IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-巻取りロール 図1
  • 特開-巻取りロール 図2
  • 特開-巻取りロール 図3
  • 特開-巻取りロール 図4
  • 特開-巻取りロール 図5
  • 特開-巻取りロール 図6
  • 特開-巻取りロール 図7
  • 特開-巻取りロール 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177237
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】巻取りロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/18 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047691
(22)【出願日】2023-03-24
(62)【分割の表示】P 2022089798の分割
【原出願日】2022-06-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA03
3F058AB01
3F058BB15
3F058CA00
3F058DA04
3F058DB05
3F058HA08
(57)【要約】
【課題】長尺で可撓性を有する帯状体を巻き芯に巻き取ってロール状にした巻取りロール
において、帯状体に生じる応力緩和による変形を抑制することを目的とする。
【解決手段】円筒状の巻き芯2に該巻き芯2の周方向に帯状体1を巻き取った巻取りロー
ル100であって、巻き芯2の外周面には、帯状体1において巻き芯2の外周面に面する
最内の第一周部11の一部分を該外周面に固定するための接着部3が設けられており、帯
状体1の第一周部11は、帯状体1の巻き芯2に巻き取り始められる始端10の上に乗り
上げ始める部分111において接着部3により巻き芯2の外周面に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の巻き芯に該巻き芯の周方向に可撓性を有する帯状体を巻き取った巻取りロール
であって、
前記巻き芯の外周面には、前記帯状体において前記巻き芯の外周面に面する最内の第一
周部の一部分を該外周面に固定するための接着部が設けられており、
前記帯状体の前記第一周部は、前記帯状体の前記巻き芯に巻き取り始められる始端の上
に乗り上げ始める部分において前記接着部により前記巻き芯の外周面に固定されている、
巻取りロール。
【請求項2】
前記接着部は、前記巻き芯の外周面の周方向に沿って延びており、
前記接着部により、前記帯状体の前記始端が前記巻き芯の外周面に固定されている、請
求項1に記載の巻取りロール。
【請求項3】
前記巻き芯の外周面には、複数の前記接着部が前記周方向に互いに間隔をあけて設けら
れており、
複数の前記接着部のうちの一つの接着部により、前記帯状体の前記第一周部は、前記始
端の上に乗り上げ始める部分が前記巻き芯の外周面に固定されている、請求項1に記載の
巻取りロール。
【請求項4】
複数の前記接着部のうちの他の一つの接着部により、前記帯状体の前記始端に近い一部
分が前記巻き芯の外周面に固定されており、
前記帯状体の前記始端は、前記巻き芯の外周面との間に前記接着部が介在しない、請求
項3に記載の巻取りロール。
【請求項5】
複数の前記接着部のうちの他の一つの接着部により、前記帯状体の前記始端が前記巻き
芯の外周面に固定されている、請求項3に記載の巻取りロール。
【請求項6】
前記接着部が両面テープである、請求項1に記載の巻取りロール。
【請求項7】
前記接着部の厚みが30μm以下である、請求項1に記載の巻取りロール。
【請求項8】
前記帯状体は、粘着シートの二つの主面に可撓性剥離基材が貼り合わされた積層構造で
ある、請求項1から7のいずれか一項に記載の巻取りロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺で可撓性を有する帯状体を巻き芯(コア)に巻き取ってロール状にした
巻取りロールに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、例えば異なる二つの部材を貼り合わせる用途などに使用されており、種
々の分野において広く利用されている。このような粘着シートは、近年では液晶ディスプ
レイ(LCD)などの表示装置、あるいはタッチパネルなどの入力装置の製造にも使用さ
れており、表示装置や入力装置を構成する光学部材同士の貼り合わせに粘着シートを使用
することで、高精度、かつ、容易に各種装置の製造を可能にしている。
【0003】
粘着シートは、粘着剤をシート状ないしはフィルム状にしたものである。粘着シートは
、輸送や保管時においては、長尺で薄い帯状の粘着シートの二つの主面に樹脂製や紙製な
どのフィルム状又はシート状の基材に剥離剤を塗布した可撓性を有する帯状の剥離基材が
貼り合わされた積層体の状態とされており、この積層体シートをコアと呼ばれる円筒状の
巻き芯に巻き取ってロール状とした巻取りロールの形態とされることが一般的である。
【0004】
図8に示すように、積層体シート1は、巻き芯2に巻き取り始められる始端10側の一
部分が例えば両面テープなどの接着部3により巻き芯2の外周面に固定される。そして、
巻き芯2を周方向に回転させることで、内側から第一周部11、第二周部12、第三周部
13、・・・の順に重なるように、積層体シート1が巻き芯2に巻き取られる。
