(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177255
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】引上式サブスクリーンを備えた除塵機
(51)【国際特許分類】
E02B 5/08 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E02B5/08 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072418
(22)【出願日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2022088921
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168193
【氏名又は名称】株式会社ミゾタ
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳島 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】野田 義博
(57)【要約】
【課題】水路又は河川に設置される除塵機において、自然排水が必要とされる際に、自然排水用の開口部を有するようにサブスクリーンを水路又は河川の上面の高さまで引上げ可能とする引上式サブリーンを備えた除塵機を提供する。
【解決手段】水路又は河川の側面22、22には、引上式サブスクリーン3の水路又は河川幅方向の両側を案内する上案内ガイド41、下案内ガイド42が固定されている。上案内ガイド41、下案内ガイド42は、側面視がほぼ円弧状で、断面がコの字状に形成されている。除塵機1のフレーム11の上部には、水路又は河川幅方向の両端にピン51、51が固定され、細長い棒状の引き上げビーム52、52の上端が揺動可能に軸支されている。引き上げビーム52、52の下端は、軸受けメタル53、53を介して下案内軸45、45に揺動可能に軸支されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路又は河川に流れる塵芥を除去する主スクリーンを備えたフレームを有する除塵機において、
下部が前記水路又は河川の底面に接し、上部が前記除塵機の前記主スクリーンの下部近傍まで延びるサブスクリーンであって、自然排水が必要とされる際に、自然排水用の開口部を有するように前記サブスクリーンを前記水路又は河川の上面の高さまで引上げ可能とする引上式サブスクリーンを備えた
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項2】
請求項1に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川の底面近傍の塵芥を除去する引上式サブスクリーンであって、前記水路又は河川の上面の高さに前記塵芥と共に引き上げ可能である
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川の側面に固定され、前記引上式サブスクリーンの水路又は河川幅方向の両側を案内する案内ガイドを備えた
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川の底面にほぼ平行な底辺と、前記底辺の下流側端部からほぼ鉛直方向上方に延びる側辺で構成される
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項5】
請求項3に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記案内ガイドは、前記引上式サブスクリーンの姿勢を維持した状態で前記水路又は河川の底面から前記水路又は河川の上面の高さに引き上げるように案内するものである
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項6】
請求項3に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記案内ガイドは、上下2個のほぼ円弧状の形状からなる
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンの底辺の上流側端部には上方に突出する突部が形成されている
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンが前記水路又は河川の底面に位置した状態で、前記除塵機のフレームに前記引上式サブスクリーンを係止する係止部材が前記除塵機のフレームに取り付けられている
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンが前記水路又は河川の底面に位置した状態で、前記水路又は河川の底面に前記引上式サブスクリーンを係止する係止部材が前記水路又は河川の底面に取り付けられている
