(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177258
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】作業支援装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075859
(22)【出願日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2022088474
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(71)【出願人】
【識別番号】512275547
【氏名又は名称】有限会社アトリエケー
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】冨山 知輝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 桂吾
(72)【発明者】
【氏名】北浦 基広
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS14
3C707HS21
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK16
3C707XK24
3C707XK42
3C707XK86
(57)【要約】
【課題】 アクティブアクチュエータは搭載せずパッシブアクチュエータのみで稼働し、左右分離構造で作業者の正面等に作業の妨げになる構造物がない作業支援装置を提供する。
【解決手段】 作業者の左脚に独立して装着する左脚用作業支援体110Lと右脚に独立して装着する右脚用作業支援体110Rを備えている。左脚用作業支援体110Lが左下肢に装着する左下肢体120Lと左上半身側部に装着する左上半身側部体130Lと左脚用回動接続部の回動を支援する補助力を供給する左脚用弾性要素140Lと、左下肢体120Lと左上半身側部体130Lと左脚用弾性要素140Lの3つの間をそれぞれ回動可能に接続した複数個の左脚用回転軸150を備える。左脚用弾性要素140Lが空気ばねや人工筋肉であり、左脚用弾性要素140Lが引張力または反発力を提供し、複数個の左脚用回転軸150の回動方向により作業者の作業を支援する。右側要素も同様である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に独立した左右一対の構成の作業支援装置であって、それぞれ作業者の左脚に独立して装着する左脚用作業支援体と、右脚に独立して装着する右脚用作業支援体を備えた作業支援装置において、
前記左脚用作業支援体が、左下肢に装着する左下肢体と、左上半身側部に装着する左上半身側部体と、前記作業者の作業動作を支援する補助力を供給する左脚用弾性要素と、
前記左下肢体と前記左上半身側部体と前記左脚用弾性要素の3つの間をそれぞれ回動可能に接続した複数個の左脚用回転軸を備えた左脚用回動接続部を備え、
前記右脚用作業支援体が、右下肢に装着する右下肢体と、右上半身側部に装着する右上半身側部体と、前記作業者の作業動作を支援する補助力を供給する右脚用弾性要素と、
前記右下肢体と前記右上半身側部体と前記右脚用弾性要素の3つの間をそれぞれ回動可能に接続した複数個の右脚用回転軸を備えた右脚用回動接続部を備え、
前記左脚用作業支援体と前記右脚用作業支援体とを連結する構成として、可撓性あるベルト帯以外の剛性を有する機械的連結構造物または機械的橋梁構造物を含まないことを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記左脚用作業支援体において、前記左脚用回動接続部が3つの前記左脚用回転軸を備え、前記左下肢体と前記左上半身側部体の間に設けられた第1の前記左脚用回動接続部と、前記左下肢体と前記左脚用弾性要素の間に設けられた第2の前記左脚用回動接続部と、前記左上半身側部体と前記左脚用弾性要素の間に設けられた第3の前記左脚用回動接続部を備え、
前記右脚用作業支援体において、前記右脚用回動接続部が3つの前記右脚用回転軸を備え、前記右下肢体と前記右上半身側部体の間に設けられた第1の前記右脚用回動接続部と、前記右下肢体と前記右脚用弾性要素の間に設けられた第2の前記右脚用回動接続部と、前記右上半身側部体と前記右脚用弾性要素の間に設けられた第3の前記右脚用回動接続部を備えた構成であることを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合、
前記左下肢体において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記左上半身側部体において、前記第3の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記左脚用弾性要素において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第3の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記右下肢体において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記右上半身側部体において、前記第3の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記右脚用弾性要素において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第3の前記右脚用回動接続部より下方に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合、
前記左下肢体において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より上方に設けられ、
前記左上半身側部体において、前記第3の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より上方に設けられ、
前記左脚用弾性要素において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第3の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記右下肢体において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より上方に設けられ、
前記右上半身側部体において、前記第3の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より上方に設けられ、
前記右脚用弾性要素において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第3の前記右脚用回動接続部より下方に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素が発生する力が反発力の場合、
前記左下肢体において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記左上半身側部体において、前記第3の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より上方に設けられ、
前記左脚用弾性要素において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第3の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記右下肢体において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より下方に設けられ、
