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特開2023-17712巻取機のワークステーションと糸の巻き戻し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017712
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】巻取機のワークステーションと糸の巻き戻し方法
(51)【国際特許分類】
   D01H 4/00 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
D01H4/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110673
(22)【出願日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 118 845.8
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】512013754
【氏名又は名称】マスチネンファブリック ライター アーゲー
【氏名又は名称原語表記】MASCHINENFABRIK RIETER AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstr. 20, 8406 Winterthur Swizerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アダルベルト シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ケトナー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】シャルロッテ ツェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード クスタース
(57)【要約】      (修正有)
【課題】糸を、巻取りスリーブを含むボビンから巻取りスリーブ上に巻き戻す方法に関する。
【解決手段】糸を紡績スリーブ3から巻取りスリーブ上に巻き戻すための巻取機のワークステーションに関し、該ワークステーションは、第1のバルーンリミッタ6と第2のバルーンリミッタ7を有するバルーン制限装置を備え、ワークステーションが作動しているとき、第1のバルーンリミッタ、及び第2のバルーンリミッタはそれぞれ、巻き戻し手順中、特定期間の間、少なくとも1つの糸案内面8を備え、前記面は、繰り出し位置にある紡績スリーブを取り囲み、第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離は、第2のバルーンリミッタの糸案内面と前記回転軸との間の最小距離よりも大きい。さらに、糸を巻き戻す方法に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸(1)をワークステーションの繰り出し位置(2)に配置された紡績スリーブ(3)から巻取りスリーブ(4)上に巻き戻すための巻取機のワークステーションであって、
前記ワークステーションは、巻き戻し手順中に前記紡績スリーブ(3)と前記巻取りスリーブ(4)の間に形成される糸バルーン(5)を空間的に制限するためのバルーン制限装置(25)を備え、
前記バルーン制限装置(25)は、第1のバルーンリミッタ(6)および第2のバルーンリミッタ(7)を備え、
前記第1のバルーンリミッタ(6)は、特定の糸進行方向(G)において前記第2のバルーンリミッタ(7)の下流に配置され、
前記ワークステーションが作動しているとき、前記第1のバルーンリミッタ(6)および前記第2のバルーンリミッタ(7)はそれぞれ、前記巻き戻し手順中、少なくともある特定の期間の間、少なくとも1つの糸案内面(8)を備え、前記糸案内面(8)は、前記繰り出し位置(2)にある前記紡績スリーブ(3)を取り囲み、前記第1のバルーンリミッタ(6)の糸案内面(8)と前記紡績スリーブ(3)の回転軸(9)との間の最小距離A1は、少なくとも前記期間の間、前記第2のバルーンリミッタ(7)の糸案内面(8)と前記回転軸(9)との間の最小距離A2よりも大きい
ことを特徴とするワークステーション。
【請求項2】
前記第1のバルーンリミッタ(6)および前記第2のバルーンリミッタ(7)はそれぞれ、前記巻き戻し手順中に少なくともある時間留まる作動位置と、前記巻き戻し手順の完了後、空の紡績スリーブ(3)と、糸が巻成された紡績スリーブ(3)とが交換できる休止位置との間で移動可能なことを特徴とする請求項1に記載のワークステーション。
【請求項3】
前記ワークステーションは、前記第1のバルーンリミッタ(6)および前記第2のバルーンリミッタ(7)を互いに独立して、および/または共に、それらに対応する前記作動位置と休止位置との間の移動を可能にするための駆動装置を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のワークステーション。
【請求項4】
前記第1のバルーンリミッタ(6)は、閉じた、好ましくは円形または多角形の糸案内面(8)を全ての位置で備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項5】
前記第2のバルーンリミッタ(7)は、2つ以上の制限要素(18)を備え、前記制限要素(18)は、少なくとも前記第2のバルーンリミッタ(7)の作動位置において第1の位置をとり、それによって閉じた糸案内面(8)を形成し、前記制限要素(18)は、前記第2の前記バルーンリミッタ(7)の休止位置において、前記第2のバルーンリミッタ(7)の糸案内面(8)と前記紡績スリーブ(3)の回転軸(9)との間の最小距離A3が、前記距離A2よりも大きい、第2の位置を取ることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項6】
前記距離A3は、前記距離A1以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項7】