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンが前記水路又は河川の底面に位置した状態で、前記水路又は河川の上面に前記引上式サブスクリーンを係止する係止部材が前記水路又は河川の上面に取り付けられている
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは前記水路又は河川幅方向に所定の間隔で複数配置されたバースクリーンであって、
前記引上式サブスクリーンの底辺の下部には前記水路又は河川の底面にほぼ平行な底板が固定されている
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の引上式サブスクリーンを備えた除塵機において、
前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンの底板に、前記水路又は河川の底面側に突出する汚泥除去突起が複数形成されている
ことを特徴とする引上式サブスクリーンを備えた除塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路、河川等の除塵のために引上式サブスクリーンを備えた除塵機に関する。更に詳しくは、除塵機の主スクリーン下部、正確にはサブスクリーン及びサブスクリーン前の塵埃の除去が容易で、低水位でのポンプ運転を可能にした引上式サブスクリーンを備えた除塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
排水路、河川等において、ポンプに塵芥が流入しないように設置された除塵機には、主スクリーンとサブスクリーンを備えたものが知られている。除塵機のフレームに主スクリーンを備えた除塵機には、塵埃を除去するレーキをフレームの下部(主スクリーン下端)を通過させるために、水路の底面と主スクリーンの下部との間には隙間が有る。この隙間から塵埃が下流に流下しないように、水路の底面と主スクリーンの下端との間にはサブスクリーンが取り付けられている。しかし、構造上の制約でレーキの回動軌跡がサブスクリーンから離れているため、サブスクリーンに溜まった塵埃をレーキで掻き揚げることは難しかった。
【0003】
特許文献1に記載のゲートポンプ設備は、自然排水時に円滑な排水を行うために、内水側に設置した除塵機を巻上機のワイヤで水路の水面上に引き上げるようにしたものである。特許文献2に記載の除塵機は、除塵機のフレームを中間部分で屈曲可能にして、下部フレームを巻上機のワイヤで水路の水面上に引き上げるようにしたものである。特許文献3に記載の除塵機は、水路の支持部材に沿って除塵機本体を着脱可能にし、吊り具により除塵機本体を吊り上げて水路から引き上げるようにしたものである。特許文献4の除塵機を備えたポンプゲートは、ポンプゲートの扉体に除塵機を一体的に取り付け、除塵機を引き上げるための特別な装置が不要で、扉体の上昇で除塵機を水路から引き上げるようにした除塵機である。特許文献5の除塵機の位置変換装置は、ゲートに除塵機本体を鉛直方向に昇降可能に組み込み、昇降手段によって除塵機を鉛直方向に昇降するようにした除塵機である。特許文献6の引上式除塵機は、主スクリーンとサブスクリーンを備えたフレームを有する除塵機であって、水路の底面の塵埃は先鋭部を有するレーキ爪に引っ掛けた状態で、巻上機にロープを連結して主スクリーンとともに水路の水面上に引き上げるようにした引上式除塵機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4-28912号公報
【特許文献2】特公昭52-26055号公報
【特許文献3】特許第3862368号公報
【特許文献4】特開2002-275861号公報
【特許文献5】特開2003-206521号公報
【特許文献6】実公昭60-11145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に自然排水を伴うポンプ場は、引上式除塵機が使用されている。即ち、ポンプが稼働しない時期には、自然排水(自然流下)の目的のために除塵機全体を引上げる必要があった。また、サブスクリーンを備えた除塵機の場合、サブスクリーン前には、除塵機で除去できない塵芥が堆積しているため、定期的に人力等で塵芥を水路又は河川外に除去する作業が必要となっている。しかし、特許文献1から特許文献6に記載の除塵機は、自然排水が必要とされる際に、主スクリーンを備えた除塵機本体、又は主スクリーンとサブスクリーンを備えた除塵機本体を水路の水面上に引き上げるようにしているため、除塵機本体のねじれを防ぐために除塵機本体の補強が必要になる。また、除塵機本体を支持する架台や回転軸受けの補強が必要になる。また、除塵機本体を水路の水面上に引き上げるための巻上機の動力が大きくなる。さらに、除塵機を水路の底面に降ろした状態でポンプを運転すると、サブスクリーンの前に塵埃が堆積するため、低水位でのポンプ運転が出来ず、溜水や塵埃によって、悪臭や美観の悪化の原因となる。
