(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177122
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】トンネル掘削管理システム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20231206BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20231206BHJP
G01C 7/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E21D9/093 F
G01C15/00 104A
G01C7/06
G01C15/00 104D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089853
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
(72)【発明者】
【氏名】末松 幸人
(72)【発明者】
【氏名】大野 義範
(72)【発明者】
【氏名】三上 浩
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054FA01
2D054GA10
(57)【要約】
【課題】トンネル掘削工事において危険箇所の正確な予測を施工者に依存することなく達成できるトンネル掘削管理システムを提供する。
【解決手段】トンネル掘削管理システムは、3次元トンネル形状データを取得するための3次元スキャナ(S1)と、切羽の温度分布画像データを取得するサーモグラフィカメラ(S2)と、トンネル内での騒音データを取得する騒音計(S3)と、トンネル内の湧水量データを取得する湧水量計(S4)と、危険箇所の表示および警報の発報を行う出力部(110)とを有し、プロセッサが、切羽の硬軟分布を解析し(105)、切羽形状およびトンネル側面形状を抽出し(103,104)トンネルの変状状態を検知し(106)、騒音データを解析し(107)、AI解析部(108)が機械学習モデル(M1、M2)を用いてトンネルの変状発生の危険箇所を予測する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削管理システムであって、
3次元トンネル形状データを取得するための3次元スキャナと、
切羽の温度分布画像データを取得するサーモグラフィカメラと、
トンネル内での騒音データを取得する騒音計と、
トンネル内の湧水量データを取得する湧水量計と、
前記3次元トンネル形状データと、前記温度分布画像データと、前記騒音データと、前記湧水量データとを入力し、変状発生時の危険箇所を予測する少なくとも1つのプロセッサと、
危険箇所の表示および警報の発報を行う出力部と、
を有し、前記プロセッサが、
前記温度分布画像データから前記切羽の硬軟分布を解析し、
前記3次元トンネル形状データから切羽形状およびトンネル側面形状を抽出して前記トンネルの変状状態を検知し、
前記騒音データを解析して切羽崩落の可能性を示す音成分の有無を判定し、
前記切羽の硬軟分布と、前記切羽の硬軟分布に基づいて推定された湧水箇所および湧水量と、前記トンネルの変状状態と、前記切羽崩落の可能性を示す音成分の解析結果とに基づいて構成された機械学習モデルを用いて、前記トンネルの変状発生の危険箇所を予測する、
ことを特徴とするトンネル掘削管理システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記切羽の温度分布画像データから所定の基準レベル以上の濃度で表示される領域を軟岩箇所および湧水箇所として識別し、当該領域の濃度に応じて水量を推定することを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削管理システム。
【請求項3】
前記3次元トンネル形状データから取得された切羽形状およびトンネル側面形状データと、前記切羽の硬軟分布データと、前記湧水量のデータと、前記推定された湧水箇所および湧水量と予測された変状危険箇所とのデータと、を時系列で格納する記憶部を更に有し、
前記記憶部に格納された時系列の各データを前記機械学習モデルの機械学習に利用することを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘削管理システム。