A1の大きさが10mm~40mm、好ましくは18mm~25mmであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項8】
A2の大きさが5mm~25mm、好ましくは8mm~16mmであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項9】
A3の大きさが15mm~60mm、好ましくは18mm~30mmであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項10】
前記第1のバルーンリミッタ(6)および第2のバルーンリミッタ(7)は、支持体(10)によって共通のガイド(11)上に支持され、前記ガイド(11)に対して変位可能であり、前記第1のバルーンリミッタ(6)は、前記ガイド(11)に沿って移動することにより、その作動位置と休止位置との間を移動できることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記支持体(10)を前記ガイド(11)に沿って変位させるための第1の駆動装置(12)を含み、前記駆動装置は、前記第2のバルーンリミッタ(7)の制限要素(18)を、前記第1と第2の位置の間で移動させるための第2の駆動装置(13)を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項12】
前記第2の駆動装置(13)は支持体(10)上に配置されることを特徴とする請求項1~11のいずれか一つに記載のワークステーション。
【請求項13】
糸(1)を、紡績スリーブ(3)を含むボビン(15)から巻取りスリーブ(4)上に巻き戻す方法であって、少なくとも、
前記紡績スリーブ(3)を、巻取機のワークステーションの特定の繰り出し位置(2)に配置する工程、
前記紡績スリーブ(3)に対して第1のバルーンリミッタ(6)の位置決めを、前記第1のバルーンリミッタ(6)が前記紡績スリーブ(3)を包囲するように行い、前記第1のバルーンリミッタ(6)の糸案内面(8)と前記紡績スリーブ(3)の回転軸(9)の間の最小距離A1が、前記紡績スリーブ(3)上に存在する前記糸本体(17)の円筒状部分(16)の領域におけるボビン(15)の半径(R)よりも大きい工程、
前記紡績スリーブ(3)上に存在する糸(1)の一部を前記巻取りスリーブ(4)上に巻き取る工程、
前記紡績スリーブ(3)に対して第2のバルーンリミッタ(7)の位置決めを、前記第2のバルーンリミッタ(7)が前記紡績スリーブ(3)を包囲するように行い、前記第2のバルーンリミッタ(7)が前記紡績スリーブ(3)上の残りの前記糸本体(17)の前記円筒状部分(16)の外側で前記紡績スリーブ(3)を囲み、前記第2のバルーンリミッタ(7)の糸案内面(8)と前記紡績スリーブ(3)の回転軸(9)との間の最小距離A2が、前記紡績スリーブ(3)上の残りの前記糸本体(17)の前記円筒状部分(16)の領域における前記ボビン(15)の半径(R)よりも小さい工程、および
前記紡績スリーブ(3)に残っている糸(1)を前記巻取りスリーブ(4)上に巻き戻す工程、
を含む方法。
【請求項14】
前記紡績スリーブ(3)に対する前記第1のバルーンリミッタ(6)の位置決めを行うことで、前記第1のバルーンリミッタ(6)が休止位置から作動位置に移動し、および/または、前記紡績スリーブ(3)に対する前記第2のバルーンリミッタ(7)の位置決めを行うことで、前記第2のバルーンリミッタ(7)が休止位置から作動位置に移動することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のバルーンリミッタ(6)がその作動位置に移動した後、前記第1のバルーンリミッタ(6)の空間位置は、前記巻き戻し手順が終了するまで不変で、および/または、前記第2のバルーンリミッタ(7)がその作動位置に移動した後、前記第2のバルーンリミッタ(7)の空間位置は、前記巻き戻し手順が終了するまで不変であることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のバルーンリミッタ(6)は、休止位置から作動位置に移動し、前記紡績スリーブ(3)の回転軸(9)と平行な前記ボビン(15)の上に配置されることを特徴とする請求項13~15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記第2のバルーンリミッタ(7)が休止位置から作動位置に移動すると、前記第2のバルーンリミッタ(7)の複数の制限要素(18)は、第1の位置から第2の位置に移動、好ましくは枢動されることを特徴とする請求項13~16のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸をワークステーションの繰り出し位置に配置された紡績スリーブから巻取りスリーブ上に巻き戻すための巻取機のワークステーションに関し、該ワークステーションは、巻き戻し手順中に紡績スリーブと巻取りスリーブとの間に形成される糸バルーンを空間的に制限するためのバルーン制限装置を備え、該バルーン制限装置は、第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタを備え、該第1のバルーンリミッタは、糸の特定の進行方向において第2のバルーンリミッタの下流に配置される。
【0002】
本発明はさらに、糸を、巻取りスリーブを含むボビンから巻取りスリーブ上に巻き戻す方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動巻取機は、糸を、例えばリング精紡機に由来する個々に巻成された紡績スリーブから巻取りスリーブ上に巻き戻す機能を持ち、それによって、より大きなボビン(通常、綾巻きボビンとして知られる)が製造される。これは、紡績スリーブが通常、機械条件により比較的少ない糸しか有さないため、後続のさらなる糸の処理のために必要である。巻取機は通常、巻き戻しプロセスを互いにほぼ独立して行う複数の巻取りステーションを備える。
【0004】
