(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177189
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】太陽電池および光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/068 20120101AFI20231206BHJP
H01L 31/0216 20140101ALI20231206BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L31/06 300
H01L31/04 240
H01L31/04 440
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108836
(22)【出願日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】202210611082.8
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210611083.2
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522171073
【氏名又は名称】晶科能源(海▲寧▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】毛傑
(72)【発明者】
【氏名】徐孟雷
(72)【発明者】
【氏名】鄭霈霆
(72)【発明者】
【氏名】楊潔
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA16
5F151CB18
5F151CB24
5F151DA03
5F151DA20
5F151GA04
5F151GA14
5F151HA03
5F251AA02
5F251AA16
5F251CB18
5F251CB24
5F251DA03
5F251DA20
5F251GA04
5F251GA14
5F251HA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】太陽電池の不動態化効果の向上と太陽電池の変換効率の向上に役立つ太陽電池および光起電力モジュールを提供すること。
【解決手段】太陽電池は基板と、基板の裏面に順次設けられるトンネル層、フィールドパッシベーション層、第1パッシベーション膜と、第1パッシベーション膜とフィールドパッシベーション層とを貫通して接触する第1電極とを備え、トンネル層における第1ドーピング元素のドーピング濃度はフィールドパッシベーション層における第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、トンネル層における第1ドーピング元素のドーピング濃度は基板における第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、フィールドパッシベーション層は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)と、
前記基板(10)の裏面に順次設けられるトンネル層(121)、フィールドパッシベーション層(122)、第1パッシベーション膜(123)と、前記第1パッシベーション膜(123)と前記フィールドパッシベーション層(122)とを貫通して接触する第1電極(124)とを備え、
ここで、前記基板(10)、前記トンネル層(121)と前記フィールドパッシベーション層(122)はいずれも同じ第1ドーピング元素を含み、且つ前記トンネル層(121)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記フィールドパッシベーション層(122)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、前記トンネル層(121)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記基板(10)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、
前記フィールドパッシベーション層(122)は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、前記第2ドープされた領域は前記第1ドープされた領域に対して前記トンネル層(121)に近く、ここで、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きく、前記第1ドーピング元素が焼なましによって活性化されてから、活性化された第1ドーピング元素を得ることができ、前記ドーピング曲線の傾きは、活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線の傾きであり、
前記トンネル層(121)が前記基板(10)に向かう方向で、前記トンネル層(121)のドーピング曲線の傾きは次第に減少する、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記基板(10)の裏面が前記基板(10)の内部に向かう方向において、前記基板(10)のドーピング曲線の傾きが次第に大きくなり、安定してくる傾向がある、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記基板(10)のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの平均値以下である、ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記フィールドパッシベーション層(122)における前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度は1×1020atom/cm3~5×1020atom/cm3であり、前記フィールドパッシベーション層(122)における前記第1ドーピング元素の活性化率は50%~70%であり、前記活性化率は前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度と裏面に全注入された前記第1ドーピング元素の濃度の比率である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは5×1018~1×1019であり、前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは-5×1018~5×1018である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記トンネル層(121)のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~-2.5×1018であり、前記基板(10)のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~0である、ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記基板(10)の表面に垂直な方向で、前記フィールドパッシベーション層(122)の厚さは60nm~130nmであり、前記トンネル層(121)の厚さは0.5nm~3nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記太陽電池は、前記基板(10)の上面に順次設けられたエミッタ(111)と、第2パッシベーション膜(112)と、第2パッシベーション膜(112)を貫通してエミッタ(111)と接触して形成した第2電極(114)とをさらに含み、ここで、前記基板(10)は第2ドーピング元素をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第2ドーピング元素に対して焼なまし活性化を行った後、活性化された第2ドーピング元素を得、前記基板(10)の上面における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3であり、
前記基板(10)の上面における前記第2ドーピング元素の全注入濃度は1.5×1019atom/cm3~1×1020atom/cm3である、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記基板(10)の上面が前記基板(10)の裏面に向かう方向で、前記基板(10)は第1領域、第2領域及び第3領域を含み、ここで、前記第2領域は前記第1領域と前記第3領域の間に位置し、前記第1領域は前記第2領域に比べて前記基板(10)の上面に近く、前記第3領域は前記第2領域に比べて前記基板(10)の裏面に近く、
前記第2領域おける前記第2ドーピング元素のドーピング濃度および前記第3領域における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度はいずれも前記第1領域における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度より小さい、
ことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第1領域における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3である、
ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第1領域の底面と前記基板(10)の上面との距離は350nm~450nmであり、
前記第2領域の底面と前記基板(10)の上面との距離は1000nm~1200nmであり、