【0006】
本発明は、以上のような背景により以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、水路又は河川に設置される除塵機において、自然排水が必要とされる際に、除塵機本体を水路又は河川の上面の高さまで引上げる必要が無く、サブスクリーンのみを引上げることにより、水路又は河川の底面と主スクリーンの下部との間の空間を確保して、自然排水ができる、引上式サブスクリーンを備えた除塵機を提供することにある。
本発明の他の目的は、サブスクリーンで塵芥が除去できる構造とすることで、サブスクリーンの引上げにより、サブスクリーンの前の塵埃を除去することを可能とし、溜水や塵埃が堆積しない引上式サブスクリーンを備えた除塵機を提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、サブスクリーンの前の塵埃を除去することにより、低水位でのポンプ運転が可能となる引上式サブスクリーンを備えた除塵機を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、除塵機本体を引上げる方式と比べて、除塵機本体のねじれを防ぐための除塵機本体の補強、除塵機本体を支持する架台や回転軸受けの補強が不要な引上式サブスクリーンを備えた除塵機を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、除塵機本体を引上げる方式と比べて、巻上機を除塵機本体を引き上げるために必要な強靱な構造にする必要が無く、巻上機の動力が小さくて済む引上式サブスクリーンを備えた除塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、水路又は河川に流れる塵芥を除去する主スクリーンを備えたフレームを有する除塵機において、下部が前記水路又は河川の底面に接し、上部が前記除塵機の前記主スクリーンの下部近傍まで延びるサブスクリーンであって、自然排水が必要とされる際に、自然排水用の開口部を有するように前記サブスクリーンを前記水路又は河川の上面の高さまで引上げ可能とする引上式サブスクリーンを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明2の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1において、前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川の底面近傍の塵芥を除去する引上式サブスクリーンであって、前記水路又は河川の上面の高さに前記塵芥と共に引き上げ可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明3の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川の側面に固定され、前記引上式サブスクリーンの前記水路又は河川幅方向の両側を案内する案内ガイドを備えたことを特徴とする。
本発明4の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川の底面にほぼ平行な底辺と、前記底辺の下流側端部からほぼ鉛直方向上方に延びる側辺で構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明5の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明3において、前記案内ガイドは、前記引上式サブスクリーンの姿勢を維持した状態で前記水路又は河川の底面から前記水路又は河川の上面の高さに引き上げるように案内するものであることを特徴とする。
本発明6の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明3において、前記案内ガイドは、上下2個のほぼ円弧状の形状からなることを特徴とする。
本発明7の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンの底辺の上流側端部には上方に突出する突部が形成されていることを特徴とする。
本発明8の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンが前記水路又は河川の底面に位置した状態で、前記除塵機のフレームに前記引上式サブスクリーンを係止する係止部材が前記除塵機のフレームに取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明9の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンが前記水路又は河川の底面に位置した状態で、前記水路又は河川の底面に前記引上式サブスクリーンを係止する係止部材が前記水路又は河川の底面に取り付けられていることを特徴とする。