【0005】
ここで、積層体シート1は、巻き芯2の外周面に一周巻き付けられた第一周部11が始
端10に乗り上げることで第二周部12が第一周部11上に重なるが、この乗り上げに伴
って第一周部11には積層体シート1の厚みや接着部3の厚みに応じた段差による変形D
1が生じる。この段差による変形D1は、積層体シート1が幾重に巻き取られる度に生じ
て、積層体シート1には前記段差による変形D1が形成される。
【0006】
上述した段差による変形D1の発生を解消するために、巻き芯2の外周面に弾性を有す
る樹脂発泡体層を設ける技術が特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-108211号公報
【特許文献2】特開2013-199344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層体シート1は、巻き芯2に巻き取られた状態では、外側の可撓性剥離基材5が伸長
しているとともに内側の可撓性剥離基材6が圧縮している。そのため、積層体シート1の
外側の可撓性剥離基材5には伸長の残留応力が生じ、内側の可撓性剥離基材6には圧縮の
残留応力が生じる。巻取りロールの保管時など、巻取りロールが長時間留置されると、特
に夏場の高温環境下では、その間に上述した残留応力の緩和が進み、外側の可撓性剥離基
材5は縮まり、内側の可撓性剥離基材6は伸びる。これにより、図8(B)に示すように
、積層体シート1の第一周部11では、外側の可撓性剥離基材5が縮むことによって始端
10側で粘着シート4が露出し、露出した粘着シート4に第二周部12として始端10に
乗り上げた内側の可撓性剥離基材6が貼り付いている。また、積層体シート1の第一周部
11では、内側の可撓性剥離基材6が積層体シート1の始端10側において接着部3によ
り巻き芯2の外周面に固定されているため、内側の可撓性剥離基材6の伸びは巻き芯2の
外周面に沿って始端10と反対方向に進む。このとき、内側の可撓性剥離基材6は始端1
0上で上述の露出した粘着シート4に貼り付いており、内側の可撓性剥離基材6の伸びは
、積層体シート1の始端10の手前において第一周部11が第二周部12として始端10
の上に乗り上がる際に巻き芯2の外周面との間に形成される略三角形状の隙間Sの部分に
集中するため、内側の可撓性剥離基材6には当該隙間Sの位置において弛みが生じる。そ
して、この内側の可撓性剥離基材6の弛みに伴い、粘着シート4及び外側の可撓性剥離基
材5に凹状の変形D2が生じ、この積層体シート1の第一周部11の変形D2は、外側に
波及し、積層体シート1には第二周部12以降に応力緩和による変形D2が形成される。
【0009】
上述した特許文献1,2に開示の技術は、段差による変形D1の発生を抑制する効果は
あっても、応力緩和による変形D2の発生を抑制する効果はないうえ、巻き芯2の外周面
に弾性を有する樹脂発泡体層を設けると、巻き芯2による変形に抗する作用効果が失われ
、むしろ悪影響となる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、長尺で可撓性を有する帯状体を巻き
芯に巻き取ってロール状にした巻取りロールにおいて、帯状体に生じる応力緩和による変
形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、長尺で可撓性を有する帯
状体を巻き芯に巻き取る際に、帯状体の最内の第一周部について所定の位置で巻き芯の外
周面に固定することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
【0012】
すなわち、本発明は、上記目的の達成のため、以下の項1に記載の巻取りロールを包含
する。
【0013】
項1.円筒状の巻き芯に該巻き芯の周方向に可撓性を有する帯状体を巻き取った巻取りロ
ールであって、
前記巻き芯の外周面には、前記帯状体において前記巻き芯の外周面に面する最内の第一
周部の一部分を該外周面に固定するための接着部が設けられており、
前記帯状体の前記第一周部は、前記帯状体の前記巻き芯に巻き取り始められる始端の上
に乗り上げ始める部分において前記接着部により前記巻き芯の外周面に固定されている、
巻取りロール。
【0014】
また本発明は、上記項1に記載の巻取りロールの好ましい態様として、以下の項2及び
項3に記載の巻取りロールを包含する。
【0015】
項2.前記接着部は、前記巻き芯の外周面の周方向に沿って延びており、
前記接着部により、前記帯状体の前記始端が前記巻き芯の外周面に固定されている、項
1に記載の巻取りロール。
【0016】
項3.前記巻き芯の外周面には、複数の前記接着部が前記周方向に互いに間隔をあけて設
けられており、
複数の前記接着部のうちの一つの接着部により、前記帯状体の前記第一周部は、前記始
端の上に乗り上げ始める部分が前記巻き芯の外周面に固定されている、項1に記載の巻取
りロール。
【0017】
また本発明は、上記項3に記載の巻取りロールの好ましい態様として、以下の項4及び
項5に記載の巻取りロールを包含する。
【0018】
項4.複数の前記接着部のうちの他の一つの接着部により、前記帯状体の前記始端に近い
一部分が前記巻き芯の外周面に固定されており、
前記帯状体の前記始端は、前記巻き芯の外周面との間に前記接着部が介在しない、項3
に記載の巻取りロール。
【0019】
項5.複数の前記接着部のうちの他の一つの接着部により、前記帯状体の前記始端が前記
巻き芯の外周面に固定されている、項3に記載の巻取りロール。
