(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017714
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】巻取機の作業装置の操作方法および巻取機
(51)【国際特許分類】
B65H 57/22 20060101AFI20230131BHJP
B65H 63/00 20060101ALI20230131BHJP
D01H 1/42 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B65H57/22
B65H63/00 Z
D01H1/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110684
(22)【出願日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 118 843.1
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】512013754
【氏名又は名称】マスチネンファブリック ライター アーゲー
【氏名又は名称原語表記】MASCHINENFABRIK RIETER AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstr. 20, 8406 Winterthur Swizerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アダルベルト シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラード クスタース
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可能な限り一定の巻き取り速度で巻き直しを行うことを可能にする巻取機の作業装置の操作方法を提供する。
【解決手段】糸(3)がボビン(22)から巻取筒体に巻き直される巻取機の作業装置(2)の操作方法に関し、バルーン制限装置(18)は、導糸面(24、27)を有するバルーン制限器(23、26)を備え、紡糸筒体(4)上の糸の第1の部分が巻取筒体上に巻き直され、糸の糸引き出し力や糸引き出し力を表す測定変数が捕捉される。糸引き出し力の上昇が検出されると、バルーン制限器は休止位置から作業位置に移行し、糸の第2の部分が後巻取筒体上に巻き直されるか、バルーン制限器の導糸面の紡糸筒体の回転軸(25)からの距離(a1、a2)が減少して紡糸筒体上に存在する糸の第2の部分がその後巻取筒体上に巻き直されるか、第2のバルーン制限器(26)が休止位置から作業位置に移行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取装置(5)によって糸(3)が紡糸筒体(4)を備えたボビン(22)から巻取筒体(6)に巻き直される、巻取機(1)の作業装置(2)の操作方法であり、
巻き直し手順中に紡糸筒体(4)と巻取筒体(6)との間に形成される糸バルーン(14)がバルーン制限装置(18)によって少なくとも1つの幅方向に制限され、
バルーン制限装置(18)は、休止位置(R)から作業位置(A)に移行するための導糸面(24、27)を有するバルーン制限器(23、26)を少なくとも1つ備え、
紡糸筒体(4)上に存在する糸(3)の第1の部分が巻取筒体(6)上に巻き直され、糸(3)の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉され、導糸面(24、27)は、少なくとも1つのバルーン制限器(23、26)の作業位置(A)において紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの距離(a1、a2)を含む操作方法であって、
所定量の糸引き出し力の増加が検出されると、バルーン制限装置(18)の少なくとも1つのバルーン制限器(23、26)が休止位置(R)から作業位置(A)に移行すること、
および、紡糸筒体(4)上に存在する糸(3)の第2の部分がその後巻取筒体(6)上に巻き直され、これにおいて糸バルーン(14)が導糸面(24、27)によって制限されることを特徴とする操作方法。
【請求項2】
巻取装置(5)によって糸(3)が紡糸筒体(4)を備えたボビン(22)から巻取筒体(6)に巻き直される、巻取機(1)の作業装置(2)の操作方法であり、
巻き直し手順中に紡糸筒体(4)と巻取筒体(6)との間に形成される糸バルーン(14)がバルーン制限装置(18)によって少なくとも1つの幅方向に制限され、
バルーン制限装置(18)は、導糸面(24、27)を有するバルーン制限器(23、26)を少なくとも1つ備え、
紡糸筒体(4)上に存在する糸(3)の第1の部分が巻取筒体(6)上に巻き直され、糸(3)の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉され、糸(3)の第1の部分の巻き直し中に糸バルーン(14)が導糸面(24、27)によって制限され、導糸面(24、27)は、少なくとも巻き直しの開始時に紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの距離(a1、a2)を含む操作方法であって、
所定量の糸引き出し力の増加が検出されると、導糸面(24、27)から紡糸筒体(4)の回転軸(25)までの距離(a1、a2)が減少すること、
および、紡糸筒体(4)上に存在する糸(3)の第2の部分がその後巻取筒体(6)上に巻き直され、これにおいて糸バルーン(14)が回転軸(25)からの減少した距離(a1、a2)で導糸面(24、27)によって制限されることを特徴とする操作方法。
【請求項3】
巻取装置(5)によって糸(3)が紡糸筒体(4)を備えたボビン(22)から巻取筒体(6)に巻き直される、巻取機(1)の作業装置(2)の操作方法であり、
巻き直し手順中に紡糸筒体(4)と巻取筒体(6)との間に形成される糸バルーン(14)がバルーン制限装置(18)によって少なくとも1つの幅方向に制限され、
バルーン制限装置(18)は、第1の導糸面(24)を有する第1のバルーン制限器(23)を備え、
