3に示すように、3次元レーザースキャナー14は、台車装置40に取り付けられ、本実施の形態では、3次元レーザースキャナー14は、第1、第2、第3の3次元レーザースキャナー14A、14B、14Cで構成されている。
各3次元レーザースキャナー14A、14B、14Cは、トンネル2の周壁面2Bをその周方向に沿って分割して計測するように台車装置40に取り付けられている。
第1の3次元レーザースキャナー14Aは、切羽面2Aと反対側に位置する上部フレーム46Bの端面で上部フレーム46Bの幅方向の中央箇所にブラケット15を介して着脱可能に取り付けられ、周壁面2Bの周方向のうち天端部分を計測するように設けられている。
第2、第3の3次元レーザースキャナー14B、14Cは、切羽面2Aと反対側に位置する一対の側部フレーム46Aの端面で側部フレーム46Aの長手方向(上下方向)の中央箇所にブラケット15を介して着脱可能に取り付けられ、周壁面2Bの周方向のうち天端部分を除く両側部を計測するように設けられている。
3次元レーザースキャナー14は、水平方向および垂直方向にレーザー光線を走査させ、レーザー光線が照射されたレーザー照射点からの反射光を受光することで、レーザー光線の水平角および鉛直角と、3次元レーザースキャナー14の中心点からレーザー照射点までの距離とからなるデータを取得し、それらデータから座標値(x,y,z)で表現される直交座標系のトンネル2の3次元形状データ(点群データともいう)を生成するものである。
本実施の形態では、3次元レーザースキャナー14は、トンネル2の周壁面2Bおよび床面2C(以下、周壁面2Bおよび床面2Cを含めて周壁面2Bという)の3次元形状データを計測するものである。
なお、3次元レーザースキャナー14は、トンネル2の周壁面2Bの全周にわたって3次元形状データを計測できればよく、3次元レーザースキャナー14の数は1個でもかまわない。
ただし、3次元レーザースキャナー14の計測範囲が限られている場合は、本実施の形態のように複数の3次元レーザースキャナー14のそれぞれによってトンネル2の周壁面2Bをその周方向に沿って分割して計測するようにすると、トンネル2の周壁面2Bの全周にわたって3次元形状データの計測をきめ細かく正確に行なう上で有利となる。
また、使用する3次元レーザースキャナー14の数は3個に限定されず、2個であっても4個以上であってもよいことは無論である。
3次元レーザースキャナー14は、自身の中心位置を機械座標の原点として備えており、3次元レーザースキャナー14で計測された3次元形状データは、後述する情報処理装置16によって、予め設定されたトンネル2の基準点を現地座標の原点とする3次元形状データに変換される。
本実施の形態では、例えば発破や重機による掘削作業などによって位置が変動しないトンネル2の箇所、例えば、スライドセントル12よりも後方に離間した箇所であるトンネル2の周壁面2Bや床面2Cに基準ターゲット24を配置しておく。
そして、3次元レーザースキャナー14は、基準ターゲット24を計測することで上記のトンネル2の基準点、言い換えると、トンネル2の現場座標の原点を取得する。
基準ターゲット24は、3次元レーザースキャナー14から照射されるレーザー光線を3次元レーザースキャナー14に向けて反射するように構成されている。
【0014】
図4に示すように、情報処理装置16は、何れも不図示のCPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、入出力インターフェースに加えて、入力装置26、出力装置28、外部記憶装置30を含んで構成されている。
ROMは所定の制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、後述する記憶部32Aを構成すると共に、座標変換部32B、断面図生成部32C、管理情報生成部32Dを実現するための制御プログラムを格納している。
入出力インターフェースは、3次元レーザースキャナー14、入力装置26、出力装置28とのインターフェースを取るものである。
入力装置26は、情報処理装置16を取り扱う作業員(操作者)による操作入力を受け付けるものであり、キーボード、マウスを備えている。
出力装置28は、情報を出力するものであり、ディスプレイ、プリンタを備えている。
外部記憶装置30は、情報を記憶するものであり、外付けのハードディス装置や外付けのSSD(ソリッドステートドライブ装置)、あるいは、メモリカードやUSBメモリなどの半導体記録媒体、あるいは、DVDなどの光ディスク記録媒体などを含む。
なお、情報処理装置16は、トンネル2の半径方向において型枠部材20の内側に配置されており、情報処理装置16と3次元レーザースキャナー14とは有線ケーブルまたは無線回線を介して情報通信可能に接続されている。
【0015】
