(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177207
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】コロイダルシリカおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/141 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
C01B33/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175308
(22)【出願日】2022-11-01
(62)【分割の表示】P 2022533193の分割
【原出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000238164
【氏名又は名称】扶桑化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浴 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 智子
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072BB05
4G072DD06
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH30
4G072KK03
4G072LL06
4G072LL11
4G072MM02
4G072PP15
4G072QQ07
4G072QQ09
4G072TT30
4G072UU09
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】本発明は、粒子内部にアミノ基を有するシリル基の導入されたコロイダルシリカであって、微小粒子含有量が小さいコロイダルシリカの提供を目的とする。本発明は、粒子内部にアミノ基の導入されたコアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカの製造において、シェル形成反応時に発生する微小粒子を低減することを目的とする。
【解決手段】本発明は、粒子内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカであって、
前記コロイダルシリカに含まれる微小粒子の個数の割合が、全粒子の個数に対して、5%未満であり、
前記コロイダルシリカの粒子表面におけるシラノール基密度が、4.0個/nm2以下である、
コロイダルシリカ等を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカであって、
前記コロイダルシリカに含まれる微小粒子の個数の割合が、全粒子の個数に対して、5%未満であり、
前記コロイダルシリカの粒子表面におけるシラノール基密度が、4.0個/nm2以下である、
コロイダルシリカ。
【請求項2】
真密度が1.90以上である請求項1に記載のコロイダルシリカ。
【請求項3】
アルカリ触媒の存在下でコア粒子にアミノ基を有するアルコキシシランおよびアミノ基を有しないアルコキシシランを反応させてシェルを形成する工程を有し、シェル形成反応時に添加されるアルコキシシランの総量が、シェル形成反応時の反応系中に存在するアルカリ触媒の量に対して、モル比で200倍以上である、
粒子内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダルシリカおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ粒子は、半導体基板等の化学研磨(CMP)の砥粒、樹脂のフィラー、光学材料用塗料、印刷用トナー樹脂粒子の外添剤、化粧品材料等として利用されており、粒子の分散安定性の向上、用途に合わせた特性を粒子に付与すること等を目的として、粒子に官能基を導入する処理が広く行われている。その処理の1つにシランカップリング処理がある。シランカップリング処理では、代表的には官能基を有するアルコキシシラン、例えばZ-Si(OD)3[式中、Zは官能基を示し、Dはアルキル基を示す。]をシランカップリング剤とし、アルコキシシランのアルコキシ基が粒子表面のOH基と反応(典型的には脱水縮合反応)して「Z-Si-O-粒子」を形成することによりシリカ粒子に官能基Zが導入される。官能基の導入(変性と称されることもある)によりシリカ粒子には、導入されたシリル基の有する官能基に応じた性質が付与されることとなる。例えば、アミノ基を導入すると、粒子の表面電位が高くなり、正電位を示すpH領域が拡大する。
【0003】
シリカ粒子にアミノ基を導入する方法として、テトラアルコキシシランとアミノ基を有するシランカップリング剤を混合した液をコア粒子に添加してシェルを形成し、アミノ基の導入されたコアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカの製造方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、シェル形成反応時の反応液中に有機溶媒を含有することで、平均一次粒子径が33nm以上のシリカ粒子を含むコロイダルシリカを製造する方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
さらにまた、シリカ粒子合成反応の反応液中のアルコール濃度が高い条件でコロイダルシリカを製造する方法が知られている(特許文献3~6)。
【0006】
また、コア粒子にシェルを形成する段階において微小粒子が多数発生するとその除去が煩雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-008157号公報
【特許文献2】国際公開第2020/179556号
【特許文献3】特開2018-048042号公報
【特許文献4】特開2016-094619号公報
【特許文献5】特開平01-145317号公報
【特許文献6】特開昭62-072514号公報
【特許文献7】国際公開第第2008/123373号
【特許文献8】特開2006-231436号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】平林 一徳および森 敦紀、「シロキサン・シラノールの有機化学」、有機合成化学協会誌、2000年、vol.58、No.10、pages 926-933、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、特許文献1に記載されたコロイダルシリカの製造方法では、コア粒子にシェルを形成する段階において、微小粒子、つまりコア粒子よりも粒子径の小さな粒子が多数生成することを確認した(本願比較例1)。
【0010】
また、特許文献2では、円相当径が20nm未満のシリカ粒子数の割合が15%未満であるコロイダルシリカが製造されているが、この効果はシェル形成反応時の反応液中の有機溶媒(例;メタノール)濃度を一定量以上含有することにより得られている。また、特許文献2では、シェル形成反応時のアルカリ触媒量に対し、シェル形成反応時に添加されるアルコキシシラン量の比率を大きくすることによって微小粒子の生成数を低減できることは教示されていない。さらに、特許文献2では、シェルを形成した後に、アミノ基を有するアルコキシシランを添加することによりアミノ基が導入されている。
【0011】
さらにまた、特許文献3~6では、粒子合成反応の混合液中の有機溶媒(アルコール)濃度が高い反応系が使用されているため、粒子表面のシラノール基密度が多いと想定されるところ、本発明者はシラノール基密度が高いことを確認した(本願比較例3)。シラノール基密度が高いことによって、シラノール基が不安定になること(非特許文献1の第928ページ中の「2. シラノール」)、真密度の高い緻密な粒子となり難いこと(特許文献7の0008~0011段落)、研磨パッドの極性基と結びついて研磨パッドの目詰まりを誘発する傾向にあること(特許文献8の0010~0015段落)等の問題が生じ得る。
【0012】
したがって、本発明は、粒子内部、特にシェル内部にアミノ基を有するシリル基の導入されたコアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカであって、微小粒子含有量が小さいコロイダルシリカの提供を一つの目的とする。
本発明は、粒子内部、特にシェル内部にアミノ基を有するシリル基の導入されたコアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカの製造において、シェル形成反応時に発生する微小粒子を低減することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、コア粒子にシェルを形成する反応時に添加されるアルコキシシラン量(例えばテトラメチルオルトシリケート量およびアミノ基を有するアルコキシシラン量の総量)を、シェル形成反応液中に存在するアルカリ触媒量(例えば3-エトキシプロピルアミン量)に対し、モル比で200倍以上とすることによって、生成するコアシェル型シリカ粒子のシラノール基密度を高くすることなく、シェル形成反応で生成する微小粒子の量を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
代表的な本発明は以下の通りである。
項1.