【請求項4】
前記出力部は前記プロセッサの指示に従って前記トンネルの変状発生の危険箇所を表示し、危険レベルに応じて警報を発報する、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のトンネル掘削管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路用、鉄道用あるいは水路用などのトンネルの掘削工事における掘削管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削工事において、切羽面の変位や肌落ち(崩落)などの変状を検知することはトンネル施工を安全に進める上でも極めて重要である。このような観点から、特許文献1には、ラインレーザで切羽面に照射された輪郭線をデジタルカメラで撮影し、その撮影データから輪郭線の変化を切羽面の変状として検知するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたシステムは、特別な輪郭線をレーザ照射して撮影することにより、その時点での切羽面の変状を検知するだけである。したがって、崩落の危険箇所の予測は、経験のある施工者が撮影された輪郭線の変化を見て判断するしかなかった。このために危険箇所の予測結果が施工者の経験等に依存することとなり、人に依存しない正確な予測ができない上に、自動化が困難であり施工者によるばらつきを避けることができない。
【0005】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、トンネル掘削工事において危険箇所の正確な予測を施工者に依存することなく達成できるトンネル掘削管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明の一実施の形態によれば、トンネル掘削管理システムであって、3次元トンネル形状データを取得するための3次元スキャナと、切羽の温度分布画像データを取得するサーモグラフィカメラと、トンネル内での騒音データを取得する騒音計と、トンネル内の湧水量データを取得する湧水量計と、前記3次元トンネル形状データと、前記温度分布画像データと、前記騒音データと、前記湧水量データとを入力し、変状発生時の危険箇所を予測する少なくとも1つのプロセッサと、危険箇所の表示および警報の発報を行う出力部と、を有し、前記プロセッサが、前記熱分布画像データから前記切羽の硬軟分布を解析し、前記3次元トンネル形状データから切羽形状およびトンネル側面形状を抽出して前記トンネルの変状状態を検知し、前記騒音データを解析して切羽崩落の可能性を示す音成分の有無を判定し、前記切羽の硬軟分布と、前記切羽の硬軟分布に基づいて推定された湧水箇所および湧水量と、前記トンネルの変状状態と、前記切羽崩落の可能性を示す音成分の解析結果とに基づいて構成された機械学習モデルを用いて、前記トンネルの変状発生の危険箇所を予測する、ことを特徴とする。
また本発明の一実施の形態によれば、前記プロセッサが、前記切羽の温度分布画像データから所定の基準レベル以上の濃度で表示される領域を湧水箇所として識別し、当該領域の濃度に応じて水量を推定することができる。
また本発明の一実施の形態によれば、前記3次元トンネル形状データから取得された切羽形状およびトンネル側面形状データと、前記切羽の硬軟分布データと、前記湧水量のデータと、前記推定された湧水箇所および湧水量と予測された変状危険箇所とのデータと、を時系列で格納する記憶部を更に有し、前記記憶部に格納された時系列の各データを前記機械学習モデルの機械学習に利用することができる。
また本発明の一実施の形態によれば、前記出力部は前記プロセッサの指示に従って前記トンネルの変状発生の危険箇所を表示し、危険レベルに応じて警報を発報することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施の形態によれば、切羽面の硬軟分布データと、推定された湧水箇所および湧水量と、変状状態データと、騒音解析結果とを用いて変状危険箇所を予測することができる。これにより、たとえば変状発生箇所で多量の水が湧き出していれば崩落の危険が高く、さらに騒音解析で崩落前兆を示す音成分が検出されれば、その湧水箇所で崩落する危険が極めて高いと判断できる。したがって危険箇所を早期に通知し警報を発報することで工事の安全性を大幅に高めることができる。