記憶部32Aは、施工するトンネル2の設計データを記憶するものである。
設計データは、掘削作業後(一次覆工前)の段階のトンネル2の断面形状を示すトンネル2の基準断面図(以下設計断面図という)、一次覆工のコンクリートの厚さ、二次覆工のコンクリート6の厚さなどの施工するトンネル2の形状を規定する様々な設計データを含む。
【0016】
CPUがハードディスク装置の制御プログラムを実行することにより、座標変換部32B、断面図生成部32C、管理情報生成部32Dが実現される。
座標変換部32Bは、3次元レーザースキャナー14から供給される、3次元レーザースキャナー14の機械中心を原点とする機械座標の3次元形状データを、トンネル2の基準点を現地座標の原点とする3次元形状データに変換するものである。
【0017】
断面図生成部32Cは、座標変換部32Bから供給されるトンネル2の現地座標で表現される3次元形状データに基づいてトンネル2の断面形状を示すトンネル2の実測断面図を生成するものである。
トンネル2の実測断面図は、例えば、入力装置26から入力されたトンネル2の長手方向の位置に対応する位置に対応して生成される。
【0018】
管理情報生成部32Dは、断面図生成部32Cで生成された実測断面図と、設計データとに基づいて管理情報を生成するものである。
設計データは、掘削後のトンネルの設計断面を示す設計断面図、一次覆工のコンクリートの厚さ、二次覆工のコンクリート6の厚さなどを含んでいる。
管理情報生成部32Dは、設計断面図に対して、一次覆工のコンクリートの厚さを加味することで、一次覆工後におけるトンネル2の断面形状を示す第1基準断面図を生成することができる。
また、管理情報生成部32Dは、設計断面図に対して、一次覆工のコンクリートの厚さと二次覆工のコンクリートの厚さを加味することで、二次覆工後におけるトンネル2の断面形状を示す第2基準断面図を生成することができる。
すなわち、設計断面図、第1、第2基準断面図は、設計データに基づいて生成されるトンネルの断面図である。
【0019】
例えば、図5に示すように、管理情報MIは、実線で示す第2基準断面図34(以下、設計断面図および第1基準断面図も符号34として説明する)と、二点鎖線で示す実測断面図36とを比較した画像情報として生成される。
管理情報MIは、出力装置28であるディスプレイによって画像表示され、あるいは、プリンタによって印刷出力される。
画像表示あるいは印刷出力された管理情報MIを視認することで二次覆工後の掘削されたトンネル2の断面形状(輪郭)と、設計されたトンネル2の断面形状(輪郭)との差異やずれを確認することができる。
また、管理情報生成部32Dは、上記の画像情報とは別に、管理情報MIとして、第2基準断面図34で示されるトンネル2の断面形状と、実測断面図36で示されるトンネル2の断面形状とを比較して評価する様々な評価データを演算することが可能である。
なお、本実施の形態では、管理情報MIは、掘削作業後、一次覆工後および二次覆工後のトンネル2の出来形管理を行なうために用いることができればよく、本実施の形態で示された画像情報に限定されるものではなく、管理情報MIの構成や表示形態として従来公知の様々なものが採用可能である。
【0020】
詳細に説明すると、二次覆工が終了した段階において、トンネル2の断面形状を計測することで、以下のような評価データ(管理情報MI)に基づいてトンネル2の出来形を評価、確認することができる。
例えば、第2基準断面図34で示されるトンネル2の断面形状の中心軸と二次覆工後の実測断面図で示されるトンネル2の断面形状の中心軸とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算、評価することで、トンネル2の掘削が設計データ通り行われているか評価することができる。
また、第2基準断面図34で示されるトンネル2の断面形状と、実測断面図36で示される二次覆工後のトンネル2の断面形状とのずれ量とをトンネル2の周方向に沿って評価データ(管理情報MI)として演算、評価することで、トンネル2の掘削が設計データ通り行われているか評価することができる。
また、第2基準断面図34で示されるトンネル2の断面の面積と、実測断面図36で示される二次覆工後のトンネル2の断面の面積とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、トンネル2の掘削が設計データ通り行われているか評価することができる。
【0021】
なお、本実施の形態では、掘削作業が終了した段階において、および、一次覆工が終了した段階において、従来技術と同様にトンネル2の坑内において不図示の3次元レーザースキャナーを手作業で運搬しトンネル2の坑内の適宜箇所に設置すると共に、設置した3次元レーザースキャナー14によってトンネル2の断面形状を計測し、その計測結果を情報処理装置16に入力することで、掘削作業後および一次覆工後のトンネル2の出来形の管理をそれぞれ行なう場合について説明する。