巻き戻しプロセス中に、個々の紡績スリーブからの糸は、スプライサーとして知られるものによって単一の連続した糸に順次接合される。巻取機での巻き戻しプロセスは、さらに、上流の精紡機の紡績プロセスで発生した糸の欠陥を除去するために利用される。この目的のために、例えば、糸の品質は1つまたは複数の糸センサーによってモニターされ、糸の欠陥が検出されると、クオリティカット(別名:クリアラーカット)として知られる工程が自動的に実行される。糸の欠陥が取り除かれ、それによって生じる糸端がスプライサーで再び接合される。
【0005】
紡績スリーブから巻取りスリーブ上への巻き戻し手順中に、巻き戻しプロセス中に巻取りスリーブが留まる繰り出し位置と、糸の走行方向における紡績スリーブの下流の糸ガイドとの間に、糸バルーンが生じる。前記糸バルーンは、糸が紡績スリーブから繰り出されるときに糸に作用する遠心力によって形成される。巻き戻しプロセス中の糸バルーンの半径が大きいほど、糸バルーンの領域での糸張力が大きくなる。
【0006】
従って、巻き戻しプロセス中に糸張力を可能な限り低く保ち、糸切れの頻度と他の糸の品質への悪影響の危険性を最小限に抑えるため、糸バルーンの形状とサイズに影響を与え、制限するための多くの試みが行われている。
【0007】
その一例が特許文献1により示され、そこでは、バルーン制限装置がセンサーに連結され、それによって、巻き戻し手順中のバルーン制限装置の位置を、糸本体(つまり、紡績スリーブ上に存在する糸)の形状に応じて調整することができる。しかしながら、このためには、前記センサーと、センサー信号に応じてバルーンリミッタを継続的に動かすための駆動装置が必要になる。そのため、この解決法は比較的複雑であり、それに応じて高価である。また、センサーにほこりや糸くずがたまってセンサーのエラーが発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ公開特許公報10 2016 115 256 A1 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、既知の従来技術とは明確に区別される、バルーン制限装置を備える巻取機のワークステーションと、糸を紡績スリーブから巻取りスリーブ上に巻き戻す方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴を有する、巻取機のワークステーションと方法とによって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるワークステーションはまた、巻き戻しプロセス中に形成される糸バルーンを空間的に制限するバルーン制限装置を、繰り出し位置に固定された紡糸スリーブと下流の糸ガイドとの間に備える。
【0012】
バルーン制限装置は、第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタを備え、第1のバルーンリミッタは、糸の特定の進行方向において第2のバルーンリミッタの下流に配置される。糸の走行方向は、実質的に、紡績スリーブから巻取りスリーブの方向への糸の移動する方向に相当する。
【0013】
本発明によれば、ワークステーションが作動しているとき、第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタはそれぞれ、巻き戻し手順中、少なくともある特定期間の間、1つの糸案内面を有し、前記面は、繰り出し位置に存在する紡績スリーブを少なくとも部分的にまたは完全に取り囲み、繰り出しプロセス中に糸バルーンの制限を行う。従って、糸バルーンは、1つまたは複数の糸案内面と接触しない限りにおいてのみ、紡績スリーブの回転軸に対して垂直に拡張することが可能である。この回転軸は、通常は、回転対称の紡績スリーブの中心縦軸である。ただし、巻き戻し手順の間、紡績スリーブは回転しない。
【0014】
本発明によれば、第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離A1は、少なくとも上記期間中、第2のバルーンリミッタの糸案内面と前記回転軸との間の最小距離A2よりも大きい。それぞれの場合の最小距離は、回転軸と、空間的な意味で回転軸からの距離が最小である糸案内面の領域との間の距離として定義される。
【0015】
本発明によるバルーン制限装置は、2つ以上のバルーンリミッタを備え、第1のバルーンリミッタの糸案内面、少なくともその一部は、少なくとも巻き戻しプロセス中の特定の期間の間、紡績スリーブの回転軸、つまり紡績スリーブに配置された糸本体からの距離が、前記期間の間の第2のバルーンリミッタの糸案内面または少なくともその一部と異なる。
【0016】
本発明によれば、第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタのそれぞれは、巻き戻し手順中、特に、前記期間中に留まる作動位置と、休止位置との間を移動することが好ましく、休止位置は、とりわけ、巻き戻し手順の終了後に、空の紡績スリーブと糸が巻成された新しい紡績スリーブの交換を、紡績スリーブとバルーンリミッタが衝突せずに実行できる位置であるという特徴を有する。
【0017】
休止位置に加えて、各バルーンリミッタは、少なくとも1つの作動位置を持つことが好ましい。作動位置の場所は、対応する休止位置とは特に空間的に異なる。さらに、または代替的に、第1および/または第2のバルーンリミッタはそれぞれ複数の制限要素を備えることができ、作動位置におけるそれぞれの制限要素の位置または空間的場所は、休止位置における対応する制限要素の位置または空間的場所と異なる。
【0018】
例えば、第1のバルーンリミッタおよび/または第2のバルーンリミッタは、紡績スリーブが繰り出し位置にある場合、紡績スリーブの上方の領域に休止位置を持つことが考えられる。この位置では、各紡績スリーブと1つまたは複数のリミッタとの間の衝突の危険性を回避しながら、空の紡績スリーブを糸が巻成された新しい紡績スリーブと交換することができる。
【0019】