紡糸筒体(4)上に存在する糸(3)の第1の部分が巻取筒体(6)上に巻き直され、糸バルーン(14)が第1の導糸面(24)によって制限され、糸(3)の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉され、第1のバルーン制限器(23)の第1の導糸面(24)は、少なくとも糸(3)の第1の部分の巻き直し中に紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの第1の距離(a1)を含む操作方法であって、
所定量の糸引き出し力の増加が検出されると、紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの第1の導糸面(24)の第1の距離(a1)が減少すること、および、紡糸筒体(4)上に存在する糸(3)の第2の部分がその後巻取筒体(6)上に巻き直され、これにおいて糸バルーン(14)が回転軸(25)からの減少した距離(a1)で第1の導糸面(27)によって制限されること、
ならびに/または、第2の導糸面(27)を有するバルーン制限装置(18)の少なくとも1つの第2のバルーン制限器(26)が休止位置(R)から作業位置(A)に移行すること、および、巻取筒体(4)上に存在する糸(3)の第2の部分がその後巻取筒体(6)上に巻き直され、これにおいて糸バルーン(14)が第2の導糸面(27)によって制限されることを特徴とする操作方法。
【請求項4】
第2の導糸面(27)は、第2のバルーン制限器(26)の作業位置(A)において紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの距離として第1の距離(a1)よりも短い第2の距離(a2)を含むことを特徴とする請求項3に記載の操作方法。
【請求項5】
限界値(28)が糸引き出し力および/または糸引き出し力を表す測定変数に対して定められ、その値が限界値(28)を超えると、バルーン制限器(23、26)がその作業位置(A)に移行し、および/または距離(a1、a2)が減少することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の操作方法。
【請求項6】
糸引き出し力および/または糸引き出し力を表す測定変数の許容変動範囲(30)が定められ、その値が変動範囲(30)を超えると、バルーン制限器(23、26)がその作業位置(A)に移行し、および/または距離(a1、a2)が減少することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の操作方法。
【請求項7】
糸引き出し力が張力センサー(10)によって捕捉されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の操作方法。
【請求項8】
糸引き出し力を表す測定変数として、糸引張器(7)の引張要素(8)の位置および/または移動行程(s)が捕捉されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の操作方法。
【請求項9】
引張要素(8)の移動行程(s)が、作動変数を評価することによって、および/または糸引張器(7)、特に引張要素(8)の駆動器(9)の負荷パラメータを測定することによって捕捉されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の操作方法。
【請求項10】
紡糸筒体(4)を備えたボビン(22)から巻取筒体(6)に巻取装置(5)によって糸(3)を巻き直すための巻取機(1)の作業装置(2)であり、
巻き直し手順中に紡糸筒体(4)と巻取筒体(6)との間に形成される糸バルーン(14)を少なくとも1つの幅方向に制限するためのバルーン制限装置(18)であって、少なくとも巻き直し中に紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの第1の距離(a1)を含む第1の導糸面(24)を有する第1のバルーン制限器(23)を備えたバルーン制限装置(18)と、
糸(3)の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数を捕捉するための少なくとも1つの捕捉装置(17)と、
少なくとも1つの捕捉装置(17)に接続された制御部(13)と、を有する作業装置(2)であって、
制御部(13)がバルーン制限装置(18)に接続されること、
および、バルーン制限装置(18)の第1のバルーン制限器(23)が、少なくとも1つの捕捉装置(17)の信号の作用によって休止位置(R)から作業位置(A)に移行することができること、もしくは、紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの第1の導糸面(24)の第1の距離(a1)が、少なくとも1つの捕捉装置(17)の信号の作用によって減少することができること、
および/または、バルーン制限装置(18)が、第2の導糸面(27)を有し、少なくとも1つの捕捉装置(17)の信号の作用によって休止位置(R)から作業位置(A)に移行することができる第2のバルーン制限器(26)を少なくとも1つ備えたことを特徴とする作業装置(2)。
【請求項11】
第2の導糸面(27)は、少なくとも1つの第2のバルーン制限器(26)の作業位置(A)において紡糸筒体(4)の回転軸(25)からの距離として第1の距離(a1)よりも短い第2の距離(a2)を含むことを特徴とする請求項10に記載の作業装置(2)。
【請求項12】
少なくとも1つの捕捉装置(17)は、張力センサー(10)であることを特徴とする請求項10または11に記載の作業装置(2)。
【請求項13】
少なくとも1つの捕捉装置(17)は、近接スイッチまたは距離センサーまたは検出センサー、特に光センサー(11)であることを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の作業装置(2)。
【請求項14】
少なくとも1つの捕捉装置(17)は、移動センサー(11)であることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の作業装置(2)。
【請求項15】
少なくとも1つの捕捉装置(17)は、駆動器(9)の制御器であることを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載の作業装置(2)。
【請求項16】
第1のバルーン制限器(23)および/または少なくとも1つの第2のバルーン制限器(26)は、バルーン限定リングであることを特徴とする請求項10~15のいずれか1項に記載の作業装置(2)。
【請求項17】