すなわち、以下のような評価データ(管理情報MI)を演算し、次の掘削作業の修正を図る場合について説明する。
例えば、掘削作業後、設計断面図34で示されるトンネル2の断面形状の中心軸と実測断面図36で示されるトンネル2の断面形状の中心軸とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、そのずれ量に基づいて掘削作業の修正を行なうことができる。
また、一次覆工後、第1基準断面図34で示されるトンネル2の断面形状の中心軸と実測断面図36で示されるトンネル2の断面形状の中心軸とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、そのずれ量に基づいて掘削作業の修正を行なうことができる。
【0022】
また、設計断面図34あるいは第1基準断面図34で示されるトンネル2の断面形状と実測断面図36で示されるトンネル2の断面形状とのずれ量とをトンネル2の周方向に沿って評価データ(管理情報MI)として演算することで、トンネル2の掘削が不足している箇所あるいは掘削が過剰である箇所を特定し、掘削作業の修正を行なうことができる。
【0023】
また、設計断面図34あるいは第1基準断面図34で示されるトンネル2の断面の面積と実測断面図36で示されるトンネル2の断面の面積とのずれ量を評価データ(管理情報MI)として演算することで、トンネル2の掘削が過剰あるいは過少であるかを判定し、その判定結果に基づいて掘削作業の修正を行なうことができる。
掘削作業の修正とは、具体的には、重機を用いた追加の掘削作業、および、次回の発破工程における削孔パターンの修正、装薬孔の増減、装薬孔に装填する爆薬の量の増減などである。
なお、一次覆工後において、上記掘削作業の修正を行なうために一次覆工のコンクリートと共に地山を部分的に掘削した場合は、その部分について一次覆工をやり直すことになる。
また、上述した3次元レーザースキャナー14を手作業で運搬、設置して掘削作業後あるいは一次覆工後のトンネル2の3次元形状を計測し、その計測結果から評価データ(管理情報MI)を生成して掘削作業後あるいは一次覆工後のトンネル2の出来形の評価を行ない、掘削作業の修正を行なう一連の作業については従来技術と同様である。
【0024】
次に、図6のフローチャートを参照して本実施の形態の出来形管理方法の一例について説明する。
まず、発破や重機による切羽面2Aの掘削を行ない、掘削ずりの搬出を行なう(ステップS10)。
次いで、従来と同様に不図示の3次元レーザースキャナーを手作業により運搬し、トンネル2の坑内の適宜箇所に設置し、掘削後のトンネル2の3次元形状の計測を行い(ステップS12)、計測されたトンネル2の3次元形状に基づいて実測断面図と、設計データに基づく設計断面図とが管理情報MIとして生成され(ステップS14)、管理情報MIに基づいてトンネル2の掘削作業後における出来形を評価し、掘削作業の修正の有無を判断し(ステップS16)、必要に応じて掘削作業の修正を行なう(ステップS18)。
【0025】
次に、コンクリート吹付け機によって掘削された切羽面2Aおよび周壁面2Bにコンクリートを吹き付けて一次覆工を行なう(ステップS20)。また、鋼製支保工の建込み、ロックボルトの打設も行なう。
次いで、ステップS14と同様に、不図示の3次元レーザースキャナーを手作業により運搬し、トンネル2の坑内の適宜箇所に設置し、一次覆工後のトンネル2の3次元形状の計測を行い(ステップS22)、計測されたトンネル2の3次元形状に基づいて実測断面図と、設計データに基づく第1基準断面図とが管理情報MIとして生成され(ステップS24)、管理情報MIに基づいてトンネル2の一次覆工後における出来形を評価し、掘削作業の修正の有無を判断し(ステップS26)、必要に応じて掘削作業および一次覆工の修正を行なう(ステップS28)。したがって、この修正作業は、部分的な一次覆工のやり直しなどを含む。
なお、ステップS26において掘削作業の修正が不要であると判断された場合は、ステップS28をスキップし、ステップS30に進む。
なお、ステップS26において掘削作業の修正が不要であると判断された場合は、ステップS22で得られた一次覆工後の実測断面図と、設計データに基づく第2基準断面図34(すなわち二次覆工後におけるトンネル2の断面形状)とを比較する(演算する)ことにより、以下のステップS32で実施される二次覆工の作業前に、二次覆工コンクリートの厚さを求めることが可能となる。
【0026】