前記右上半身側部体において、前記第3の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より上方に設けられ、
前記右脚用弾性要素において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第3の前記右脚用回動接続部より下方に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記左上半身側部体が、前記作業者の左脇下に当接する左脇当てまたは左肩に当接する左肩当てを含むものであり、
前記右上半身側部体が、前記作業者の右脇下に当接する右脇当てまたは右肩に当接する右肩当てを含むものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記左上半身側部体が、前記作業者の左腹または左脇腹に当接する左腹プレートを含むものであり、
前記右上半身側部体が、前記作業者の右腹または右脇腹に当接する右腹プレートを含むものであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の作業支援装置。
【請求項8】
前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素が、電気的アクチュエータの電源、油圧エネルギ供給源、および空圧エネルギ供給源の動力源を含まず、エアシリンダを備えた空気ばねであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の作業支援装置。
【請求項9】
前記空気ばねの前記エアシリンダが、単動式エアシリンダまたは複動式エアシリンダであることを特徴とする請求項8に記載の作業支援装置。
【請求項10】
前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素が、電気的アクチュエータの電源、油圧エネルギ供給源、および空圧エネルギ供給源の動力源を含まず、空圧式、油圧式、電気式、電磁気式または化学式のいずれかの人工筋肉であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の作業支援装置。
【請求項11】
前記人工筋肉が、マッキベン型の人工筋肉または軸方向繊維強化型の空圧式の人工筋肉であることを特徴とする請求項10に記載の作業支援装置。
【請求項12】
前記左脚用弾性要素が、前記右脚用弾性要素とは独立した左脚用弾性力調整部を備え、
前記右脚用弾性要素が、前記左脚用弾性要素とは独立した右脚用弾性力調整部を備え、
利用者の選択により、前記左脚用弾性力調整部を介して前記左脚用弾性要素の空気圧を独立して調整でき、
利用者の選択により、前記右脚用弾性力調整部を介して前記右脚用弾性要素の空気圧を独立して調整できることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の作業支援装置。
【請求項13】
前記左脚用弾性力調整部における前記左脚用弾性要素の前記空気圧の増減手段、および、前記右脚用弾性力調整部における前記右脚用弾性要素の前記空気圧の増減手段が、手動ポンプまたは電動ポンプであり、
前記利用者の前記手動ポンプまたは前記電動ポンプの操作により、前記利用者が前記左脚用弾性力調整部の補助力および前記右脚用弾性力調整部の補助力を、相互に独立して任意に調整できることを特徴とする請求項12に記載の作業支援装置。
【請求項14】
前記左脚用弾性力調整部および前記右脚用弾性力調整部が開閉バルブを備え、前記開閉バルブの操作によって、前記空気圧を大気圧と同じ状態に開放することにより、前記左脚用弾性力調整部の前記補助力および前記右脚用弾性力調整部の前記補助力がゼロとなり得ることを特徴とする請求項12に記載の作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場での各種作業、物流の運搬荷役作業、介護、農作業など、腰や背中の曲げ伸ばしを伴う作業の補助を行うことができる装着型の作業支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な作業現場で機械による自動化が進んでいるが、オペレーションが多岐にわたる複合的な作業現場や、機械装置が稼働するスペースが十分に確保できない狭所での作業現場などでは少なくとも一部の機械化が困難な作業は今でも人手による作業が必要とされている。
この場合、身体負荷による労働疾病が発生するおそれがあり、その中でも腰痛が最も多いとされている。腰痛の種類としては重量物を運搬した際に発生する圧迫骨折や急性腰痛症(ギックリ腰)などがあるとされている。
厚生労働省の調査では、労働疾病中の腰痛の割合は、運輸交通業で約88%、貨物取扱業では約90%、保健衛生業では約94%もの高確率であることが報告されている。それら運輸交通業や貨物取扱業や保健衛生業のほかでも、重量物を運ぶ工場作業現場や、被介護者の身体を支持する介護職や、重量物の家財道具を運ぶ引っ越し作業現場等ではそれらの発生リスクが高いとされている。
【0003】
そこで、従来技術において、作業者の負担を軽減することを目的とした様々な腰部アシストデバイスが開発・販売されている。ここで言う腰部アシストデバイスとは、体に装着した電動アクチュエータ、油圧装置、空圧装置などを用いて高負荷作業時に腰を補助するデバイス類である。それらの多くは駆動力がアクティブな駆動源で電気や油圧や空圧であるため、バッテリや油圧タンクや圧縮空気タンクなどを搭載しているものが多い。
【0004】
例えば、WO2018/168817号公報(特許文献1)に開示された技術では、いわゆる人工筋肉を用いた動作アシスト装置が開示されている。
図17に示すように、アクティブなアクチュエータとしてエアコンプレッサやエアタンクを備えた構成であり、駆動装置40は、伸縮体9を構成する人工筋肉18に圧縮空気を供給する空気供給手段41と、圧縮空気の圧力を制御する制御弁42と、空気供給手段41から人工筋肉18に供給する圧縮空気を制御するコントロールユニット43を備えた構成が開示されている。ここで、空気供給手段41の例としてエアコンプレッサやエアタンクにより構成される構造が開示されている。
作業者の屈伸運動に伴って、アクティブなアクチュエータとして空気供給手段41により人工筋肉18内への空気の供給と排出をコントロールして、人工筋肉の弛緩と伸長を制御して作業動作をアシストするものとなっている。
【0005】
また、例えば、WO2018/105430号公報(特許文献2)に開示された技術でも、いわゆる人工筋肉を用いた動作アシスト装置が開示されている。
図18に示すように、アクティブなアクチュエータとして圧力源46から供給される流体により膨張可能な構造を備えた構成であり、圧力源46からの流体の圧力変化により膨張し得る。両端間の長さを変化させるアクチュエータ40があり伸縮部材41を有している。この伸縮部材41は、流体注入型アクチュエータ(いわゆる人工筋肉型アクチュエータ)とされている。さらに、アクティブなアクチュエータとして補助アクチュエータ23も開示されている。
作業者の屈伸運動に伴って、アクティブなアクチュエータとして圧力源46から供給される流体により人工筋肉である伸縮部材41や補助アクチュエータ23内への流体の供給と排出をコントロールして、人工筋肉の弛緩と伸長を制御して作業動作をアシストするものとなっている。
【0006】
また、例えば、特開2015-039414号公報(特許文献3)にも、モータなどのアクティブアクチュエータにより作業をアシストするパワーアシストスーツと呼ばれるものが開示されている。特開2015-39414号に開示されたパワーアシストスーツは、