前記第3領域の底面と前記基板(10)の上面との距離は1200nm~1600nmである、
ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第1領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は20%~40%であり、
前記第2領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は60%~90%であり、
前記第3領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は5%~90%であり、
前記活性化確率は焼なまし活性化による第2ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された前記第2ドーピング元素の濃度の比率である、
ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の太陽電池で接続されたセルストリング(101)と、
前記セルストリング(101)の表面を覆うための封止層(102)と、
前記封止層(102)の前記セルストリング(101)から離れた表面を覆うためのカバープレート(103)と、を備える、
ことを特徴とする光起電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光起電力の分野に関し、特に太陽電池および光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料は大量に消費されてきており、すべての持続可能エネルギーの中で、太陽エネルギーは最もクリーンで、普遍的で、潜在力のある代替エネルギーであるに違いない。現在、あらゆる太陽電池の中で、結晶シリコン太陽電池は広く商業的に普及されている太陽電池の一つである。これはシリコン材料が地殻に極めて豊かな埋蔵量を有していると同時に、結晶シリコン太陽電池は他のタイプの太陽電池に比べて優れた電気的性能と機械的性能を持っているためである。したがって、結晶シリコン太陽電池は太陽光発電業界で重要な地位を占めている。
【0003】
太陽電池技術の絶えざる発展に伴い、金属接触領域の再結合損失は太陽電池の変換効率の更なる改善を制約する重要な要素の一つとなっている。太陽電池の変換速度を高めるため、不動態化接触によって太陽電池を不動態化し、太陽電池の内部と表面の再結合を低減することが多い。一般的な不動態化接触電池にはヘテロ接合(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer、HIT)電池とトンネル酸化物不動態化接触(Tunnel Oxide Passivated Contact、TOPCon)電池がある。ただし、従来の不動態化接触電池の変換効率は向上する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例の目的は、太陽電池の不動態化効果の向上と太陽電池の変換効率の向上に役立つ太陽電池および光起電力モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の実施例は太陽電池を提供し、基板と、前記基板の裏面に順次設けられるトンネル層、フィールドパッシベーション層、第1パッシベーション膜と、前記第1パッシベーション膜と前記フィールドパッシベーション層とを貫通して接触する第1電極とを備え、ここで、前記基板、前記トンネル層と前記フィールドパッシベーション層はいずれも同じ第1ドーピング元素を含み、且つ前記トンネル層における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記フィールドパッシベーション層における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、前記トンネル層における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記基板における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、前記フィールドパッシベーション層は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、前記第2ドープされた領域は前記第1ドープされた領域に対して前記トンネル層に近く、ここで、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きく、前記第1ドーピング元素が焼なましによって活性化されてから、活性化された第1ドーピング元素を得ることができ、前記ドーピング曲線の傾きは、活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線の傾きであり、前記トンネル層が前記基板に向かう方向で、前記トンネル層のドーピング曲線の傾きは次第に減少する。
【0006】
また、前記基板の裏面が前記基板の内部に向かう過程で、前記基板のドーピング曲線の傾きが次第に大きくなり、安定してくる傾向がある。
【0007】
また、前記基板のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの平均値以下である。
【0008】
また、前記フィールドパッシベーション層における前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度は1×1020atom/cm3~5×1020atom/cm3であり、前記フィールドパッシベーション層における前記第1ドーピング元素の活性化率は50%~70%であり、前記活性化率は前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された前記第1ドーピング元素の濃度の比率である。
【0009】
また、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは5×1018~1×1019であり、前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは-5×1018~5×1018である。
【0010】
また、前記トンネル層のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~-2.5×1018であり、前記基板のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~0である。
【0011】
また、前記基板の表面に垂直な方向で、前記フィールドパッシベーション層の厚さは60nm~130nmであり、前記トンネル層の厚さは0.5nm~3nmである。
【0012】
また、前記太陽電池は、前記基板の上面に順次設けられたエミッタと、第2パッシベーション膜と、第2パッシベーション膜を貫通してエミッタと接触して形成した第2電極とをさらに含み、ここで、前記基板は第2ドーピング元素をさらに含む。
【0013】
また、前記第2ドーピング元素に対して焼なまし活性化を行った後、活性化された第2ドーピング元素を得ることができ、前記基板の上面における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3であり、前記基板の上面における全注入された前記第2ドーピング元素のドーピング元素の濃度は1.5×1019atom/cm3~1×1020atom/cm3である。
【0014】
また、前記基板の上面が前記基板の裏面に向かう方向で、前記基板は第1領域、第2領域及び第3領域を含み、ここで、前記第2領域は前記第1領域と前記第3領域の間に位置し、前記第1領域は前記第2領域に比べて前記基板の上面に近く、前記第3領域は前記第2領域に比べて前記基板の裏面に近く、前記第2領域おける前記第2ドーピング元素のドーピング濃度および前記第3領域における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度はいずれも前記第1領域における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度より小さい。
【0015】
また、前記第1領域における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3である。
【0016】
また、前記第1領域の底面と前記基板の上面との距離は350nm~450nmであり、前記第2領域の底面と前記基板の上面との距離は1000nm~1200nmであり、前記第3領域の底面と前記基板の上面との距離は1200nm~1600nmである。
【0017】
また、前記第1領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は20%~40%であり、前記第2領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は60%~90%であり、前記第3領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は5%~90%であり、前記活性化確率は焼なまし活性化による第2ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された前記第2ドーピング元素の濃度の比率である。
【0018】
本発明の実施例は光起電力モジュールをさらに提供し、上記の太陽電池で接続されたセルストリングと、前記セルストリングの表面を覆うための封止層と、前記封止層の前記セルストリングから離れた表面を覆うためのカバープレートと、を備える。
【発明の効果】
【0019】
従来技術と比べて、本願の実施例によって提供される技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0020】
