(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017724
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】無鉛黄銅合金及びその使用
(51)【国際特許分類】
C22C 9/04 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
C22C9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115915
(22)【出願日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10 2021 118 907.1
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】522293054
【氏名又は名称】ディール、ブラス、ソリューションズ、シュティフトゥング、ウント、コンパニー、コマンディトゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Diehl Brass Solutions Stiftung & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン、ゾイゼ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、デーネルト
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、ブラウティガン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な被削性、緊急作動特性、油適合性等を有し、油圧ポンプ及び油圧コンポーネントの部品を製造するのに適した無鉛黄銅合金を提供する。
【解決手段】57.0~60.0%のCu、1.0~2.0%のAl、1.5~2.5%のMn、0.1~1.0%のFe、0.5%以下のNi、0.5%以下のSn、0.5~2.0%のSi、0.1%未満のPbを含み、残部がZn及び不可避的不純物である無鉛黄銅合金であって、銅当量(CuEq)が52.0~58.0%である、無鉛黄銅合金である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の元素:
57.0~60.0%のCu
1.0~2.0%のAl
1.5~2.5%のMn
0.1~1.0%のFe
0.5%以下のNi
0.5%以下のSn
0.5~2.0%のSi
0.1%未満のPb
を含み、残部がZn及び不可避的不純物である無鉛黄銅合金であって、
銅当量(CuEq)が52.0~58.0%である、前記無鉛黄銅合金。
【請求項2】
Siを1.0%以下の量で含む、請求項1に記載の無鉛黄銅合金。
【請求項3】
Snを0.2%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.06%未満の量で含む、請求項1又は2に記載の無鉛黄銅合金。
【請求項4】
Niを1.0%以下、好ましくは0.5%以下の量で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の無鉛黄銅合金。
【請求項5】
Feを0.5%以下、好ましくは0.4%以下の量で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の無鉛黄銅合金。
【請求項6】
Mnを2.1%以下の量で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の無鉛黄銅合金。
【請求項7】
油圧ポンプ及び油圧コンポーネントの部品を製造するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の無鉛黄銅合金の使用。
【請求項8】
前記部品が、以下の群:摺動ブロック、分配板、保持セグメント及びベアリングブッシュから選択される、請求項7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無鉛黄銅合金及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
US10,287,653B2には、その特許の請求項1に記載された組成を有する無鉛黄銅合金が記載されている。この公知の黄銅合金は、51%~約58%の亜鉛当量を有する。提案された黄銅合金は、特にターボチャージャー用のベアリングの製造に適している。
【0003】
産業界は、特に油圧ポンプ及び油圧コンポーネントの部品を製造するのに適した無鉛黄銅合金を必要としている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、良好な被削性、緊急作動特性、油適合性等に関して注目に値する無鉛黄銅合金を特定することである。この黄銅合金は、特に油圧ポンプ及び油圧コンポーネントの部品を製造するのに適している。
【0005】
この目的は、請求項1及び請求項7の特徴によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項の特徴から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明に従って提案されるのは、57.0~60.0%のCu、1.0~2.0%のAl、1.5~2.5%のMn、0.1~1.0%のFe、0.5%以下のNi、0.5%以下のSn、0.5~2.0%のSi、0.1%未満のPbを含み、残部がZn及び不可避的不純物である無鉛黄銅合金であって、銅当量(CuEq)が52.0~58.0%である、前記無鉛黄銅合金である。
【0007】
特定された銅当量(CuEq)は、以下のように算出される。
1)Sifree=Si・3.26-(Fe+Mn)が、<0であるケースでは、
CuEq=Cu/{[100-Fe-Mn+(|Sifree|・0.7)-Al+(Al・6)-Si)]/100}である。
2)Sifree=Si・3.26-(Fe+Mn)が、>0であるケースでは、
CuEq=Cu/{[100-Fe-Mn-Al+(Al・6)-Si+((Sifree/3.26)・10)]/100}である。
Cu:%銅
Fe:%鉄
Al:%アルミニウム
Si:%ケイ素
【0008】
本明細書の目的で、[%]は重量%であると理解される。
【0009】
上記の銅当量CuEqの計算では、2つのケース、番号1及び2を区別する。ケース番号1では、合金中に遊離ケイ素Sifreeが存在しない。このケースでは、合金中のケイ素は、Fe及び/又はMnと完全に結合している。金属間Fe-Mn-Si化合物が形成される。
【0010】
ケース番号2では、合金中に遊離ケイ素Sifreeが存在する。合金中の遊離ケイ素Sifreeは、相図においてβ相の方向に強いシフトを生じるため、第1及び第2のケースの区別が必要である。このケースでは、ケイ素が完全に結合しているケース(上記の計算、ケース番号1参照)よりも、β相の方向への相図のシフトが約10倍強くなる。
【0011】
銅当量CuEqが52.0~58.0%である黄銅合金は、従来の鉛含有合金に匹敵する摩擦特性を示すことが明らかになった。さらに、提案される無鉛黄銅合金は、良好な被削性、緊急作動特性、油適合性等に関して注目に値する。
【0012】
有利な一実施形態によれば、Siは1.0%以下の量で含まれる。このようにして、特に好適なβ相の含有量が達成される。
【0013】
別の実施形態によれば、Snは0.2%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.06%未満の量で含まれる。Snは、合金の耐リラクセーション性を向上させる。
【0014】
提案される無鉛黄銅合金は、ニッケルを1.0%以下、好ましくは0.5%以下の量で含んでもよい。さらに、Feは、0.5%以下、好ましくは0.4%以下の量で含まれてもよい。Mnは、2.1%以下の量で含まれてもよい。前述の元素は、合金中に金属間層を形成させるために添加される。金属間層は、合金の耐摩耗性及び延性を向上させる。
【0015】
本発明に従ってさらに、油圧ポンプ及び油圧コンポーネントの部品を製造するための本発明の無鉛黄銅合金の仕様が提案される。この部品は、特に以下の群:摺動ブロック、分配板、保持セグメント及びベアリングブッシュから選択されてもよい。
【0016】
提案される黄銅合金が油圧ポンプ及び油圧コンポーネントの部品の製造に特に適しているのは、その良好な摩擦特性のためである。
【0017】
本発明の例示的な一実施形態によれば、本発明の合金は、例えば、以下の組成を有する。
【0018】
【0019】
上記の組成を有する合金は、以下の表で特定される特性を示す。
【0020】
【0021】
本発明の合金の良好な摩擦特性は、本発明の合金を、油圧ポンプ及び油圧コンポーネント、より具体的には摺動ブロック、分配板、保持セグメント及びベアリングブッシュの製造に特に適したものにする。
【外国語明細書】