図19に示すように、腰に巻いたサポータと肩に巻いたサポータの間をアクチュエータで接続し、そのアクチュエータが電気駆動により機械的にパワーを発揮するものである。作業者が腰を曲げた姿勢から直立する動作を行う際にはアクチュエータが作動して機械的な力を付与し、作業者の動きを支援するものとなっている。近年では、足にも機械的要素を装備し、重量全体も作業者ではなく機械的に支持するものも知られている。
【0007】
また、例えば、特開2012-100983号公報(特許文献4)には、
図20に示すように、膝関節により接続された大腿部及び下腿部が屈曲状態から伸展状態へと変動する際の動作をアシストする動作アシスト装置が開示されている。大腿部に固定される部材と、下腿部に固定された固定端を有するスプリングとワイヤからなる紐状弾性部材と、それら上下を回動可能に接続する接続部を備えた構造となっている。紐状弾性部材は、スプリングの伸縮により固定端と接続部との聞の距離を伸縮可能に接続されている。そのスプリングの弾性力が膝を伸ばす方向に作用することで、アシスト力を付与するものとなっている。
【0008】
また、従来技術において、いわゆるサポータと呼ばれる布やゴム製の弾性素材を組み込んだベスト状や腹巻き状の装着具も市場で販売されている。なお、板バネやリングバネという金属製のバネを組み込んだ装着具も知られている。
例えば、特開2012-179347号公報(特許文献5)には、
図21に示すように、一対の弾性体1を骨盤の左右側面に位置させ、それらを複数のベルト4~6で股間部を避けて繋ぐことにより、下着として着用の上にズボンを穿いて装着するものが開示されている。弾性体1の弾性力により前屈姿勢の作業をアシストするものとなっている。
【0009】
また、例えば、特開昭52-137185号公報(特許文献6)に開示された防腰バンドは、
図22に示すように、コルセットタイプの胴着の背面に板バネ7を組み込んだものである。屈んだ姿勢になると板バネ7が撓り、屈んだ姿勢から直立する動作を行う際には板バネ7の弾性力が付与されて作業者の動きを支援するものとなっている。
【0010】
【特許文献1】WO2018/168817号公報
【特許文献2】WO2018/105430号公報
【特許文献3】特開2015-039414号公報
【特許文献4】特開2012-100983号公報
【特許文献5】特開2012-179347号公報
【特許文献6】特開昭52-137185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した従来技術における様々な作業支援装置は、作業支援の一定の効果は期待できると考えられるが、改善すべき課題がある。
[重量の問題]
まず、従来技術における腰部アシストデバイスは電源やモータが必要なものが多く、装置重量が大きい傾向がある。装置重量が大きいとかえって長時間の作業や別作業の負担となる場合があり、現場での利用を妨げてしまう可能性があった。
現在販売されている外部動力を要する腰部アシストデバイスの重量は概ね4~5kgのものが多いようである。このように装置重量の大きいものを常時装着して作業することは作業者の負荷を増大させてしまう。
【0012】
[アクティブアクチュエータの使用時の制限の問題]
特許文献1,2,3に示したアクティブアクチュエータを用いたアシストデバイスは、機械的に大きな力を発揮できるものであるが、高負荷作業時には十分なアシスト力が得られるというメリットがあっても、オペレーションが多岐にわたる複合的な作業現場や、アシストデバイスを着た状態で作業しづらい現場などでは使いづらいものであった。
さらに、従来技術におけるアシストデバイスは電源やモータが必要なものが多く、バッテリを装備するが、バッテリは充電などの整備時間が必要であるので作業効率が下がる要因になり得る。
また、従来技術におけるアシストデバイスとして、電源駆動ではなく油圧や空圧で駆動するものがあり得るが、媒体となる油液や空気を供給する油圧タンクや圧縮空気タンクからそれら媒体の供給路のためのケーブルやホースが必要であり、この周囲のケーブルやホースの存在が作業者の行動を制限してしまうこともあり得る。
さらに、従来技術におけるアシストデバイスは左右に分離されていないものが多く、背面体や体の正面に部材が装備されていることが多く、実際の作業においては邪魔になり、作業者の行動を制限してしまい、作業効率を低下させてしまうこともあり得る。
【0013】
[バネを組み込んだパッシブアクチュエータの問題]
また、上記従来技術における特許文献4,5,6に示したような着衣型の補助具は、ゴム製や金属ばねなどの弾性体を組み込んだサポータに近いものであり、モータなどの電気アクチュエータ内蔵の腰部アシストデバイスと比べてアシスト力が弱く、作業負担の軽減への寄与が比較的には小さい。また、弾性体は固定的に縫製されているため弾性力によるアシスト状態を切り換えることが難しく、常時同じ方向に弾性力が発生してしまい、作業時以外の通常時の歩行を妨げ、作業者の快適性が低下する可能性があった。
【0014】
[作業者の体の左右差の問題]
ここで、上記従来技術における更なる問題として、作業者の体にある微妙な左右差の調整の問題がある。
上記した特許文献1,2,3のアシストデバイスや、特許文献4,5,6の着衣型の補助具では元々左右対称形に製作されており、左右差の微妙な制御についての調整技術は開示されておらず、また、そのような調整機構を備えることは難しいと考えられるので、作業者の体の微妙な左右差が解消しないまま装着して使用せざるを得なかった。
しかし、現実には作業者には利き手や利き足があり、繰り返しの作業姿勢を反復するうちに普段は問題にならないような左右差が影響してくることもある。また、作業内容自体が左右対称の動きにならない場合もある。
特許文献4,5,6の着衣型の補助具も、バネなどの弾性性素材を組み込んだものであるので左右バランスを変えることが難しく、作業者の体の微妙な左右差に起因する引張力が左右非対称のまま作業者の体に加重され続けるので疲労が蓄積され続けていくこととなる。
【0015】
[作業者の装着物が作業の邪魔となる問題]
ここで、上記従来技術における更なる問題として、作業者の体に装着する装置が大きくなると、作業者の作業支援というメリットに対して、作業者の作業自体の邪魔になり却って作業効率を低下させてしまうという問題がある。特に作業者の腰の動きの邪魔となったり作業者の腕の動きの邪魔となったりすると作業効率が低下する。
【0016】
そこで、本発明は、電源などのアクティブアクチュエータは搭載せずに取り扱いの容易で比較的重量が軽いパッシブアクチュエータのみで稼働し、さらに、左右に分離された構造で作業者の正面や背面に部材がなく作業の妨げになる構造物がなく、作業者の左右差の細かい調整も可能な「作業支援装置」を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。なお、以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0018】
本発明の作業支援装置は、相互に独立した左右一対の構成の作業支援装置であって、それぞれ作業者の左脚に独立して装着する左脚用作業支援体と、右脚に独立して装着する右脚用作業支援体を備えた作業支援装置において、前記左脚用作業支援体が、左下肢に装着する左下肢体と、左上半身側部に装着する左上半身側部体と、前記作業者の作業動作を支援する補助力を供給する左脚用弾性要素と、前記左下肢体と前記左上半身側部体と前記左脚用弾性要素の3つの間をそれぞれ回動可能に接続した複数個の左脚用回転軸を備えた左脚用回動接続部を備え、前記右脚用作業支援体が、右下肢に装着する右下肢体と、右上半身側部に装着する右上半身側部体と、前記作業者の作業動作を支援する補助力を供給する右脚用弾性要素と、前記右下肢体と前記右上半身側部体と前記右脚用弾性要素の3つの間をそれぞれ回動可能に接続した複数個の右脚用回転軸を備えた右脚用回動接続部を備え、前記左脚用作業支援体と前記右脚用作業支援体とを連結する構成として、可撓性あるベルト帯以外の剛性を有する機械的連結構造物または機械的橋梁構造物を含まないことを特徴とする作業支援装置である。