本願発明の実施例では、基板と、トンネル層と、フィールドパッシベーション層と、第1パッシベーション膜と、第1電極とを含む太陽電池及び光起電力モジュールを提供し、ここで、基板とトンネル層とフィールドパッシベーション層にはいずれも第1ドーピング元素がドーピングされており、フィールドパッシベーション層における第1ドーピング元素のドーピング濃度はトンネル層と基板における第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、且つドーピング深さの増加につれて第1ドーピング元素のドーピング濃度は次第に減少する。第1ドーピング元素のドーピング曲線の傾きはドーピング深さの増加につれて勾配分布を呈し、フィールドパッシベーション層の第1ドーピング領域ではドーピング曲線の傾きが先に減少し、その後、第2ドーピング領域ではドーピング曲線の傾きが0付近で安定しており、第1ドーピング元素のドーピング濃度がフィールドパッシベーション層の表層で大幅に変化し、その後、変化が安定していることを示し、トンネル層では、第1ドーピング元素のドーピング曲線の傾きがマイナスで、且つ大幅に減少しており、第1ドーピング元素のドーピング濃度が次第に低下し、且つ減少幅が大きいことを示し、基板では、第1ドーピング元素のドーピング曲線の傾きが次第に大きくなり、穏やかになる傾向がある。本願発明の実施例では、第1ドーピング元素のフィールドパッシベーション層におけるドーピング濃度は、第1ドーピング元素のトンネル層と基板におけるドーピング濃度より高く、且つ第1ドーピング元素はフィールドパッシベーション層の表層で高い活性化率を実現しており、太陽電池の不動態化効果を高め、太陽電池の変換効率を向上させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本願の一実施例によって提供される太陽電池の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における第1ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線を示す図である。
【
図3】
図3は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における第1ドーピング元素のドーピング曲線の傾斜がドーピングの深さに従って変化する分布を示す図である。
【
図4】
図4は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における第2ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線を示す図である。
【
図5】
図5は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における第2ドーピング元素の活性化確率がドーピングの深さに従って変化する分布を示す図である。
【
図6】
図6は、本願の一実施例によって提供される光起電力モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
背景技術から、現在、トンネル酸化物不動態化接触(TOPCon)電池は優れた表面不動態化効果、高い理論効率、従来の生産ラインとの互換性などの利点から引き続き注目されていることがわかった。TOPCon技術の最も顕著な特徴は、その高品質の極薄シリコン酸化膜とヘビードープポリシリコン(Poly-Si)の積層構造であるため、リン拡散ドープはその重要な一環であり、TOPCon裏面の優れた不動態化接触はリン拡散ドープによる電界効果の形成によって実現する必要がある。
【0023】
現在、リン元素のドープに関する研究は主にPoly-Siにおけるリン元素の分布状況に集中しており、Poly-Si-SiOx-Siにおけるリン元素の濃度変化と分布に関する研究はまだ完全ではなく、電界効果と不動態化接触を本質的に最適化し、太陽電池の更なる効率向上を実現することができない。
【0024】
本願発明の実施例では、太陽電池の変換効率を向上させ、電界効果と不動態化接触を本質的に最適化するために、第1ドーピング元素のフィールドパッシベーション層におけるドーピング濃度は第1ドーピング元素のトンネル層と基板におけるドーピング濃度より高く、且つ第1ドーピング元素はフィールドパッシベーション層の表面で高い活性化率を実現し、太陽電池の不動態化効果の向上と太陽電池の変換効率の向上に役立つ太陽電池を提案する。なお、本願発明の実施例では太陽電池のPoly-Si-SiOx-Siにおけるリン元素のドーピング濃度分布を分析することにより、リンのドーププロセスの改善と電池の効率向上に基礎を提供する。
【0025】
図1に示すように、本願発明の実施例では、基板10と、基板10の裏面に順次設けられるトンネル層121、フィールドパッシベーション層122、第1パッシベーション膜123と、第1パッシベーション膜123とフィールドパッシベーション層122とを貫通して接触する第1電極124とを備え、ここで、基板10、トンネル層121とフィールドパッシベーション層122はいずれも同じ第1ドーピング元素を含み、且つトンネル層121における第1ドーピング元素のドーピング濃度はフィールドパッシベーション層122における第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、トンネル層121における第1ドーピング元素のドーピング濃度は基板10における第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、フィールドパッシベーション層122は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、第2ドープされた領域は第1ドープされた領域に対してトンネル層121に近く、ここで、第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きく、第1ドーピング元素が焼なましによって活性化されてから、活性化された第1ドーピング元素を得ることができ、ドーピング曲線の傾きは、活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線の傾きであり、トンネル層121が基板10に向かう方向で、トンネル層121のドーピング曲線の傾きは次第に減少する太陽電池を提供する。
【0026】
基板10は入射光を受光し、光キャリアを発生させるために使われる。いくつかの実施例では、基板10の裏面は表面と対向して設けられ、基板10の裏面と表面はいずれも入射光や反射光を受光するために使うことができる。
【0027】
いくつかの実施例では、基板10はシリコン基板であってもよく、シリコン基板の材料は単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンのうち少なくとも1種を含むことができる。基板10はN型半導体基板、即ち基板10内にN型第1ドーピング元素がドープされたものであってもよい。第1ドーピング元素はリン元素、ヒ素元素またはアンチモン元素のいずれか1種であってもよい。具体的には、第1ドーピング元素がリン元素である場合、ドーピングプロセス(例えば、熱拡散、イオン注入など)によって、基板10の裏面に対してリン拡散を行い、トンネル層121、フィールドパッシベーション層122と基板10にリン元素がドープされ、且つ焼なまし処理によってリン元素を活性化させ、活性化されたリン元素を得ることができる。
【0028】
トンネル層121は基板10の裏面の界面不動態化を実現し、さらにトンネル効果によってキャリアの移動を容易にするために使われ、いくつかの実施例では、成長プロセス、例えば化学気相成長法によってトンネル層121を形成することができる。他のいくつかの実施例では、その場生成プロセスによってトンネル層121を形成してもよい。具体的には、トンネル層121は、酸化物、窒化物、半導体、導電性ポリマーなどの不動態化効果とトンネル効果をもたらす誘電体材料を含むことができる。例えば、トンネル層121の材料には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、真性アモルファスシリコン、真性ポリシリコンなどが含まれる。いくつかの実施例では、トンネル層121は実際に完璧なトンネルバリアではなくてもよく、例えばピンホールなどの欠陥を含んでもよいため、これによって、トンネル効果に対して他の電荷キャリア輸送メカニズム(ドリフトや拡散など)は支配的地位を占めることができる。
【0029】
フィールドパッシベーション層122はフィールドパッシベーションを形成するために使われ、いくつかの実施例では、フィールドパッシベーション層122の材料がシリコンドープであってもよく、具体的にいくつかの実施例では、フィールドパッシベーション層122は基板10と同じ導電型のドーパント元素を有しており、シリコンドープはN型ドープポリシリコン、N型ドープ微結晶シリコンまたはN型ドープアモルファスシリコンの1種または2種以上を含んでもよい。好ましくは、フィールドパッシベーション層122の材料はリンドープポリシリコン層である。いくつかの実施例では、成長プロセスによってフィールドパッシベーション層122を形成することができる。具体的に、トンネル層121の基板10から離れた裏面に真性ポリシリコンを成長してポリシリコン層を形成し、イオン注入およびソース拡散によって第1ドーピング元素をドープして、N型ドープポリシリコン層を形成し、N型ドープポリシリコン層をフィールドパッシベーション層122とすることができる。いくつかの実施例では、トンネル層121の基板10から離れた裏面にN型ドープアモルファスシリコンを形成してから、高温処理を経てN型ドープポリシリコン層を形成することができる。
【0030】