粒子内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカであって、
前記コロイダルシリカに含まれる微小粒子の個数の割合が、全粒子の個数に対して、5%未満であり、
前記コロイダルシリカの粒子表面におけるシラノール基密度が、4.0個/nm2以下である、
コロイダルシリカ。
項2.
真密度が1.90以上である項1に記載のコロイダルシリカ。
項3.
アルカリ触媒の存在下でコア粒子にアミノ基を有するアルコキシシランおよびアミノ基を有しないアルコキシシランを反応させてシェルを形成する工程を有し、シェル形成反応時に添加されるアルコキシシランの総量が、シェル形成反応時の反応系中に存在するアルカリ触媒の量に対して、モル比で200倍以上である、
粒子内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シラノール基密度が4.0個/nm2以下であるコアシェル型シリカ粒子を含み、且つ、微小粒子の含有量が小さい、粒子内部、特にシェル内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカを提供できる。
本発明によれば、シェル形成反応時に添加されるアルコキシシランの総量が、シェル形成反応時の反応系中に存在するアルカリ触媒の量に対して、モル比で200倍以上である、コロイダルシリカの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1の最終工程で得られたコロイダルシリカを撮影したSEM画像である。
【
図2】
図2は、比較例1の最終工程で得られたコロイダルシリカを撮影したSEM画像である。
【
図3】
図3は、比較例3のシリカ粒子合成反応で得られたメタノール分散コロイダルシリカを撮影したSEM画像である。
【
図4】
図4は、比較例3の最終工程で得られた水分散コロイダルシリカを撮影したSEM画像である。
【
図5】
図5は、実施例1~4および比較例1のコロイダルシリカのデータ電位測定結果を示すグラフである。横軸はpH、縦軸はデータ電位(mV)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中、特に断りなく、「粒子内部」と表記したときは「粒子内部または粒子を構成するシェルの内部」を意味する。例えば、シリカ粒子内部との表記は、シリカ粒子内部またはシリカ粒子を構成するシェルの内部を意味する。本発明のコロイダルシリカは、粒子内部にアミノ基を有するシリル基の導入されたコアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカであり、微小粒子の含有量が少なく、且つ、シリカ粒子におけるシラノール基密度が低い。このため、不安定なシラノール基の密度が高すぎない点、真密度の高い緻密な粒子となる点、研磨パッドの目詰まりを抑制できる点等の利点を有する。
【0018】
本発明のコロイダルシリカの製造方法は、コア粒子にシェルを形成する反応時に添加されるアルコキシシラン量を、シェル形成反応液中に存在するアルカリ触媒量(例えば3-エトキシプロピルアミン量)に対し、モル比で200倍以上としているため、生成するコアシェル型シリカ粒子のシラノール基密度を高くすることなく、シェル形成反応で生成する微小粒子の量を低減できる。
【0019】
1.コロイダルシリカ
本発明のコロイダルシリカは、コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子内部にアミノ基が導入されている。特に、コロイダルシリカに含まれるコアシェル型粒子のシェルの内部全体にアミノ基が分布している。また、コロイダルシリカに含まれる微小粒子の個数の割合が、全粒子の個数に対して、5%未満である。また、コロイダルシリカに含まれるコアシェル型シリカ粒子の表面におけるシラノール基密度が、4.0個/nm2以下である。
本発明のコロイダルシリカは、典型的には、本発明の製造方法によって製造されるが、他の方法で製造されたものであってもよい。
本発明のコロイダルシリカにおけるシリカ粒子の濃度は、コロイダルシリカの用途や、予定される保管の期間等に応じて、当業者が適宜選択できるが、例えば1~50質量%とできる。
【0020】
微小粒子
微小粒子は、コロイダルシリカのSEM画像において、シリカ粒子の平均楕円短軸に対して75%以下の粒子径を有する粒子をいう。本発明では、コロイダルシリカに含まれる微小粒子の個数の割合は、全粒子の個数に対して、5.0%未満であってよく、好ましくは4.0%以下、より好ましくは3.0%以下で、更に好ましくは2.0%以下である。当該割合は低い方がよいものの、0.01%以上5.0%未満、0.01~3.0%、0.01~2.0%等であってもよい。コロイダルシリカに含まれる微小粒子の個数の割合は、実施例に記載の方法で決定できる。
【0021】
シラノール基密度
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の表面におけるシラノール基密度は、4.0個/nm2以下であってよく、好ましくは3.5個/nm2以下、より好ましくは3.0個/nm2以下である。また、1.0個/nm2以上であってよく、好ましくは1.2個/nm2以上、より好ましくは1.4個/nm2以上である。シラノール基密度がこれらの数値以上であると、コロイダルシリカの疎水性が高くなりすぎないため、水中での安定性が高い。
シラノール基密度は、1.0~4.0個/nm2、1.0~3.5個/nm2、1.0~3.0個/nm2、1.2~4.0個/nm2、1.2~3.5個/nm2、1.2~3.0個/nm2、1.4~4.0個/nm2、1.4~3.5個/nm2、1.4~3.0個/nm2等であってもよい。シラノール基密度は、G.W.Sears,Jr.,“Determination of Specific Surface Area of Colloidal Silica by Titration with Sodium Hydroxide”,Analytical Chemistry,28(12),1981(1956).に記載のシアーズ法により求めることができる。より詳細には、シアーズ法において、1質量%シリカ分散液を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行い、下記式から求めることができる。
ρ=(a×f×6022)÷(c×S)
[上記式中、ρ:シラノール基密度(個/nm2)、a:pH4-9の0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(mL)、f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液のファクター、c:シリカ粒子の質量(g)、S:BET比表面積(m2/g)をそれぞれ表す。]
【0022】
平均一次粒子径
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、特に制限されず用途等に応じて適宜選択できるが、例えば1nm以上、好ましくは2nm以上であり、また、例えば350nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、より一層好ましくは100nm以下である。シリカ粒子の一次粒子の平均一次粒子径は、1nm~350nm、1nm~150nm、1nm~120nm、1nm~100nm、2nm~350nm、2nm~150nm、2nm~120nm、2nm~100nmであってよい。平均一次粒子径は実施例に記載の方法で決定される。