特に、ワークステーションが作動しているとき、第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタのそれぞれは、繰り出し位置にある紡績スリーブを取り囲む1つの糸案内面を備え、第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離A1は、第2のバルーンリミッタの糸案内面と前記回転軸との間の最小距離A2よりも大きい。この場合、上記の「特定の期間」は、第1および/または第2のバルーンリミッタがそれらの作動位置にあるときと同じであることが好ましい。
【0020】
個々のバルーンリミッタの糸案内面は、それらの対応する作動位置で、および/または上記特定期間の間、紡績スリーブの糸本体を、好ましくは、その回転軸に垂直な平面で包囲する。バルーンリミッタの糸案内面が、それぞれの対応する作動位置において、および/または上記特定期間の間、回転軸の方向に互いに離間されている場合、さらに有利である。特に、第1バルーンリミッタは、第2バルーンリミッタよりも糸走行方向下流側に配置される。
【0021】
第1のバルーンリミッタの作動位置と第2のバルーンリミッタの作動位置の両方は、繰り出し位置にある紡績スリーブと交差する平面内にある。換言すれば、第1のバルーンリミッタと第2のバルーンリミッタの両方、または少なくともそれらの糸案内面は、それぞれのバルーンリミッタが作動位置にある時、前記リミッタが、繰り出し位置にある紡績スリーブを少なくとも部分的に包囲する位置にある。
【0022】
特に、2つのバルーンリミッタは、異なる時間にそれぞれに対応する作動位置をとる。従って、最初に第1のバルーンリミッタがその休止位置から作動位置に移動し、巻き戻し手順の開始時に、前記リミッタがボビンの円筒状部分(すなわち、糸を上にのせた紡績スリーブ)を取り囲むと有利である。そして、巻き戻し手順中に糸バルーンが形成されると、前記バルーンは、第1のバルーンリミッタの糸案内面によって空間的に外側から制限される。
【0023】
リング精紡機から出てくるボビンは、典型的には、円筒状部分と、その両側に隣接する2つの円錐状部分(以下、ボビンコーンと称する)とを有する糸体を含む。リング精紡機の紡績プロセス上、巻き戻し時に、糸は糸本体全体から均一に繰り出されない。むしろ、糸の繰り出しは段階的に行われ、紡績スリーブは徐々に糸から解き放され露出する。換言すれば、第1の、すなわちトップの部分は巻き戻しプロセス中に、第2の、すなわち底部の円錐部分の方向に移動し、円筒状部分の高さが減少する。
【0024】
第1の円錐部分(巻取りスリーブの方を向いた部分)が第2のバルーンリミッタに到達すると、前記リミッタはその作動位置に移動することができ、第2のバルーンリミッタの糸案内面の少なくとも一部と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離が縮小することが好ましい。この時点で、糸は第2のバルーンリミッタと接触するので、前記リミッタは(単独で、または第1のバルーンリミッタと共に)糸バルーンの空間的制限を行う。
【0025】
ワークステーションが、第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタを互いに独立しておよび/または共に、それらに対応する作動位置と休止位置との間を移動させることができる駆動装置を備えると、特に有利である。駆動装置は、例えば、1つまたは複数の電気モータ、空気圧ドライブ、または油圧ドライブ、またはこれらの要素の組み合わせたもの備えることができる。駆動装置が電気モータによって作動され、休止位置と作動位置の間、またはそれぞれの位置と前記位置間に存在する中間位置の間で、第1および/または第2のバルーンリミッタの直線運動を実行するリードスクリューを備えると、特に有利である。
【0026】
さらに、または代替的に、第1および/または第2のバルーンリミッタの移動の代わりに、またはそれに加えて、巻き戻し手順中に紡績スリーブを移動させて、巻き戻し手順中に第1および/または第2のバルーンリミッタに対して紡績スリーブを移動させることも考えられる。対応する同様な駆動装置を備え、この移動を可能にする。
【0027】
第1のバルーンリミッタが、閉じた、好ましくは円形または多角形の糸案内面を、好ましくは全ての位置で備えるとさらに有利である。例えば、第1のバルーンリミッタは、回転軸と同心に延び、好ましくは第1のバルーンリミッタの作動位置において、全期間にわたって紡績スリーブを取り囲む、円形糸案内面を備えることが考えられる。第1のバルーンリミッタの糸案内面は、特に、紡績スリーブ上に存在する糸本体の円筒状部分の領域において、巻き戻し手順の開始時に繰り出し位置にあるボビンを取り囲む必要がある。
【0028】
第2のバルーンリミッタが2つ以上の制限要素を備え、それらが、少なくとも第2のバルーンリミッタの作動位置で、または上記の期間中に、第1の位置を取り、それによって閉じた糸案内面を形成すると有利である。個々の制限要素はそれぞれ、円弧形状の糸案内面を備えることが好ましい。制限要素が、その作動位置において、または上記の期間中に、当然のことながら糸本体と接触することなく、ペンチのように紡績スリーブを取り囲む場合、さらに有利である。
【0029】
第2のバルーンリミッタの休止位置では、制限要素は、第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離A3が距離A2(第2のバルーンの作動位置における第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離)よりも大きい第2の位置をとる。この距離により、巻き戻し手順の後に、第2のバルーンリミッタと紡績スリーブの間に衝突を回避しながら、ワークステーションから空の紡績スリーブを取り外すことが可能になる。これとは対照的に、第2のバルーンリミッタの制限要素から第2のバルーンリミッタのワークステーションの紡績スリーブまでの距離は、糸バルーンの過度の拡張を防止するために、できるだけ小さくする必要がある。従って、距離A2は、新たに巻成された紡績スリーブの糸本体の円筒状部分の半径と空の紡績スリーブの半径との間にある必要がある。
【0030】