図1に示すように、第1パッシベーション膜123は裏面パッシベーション膜であり、フィールドパッシベーション層122の基板10の裏面から離れる側に形成している。いくつかの実施例では、第1パッシベーション膜123の材料は酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化シリコンまたは酸炭窒化シリコンのいずれか1種または複数種であってもよい。具体的に、いくつかの実施例では、第1パッシベーション膜123は単層構造であってもよい。いくつかの実施例では、第1パッシベーション膜123は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、プラズマ励起化学気相成長法(PlasmaEnhancedChemicalVaporDeposition、PECVD)によって第1パッシベーション膜123を形成することができる。
【0031】
第1パッシベーション膜123は基板10の裏面のフィールドパッシベーション層122に存在する欠陥を不動態化し、少数キャリアの再結合部位を除去し、太陽電池の開放電圧を増加させる。また、第1パッシベーション膜123の基板10の裏面から離れた側に第1反射防止膜が設けられ、第1反射防止膜は基板10の裏面に入射する光の反射率を減らし、基板10とトンネル層121で形成されるトンネル接合に到着する光の量を増加させ、太陽電池の短絡電流(Isc)を増やすこともできる。したがって、第1パッシベーション膜123と第1反射防止膜は、太陽電池の開放電圧と短絡電流を増やし、太陽電池の変換効率を高めることができる。
【0032】
いくつかの実施例では、第1反射防止膜は、表面反射を防ぐことができる各種材料で形成することができる。例えば、第1反射防止膜の材料は、窒化シリコン、水素含有窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、MgF2、ZnS、TiO2またはCeO2のいずれか1種または2種以上であってもよい。具体的に、いくつかの実施例では、第1反射防止膜は単層構造であってもよい。他のいくつかの実施例では、第1反射防止膜は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、PECVD法によって第1反射防止膜を形成することができる。
【0033】
いくつかの実施例では、第1電極124は第1パッシベーション膜123を貫通してフィールドパッシベーション層122と電気的接続を形成している。具体的に、第1電極124は第1パッシベーション膜123に形成された開口部(即ち、第1電極124は第1パッシベーション膜123を貫通するとともに)を介して、フィールドパッシベーション層122に電気的に接続されている。
【0034】
いくつかの実施例では、第1電極124を形成する方法には、プリセット領域の第1パッシベーション膜123の表面に導電性ペーストを印刷し、導電性ペーストにおける導電材料が銀、アルミニウム、銅、錫、金、鉛、ニッケルの少なくともいずれか1種であってもよく、導電性ペーストを焼結処理し、例えばピーク温度750℃~850℃で焼結処理し、第1電極124を形成するという方法が含まれる。
【0035】
いくつかの実施例では、
図1に示す太陽電池について、第1ドーピング元素がリン元素である場合、電気化学的容量-電圧法(Electrochemical Capacitance Voltage、ECV)と二次イオン質量分析法(SecondaryIon Mass Spectrometry、SIMS)によって、リン拡散ドーププロセスで活性化されたリン元素の濃度(原子の濃度)と全注入されたリン元素の濃度を測定し、
図2に示すように、活性化されたリン元素の濃度と全注入されたリン元素の濃度がドーピングの深さに従って変化する分布曲線を得る。
図2からわかるように、全注入されたリン元素の濃度のフィールドのパッシベーション層122、トンネル層121、基板10におけるドーピング濃度の分布傾向は、ドーピング濃度が徐々に低下していく。フィールドパッシベーション層122(Poly-Si薄膜)で、活性化されたリン元素の濃度は約3×10
20atom/cm
3であり、全注入されたリン元素の濃度は約5×10
20atom/cm
3であり、リン元素の活性化率は50%-70%であり、高い確率でリン元素の活性化を実現している。
【0036】
図2に示すように、フィールドパッシベーション層122はドーピング濃度の高い第1ドープされた領域と、ドーピング濃度が第1ドープされた領域より低い第2ドープされた領域とを含んでいるため、光がフィールドパッシベーション層122に入射する時の不動態化効果を高めることができる。同時に、フィールドパッシベーション層122と第1電極124の接触抵抗を下げ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0037】
図2に示すように、SIMS測定で得られた全注入されたリン元素の濃度スペクトルに顕著なドーピング濃度ピークが存在するのは、主にフィールドパッシベーション層122からトンネル層121(Poly-Si-SiOx薄膜)の界面両側でリン元素の存在する化学環境が変化し、リン元素のイオン化率に影響し、特にトンネル層121のSiO
x薄層に豊かな酸素元素が存在し、SIMSプラスイオン測定モードでリン元素の信号強度を増やし、測定によって得られたドーピング濃度が高くなるためである。測定の深さが基板10の存在した単結晶シリコン層に達すると、信号強度は次第に安定しており、穏やかになる。
【0038】
一例として、ECVとSIMS測定を組み合わせると、Poly-Si-SiO
xとSiO
x-Siの界面深さはそれぞれ約94nmと101nmに位置していることがわかる。
図2に示すように、フィールドパッシベーション層122の表層からトンネル層121(界面深さ0nm~94nm)までの間で、全注入されたリン元素の濃度は約5×10
20atom/cm
3であり、変化傾向は穏やかであり、界面深さが約94nmのところで、全注入されたリン元素の濃度が変動し始め、界面深さが約94nm~101nmの間で一つのドーピング濃度ピークが存在しており、界面深さが101nmを超えると、全注入されたリン元素の濃度は次第に減少するが、界面深さが約310nmのところで安定し、界面深さが310nm~500nmの間で、全注入されたリン元素の濃度が5×10
18atom/cm
3~5×10
19atom/cm
3の間にある。活性化されたリン元素の濃度はフィールドパッシベーション層122の表層からトンネル層121(界面深さ0nm~94nm)までの間で、約3×10
20atom/cm
3であり、変化傾向は穏やかであり、界面深さが約94nmのところで、活性化されたリン元素の濃度が大幅に低下したが、界面深さが101nmを超えると、活性化されたリン元素の濃度の変化傾向はゆっくりと低下し、界面深さが160nm付近で最低値に達する。
【0039】
なお、ドーピング曲線はリンドーピング濃度(単位:atom/cm3)とドーピング深さ(単位:nm)の関係を示すものである。ドーピング曲線の傾きは、焼なましによって活性化されたリン元素のドーピング濃度がドーピング深さに従って変化する曲線の傾きである。
【0040】
図3は、リン元素のドーピング曲線の傾きがドーピング深さに従う勾配分布を示しており、TOPCon構造におけるリン元素のドーピング濃度の変化をよりはっきりと分析することができる。
図3に示すように、第1ドープされた領域と第2ドープされた領域の境界線は点線D線、トンネル層121(SiO
x薄膜)と第2ドープされた領域の境界線は点線E線、トンネル層121と基板10の境界線は点線C線である。フィールドパッシベーション層122(Poly-Si薄膜)の第1ドープされた領域ではリン元素ドーピング曲線の傾きが大幅に低下し、第2ドープされた領域ではリン元素ドーピング曲線の傾きの低下幅が緩やかになり、その後0付近で安定していることから、リンドーピング濃度はフィールドパッシベーション層122の第1ドープされた領域(Poly-Si表層とも言われる)で大幅に変化し、その後フィールドパッシベーション層122の第1ドープされた領域でリンドーピング濃度の変化は穏やかになり、トンネル層121(SiO
x薄膜)では、リン元素ドーピング曲線の傾きが負の値となり、大幅に減少しており、リンドーピング濃度が徐々に低下し、低下幅が次第に大きくなることを示している。
【0041】
いくつかの実施例では、基板10の裏面が基板10の内部に向かう過程で、基板10のドーピング曲線の傾きが次第に大きくなり、安定してくる傾向がある。
図3に示すように、基板10では、界面深さが大きくなるにつれて、リン元素の基板10におけるドーピング曲線の傾きが次第に大きくなり、安定化しており、リン元素の基板10におけるドーピング濃度の低下幅が緩やかになり、徐々に安定化してくることを示している。
【0042】
いくつかの実施例では、基板10のドーピング曲線の傾きは第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの平均値以下である。
図3に示すように、基板10のドーピング曲線の傾きは次第に増加し、一つの安定値に向かって変化し、前記安定値は第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの平均値とほぼ等しい。
【0043】
いくつかの実施例では、フィールドパッシベーション層122における活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度は1×1020atom/cm3~5×1020atom/cm3であり、フィールドパッシベーション層122における第1ドーピング元素の活性化率は50%~70%であり、活性化率は活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された第1ドーピング元素の濃度の比率である。
【0044】