また、本発明の一実施の形態によれば、前記切羽の温度分布画像データから容易に硬軟分布および湧水箇所の特定ならびに湧水量の推定が可能となる。
また本発明の一実施の形態によれば、切羽形状およびトンネル側面形状データと、前記切羽の硬軟分布データと、湧水量のデータと、推定された湧水箇所および湧水量と予測された変状危険箇所データと、を時系列で蓄積することで、機械学習モデルの機械学習に利用することができ、迅速で的確な危険箇所予測が可能となる。
また本発明の一実施の形態によれば、前記出力部がトンネルの変状発生の危険箇所を表示し、危険レベルに応じて警報を発報することで、危険箇所を早期に通知し警報を発報することで工事の安全性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態によるトンネル掘削管理システムを説明するためのトンネル断面図である。
【
図2】本実施形態によるトンネル掘削管理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態によるトンネル掘削管理システムの温度分布画像に基づく湧水箇所および水量予測機能を説明するための模式図である。
【
図4】本実施形態によるトンネル掘削管理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1に示するようなトンネル掘削工事を一例として、本発明の一実施形態によるトンネル掘削管理システムについて詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、トンネル10内には3DスキャナS1、サーモグラフィカメラS2、騒音計S3および湧水量計S4が設けられている。3DスキャナS1、サーモグラフィカメラS2および騒音計S3は移動可能な台車に搭載されている。3DスキャナS1は切羽12近傍の3次元形状を取得することができる。サーモグラフィカメラS2は赤外線を利用して切羽12の温度分布画像を取得する赤外線カメラである。騒音計S3はトンネル10内の騒音、特に切羽12からの音を検出する。後述するように、騒音を解析することで切羽前方およびトンネル側面の崩落可能性を判定することができる。湧水量計S4はトンネル内壁11および切羽12から湧き出す水をトンネル外へ排出する排水設備21に設けられ、排出される湧水の水量を計測する。
【0011】
本実施形態によるトンネル掘削管理システム100は、上述した3DスキャナS1、サーモグラフィカメラS2、騒音計S3および湧水量計S4により取得されたデータを用いてトンネル掘削工事における危険箇所の正確な予測を行うことができる。
【0012】
以下、本実施形態によるトンネル掘削管理システムの構成および動作について
図2~
図4を参照しながら説明する。なお、本実施形態によるトンネル掘削管理システムはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等の1個以上のプロセッサを有する汎用サーバあるいはパーソナルコンピュータ上に構築可能である。
【0013】
1.システム構成
図2に例示するように、本発明の一実施形態によるトンネル掘削管理システム100は各種データを入力するための入力部101を有する。入力部101はトンネル内に設けられた3DスキャナS1、サーモグラフィカメラS2、騒音計S3および湧水量計S4と有線あるいは無線で接続され、3Dスキャンデータ、温度分布画像データ、騒音データおよび湧水量データをそれぞれ入力する。また入力部101はシステムのキーボード、ポインティングデバイス等の入力装置に接続され、種々の設定データを入力することができる。
【0014】
トンネル掘採管理システム100は、システム全体の動作を制御する制御部102を有し、制御部102が入力部101、切羽形状抽出部103、トンネル側面形状抽出部104、切羽面硬軟分布解析部105、変状状態検知部106、騒音解析部107、AI(Artificial Intelligence)解析部108、データ蓄積部109、および出力部110に接続されている。切羽形状抽出部103およびトンネル側面形状抽出部104は、3DスキャナS1により取得された3Dスキャンデータからそれぞれ切羽形状およびトンネル側面形状を抽出し、トンネル形状データ蓄積部201に時系列で格納する。
【0015】