休止位置にある第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の距離A3が、作動位置にある第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の距離A1以上である場合、特に有利である。このように、糸本体と作業ステーションにおける第1のバルーンリミッタの糸案内面との間の距離が可能な限り小さい場合、糸バルーンの空間的制限に基本的に有利である。休止位置にある第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の距離は、空の紡績スリーブを新しい巻成された紡績スリーブと問題なく交換できるように可能な限り大きくあるべきである。
【0031】
A1(第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離)の大きさが10mm~40mm、好ましくは18~25mmである場合、特に非常に有利である。前記値によって、紡績スリーブ上の糸本体の寸法に応じて、糸本体と糸案内面との間の距離ができるだけ小さくなることが保証され、糸バルーンが可能な限り小さくなる。前記糸案内面と、繰り出し位置にあるボビンの円筒状部分の領域における糸本体との間の距離は、わずか1mm~10mm、好ましくは1mm~5mmである。
【0032】
A2(作動位置にある第2のバルーンリミッタの糸案内面と前記回転軸との間の最小距離)の大きさが5mm~25mm、好ましくは8~16mmである場合、さらに有利である。前記寸法によって、A2が、通常使用される紡績スリーブの半径よりも大きく、ほとんどのリング精紡機で製造されるボビンの糸本体の円筒状部分の半径よりも小さいことが保証される。従って、第1のバルーンリミッタが巻き戻し手順の開始時に糸バルーンの範囲を制限する働きをするのに対して、第2のバルーンリミッタが主にまたは専用に糸バルーンを制限するために機能するのは、特定の巻き戻し時間の後、つまり、第2のバルーンリミッタの領域における糸本体の半径が、巻き戻し手順の開始時よりも小さくなった後、またはトップボビンコーンが十分に下方に移動し、第1、第2バルーンリミッタの両方が糸の残っていない紡績スリーブの部分を取り囲む、巻き戻し手順の期間である。距離A2は、特に、ボビンの糸本体の円筒状部分の領域におけるボビンの半径よりも小さくなるように選択されるので、形成される糸バルーンの直径も、距離A2が上記半径以上である場合に比べて小さい。
【0033】
A3(休止位置にある第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離)の大きさが15mm~60mm、好ましくは18~30mmである場合、特に有利である。第2のバルーンリミッタが休止位置にあると、巻成された紡績スリーブの糸本体と第2のバルーンリミッタの衝突の危険性を回避しながら、空の紡績スリーブを巻成された紡績スリーブに交換することができる。
【0034】
第1のバルーンリミッタおよび第2のバルーンリミッタが支持体によって共通のガイド上に支持され、ガイドに対して移動可能であり、第1のバルーンリミッタが作動位置と休止位置との間をガイドに沿って移動可能であると、さらに有利である。第1のバルーンリミッタの休止位置は、垂直方向において作動位置より上にあることが好ましい。繰り出し位置にある紡績スリーブの回転軸が垂直方向に向いている場合、第1のバルーンリミッタは、垂直に移動することによって、紡績スリーブ上方の休止位置から紡績スリーブ上を移動することができる。それによって、第1のバルーンリミッタが紡績スリーブの円筒状部分の領域に届くまで移動することが好ましい。ガイドはリニアガイドであることが好ましい。ワークステーションはさらに、支持体をガイドに沿って移動させることができる駆動装置を備えることが好ましい。
【0035】
駆動装置が支持体をガイドに沿って移動させるための第1の駆動装置を含み、またその駆動装置が第2のバルーンリミッタの制限要素をその第1の位置と第2の位置との間で移動させるための第2の駆動装置を含む場合、特に有利である。例えば、第2のバルーンリミッタは、第2の駆動装置によって相対的に移動可能な2つ以上の制限要素を備えることができる。これにより、第2のバルーンリミッタは休止位置から作動位置に移動できる。また、第2のバルーンリミッタが紡績スリーブ上の休止位置から始動して、まず中間位置に移動することも考えられる。前記中間位置は、第1のバルーンリミッタが作動位置に移動したときにとられる。前記中間位置から始動して、制限要素が最終的な移動を行うと、それにより、第1のバルーンリミッタを移動させることなく、第2のバルーンリミッタが最終的な作動位置をとる。
【0036】
第2の駆動装置が支持体上に配置されるとさらに有利である。この場合、第2の駆動装置は支持体と共に移動する。この場合、第2の駆動装置は、第2のバルーンリミッタに空間的に非常に近く配置することができるので、複雑なギアボックスまたは他の動力伝達要素はほとんど不要になる。第2の駆動装置は、電気、油圧、または空圧ドライブとして実装することもできる。1つまたは複数の電磁石の使用も考えられ、それによって、第2のバルーンリミッタの制限要素を、例えば、エネルギー蓄積に抗して移動させることができる。
【0037】
本発明はさらに、糸を、巻取りスリーブを含むボビンから巻取りスリーブ上に巻き戻す方法に関する。
【0038】
最初に、糸体をその上に配置した紡績スリーブを、巻取機のワークステーションの特定の繰り出し位置に配置する。これは、対応する搬送装置を使い手動または自動で行うことができる。
【0039】
ワークステーションの巻取りスリーブホルダ内に存在する巻取りスリーブ上の糸を実際に巻き戻す前に、第1のバルーンリミッタが、紡績スリーブを取り囲むように紡績スリーブに対して位置決めされる。これによって、第1のバルーンリミッタが休止位置から作動位置に移動することが好ましい。追加または代替として、紡績スリーブを好ましくは第1のバルーンリミッタに対して垂直に移動させることも考えられる。位置決め後の第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離(A1)は、紡糸スリーブ上に存在する糸本体の円筒状部分の領域におけるボビンの半径よりも大きい。