【0023】
平均二次粒子径
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の平均二次粒子径は、特に制限されず用途等に応じて適宜選択できるが、例えば1nm~500nm、2nm~300nmとでき、好ましくは3nm~250nmである。平均二次粒子径は実施例に記載の方法で決定される。
【0024】
会合比
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の会合比は、平均二次粒子径/平均一次粒子径、で表され、代表的には5.0以下であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下であり、より一層好ましくは、3.0以下である。また、例えば1.0以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上である。会合比が上記範囲にあると、粒子が研磨剤の砥粒として使用される際に研磨面における傷の発生が抑制されやすく、また、真球型と比較して研磨速度が向上しやすい。さらに、当該会合比は、例えば、1.0~5.0、1.3~5.0、1.5~5.0、1.0~4.0、1.3~4.0、1.5~4.0、1.0~3.5、1.3~3.5、1.5~3.5、1.0~3.0、1.3~3.0、1.5~3.0等とすることもできる。
【0025】
平均楕円短軸
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の平均楕円短軸は、特に制限されず用途等に応じて適宜選択できるが、例えば1nm以上、好ましくは2nm以上であり、また、例えば350nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは120nm以下、より一層好ましくは100nm以下である。平均楕円短軸は、1nm~350nm、1nm~150nm、1nm~120nm、1nm~100nm、2nm~350nm、2nm~150nm、2nm~120nm、2nm~100nmであってよい。平均楕円短軸は実施例に記載の方法で決定される。
【0026】
アスペクト比
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子のアスペクト比は、例えば1.0~5.0、1.0~3.0とでき、好ましくは1.2~2.5である。アスペクト比が上記の範囲にあると、粒子が研磨剤の砥粒として使用される際に研磨面における傷の発生が抑制されやすく、また、真球型と比較して研磨速度が向上しやすい。アスペクト比は実施例に記載の方法で決定される。
【0027】
表面粗度
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の表面粗度は、例えば1.0~2.0、1.0~1.8とでき、好ましくは1.1~1.7である。表面粗度が上記の範囲にあると研磨性能の点で有利である。表面粗度は実施例に記載の方法で決定される。
【0028】
真密度
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子の真密度は、例えば1.60以上、1.70以上であり、好ましくは1.90以上、より好ましくは2.00以上であり、また、例えば2.30以下である。真密度は1.60~2.30、1.70~2.30、1.90~2.30、2.00~2.30等とできる。真比重が上記範囲にあると、粒子が研磨剤の砥粒として使用される際に粒子による機械的な研磨作用と研磨速度が向上しやすい。真密度は実施例に記載の方法で決定される。
【0029】
シリカ粒子に導入されるアミノ基
コロイダルシリカに含まれるシリカ粒子に導入されるアミノ基は、アミノ基を有するアルコキシシランでシリカを処理することにより、シリカに導入される基であってよい。代表的には、アミノ基を有するシリル基が共有結合(好ましくはシロキサン結合)でシリカ粒子内部と結びついた状態をいい、共有結合に加え、イオン結合、水素結合、化学吸着、物理吸着等で結びついていてもよい。また、アミノ基を有するシリル基は、同様な形態で、シリカ粒子表面に結びついていてもよい。したがって、シリカ粒子は、アミノ基を有するシリル基をシリカ粒子内部に有しており、これに加えてさらに粒子表面にも有してよい一実施形態において、本発明のコロイダルシリカに含まれるシリカ粒子は、一般式(1)
-Si(X)n(L-NH2)p (1)
[式中、Xは同一または異なって、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介したシリカ粒子内部のケイ素原子との結合であり、nは0、1、または2であり、pは1~3の整数であり、n+p=3であり、Lは連結基である。]
で表されるアミノ基を有するシリル基が共有結合(好ましくはシロキサン結合)でシリカ粒子内部と結びついたシリカ粒子である。例えば、上記シリル基はシリル基中のSiが-O-を介してシリカ粒子内部のケイ素原子に共有結合している。上記シリル基中のSiは、-O-を介したこの結合を1、2または3個有してもよい。
【0030】
一般式(1)で表されるアミノ基を有するシリル基
一般式(1)で表されるシリル基中のSiとシリカ粒子内部のケイ素原子との-O-を介したこの結合が1個であるときは、シリル基中の-Siが-O-を介してシリカ粒子内部のケイ素原子と結合(シロキサン結合)している。つまり、Siとシリカ粒子内部とは「Si*-O-Si(X)n-」(ここで、Si*はシリカ粒子内部のケイ素原子であり、Xは同一または異なって各々水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、または-O-を介した他のシリル基のSiとの結合であり、nは0、1、または2である。)で示される形態で結合している。
【0031】
この結合が2個であるときは、1個のXが「-O-を介したシリカ粒子内部のケイ素原子との結合」である。つまり、シリル基中のSiとシリカ粒子内部のケイ素原子とは「Si*-O-Si(X)2(OSi**)1-」(ここで、Si*およびXは前記と同じであり、Si**はSi*とは異なるシリカ粒子内部のケイ素原子である。)で示される形態で結合している。
【0032】
この結合が3個であるときは、2個のXが「-O-を介したシリカ粒子内部のケイ素原子との結合」である。つまり、シリル基中のSiとシリカ粒子内部のケイ素原子とは「Si*-O-Si(X)1(OSi**)1(OSi***)1-」(ここで、Si*、Si**、およびXは前記と同じであり、Si***はSi*およびSi**とは異なる粒子内部のケイ素原子である。)で示される形態で結合している。
【0033】
一般式(1)で表されるシリル基においてXは、同一または異なって、各々、水酸基、加水分解性置換基、非加水分解性置換基、-O-を介した他のシリル基のSiとの結合、または-O-を介したシリカ粒子内部のケイ素原子との結合である。
【0034】
Xにおいて加水分解性置換基は、水性の系中で加水分解されてSi-OH基を形成しうる基である。アミノ基の導入に使用されるアルコキシシラン中の加水分解性基は、アミノ基導入の際の加水分解の程度等によって、例えば、加水分解されずに加水分解性基のまま残るか、加水分解されて水酸基を形成するか、加水分解されて水酸基を形成しさらに他の水酸基と縮合する。加水分解性置換基は、例えばアルコキシ基などであり、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C6アルコキシ基、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、またはtert-ブトキシ基であり、より一層好ましくは、メトキシ基またはエトキシ基である。