切羽面硬軟分布解析部105は、サーモグラフィカメラS2から入力した切羽12の温度分布画像データを解析し、その温度領域を所定の温度レベル基準に従って区分し、温度レベルが比較的低い部分を軟岩と判定する。こうして解析された切羽面の硬軟分布データが硬軟分布データ蓄積部202に時系列で格納される。また後述するように温度分布画像データから切羽12における湧水箇所およびその水量を推定することができる。なお、切羽面硬軟分布解析部105は機械学習モデルを用いて構成することもできる。
【0016】
変状状態検知部106は、切羽形状抽出部103およびトンネル側面形状抽出部104から取得された現時点の切羽形状およびトンネル側面形状データと、トンネル形状データ蓄積部201に蓄積された切羽形状およびトンネル側面形状データと、を用いてトンネルの潰れ状態(変状状態)を検知する。この変状状態検知部106も機械学習モデルを用いて構成することができる。
【0017】
騒音解析部107は騒音計S3から騒音データを入力し、音声解析により切羽面崩落の前兆を示す音を検出する。崩落の前兆を示す音は事前に登録してもよいし、機械学習モデルに学習させてもよい。
【0018】
データ蓄積部109は、トンネル形状データ蓄積部201、硬軟分布データ蓄積部202、水量データ蓄積部203、および危険箇所推定データ蓄積部204を有する。トンネル形状データ蓄積部201は、上述したように、切羽形状抽出部103およびトンネル側面形状抽出部104により取得された切羽形状およびトンネル側面形状データを時系列で蓄積する。硬軟分布データ蓄積部202は、上述したように、サーモグラフィカメラS2から入力した切羽12の温度分布画像データを用いて切羽面の硬軟分布データを時系列で蓄積する。水量データ蓄積部203は湧水量計S4により取得された水量データと後述する推定された水量データを時系列で蓄積する。危険箇所推定データ蓄積部204は、後述するAI解析部108で推定された湧水箇所および湧水量と予測された変状危険箇所のデータを時系列で蓄積する。また、これらの蓄積データがAI解析部108での機械学習モデルの構築に利用され得る。
【0019】
AI解析部108は、上述したデータ蓄積部109に蓄積された時系列のトンネル形状データ、時系列の切羽面硬軟分布データおよび時系列の湧水の水量データと、変状状態検知部106から取得した変状状態データと、騒音解析部107から取得した解析結果と、を入力し、機械学習モデルである湧水箇所推定モデルM1および変状危険箇所予測モデルM2を用いて、切羽面の湧水箇所と変状危険箇所を予測する。
【0020】
湧水箇所推定モデルM1は、時系列の切羽面硬軟分布データおよび時系列の湧水の水量データを入力データとして、湧水箇所および湧水量を予測する。変状危険箇所予測モデルM2は、湧水箇所推定モデルM1により予測された湧水箇所および湧水量と、変状状態検知部106から取得した変状状態データと、騒音解析部107から取得した解析結果とを入力し変状危険箇所を予測する。
【0021】
機械学習モデルはたとえばディープラーニングにより構築され得る。ディープラーニング技術は、多数のデータが互いに影響し合っている場合でも適切な教師データを与えてニューロンパラメータを調整することで、誤差の十分小さい機械学習モデルを構築できる。湧水箇所推定モデルM1および変状危険箇所予測モデルM2の各々は、所定の教師データを用いて構築され得るが、過去のデータ、すなわちトンネル形状の経時変化、湧水量の経時変化、硬軟分布の経時変化、湧水箇所および湧水量の経時変化、変状箇所の経時変化等の各データを用いて構築され得る。
【0022】
出力部110はコンピュータのモニタ等の表示部であり、トンネル形状、切羽面の硬軟分布、変状箇所、AI解析部108で予測された湧水箇所および湧水量、予測された変状危険箇所を表示するとともに、予測された変状危険箇所の危険レベルに応じて警報等を発報する。
【0023】
なお、制御部102、切羽形状抽出部103、トンネル側面形状抽出部104、切羽面硬軟分布解析部105、変状状態検知部106、騒音解析部107およびAI解析部108の機能は、図示しないメモリに格納されたプログラムをプロセッサ上で実行することにより実現することができる。
【0024】
2.湧水箇所の推定