【0040】
次いで、巻き戻し手順が開始され、紡績スリーブ上の糸の一部が巻取りスリーブ上に巻き戻され、糸欠陥はどれも典型的な方法で糸から取り除かれる。
【0041】
決められた始動信号に基づいて、第2のバルーンリミッタが紡績スリーブに対して位置決めされ、それによって、特に、休止位置、または休止位置と作動位置との間の中間位置から作動位置に移動し、前記リミッタが紡績スリーブを取り囲む。加えて、または代替として、紡績スリーブを好ましくは第2のバルーンリミッタに対して垂直に移動させることも考えられる。第2のバルーンリミッタは、位置決め後、特に、紡績スリーブ上にまだ残っている糸本体の円筒状部分の外側の作動位置に移動した後、紡績スリーブを取り囲み、この第2のバルーンリミッタの位置決め中に巻き戻しプロセスは中断されない。巻き戻しプロセス中に、紡績スリーブの回転軸が垂直方向にあるか、または垂直に対して45°未満の角度である場合、特に有利である。そのような場合、第2のバルーンリミッタは、常に第1のバルーンリミッタの下に配置されることが好ましい。
【0042】
第2のバルーンリミッタを第1のバルーンリミッタと共に位置決めし、特に、移動させると特に有利である。従って、第1のバルーンリミッタを紡績スリーブに対して位置決めするとき、例えば、その休止位置から作動位置に移動させるとき、第2のバルーンリミッタが、紡績スリーブに対して同時に位置決めされ、特に、その休止位置から中間位置に移動される。対照的に、第2のバルーンリミッタを位置決めするとき、例えば、その中間位置から、あるいは休止位置から開始して作動位置に移動させるとき、第1のバルーンリミッタは位置決めまたは移動されないことが有利である。
【0043】
さらに、第1のバルーンリミッタが10秒未満の時間で位置決めされ、前記リミッタが、最終的に休止位置から動作位置まで移動し、ピーシングプロセスの終了まで移動しないと特に有利である。加えて、または代替として、第2のバルーンリミッタが位置決めされ、例えばその休止位置から中間位置に移動される場合に、この移動が、第1のバルーンリミッタがその休止位置から作動位置に移動するのと同時に行われると有利である。そして、好ましくは、第2のバルーンリミッタもまた、10秒未満の時間で特にその作動位置に移動し、巻き戻しプロセスの終了までそこに留まることが好ましい。
【0044】
さらに、第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離(A2)は、紡績スリーブにまだ残っている糸本体の円筒状部分の領域におけるボビンの半径よりも小さい。したがって、第2のバルーンリミッタは、好ましくは円筒状部分の上に配置され、特定の長さの糸がすでに巻き戻された後の巻き戻しプロセス中に生じる糸バルーンの制限を実行する。つまり、第1のバルーンリミッタは、時間的に最初に糸バルーンに作用し、次に、第2のバルーンリミッタは、特定の巻き戻し時間の後に糸バルーンの空間的制限を実行する。
【0045】
第2のバルーンリミッタが作動位置をとった後、または紡績スリーブに対して位置決めされた後、紡績スリーブ上にまだ残っている糸が巻取りスリーブ上に巻き戻される。
【0046】
始動信号、つまり、第2のバルーンリミッタを紡績スリーブに対して位置決めし、それによって、好ましくは、その作動位置に移動させるときの基準となるものを以下に示す。
-巻き戻し手順の開始から、または第1のバルーンリミッタの位置決めからの巻き戻し時間(例えば、糸切れやクリアラーカットに起因する巻き戻し手順の停止時間を考慮する)
-回転軸に平行な繰り出し位置にあるボビンの円筒状部分の高さ(ワークステーションのセンサーによって検出できることが好ましい)
-紡績スリーブと巻取りスリーブの間の糸張力(ワークステーションの糸張力センサーによって検出できることが好ましい)
-ボビンの決められた位置での糸本体の直径(ワークステーションの対応するセンサーによって検出できることが好ましい)
-糸バルーンの最大直径(ワークステーションの対応するセンサーによって検出できることが好ましい)
-決められた位置での糸バルーンの直径(ワークステーションの対応するセンサーによって検出できることが好ましい)
【0047】
指摘のパラメータはまた、巻取りパラメータ(例えば、巻取り速度)または巻き戻される紡績スリーブのパラメータ(例えば、円柱状部分の直径またはその高さ、糸の量または長さ)を含むことができる。
【0048】
第1のバルーンリミッタおよび/または第2のバルーンリミッタはまた、迅速に(すなわち、1秒未満の時間で)または徐々に(より長い時間で)休止位置から作動位置に移動できるか、または紡績スリーブに対して位置決め可能である。
【0049】
休止位置および/または作動位置での第1のバルーンリミッタおよび/または第2のバルーンリミッタの絶対位置もまた、手動またはワークステーションのユーザによって決定できる。ユーザがボビンを再巻きするための1つまたは複数のデータまたは巻取り条件を入力した後、ワークステーションが1つまたは複数の前記位置を自動的に決定することも考えられる。ボビンのデータは、例えば、ボビンの重量、または、糸体の高さや直径、糸体の円筒状部分の寸法などの、1つまたは複数のボビンの寸法を含む。
【0050】
第1のバルーンリミッタの空間位置が巻き戻し手順の終了まで、特に前記リミッタが作動位置に移動した後は不変であり、および/または、第2のバルーンリミッタの空間位置が巻き戻し手順の終了まで、好ましくは前記リミッタがその作動位置に移動した後は不変であると、さらに有利である。
【0051】
第1のバルーンリミッタは、その休止位置、特に紡績スリーブの上方から開始して、作動位置、好ましくはトップボビンコーンの下方に移動することが好ましい。第2のバルーンリミッタは、垂直方向において、第1のバルーンリミッタの作動位置の下方にその作動位置を持つことが好ましい。2つのバルーンリミッタは、それぞれの作動位置で互いに10mm~120mm離間していることが好ましい。
【0052】
さらに、第1のバルーンリミッタが、休止位置から作動位置に移動する際に、紡績スリーブの回転軸に平行なボビン上に配置されると有利である。それによって、第1のバルーンリミッタの形状が変化しないことが好ましい。