【0035】
Xにおいて非加水分解性置換基は、水性の系中で、加水分解されない、つまりSi-OH基を形成しない基である。非加水分解性置換基は、例えばアルキル基などであり、好ましくは直鎖状または分岐状のC1-C6アルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、またはtert-ブチル基であり、より一層好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0036】
Xにおいて-O-を介した他のシリル基のSiとの結合は、シリカ粒子において、一般式(1)で示されるシリル基中のSiとその近傍に存在するシリル基のSiとの酸素原子を介した結合(シロキサン結合)であり、Si-O-Si構造を形成する。
【0037】
Xにおいて-O-を介したシリカ粒子内部のケイ素原子との結合は、該シリル基中のSiとシリカ粒子との結合であり、Si-O-Si**構造またはSi-O-Si***構造(Si**およびSi***はシリカ粒子内部のケイ素原子であり、前記のとおりである。)を形成する。この結合の詳細は上記のとおりである。
【0038】
一実施形態において、好ましいXは、同一または異なって、-O-を介したシリカ粒子内部のケイ素原子との結合、近傍に存在するシリル基のSiとの酸素原子を介した結合、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、またはメチル基である。
【0039】
一般式(1)で示されるシリル基においてnは0、1、または2である。
【0040】
一般式(1)で表されるシリル基においてLは連結基である。連結基は、代表的には、アミノ基導入の際に使用されたアミノ基を有するアルコキシシランにおけるSiとアミノ基を構成する窒素原子との間を構成する基に対応する基である。つまり、連結基は、シリル基中のSiと、アミノ基導入の際に使用されたアミノ基を有するアルコキシシランにおいてアミノ基を構成していた窒素原子との間を結ぶ基である。連結基は、例えば直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基である。
【0041】
直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基は、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、デシレン基、オクタデシレン基などである。分岐状のアルキレン基における分岐鎖は、例えばC1-C3のアルキル基である。なお、分岐鎖とは、分岐状のアルキレン基においてSiと結合する炭素原子とアミノ基を構成する窒素原子を結ぶ直線状の炭化水素鎖を主鎖とした場合に、主鎖を構成する炭素原子に結合するアルキル基をいう。
【0042】
直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基は、置換基を有してもよい。置換基は、例えばアルケニル基(例えばビニル基、アリル基)、アルキニル基である。置換基は1種類でも複数種併用してもよい。置換基の数は、例えば0,1、2、または3個であってよい。
【0043】
直鎖状または分岐状のC1-C18のアルキレン基は、そのアルキレン鎖末端またはアルキレン鎖中の任意の位置に、酸素原子(-O-)、窒素原子(-N-)、または硫黄原子(-S-)を含んでもよく、これらのヘテロ原子が分岐状のC1-C18のアルキレン基に含まれるときは、主鎖に含まれても分岐鎖に含まれてもよい。また、窒素原子がアルキレン鎖末端またはアルキレン鎖中に含まれるときは、-NH-であっても、窒素原子が1個の置換基で置換されていてもよい。この場合の置換基としてはメチル基やエチル基が挙げられる。アルキレン鎖末端およびアルキレン鎖中に含まれる酸素原子、窒素原子、および硫黄原子の総数は特に制限されない。
【0044】
一実施形態において、Lは、*-(CH2)3-O-CH2-、*-(CH2)2-O-CH2-、*-(CH2)3-O-(CH2)2-、*-(CH2)2-、*-(CH2)3-、*-(CH2)6-、*-(CH2)8-、*-(CH2)3-NH-CH2-、*-(CH2)3-NH-(CH2)2-が好ましく、原料シランカップリング剤の入手が容易である点、および立体障害が小さい点で、*-(CH2)3-O-CH2-、*-(CH2)3-、*-(CH2)8-、*-(CH2)3-NH-(CH2)2-が好ましい。なお、*はSi(X)n側を表す。
【0045】
一般式(1)で示されるシリル基は、原料のアミノ基を有するアルコキシシランの入手が容易である点で、下記のいずれかの式で表される基が好ましい。下記式において、Xは、前記と同じ。
-Si(X)2(-(CH2)3-NH2)1
-Si(X)2(-(CH2)3-NH-(CH2)2-NH2)1
【0046】
本発明のコロイダルシリカは、例えば紙、繊維、鉄鋼等の分野で物性改良剤として使用できる他、化学機械研磨(CMP)やシリコンウエハ研磨、ガラス研磨において研磨剤として使用できる。また、乾燥させてパウダーとすることで、フィラー用添加剤、トナー外添剤等として使用できる。
【0047】
また、前記コロイダルシリカを含む研磨剤も、本発明の一つであってよい。本発明のコロイダルシリカは、微小粒子の含有量が低減されているため、化学機械研磨の研磨剤、特に半導体ウエハの化学機械研磨の研磨剤として好適に用いることができる。
【0048】
2.コロイダルシリカの製造方法
アルカリ触媒の存在下でコア粒子にアミノ基を有するアルコキシシランおよびアミノ基を有しないアルコキシシランを反応させて、コア粒子にシェルを形成する工程(シェル形成工程)を有する、アミノ基の導入されたコアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカを製造する方法が知られている。本発明のコロイダルシリカの製造方法は、シェルを形成する工程において、シェル形成反応時に添加されるアルコキシシランの総量が、シェル形成反応時の反応系中に存在するアルカリ触媒の量に対して、モル比で200倍以上とするものである。本発明のコロイダルシリカの製造方法であれば、シラノール基密度を高くすることなく微小粒子の生成を低減できる。
本発明のコロイダルシリカの製造方法は、前記本発明のコロイダルシリカの製造に好適である。
【0049】
コア粒子の製造方法
コア粒子は、従来公知のコロイダルシリカのコア粒子製造方法で製造でき、その方法は特に制限されない。例えば、(1)アルカリ触媒及び水を含む混合液を調製し(工程1)、(2)アルコキシシランを工程1で調製した混合液に添加して混合液を調製し、(工程2)、(3)工程2で調製した混合液にアルカリ触媒を添加して、シリカ粒子を調製する(工程3)によって、コア粒子を製造できる。
アルカリ触媒及び水を含む混合液を調製する方法としては特に限定されず、水にアルカリ触媒を従来公知の方法により添加して撹拌すればよい。この混合液のpHは特に限定されず、9.0以上が好ましく、9.5以上がより好ましい。
【0050】
コロイダルシリカの製造方法において、アルカリ触媒は特に制限されないが、アンモニア、1級アミン、2級アミン及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種のアミンであってよく、下記一般式(2)で表されるアミンが好ましい。
NRaRbRc (2)
[式中、Ra、Rb、およびRcは同一又は異なって、置換されてもよいC1-C12アルキル基、又は水素原子を示す。]