上記構成により、本発明にかかる作業支援装置は、相互に独立した左右一対の構成であり、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が独立して伸張または収縮をアシストし、上記左右それぞれの3つの要素間を回動可能に接続する左脚用回動接続部および右脚用回動接続部の機構により左右の脚の曲げ伸ばしをそれぞれ独立して支援することができる。また、左右に独立して分離しているため、作業者の体の正面や背面に作業の支障となりうる部材がなく、快適な作業環境が確保できる。
【0019】
ここで、上記左右それぞれの3つの要素間を接続する左脚用回動接続部および右脚用回動接続部の配置関係としては、以下の構成が可能である。
左脚用作業支援体において、前記左脚用回動接続部が3つの前記左脚用回転軸を備え、前記左下肢体と前記左上半身側部体の間に設けられた第1の前記左脚用回動接続部と、前記左下肢体と前記左脚用弾性要素の間に設けられた第2の前記左脚用回動接続部と、前記左上半身側部体と前記左脚用弾性要素の間に設けられた第3の前記左脚用回動接続部を備えた構成であり、
右脚用作業支援体において、前記右脚用回動接続部が3つの前記右脚用回転軸を備え、前記右下肢体と前記右上半身側部体の間に設けられた第1の前記右脚用回動接続部と、前記右下肢体と前記右脚用弾性要素の間に設けられた第2の前記右脚用回動接続部と、前記右上半身側部体と前記右脚用弾性要素の間に設けられた第3の前記右脚用回動接続部を備えた構成とすることができる。
【0020】
上記構成のように、左右それぞれに3つの回動可能な左脚用回転軸および右脚用回転軸を設けることにより、3つの要素間で3次元的な運動を行う自由度が確保できる。
力学的観点からみれば、それぞれ左右独立の構成において、回動可能な左脚用回転軸および右脚用回転軸がテコの原理でいう支点となり、左脚用弾性要素、右脚用弾性要素、左上半身側部体、右上半身側部体がテコの原理で作動する要素と評価することもできる。作業者が体重をかけて屈む場合には、左上半身側部体、右上半身側部体がテコの原理でいう力点要素となり、エネルギーを蓄える左脚用弾性要素、右脚用弾性要素が作用により縮むまたは伸長すると評価でき、作業者が屈んだ姿勢から腰を伸ばす際には、エネルギーを放出する左脚用弾性要素、右脚用弾性要素が力点要素となり、左上半身側部体、右上半身側部体が作業者の動作を支援する作用点要素となり得る。
ここで、左上半身側部体、右上半身側部体が作業者に当接する部位については、作業者の膝の屈伸や腰の曲げ伸ばしなどの動作を支援する箇所に当接するように構成することが好ましく、幾つかのパターンがあり得る。
第1のパターンは、左上半身側部体が、前記作業者の左脇下に当接する左脇当てまたは左肩に当接する左肩当てを含むものであり、右上半身側部体が、前記作業者の右脇下に当接する右脇当てまたは右肩に当接する右肩当てを含むような部材とするパターンである。
この第1のパターンであれば、いわゆる松葉杖のように左右の脇や肩で支持するので作業者の体に対して大きな力で作業支援することができる。
第2のパターンは、左上半身側部体が、前記作業者の左腹または左脇腹に当接する左腹プレートを含むものであり、右上半身側部体が、前記作業者の右腹または右脇腹に当接する右腹プレートを含むような部材とするパターンである。
この第2のパターンであれば、腰から比較的近い腹に対して作業支援する力を与えるので腰の曲げ伸ばし作業や脚の曲げ伸ばし作業に対して作業支援できる一方、作業者の腕や肩の自由度は高くなるので作業効率の低下を招かない。
【0021】
ここで、さらに、これら要素の配置関係をみると少なくとも以下の3つのパターンがある。
第1のパターンは、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合であって、以下の接続構成を持つ。
左下肢体において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、前記左上半身側部体において、前記第3の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、前記左脚用弾性要素において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第3の前記左脚用回動接続部より下方に設けられている。
同様に、右下肢体において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より下方に設けられ、前記右上半身側部体において、前記第3の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より下方に設けられ、前記右脚用弾性要素において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第3の前記右脚用回動接続部より下方に設けられているパターンである。
このパターンは、左脚用弾性要素が引張力を発生すると、引っ張り力のアシストにより左下肢体と前記左上半身側部体の曲がり角度が大きくなる運動(腰を伸ばす運動)を支援するものとなる。右脚用弾性要素の働きも右側において同様である。
なお、引張力を発生する左脚用弾性要素および右脚用弾性要素としては、後述するように、エアシリンダを備えた空気ばね、空圧式の人工筋肉があり得るので、この第1のパターンがさらにエアシリンダを備えた空気ばねと空圧式の人工筋肉2つのパターンに派生する。
【0022】
第2のパターンは、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合であって、以下の接続構成を持つ。
左下肢体において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より上方に設けられ、前記左上半身側部体において、前記第3の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より上方に設けられ、前記左脚用弾性要素において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第3の前記左脚用回動接続部より下方に設けられている。
同様に、右下肢体において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より上方に設けられ、前記右上半身側部体において、前記第3の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より上方に設けられ、前記右脚用弾性要素において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第3の前記右脚用回動接続部より下方に設けられているパターンである。
このパターンは、左脚用弾性要素が引張力を発生すると、伸長のアシストにより左下肢体と前記左上半身側部体の曲がり角度が大きくなる運動(腰を伸ばす運動)を支援するものとなる。右脚用弾性要素の働きも右側において同様である。
なお、引張力を発生する左脚用弾性要素および右脚用弾性要素としては、後述するように、エアシリンダを備えた空気ばね、空圧式の人工筋肉があり得るので、この第2のパターンがさらに2つのパターンに派生する。
【0023】
第3のパターンは、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が反発力の場合であって、以下の接続構成を持つ。
左下肢体において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より下方に設けられ、前記左上半身側部体において、前記第3の前記左脚用回動接続部が前記第1の前記左脚用回動接続部より上方に設けられ、前記左脚用弾性要素において、前記第2の前記左脚用回動接続部が前記第3の前記左脚用回動接続部より下方に設けられている。