第1および/または少なくとも1つの第2のバルーン制限器(23、26)は、第1の位置(I)から第2の位置(II)に変位するための少なくとも2つの制限要素(29)を備えたことを特徴とする請求項10~16のいずれか1項に記載の作業装置(2)。
【請求項18】
第1および/または少なくとも1つの第2のバルーン制限器(23)は、ボビン交換位置に移行することができることを特徴とする請求項10~17のいずれか1項に記載の作業装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取装置によって糸が紡糸筒体を備えたボビンから巻取筒体に巻き直される、巻取機の作業装置の操作方法であって、紡糸筒体と巻取筒体との間に形成される糸バルーンが巻き直し手順中にバルーン制限装置によって少なくとも1つの幅方向に制限される操作方法に関する。バルーン制限装置は、導糸面を有するバルーン制限器を少なくとも1つ備える。紡糸筒体上に存在する糸の第1の部分が巻取筒体上に巻き直され、糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉され、導糸面は、少なくともバルーン制限器の1つの作業位置において、または少なくとも糸の第1の部分の巻き直し中に、紡糸筒体の回転軸からの特定の距離を含む。
【0002】
本発明はさらに、巻取機の作業装置の操作方法であって、バルーン制限装置が、少なくとも作業位置において紡糸筒体の回転軸からの第1の距離を含む第1の導糸面を有する第1のバルーン制限器を備え、紡糸筒体上に存在する糸の第1の部分が巻取筒体上に巻き直され、糸バルーンが第1の導糸面によって制限され、糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉される操作方法に関する。
【0003】
最後に、本発明は、巻取装置によって糸をボビンから巻取筒体に巻き直すための巻取機の作業装置であって、紡糸筒体と巻取筒体との間に形成される糸バルーンを巻き直し工程中に少なくとも1つの幅方向に制限するためのバルーン制限装置であって、第1の導糸面を有する第1のバルーン制限器であって、第1の導糸面が少なくとも当該第1のバルーン制限器の作業位置において紡糸筒体の回転軸からの第1の距離を含む第1のバルーン制限器を備えたバルーン制限装置と、糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数を捕捉するための少なくとも1つの捕捉装置と、少なくとも1つの捕捉装置に接続された制御装置と、を有する作業装置に関する。
【背景技術】
【0004】
巻取機は、例えばリング精紡機に由来する巻き取りがなされた紡糸筒体から巻取筒体に糸を巻き直すのに有用であり、これにより、より大きなボビン(一般に、交差巻ボビンとして知られる)が製造される。これは、紡糸筒体は一般に比較的少ししか糸を有さないため、その後の糸のさらなる処理に必要である。巻取機は、巻き直し工程を概ね互いに独立して行う複数の巻取装置を備える。巻き直し工程中、個々の紡糸筒体からの糸は、継ぎ具によって順次単一の連続糸に結合される。巻取機での巻き直し工程はさらに、上流の精紡機の紡糸工程で発生する糸欠陥を糸クリアラーによって除去するために用いられる。
【0005】
紡糸筒体から巻取筒体への巻き直し中に、巻き直し工程中に巻取筒体が存在する繰り出し位置と、糸走行方向において紡糸筒体よりも下流に存在する糸ガイドとの間に発生する糸バルーン。この糸バルーンは、糸が紡糸筒体から解きほぐされるときに糸に作用する遠心力によって形成される。巻き直し工程中の糸バルーンの半径が大きいほど、糸バルーンの領域における糸張力が大きくなる。このため、巻き直し工程中に糸張力をできるだけ低く保ち、これにより糸切れの量や糸品質低下の危険を最小限に抑えるために、糸バルーンに影響を与えてこれを制限する多くの試みが既になされている。
【0006】
特許文献1から、1つのバルーン制限装置を有する作業装置を複数有する巻取機が知られている。このバルーン制限装置は、垂直方向に調整可能であり、このため巻き取り工程中に下向きに変位し、紡糸ボビンの解きほぐしの進捗に追従することができる。当該バルーン制限装置は、巻き取り工程中にボビン錐部の位置を垂直方向に継続的に追跡するチューブであって、当該チューブからボビン錐部までの半径方向距離がほぼ一定に保たれるように追跡を行うチューブを備える。当該バルーン制限装置はさらに、糸張力センサーの信号の作用によって垂直方向に追跡を行う別のチューブを備える。これにより、単糸バルーンとして知られているものが、非常に速い巻き取り速度でも、巻き取り工程全体を通じて確実に調節されることが企図される。当該バルーン制限装置は、設計が比較的複雑である。それでもなお、ボビンの巻き取り状態によっては、比較的高い糸張力が発生することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許公開10 2006 052826 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、可能な限り一定の巻き取り速度で巻き直しを行うことを可能にする巻取機の作業装置の操作方法を提案することである。本発明はさらに、巻取機の作業装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項の特徴を有する方法および作業装置によって達成される。
【0010】
巻取機の作業装置の操作方法において、巻取装置によって糸が紡糸筒体を備えたボビンから巻取筒体に巻き直され、紡糸筒体と巻取筒体との間に形成される糸バルーンが巻き直し手順中にバルーン制限装置によって少なくとも1つの幅方向に制限される。バルーン制限装置は、休止位置から作業位置に移行するための導糸面を有するバルーン制限器を少なくとも1つ備え、導糸面は、バルーン制限器の作業位置において紡糸筒体の回転軸からの第1の距離を含む。紡糸筒体上に存在する糸の第1の部分が巻取筒体上に巻き直され、糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉される。これにより、所定値分の糸引き出し力の上昇が検出されると、バルーン制限装置の少なくとも1つのバルーン制限器が休止位置から作業位置に移行すること、および、紡糸筒体上に存在する糸の第2の部分が紡糸筒体上に巻き直され、これにおいて糸バルーンが導糸面によって制限されることが想定される。
【0011】