【0053】
さらに、第2のバルーンリミッタがその休止位置から作動位置に移動する場合、第2のバルーンリミッタの複数の制限要素が第1の位置から第2の位置に移動、好ましく枢動すると、非常に有利である。この場合、(全体として見た)バルーンリミッタの形状が変化する。複数の制限要素は、第2のバルーンリミッタがその作動位置に移動するとき、例えば、ペンチのように互いの方に向かって移動することができる。
【0054】
本発明のさらなる利点は、以下の実施形態の例において説明される。それぞれを概略で示すと、
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、巻取機のワークステーションの正面図である。
図2図2は、本発明によるバルーン制限装置であって、第1および第2のバルーンリミッタがそれぞれの休止位置に配置されている状態を示す図である。
図3図3は、巻き戻しプロセス中にバルーンリミッタが異なる位置にあるバルーン制限装置を示す第1の図である。
図4図4は、巻き戻しプロセス中にバルーンリミッタが異なる位置にあるバルーン制限装置を示す第2の図である。
図5図5は、巻き戻しプロセス中にバルーンリミッタが異なる位置にあるバルーン制限装置を示す第3の図である。
図6図6は、巻き戻しプロセス中にバルーンリミッタが異なる位置にあるバルーン制限装置を示す第4の図である。
図7図7は、第1のバルーンリミッタの詳細を示す図である。
図8図8は、第1のバルーンリミッタの代替的な実施形態の詳細を示す図である。
図9図9は、作動位置にある第2のバルーンリミッタの詳細を示す図である。
図10図10は、休止位置にある図9の第2のバルーンリミッタの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の図の説明において、同一の参照番号は、様々な図における同一または少なくとも同等の特徴のために使用される。個々の特徴、またはその実施形態および/または作用様式は、典型的には、最初に言及されたときにのみ詳細に説明される。個々の特徴が再び詳細に説明されない場合、その設計および/または機能は、前述の特徴の設計および機能に対応する。
【0057】
さらに、以下の実施形態の例は、第1のバルーンリミッタ6および第2のバルーンリミッタ7が紡績スリーブ3に対して移動する変形例を示すことに留意されたい。当然のことながら、追加または代替として、紡績スリーブ3が第1のバルーンリミッタ6および/または第2のバルーンリミッタ7に対して移動することも考えられる。対応する同様な駆動装置を備え、紡績スリーブ3の移動を可能にする。
【0058】
図1は、巻取機の発明によるワークステーションを示すが、その全体は示さず、個々の構成要素が取り付けられるワークステーションのベース支持体14のみが示されている。ワークステーションは、糸1を、例えばリング精紡機から供給される紡績スリーブ3から、詳細には示されていないボビンホルダに保持され、巻き戻し手順中に、ワークステーションのドライブユニットによって既知の方法で回転が誘導される巻取りスリーブ4上に巻き戻す機能を有する。図示の例では、糸走行方向Gは下から上に延びる。紡績スリーブ3とその上にある糸本体17(まとめてボビン15と呼ぶ)は、巻き戻し手順の間、繰り出し位置2の領域にあるボビン支持体27によって固定される。紡績スリーブ3は比較的少量の糸1しか受け入れることができないので、複数の紡績スリーブ3からの糸1が次々に巻取りスリーブ4上に巻き取られる。図示の例のワークステーションは、複数の紡績スリーブ3の糸1を接合するための、クリアラーカットにも使用されるスプライサー23を備える。
【0059】
ワークステーションは、バルーン制限装置25(以下に詳細に説明)と、第1の旋回吸引管21と、第2の旋回吸引管22とをさらに備える。旋回吸引管21、22は、糸切れの後、巻き戻し手順の開始時、またはクリアラーカット時に、紡績スリーブ3または巻取りスリーブ4上の糸端の位置を特定し、把持する機能を持つ。糸欠陥を検出するために、それ自体既知の糸センサー26も備える。ワークステーションはさらに、一方では巻取りスリーブ4を駆動し、もう一方で、巻き戻しプロセス中に巻取りスリーブ4の領域で糸1を揺動させる働きをする溝付きローラ20(または、被駆動トラバース糸ガイド)を備える。
【0060】
最後に、図示のワークステーションは、バルーン制限装置25の後ろに糸1を案内するための(例えば、目の形をした)糸ガイド19と、巻き戻しプロセス中に糸張力を制御するための糸テンショナー24を備える。
【0061】
本発明によるバルーン制限装置25の可能な実施形態の1つを、図1から6に示す。
【0062】
前記装置は主として、第1のバルーンリミッタ6および第2のバルーンリミッタ7を備え、それらは対応する休止位置から作動位置に異なる時点で移動する。
【0063】
図2に示すように、基本的に紡績スリーブ3は、特に垂直に延びる回転軸9を有する。この場合、糸走行方向Gも垂直方向に延びる。ボビン15は主として、前記紡績スリーブ3と、その上に巻成された糸本体17とを含み、糸本体17は、典型的には、円筒状部分16と2つのボビンコーン28(分かり易いように、図2では1つの参照番号で示す)とを含む。
【0064】
図2では、第1のバルーンリミッタ6と第2のバルーンリミッタ7の両方が、それぞれに対応する休止位置にある。前記位置において、ボビン15は、2つのバルーンリミッタ6、7との衝突の危険性を回避しながら、図2に示す繰り出し位置2に設置されることができる。
【0065】
次のステップでは、第1のバルーンリミッタ6が、図3に示すワークステーションに移動し、ここで、前記リミッタは、糸本体17の円筒状部分16の周囲を完全に包囲する。これにより、第2のバルーンリミッタ7もまた移動し、図3に示す中間位置をとる。第1のバルーンリミッタ6は、糸本体17の円筒状部分16の上3分の1または少なくとも上半分の作動位置にあることが好ましい。第2のバルーンリミッタ7は、あらゆる位置で第1のバルーンリミッタ6の下に配置されることが好ましい。
【0066】