Ra、Rb、およびRcは、同一でも異なっていてもよい。Ra、Rb、およびRcは直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
【0051】
直鎖状又は分岐状のアルキル基の炭素数は、1~12であってもよく、好ましくは1~8、より好ましくは1~6である。直鎖状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-メチル-1-エチルプロピル基、2-メチル-2-エチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基などが挙げられる。好ましい直鎖状又は分岐状のアルキル基は、n-プロピル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基などである。
【0052】
上記一般式(2)中のRa、Rb、およびRcにおいてアルキル基は置換されていてもよい。置換基の数としては、例えば0個、1個、2個、3個、4個などであってもよく、好ましくは0個、1個又は2個、より好ましくは0個又は1個である。なお、置換基の数が0個のアルキル基とは置換されていないアルキル基である。置換基としては、例えば炭素数1~3のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基)、アミノ基、炭素数1~4の直鎖状アルキル基で置換された1級アミノ基、炭素数1~4の直鎖状アルキル基でジ置換されたアミノ基(例えばジメチルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基など)、置換されていないアミノ基などが挙げられる。ただし、置換基として、ヒドロキシル基は除外する。複数の置換基を有するアルキル基において、置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
一実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、同一又は異なって、置換されていない直鎖状又は分岐状のC1-C12アルキル基、アルコキシ基で置換された直鎖状又は分岐状のC1-C12アルキル基または水素原子を示す。
また、別の実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、同一又は異なって、置換されていない直鎖状又は分岐状のC1-C8アルキル基、C1-C3アルコキシ基で置換された直鎖状又は分岐状のC1-C8アルキル基または水素原子を示す。
さらに別の実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、同一又は異なって、置換されていない直鎖状又は分岐状のC1-C6アルキル基、C1-C3アルコキシ基で置換された直鎖状又は分岐状のC1-C6アルキル基または水素原子を示す。
【0054】
一実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、その二つが水素原子であり、残りの一つが置換されていない直鎖状又は分岐状のC1-C12アルキル基またはアルコキシ基で置換された直鎖状又は分岐状のC1-C12アルキル基を示す。
別の実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、その二つが水素原子であり、残りの一つが置換されていない直鎖状又は分岐状のC1-C8アルキル基またはC1-C3アルコキシ基で置換された直鎖状又は分岐状のC1-C8アルキル基を示す。
さらに別の実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、その二つが水素原子であり、残りの一つが置換されていない直鎖状又は分岐状のC1-C6アルキル基またはC1-C3アルコキシ基で置換された直鎖状又は分岐状のC1-C6アルキル基を示す。
さらに別の実施形態において、Ra、Rb、およびRcは、全て水素原子を示す。
【0055】
アルカリ触媒としては、アンモニア、3-エトキシプロピルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも、より好ましくは、アンモニア、3-エトキシプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリエチルアミンが好ましい。更に、コロイダルシリカの保存安定性をより一層向上させる上で、3-エトキシプロピルアミンが好ましい。
【0056】
アルカリ触媒は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。当該アルカリ触媒としては、前記コロイダルシリカにおいて説明したアミンを用いればよい。
【0057】
シェル形成工程
コア粒子にシェルを形成する工程はシェル形成反応を有し、シェル形成のために添加されるアルコキシシランが添加される。シェル形成反応時に添加されるアルコキシシランの総量は、シェル形成反応時の反応系中に存在するアルカリ触媒の量に対して、モル比で200倍以上とする。
【0058】
シェルは、水及びアルカリ触媒の混合液に分散しているコア粒子にアルコキシシランを添加して反応させることで形成できる。この工程では、アルカリ触媒量を調整するために、アルカリ触媒を添加してもよい。シェル形成工程に使用されるコア粒子は、水及びアルカリ触媒の混合液に分散していることが好ましい。
シェル形成工程は、例えば、水および/または有機溶媒の存在下あるいは非存在下で、コア粒子、アルカリ触媒、およびアルコキシシランを任意の順番で混合する工程(a)であってよい。
【0059】
シェル形成工程および工程(a)では、水および/または有機溶媒の存在下あるいは非存在下で、コア粒子、アルカリ触媒、およびアルコキシシランを任意の順番で混合して混合物を調製する。混合前、混合中、混合後のいずれの段階においても任意に撹拌することができる。撹拌の方法は特に制限されない。
【0060】
アルカリ触媒
アルカリ触媒としては、上記コア粒子の製造方法に記載されたアルカリ触媒を使用できる。シェル形成反応において、反応系に存在するアルカリ触媒の量(モル量)は、シェル形成反応系において添加されるアルコキシシランの総モル量の200分の一以下とする。200分の一以下の範囲内となる量であれば、シェル形成反応においてアルカリ触媒を添加してもよい。シェル形成反応系に存在するアルカリ触媒の量(モル量)は、シェル形成反応系において添加されるアルコキシシランの総モル量の200分の一以下が好ましく、250分の一以下がより好ましい。シェル形成反応系に存在するアルカリ触媒の量は、5000分の一~200分の一、4000分の一~200分の一、3000分の一~200分の一、5000分の一~250分の一、4000分の一~250分の一、3000分の一~250分の一であってもよい。シェル形成反応系に存在するアルカリ触媒の量が上記範囲内であることにより、微小粒子の生成をより効果的に抑制できる。
【0061】
本発明の製造方法は、粒子内部にアミノ基を有するシリル基が導入されたコロイダルシリカを製造するものであるため、シェル形成工程においてアミノ基を有するアルコキシシランとアミノ基を有しないアルコキシシランが使用される。
【0062】