図2に示すように、第1ドーピング元素がリン元素である場合、活性化されたリン元素のフィールドパッシベーション層122におけるドーピング濃度は1×10
20atom/cm
3、2×10
20atom/cm
3、3×10
20atom/cm
3、4×10
20atom/cm
3または5×10
20atom/cm3であってもよく、好ましくは、活性化されたリン元素のフィールドパッシベーション層122におけるドーピング濃度は3×10
20atom/cm
3であり、全注入されたリン元素の濃度は約5×10
20atom/cm
3であり、フィールドパッシベーション層122における第1ドーピング元素の活性化率は50%~70%であり、高い確率でリン元素の活性化を実現している。
【0045】
いくつかの実施例では、第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは5×1018~1×1019であり、第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは-5×1018~5×1018である。
【0046】
図3に示すように、フィールドパッシベーション層122の表層から界面までの深さが約10nmのところは第1ドープされた領域であり、第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは大幅に低下し、第2ドープされた領域内では、ドーピング曲線の傾斜が先に緩やかに低下し(界面深さ約10nm~20nm)、ドーピング曲線の傾斜は界面深さ約20nmのところで穏やかで、Poly-Si-SiO
x薄膜の界面位置(界面深さ約94nm)まで穏やかな状態が続く。
【0047】
いくつかの実施例では、トンネル層121のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~-2.5×1018であり、基板10のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~0である。
【0048】
図3に示すように、トンネル層121から基板10までの界面深さの範囲内、つまり
図3におけるSiO
x薄膜から結晶シリコン層までの界面深さの範囲内では、ドーピング曲線の傾きが大幅に低下し始め(
図3のAに示すように)、2.5×10
18から-2.5×10
19まで大幅に低下している。これは主に、リン元素がPoly-Si薄膜からSiO
x薄膜の中に入り、リン元素が置かれている化学環境が変化し、リン元素のイオン化率に影響し、リン元素のドーピング濃度が大幅に低下することを引き起こすためである。基板10(Si)の裏面から基板10の上面までの界面深さの間では、ドーピング曲線の傾きは-2.5×10
19から2.5×10
18まで大幅に上昇し(
図3中のBに示すように)、その後リンのドーピング曲線の傾きは安定している。
図3から分かるように、SiO
x-Siの界面位置における左右両側のドーピング曲線の傾きは、
図3中の点線Cを中心にほぼ対称的であり、且つ基板10における安定後のリンドーピング曲線の傾きは第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの平均値とほぼ等しく、
図3から分かるように、第2ドープされた領域におけるリンドーピング曲線の傾きの中心線は基板10における安定後のリンドーピング曲線の傾きの中心線とほぼ面一である。
【0049】
いくつかの実施例では、基板10の表面に垂直な方向で、フィールドパッシベーション層122の厚さは60nm~130nmであり、トンネル層121の厚さは0.5nm~3nmである。
【0050】
いくつかの実施例では、十分な不動態化効果とトンネル効果を提供するため、トンネル層121の厚さは0.5nm~3nmであってもよい。トンネル層121の厚さが3nmを超えると、トンネルを効率的に実行できず、太陽電池が動作しなくなる可能性があり、トンネル層121の厚さが0.5nmを下回ると、不動態化性能が悪くなる可能性がある。トンネル効果をさらに改善するために、トンネル層121の厚さは0.5nm~2nmであってもよく、あるいは、トンネル層121の厚さは0.5nm~1nmであってもよい。
【0051】
いくつかの実施例では、基板10の厚さは130μm~250μmである。
【0052】
本願発明の実施例では、太陽電池及び光起電力モジュールを提供し、太陽電池のリン拡散ドーププロセスにおけるリン原子の活性化率とドーピング曲線の傾きを分析することによって、電界効果と不動態化接触の最適化および電池効率の向上に理論的基礎を提供する。上記の分析によると、リン原子のフィールドパッシベーション層122における活性化率は50%-70%であり、Poly-Si薄膜では、リン原子ドーピング曲線の傾きは先に低下し、そして5×1018~-5×1018の範囲内に安定化し、SiOx薄膜では、リン原子ドーピング曲線の傾きは約-1×1018から約-3×1019まで低下し、結晶シリコンでは、リン原子ドーピング曲線の傾きが次第に増加し、-1×1017から-1×1018までの範囲内に安定化していることがわかる。
【0053】
いくつかの実施例では、前記太陽電池は、基板10の上面に順次設けられたエミッタ111と、第2パッシベーション膜112と、第2パッシベーション膜112を貫通してエミッタ111と接触して形成した第2電極114とをさらに含み、ここで、基板10は第2ドーピング元素をさらに含む。
【0054】
いくつかの実施例では、第2ドーピング元素は、ホウ素元素、酸素元素、ケイ素元素、塩素元素、窒素元素及び炭素元素のうちの少なくとも1つを含む。
【0055】
具体的には、前記太陽電池の製造プロセスは、まず、基板10の上面にP型ドーピング源を成長させ、薄膜層を形成することと、そして、ドーピングプロセスにより、プリセット領域の薄膜層におけるP型ドーピング源を基板10内に拡散させ、プリセット領域の基板10内にエミッタ111を形成することとを含む。
【0056】
いくつかの実施例では、P型ドーピング源は三臭化ホウ素または三塩化ホウ素などの3価元素を含む単体または化合物である。いくつかの実施例では、P型ドーピング源がホウ素源である場合、第2ドーピング元素はホウ素元素であり、三臭化ホウ素または三塩化ホウ素などの3価元素を含む単体または化合物をドーピング源として使うことができる。具体的には、ドーピングプロセス(例えば、レーザードーピングプロセス、プラズマポジショニングドーピングプロセス、イオン注入プロセス)によってプリセット領域の第2ドーピング元素を基板10の上面内に拡散させることができる。
【0057】
いくつかの実施例では、基板10の上面に薄膜層を形成する前に、基板10の上面に対して前処理を行い、基板10の洗浄と基板10の上面の起毛を含み、具体的には、化学エッチング、レーザーエッチング、機械法またはプラズマエッチングなどのプロセスによって、基板10の上面にピラミッド状のテクスチャー構造を形成し、基板10の上面の粗さを増やし、基板10の上面の入射光線に対する反射率を減らし、入射光線に対する吸収利用率を高めることができる一方、ピラミッド状のテクスチャー構造は、上面がフラットな表面である基板1と比べて、基板10の上面の表面積を増やしたため、基板10の上面により多くの第2ドーピング元素を蓄積させ、濃度の高いエミッタ111の形成に有利である。いくつかの実施例では、エミッタ111は基板10の上面から一定の深さまで拡散するドーピング層であり、基板10内にPN接合構造を形成する。
【0058】
図1に示すように、第2パッシベーション膜112は正面パッシベーション膜であり、エミッタ111の基板10の上面から離れた側に形成している。第2パッシベーション膜112の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸窒化シリコンまたは酸炭窒化シリコンのいずれか1種または複数種であってもよい。具体的には、いくつかの実施例では、第2パッシベーション膜112は単層構造であってもよい。他のいくつかの実施例では、第2パッシベーション膜112は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、第2パッシベーション膜112はPECVD法によって形成してもよい。
【0059】
また、第2パッシベーション膜112の基板10の上面から離れた側に第2反射防止膜が設けられ、第2反射防止膜は基板10の上面に入射する光の反射率を減らし、基板10とエミッタ111で形成されるトンネル接合に到着する光の量を増加させ、太陽電池の短絡電流(Isc)を増やすこともできる。したがって、第2パッシベーション膜112と第2反射防止膜は、太陽電池の開放電圧と短絡電流を増やし、太陽電池の変換効率を高めることができる。
【0060】
いくつかの実施例では、第2反射防止膜の材料は第1反射防止膜の材料と同じである。例えば、第2反射防止膜の材料は、窒化シリコン、水素含有窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、MgF2、ZnS、TiO2またはCeO2のいずれか1種または2種以上であってもよい。具体的に、いくつかの実施例では、第2反射防止膜は単層構造であってもよい。他のいくつかの実施例では、第2反射防止膜は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、PECVD法によって第2反射防止膜を形成することができる。
【0061】
いくつかの実施例では、第2電極114は第2パッシベーション膜112を貫通してエミッタ111と電気的接続を形成している。具体的には、第2電極114は第2パッシベーション膜112に形成された開口部(即ち、第2電極114は第2パッシベーション膜112を貫通するとともに)を介して、エミッタ111に電気的に接続されている。具体的には、第2電極114の形成方法は第1電極124の形成方法と同じであってもよく、第2電極114の材料も第1電極124の材料と同じであってもよい。