図3に例示するように、切羽面硬軟分布解析部105はサーモグラフィカメラS2から入力した切羽12の温度分布画像IMGを分析し、所定の濃度レベル105aに従った温度領域に区分する。湧水箇所推定モデルM1は、温度分布画像IMGと温度領域区分を参照して、湧水箇所を推定する。ここでは温度分布画像IMGにおける所定基準レベルより高い濃度の領域が湧水領域12a、12bおよび12cとして識別されたものとする。本実施形態では、一例として切羽12からの湧水が周囲より低い温度であると仮定し、温度が低い領域ほど濃い青色で表示されるものとする。逆に湧水が周囲より高い温度であれば、温度が高い領域ほど濃い赤色で表示される。いずれにしても温度分布画像の高濃度領域を湧水箇所として識別可能である。
【0025】
切羽面硬軟分布解析部105は、さらに所定基準レベルより高い濃度の湧水領域の面積とその領域における最高濃度値とを算出して湧水量を推定することもできる。湧水の水量は湧水領域の面積が大きいほど、濃度が高いほど大きいと推定される。このように推定された湧水領域の位置情報と推定水量とが水量データ蓄積部203に格納される。
【0026】
3.変状危険箇所の予測
変状危険箇所予測モデルM2は、切羽面硬軟分布解析部105により得られた切羽面の硬軟分布データと、湧水箇所推定モデルM1により予測された湧水箇所および湧水量と、変状状態検知部106から取得したトンネルの潰れ具合を示す変状状態データと、騒音解析部107から取得した解析結果とを入力して変状危険箇所を予測する。すなわち、トンネルの形状が変化している箇所で多量の水が湧き出していれば崩落の危険が高く、さらに騒音データで崩落前兆を示す音成分が検出されれば、その湧水箇所で崩落する危険が極めて高いと判断できる。
【0027】
4.動作
以下、
図4を参照しながら、本実施形態におけるトンネル掘削管理システムl00の動作について説明する。
【0028】
図4に例示するように、制御部102は3DスキャナS1、サーモグラフィカメラS2、騒音計S3および湧水量計S4からそれぞれ3Dスキャンデータ、温度分布画像データ、騒音データおよび湧水量データをそれぞれ入力する(動作301)。切羽面硬軟分布解析部105はサーモグラフィカメラS2から入力した切羽12の温度分布画像IMGを分析し、所定の濃度レベル105aに従った温度領域に区分する(動作302)。変状状態検知部106は、切羽形状抽出部103およびトンネル側面形状抽出部104が3Dスキャンデータから取得した切羽形状およびトンネル側面形状とトンネル形状データ蓄積部201から取得した時系列データとを用いてトンネルの変状状態を検知する(動作303)。騒音解析部107は、騒音計S3からの騒音データを解析し、事前に登録あるいは学習した崩落前兆を示す音成分の有無を判定する(動作304)。
【0029】
続いて、AI解析部108は、湧水箇所推定モデルM1に従って温度分布画像IMGと温度領域区分から湧水箇所および湧水量を推定し、変状危険箇所予測モデルM2に従って、切羽面の硬軟分布データと、湧水箇所推定モデルM1により予測された湧水箇所および湧水量と、変状状態検知部106から取得したトンネルの潰れ具合を示す変状状態データと、騒音解析部107から取得した解析結果とを入力して変状危険箇所を予測する(動作305)。
【0030】
制御部102は、AI解析部108により予測された湧水箇所および湧水量と、変状危険箇所とを出力部110に表示し、危険レベルに応じて坑内および地上に警報を発報する(動作306)。たとえば、変状状態データが示すトンネルの潰れ具合が所定レベルを超え、軟岩箇所での推定された湧水量が所定値を超え、かつトンネル内の音に崩落の官能性を示す成分が含まれている場合、制御部102は出力部110から警報を発報する。
【0031】
以上述べたように、本実施形態によれば、トンネル掘削工事において変状発生、湧水箇所や湧水量の増大、坑内の音の異常等から危険箇所を予測して警報を発することができる。これにより危険箇所の正確な予測を施工者に依存することなく報知することができ、安全性を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 トンネル
11 トンネル内壁
12 切羽
21 排水設備
22 ドリルジャンボ
100 トンネル掘削管理システム
101 入力部
102 制御部
103 切羽形状抽出部
104 トンネル側面形状抽出部
105 切羽面硬軟分布解析部
106 変状状態検知部
107 騒音解析部
108 AI解析部
109 データ蓄積部
110 出力部
201 トンネル形状データ蓄積部
202 硬軟分布データ蓄積部
203 水量データ蓄積部
204 危険箇所推定データ蓄積部
M1 湧水箇所推定モデル
M2 変状危険箇所予測モデル
S1 3Dスキャナ
S2 サーモグラフィカメラ
S3 騒音計
S4 湧水量計