同様に、右下肢体において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より下方に設けられ、前記右上半身側部体において、前記第3の前記右脚用回動接続部が前記第1の前記右脚用回動接続部より上方に設けられ、前記右脚用弾性要素において、前記第2の前記右脚用回動接続部が前記第3の前記右脚用回動接続部より下方に設けられているパターンである。
このパターンは、左脚用弾性要素が反発力を発生すると、反発伸長のアシストにより左下肢体と前記左上半身側部体の曲がり角度が大きくなる運動(腰を伸ばす運動)を支援するものとなる。右脚用弾性要素の働きも右側において同様である。
なお、反発力を発生する左脚用弾性要素および右脚用弾性要素としては、エアシリンダを備えた空気ばねがあり得る。
【0024】
ここで、上記構成において、本発明の作業支援装置の前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素について様々な駆動源の利用が可能である。
例えば、電気的アクチュエータの電源、油圧エネルギ供給源、および空圧エネルギ供給源という動力源を含まず、エアシリンダを備えた空気ばねとする構成が可能である。
上記構成により、電源や油圧タンクや空圧タンクを装備する必要がなく、かつ、ケーブルやホースなど作業者の行動を制約するような付随物がなく、快適な作業環境が確保できる。
【0025】
次に、上記構成において、本発明の作業支援装置の前記左脚用弾性要素が、前記右脚用弾性要素とは独立した左脚用弾性力調整部を備え、前記右脚用弾性要素が、前記左脚用弾性要素とは独立した右脚用弾性力調整部を備え、利用者の選択により、前記左脚用弾性力調整部を介して前記左脚用弾性要素の補助力を独立して調整でき、利用者の選択により、前記右脚用弾性力調整部を介して前記右脚用弾性要素の空気圧を独立して調整できる構成が好ましい。
利用者の選択により、補助力を独立して調整できるので、作業者個人の微妙な体の左右差を鑑みて作業支援の力の強弱を左右独立して調整することができる。
【0026】
ここで、左脚用弾性力調整部における左脚用弾性要素の空気圧の増減手段、および、右脚用弾性力調整部における右脚用弾性要素の空気圧の増減手段として、手動ポンプまたは電動ポンプを適用することができる。当該構成であれば、利用者が手動ポンプまたは電動ポンプの操作により、利用者が左脚用弾性力調整部の補助力および右脚用弾性力調整部の補助力を相互に独立して任意に調整できる。
なお、手動ポンプおよび電動ポンプはオプションの構成であり、左脚用弾性要素や右脚用弾性要素の空気圧の増減操作以外の期間は、作業支援装置から取り外しておいても良い。つまり、左脚用弾性力調整部および右脚用弾性力調整部は、外付け要素として、弾性力調整以外の期間は構成から取り除いても良い。手動ポンプや電動ポンプによる空圧の増減のためのホースはそのままであると作業に邪魔になって作業効率を落とすこともあり得るので、外付け要素として、弾性力調整以外の期間は取り外し可能とする。
なお、手動ポンプや電動ポンプは別々に用意しても良く、共通して1つを兼用しても良い。この場合、1つの手動ポンプまたは電動ポンプからの空気ホースが枝分れして、一方が左脚用弾性要素の空気圧の増減に使用でき、他方が右脚用弾性要素の空気圧の増減に使用できることが好ましい。なお、左右に枝分かれした空気ホースの導通・気密を操作できる切り換え弁が搭載されている構成も可能である。
【0027】
さらに、前記左脚用弾性力調整部および前記右脚用弾性力調整部が開閉バルブを備え、前記開閉バルブの操作によって、前記空気圧を大気圧と同じに開放することにより、前記左脚用弾性力調整部の前記補助力および前記右脚用弾性力調整部の前記補助力がゼロにできる構造が好ましい。
上記構成により、高負荷作業時以外の通常時や、作業場所への移動の歩行時など、空気ばねの弾性力が発生しているとかえって邪魔になる場合、いわゆる作業支援の弾性力がゼロに開放できれば、作業者の負荷を軽減することができる。
【0028】
さらに、別構成として、本発明の作業支援装置の前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素において、電気的アクチュエータの電源、油圧エネルギ供給源、および空圧エネルギ供給源の動力源を含まず、空圧式、油圧式、電気式、電磁気式または化学式のいずれかの人工筋肉である構成も可能である。
上記構成によっても、電源や油圧タンクや空圧タンクを装備する必要がなく、かつ、ケーブルやホースなど作業者の行動を制約するような付随物がなく、快適な作業環境が確保できる。
ここで、空圧式の人工筋肉としては、マッキベン(McKibben)型の人工筋肉、または、軸方向繊維強化型人工筋肉を適用することもできる。
マッキベン型の人工筋肉や軸方向繊維強化型人工筋肉のいずれの人工筋肉でも、引っ張りで力が発生するものであり、内部の空気を入れる度合いを変更すれば、可変弾性要素として利用することが可能であり、本発明に適用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の作業支援装置は、相互に独立した左右一対の構成であり、腰の曲げ伸ばしや左右の脚の曲げ伸ばしを支援することができる。また、作業者の体の正面や背面に作業の支障となりうる部材がなく、快適な作業環境が確保できる。
また、本発明の作業支援装置は、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素において、電気的アクチュエータの電源、油圧エネルギ供給源、および空圧エネルギ供給源という動力源を含まず、エアシリンダを備えた空気ばねの構成が可能であり、重量物の電源や油圧タンクや空圧タンクを装備する必要がなく、かつ、ケーブルやホースなど作業者の行動を制約するような付随物がなく、快適な作業環境が確保できる。
本発明の作業支援装置は、工場での各種作業、物流の運搬荷役作業、介護、農作業など、腰や背中の曲げ伸ばしを伴う作業の補助を行うことができ、広く役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例1の作業支援装置100の第1の構成パターンを示した図である。
【
図2】実施例1の作業支援装置100の第2の構成パターンを示した図である。
【
図3】実施例1の作業支援装置100の第3の構成パターンを示した図である。
【
図4】実施例1の作業支援装置100の第4の構成パターンを示した図である。
【
図5】実施例1の作業支援装置100の第5の構成パターンを示した図である。
【
図6】左脚用弾性力調整部160L及び右脚用弾性力調整部160Rの構成図である。
【
図7】左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが一つの手動ポンプで連動した構成である場合の構成図である。
【
図8】エアシリンダ容量と手動ポンプの押し込み量(手動ポンプの押し込み回数)と得られるエアシリンダ圧力(補助力)との関係の相関をみる図である。
【
図10】作業者が本発明の実施例1にかかる作業支援装置100を装着した様子を左側面から写した図である。
【
図11】実施例2の作業支援装置100aの第1の構成パターンを示した図である。
【
図12】実施例2の作業支援装置100aの第2の構成パターンを示した図である。
【
図13】実施例2の作業支援装置100aの第3の構成パターンを示した図である。
【
図14】実施例2の作業支援装置100aの第4の構成パターンを示した図である。
【
図15】実施例2の作業支援装置100aの第5の構成パターンを示した図である。
【
図16】作業者が本発明の実施例2の作業支援装置100aを装着した様子を左側面から写した図である。
【