【0062】
いくつかの実施例では、
図1に記載された太陽電池の場合、第2ドーピング元素に対して焼なまし活性化を行った後、活性化された第2ドーピング元素を得ることができ、基板10の上面における活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×10
18atom/cm
3~1.5×10
19atom/cm
3であり、基板10の上面における全注入された第2ドーピング元素のドーピング元素の濃度は1.5×10
19atom/cm
3~1×10
20atom/cm
3である。
【0063】
いくつかの実施例では、基板10の上面における活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は、例えば、5×1018atom/cm3、9×1018atom/cm3、1×1019atom/cm3、1.2×1019atom/cm3または1.5×1019atom/cm3であってもよく、基板10の上面における全注入された第2ドーピング元素のドーピング元素の濃度は、例えば、1.5×1019atom/cm3、3×1019atom/cm3、6×1019atom/cm3、8×1019atom/cm3、1×1020atom/cm3であってもよい。
【0064】
好ましくは、基板10の上面における活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は1×1019atom/cm3であり、基板10の上面における全注入された第2ドーピング元素のドーピング元素の濃度は3×1019atom/cm3~5×1019atom/cm3である。
【0065】
いくつかの実施例では、
図1に記載された太陽電池に対して、
図4に示すように、ECV測定とSIMS測定によって、活性化されたホウ素の濃度と全注入されたホウ素の濃度のドーピング深さに従って変化する分布曲線を得る。
図4から分かるように、結晶シリコン表層の全注入されたホウ素の濃度は約3×10
19atom/cm
3であり、ドーピング深さが増加するにつれて、全注入されたホウ素の濃度は一旦上昇した後に低下する傾向を示し、約300nmの深さでピーク濃度に達し、約5×10
19atom/cm
3である。活性化されたホウ素の濃度は全注入されたホウ素の濃度と同じ変化傾向を示し、表層の活性化されたホウ素の濃度は約1×10
19atom/cm
3であり、同じく深さ300nmでピークに達する。
【0066】
いくつかの実施例では、基板10の上面が基板10の裏面に向かう方向で、基板10は第1領域、第2領域及び第3領域を含み、ここで、第2領域は第1領域と第3領域の間に位置し、第1領域は第2領域に比べて基板10の上面に近く、第3領域は第2領域に比べて基板10の裏面に近く、第2領域おける第2ドーピング元素のドーピング濃度および第3領域における第2ドーピング元素のドーピング濃度はいずれも第1領域における第2ドーピング元素のドーピング濃度より小さい。
【0067】
いくつかの実施例では、第1領域における活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3である。
【0068】
いくつかの実施例では、第1領域の底面と基板10の上面との距離(即ち、第1領域の界面深さ)は350nm~450nmであり、第2領域の底面と基板10の上面との距離(即ち、第2領域の界面深さ)は1000nm~1200nmであり、第3領域の底面と基板10の上面との距離(即ち、第3領域の界面深さ)は1200nm~1600nmである。
【0069】
いくつかの実施例では、第1領域の界面深さは、350nm、370nm、400nm、430nmまたは450nmであってもよい。いくつかの実施例では、第2領域の界面深さは、1000nm、1050nm、1100nm、1105nmまたは1200nmであってもよい。いくつかの実施例では、第3領域の界面深さは、1200nm、1300nm、1400nm、1500nmまたは1600nmであってもよい。
【0070】
1つの例として、
図4及び
図5から分かるように、第1領域の界面深さは約400nm付近に位置し、第2領域の界面深さは約1100nm付近に位置し、第3領域の界面深さは約1400nm付近に位置する。
【0071】
図4に示すように、第1領域の界面深さは約400nm付近に位置し、第1領域の表層における活性化されたホウ素のドーピング濃度は1×10
19atom/cm
3であり、ドーピング深さが大きくなるにつれて、活性化されたホウ素の第1領域にけるドーピング濃度はまず徐々に上昇し、最高値(ドーピング濃度は約1.5×10
19atom/cm
3)まで上昇してから、その後徐々に低下し(ドーピング濃度は約1.1×10
19atom/cm
3)、第2領域における活性化されたホウ素のドーピング濃度は1×10
18atom/cm
3付近まで低下し続け第3領域における、活性化されたホウ素のドーピング濃度は低下し続け、最低値(約1×10
17atom/cm
3付近)に達する。
【0072】
いくつかの実施例では、第1領域における第2ドーピング元素の活性化確率は20%~40%であり、第2領域における第2ドーピング元素の活性化確率は60%~90%であり、第3領域における第2ドーピング元素の活性化確率は5%~90%であり、活性化確率は焼なまし活性化による第2ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された第2ドーピング元素の濃度の比率である。
【0073】
図5に示すように、基板10におけるホウ素元素の拡散順序は、ホウ素元素が、最初に第1領域まで拡散し、そして第2領域まで拡散し、最後に第3領域まで拡散するということである。基板10の表層の場合、全注入されたホウ素の濃度は高く、表層ドーピング濃度が低いため、第1領域のドープ元素の活性化確率は20%~40%であり、第2領域と第3領域では、ドーピング深さが増加するにつれて、全注入されたホウ素の濃度が減少し、活性化確率が増加し、ドーピング深さが1100nmを上回った場合、拡散時のホウ素の活性化確率はドーピング深さが1100nmであるところで限界に達し、ほぼ90%であり、ドーピング深さが増加し続けると、活性化確率が急激に低下し、ドーピング深さが約1400nmにて最低となり、活性化確率は約5%である。
【0074】
図5は、ホウ素拡散ドーピングプロセスにおけるホウ素原子の活性化確率のドーピング深さに従う勾配分布曲線を示している。異なるドーピング深さにおけるホウ素原子の活性化確率データを測定することにより、データフィッティングを行い、フィッティング曲線を得る。フィッティング曲線によると、結晶シリコン表層及び浅い接合領域(ドープ深さが400nm未満)のホウ素原子の活性化確率は低く、約33%程度であり、デッド層の問題が主にこの部分の領域に集中していることを示し、拡散プロセスによって相応する調整を行うことができる。ドーピング深さが400nmを超えると、ホウ素原子の活性化確率は次第に上昇し、約1100nmでピークに達し、ピーク活性化確率は60%-90%である。ドーピング深さがさらに増加すると、ホウ素原子の活性化確率が急激に低下する。これにより、基板10の表層(ドープ深さ0nmから400nmまで)のホウ素原子の活性化確率は20%-40%であり、安定化しており、ドーピング深さは400nmから1400nmに増加すると、ホウ素原子の活性化確率は上昇してから低下し、ピーク位置はドーピング深さ1000nmから1200nmまでのところにあり、ピーク活性化確率は60%-90%である。
【0075】
図6に示すように、本願発明の実施例では、さらにセルストリング101、封止層102とカバープレート103とを含み、セルストリング101は上記の実施例で提供された太陽電池で接続されたものであり、封止層102はセルストリング101の表面を覆うために使われ、カバープレート103は封止層102のセルストリング101から離れた表面を覆うために使われる光起電力モジュールを提供する。
【0076】
いくつかの実施例では、太陽電池は、1枚のセルまたは複数枚のサブセルの形で電気的に接続されて複数のセルストリング101を形成してもよく、複数のセルストリング101は直列および/または並列の形で電気的に接続されてもよい。
【0077】
具体的に、いくつかの実施例では、複数のセルストリング101間は導電テープ104によって電気的に接続されてもよい。封止層102は太陽電池の正面および裏面を覆う。具体的に、封止層102はエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)膜、ポリエチレン-オクテン共重合体(POE)膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)膜などの有機封止膜であってもよい。いくつかの実施例では、カバープレート103はガラスカバープレート、プラスチックカバープレートなどの光透過機能を有するカバープレート103であってもよい。具体的に、入射光の利用率を高めるため、カバープレート103の封止層102に向かう表面を凹凸面であってもよい。
【0078】
本願発明の実施例では、基板10の裏面に第1ドーピング元素をドーピングし、基板10の上面に第2ドーピング元素をドーピングし、且つ第1ドーピング元素の電界不動態層におけるドーピング濃度はトンネル層と基板におけるドーピング濃度より高く、且つ第1ドーピング元素は電界不動態層の表層で高い活性化率が実現されており、太陽電池の不動態化効果の向上と太陽電池の変換効率の向上に有利であり、また、基板上面の表層における第2ドーピング元素の活性化確率を高めることで、基板表層および浅い接合領域における第2ドーピング元素のドーピング分布を改善し、デッド層の影響を低減し、太陽電池全体の性能を改善し、太陽電池の変換効率を向上させる太陽電池及び光起電力モジュールを提供する。