次に、スライドセントル12が一次覆工された箇所の近傍まで移動できるように床面2Cにレール4を敷設し、スライドセントル12を、このスライドセントル12を用いた二次覆工が可能となるように移動させ配置する(ステップS30)。なお、スライドセントル12の配置後、スライドセントル12を挟んで切羽面2Aと反対側のレール4上に台車装置40を設置し、台車装置40を駆動装置41により前述した退避位置に位置させておく。
次に、スライドセントル12の型枠部材20とトンネル2の周壁面2Bとの間に形成された打設空間にコンクリート6を打設して二次覆工を行なう(ステップS32)。
打設されたコンクリート6の硬化後、スライドセントル12を脱型し、3次元レーザースキャナー14によって二次覆工後の周壁面2Bの計測が可能となるように、スライドセントル12と台車装置40とを移動させる(ステップS34)。すなわち、それまで退避位置に位置していた台車装置40を、3次元レーザースキャナー14によって二次覆工後の周壁面2Bの計測が可能となるように駆動装置41により自動的に移動させると共に、台車装置40に取り付けられた3次元レーザースキャナー14よる計測に支障がないようにスライドセントル12を移動させる。
そして、台車装置40によって3次元レーザースキャナー14を移動させつつ、同時に二次覆工後のトンネル2の3次元形状を計測する(ステップS36)。なお、予め基準ターゲット24がトンネル2に配置されており、計測された3次元形状のデータに基準ターゲット24の位置が現地座標の原点として含まれる。
上記と同様に、3次元レーザースキャナー14によって計測されたトンネル2の3次元形状は、座標変換部32Bで変換され、断面図生成部32Cによって、計測されたトンネル2の3次元形状に基づく実測断面図36と、記憶部32Aから読み出された設計データに基づく第2基準断面図34とが管理情報MIとして生成される(ステップS38)。
作業者は、情報処理装置16から出力される管理情報MIに基づいてトンネル2の二次覆工後における出来形の評価を行なう(ステップS40)。
以下、ステップS10に戻って次のスパンの掘削作業、掘削作業の出来形の評価、評価に基づく修正作業、一次覆工、一次覆工の出来形の評価、評価に基づく修正作業、二次覆工、二次覆工の出来形の評価を上述と同様に繰り返して行なうことでトンネル2が順次施工されていく。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、トンネル2の床面2Cにトンネル2の長手方向に沿って敷設されたスライドセントル用のレール4上に移動可能に台車装置40を配置し、トンネル2の3次元形状を計測して3次元形状データを生成する3次元レーザースキャナー14を台車装置40に取り付け、二次覆工がなされたのち、台車装置40をレール4上で移動させ、3次元レーザースキャナー14による3次元形状の計測を行ない、3次元レーザースキャナー14で計測された3次元形状データと、トンネル2の設計データとに基づいてトンネルの出来形の管理を行なうための管理情報を生成するようにした。
したがって、スライドセントル12用の既存のレール4上に設置した台車装置40によって3次元レーザースキャナー14を移動させれば済み、また、台車装置40は3次元レーザースキャナー14を取り付けるに足る簡素な構成で足りる。
そのため、従来のように3次元レーザースキャナー14を架台を介してトンネル2の床面2Cに配置したり、3次元レーザースキャナー14を搭載した車両を作業員が手作業で操縦してトンネル2内で移動させたりする場合に比較して、架台や車両といった大掛かりな設備を設ける必要がなく、また、3次元レーザースキャナー14と設備の配置作業やそれらの撤去作業が不要となるため、設備コストの低減、省人化、作業効率の向上を図る上で有利となる。
また、3次元レーザースキャナー14がスライドセントル12用の既存のレール4上を移動する台車装置40に取り付けられているため、3次元レーザースキャナー14と設備の配置作業やそれらの撤去作業のために作業員がトンネル2坑内の現場で長時間にわたって作業する必要がないため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
また、台車装置40がレール4上を移動する際に同時に3次元レーザースキャナー14によってトンネル2の3次元形状が計測できることから、トンネル2の3次元形状をトンネル2のトンネル軸方向(トンネル2の長手方向)に沿って連続的に計測できるため、二次覆工後のトンネル2の3次元形状をきめ細かくかつ効率的に計測する上で有利となり、二次覆工後のトンネル2の出来形の評価を効率的に行なう上でも有利となる。
また、台車装置40は、スライドセントル12とは独立して移動させることができ、かつ、スライドセントル12に比較して小型軽量で済むため、台車装置40をレール4上に沿って移動させながらトンネル2の3次元形状の計測を行なう作業を短時間で効率的に行なう上で有利となる。