図17】従来技術におけるWO2018/168817号公報(特許文献1)に開示された人工筋肉を用いた動作アシスト装置を示す図である。
【
図18】従来技術におけるWO2018/105430号公報(特許文献2)に開示された人工筋肉を用いた動作アシスト装置を示す図である。
【
図19】従来技術における特開2015-039414号公報(特許文献3)に開示されたアクティブアクチュエータにより作業を支援するパワーアシストスーツを示す図である。
【
図20】従来技術における特開2012-100983号公報(特許文献4)に開示された動作アシスト装置を示す図である。
【
図21】従来技術における特開2012-179347号公報(特許文献5)に開示された従来の装着具を示す図である。
【
図22】従来技術における特開昭52-137185号公報(特許文献6)に開示された防腰バンドを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ、本発明の作業支援装置、本発明の作業支援装置の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示したものに限定されるものではないことは言うまでもない。
なお、本発明の作業支援装置の構成要素は、左右対称の構成例であるが、以下の実施例において説明の便宜上、左側の構成要素について説明している部分は、右側の構成要素についても同様であり説明を適宜省略している。
【実施例0032】
本発明の実施例1にかかる作業支援装置100の構成例として、要素の種類、配置、それら接続関係により、5つのパターンに大別して説明する。
図1から
図5は、本発明の実施例1にかかる作業支援装置100のそれぞれ5つのパターンの構成例を簡単に示す図である。
【0033】
図1は、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合であって左脚用弾性要素および右脚用弾性要素ともエアシリンダを備えた空気ばねであるパターンにおいて、左下肢体において、第2の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より下方に設けられ、左上半身側部体において、第3の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より下方に設けられ、左脚用弾性要素において、第2の左脚用回動接続部が第3の左脚用回動接続部より下方に設けられた構成であり、右脚用作業支援体も同様に配置された構成例を示す図である。
【0034】
図2は、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合であって左脚用弾性要素および右脚用弾性要素とも空圧式の人工筋肉であるパターンにおいて、左下肢体において、第2の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より下方に設けられ、左上半身側部体において、第3の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より下方に設けられ、左脚用弾性要素において、第2の左脚用回動接続部が第3の左脚用回動接続部より下方に設けられた構成であり、右脚用作業支援体も同様に配置された構成例を示す図である。
【0035】
図3は、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合であって左脚用弾性要素および右脚用弾性要素ともエアシリンダを備えた空気ばねであるパターンにおいて、左下肢体において、第2の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より上方に設けられ、左上半身側部体において、第3の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より上方に設けられ、左脚用弾性要素において、第2の左脚用回動接続部が第3の左脚用回動接続部より下方に設けられた構成であり、右脚用作業支援体も同様に配置された構成例を示す図である。
【0036】
図4は、左脚用弾性要素および右脚用弾性要素が発生する力が引っ張り力の場合であって左脚用弾性要素および右脚用弾性要素とも空圧式の人工筋肉であるパターンにおいて、左下肢体において、第2の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より上方に設けられ、左上半身側部体において、第3の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より上方に設けられ、左脚用弾性要素において、第2の左脚用回動接続部が第3の左脚用回動接続部より下方に設けられた構成であり、右脚用作業支援体も同様に配置された構成例を示す図である。
【0037】
図5は、前記左脚用弾性要素および前記右脚用弾性要素が発生する力が反発力の場合であって左脚用弾性要素および右脚用弾性要素ともエアシリンダを備えた空気ばねであるパターンにおいて、左下肢体において、第2の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より下方に設けられ、左上半身側部体において、第3の左脚用回動接続部が第1の左脚用回動接続部より上方に設けられ、左脚用弾性要素において、第2の左脚用回動接続部が第3の左脚用回動接続部より下方に設けられた構成であり、右脚用作業支援体も同様に配置された構成例を示す図である。
それぞれの構成例のパターンについて順を追って説明する。
【0038】
まず、
図1に示した実施例1にかかる第1の構成パターンについて説明する。
図1に示すように、本発明の作業支援装置100は、左脚用作業支援体110L、右脚用作業支援体110Rを備え、左右それぞれが相互に独立した構成となっている。
左脚用作業支援体110Lは、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160L(
図1には図示されていない)を備えている。
左脚用回動接続部150Lとしては、第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lを備えている。
右側の要素も同様であり、符号も同様であるが、右側の要素にはRの添字が付いている。
以下、順を追って説明する。左側の各要素について説明するが、右側の各要素についても同様に考えれば良い。
【0039】
左脚用作業支援体110Lは、作業者の左脚から左上半身に掛けて装着するものである。
装着は帯体のようなもので装着しても良い。なお、この左脚用作業支援体110Lを作業者の左半身に装着する帯体と、右脚用作業支援体110Rを作業者の右半身に装着する帯体を分けずに1本の帯体として供給することも可能であるが、この共有の1本の帯体は左脚用作業支援体110Lと右脚用作業支援体110Rとを機械的に連動・連結するものではない。つまり、左右の構成要素を機械的に連結、連動させる意味合いは全くなく、単に作業者の体に巻く帯体を共有化したものに過ぎない。つまり、ベルトのような柔らかい帯体を体に巻いたところで、左脚用作業支援体110Lと右脚用作業支援体110Rとを機械的に力を伝達して連動・連結するような構成要素にはならない。
本発明の作業支援装置100は、剛性を有する機械的連結構造物または機械的橋梁構造物を含まないことを一つの特徴としている。
右脚用作業支援体110Rの説明も左脚用作業支援体110Lと同様であるので、ここでは省略する。
【0040】
左下肢体120Lは、作業者の左下肢に装着する部材である。この例では、作業者の左膝上に装着する左膝上部121Lと、左膝上部121Lから延設され作業者の腰付近に至る長さを持つ左下肢支持体122Lを備えている。
【0041】
左上半身側部体130Lは、作業者の左上半身に装着する部材である。
ここで、左上半身側部体130Lとしては左側の体のどの部位に当接するかについては幾つかのパターンがあり得る。