【0079】
また、背景技術によると、太陽電池の製造過程で、ドーピングプロセスがP-N接合の品質及び電池の光電変換効率に影響することがわかる。
【0080】
現在、太陽電池は業界で広く注目され、予定する生産量も次第に増大しており、電池の光電変換効率を高めるために、人々は電池製造プロセスにおけるホウ素拡散ドーピングプロセスの研究に取り組んでいるが、現在、ホウ素拡散ドーピングプロセスは主にシート抵抗測定によって表現されており、太陽電池構造におけるホウ素の分布状況とホウ素拡散ドーピングにおけるホウ素の活性化確率がドーピング深さに従う分布関係を得ることができなく、例えば、ホウ素のデッド層におけるホウ素ドーピング分布を得ることができず、デッド層の拡散プロセスに対して相応する調整を行い、太陽電池の変換効率を向上させることができない。
【0081】
ホウ素の太陽電池におけるドーピング分布を最適化し、底層におけるホウ素のドーピング濃度と活性化確率を高めるために、本願発明の実施例では、第1ドーピング元素の基板上面におけるドーピング濃度と活性化確率を高めることにより、基板表層と浅い接合領域の第1ドーピング元素のドーピング分布を最適化し、デッド層の影響を低減し、太陽電池全体の性能を改善し、太陽電池の変換効率を向上させる太陽電池を提供する。なお、本明細書における「第1」と「第2」とは、単に元素を区別し、本願発明を理解しやすくするためのものであり、本願発明にいかなる制限を与えるものではなく、この節及びその以下でいう第1ドーピング元素とは上記の第2ドーピング元素であり、この節及びその以下でいう第2ドーピング元素とは上記の第1ドーピング元素であり、以下でいう第1不動態膜とは上記の第2不動態膜であり、以下でいう第2不動態膜とは上記の第1不動態化膜であり、以下でいう第1電極とは上記の第2電極であり、以下でいう第2電極とは上記の第1電極である。
【0082】
前記太陽電池は、基板10と、前記基板10の上面に順次に設けられるエミッタ111と、第1不動態か膜112と、前記第1不動態化膜112を貫通して前記エミッタ111と接触する第1電極114とを含み、ここで、前記基板10は第1ドーピング元素を含み、前記第1ドーピング元素は焼なまし活性化を経て活性化された第1ドーピング元素を得ることができ、前記基板10の上面における前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度は、5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3であり、且つ前前記基板10の上面における記活性化された第1ドーピング元素の活性化確率が20%~40%であり、前記活性化確率は、前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された前記第1ドーピング元素の濃度との比率である。
【0083】
いくつかの実施例では、前記基板10における前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度は、ドーピング深さの増加に従って上昇してから低下する変化傾向を呈する。
【0084】
いくつかの実施例では、前記基板10におけるドーピング深さの増加に従う前記全注入された第1ドーピング元素の濃度の変化傾向は、前記基板10におけるドーピング濃度のドーピング深さに従う前記活性化された第1ドーピング元素の変化傾向と同じである。
【0085】
いくつかの実施例では、前記基板10の上面が前記基板10の裏面に向かう方向で、前記基板10は第1領域と第2領域と第3領域を含み、前記第2領域は前記第1領域と前記第3領域との間に位置し、前記第1領域は前記第2領域に比べて前記基板10の上面に近く、前記第3領域は前記第2領域に比べて前記基板10の裏面に近く、前記第2領域における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度および前記第3領域における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は、いずれも前記第1領域における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さい。
【0086】
いくつかの実施例では、前記第1領域の界面深さは、前記基板10の厚さの1.8%~2.4%であり、前記第1領域の界面深さは、前記第1領域の前記基板10の上面から離れる側と前記基板10の上面との垂直距離である。
【0087】
いくつかの実施例では、前記第1領域の界面深さは350nm~450nmである。
【0088】
いくつかの実施例では、前記第2領域の界面深さは前記基板10の厚さの5.3%~6.3%であり、前記第2領域の界面深さは1000nm~1200nmであり、前記第3領域の界面深さは前記基板10の厚さの6.3%~8.4%であり、前記第3領域の界面深さは1200nm~1600nmである。
【0089】
いくつかの実施例では、前記活性化された第1ドーピング元素の活性化確率は、ドーピング深さの増加に従って上昇してから低下する変化傾向を呈し、前記第1ドーピング元素の前記第2領域における活性化確率は60%~90%であり、前記第1ドーピング元素の前記第3領域における活性化確率は5%~90%である。
【0090】
いくつかの実施例では、太陽電池は、前記基板10の裏面に順次設けられるトンネル層121と、フィールドパッシベーション層122と、第2不動態化膜123と、前記第2不動態化膜123を貫通して前記フィールドパッシベーション層122と接触する第2電極124とをさらに含み、ここで、前記基板10と前記トンネル層121と前記フィールドパッシベーション層122はいずれも同じ第2ドーピング元素を含んでおり、且つ前記トンネル層121における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度は前記フィールドパッシベーション層122における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、前記トンネル層121における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度は前記基板10における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、前記フィールドパッシベーション層122は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、前記第2ドープされた領域は前記第1ドープされた領域に比べて前記トンネル層121に近く、ここで、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは、前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きく、前記ドーピング曲線の傾きは、活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度がドーピング深さに従って変化する曲線の傾きであり、前記第2ドーピング元素は焼なまし活性化を経て活性化された第2ドーピング元素を得ることができ、前記トンネル層121の前記基板10に向かう方向で、前記トンネル層121のドーピング曲線の傾きは次第に小さくなる。
【0091】
いくつかの実施例では、前記フィールドパッシベーション層122における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は1×1020atom/cm3~5×1020atom/cm3であり、前記フィールドパッシベーション層122における活前記第2ドーピング元素の性化率は50%~70%であり、前記活性化率は、前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された前記第2ドーピング元素の濃度の比率である。
【0092】
いくつかの実施例では、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは5×1018~1×1019であり、前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きが-5×1018~5×1018である。
【0093】
いくつかの実施例では、前記トンネル層121のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019~-2.5×1018であり、前記基板10のドーピング曲線の傾きが-2.5×1019~0である。
【0094】
本願発明の実施例では、さらに上記太陽電池が複数接続されて形成するセルストリング101と、前記セルストリング101の表面を覆うための封止層102と、前記封止層102の前記セルストリング101から離れた表面を覆うためのカバープレート103とを含む光起電力モジュールを提供する。
【0095】
当業者であれば、前記の各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者は、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
基板(10)と、
前記基板(10)の裏面に順次設けられるトンネル層(121)、フィールドパッシベーション層(122)、第1パッシベーション膜(123)と、前記第1パッシベーション膜(123)を貫通して前記フィールドパッシベーション層(122)と接触する第1電極(124)とを備え、