【0020】
また本発明は、上記項1から項5に記載の巻取りロールの好ましい態様として、以下の
項6に記載の巻取りロールを包含する。
【0021】
項6.前記接着部が両面テープである、項1から項5のいずれか一項に記載の巻取りロー
ル。
【0022】
また本発明は、上記項1から項6に記載の巻取りロールの好ましい態様として、以下の
項7に記載の巻取りロールを包含する。
【0023】
項7.前記接着部の厚みが30μm以下である、請求項1から項6のいずれか一項に記載
の巻取りロール。
【0024】
また本発明は、上記項1から項7に記載の巻取りロールの好ましい態様として、以下の
項8に記載の巻取りロールを包含する。
【0025】
項8.前記帯状体は、粘着シートの二つの主面に可撓性剥離基材が貼り合わされた積層構
造である、項1から項7のいずれか一項に記載の巻取りロール。
【発明の効果】
【0026】
本発明の巻取りロールによれば、巻き芯にロール状に巻き取られた帯状体に応力緩和に
よる変形が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態の巻取りロールの一例の概略構成を示す。
図2】本発明の一実施形態の巻取りロールの他の一例の概略構成を示す。
図3】本発明の他の実施形態の巻取りロールの一例の概略構成を示す。
図4】本発明の他の実施形態の巻取りロールの他の一例の概略構成を示す。
図5図1に示す巻取りロールを製造する際の巻き芯に帯状体を巻き取り始めた状態の概略構成を示す。
図6】粘着シートの断面の概略構成を示す。
図7】本発明の他の実施形態の巻取りロールの一例の概略構成を示す。
図8】従来例の巻取りロールの概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0029】
巻取りロール
図1から図4は、本発明の一実施形態に係る巻取りロール100の概略図である。図5
は、図1に示す巻取りロール100を製造する際の巻き芯2に帯状体1を巻き取り始めた
状態の概略図である。本実施形態の巻取りロール100は、長尺で可撓性を有する帯状体
1を巻き芯(コア)2に該巻き芯2の周方向に巻き取ってロール状にしたものである。帯
状体1と巻き芯2の外周面との間には、接着部3が介在している。帯状体1は、巻き芯2
の外周面に面する最内の第一周部11の一部分が複数の接着部3により巻き芯2の外周面
に固定されている。
【0030】
以下、本実施形態の巻取りロール100の各構成を、より詳細に説明する。
【0031】
帯状体
帯状体1は、長尺で薄い帯状のシートやフィルムの単層構造、あるいは、上記シート及
び/又はフィルムが複数積層された積層構造をなす。シートやフィルムは、プラスチック
や紙など、可撓性を有する素材で形成される。
【0032】
図5に示すように、帯状体1は、巻き芯2に巻き取られる前は、長尺で帯状を呈してお
り、幅方向と、幅方向に直交しかつ幅方向と比べて長さが大幅に長い長手方向と、を有す
る。帯状体1は、長手方向に沿って巻き芯2の外周面に幾重に巻き付けられる。帯状体1
は、長手方向における一方側の端10と、長手方向における他方側の端(図示せず)と、
を有している。帯状体1の一方側の端10が巻き芯2に巻き取り始められる始端である。
以下、帯状体1の一方側の端10を始端10と称する。
【0033】
図1から図4に示すように、帯状体1は、巻き芯2に巻き取られた状態では、内側から
第一周部11、第二周部12、第三周部(図示せず)、・・・の順に重なるロール状であ
る。帯状体1において、第一周部11は、巻き芯2の外周面上に巻き付けられる部分であ
り、第二周部12は、第一周部11上に巻き付けられる部分である。第n周部(nは三以
上の整数)以降は、第(n-1)周部上に巻き付けられる部分である。
【0034】
第一周部11は、巻き芯2の外周面上に一周巻き付けられると、帯状体1の始端10に
乗り上げることで、第二周部12が第一周部11上に重なる。なお、本開示では、説明の
便宜上、帯状体1の始端10の真上の第一周部11及び第二周部12の境界を第一周部1
1の終端110と称するが、実際に帯状体1に第一周部11の終端110が明示などされ
ているわけではない。帯状体1の第一周部11と、巻き芯2の外周面との間には、帯状体
1の始端10に第一周部11が乗り上げて第一周部11上に第二周部12が重なる際にで
きる断面視略三角形状の隙間Sが生じている。
【0035】
図6に示すように、帯状体1の具体例としては、シート状ないしはフィルム状の粘着剤
(以下、「粘着シート」という。)4と、粘着シート4の二つの主面に貼り合わされた一
対の可撓性剥離基材5,6と、を備えた積層体を例示することができる。粘着シート4は
、例えば、異なる二つの部材を貼り合わせる用途で使用される。粘着シート4により貼り
合わせる二つの部材は、特に限定されるものではないが、液晶ディスプレイ(LCD)な
どの表示装置やタッチパネルなどの入力装置の製造の際に表示装置、入力装置を構成する
光学部材同士の貼り合わせを一例として挙げることができる。また、粘着シート4は、例
えば、ガラスやプラスチックなどで形成されたパネルに貼り付けて該パネルの表面を保護
する用途で使用される。なお、粘着シート4の用途は、上述した用途に限定されない。
【0036】
粘着シート4は、例えば粘着剤組成物の硬化により形成される。粘着剤組成物は、特に
限定されるものではなく、従来公知の粘着シートに用いられている粘着剤組成物を使用す
ることができる。粘着シート4の形成方法は、特に限定されず、例えば、粘着剤組成物を
