(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177169
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20231206BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231206BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D3/00 F
B05D7/00 A
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089956
(22)【出願日】2022-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】森本 有
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲顕
(72)【発明者】
【氏名】大本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC17
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC92
4D075AC93
4D075AC94
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075DA04
4D075DB43
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4D075EB51
4D075EB56
4D075EC03
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC37
4J038CG001
4J038DG201
4J038FA112
4J038FA281
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA11
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】スロットダイを用いて、幅広かつ薄い被膜を基材の上に均一に形成できるフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】
スロットダイを用いて、幅が1600mm以上であり、かつ、厚みが30μm以下である被膜を基材の上に形成するフィルムの製造方法であって、塗工液を基材に塗工する塗工工程と、前記基材に塗工された前記塗工液を乾燥させる乾燥工程とを含み、前記スロットダイのシムの厚みが、20μm以上、100μm以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットダイを用いて、幅が1600mm以上であり、かつ、厚みが30μm以下である被膜を基材の上に形成するフィルムの製造方法であって、
塗工液を基材に塗工する塗工工程と、
前記基材に塗工された前記塗工液を乾燥させる乾燥工程と
を含み、
前記スロットダイのシムの厚みが、20μm以上、100μm以下である、フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記スロットダイは、第1ブロックと、前記基材の搬送方向において前記第1ブロックよりも下流側に配置され、前記第1ブロックとの間にスロットを形成する第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に配置される前記シムとを備え、
前記第2ブロックは、
本体部と、
前記塗工液の吐出方向において前記本体部の下流側の端面から、前記吐出方向の下流側に向かって突出する突出部と
を有し、
前記突出部の突出量は、10μm以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記スロットダイは、第1ブロックと、前記基材の搬送方向において前記第1ブロックよりも下流側に配置され、前記第1ブロックとの間にスロットを形成する第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に配置される前記シムとを備え、
前記第2ブロックは、
前記塗工液の吐出方向における前記第2ブロックの下流端から前記吐出方向における前記第2ブロックの上流端に向かうにつれて前記第1ブロックから離れる方向に傾斜する傾斜面を有し、
前記塗工液の吐出方向と前記傾斜面とがなす鈍角の角度は、110°以上、170°以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記基材の搬送速度は、15m/分以上、30m/分以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記塗工液の固形分濃度は、10質量%以上、50質量%以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記塗工液は、多官能オリゴマーと、3官能モノマーとを含有し、
前記塗工液中の前記多官能オリゴマーの割合は、20質量%以上、70質量%以下であり、
前記塗工液中の前記多官能オリゴマーの割合は、20質量%以上、70質量%以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記シムの弾性率は、1500MPa以上、6000MPa以下である、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記シムは、ポリエチレンテレフタレートからなる、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットダイコーターを用いて基材の上に塗工液を塗布する、フィルムの製造方向が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載されるようなフィルムの製造方法において、幅広かつ薄い被膜を基材の上に形成する場合に、より均一に形成すること要望されている。