ここで、作業位置は、巻き直し中にバルーン制限器によって採用されるバルーン制限器の位置であって、バルーン制限器が糸バルーンを制限する位置である。これに対し、休止位置は、バルーン制限器が糸バルーンを制限しない位置である。ここで、休止位置は、空の紡糸ボビンを完全に巻かれたボビンと交換することが可能なボビン交換位置であってもよい。一方、バルーン制限器が休止位置とは異なるボビン交換位置に移行することができることも可能である。
【0012】
回転軸は、一般に回転対称である紡糸筒体の中心縦軸でもある。ただし、巻き直し手順中は、紡糸筒体の回転は起こらない。
【0013】
導糸面から回転軸までの距離は、導糸面から回転軸までの最小距離も意味する。導糸面は円筒状に設計することができ、これにより導糸面はすべての点で回転軸から同じ距離に位置することになる。他方、導糸面は、多角形またはその他の不規則な形状であってもよい。この場合、「距離」という用語は、いずれの場合も導糸面から回転軸までの最小距離を指す。
【0014】
巻取機の作業装置の第2の操作方法によれば、紡糸筒体上に存在する糸の第1の部分が巻取筒体上に巻き直され、糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉され、糸バルーンは導糸面によって制限される。ここで、少なくとも1つのバルーン制限器の導糸面は、少なくとも糸の第1の部分の巻き直し中に、紡糸筒体の回転軸からの特定の距離を含む。この第2の方法では、所定値分の糸引き出し力の上昇が検出されると、導糸面から巻取筒体の回転軸までの距離が減少すること、および、紡糸筒体上に存在する糸の第2の部分がその後巻取筒体上に巻き直され、これにおいて糸バルーンが回転軸からの減少した距離で導糸面によって制限されることが提案される。
【0015】
第3の方法によれば、バルーン制限装置は、第1の導糸面を有する第1のバルーン制限器を備える。ここで、紡糸筒体上に存在する糸の第1の部分が巻取筒体上に巻き直され、これにおいて糸バルーンは第1の導糸面によって制限され、またこれにおいて糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数が捕捉される。第1のバルーン制限器の第1の導糸面は、少なくとも糸の第1の部分の巻き直し中に、紡糸筒体の回転軸からの特定の距離を含む。ここで、所定値分の糸引き出し力の上昇が検出されると、第1の導糸面から巻取筒体の回転軸までの距離が減少すること、および、紡糸筒体上に存在する糸の第2の部分がその後巻取筒体上に巻き直され、これにおいて糸バルーンが回転軸からの減少した距離で第1の導糸面によって制限されることが提案される。
【0016】
あるいは、前記第3の方法について、所定値分の糸引き出し力の上昇が検出されると、第2の導糸面を有するバルーン制限装置の第2のバルーン制限器が、第2のバルーン制限器が糸バルーンを制限しない休止位置から、第2のバルーン制限器が糸バルーンを制限する作業位置に移行すること、および、紡糸筒体上に存在する糸の第2の部分がその後紡糸筒体上に巻き直され、これにおいて糸バルーンが第2の導糸面によって制限されることが提案される。
【0017】
例えば、糸引き出し力を直接測定する場合は、糸引き出し力が所定の絶対値だけまたは初期値に対する所定のパーセント値だけ上昇することによって、所定値分の糸引き出し力の上昇が検出される。また、例えば糸引張器の位置を評価することによって間接的に測定する場合は、糸引張器が所定の距離だけ変位しまたは所定の位置に到達することで、所定値分の糸引き出し力の上昇を検出してもよい。所定値は、例えば経験に基づいて操作係が設定し、巻取機の制御装置に保存することができる。他方、所定値は、巻取機、特に巻取機の制御装置による自己学習工程において以前の解きほぐし工程を評価することによって取得し設定してもよい。これにより、巻取機は単に所定値を示唆するにとどまり、その後さらに操作係によって所定値を確定する必要がある、ということもあり得る。
【0018】
3つの方法はいずれも、糸引き出し力に応じて、導糸面を糸に作用させ、または糸に対する導糸面の作用を増強するという点で共通している。これは、バルーン制限器が休止位置から作業位置に移行することによって、または導糸面から紡糸筒体の回転軸までの距離が減少することによって起こり得る。したがって、導糸面の付加的なまたは増強された作用は、糸引き出し力の上昇によってこの作用が必要とされるまでは、およびこのような事態が生じないのであれば、起こらない。これにより、初期においては、バルーン制限を行わずに、または糸に作用する導糸面を1つだけ用いることにより、巻き取りを有利に行うことができる。このように、糸張力の作用によって1つ以上の導糸面が「スイッチオン」または「増強」されることにより、ほぼ一定の糸引き出し力を維持することが可能になる。これにより、巻取筒体は概ね一定の巻き取り張力で巻くことができ、その結果、高品質のボビンを製造することができる。また、これにより、巻き取り工程全体を通じて、概ね一定の比較的高い作業速度で巻き取りを行うことができる。このため、バルーン制限装置は、従来技術のようにボビンの巻き取り状態を継続的に追跡する必要がない。
【0019】
また、これにより、本発明によれば、巻き直し工程中に複数の付加的な導糸面または複数の付加的なバルーン制限器を「関与」させること、および/または、既に糸に作用している1つ以上の導糸面の距離を糸引き出し力に応じて減少することも可能である。
【0020】
さらに、紡糸筒体を備えたボビンから巻取筒体に巻取装置によって糸を巻き直すための巻取機の作業装置が提案される。この作業装置は、紡糸筒体と巻取筒体との間に形成される糸バルーンを巻き直し手順中に少なくとも1つの幅方向に制限するためのバルーン制限装置を備え、バルーン制限装置は、少なくとも巻き直し中に紡糸筒体の回転軸からの第1の距離を含む第1の導糸面を有する第1のバルーン制限器を備える。この作業装置はさらに、糸の糸引き出し力および/または前記糸引き出し力を表す測定変数を捕捉するための少なくとも1つの捕捉装置と、少なくとも1つの捕捉装置に接続された制御装置とを備える。本作業装置では、制御装置はバルーン制限装置に接続されている。バルーン制限装置の第1のバルーン制限器は、少なくとも1つの捕捉装置の信号に応じて、第1のバルーン制限器が糸バルーンを制限しない休止位置から、第1のバルーン制限器が糸バルーンを制限する作業位置に移行することができる。
【0021】
あるいは、本作業装置について、第1の導糸面から紡糸筒体の回転軸までの第1の距離が捕捉装置の信号に応じて減少し得ることが想定される。
【0022】