本発明10の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンが前記水路又は河川の底面に位置した状態で、前記水路又は河川の上面に前記引上式サブスクリーンを係止する係止部材が前記水路又は河川の上面に取り付けられていることを特徴とする。
本発明11の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記水路又は河川幅方向に所定の間隔で複数配置されたバースクリーンであって、前記引上式サブスクリーンの底辺の下部には前記水路又は河川の底面にほぼ平行な底板が固定されていることを特徴とする。
本発明12の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、本発明1又は2において、前記引上式サブスクリーンは、前記引上式サブスクリーンの底板に、前記水路又は河川の底面側に突出する汚泥除去突起が複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、サブスクリーンだけを引上げることにより、自然排水が必要とされる際に、水路又は河川の底面と主スクリーンの下部との間の空間(自然排水用の開口部)から自然流下によって、溜水や塵埃が堆積しない。
また、サブスクリーンを塵芥が除去できる構造とすることで、サブスクリーンの引上げにより、サブスクリーンの上及びサブスクリーンの前の塵埃を除去できる。
また、サブスクリーンの前の塵埃を除去することにより、低水位でのポンプ運転が可能となる。
更に、除塵機本体を引上げる方式と比べて、除塵機本体の補強、除塵機本体を支持する架台や回転軸受けの補強が不要で、巻上機を強靱な構造にする必要が無く、巻上機の動力が小さくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態1の引上式サブスクリーンを備えた除塵機を示す全体側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1の引上式サブスクリーンを備えた除塵機の下部の拡大側面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1の引上式サブスクリーンが水路又は河川の底面に位置した状態で、除塵機のフレームに引上式サブスクリーンを係止する係止部材を示す拡大側面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2の引上式サブスクリーンを係止する水路又は河川の上面の係止部材を示し、
図6(a)は引き上げビームの上端を揺動可能に軸支するピンの近傍を示す拡大側面図であり、引上式サブスクリーンが水路又は河川の底面に位置した状態を示し、
図6(b)は
図6(a)の縦断面図である。
【
図7】
図7は、引上式サブスクリーンが水路又は河川の上面の高さに引き上げられた状態を示すものであり、
図6(a)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1の引上式サブスクリーンを備えた除塵機]
図1は本発明の実施の形態1の引上式サブスクリーンを備えた除塵機を示す全体側面図、
図2は
図1のP矢視図、
図3は本発明の実施の形態1の引上式サブスクリーンを備えた除塵機の下部の拡大側面図、
図4は
図3のA-A断面図、
図5は実施の形態1の引上式サブスクリーンが水路又は河川の底面に位置した状態で、除塵機のフレームに引上式サブスクリーンを係止する係止部材を示す拡大側面図である。
図1に示すように、除塵機1はそのフレーム11の下端が水路底又は河川底となる水路又は河川の底面21に接して設置されている。除塵機1のフレーム11には、塵芥を除去するための複数の板状の主スクリーン(バースクリーン)12が水路又は河川の幅方向に等間隔に複数個取り付け、配置されている。
【0016】
図2に示すレーキ13が主スクリーン12の下流側を降下(背面降下)し、フレーム11の最下部で反転した後、主スクリーン12の下端開口部をくぐって主スクリーン12の上部側に上昇し、主スクリーン12に溜まっている塵埃を掻き揚げるように構成されている。レーキ13の駆動機構等の詳細は、本発明の要旨ではなく、公知技術であるので詳記しない。フレーム11の下端でレーキ13を通過させるために、主スクリーン12の下端は切除されている。従って、水路又は河川の底面21と主スクリーン12の下端との間の開口部から塵埃が下流側に流下しないようにするために、水路又は河川の底面21と主スクリーン12の下部近傍との間には引上式サブスクリーン3が配置されている。