また、台車装置40の駆動装置41によって台車装置40をレール4上に沿って自動的に移動させながらトンネル2の3次元形状の計測を行なうようにすれば、計測作業の効率化を図る上で、また、作業者の負担を軽減する上でより有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、管理情報MIは、3次元形状データに基づくトンネル2の断面図である実測断面図36と、設計データに基づくトンネル2の断面図(第2基準断面図34)とを比較した画像情報を含むものとしたので、それら2つの断面図を比較することでトンネル2の施工の品質管理を的確に行なう上で有利となる。
【0029】
また、本実施の形態では、トンネル2の所定箇所に基準ターゲット24を配置し、3次元レーザースキャナー14は基準ターゲット24を計測することでトンネル2の基準点を取得し、管理情報MIの生成に先立って、トンネル2の3次元形状データは、3次元レーザースキャナー14の機械中心を原点とする機械座標系から基準点を原点とするトンネル2の現地座標系に変換される変換処理がなされるようにした。
したがって、基準ターゲット24を配置するといった簡単な作業でトンネル2の3次元形状データを的確に取得する上で有利となる。
【0030】
また、本実施の形態では、台車装置40は、レール4の延在方向に沿った長さを有し、3次元レーザースキャナー14は、切羽面2Aと反対側に位置する台車装置40の長さ方向の端部に設けられているので、3次元レーザースキャナー14によるトンネル2の3次元形状の計測を的確に行なう上で有利となる。
【0031】
また、本実施の形態では、情報処理装置16は、トンネル2の半径方向において型枠部材20の内側に配置されているので、例えば二次覆工後にトンネル2の周壁面2Bの一部が落下しても、情報処理装置16を取り扱う作業者の作業員は、型枠部材20で保護されるため、作業員の安全確保や作業環境の向上を図る上で有利となる。
【0032】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態に係る出来形管理方法および出来形管理装置について説明する。
なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分について重点的に説明する。
第2の実施の形態は、一対のレール体4A、4Bにそれぞれ独立した台車装置をそれぞれ移動可能に配置し、各台車装置にそれぞれ3次元レーザースキャナーを取り付けた点が第1の実施の形態と異なっている。
図7は第2の実施の形態に係るトンネルの出来形管理装置の正面図、図8図7の側面図である。
【0033】
前述したようにレール4は、一対のレール4A、4Bを含んで構成されている。
図7に示すように、レール体4A、4Bは、床面2Cに設置される底部4002と、底部4002の幅方向の中央から上方に起立する板状の腹部4004と、腹部4004の上端に設けられた頭部4006とを備えている。
【0034】
図7図8に示すように、台車装置40は、一方のレール本体4Aに移動可能に配置された第1台車装置40Aと、他方のレール本体4Bに移動可能に配置された第2台車装置40Bとを備え、各台車装置40A、40Bは独立してレール体4A、4B上を走行できるように図られている。
各台車装置40A、40Bは、台車フレーム48と、レール体4A、4B上を走行する複数の車輪とを含んで構成されている。
台車フレーム48は、レール体4A、4Bの長手方向に沿った長さと、レール体4A、4Bの長手方向と直交する幅と、上下方向の高さとを備えており、正面から見て矩形状の上部フレーム4802と、上部フレーム4802の下部両側から下方に延在する一対の脚部フレーム4804とを備えている。
【0035】
複数の車輪は、台車フレーム48の長さ方向の両端寄りの箇所で、一対の脚部フレーム4804に回転可能に支持されている。
複数の車輪は、走行車輪50と、一対の案内車輪52とを備えている。
走行車輪50は、一対の脚部フレーム4804の上部に回転可能に支持され、レール体4A、4Bの頭部4006の上面を転動するものである。
一対の案内車輪52は、一対の脚部フレーム4804の下端に回転可能に支持され、レール体4A、4Bの腹部4004の両側面を挟持しつつ転動するものである。
これら複数の車輪によって台車フレーム48がレール体4A、4B上を安定して走行できるように図られている。
【0036】
また、図示しないが、第1の実施の形態と同様に、第1、第2台車装置40A、40Bには、各台車装置40A、40Bをレール4に沿って自動的に移動させる駆動装置がそれぞれ設けられている。
駆動装置は、例えば、モータなどの駆動源から供給される回転駆動力によって各走行車輪50を回転駆動させるものであればよく、また、駆動装置の具体的な構成は第1の実施の形態と同様に従来公知の様々な構成が使用可能である。