さらなる実施形態によれば、本作業装置について、上記の2つの実施形態に加え、またはその代わりに、バルーン制限装置が、第2の導糸面を有し、少なくとも1つの捕捉装置の信号の作用によって休止位置から作業位置へ移行することができる第2のバルーン制限器を少なくとも1つ備えることが想定される。
【0023】
このような作業装置について上述したように、巻き取り工程を通じて糸引き出し力を概ね一定に維持するために、糸引き出し力に応じて、巻き直し工程中に糸に対する導糸面の効果を1回または複数回「関与」させることができる。このような作業装置により、一定の作業速度で巻き取りを有利に行うことも可能となる。ボビンの巻き取り状態に対してバルーン制限装置を継続的に牽引する必要がないので、作業装置は、簡素な設計を有しつつ低コストで実装することができる。
【0024】
第2の導糸面が、第2のバルーン制限器の作業位置において紡糸筒体の回転軸からの距離として第1の距離よりも短い第2の距離を含むことが、第3の実施形態に係る方法および装置にとって有利である。リング精紡機に由来するボビンは、一般に段階的に解きほぐされ、これにより紡糸筒体から糸が取り除かれ、紡糸筒体は上から下に徐々に露出する。したがって、糸バルーンは、巻き取り工程の過程で連続的に大きくなる。第2の導糸面が紡糸筒体の回転軸からの距離として第1の導糸面のそれよりも短い距離を含むと、糸バルーンは、第1の導糸面よりも第2の導糸面によって有利により厳重に拘束することができる。
【0025】
所定値分の糸引き出し力の上昇を検出するために、糸引き出し力および/または糸引き出し力を表す測定変数に対して限界値を定め、限界値を超えたときに、対応するバルーン制限器がその作業位置(A)に移行し、および/または対応する導糸面からの距離が減少すると、さらに有利である。限界値は、例えば、測定される糸引き出し力の絶対値であることができる。一方、糸引き出し力を表す測定変数として糸引張要素の変位が捕捉される場合、限界値は、糸引張要素の特定の位置によって定めてもよい。
【0026】
所定値分の糸引き出し力の上昇を検出するために、糸引き出し力および/または糸引き出し力を表す測定変数の許容変動範囲を定め、変動範囲を超えたときに、バルーン制限器がその作業位置に移行し、および/または前記距離が減少すると、さらに有利である。変動範囲は、以前の測定値からの糸引き出し力の許容偏差であることができる。現在の測定値が以前の測定値に関して定めた前記許容帯域を外れると、対応するバルーン制限器はその作業位置に移行することができ、または対応する導糸面からの距離は減少することができる。
【0027】
糸引き出し力を張力センサーによって捕捉し、または作業装置用の少なくとも1つの捕捉装置が張力センサーであると、さらに有利である。このような張力センサーは、一般に、例えば糸引き出し力に応じて糸引張器を作動するために、いずれの場合も作業装置に存在する。したがって、このセンサーは、導糸面の効果の関与を開始するために有利に用いることもできる。
【0028】
他方、糸引き出し力を表す測定変数として、糸引張器の引張要素の位置および/または移動行程が捕捉されると、さらに有利である。糸引張器は一般に張力に応じて作動または制御され、すなわち、糸引張器は、糸引き出し力が上昇すると相対的に開き、糸引き出し力が低下すると相対的に閉じる。したがって、糸引張器の引張要素の位置または移動行程は、少なくとも糸引張器がまだその端位置に達していないのであれば、糸引き出し力を表す1つの測定変数となり、導糸面の効果の関与を開始するために用いることができる。
【0029】
引張要素の位置を近接スイッチ、特に光センサーによって捕捉すると、同様に有利である。少なくとも1つの捕捉装置が近接スイッチ、特に光センサーであると、作業装置にとってさらに有利である。あるいは、もちろん、誘導、容量、磁気、または他の近接スイッチを考慮してもよい。
【0030】
あるいは、引張要素の移動行程を距離センサーによって取得すると、作業装置にとって有利である。
【0031】
本方法の代替の実施形態によれば、作動変数を評価することによって、および/または糸引張器、特に引張要素の駆動器の負荷パラメータを測定することによって引張要素の移動行程を捕捉すると、有利である。例えば、糸引張器をステップモーターによって変位すると、ステップモーターの多数のステップを捕捉することができる。移動行程は、糸引張器の駆動器の電流、電圧、または他の負荷パラメータから確認してもよい。この場合、作業装置において、駆動器の制御器は少なくとも1つの捕捉装置となる。
【0032】
第1のバルーン制限器および/または少なくとも1つの第2のバルーン制限器がバルーン限定リングであると、さらに有利である。このリングは、必ずしも円形である必要はなく、多角形または他の不規則な形状を有してもよい。第1および/または第2のバルーン制限器は、管状の要素であってもよい。1つまたは複数のバルーン制限器は、完全に閉じてもよく、あるいは開口を含んでもよい。1つまたは複数のバルーン制限器は、設計上分離可能であってもよい。
【0033】
第1および/または少なくとも1つの第2のバルーン制限器が、第1の位置から第2の位置に変位するための少なくとも2つの制限要素を備えると、さらに有利である。例えば、制限要素は、バルーン制限器の休止位置で第1の位置をとり、作業位置で第2の位置をとることができる。さらに、紡糸筒体の回転軸からの第1の距離を有する導糸面を形成するために制限要素が第1の位置をとり、回転軸からの第2の距離を有する導糸面を形成するために制限要素が第2の位置をとることも可能である。ここで、3つ以上の制限要素も考えられ、これらは絞りのように異なる直径を有する導糸面を実現することもできる。
【0034】
第1および/または少なくとも1つの第2のバルーン制限器がボビン交換位置に移行することができると、さらに有利である。この場合のボビン交換位置は、休止位置とは異なる。ただし、休止位置がボビン交換位置と同じであってもよい。第1または第2のバルーン制限器をボビン交換位置に移行することは、基本的にさまざまな方法で可能である。例えば、ボビンを取り外すことができるように、分離可能なバルーン限定リングを開くことが考えられる。あるいは、バルーン制限器は、またはバルーン制限装置全体でさえも、作業位置または休止位置からボビン交換位置に移行するために、旋回しまたは線的に変位してもよい。
【0035】
例えば、作業装置が、第1のバルーン制限器および/または第2のバルーン制限器をガイドに沿って紡糸筒体の回転軸の方向に運搬することができる駆動装置を備えると、有利である。これにより、バルーン制限器は、休止位置または紡糸筒体上方のボビン交換位置から、紡糸筒体の高さの作業位置に移行することができる。