一方の可撓性剥離基材上に塗布して粘着剤組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥処理(硬
化)することにより、粘着シート4を形成することができる。また、粘着シート4の別の
形成方法として、粘着剤組成物を一方の可撓性剥離基材上に塗布して粘着剤組成物の塗膜
を形成した後、すみやかにもう一方の可撓性剥離基材を塗膜に被せ、該塗膜に可撓性剥離
基材を通して紫外線処理(硬化)することにより、粘着シート4を形成することもできる
。粘着剤組成物を一方の可撓性剥離基材上に塗布する方法は、特に限定されず、例えば、
ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコー
ター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコー
ター、カーテンコーターなどの市販の塗布装置を用いた従来公知の塗布方法を用いること
ができる。
【0037】
一対の可撓性剥離基材5,6は、巻き芯2に巻き取られる際に折れずに柔軟に曲がる性
質(可撓性)を有しており、例えばシートやフィルムである。一対の可撓性剥離基材5,
6の材質は特に限定されず、プラスチックや紙など、従来公知の素材で可撓性剥離基材5
,6を形成することができる。一対の可撓性剥離基材5,6の具体例としては、例えば、
紙の表面にラミネートしたポリエチレンに剥離剤を塗布した剥離紙やポリエステルフィル
ムに剥離剤を塗布したセパレータフィルムなどを挙げることができる。一対の可撓性剥離
基材5,6は、いずれも同じ材質のものであってもよいし、互いに異なる材質のものであ
ってもよい。
【0038】
一対の可撓性剥離基材5,6のいずれか一方を剥離剤の塗布のない可撓性非剥離基材と
して粘着シート付き基材としてもよい。可撓性非剥離基材には粘着シートを貼り合わせる
面の裏面に力学的強度付与層や光学調整層などの機能層を付与してもよいし、さらに前記
機能層を保護するために機能層を付与した面を保護する保護用基材をさらに積層させても
よい。
【0039】
巻き芯
図1から図4に示すように、巻き芯2は、所定の外径及び所定の長さを有する円筒形状
を呈しており、縦断面(巻き芯2の長さの方向に延びる中心軸に直交する断面)において
内周面及び外周面のなす形状がともに中心Oが同じ円形状である。巻き芯2の前記中心軸
は、中心Oを通る仮想線である。巻き芯2の材質は特に限定されず、プラスチック、紙、
樹脂含有紙、金属など、従来公知の素材で巻き芯2を形成することができる。
【0040】
接着部
接着部3は、帯状体1の一部分を巻き芯2の外周面に固定するために用いられる。接着
部3は、帯状体1と巻き芯2の外周面とをぴったりくっつけて容易に離れないようにする
ものであれば特に限定されるものではなく、例えば、両面テープ、接着剤、粘着剤などを
用いて構成することができる。その中でも、作業性(作業時間、作業工数)の効率化、寸
法精度(幅精度、厚み精度)の向上の観点から、両面テープで接着部3を構成することが
好ましい。接着部3は、例えば巻き芯2の外周面に予め設けられる。図1から図4に示す
ように、帯状体1は、巻き芯2に巻き取られる際に、巻き芯2の外周面に面する最内の第
一周部11の一部分が複数の接着部3によって巻き芯2の外周面に固定される。
【0041】
図5に示すように、接着部3は、巻き芯2の周方向に間隔をあけて対向する一対の側縁
30,31と、巻き芯2の長手方向に間隔をあけて対向する一対の端縁32,33と、を
備える。接着部3の一対の側縁30,31の長さ(接着部3の帯状体1の幅方向に沿う長
さ、以下、「接着部3の幅」という。)L1は、特に限定されるものではないが、好まし
くは、帯状体1の幅方向の長さと同じ長さ、あるいは、帯状体1の幅方向の長さよりも大
きい長さである。接着部3の一対の端縁32,33の長さ(巻き芯2の周方向に沿う所定
の長さ、以下、「接着部3の長さ」という。)L2は、巻き芯2の外周面の周長さ以下で
ある。
【0042】
図1に示すように、接着部3は、所定の厚みTを有する。接着部3の厚みTは、特に限
定されるものではないが、30μm以下であることが好ましく、15μm以下であること
がより好ましい。帯状体1の第一周部11が巻き芯2の外周面上に一周巻き付けられて帯
状体1の始端10に乗り上げる際に、帯状体1の厚みや接着部3の厚みTに応じた段差を
乗り越える必要があるが、接着部3の厚みTが30μm以下であることにより、上述した
段差を小さくすることができ、この段差により帯状体1に生じる変形D1を小さくするこ
とができる。なお、接着部3の厚みTは、特に限定されるものではないが、4μm以上で
あることが好ましい。
【0043】
接着部3は、特に限定されるものではなく、図1から図4に示すように、巻き芯2の外
周面に複数設けられ、複数の接着部3が巻き芯2の外周面に周方向に間隔をあけて設けら
れていてもよい。この場合、巻き芯2の外周面には、周方向に沿って、粘着シート1を該
外周面に固定する複数の接着部3と、粘着シート1を該外周面に固定しない複数の非固定
部分20とが交互に存在する。複数の接着部3が巻き芯2の外周面に設けられる場合、特
に限定されるものではないが、巻き芯2に帯状体1をしわなどの発生を抑えて綺麗に巻き
取るためには、接着部3の長さL2は5mm以上100mm以下であることが好ましく、
10mm以上50mm以下であることがさらに好ましく、12mm以上25mm以下であ
ることが最も好ましい。
【0044】