【0017】
引上式サブスクリーン3は、
図3に示すように、水路又は河川の底面21にほぼ平行な底辺31と、底辺31の下流側端部からほぼ鉛直方向上方に延びる側辺32で構成されたL字型で板状のバースクリーンである。この引上式サブスクリーン3は、主スクリーン12と水路又は河川の幅方向が同一寸法で、水路又は河川の幅方向に等間隔(主スクリーン12と同一間隔)に複数形成されている。引上式サブスクリーン3は、底辺31の下流側端部が、水路又は河川の底面21にほぼ平行な円筒状の連結パイプ33で一体的に固定されている(
図2)。底辺31の上流側端部には上方に突出する突部34が形成されている。また、
図4に示すように、底辺31の下部には水路又は河川の底面21にほぼ平行な底板35が固定されている。底板35には、水路又は河川の底面21側に突出する汚泥除去突起36が複数形成されている(
図5(a))。
【0018】
図2に示すように、水路壁又は河川壁となる水路又は河川の側面22、22には、引上式サブスクリーン3の水路又は河川幅方向の両側を案内する上案内ガイド41、下案内ガイド42が固定されている。上案内ガイド41、下案内ガイド42は、側面視がほぼ円弧状で、断面がコの字状に形成されている。上案内ガイド41、下案内ガイド42は、
図4に示すように水路又は河川の側面22、22の複数の箇所に取付フランジ43を介してボルト44によって固定されている。
図2、
図4に示すように連結パイプ33の水路又は河川幅方向の両端には下案内軸45、45が一体的に形成されている。また、引上式サブスクリーン3の水路又は河川幅方向の両端の側辺32には、上案内軸46、46が一体的に形成されている。下案内軸45、45、上案内軸46、46には軸受けメタル47、47を介してガイドローラ48、48が回転可能に軸支されている。
【0019】
上案内軸46側のガイドローラ48は、上案内ガイド41に摺動可能に嵌合し、下案内軸45側のガイドローラ48は、下案内ガイド42に摺動可能に嵌合している。除塵機1のフレーム11の上部には、水路又は河川幅方向の両端にピン51、51が固定され、細長い棒状の引き上げビーム52、52の上端が揺動可能に軸支されている。引き上げビーム52、52の下端は、軸受けメタル53、53を介して下案内軸45、45に揺動可能に軸支されている。水路の天端又は河川の天端となる水路又は河川の上面23には電動式(又は手動式)の巻上機24が取り付けられ、巻上機24で巻き取られるワイヤーロープ(又はチェーン)25の下端が引き上げビーム52、52の下端近傍に固定されている。巻上機24を作動してワイヤーロープ(又はチェーン)25を巻き上げ、ピン51、51を中心にして引き上げビーム52、52を時計方向に揺動角度θ(
図1)だけ揺動させると、引上式サブスクリーン3は上案内ガイド41と下案内ガイド42に案内されて水路又は河川の上面23の高さ付近に引き上げられる。
【0020】
図3に示すように、上案内軸46の中心と下案内軸45の中心の鉛直方向の距離L1は、上案内ガイド41の溝である断面がコの字状の中心と、下案内ガイド42の溝である断面がコの字状の中心の鉛直方向の距離L2と同一に形成されている。従って、引上式サブスクリーン3は、この底辺31が水路又は河川の底面21にほぼ平行な状態を維持して水路又は河川の底面21から水路又は河川の上面23の高さ付近に引き上げられる。引上式サブスクリーン3の底辺31には底板35が固定され(
図4)、底辺31の上流側端部には上方に突出する突部34が形成されているので、引上式サブスクリーン3に滞留した塵埃6は水路又は河川の上面23に確実に引き上げられる。引上式サブスクリーン3の底板35には、水路又は河川の底面21側に突出する汚泥除去突起36が複数形成されている(
図5)。従って、引上式サブスクリーン3の引き上げ時及び引き降ろし時に、汚泥除去突起36が水路又は河川の底面21の汚泥を切るように除去して、引上式サブスクリーン3の引き上げ及び引き降ろし動作を円滑にする。
【0021】
図5に示すように、除塵機1のフレーム11の下端には、引上式サブスクリーン3が水路又は河川の底面21に位置した状態で、除塵機1のフレーム11に引上式サブスクリーン3を係止する係止部材7が取り付けられている。係止部材7は水路又は河川の幅方向の両側に2箇所設置されている。係止部材7は、フレーム11にボルト711、711で固定された取付フランジ71、開閉爪72、72、圧縮バネ73、73、ピン74、74で構成されている。係止部材7の設置位置に対応するように引上式サブスクリーン3の連結パイプ33の水路又は河川の幅方向の両側には、球状の係止突起75が2箇所固定されている。従って、引上式サブスクリーン3が水路又は河川の底面21に引き降ろされると、