【0005】
本発明は、スロットダイを用いて、幅広かつ薄い被膜を基材の上に均一に形成できるフィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、スロットダイを用いて、幅が1600mm以上であり、かつ、厚みが30μm以下である被膜を基材の上に形成するフィルムの製造方法であって、塗工液を基材に塗工する塗工工程と、前記基材に塗工された前記塗工液を乾燥させる乾燥工程とを含み、前記スロットダイのシムの厚みが、20μm以上、100μm以下である、フィルムの製造方法を含む。
【0007】
本発明[2]は、前記スロットダイが、第1ブロックと、前記基材の搬送方向において前記第1ブロックよりも下流側に配置され、前記第1ブロックとの間にスロットを形成する第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に配置される前記シムとを備え、前記第2ブロックが、本体部と、前記塗工液の吐出方向において前記本体部の下流側の端面から、前記吐出方向の下流側に向かって突出する突出部とを有し、前記突出部の突出量が、10μm以下である、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【0008】
本発明[3]は、前記スロットダイが、第1ブロックと、前記基材の搬送方向において前記第1ブロックよりも下流側に配置され、前記第1ブロックとの間にスロットを形成する第2ブロックと、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間に配置される前記シムとを備え、前記第2ブロックが、前記塗工液の吐出方向における前記第2ブロックの下流端から前記吐出方向における前記第2ブロックの上流端に向かうにつれて前記第1ブロックから離れる方向に傾斜する傾斜面を有し、前記塗工液の吐出方向と前記傾斜面とがなす鈍角の角度が、110°以上、170°以下である、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【0009】
本発明[4]は、前記基材の搬送速度が、15m/分以上、30m/分以下である、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【0010】
本発明[5]は、前記塗工液の固形分濃度が、10質量%以上、50質量%以下である、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【0011】
本発明[6]は、前記塗工液が、多官能オリゴマーと、3官能モノマーとを含有し、前記塗工液中の前記多官能オリゴマーの割合が、20質量%以上、70質量%以下であり、前記塗工液中の前記3官能モノマーの割合が、20質量%以上、70質量%以下である、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【0012】
本発明[7]は、前記シムの弾性率が、1500MPa以上、6000MPa以下である、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【0013】
本発明[8]は、前記シムが、ポリエチレンテレフタレートからなる、上記[1]のフィルムの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィルムの製造方法によれば、スロットダイのシムの厚みが、30μm以上、100μm以下に調節されている。
【0015】
そのため、幅広(幅が1600mm以上)かつ薄い(厚みが30μm以下)被膜を基材の上に均一に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2は、フィルムの製造システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.フィルムの製造方法
本発明のフィルムFの製造方法では、スロットダイDを用いて、「幅広」かつ「薄い」被膜Cを基材Sの上に形成する。「幅広」とは、幅が1600mm以上であることをいう。「薄い」とは、厚みが30μm以下であることをいう。
【0018】
(1)フィルム
まず、フィルムFについて説明する。
図1に示すように、フィルムFは、基材Sと、被膜Cとを備える。
【0019】
基材Sは、シート形状を有する。基材Sは、基材Sの厚み方向において、第1面S1と、第2面S2とを有する。基材Sは、熱可塑性樹脂からなる。
【0020】
熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、および、アセテート樹脂が挙げられる。アセテート樹脂として、例えば、ジアセチルセルロース、および、トリアセチルセルロースが挙げられる。
【0021】
なお、基材Sは、添加剤を含有してもよい。添加剤として、例えば、酸化防止剤、安定剤、補強材、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、可塑剤、滑剤、および、フィラーが挙げられる。
【0022】
被膜Cは、基材Sの第1面S1の上に配置される。被膜Cは、基材Sの第1面S1を覆う。被膜Cの機能として、例えば、防眩性、反射防止性および耐擦傷性が挙げられる。
【0023】
被膜Cは、樹脂を含有する。樹脂として、例えば、熱硬化性樹脂、および、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂として、例えば、ウレタン樹脂、および、エポキシ樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂および、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0024】