ここで、前記基板(10)、前記トンネル層(121)と前記フィールドパッシベーション層(122)はいずれも同じ第1ドーピング元素を含み、且つ前記トンネル層(121)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記フィールドパッシベーション層(122)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、前記トンネル層(121)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記基板(10)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、
前記フィールドパッシベーション層(122)は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、前記第2ドープされた領域は前記第1ドープされた領域に対して前記トンネル層(121)に近く、ここで、ドーピングの深さの増加につれて、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きが大幅に低下し、前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの低下幅が緩やかになり、その後、安定した値となり、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きく、前記第1ドーピング元素が焼なましによって活性化されてから、活性化された第1ドーピング元素を得ており、前記ドーピング曲線の傾きは、活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線の傾きであり、
前記トンネル層(121)が前記基板(10)に向かう方向で、前記トンネル層(121)のドーピング曲線の傾きは次第に減少する、
ことを特徴とする太陽電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記基板(10)の裏面が前記基板(10)の内部に向かう方向において、前記基板(10)のドーピング曲線の傾きが次第に大きくなり、安定した値となる、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)と、
前記基板(10)の裏面に順次設けられるトンネル層(121)、フィールドパッシベーション層(122)、第1パッシベーション膜(123)と、前記第1パッシベーション膜(123)を貫通して前記フィールドパッシベーション層(122)と接触する第1電極(124)とを備え、
ここで、前記基板(10)、前記トンネル層(121)と前記フィールドパッシベーション層(122)はいずれも同じ第1ドーピング元素を含み、前記第1ドーピング元素はリン元素であり、且つ前記トンネル層(121)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記フィールドパッシベーション層(122)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より小さく、前記トンネル層(121)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度は前記基板(10)における前記第1ドーピング元素のドーピング濃度より大きく、
前記フィールドパッシベーション層(122)は第1ドープされた領域と第2ドープされた領域を含み、前記第2ドープされた領域は前記第1ドープされた領域よりも前記トンネル層(121)に近く、ここで、前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きより大きく、前記第1ドーピング元素が焼なましによって活性化されてから、活性化された第1ドーピング元素を得ており、前記ドーピング曲線の傾きは、活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度がドーピングの深さに従って変化する曲線の傾きであり、
前記第1ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは5×10
18
atoms/cm
3
・nm~1×10
19
atoms/cm
3
・nmであり、前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きは-5×10
18
atoms/cm
3
・nm~5×10
18
atoms/cm
3
・nmであり、
前記トンネル層(121)においては、前記基板(10)に近づいていくに従って、前記トンネル層(121)のドーピング曲線の傾きが次第に減少し、前記基板(10)においては、前記トンネル層(121)から離れていくに従って、前記基板(10)のドーピング曲線の傾きが次第に増加して、安定してくる傾向がある、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記基板(10)のドーピング曲線の傾きは前記第2ドープされた領域のドーピング曲線の傾きの平均値以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記フィールドパッシベーション層(122)における前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度は1×1020atom/cm3~5×1020atom/cm3であり、前記フィールドパッシベーション層(122)における前記第1ドーピング元素の活性化率は50%~70%であり、前記活性化率は前記活性化された第1ドーピング元素のドーピング濃度と裏面に全注入された前記第1ドーピング元素の濃度の比率である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記トンネル層(121)のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019
atoms/cm
3
・nm~-2.5×1018
atoms/cm
3
・nmであり、前記基板(10)のドーピング曲線の傾きは-2.5×1019
atoms/cm
3
・nm~0atoms/cm
3
・nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記基板(10)の表面に垂直な方向において、前記フィールドパッシベーション層(122)の厚さは60nm~130nmであり、前記トンネル層(121)の厚さは0.5nm~3nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記太陽電池は、前記基板(10)の上面に順次設けられたエミッタ(111)と、第2パッシベーション膜(112)と、第2パッシベーション膜(112)を貫通してエミッタ(111)と接触する第2電極(114)とをさらに含み、ここで、前記基板(10)は第2ドーピング元素をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第2ドーピング元素に対して焼なまし活性化を行った後、活性化された第2ドーピング元素を得ており、前記基板(10)の上面における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3であり、
前記基板(10)の上面における前記第2ドーピング元素の全注入濃度は1.5×1019atom/cm3~1×1020atom/cm3である、
ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記基板(10)の上面が前記基板(10)の裏面に向かう方向において、前記基板(10)は第1領域、第2領域及び第3領域を含み、ここで、前記第2領域は前記第1領域と前記第3領域の間に位置し、前記第1領域は前記第2領域よりも前記基板(10)の上面に近く、前記第3領域は前記第2領域よりも前記基板(10)の裏面に近く、
前記第2領域おける前記第2ドーピング元素のドーピング濃度および前記第3領域における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度はいずれも前記第1領域における前記第2ドーピング元素のドーピング濃度より小さい、
ことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1領域における前記活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度は5×1018atom/cm3~1.5×1019atom/cm3である、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1領域の底面と前記基板(10)の上面との距離は350nm~450nmであり、
前記第2領域の底面と前記基板(10)の上面との距離は1000nm~1200nmであり、
前記第3領域の底面と前記基板(10)の上面との距離は1200nm~1600nmである、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第1領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は20%~40%であり、
前記第2領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は60%~90%であり、
前記第3領域における前記第2ドーピング元素の活性化確率は5%~90%であり、
前記活性化確率は活性化された第2ドーピング元素のドーピング濃度と全注入された前記第2ドーピング元素の濃度の比率である、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の太陽電池で複数接続されたセルストリング(101)と、
前記セルストリング(101)の表面を覆うための封止層(102)と、
前記封止層(102)の前記セルストリング(101)から離れた表面を覆うためのカバープレート(103)と、を備える、
ことを特徴とする光起電力モジュール。