【0036】
第1のバルーン制限器および第2のバルーン制限器を共通の移送器によってガイド上に運搬可能に支持すると、2つのバルーン制限器を有するバルーン制限装置にとって特に有利である。これにより、両バルーン制限器を一緒に、例えばボビン上方のボビン交換位置に移行することができる。2つのバルーン制限器のうち少なくとも1つ、または両方のバルーン制限器は、一緒にその作業位置に移行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下の実施例で、本発明のさらなる利点を説明する。各場合において、概略的に以下の図面を示す。
【
図1】
図1は、互いに隣接して配置した複数の作業装置を有する巻取機の正面図である。
【
図2】
図2は、完全に閉じた糸引張器を有する巻取機の作業装置の正面図である。
【
図3】
図3は、完全に開いた糸引張器を有する
図2の作業装置を示す図である。
【
図4】
図4は、巻き直し工程開始時の第1の時点における第1の実施形態に係るボビンおよびバルーン制限装置の正面詳細図である。
【
図5】
図5は、巻き直し工程中の第2の時点における
図4のボビンおよびバルーン制限装置を示す図である。
【
図6】
図6は、巻き直し工程中の第3の時点における
図4のボビンおよびバルーン制限装置を示す図である。
【
図7】
図7は、巻き直し工程開始時の第1の時点における第2の実施形態に係るボビンおよびバルーン制限装置の正面詳細図である。
【
図8】
図8は、巻き直し工程中の第2の時点における
図7のボビンおよびバルーン制限装置を示す図である。
【
図9】
図9は、巻き直し工程中の第3の時点における
図7のボビンおよびバルーン制限装置を示す図である。
【
図10】
図10は、巻き取り工程中の糸引き出し力および糸引き出し力の限界値を示す図である。
【
図11】
図11は、巻き取り工程中の糸引き出し力および糸引き出し力の変動範囲を示す図である。
【
図12】
図12は、糸引張器および糸引張器の移動行程の捕捉の正面詳細図である。
【
図13】
図13は、休止位置における、2つの制限要素を有するバルーン制限器の上面図である。
【
図15】
図15は、第1の位置における、2つの制限要素を有するバルーン制限器の上面図である。
【
図16】
図16は、第2の位置における、2つの制限要素を有する
図15のバルーン制限器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の実施例の説明のために、設計および/または機能において同一または少なくとも同等の特徴は、同一の参照番号を付す。さらに、これら特徴は、最初に言及したときにのみ詳細に説明し、後続の実施例においてはそれ以前に説明した実施例との違いのみを説明する。さらに、明確のため、多くの場合、複数の同一構成要素または特徴のうち1つまたはいくつかのみに参照番号を付す。
図1に、巻取機1の概略正面図を示す。巻取機1は、ここでは1つだけ示したが実際には2つ存在するフレーム21の間に配置した複数の作業装置2を備える。作業装置2は、紡糸筒体4を備えたボビン22から糸3を解きほぐし、巻取装置5によって糸3を巻取筒体6に巻き取るために実装される。この目的で、作業装置2は、多数の作業部位を有する。設けられる作業部位としては、糸が切れたり、クリアラーによる切断が行われたり、または紡糸筒体4が空になった後に紡糸筒体側の糸端を巻取筒体側の糸端に接続するための継ぎ具16と、巻取筒体側の糸端を配置するための変位可能な吸引ノズルと、紡糸筒体側の糸端を配置するための変位可能な吸引管20と、が含まれる。作業装置は、糸クリアラー12をさらに備える。
【0039】
巻取機1は、巻取機1での手順を制御するための中央制御装置13を有する。また、ここに示すように、作業装置2のそれぞれは、中央制御装置13に接続された、当該作業装置2での手順を制御するための専用の制御装置13を有することができる。
【0040】
紡糸筒体4に巻き取られた糸3は、紡糸筒体4から引き出され、バルーン制限器23、糸ガイド15、調整可能な糸引き出し力(
図10、11参照)を走行中の糸3に加えるための糸引張器7を通過する。この目的で、糸引張器7は、巻取装置2の制御装置13によって適宜作動することができる。ここでは、糸引き出し力を測定するために、張力センサー10を巻取筒体6の近くに配置している。糸引張器7は、測定された糸引き出し力に応じて調整され、これにより糸引き出し力が調節される。
【0041】
糸引張器7について、
図2および3を用いてより詳細に説明する。ここで、
図2は、作業装置2の概略正面図を示す。ここでは、糸引張器7は閉位置GPにおいて示されている。通常の巻き取り操作中は、糸引張器7は部分閉位置をとり、したがって糸3は糸引張器7において複数回方向を変え、これにより摩擦がかかる。糸引張器7をさらに開くかまたはさらに閉じることによって、糸引き出し力に影響を与えることができる。ここに示した糸引張7は、レーキ型引張器として実装され、駆動器9によって互いに対して変位することができる2つの引張要素8を備える。ここで、これにより、2つの引張要素8のうち1つのみが変位してもよく、またはここに示すように両方の引張要素8が変位してもよい。この図では、巻き直し手順中に紡糸筒体4と巻取筒体6との間に形成される糸バルーン14がさらに示されている。
【0042】
これに対し、
図3は、糸引張器7の全開位置OPを示しており、この位置では、糸3は、自由に、接触することなく糸引張器7を通過する。したがって、この位置では糸3に張力はかからない。
【0043】
糸引張器7を用いることによって、糸引き出し力を調節し、巻き取り工程の広い範囲にわたって糸引き出し力を概ね一定に維持することができる。しかしながら、糸引張7が全開位置OPまたは閉位置GPに達し、または引張要素8がその端位置に達したとたんに、糸引張器7を用いて糸引き出し力に影響を与えることはもはや不可能となる。したがって、低い糸引き出し力をさらに維持するために、バルーン制限装置18(
図4参照)を用いて、糸引き出し力に応じて糸バルーン14の形状およびサイズに影響を及ぼすことが想定される。
【0044】
図4に、バルーン制限装置18と、紡糸筒体4を有するボビン22との第1の実施形態を示す。バルーン制限装置18は、ここではバルーン限定リングとして実装したバルーン制限器23、26を備える。バルーン制限器23、26は、バルーン制限器の作業位置においてボビン22および紡糸筒体4の回転軸25からの特定の距離a1、a2を含む導糸面24、27を含む。