シェル形成工程において、シェル形成反応において添加されるアルコキシシランの総量(アミノ基を有するアルコキシシランの量とアミノ基を有しないアルコキシシランの合計量)は、シェル形成反応系中に存在するアルカリ触媒の量に対して、モル比で200倍以上であり、好ましくは250倍以上である。添加されるアルコキシシランの総量は、200~5000倍、200~4000倍、200~3000倍、250~4000倍、250~3000倍であってもよい。シェル形成反応において添加されるアルコキシシランの総量が上記範囲内であることにより、微小粒子の生成をより効果的に抑制できる。
【0063】
シェル形成反応において、添加されるアルコキシシランの総量は、本発明のコロイダルシリカが得られる限り特に制限されないが、コア粒子の1モル量に対し、0.5モル量以上が好ましく、0.5~200モル量がより好ましく、0.5~120モル量がさらに好ましい。
【0064】
シェル形成工程において添加されるアルコキシシランにおいて、アミノ基を有するアルコキシシランの量は、本発明のコロイダルシリカが得られる限り特に制限されないが、アルコキシシランの総量100モル%に対し、好ましくは0.1~10モル%、より好ましくは0.2~5モル%である。
【0065】
アミノ基を有するアルコキシシラン
アミノ基を有するアルコキシシランとしては、特に限定されず、例えば、下記一般式(3)
Si(ORe)m(Rf)o(L-NH2)q (3)
[式中、Reはアルキル基を示し、Lは連結基を示し、mは1~3の整数であり、oは0~2の整数であり、qは1~3の整数であり、m+o+q=4である。]
で表されるアルコキシシランを使用できる。
【0066】
Reはアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状または分岐状のC1-C8アルキル基であることが好ましく、直鎖状のC1-C8アルキル基がより好ましく、直鎖状のC1-C4アルキル基であることがさらに好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0067】
Rfはアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状または分岐状のC1-C8アルキル基であることが好ましく、直鎖状のC1-C8アルキル基がより好ましく、直鎖状のC1-C4アルキル基であることがさらに好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0068】
Lは連結基であり、上記の一般式(1)で表されるアミノ基を有するシリル基における連結基と対応する。このため、一般式(3)におけるLには、特段の断りがない限り、一般式(1)で表されるアミノ基を有するシリル基におけるLについての上記説明が適用される。
【0069】
アミノ基を有するアルコキシシランとしては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0070】
アミノ基を有するアルコキシシランは、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、アミノ基を有するアルコキシシランは一度に全量を添加してもよいし、数回(例えば2回、3回など)に分けて添加してもよい。
【0071】
アミノ基を有しないアルコキシシラン
アミノ基を有しないアルコキシシランとしては特に限定されず、下記一般式(4A)
Si(ORd)4 (4A)
[式中、Rdはアルキル基を示す。]
で表されるアルコキシシラン、または下記一般式(4B)
Si(ORg)t(Rh)u (4B)
[式中、Rgはアルキル基を示し、Rhはアルキル基を示し、tは1~3の整数であり、uは1~3の整数であり、t+u=4である。]
で表されるアルコキシシランが挙げられる。
【0072】
前記一般式(4A)において、Rdはアルキル基を示す。Rdはアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状または分岐状のC1-C8アルキル基であることが好ましく、直鎖状のC1-C8アルキル基がより好ましく、直鎖状のC1-C4アルキル基であることがさらに好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができる。前記一般式(4A)で表されるアルコキシシランとしては、Rdがメチル基であるテトラメトキシシラン(別称、テトラメチルオルトシリケート)、Rdがエチル基であるテトラエトキシシラン(別称、テトラエチルオルトシリケート)、Rdがイソプロピル基であるテトライソプロポキシシランが好ましく、Rdがメチル基であるテトラメトキシシラン、Rdがエチル基であるテトラエトキシシランがより好ましく、テトラメトキシシランがより一層好ましい。
【0073】
前記一般式(4B)において、RgおよびRhは同一または異なってアルキル基を示す。RgおよびRhはアルキル基であれば特に限定されず、直鎖状または分岐状のC1-C8アルキル基であることが好ましく、直鎖状のC1-C8アルキル基がより好ましく、直鎖状のC1-C4アルキル基であることがさらに好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができ、メチル基、エチル基、n-プロピル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。前記一般式(4B)で表されるアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシランがより一層好ましい。
【0074】
アミノ基を有しないアルコキシシランは、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、アミノ基を有しないアルコキシシランは一度に全量を添加してもよいし、数回(例えば2回、3回など)に分けて添加してもよい。
【0075】
アミノ基を有するアルコキシシランおよびアミノ基を有しないアルコキシシランは、誘導体であってもよい。当該アルコキシシランの誘導体としては、アミノ基を有するアルコキシシランおよびアミノ基を有しないアルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物を例示することができる。
【0076】
アミノ基を有するアルコキシシランとアミノ基を有しないアルコキシシランとは、別々に添加されても、混合されて添加されてもよい。
【0077】
媒体
シェル形成工程は、水および/または有機溶媒(以下、単に媒体と称することがある)の存在下あるいは非存在下で実施できる。媒体の存在下で実施すると凝集抑制の点で有利であり、好ましい。媒体を使用する場合、媒体の使用量はシェル形成が行われる限り特に制限されない。
【0078】
媒体としては、水単独または水と有機溶媒との併用が好ましい。水の使用は、アルコキシシランの反応性が向上するため好ましい。有機溶媒としては、本発明のコロイダルシリカが得られる限り特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコールであり、好ましくはメタノール、エタノールである。
水と有機溶媒との割合は、水と有機溶媒の合計100質量部に対して、水が、例えば30質量部以上、好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上となる割合であり、また、水が、例えば100質量部以下、好ましくは95質量部以下となる割合である。水と有機溶媒との割合は、水と有機溶媒の合計100質量部に対して、水が、例えば、30~100質量部、40~100質量部、50~100質量部、30~95質量部、40~95質量部、50~95質量部となる割合とすることもできる。水の使用比率が高いことによって、製造コスト上のメリットがある。