【0037】
3次元レーザースキャナー14は、第1台車装置40Aに取り付けられた第1台車用3次元レーザースキャナー54Aと、第2台車装置40Bに取り付けられた第2台車用3次元レーザースキャナー54Bとで構成されている。
各レーザースキャナー14Aは、切羽面2A(図3参照)と反対側に位置する上部フレーム4802の端面で上部フレーム4802の幅方向の中央箇所にブラケット15を介して着脱可能に取り付けられている。
本実施の形態では、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aは、トンネル2の周壁面2Bのうち天端部の中央から周壁面2B(図2参照)の一方の半部に対して周方向に沿って計測するように設けられ、第2台車用3次元レーザースキャナー54Bは、トンネル2の周壁面2Bのうち天端部の中央から周壁面2Bの他方の半部に対して周方向に沿って計測するように設けられている。
本実施の形態では、トンネル2の周壁面2Bの全周を、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aの計測範囲と第2台車用3次元レーザースキャナー54Bの計測範囲とで2分割した場合について説明するが、例えば、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aの計測範囲と第2台車用3次元レーザースキャナー54Bの計測範囲とがトンネル2の天端部で一部重複しても構わない。要するに、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aの計測範囲と第2台車用3次元レーザースキャナー54Bの計測範囲とが、トンネル2の周壁面2Bの全周をもれなくカバーしていればよい。
【0038】
図9に示すように、第2の実施の形態の出来形管理装置の情報処理装置は、第1の実施の形態と同様の記憶部32A、座標変換部32B、断面図生成部32C、管理情報生成部32Dに加え、さらに、3次元形状データ合成部32Eを備えている。
3次元形状データ合成部32Eは、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aおよび第2台車用3次元レーザースキャナー54Bで計測されたそれぞれの3次元形状データを合成することで、トンネルの3次元形状データを生成するものである。
3次元形状データ合成部32Eで生成されたトンネルの3次元形状データは、第1の実施の形態と同様に、座標変換部32Bに供給される。また、断面図生成部32C、管理情報生成部32Dの動作は第1の実施の形態と同様になされるため、具体的な説明は省略する。
【0039】
また、第1台車装置40Aおよび第2台車装置40Bを移動させつつ二次覆工後のトンネル2の3次元形状を計測する点は、第1の実施の形態と同様である。
図6を流用して第1の実施の形態と同一の処理については説明を省略し、異なる処理について説明する。
打設されたコンクリート6の硬化後、スライドセントル12を脱型し、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bによって二次覆工後の周壁面2Bの計測が可能となるように、スライドセントル12と第1、第2台車装置40A、40Bとを移動させる(ステップS34)。すなわち、それまで退避位置に位置していた第1、第2台車装置40A、40Bを、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bによって二次覆工後の周壁面2Bの計測が可能となるように駆動装置により自動的に移動させると共に、第1、第2台車装置40A、40Bに取り付けられた第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bよる計測に支障がないようにスライドセントル12を移動させる。
そして、第1、第2台車装置40A、40Bによって第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bを移動させつつ、同時に二次覆工後のトンネル2の3次元形状を計測する(ステップS36)。
【0040】
そして、図6には図示しないが、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aおよび第2台車用3次元レーザースキャナー54Bで計測されたそれぞれの3次元形状データが3次元形状データ合成部32Eによって合成され、トンネルの3次元形状データが生成される。
そして、合成された3次元形状データは座標変換部32Bに供給され、トンネル2の3次元形状は、座標変換部32Bで変換され、断面図生成部32Cによって、計測されたトンネル2の3次元形状に基づく実測断面図36と、記憶部32Aから読み出された設計データに基づく第2基準断面図34とが管理情報MIとして生成される(ステップS38)。