図4にさらに見るように、バルーン制限装置18は、点線で示すように制御装置13に接続されている。さらに、制御装置13は、糸引き出し力または糸引き出し力を表す測定変数を捕捉するための捕捉装置17に接続されている。ここで、
図4は、巻き直し手順開始時の作業装置2およびボビン22を示している。紡糸筒体4は、現時点では依然として完全に巻き取られている。したがって、形成された糸バルーン14は、現時点では比較的低い高さおよび比較的小さい幅しか有していない。この例のバルーン制限器23、26は、巻き直し工程全体を通じて紡糸筒体4に対して一定の高さに配置され、したがって回転軸25に沿って変位することはない。
【0045】
図5に、紡糸筒体4に巻き取られた糸3の一部が既に解きほぐされた後の、巻き直し工程のさらなる時点における
図4のボビン22および作業装置2を示す。これにより、解きほぐし中に糸が上から下に徐々に紡糸筒体4から取り除かれ、これに応じて上部のボビン錐部がさらに下方に変位することが明らかになっている。したがって、糸バルーンは大きくなっており、その結果導糸面24、27は今や糸3に作用し、糸バルーン14を幅方向に制限している。これにより、二重バルーンが生成し、その結果糸バルーン14内の遠心力、ひいては糸引き出し力が減少している。そして、紡糸筒体4上に存在する糸3の第1の部分は今や解きほぐされ、このとき糸バルーン14は導糸面24、27によって制限されている。
【0046】
しかしながら、特に巻き直し工程の後半では、導糸面24、27による制限にもかかわらず、糸引き出し力の増加が生じる。捕捉装置17によって所定値分の上昇が検出されると、捕捉装置17の前記信号によって、導糸面24、27から回転軸25までの距離a1、a2が減少する。
【0047】
図6に、導糸面24、27から回転軸25までの距離a1、a2がちょうど減少した第3の時点における
図4および5のボビン22およびバルーン制限装置18を示す。糸3の第2の部分は、今や紡糸筒体4から解きほぐされ、このとき導糸面24、27は、減少した距離a1、a2で糸バルーン14に作用している。糸バルーン14は、今や紡糸筒体4の巻き取り状態に従って高くなるが、幅方向へのさらなる膨張は、糸バルーン14が今やより短い距離a1、a2に収縮した導糸面24、27によって制限されていることで、今や抑制されている。
【0048】
導糸面24、27の距離a1、a2の減少は、例えば、
図15および16を用いて以下に説明するように、バルーン制限器23、26の2つ以上の制限要素29が第1の位置Iから第2の位置IIへ変位することによって起こり得る。
【0049】
図7に、バルーン制限装置18の第2の実施形態を示す。この装置は、バルーン限定リングとしても実装される第1のバルーン制限器23と、ボビン22および紡糸筒体4の回転軸25からの距離a1を有する導糸面24とを備える。バルーン制限装置18はさらに、第2の導糸面27を有する第2のバルーン制限器26を備える。第2のバルーン制限器26は、
図7および8に示す休止位置Rから、
図9に示す作業位置Aに移行することができる。ここでも、バルーン制限装置18は、点線で示すように制御装置13に接続されている。ここで、ひるがえって
図7は、紡糸筒体が依然として完全に巻き取られている巻き直し手順開始時のボビン22を示している。
【0050】
図8に、紡糸筒体4に巻き取られた糸3の第1の部分の解きほぐし中における
図7のボビン22および作業装置2を示すが、このとき、第1のバルーン制限器23の導糸面24は糸3に作用し、糸バルーン14を幅方向に制限している。第2のバルーン制限器26は、依然として休止位置Rにある。第2のバルーン制限器26をその作業位置A(
図9参照)に移行するために、制限要素29(
図13~16参照)は、第2の位置IIに第1の位置Iだけ移行した形態であることができる。この例では、この移行は、制限要素29を90°旋回することによってなされる。このように、第2のバルーン制限器26は、分離可能なバルーン限定リングとして実装される。
【0051】
最後に、
図9に、捕捉装置17によって糸引き出し力の上昇が検出された直後の時点における
図7および8のボビン22およびバルーン制限装置18を示す。捕捉装置17の信号により、その後バルーン制限装置18は制御装置13によって作動し、第2のバルーン制限器26はその休止位置Rからその作業位置Aに移行している。作業位置Aでは、第2の導糸面27は回転軸25からの距離a2を含み、ここでは距離a2は第1の導糸面24から回転軸25までの距離a1よりも短い。糸3の第2の部分は、今や紡糸筒体4から解きほぐされ、このとき第2の導糸面27は、今や第2の距離a2で糸バルーン14に作用し、これを制限している。
【0052】
図7~9に示した実施形態から外れるが、第2のバルーン制限器26から回転軸25までの距離a2は、必ずしも第1のバルーン制限器23からの距離a1よりも短いわけではない。第1の導糸面24と第2の導糸面27が今や糸バルーン14に同時に作用し、これを制限していることも考えられる。この場合、2つのバルーン制限器23、26の互いの距離に応じ、複数のバルーンが形成される。
【0053】
また、
図7~9の描写から外れるが、バルーン制限装置18が、休止位置Rから作業位置Aに移行するために、
図4~6のように単一のバルーン制限器23、26のみを備えることも可能である。その後、捕捉装置17からの信号により糸引き出し力(
図10、11参照)の上昇が検出されると、この制限器は休止位置Rから作業位置Aに移行することもできる。
【0054】
さらに、1つのバルーン制限装置18において複数のバルーン制限器23、26を組み合わせ、糸引き出し力の上昇が検出されるとその休止位置Rからその作業位置Aに次々にもしくはときには同時に移行し、または糸引き出し力の上昇が検出されると回転軸25からのそれぞれの距離a1、a2が減少することも可能である。これにより、バルーン制限器23、26の各種実施形態は、単一のバルーン制限装置18内で組み合わせてもよい。
【0055】
休止位置Rから作業位置Aへの移行および/または距離a1、a2の減少を開始するために、例えば、糸引き出し力に対して限界値28を指定することができる。これを
図10に示す。
【0056】