図1及び図2に示す巻取りロール100では、二つの接着部3が巻き芯2の外周面に周
方向に間隔をあけて設けられており、巻き芯2の外周面には二つの接着部3と二つの非固
定部分20とが交互に存在する。図3に示す巻取りロール100では、三つの接着部3が
巻き芯2の外周面に周方向に間隔をあけて設けられており、巻き芯2の外周面には三つの
接着部3と三つの非固定部分20とが交互に存在する。図4に示す巻取りロール100で
は、四つの接着部3が巻き芯2の外周面に周方向に間隔をあけて設けられており、巻き芯
2の外周面には四つの接着部3と四つの非固定部分20とが交互に存在する。なお、接着
部3は、巻き芯2の外周面に五つ以上が周方向に間隔をあけて設けられていてもよい。
【0045】
巻き芯2の外周面に非固定部分20が存在することで、巻き芯2に帯状体1をしわなど
の発生を抑えて綺麗に巻き取ることができる。また、巻き芯2の外周面の周方向において
非固定部分20の占める範囲が広いことで、巻き芯2に粘着シート1をより綺麗に巻き取
ることができる。
【0046】
複数の接着部3のうちの一つの接着部3は、特に限定されるものではないが、図1から
図4に示すように、帯状体1の始端10側の一部分を巻き芯2の外周面に固定することが
好ましい。これにより、巻き芯2に帯状体1を巻き取りやすくすることができる。帯状体
1の始端10側の一部分とは、図1図3及び図4に示すように、始端10を含む一部分
(始端10から所定の長さの範囲にある部分)であってもよいし、図2に示すように、始
端10に近い一部分(始端10より例えば10mm以上130mm以下離れた位置から所
定の長さの範囲にある部分)であってもよい。
【0047】
帯状体1の始端10は、特に限定されるものではないが、図2に示すように、帯状体1
の始端10側の一部分を巻き芯2の外周面に固定する接着部3の一方の端(図5における
側縁31)と揃っていないことが好ましい。つまり、帯状体1の始端10が接着部3上に
位置せずに接着部3から周方向にはみ出ていて巻き芯2の外周面との間に接着部3が介在
せず、接着部3により巻き芯2の外周面に固定されないことが好ましい。
【0048】
図1図3及び図4に示す巻取りロール100では、帯状体1の第一周部11が巻き芯
2の外周面上に一周巻き付けられて帯状体1の始端10に乗り上げる際に、接着部3の厚
みTに応じた段差と、帯状体1の厚みに応じた段差とを順次に乗り越えればよく、帯状体
1の厚み及び接着部3の厚みTに応じた段差を一遍に乗り越えない。よって、図1図3
及び図4に示す巻取りロール100では、図8に示す従来例の巻取りロールと比べて、上
述した段差により帯状体1に生じる変形D1を小さくすることができる。
【0049】
これに対して、図2に示す巻取りロール100では、帯状体1の始端10が接着部3上
に位置せずに巻き芯2の外周面に接触しているため、帯状体1の第一周部11が巻き芯2
の外周面上に一周巻き付けられて帯状体1の始端10に乗り上げる際に、接着部3の厚み
Tに応じた段差と、帯状体1の厚みから接着部3の厚みTを差し引いた厚みに応じた段差
を乗り越えればよい。よって、図2に示す巻取りロール100では、上述した段差により
帯状体1に生じる変形D1をさらに小さくすることができる。加えて、図2に示す巻取り
ロール100では、帯状体1の始端10が巻き芯2の外周面に固定されていないことによ
り、帯状体1に生じる段差痕を薄めることができる。
【0050】
なお、図3及び図4などに示す巻取りロール100においても、接着部3に対する帯状
体1の始端10の位置を、図2に示す巻取りロール100と同様に変更することができる
【0051】
複数の接着部3のうちの他の一つの接着部3は、帯状体1の第一周部11において始端
10の上に乗り上げ始める部分(以下、「第一周部11の乗り上げ始めの部分」という。
)111について、巻き芯2の外周面に固定する。第一周部11の乗り上げ始めの部分1
11は、帯状体1の始端10に乗り上がった第一周部11の終端110に近い部分であり
、始端10の手前において第一周部11が第二周部12として始端10の上に乗り上がる
ために巻き芯2の外周面から離れた部分である。
【0052】
帯状体1は、巻き芯2に巻き取られた状態では、外側の可撓性剥離基材5が伸長してい
るとともに内側の可撓性剥離基材6が圧縮している。そのため、帯状体1の外側の可撓性
剥離基材5には伸長の残留応力が生じ、内側の可撓性剥離基材6には圧縮の残留応力が生
じている。巻取りロールの保管時など、巻取りロールが長時間留置されると、特に夏場の
高温環境下では、上述した残留応力の緩和が進み、外側の可撓性剥離基材5は縮まり、内
側の可撓性剥離基材6は伸びる。これにより、帯状体1の第一周部11では、外側の可撓
性剥離基材5が縮むことによって始端10側で粘着シート4が露出し、露出した粘着シー
ト4に第二周部12として始端10に乗り上げた内側の可撓性剥離基材6が貼り付く。ま
た、積層体シート1の第一周部11では、内側の可撓性剥離基材6が積層体シート1の始
端10側において接着部3により巻き芯2の外周面に固定されているため、内側の可撓性
剥離基材6の伸びは巻き芯2の外周面に沿って始端10と反対方向に進む。ここで、帯状
体1の第一周部11について、帯状体1の始端10側の一部分以外の部分で巻き芯2の外
周面に固定されていないと、内側の可撓性剥離基材6の伸びは、帯状体1の始端10の手
前において第一周部11が第二周部12として始端10の上に乗り上がる際に巻き芯2の
外周面との間に形成される略三角形状の隙間Sの部分に集中する。そのため、図8に示す