以下、第1の実施の形態と同様の処理がなされる。
すなわち、作業者は、情報処理装置16から出力される管理情報MIに基づいてトンネル2の二次覆工後における出来形の評価を行なう(ステップS40)。
以下、ステップS10に戻って次のスパンの掘削作業、掘削作業の出来形の評価、評価に基づく修正作業、一次覆工、一次覆工の出来形の評価、評価に基づく修正作業、二次覆工、二次覆工の出来形の評価を上述と同様に繰り返して行なうことでトンネル2が順次施工されていく。
【0041】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、以下の効果が奏される。
すなわち、第2の実施の形態では、一対のレール4A、4Bの一方に移動可能に配置された第1台車装置40Aと、一対のレール4A、4Bの他方に移動可能に配置された第2台車装置40Bとを設け、3次元レーザースキャナー14として、第1台車装置40Aに取り付けられた第1台車用3次元レーザースキャナー54Aと、第2台車装置40Bに取り付けられた第2台車用3次元レーザースキャナー54Bとを備え、3次元形状データは、第1台車用3次元レーザースキャナー54Aおよび第2台車用3次元レーザースキャナー54Bで計測されたそれぞれの3次元形状データが合成されることで生成されるようにした。
したがって、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bによってトンネルの3次元形状データを計測できるため、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bのそれぞれによってトンネル2の周壁面2Bを分割して計測することができる。
そのため、トンネル2の周壁面2Bの全周にわたって3次元形状データの計測をきめ細かく正確に行なう上で有利となる。
また、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bによってトンネルの3次元形状データを計測できるため、トンネル2の周壁面2Bの3次元形状データの計測に要する計測時間の短縮化を図れ、計測動作の効率化を図る上で有利となる。
また、第1、第2台車装置40A、40Bを別々のレール体4A、4B上で走行させるので、第1の実施の形態に比較して、第1、第2台車装置40A、40Bのコンパクト化、軽量化を図る上で有利となる。
そのため、設備コストの低減を図れることは無論のこと、台車装置40の移動に要する手間を削減することで作業効率の向上を図る上で有利となる。また、台車装置40の占有スペースを削減でき、トンネル2内の作業空間を確保する上でも有利となる。
なお、第2の実施の形態では、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bをそれぞれ1台ずつ設ける場合について説明したが、第1、第2台車用3次元レーザースキャナー54A、54Bをそれぞれ2台以上設けてもよく、その場合も、3次元形状データ合成部32Eによって各レーザースキャナーで計測された3次元形状データを合成するようにすればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 地山
2 トンネル
2A 切羽面
2B 周壁面
2C 床面
4 レール
4A、4B レール体
4002 底部
4004 腹部
4006 頭部
6 コンクリート(二次覆工)
10 トンネルの施工管理装置
12 スライドセントル
14 3次元レーザースキャナー
14A 第1の3次元レーザースキャナー
14B 第2の3次元レーザースキャナー
14C 第3の3次元レーザースキャナー
15 ブラケット
16 情報処理装置
18 台車部
1802 車輪
1804 台車本体
1804A 側面部
1804B 上面部
20 型枠部材
2002 天端部
2004 側部
2006 ヒンジ
22 ジャッキ
2202 天端側ジャッキ
2204 側部側ジャッキ
24 基準ターゲット
26 入力装置
28 出力装置
30 外部記憶装置
32A 記憶部
32B 座標変換部
32C 断面図生成部
32D 管理情報生成部
32E 3次元形状データ合成部
34 基準断面図
36 実測断面図
40 台車装置
40A 第1台車装置
40B 第2台車装置
41 駆動装置
42 車輪
44 台車フレーム
46A 側部フレーム
46B 上部フレーム
48 台車フレーム
4802 上部フレーム
4804 脚部フレーム
50 走行車輪
52 案内車輪
54A 第1台車用3次元レーザースキャナー
54B 第2台車用3次元レーザースキャナー
MI 管理情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9