図3に示すように、第1のバルーンリミッタ6および第2のバルーンリミッタ7が、第1の駆動装置12によってガイド11に沿って移動する共通の支持体10に取り付けられていると、特に有利である。第1の駆動装置12は概略のみを図2に示す。
【0067】
第1のバルーンリミッタ6が作動位置をとる間またはその後、巻取りスリーブ4が対応する駆動装置によって回転することによって巻き戻し手順が開始される。これにより糸1は紡績スリーブ3からほどかれる。図3に見られるように、糸1の繰り出しにより糸1に遠心力が作用するので、糸本体17とその上に配置された糸ガイド19との間に糸バルーン5が形成される。巻き戻しプロセスの開始時には、糸ガイド19と糸1が糸本体17からほどかれる地点との間の距離がまだ比較的小さいので、前記遠心力はまだ比較的小さい。しかしながら、巻き戻しプロセスの過程で、トップボビンコーン28は、連続的または段階的に下方に移動する(例えば、図3と、巻き戻しプロセスの終了近くのボビン15を示す図6を比較)。
【0068】
図4は、図3の後の時点におけるボビン15およびバルーン制限装置25を示す。この図から分かるように、糸本体17の上部が紡績スリーブ3からすでに繰り出されているので、糸1が糸本体17からほどかれる位置は図3よりも低い。第1のバルーンリミッタ6の糸案内面8は、この地点で糸端と接触して糸バルーン5の空間的範囲を制限し、それによって、糸バルーン5が紡績スリーブ3の周りを動くことによって生じ、糸1に作用する遠心力と、その最終的な結果として生じる糸の張力を制限する。
【0069】
例えば、図5に示すように、トップボビンコーン28が特定の位置に到達すると、第2のバルーンリミッタ7は、前記中間位置から作動位置まで迅速にまたは徐々に移動する。この時点で、糸バルーン5の空間範囲は、第2のバルーンリミッタ7のみによって、またはボビンコーン28の位置に応じて、バルーンリミッタ6、7両方によって空間的に制限される。
【0070】
更なる巻き戻しプロセスの間、トップボビンコーン28は更に下方に移動し、特定の時点以降、第2のバルーンリミッタ7の糸案内面8のみが糸1と接触し、単独で糸バルーン5の制限を行う。この時点の様子を図6に示す。
【0071】
遅くとも、糸1全体が紡績スリーブ3から巻取りスリーブ4上に巻き戻されるまでに、2つのバルーンリミッタ6、7がそれぞれの休止位置に戻され、空の紡績スリーブ3が新しいボビン15と交換される。
【0072】
図7は、第1のバルーンリミッタ6の1部分の上面図である。この図から分かるように、糸1に接触する第1のバルーンリミッタ6の糸案内面8間の最小距離A1が、ボビン15の円筒状部分16の領域におけるボビン15の半径Rよりも大きいと有利である。これにより、第1のバルーンリミッタ6が上方からボビン15上に移動することができる。
【0073】
図7はさらに、第1のバルーンリミッタ6の糸案内面8が好ましくは円形であり、設計上閉じていることを示している。当然のことながら、糸案内面が異なる形状、例えば図8に示される多角形であることも可能である。糸案内面8は外側に完全に閉じている必要もない。
【0074】
第1バルーンリミッタ6とは対照的に、第2バルーンリミッタ7が作動位置である場合の第2バルーンリミッタ7の糸案内面8と紡績スリーブ3の回転軸9との間の最小距離A2が、ボビン15の円筒状部分16の領域におけるボビン15の半径Rより小さいと有利である。これにより、糸案内面8と紡績スリーブ3との間の距離は、第1のバルーンリミッタ6の場合よりも小さくなる。これにより、第2のバルーンリミッタ7が作動位置をとった時点から、糸バルーン5が可能な限り厳密に空間的に制限されることが最終的に保証される。
【0075】
さらに、図2~6、9、10は、第2のバルーンリミッタ7を休止位置と作動位置の間で移動可能にする目的で、第2のバルーンリミッタ7が、相対的に移動可能な2つ以上の制限要素18を備えると有利であることを示している。図2に概略的に示すように、2つの制限要素18は、ワークステーションの第2の駆動装置13によって移動可能であることが好ましい。第2の駆動装置13も、例えば、支持体10に配置することができ、支持体10と共に移動させることができる。
【0076】
図10は、休止位置にある第2のバルーンリミッタ7の2つの制限要素が取りうる位置の1つを示す。現位置における、第2のバルーンリミッタ7の糸案内面8と紡績スリーブ3の回転軸9との間の最小距離A3は、第2のバルーンリミッタ7の作動位置での対応する距離A2よりも大きい。これにより、巻き戻し工程前に、ボビン15は衝突せずに繰り出し位置2に移動することができる。
【0077】
本発明は、図示および説明した実施形態の例に限定されない。請求項範囲内の変更が可能であり、記載された特徴の任意の組み合わせもまた、前述の特徴が明細書または請求項の異なる部分または異なる実施形態の例に示されている場合でも、独立請求項の教示が矛盾しない限り可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 糸
2 繰り出し位置
3 紡績スリーブ
4 巻取りスリーブ
5 糸バルーン
6 第1のバルーンリミッタ
7 第2のバルーンリミッタ
8 糸案内面
9 回転軸
10 支持体
11 ガイド
12 第1の駆動体
13 第2の駆動体
14 ベース支持体
15 ボビン
16 紡績スリーブ上の糸本体の円筒状部分
17 糸本体
18 制限要素
19 糸ガイド
20 溝付きローラ
21 第1の旋回吸引管
22 第2の旋回吸引管
23 スプライサー
24 糸テンショナー
25 バルーン制限装置
26 糸センサー
27 ボビンホルダ
28 ボビンコーン
A1 第1のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離
A2 作動位置における第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離
A3 休止位置における第2のバルーンリミッタの糸案内面と紡績スリーブの回転軸との間の最小距離
G 糸走行方向
R ボビンの半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】