ように、従来技術においては、上記隙間Sの位置で内側の可撓性剥離基材6が大きく弛み
、この弛みに伴い、粘着シート4及び外側の可撓性剥離基材5に凹状の変形D2が生じる
。この帯状体1の第一周部11の変形D2は、外側に波及し、帯状体1には第二周部12
以降に応力緩和による変形D2が形成される。
【0053】
これに対して、図1から図4に示すように、帯状体1の第一周部11の乗り上げ始めの
部分111が接着部3により巻き芯2の外周面に固定されていると、応力緩和による内側
の可撓性剥離基材6の伸びは、当該接着部3により吸収され、上述した隙間Sの部分に影
響をあまり及ぼさない。よって、内側の可撓性剥離基材6は、上記隙間Sの位置で弛むこ
とが効果的に抑制されるため、帯状体1の第二周部12以降に応力緩和による変形D2が
生じることを効果的に抑制できる。なお、接着部3が、帯状体1の第一周部11の乗り上
げ始めの部分111のうちでも、初期部分、つまりは、帯状体1の第一周部11が第二周
部12として始端10の上に乗り上がるために巻き芯2の外周面から離れ始める部分を巻
き芯2の外周面に固定していれば、帯状体1に応力緩和による変形D2が生じることをさ
らに効果的に抑制できる。
【0054】
複数の接着部3のうちの残りの接着部3は、特に限定されるものではないが、図3及び
図4に示すように、巻き芯2の外周面の複数の非固定部分20のそれぞれについて、巻き
芯2の周方向に沿う長さに対応する中心角θ1,θ2,・・・が180°以下となるよう
に、巻き芯2の外周面に設けられていることが好ましい。つまり、巻き芯2の外周面の複
数の非固定部分20は、それぞれ、縦断面視で隣接する一の接着部3との境界E1及び隣
接する他の一の接着部3との境界E2をそれぞれ巻き芯2の中心Oと結んでできる角(∠
E1OE2)が180°以下とされていることが好ましい。
【0055】
これにより、図3及び図4に示す巻取りロール100では、巻き芯2の外周面に巻き付
けられる帯状体1の第一周部11は、複数の接着部3により、巻き芯2の周方向におおよ
そ180°以下の間隔をあけて巻き芯2の外周面に固定される。帯状体1の第一周部11
が、帯状体1の始端10側の一部分及び乗り上げ始めの部分111だけでなく、他の一又
は複数の部分においても接着部3により巻き芯2の外周面に固定されていると、応力緩和
による内側の可撓性剥離基材6の伸びは、接着部3でその都度吸収され、上述した隙間S
の部分に集中しない。よって、上記隙間Sの位置で内側の可撓性剥離基材6が弛むことが
抑制されるため、帯状体1の第一周部11や第二周部12以降に応力緩和による変形D2
が生じることを抑制できる。
【0056】
このように、巻き芯2の外周面に巻き芯2の周方向におおよそ180°以下の間隔をあ
けて複数の接着部3が存在することで、巻き芯2に巻き取った帯状体1に応力緩和による
変形D2が生じることをより効果的に抑制できる。また、巻き芯2の外周面の周方向にお
いて接着部3が数多く存在することで、帯状体1に応力緩和による変形D2が生じること
をより効果的に抑制できる。
【0057】
複数の非固定部分20の中心角θ1,θ2,・・・は、それぞれ同じ大きさであっても
よいし、それぞれ互いに異なる大きさであってもよく、また、一部が同じ大きさで他の一
部が異なる大きさであるなど、180°以下であれば特に限定されるものではない。
【0058】
巻取りロールの作用効果
上述した本実施形態の巻取りロール100は、巻き芯2の外周面に粘着シート1の第一
周部11の一部分を該外周面に固定するための接着部3が設けられており、帯状体1の第
一周部11は、帯状体1の始端10の上に乗り上げ始める部分111において接着部3に
より巻き芯2の外周面に固定されていることを特徴としている。この特徴により、巻取り
ロール100は、上述した通り、帯状体1の内側の可撓性剥離基材6に内在している圧縮
の残留応力が緩和されることで、内側の可撓性剥離基材6に応力緩和による伸びが生じて
も、この伸びは接着部3で吸収されるために、帯状体1の第一周部11において巻き芯2
の外周面との間に形成される略三角形状の隙間Sの部分に集中しない。よって、上記隙間
Sの位置で内側の可撓性剥離基材6が弛むことが抑制されるため、帯状体1の第一周部1
1や第二周部12以降に応力緩和による変形D2が生じることを抑制できる。
【0059】
また上述した本実施形態の巻取りロール100においては、巻き芯2の外周面に複数の
接着部3を巻き芯2の周方向に互いに間隔をあけて設けるように構成することを特徴とす
ることができる。この特徴により、巻取りロール100は、上述した通り、巻き芯2の外
周面に周方向に沿って複数の接着部3と、複数の非固定部分20とが存在する。巻き芯2
の外周面に非固定部分20が存在することで、巻き芯2に帯状体1をしわなどの発生を抑
えて綺麗に巻き取ることができる。
【0060】
また上述した本実施形態の巻取りロール100においては、複数の接着部3のうちの一
つの接着部3により、帯状体1の始端10を巻き芯2の外周面に固定するように構成する
ことを特徴とすることができる。この特徴により、巻取りロール100は、上述した通り
、巻き芯2に帯状体1を巻き取りやすくすることができる。
【0061】
また上述した本実施形態の巻取りロール100においては、帯状体1の始端10に近い
一部分を複数の接着部3のうちの一つの接着部3により巻き芯2の外周面に固定し、帯状
体1の始端10を接着部3により巻き芯2の外周面に固定しないように構成することを特
徴とすることができる。この特徴により、巻取りロール100は、上述した通り、巻き芯