被膜Cは、粒子を含有してもよい。粒子として、例えば、酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸塩鉱物、および、リン酸塩などが挙げられる。酸化物として、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、および、酸化ジルコニウム(ジルコニア)が挙げられる。炭酸塩として、例えば、炭酸カルシウムが挙げられる。ケイ酸塩として、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、および、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。ケイ酸塩鉱物として、例えば、タルク、および、カオリンが挙げられる。リン酸塩として、例えば、リン酸カルシウムが挙げられる。
【0025】
(2)フィルムの製造システム
次に、フィルムFの製造方法を実施するためのフィルムFの製造システム1を説明する。
図2に示すように、フィルムFの製造システム1は、スロットダイDを備える塗工装置2と、乾燥装置3とを備える。
【0026】
塗工装置2は、塗工液を基材Sの第1面S1に塗工する(塗工工程)。つまり、フィルムFの製造方法は、塗工工程を含む。なお、基材Sの第1面S1には、塗工工程の前に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が、施されてもよい。
【0027】
塗工工程において、基材Sの搬送速度は、例えば、10m/分以上、好ましくは、15m/分以上、より好ましくは、20m/分以上であり、例えば、40m/分以下、好ましくは、35m/分以下、より好ましくは、30m/分以下である。
【0028】
基材Sの搬送速度が上記上限値以下であると、塗工液を基材Sに均一に塗工できる。基材Sの搬送速度が上記下限値以上であると、フィルムFの生産効率の向上を図ることができる。
【0029】
乾燥装置3は、基材Sに塗布された塗工液を乾燥させる(乾燥工程)。つまり、フィルムFの製造方法は、乾燥工程を含む。塗工液が乾燥されることにより、基材Sの上に被膜Cが形成され、上記したフィルムFが得られる。なお、被膜Cは、必要により、紫外線硬化処理、または、熱硬化処理されてもよい。
【0030】
2.塗工液の詳細
塗工液の粘度は、例えば、100mPa・s以下、好ましくは、50mPa・s以下、より好ましくは、10mPa・s以下、例えば、1mPa・s以上である。塗工液の粘度が上記上限値以下であると、塗工液を基材Sに均一に塗工できる。
【0031】
塗工液の表面張力は、例えば、30mN/m以上、好ましくは、35mN/m以上であり、例えば、60mN/m以下、好ましくは、55mN/m以下である。
【0032】
塗工液の固形分濃度は、塗工液の粘度が上記上限値以下になるように調節される。塗工液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0033】
塗工液は、樹脂成分と、溶媒とを含有する。塗工液は、必要により、上記した粒子、および、添加剤を含有する。樹脂成分は、上記した樹脂であってもよく、上記した樹脂の前駆体であってもよい。
【0034】
具体的には、塗工液は、多官能オリゴマー、多官能モノマー、水酸基モノマー、光重合開始剤、上記した粒子、表面張力調整剤、および、増粘剤を含有する。多官能オリゴマー、多官能モノマー、および、水酸基モノマーは、樹脂成分(樹脂の前駆体)であり、光重合開始剤、表面張力調整剤、および、増粘剤は、添加剤である。
【0035】
多官能オリゴマーは、複数のエチレン性不飽和基を有する。エチレン性不飽和基として、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が挙げられる。
【0036】
多官能オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、300以上、好ましくは、400以上であり、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下である。
【0037】
多官能オリゴマーの官能基当量は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、例えば、6以下、好ましくは、5以下である。
【0038】
多官能オリゴマーとして、例えば、ウレタンアクリレート、エリスリトール系アクリレートが挙げられる。
【0039】
塗工液中の多官能オリゴマーの割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下、である。
【0040】
多官能モノマーは、複数のエチレン性不飽和基を有する。エチレン性不飽和基として、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基が挙げられる。
【0041】
多官能モノマーとして、例えば、ペンタエリスリトールとアクリル酸の縮合物が挙げられる。
【0042】
塗工液中の多官能モノマーの割合は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下、である。
【0043】
水酸基モノマーは、1つのエチレン性不飽和基と、1つの水酸基とを有する。水酸基モノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0044】
光重合開始剤は、紫外線照射により、多官能オリゴマー、多官能モノマーおよび水酸基モノマーをラジカル重合させる。光重合開始剤として、例えば、ベンゾフェノン系光重合開始剤、フォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤が挙げられる。
【0045】
表面張力調整剤は、塗工液の表面張力を調整する。表面張力調整剤として、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤が挙げられる。
【0046】
増粘剤は、塗工液の粘度を調整する。増粘剤として、例えば、合成無機高分子、合成有機高分子、天然有機高分子が挙げられる。
【0047】
3.スロットダイの詳細