一実施形態では、コア粒子を含む水に、必要量のアルカリ触媒を添加した後、アルコキシシランを添加し、加温してシェルを形成させる。コア粒子を含む水に必要量のアルカリ触媒が含まれている場合はアルカリ触媒の添加を要しない。
【0079】
シェル形成反応において、アルコキシシランの添加に要する時間は、本発明のコロイダルシリカが得られる限り特に制限されない。
【0080】
シェル形成反応における反応液の温度は、本発明のコロイダルシリカが得られる限り特に制限されないが、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。混合液の温度の下限が前記範囲であると、反応時にゲル化し難い。また、混合液の温度は95℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。混合液の温度の上限が前記範囲であると、アルコキシシランが気化し難い。反応液の温度は70~95℃、75~95℃、70~90℃、75~90℃であってもよい。
【0081】
シェル形成工程で得られたコロイダルシリカは、必要に応じて、濃縮されたり、希釈されてもよいが、例えばシリカ粒子濃度を1~50質量%とできる。濃縮の方法としては特に限定されず、従来公知の方法により濃縮することができる。このような濃縮方法としては、例えば、65~100℃程度の温度で加熱濃縮する方法が挙げられる。
【0082】
また、媒体として有機溶媒を使用した場合には、シェル形成工程で得られたコロイダルシリカにはアルコール等の有機溶媒が含まれる。このため、コロイダルシリカから有機溶媒を系外留去してもよい。有機溶媒を系外留去する方法としては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカを加熱しながら純水を滴下し、容量を一定に保つことにより、分散媒を純水で置換する方法が挙げられる。また、他の方法としては、コロイダルシリカを沈殿させて分離した後に、または遠心分離等により溶媒と分離した後に、水に再分散させる方法、限外ろ過によって有機溶媒を除去しながら、純水を追加して、溶媒を水に置換する方法等を例示することができる。
【実施例0083】
以下、実施例等を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0084】
実施例1
コア粒子の製造
(工程1)
フラスコに、溶媒として純水7500gを入れ、アルカリ触媒として3-エトキシプロピルアミン0.7737gを添加することにより混合液を調製した。この混合液のpHは10.7であった。この3-エトキシプロピルアミン0.7737gは、コア粒子の合成に使用されるため、シェル形成に使用されるアルカリ触媒量には含めない。
(工程2)
混合液を内温85℃まで加熱した後、当該混合液にテトラメチルオルトシリケート(TMOS)2740gを内温変動しないよう温調しつつ、60分かけて定速注入した。注入終了後60分間撹拌して、混合液を調製した。
(工程3)
混合液に3-エトキシプロピルアミン(3-EOPA)10.0gを添加して、コロイダルシリカ(コア粒子を含む分散液;10250.8g)を調製した。コロイダルシリカのシリカ濃度は10.5質量%であり、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の二次粒子径は36nmであった。
【0085】
シェル形成
(工程4)
フラスコに、溶媒として純水5882g、および、工程3で調製したコア粒子を含む分散液2604g(工程3で添加された3-EOPAを2.540g(0.02462モル)含有)を入れて混合し混合液を調製した。この工程では、アルカリ触媒としての3-エトキシプロピルアミンを添加しなかった。
(工程5)
工程4で調製した混合液を80℃まで加熱した後、液温が変動しないように温度を調整しながら、テトラメチルオルトシリケート1872.3g(12.3000モル)および3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3―APTMS)16.3g(0.0909モル)の混合液を180分かけて一定速度で注入した。注入終了後15分間液温を80℃に保持し、シェルが形成されて、コアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカ分散液を得た。シェル形成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で503倍であった(=(12.3000+0.0909)/0.02462)。
【0086】
濃縮・水置換
(工程6)
工程5で得られたコロイダルシリカ分散液のうち、ベース量として900g、フィード量として900gを採取し、常圧下で容量を一定に保ちながらコロイダルシリカ分散液をフィードして、シリ力濃度が約20質量%となるまで加熱濃縮した。次いで、メタノールを系外留去するために、容量を一定に保ちながら、純水670mLを滴下して分散媒を置換して、水分散コロイダルシリカを調製した。
【0087】
得られたコロイダルシリカを後述のSEM画像解析方法で観察したところ微小粒子が少なかった(
図1)。
【0088】
実施例2
実施例1の工程4において、アルカリ触媒としての3-エトキシプロピルアミンを2.536g添加したこと以外は実施例1と同様にして、水分散コロイダルシリカを調製した。シェル形成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で252倍であった。
【0089】
比較例1
本例は、特開2016-008157に記載された実施例1に相当する。
実施例1の工程4において、アルカリ触媒としての3-エトキシプロピルアミンを10.144g添加したこと以外は実施例1と同様にして、水分散コロイダルシリカを調製した。工程4で得られた混合液のpHは10であった。シェル形成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で101倍であった。
得られた水分散コロイダルシリカを後述のSEM画像解析方法で観察したところ(
図2)、比較例1のコロイダルシリカ(平均楕円短軸27nm)は、実施例1のコロイダルシリカ(平均楕円短軸27nm)(
図1)と比較して、粒子径20nm(27nm×0.75=20nm)以下の微小粒子が明らかに多かった。
【0090】
実施例3
実施例1の工程4および5に替えて下記の工程4および5を行ったこと以外は実施例1と同様にして、水分散コロイダルシリカを調製した。シェル形成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で1007倍であった。
(工程4)
フラスコに、純水6061g、メタノール930g、実施例1の工程3で調製したコア粒子を含む分散液581g、および3-エトキシプロピルアミン(3-EOPA)0.789gを入れて混合し混合液を調製した。
(工程5)
工程4で調製した混合液を80℃まで加熱した後、液温が変動しないように温度を調整しながら、テトラメチルオルトシリケート2000g、メタノール800g、3-アミノプロピルトリメトキシシラン17.4gの混合液を360分かけて一定速度で注入した。注入終了後15分間液温を80℃に保持して、コアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカ分散液を得た。
【0091】
実施例4