図5(b)に示すように、球状の係止突起75が開閉爪72、72に押し込まれ、圧縮バネ73、73の付勢力に抗して開閉爪72、72を開き、球状の係止突起75が開閉爪72、72に挟持される。その結果、引上式サブスクリーン3が水路又は河川の底面21に位置した状態では、引上式サブスクリーン3は除塵機1のフレーム11の下端に係止され、定位置に保持される。また、図には記載していないが、係止部材7を水路又は河川の底面21に固定(設置)しても良い。尚、係止部材7と球状の係止突起75の係止は、球状の係止突起75の根元にネジ加工がされ、球状の係止突起75を回転させることにより調整される。
【0022】
[実施の形態2の引上式サブスクリーンを備えた除塵機]
図6は実施の形態2の引上式サブスクリーン3を係止する水路又は河川の上面23の係止部材8を示し、
図6(a)は引き上げビーム52の上端を揺動可能に軸支するピン51の近傍を示す拡大側面図であり、引上式サブスクリーン3が水路又は河川の底面21に位置した状態を示し、
図6(b)は
図6(a)の縦断面図である。
図7は引上式サブスクリーン3が水路又は河川の上面23の高さに引き上げられた状態を示すものであり、
図6(a)相当図である。
【0023】
図6に示すように、水路又は河川の上面23には、引上式サブスクリーン3が水路又は河川の底面21に位置した状態で、水路又は河川の上面23に引上式サブスクリーン3(
図1から
図5参照)を係止する係止部材8が取り付けられている。係止部材8は、水路又は河川の幅方向の両側の水路又は河川の上面23に2箇所設置されている。
図6は片側の1箇所の係止部材8だけを示したものである。係止部材8は、水路又は河川の上面23に、その底板が4本のアンカーボルト811で固定された係止用架台81、締結ボルト83及びダブルナット831等で構成されている。そして、揺動する引き上げビーム52の上端近傍には、断面がコの字状に形成された係止用アーム52が固定され、係止用アーム82は、引き上げビーム52の揺動中心であるピン51を中心とする円弧状に形成されている。係止用アーム82には、ピン51を中心とする円弧状長溝821が形成されている。円弧状長溝821は、引き上げビーム52の揺動角度θ(
図1)と同一の角度範囲θに形成されている。締結ボルト83は、係止用架台81にねじ込まれて円弧状長溝821を貫通して突出し、引き上げビーム52の揺動に伴って円弧状長溝821に沿って移動可能である。ダブルナット831を締め付けることにより、係止用架台81に係止用アーム82を固定することが可能となる。
【0024】
従って、
図7に示す引上式サブスクリーン3が水路又は河川の上面23の高さに、引き上げられた状態でダブルナット831を緩め、
図6に示すように引上式サブスクリーン3を水路又は河川の底面21に引き降ろした後、ダブルナット831を締め付けると、係止用架台81に係止用アーム82を固定することができる。その結果、引上式サブスクリーン3が水路又は河川の底面21に位置した状態では、引上式サブスクリーン3は水路又は河川の上面23の係止部材8に係止され、定位置に保持される。引上式サブスクリーン3を水路又は河川の上面23の係止部材8で係止すれば、水路又は河川の底面21に溜まった、又は流れてくる塵埃等によって、引上式サブスクリーン3の係止作用が阻害されることが無いため好ましい。
【0025】
本発明の引上式サブスクリーンを備えた除塵機は、サブスクリーンだけを引上げることにより、自然排水が必要とされる際に、水路又は河川の底面と主スクリーンの下部との間の空間(自然排水用の開口部)から自然流下によって、溜水や塵埃が堆積しない。また、サブスクリーンを塵芥が除去できる構造とすることで、サブスクリーンの引上げにより、サブスクリーンの上及びサブスクリーンの前の塵埃を除去できる。また、サブスクリーンの前の塵埃を除去することにより、低水位でのポンプ運転が可能となる。更に、除塵機本体を引上げる方式と比べて、除塵機本体の補強、除塵機本体を支持する架台や回転軸受けの補強が不要で、巻上機を強靱な構造にする必要が無く、巻上機の動力が小さくて済む。
【符号の説明】
【0026】
1…除塵機
11…フレーム
12…主スクリーン
13…レーキ
21…水路又は河川の底面
22…水路又は河川の側面
23…水路又は河川の上面
24…巻上機
25…ワイヤーロープ(又はチェーン)
3…引上式サブスクリーン
31…底辺
32…側辺
33…連結パイプ
34…突部
35…底板
36…汚泥除去突起
41…上案内ガイド
42…下案内ガイド
43…取付フランジ
44…ボルト
45…下案内軸
46…上案内軸
47…軸受けメタル
48…ガイドローラ
51…ピン
52…引き上げビーム
53…軸受けメタル
6…塵埃
7…係止部材
71…取付フランジ
711…ボルト
72…開閉爪
73…圧縮バネ
74…ピン
75…係止突起
8…係止部材
81…係止用架台
811…アンカーボルト
82…係止用アーム
821…円弧状長溝
83…締結ボルト
831…ダブルナット