2に帯状体1を巻き取りやすくすることができる。そのうえ、帯状体1の第一周部11が
巻き芯2の外周面上に一周巻き付けられて帯状体1の始端10に乗り上げる際に、帯状体
1の厚みだけに応じた段差を乗り越えればよい。そのため、当該段差により帯状体1に生
じる変形D1を小さくすることができる。
【0062】
他の実施形態の巻取りロール
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述した実施形態は、本発明の様々な
実施形態の一つに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の実施形態
は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。以下、本発明の他
の実施形態について説明する。以下に説明する他の実施形態についても、本発明の目的を
達成することができる。
【0063】
例えば、図7は、本発明の他の一実施形態に係る巻取りロール100の概略図である。
図7に示す巻取りロール100においては、帯状体1の第一周部11の乗り上げ始めの部
分111を巻き芯2の外周面に固定する接着部3は、巻き芯2の外周面の周方向に沿って
延びており、帯状体1の始端10についても巻き芯2の外周面に固定する。帯状体1の始
端10においては、接着部3の一方の端(図5における側縁31)が帯状体1よりも周方
向にはみ出ており、帯状体1の始端10は、接着部3の両端(図5における側縁30,3
1)の間で接着部3により巻き芯2の外周面に固定されている。
【0064】
図7に示す巻取りロール100では、上述した実施形態と同様に、巻き芯2に帯状体1
を巻き取りやすくすることができるうえ、帯状体1に応力緩和による変形D2が生じるこ
とを効果的に抑制できる。
【0065】
さらに、図7に示す巻取りロール100では、帯状体1の始端10が接着部3の一対の
側縁30,31の間に位置するため、帯状体1の第一周部11が巻き芯2の外周面上に一
周巻き付けられて帯状体1の始端10に乗り上げる際に、接着部3の厚みTに応じた段差
と、帯状体1の厚みだけに応じた段差とを順次に乗り越えればよく、帯状体1の厚み及び
接着部3の厚みTに応じた段差を一遍に乗り越えない。よって、図7に示す巻取りロール
100では、図8に示す従来例の巻取りロールと比べて、上述した段差により帯状体1に
生じる変形D1を小さくすることができる。
【0066】
なお、図3及び図4に示す巻取りロール100においても、図7に示す巻取りロール1
00と同様に、帯状体1の第一周部11の乗り上げ始めの部分111を巻き芯2の外周面
に固定する接着部3を、巻き芯2の外周面の周方向に沿って延ばして、帯状体1の始端1
0についても巻き芯2の外周面に固定する(帯状体1の第一周部11の乗り上げ始めの部
分111を巻き芯2の外周面に固定する接着部3と、帯状体1の始端10を巻き芯2の外
周面に固定する接着部3とを一体化する)ように変更することができる。
【0067】
また、上述した全ての実施形態の巻取りロール100においては、帯状体1は粘着シー
ト4を備えた積層構造であるが、他の実施形態の巻取りロールとして、帯状体1は粘着シ
ート4を備えていない単層構造又は複数の積層構造であってもよい。帯状体1が粘着シー
ト4を備えていない場合であっても、帯状体1がテンションをかけられて巻き芯2に巻き
付けられていると、応力緩和のよる内側の可撓性剥離基材6の伸びは、帯状体1の始端1
0の手前において第一周部11が第二周部12として始端10の上に乗り上がる際に巻き
芯2の外周面との間に形成される略三角形状の隙間Sの部分に少なからず集中する。その
ため、粘着シート4を備えていない帯状体1であっても、本発明を適用することで、帯状
体1に応力緩和による変形D2が生じることを抑制できる。
【実施例0068】
以下に本発明の巻取りロールの実施例を示して作用・効果を具体的に説明するが、本発
明の巻取りロールは以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1-3及び比較例1のいずれについても、帯状体は、厚さ100μmのPETを
基材とした可撓性剥離基材の剥離面に、厚さ150μmの粘着シートを積層し、粘着シー
ト上に別の厚さ75μmのPETを基材とした可撓性剥離基材をその剥離面が粘着シート
に接するように積層した積層体シートを用いた。帯状体の幅は1400mmである。この
帯状体を、幅1450mmの樹脂製6インチの巻き芯に自動枠替え装置付き巻取装置で、
帯状体の第一周部と巻き芯外周面との固定方法を変えて巻き取った。
【0070】
実施例1は、図7に示す巻取りロールのように、厚みが15μmで長さL2(図5に示
す)が24mmの両面テープを巻き芯の外周面に巻き芯の中心軸と並行に巻き芯の全長に
わたって貼り付け、帯状体の始端が両面テープの長さL2の方向の中央付近に位置するよ
うにして帯状体を巻き芯に巻き取った。
【0071】
実施例2は、図2に示す巻取りロールのように、厚みが15μmで長さL2(図5に示
す)が12mmの第一両面テープと、厚さが35μmで長さL2が20mmの第二両面テ
ープを、巻き芯の外周面に、互いを周方向に20mm離した状態で、巻き芯の中心軸と並
行に巻き芯の全長にわたって貼り付け、帯状体の始端が第一両面テープ上に位置せずに第
一両面テープから巻き芯の周方向にはみ出るようにして帯状体を巻き芯に巻き取った。
【0072】
実施例3は、図1に示す巻取りロールのように、厚みが15μmで長さL2(図5に示