実施例3の工程4において、3-エトキシプロピルアミンの使用量を2.144gへ変更したこと以外は実施例3と同様にして、水分散コロイダルシリカを調製した。シェル形成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で504倍であった。
【0092】
比較例2
実施例3の工程4において、3-エトキシプロピルアミンの使用量を8.761gへ変更したこと以外は実施例3と同様にして、水分散コロイダルシリカを調製した。シェル形成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で146倍であった。
【0093】
比較例3
本例は、特開2018-048042に記載された実施例2に相当する。
常温常圧下で、オルトケイ酸テトラメチル(つまり、テトラメチルオルトシリケート)1316g、3-アミノプロピルトリエトキシシランを13.333g、およびメタノール352gを混合して組成物を作成した。
反応容器へ、アンモニア水溶液(28質量%)805g、水1298g、およびメタノール10417gを仕込み、35℃、200rpmで撹拌しながら、前記組成物を30分かけて徐々に添加してコロイダルシリカ分散液を調製した。得られたコロイダルシリカ(シェル形成反応後のコロイダルシリカ)を後述のSEM画像解析方法で観察したところ、非常に多数の微小粒子が見られた(
図3)。
次いで、ベース量を800g、フィード量を1800g、メタノールを置換するための純水量を1200mLとしたこと以外は実施例1の工程6と同様にして、水分散コロイダルシリカを調製した。粒子合成反応において添加されたアルコキシシランの総量は、アルカリ触媒量に対し、モル比で0.658倍であった。得られた水分散コロイダルシリカをSEMで観察したところ、粒子合成反応後に観察された微小粒子(
図3)がシリカ粒子に取り込まれて減少していた(
図4)。
【0094】
実施例1~4および比較例1~2のシェル形成反応の条件とシェル形成反応後の粒子の物性を表1に、比較例3のそれらを表2に示した。上記実施例および比較例で調製した水分散コロイダルシリカの物性等を後述の方法で測定し、その結果を表3に示した。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
コロイダルシリカのゼータ電位
アミノ基がシリカ粒子に含有されていることを確認するため、シリカ粒子のゼータ電位を測定した。結果を、表4および
図5に示す。本願の比較例1のゼータ電位は、特許文献1(特開2016-008157)の実施例1と同等であった。本願の実施例1~4のpH2のゼータ電位は25mV程度であり、いずれも本願の比較例1と同等であった。一方、アミノ基を粒子表面にのみ含有している、特開2016-008157に記載された比較例1では、pH2のゼータ電位が約45mVと高い。これらのことから、本願の実施例1~4のコロイダルシリカ中のシリカ粒子は表面にアミノ基とシラノール基が混在していることが確認できる。
【0099】
【0100】
物性の決定方法
表3中の物性値等は、次のようにして決定した。
【0101】
1.BET比表面積および平均一次粒子径
コロイダルシリカをホットプレート上で乾燥後、800℃で1時間熱処理して測定用サンプルを作製する。作製した測定用サンプルを窒素ガス吸着法(BET法)によりBET比表面積(m2/g)を測定した。
シリカの真比重を2.2として、上記BET比表面積の測定値から2727/BET比表面積(m2/g)の値を換算して、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の平均一次粒子径(nm)とした。
【0102】
2.平均二次粒子径
測定用サンプルとして、コロイダルシリカを0.3重量%クエン酸水溶液に加えて均一化したものを調製した。当該測定用サンプルを用いて、動的光散乱法(大塚電子株式会社製「ELSZ-2000S」)により、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の二次粒子径を測定した。
【0103】
3.会合比
コロイダルシリカ中のシリカ粒子の会合比は、コロイダルシリカ中のシリカ粒子の平均二次粒子径/平均一次粒子径を算出して得た。
【0104】
4.SEM画像の解析
4-1.SEMの観察用試料の作製
メタノール7.5mL、水1.5mL、0.01M HCl 1mL、シリカ濃度20%のコロイダルシリカ5μLを混合した液もしくはシェル形成反応後のシリカ濃度7~12%の反応液10μLを試料台に落とし、乾燥させる。前記の混合液を調製する際は、希釈および混合後のシリカ濃度が0.007~0.012質量%となるようにシリカ粒子を含む分散液の量を増減させて調整してもよい。この試料台を走査型電子顕微鏡(SEM)にセットし、SEM画像を撮影する。SEM画像下部に示された白色バーは100nmの長さを示す。
【0105】
4-2.平均楕円短軸
走査型電子顕微鏡で撮影したシリカ粒子の画像を、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製「WinRoof2015」)で粒子1000個をそれぞれ楕円近似し、楕円長軸および楕円短軸を計測した。SEM画像中の全粒子の楕円短軸を平均して平均楕円短軸(nm)を計算した。
【0106】
4-3.微小粒子の個数割合
上記4-2における楕円近似により得られた平均楕円短軸に対して75%以下の粒子径を有する粒子を微小粒子と定義し、SEM画像中の全粒子数と微小粒子数を数えた。全粒子の個数に対する微小粒子の個数の割合を計算した((微小粒子数/全粒子数)×100(%))。
【0107】
4-4.アスペクト比
上記4-2における楕円近似により得られた楕円長軸および楕円短軸から、各粒子の楕円長短軸比(楕円長軸/楕円短軸)を算出し、その平均値をアスペクト比とした。
【0108】
5.表面粗度
BET比表面積(B1)を、平均楕円短軸から算出される比表面積(S1)で除して算出される(B1/S1)を表面粗度とした。なお、比表面積(S1)は、シリカの真比重を2.2として、2727/平均楕円短軸(nm)の値を換算して求めた。
【0109】
6.シラノール基密度
シリカ粒子のシラノール基密度は、シアーズ法により求めた。シアーズ法は、G.W.Sears,Jr.,“Determination of Specific Surface Area of Colloidal Silica by Titration with Sodium Hydroxide”,Analytical Chemistry,28(12),1981(1956).の記載を参照して実施した。測定には1質量%シリカ分散液を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行い、下記式に基づき、シラノール基密度を算出した。
ρ=(a×f×6022)÷(c×S)
上記式中、ρ:シラノール基密度(個/nm2)、a:pH4-9の0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(mL)、f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液のファクター、c:シリカ粒子の質量(g)、S:BET比表面積(m2/g)をそれぞれ示す。
【0110】
7.真密度
コロイダルシリカを150℃のホットプレート上で乾燥させ、300℃で1時間熱処理した後、エタノールを用いた液相置換法で測定する測定方法により真密度を測定した。
【0111】
8.ゼータ電位
コロイダルシリカをシリカ濃度1質量%となるように10mM塩化ナトリウム水溶液で希釈し、大塚電子株式会社製のELS-Zを用いてゼータ電位を測定した。