図3に示すように、スロットダイDは、第1ブロック11と、第2ブロック12と、シム13とを備える。スロットダイDは、第1ブロック11と第2ブロック12との間にスロット10を有する。塗工液は、スロット10から吐出される。
【0048】
(1)第1ブロック
第1ブロック11は、基材Sの搬送方向において、第2ブロック12よりも上流側に配置される。本実施形態では、第1ブロック11は、第2ブロック12の下方に配置される。第1ブロック11は、基材Sの幅方向に延びる。
図4に示すように、第1ブロック11は、塗工液の吐出方向において、上流端E1と、下流端E2とを有する。また、第1ブロック11は、マニホールド111と、流路112と、スロット面113と、傾斜面114とを有する。
【0049】
マニホールド111は、塗工液の吐出方向において、上流端E1と下流端E2との間に配置される。マニホールド111は、幅方向に延びる。マニホールド111は、第2ブロック12に向かって開放されている。
【0050】
流路112は、幅方向において、第1ブロック11の中央部に配置される。流路112は、マニホールド111に通じる。塗工液は、流路112を通って、マニホールド111内に入る。
【0051】
スロット面113は、基材Sの搬送方向において、スロット10の上流側の内面である。スロット面113は、第2ブロック12と向かい合う。スロット面113は、塗工液の吐出方向において、マニホールド111から下流端E2まで延びる。スロット面113は、幅方向にも延びる。スロット面113は、平坦面である。
【0052】
傾斜面114は、基材Sの搬送方向において、第1ブロック11の上流側の外面である。傾斜面114は、塗工液の吐出方向に対して傾斜する。詳しくは、傾斜面114は、第1ブロック11の下流端E2から上流端E1に向かうにつれて、第2ブロック12から離れる方向に傾斜する。塗工液の吐出方向と傾斜面114とがなす鈍角θ1は、例えば、110°以上、好ましくは、140°以上であり、例えば、170°以下、好ましくは、160°以下である。
【0053】
鈍角θ1が上記下限値以上であると、基材Sの搬送方向における突出部122の上流側に、過度に塗工液が溜まることを抑制できる。突出部122については、後で説明する。鈍角θ1が上記上限値以下であると、基材Sの搬送方向における突出部122の上流側に溜まる塗工液の量が過度に少なくなることを抑制できる。
【0054】
(2)第2ブロック
図3に示すように、第2ブロック12は、基材Sの搬送方向において、第1ブロック11よりも下流側に配置される。本実施形態では、第2ブロック12は、第1ブロック11の上方に配置される。第2ブロック12は、基材Sの幅方向に延びる。
図4に示すように、第2ブロック12は、塗工液の吐出方向において、上流端E11と、下流端E12とを有する。また、第2ブロック12は、本体部121と突出部122とを有する。
【0055】
本体部121は、突出部122を除く第2ブロック12の全体である。本体部121は、スロット面1211と、傾斜面1212と、端面1213とを有する。
【0056】
スロット面1211は、基材Sの搬送方向において、スロット10の下流側の内面である。スロット面1211は、第1ブロック11と向かい合う。詳しくは、スロット面113は、マニホールド111およびスロット面113と向かい合う。スロット面1211は、塗工液の吐出方向に延びる。スロット面1211は、スロット面113と平行に延びる。なお、スロット面1211は、幅方向にも延びる。スロット面1211は、平坦面である。
【0057】
傾斜面1212は、基材Sの搬送方向において、第2ブロック12の下流側の外面である。傾斜面1212は、塗工液の吐出方向に対して傾斜する。詳しくは、傾斜面1212は、第2ブロック12の下流端E12から上流端E11に向かうにつれて、第1ブロック11から離れる方向に傾斜する。塗工液の吐出方向と傾斜面1212とがなす鈍角θ2は、例えば、110°以上、好ましくは、140°以上であり、例えば、170°以下、好ましくは、160°以下である。
【0058】
鈍角θ2が上記下限値以上であると、基材Sの搬送方向における突出部122の上流側に、過度に塗工液が溜まることを抑制できる。鈍角θ2が上記上限値以下であると、基材Sの搬送方向における突出部122の上流側に溜まる塗工液の量が過度に少なくなることを抑制できる。
【0059】
端面1213は、塗工液の吐出方向において、本体部121の下流側の端面である。端面1213は、第2ブロックの下流端E12に配置される。端面1213は、スロット面1211と直交する。端面1213は、基材Sの搬送方向に延びる。
【0060】
突出部122は、端面1213から、吐出方向の下流側に向かって突出する。言い換えると、突出部122は、基材Sに向かって突出する。
【0061】
突出部122の突出量は、例えば、15μm以下、好ましくは、10μm以下、好ましくは、5μm以下であり、例えば、1μm以上である。
【0062】
突出部122の突出量が上記上限値以下であると、突出部122が基材Sに触れてしまうことを抑制できる。突出部122の突出量が上記下限値以上であると、基材Sの搬送方向における突出部122の上流側に、塗工液を溜めることができ、基材Sの搬送速度が上がっても塗工液を基材Sに均一に塗工できる。
【0063】
吐出方向における端面1213と基材Sとの距離に対して、突出部122の突出量は、例えば、20%以下、好ましくは、10%以下であり、例えば、1%以上である。
【0064】
吐出方向における端面1213と基材Sとの距離に対する突出部122の突出量の割合が上記上限値以下であると、突出部122が基材Sに触れてしまうことを抑制できる。吐出方向における端面1213と基材Sとの距離に対する突出部122の突出量の割合が上記下限値以上であると、基材Sの搬送方向における突出部122の上流側に、塗工液を溜めることができ、基材Sの搬送速度が上がっても塗工液を基材Sに均一に塗工できる。
【0065】
(3)シム
図3および
図4に示すように、シム13は、第1ブロック11と第2ブロック12との間に配置される。シム13は、第1ブロック11のスロット面113と第2ブロック12のスロット面1211との間隔を調節する。言い換えると、シム13は、基材Sの搬送方向におけるスロット10の内寸を調節する。