す)が12mmの第一両面テープと、厚さが35μmで長さL2が20mmの第二両面テ
ープを、巻き芯の外周面に、互いを周方向に3mm離した状態で、巻き芯の中心軸と並行
に巻き芯の全長にわたって貼り付け、帯状体の始端が第一両面テープ上に位置して第一両
面テープの端と揃うにして帯状体を巻き芯に巻き取った。
【0073】
比較例1は、図8に示す従来例の巻取りロールのように、厚みが15μmで長さL2(
図5に示す)が12mmの両面テープを巻き芯の中心軸と並行に巻き芯の全長にわたって
貼り付け、帯状体の始端が両面テープ上に位置して両面テープの端と揃うようにして帯状
体を巻き芯に巻き取った。
【0074】
実施例1-3及び比較例1のそれぞれの巻取りロールを40℃の恒温室で4日間静置し
、巻き芯周辺の変形の転写により使用不能と判断される巻き始めからの巻長を比較した。
【0075】
実施例1では、帯状体の第一周部は、帯状体の始端の上に乗り上げ始める部分が両面テ
ープで巻き芯の外周面に固定されていた。実施例1では、帯状体の第一周部は厚み15μ
mの両面テープに乗り上げた後に帯状体の始端に乗り上げており、段差による変形D1は
主に帯状体の厚み325μmに応じた大きさになり、応力緩和による変形D2の発生はな
かった。よって、実施例1における変形転写は巻き始めより14mに抑えられた。
【0076】
実施例2では、帯状体の第一周部は、帯状体の始端の上に乗り上げ始める部分が第二両
面テープで巻き芯の外周面に固定されていた。実施例2では、帯状体の第一周部は厚み3
5μmの第二両面テープに乗り上げた後に帯状体の始端に乗り上げているが、帯状体の始
端に乗り上げた際の段差による変形D1は帯状体の厚み325μmから第二両面テープの
厚み35μmを引いた290μmに緩和され、さらに帯状体の始端が巻き芯の外周面に固
定されていないことにより段差痕は薄まり、また応力緩和による変形D2の発生がなかっ
た。よって、実施例2における変形転写は巻き始めより12mに抑えられた。
【0077】
実施例3では、帯状体の第一周部は、帯状体の始端の上に乗り上げ始める部分が第二両
面テープで巻き芯の外周面に固定されていた。実施例3では、帯状体の第一周部は厚み3
5μmの第二両面テープに乗り上げた後に帯状体の始端に乗り上げており、帯状体の第一
周部が帯状体の始端に乗り上げる際の段差による変形D1は主に帯状体の厚み325μm
(正確には第一両面テープの厚み15μmと第二両面テープの厚み35μmとの差20μ
mを引いた305μm)に応じた大きさになり、応力緩和による変形D2の発生はなかっ
た。よって、実施例3における変形転写は巻き始めより14mに抑えられた。
【0078】
比較例1では、帯状体の第一周部は帯状体の始端に乗り上げる際に両面テープについて
も一遍に乗り上げるため、帯状体の第一周部が帯状体の始端に乗り上げる際の段差による
変形D1は帯状体の厚み325μmに両面テープの厚み15μmを加えた厚みに応じた大
きさになるうえ、帯状体の始端の前後に応力緩和による変形D2が生じていた。よって、
比較例1における変形転写は巻き始めより20mに及んだ。
【0079】
以上より、本発明の巻取りロールは、巻き芯に巻き取られた帯状体に変形が生じるのを
抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0080】
1 粘着シート
2 巻き芯
3 接着部
10 粘着シートの始端
11 粘着シートの第一周部
111 粘着シートの始端の上に乗り上げ始めの部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の巻き芯に該巻き芯の周方向に可撓性を有する帯状体を巻き取った巻取りロールであって、
前記巻き芯の外周面には、前記帯状体において前記巻き芯の外周面に面する最内の第一周部の一部分を該外周面に固定するための複数の接着部が前記周方向に互いに間隔をあけて設けられており、
前記帯状体の前記第一周部は、前記帯状体の前記巻き芯に巻き取り始められる始端の上に乗り上げ始める部分において、複数の前記接着部のうちの一つの接着部により前記巻き芯の外周面に固定されており
複数の前記接着部のうちの他の一つの接着部により、前記帯状体の前記始端に近い一部分が前記巻き芯の外周面に固定されており、
前記帯状体の前記始端は、前記巻き芯の外周面との間に前記接着部が介在しない、巻取りロール。
【請求項2】
円筒状の巻き芯に該巻き芯の周方向に可撓性を有する帯状体を巻き取った巻取りロールであって、
前記巻き芯の外周面には、前記帯状体において前記巻き芯の外周面に面する最内の第一周部の一部分を該外周面に固定するための複数の接着部が前記周方向に互いに間隔をあけて設けられており、
前記帯状体の前記第一周部は、前記帯状体の前記巻き芯に巻き取り始められる始端の上に乗り上げ始める部分において、複数の前記接着部のうちの一つの接着部により前記巻き芯の外周面に固定されており、
複数の前記接着部のうちの他の一つの接着部により、前記帯状体の前記始端が前記巻き芯の外周面に固定されている巻取りロール。
【請求項3】
前記接着部の厚みは前記帯状体の厚みよりも小さい、請求項1又は2に記載の巻取りロール。
【請求項4】
前記接着部が両面テープである、請求項1又は2に記載の巻取りロール。
【請求項5】
前記接着部の厚みが30μm以下である、請求項1又は2に記載の巻取りロール。
【請求項6】
前記帯状体は、粘着シートの二つの主面に可撓性剥離基材が貼り合わされた積層構造である、請求項1又は2に記載の巻取りロール。