この実施例1の構成例は、左上半身側部体130Lが、作業者の左脇下に当接する左脇当てまたは左肩に当接する左肩当てを含むような部材とするパターンである。
図1に示すように、この実施例1の構成例では、作業者の左脇下を支持する左脇支持体131Lと、左脇支持体131Lから下方に延設され作業者の腰付近に至る長さを持つ左上半身支持体132Lを備えている。なお、安定して装着するため、左肩紐133Lを備えた構成となっている。
この
図1に示した構成例であれば、いわゆる松葉杖のように左右の脇や肩で支持するので作業者の体に対して大きな力で作業支援することができる。
なお、後述する実施例2の構成例では、左上半身側部体130Lが、作業者の左腹または左脇腹に当接する左腹プレートを含むような部材とするパターンである。この実施例2のパターンについては実施例2において後述する。
【0042】
左脚用弾性要素140Lは、エアシリンダを備えた空気ばねであり、左脚用弾性要素140Lが発生する力が引っ張り力となっている。つまり、作業者が腰を屈める動きにおいて、左脚用弾性要素140Lが伸張する動きとなり、エアシリンダを備えた空気ばねである左脚用弾性要素140Lが伸張すると逆に元の長さに戻ろうとする引張力が発生する仕組みとなっている。
【0043】
左脚用回動接続部150Lは、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140Lの3つの要素間に配置された回動可能な接続部であって、この構成例では、第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lが存在している。
【0044】
ここで、それぞれの配置と接続と動きを見ておく。
図1に示すように、左下肢体120Lにおいて、第1の前記左脚用回動接続部150-1Lと第2の左脚用回動接続部150-2Lの2つが存在するが、その配置において、第2の左脚用回動接続部150-2Lより第1の前記左脚用回動接続部150-1Lが下方に設けられていることが分かる。
次に、左上半身側部体130Lにおいて、第1の前記左脚用回動接続部150-1Lと、第3の左脚用回動接続部150-3Lの2つが存在するが、第3の左脚用回動接続部150-3Lが第1の左脚用回動接続部150-1Lより下方に設けられていることが分かる。
次に、左脚用弾性要素140Lにおいて、第2の左脚用回動接続部150-2Lと第3の左脚用回動接続部150-3Lの2つが存在するが、第2の左脚用回動接続部150-2Lが第3の左脚用回動接続部150-3Lより下方に設けられていることが分かる。
このように、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140Lの3つの要素が、上記のように、第1の前記左脚用回動接続部150-1L、第2の前記左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lによって回動可能に接続されることにより、作業者が腰を屈めた状態から腰を伸ばす状態への動作をアシストする。
図1の下方左図は、作業者が腰を屈めて左脚用弾性要素140Lが伸張した状態を示しており、
図1の下方右図は、作業者が腰を伸ばそうとして左脚用弾性要素140Lから引張力をアシストされている状態を示している。つまり、
図1の下方左図のように作業者が体重を用いて屈んで作業をした後、
図1の下方右図のように左脚用弾性要素140Lの引張力によって腰を伸ばす動作がアシストされる。
【0045】
次に、左脚用弾性力調整部160Lを説明する。
左脚用弾性力調整部160Lは、左脚用弾性要素140Lに対して、空気圧を調整する部材である。
図1に示した構成例は、左脚用弾性力調整部160Lが、左脚用弾性要素140Lの空気圧の増減を可能とする手動ポンプの例となっている。なお、手動ポンプの代わりに外付けの電動ポンプであっても良い。
作業者が手動で手動ポンプまたは電動ポンプを操作して左脚用弾性要素140Lの補助力の強さを増減できれば、作業現場の作業内容に合わせてその補助力を調整できるメリットがある。
なお、左脚用弾性力調整部160Lは、右脚用弾性力調整部160Rとは独立した構造とすることが可能であり、相互に独立しておれば、作業者が左右の強さを独立して増減でき、利き腕、利き足、荷役のバランスなどを考慮して調整することができる。
【0046】
図6は、左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rの構成図である。簡単に一部は要素図となっている。
図6は、左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが相互に独立した構成である場合の構成図である。
左脚用弾性力調整部160Lは、左手動ポンプ161L、左逆止弁162L、左サージタンク163L、左開閉バルブ164Lを備えた構成例となっている。
同様に、右脚用弾性力調整部160Rは、右手動ポンプ161R、右逆止弁162R、右サージタンク163R、右開閉バルブ164Rを備えた構成例となっている。
【0047】
左手動ポンプ161Lは作業者が手で押圧して外気を取り込んで内部に送り込む部材である。
左逆止弁162Lは、左手動ポンプ161Lから送り込んだ空気が逆流しないように逆止する弁である。なお、左手動ポンプ161Lに代えて電動ポンプを用いても良い。
左サージタンク163Lは、左弾性要素140Lへの過剰な流入量を一時的に蓄えることで流量を緩和して空気圧の増減を緩和するための一種のキャパシティである。この左サージタンク163Lは上記のように空気圧の調整を安定させるためのものである。なお、左脚用弾性力調整部160Lから左弾性要素140Lの間に空気ホースなどがあればこの空気ホースの容積が左サージタンク163Lと同様のキャパシティとして機能し得るので、左サージタンク163Lは必須の構成ではなくオプションである。
左開閉バルブ164Lは、左脚用弾性力調整部160Lの気密性を開放できるバルブである。この左開閉バルブ164Lの操作によって、左脚用弾性力調整部160L内の空気圧を大気圧と同じに開放することにより、左脚用弾性力調整部160Lの補助力をゼロにとすることができる。
【0048】
この左開閉バルブ164Lは、いわゆるオンオフ機構として機能でき、高負荷作業時以外の通常時や、作業場所への移動の歩行時など、空気ばねの弾性力が発生しているとかえって邪魔になる場合、左開閉バルブ164Lおよび右開閉バルブ164Rを介して作業支援の弾性力をゼロに開放できれば、作業者の歩行時の負荷や休憩時の負荷を軽減することができる。
左弾性要素140Lは左脚用弾性力調整部160Lに接続され、補助力の強さが調整される。調整された空気圧に応じて内部のロッドの位置が変化する。
【0049】
図5の第5の構成パターンの例では、左弾性要素140Lが反発力を発揮することを前提としており、作業者が腰を曲げると左弾性要素140Lの空気圧が大気圧より大きくなり、左弾性要素140Lの内部のロッドが戻ろうとすることにより、左弾性要素140Lに反発力が発生する仕組みとなっている。左脚用弾性力調整部160Lにより左弾性要素140L内の空圧を増加すれば発揮される補助力が強くなる。
【0050】
なお、
図1の第1の構成パターンや
図3の第3の構成パターンの例では、左弾性要素140Lが引張力を発揮することを前提としている。ここで、左弾性要素140Lがいわゆる複動ピストンで作動するものであれば、内部構造として空気室が2つあり、どちらの空気室の圧力を調整するかによって引張力の増強が決まるため、調整には空気室の空圧を加圧する場合と減圧する場合の2通りがあり得る。例えば、空気室の圧力を減圧することにより引張力の増強を調整する場合であれば、左脚用弾性力調整部160Lの構成は、図示しないが、左減圧ポンプ161L、左逆止弁162L、左サージタンク163L、左開閉バルブ164Lを備えた構成であり、左弾性要素140Lに接続される。この場合、減圧ポンプ161は外付けで電動ポンプの方が効率的で良い。