【0066】
シム13の厚みは、20μm以上、好ましくは、30μm以上、より好ましくは、60μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。
【0067】
シム13の厚みが上記下限値以上であると、基材Sの幅方向における被膜Cの中央部の厚みが基材Sの幅方向における被膜Cの端部の厚みに対して過度に増大することを、抑制できる。シム13の厚みが上記上限値以下であると、基材Sの幅方向における被膜Cの端部の厚みが基材Sの幅方向における被膜Cの中央部の厚みに対して過度に増大することを、抑制できる。
【0068】
シム13の材料として、例えば、ステンレス、および、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0069】
シム13の弾性率は、1500MPa以上、6000MPa以下である。シム13の弾性率が上記上限値以下である場合、第1ブロック11と第2ブロック12との間にシム13を挟むときに、シム13をわずかに変形させることができる。これにより、第1ブロック11とシム13との間に隙間ができないようにシム13を第1ブロック11に接触させるとともに、第2ブロック12とシム13との間に隙間ができないようにシム13を第2ブロック12に接触させることができる。その結果、第1ブロック11とシム13との間、または、第2ブロック12とシム13との間から塗工液が漏れてしまうことを抑制できる。また、シム13の弾性率が上記上限値以下である場合、シム13が保管中にわずかに湾曲した場合や、シム13に微細なキズがついた場合であっても、第1ブロック11および第2ブロック12に追従させて、第1ブロック11と第2ブロック12との間にシム13を挟むことができる。一方、シム13の弾性率が上記下限値以上である場合、第1ブロック11と第2ブロック12との間にシム13を挟むときに、シム13が過度に変形してしまうことを抑制できる。
【0070】
シム13は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートからなる。シム13がポリエチレンテレフタレートからなる場合、シム13の弾性率を上記した範囲内に設定できる。また、シム13がポリエチレンテレフタレートからなる場合、シム13を容易に加工できる。
【0071】
4.被膜の均一性
上記した塗工液を、上記したスロットダイDを用いて基材Sに塗布し、乾燥させることにより、被膜Cの厚みが基材Sの幅方向にわたって均一なフィルムFを製造することができる。
【0072】
得られたフィルムFでは、基材Sの幅方向において、被膜Cの中央部の厚みと、被膜Cの端部の厚みとの差は、例えば、2.5μm以下、好ましくは、2.0μm以下、より好ましくは、1.5μm以下、より好ましくは、1.0μm以下、より好ましくは、0.5μm以下である。なお、被膜Cの中央部の厚みと、被膜Cの端部の厚みとの差の下限値は、限定されない。被膜Cの中央部の厚みと、被膜Cの端部の厚みとの差は、0μmであってもよい。
【0073】
4.作用効果
フィルムFの製造方法によれば、スロットダイDのシム13の厚みが、30μm以上、100μm以下に調節されている。
【0074】
そのため、幅広(幅が1600mm以上)かつ薄い(厚みが30μm以下)被膜Cを基材Sの上に均一に形成できる。
【0075】
具体的には、塗工液の粘度が100mPa以下である場合、基材Sの幅方向において、被膜Cの中央部の厚みと、被膜Cの端部の厚みとの差を、2.5μm以下にできる。
【実施例0076】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明する。本発明は、下記の実施例によって限定されない。また、以下の記載において用いられる物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する、物性値、パラメータなどの上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「よりも大きい」として定義されている数値)に代替することができる。
【0077】
1.塗工液の製造
以下の材料をトルエンに配合し、塗工液を得た。塗工液の固形分は、42質量%であり、塗工液の粘度は、6mPa・sであった。
【0078】
多官能オリゴマー:
NKオリゴマーUA-53H-80BK(新中村化学工業社製) 50質量部
多官能モノマー:
ビスコート#300(大阪有機化学工業社製) 50質量部
水酸基モノマー:
4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製) 20質量部
光重合開始剤:
Omnirad907(IGM Resin社製) 5質量部
表面張力調整剤
GRANDIC PC4100(DIC社製) 1質量部
シリカ粒子
テクポリマーSSX-103DXE(積水化成品工業社製) 0.5質量部
増粘剤
スメクトン-SAN溶液(日東電工社製) 1.5質量部
2.フィルムの製造
図3に示すスロットダイ(ブロック高さ:76mm)を用いて、表1から表3に示す条件で、基材(材質:アクリルフィルム)に塗工液を塗工し、95℃で、1分、乾燥させて、基材の上にアクリルウレタン樹脂の被膜を有する、各実施例および各比較例のフィルムを得た。
【0079】
得られたフィルムの被膜の厚みを、基材の幅方向において5カ所(中央、一端部、他端部、一端部と中央との間、他端部と中央との間)測定し、最大の厚みと最小の厚みとの差を計算した。結果を表1に示す。
【0080】
また、以下の基準に基づき、被膜の外観を評価した。結果を表1から表3に示す。
【0081】
<外観評価基準>
A:目視検査にて外観不良が全くない。
【0082】
B:目視検査にてわずかにムラが見えるが、製品として使用可能である。
【0083】
C:目視検査にて外観不良が見えるが、製品として使用可能である。
【0084】
D:全面的に外観不良が発生しており、製品として使用不可である。
【0085】
【0086】
【0087】