最後に、2つのバルーン制限器23、26、またはさらなるバルーン制限器23、26も一緒に作業装置2上に高さ調整可能に配置することも可能である。この目的で、バルーン制限器23、26は、例えば、回転軸25の方向に延在するガイド上で変位および駆動するために支持された共通の支持体上に配置することができる。これにより、バルーン制限器23、26は、巻き直し工程中に紡糸筒体4に対して一定の高さに配置することができ、かつまた、空の紡糸筒体4を取り外して完全に巻かれた紡糸筒体4を装填するために、紡糸筒体上方のボビン交換位置に変位することができる。
【0057】
図10に、巻き直し工程全体にわたる糸引き出し力の曲線と、バルーンの影響なしで糸が走行するときの糸の走行長を示す。ここで、糸引き出し力は、巻き直し工程の前半を通じて概ね一定であり、後半において上昇することが明らかになっている。さらに、巻き直し工程の終わり近く、特に最後の3分の1で、糸引き出し力の指数関数的な上昇が起こることが明らかになっている。糸引き出し力の比較的小さな変動は通常問題にならず、一般に糸引張器7によって補償することができるので、限界値28としては、例えば巻き直し工程の前半における糸引き出し力の値よりも20%高い値を割り当てることができる。
【0058】
あるいは、限界値28の超過ではなく、変動範囲30の超過を開始信号として用いることもできる。これを
図11に示す。
【0059】
糸引き出し力の小さな変動は問題にならないので、例えば、特定の時間枠内における5~10Nの許容変動範囲30を定めることができる。ここで、糸引き出し力を継続的に捕捉し、比較の時間枠における以前の測定値と比較する。
図11に示すように、許容変動範囲30を超えると、捕捉装置17によってこれが検出され、信号が制御装置13に出力される。その後、制御装置13は、付加的なバルーン制限器23、26を関与させるため、または導糸面24、27から回転軸25までの距離a1、a2を減少するために、前記信号によりバルーン制限装置18を作動することができる。
【0060】
あるいは、糸引き出し力を直接測定するのではなく、糸引き出し力を表す測定変数を測定することも可能である。これを
図12に示す。
【0061】
したがって、
図12は、駆動器9によって変位することができる2つの引張要素8を有する糸引張器7の詳細図を示す。上述のように、駆動器9は、糸引き出し力を測定する張力センサー10からの信号によって作動される。したがって、図の右側に一例として示した引張要素8についてここに描いた、現在の移動行程s、または1つもしくは複数の引張要素8の現在の位置は、糸引き出し力の1つの間接的なパラメータとなる。
【0062】
この例では、センサー11は、引張要素8がその全開位置OPにあるか否かを検出する。さらに、糸引張器7の閉位置GPを一点鎖線で示す。他方、移動行程sは、移動センサーによって捕捉することもできる。
【0063】
最後に、
図13および14に、
図13に示す第1の位置Iから
図14に示す第2の位置IIまで変位可能な2つの制限要素29を備えた他のバルーン制限器23、26を示す。この目的で、2つの制限要素29は旋回可能に支持される(ただし、ここでは切り欠き図として示す)。この例では、バルーン制限器23、26は、制限要素29が第1の位置Iをとるとき、休止位置Rにある。休止位置Rでは、バルーン制限器23、26は糸バルーン14を制限しない。この休止位置Rにある制限要素29は、ボビン22の周囲から外側方向に遠く離れているので、休止位置Rをボビン交換位置として用いることもできる。
【0064】
一方、
図14に示したバルーン制限器23、26の作業位置Aでは、制限要素29は第2の位置IIをとる。この位置では、制限要素29は閉じたバルーン限定リングを形成し、糸バルーン14を制限することができる。
【0065】
図14からさらに明らかなように、バルーン制限器23、26が休止位置Rを有することにより、バルーン制限器23、26の導糸面24、27の直径がボビン22の外径よりも小さいこともあり得る。この場合、バルーン制限器23、26は、紡糸筒体24の少なくとも一方の頂部が既に露出している状態になるまでは、その作業位置Aに変位することはできない。
【0066】
これに対し、
図15および16は、第1の位置Iから第2の位置IIに変位するための制限要素29を有するバルーン制限器23、26の別の実施形態を示す。バルーン制限器23、26の本実施形態は、導糸面24、27からボビン22の回転軸25までの距離a1、a2、または導糸面24、27の内部寸法、ここでは内径、を減少するために有利に実施することができる。ここで、制限要素29は、
図15において、導糸面24、27が比較的大きい直径を有する第1の位置Iにある。これに対し、
図16の制限要素29は、導糸面24、27が収縮し、これにより比較的小さい直径、またこれに応じた回転軸25からの減少した距離a1、a2を有する第2の位置IIにある。距離a1、a2および回転軸25は、
図4~6で明らかであり、
図15および16には示していない。
【0067】
ここで説明する図では、変位可能な制限要素29が第1の位置Iから第2の位置IIに変位することにより、対応するバルーン制限器23、26が休止位置Rから作業位置Aに移行している。他方、1つ以上のバルーン制限器23、26を作業装置2上で全体的に変位可能に、例えば回転軸25に沿って変位可能に配置し、例えば糸ガイド15(
図2~9参照)近くのボビン22上方にあるバルーン制限器23、26の休止位置Rからその作業位置Aに移行することも可能である。
【0068】
本発明は、図示および説明した実施例に限定されない。独立請求項の教示が矛盾しないことを前提として、請求項内の変更は、たとえその特徴が明細書もしくは請求項の異なる部分または異なる実施例に示されていたとしても、記載された特徴の任意の組み合わせと同様に、可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 巻取機
2 作業装置
3 糸
4 紡糸筒体
5 巻取装置
6 巻取筒体
7 糸引張器
8 引張要素
9 引張要素の駆動器
10 張力センサー
11 センサー
12 糸クリアラー
13 制御装置
14 糸バルーン
15 糸ガイド
16 継ぎ具
17 捕捉装置
18 バルーン制限装置
19 吸引ノズル
20 吸引管
21 フレーム
22 ボビン
23 第1のバルーン制限器
24 第1の導糸面
25 回転軸
26 第2のバルーン制限器
27 第2の導糸面
28 限界値
29 制限要素
30 変動範囲
A 作業位置
R 休止位置
a1 第1の距離
a2 第2の距離
s 移動行程
I 第1の位置
II 第2の位置
GP 糸引張器の閉位置
OP 糸引張器の開位置
【外国語明細書】