また、
図2の第2の構成パターンや
図4の第4の構成パターンの例では、人工筋肉である左弾性要素140Lが引張力を発揮することを前提としている。この場合、人工筋肉内部のデフォルトの空気圧を増加しておけば人工筋肉の初期状態がより収縮した状態となり、発揮される引張力が大きくなる方向に調整できる。つまり、
図6のように手動ポンプ161Lを用いる。
【0051】
図7は、
図5の第5の構成パターンの場合における左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rの構成図であり、左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが一つの手動ポンプ161で連動した構成である場合の構成図である。なお、手動ポンプ161に代えて電動ポンプを用いても良い。
左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rは、手動ポンプ161、逆止弁162、サージタンク163、開閉バルブ164は相互に共有し合っている構成例となっている。
手動ポンプ161の操作により、サージタンク163を介して、左弾性要素140L、右弾性要素140Rともに、空気圧を増加でき、また、開閉バルブ164を開放することで大気圧に開放することができる仕組みとなっている。
【0052】
また、
図1の第1の構成パターンおよび
図3の第3の構成パターンの場合は、左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rにより、空気室の圧力を減圧することにより引張力の増強を調整する場合であれば、図示しないが、減圧ポンプ161、逆止弁162、サージタンク163、開閉バルブ164は相互に共有し合っており、それぞれ左弾性要素140L、右弾性要素140Rに接続される構成例となる。この場合、減圧ポンプ161は外付けで電動ポンプの方が効率的で良い。
また、
図2の第2の構成パターンおよび
図4の第4の構成パターンの場合は、左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rにより、人工筋肉内の空圧を増加する調整の場合であれば
図7と同様で良いが、人工筋肉内の空圧を減圧することにより引張力の増強を調整する場合であれば、図示しないが、減圧ポンプ161、逆止弁162、サージタンク163、開閉バルブ164は相互に共有し合っており、それぞれ左弾性要素140L、右弾性要素140Rに接続される構成例となる。この場合、減圧ポンプ161は外付けで電動ポンプの方が効率的で良い。
【0053】
ここで、これら左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rにおいて、独立または共通の手動ポンプである場合に、左弾性要素140L、右弾性要素140Rにおいて得られるポンプ圧力(アシストとなる補助力)を調べてみた。
図8は、エアシリンダ容量と手動ポンプの押し込み量(手動ポンプの押し込み回数)と、得られるエアシリンダ圧力(補助力)との関係の相関をみる図である。
手動ポンプの押し込み量は回数で示しているが、手動ポンプであっても複数回押し込むごとに得られるエアシリンダ圧力(補助力)が大きくなっており、150Nから200N程度まで手動で増加可能なことが分かる。
このように、手動ポンプの操作によって作業者が左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rを介した左脚用弾性要素140Lの補助力、右脚用弾性要素140Rの補助力を調整することができる。
なお、
図8は、
図7の手動ポンプの構成を前提とし、横軸が手動ポンプによる押し込み量(手動ポンプの押し込み回数)となっているが、手動ポンプではなく電動ポンプを適用している場合であれば、横軸は電動ポンプによる押し込み量となり、
図8に示した結果と同様なグラフの傾向となる。電動ポンプのスペックによるが小型電動ポンプであっても150Nから200N程度の補助力は十分に得られる。
【0054】
以上が
図1に示した第1の構成パターンについての説明である。
なお、上記説明は、左側の各要素について説明したが、右側の各要素である右脚用作業支援体110R、右下肢体120R、右上半身側部体130R、右脚用弾性要素140R、右脚用回動接続部150R、右脚用弾性力調整部160Rについても同様で良いので、ここでは右側の各要素の説明は省略する。
【0055】
[第2の構成パターン]
次に、
図2に示した第2の構成パターンについて説明する。
図2に示した第2の構成パターンは、
図1に示した第1の構成パターンと比較して、左脚用弾性要素140Lが、エアシリンダの空気ばねではなく、空圧式の人工筋肉である点が異なっているだけである。
以下、順を追って説明するが、
図1と同様の構成についての説明は適宜省略する。
【0056】
図2に示すように、第2の構成パターンにかかる本発明の作業支援装置100は、
図1と同様、左脚用作業支援体110L、右脚用作業支援体110Rを備え、左右それぞれが相互に独立した構成となっており、左脚用作業支援体110Lは、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160L(
図2には図示されていない)を備えており、左脚用回動接続部150Lとしては、第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lを備えている。
右側の要素も同様であり、符号も同様であるが、右側の要素にはRの添字が付いている。
ここで、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160Lについては、それぞれ
図1に示した第1の構成パターンと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0057】
左脚用弾性要素140Lは人工筋肉である。
人工筋肉としては様々な方式のものが知られている。例えば、空気圧式人工筋肉(マッキベン型、軸方向繊維強化型、ワルシャワ型の人工筋肉など)、油圧式人工筋肉(ゴムチューブを用いた油圧駆動式人工筋肉)、電気式人工筋肉(誘電アクチュエータや電気粘性流体を用いた人工筋肉など)、電磁気式人工筋肉(電気粘性流体や磁性粘性流体を用いた人工筋肉など)、化学式人工筋肉(ポリ塩化ビニルを用いた高分子ゲルを用いた人工筋肉など)など多様なものが知られている。
この実施例では比較的取り扱いが容易な空圧式のマッキベン型または軸方向繊維強化型の人工筋肉とする。なお、本発明の作業支援装置100において他の方式の人工筋肉であっても使用可能なものであれば適用できる。
図9は、人工筋肉の構成例である。
図9(a)はマッキベン型の人工筋肉、
図9(b)は軸方向繊維強化型人工筋肉の例である。
図9(a)に示すマッキベン型人工筋肉は、管状のゴムがスリーブ状に編みこんだ繊維コードで覆われた構造となっている。この繊維コードは軸方向の伸びを抑える役割をするものであり、マッキベン型人工筋肉は、空気圧の供給によって、繊維コードの初期角度が変化し、半径方向に膨張して軸方向へ収縮します。
図9(a)の上側は収縮前、下側は収縮後の様子を示している。
図9(b)に示す軸方向繊維強化型人工筋肉は、管の軸方向に直接ガラスロービング繊維を内包した構造となっており、軸方向の伸びを抑える役割をするものである。軸方向繊維強化型人工筋肉は、空気圧の供給によって、半径方向に膨張して軸方向へ収縮できる。 また、管に取り付けるリングによって人工筋肉の長さと人工筋肉の直径の比を調節することにより、人工筋肉の形状を変化させることができる。
図9(b)の上側は収縮前、下側は収縮後の様子を示している。
【0058】
図2における左脚用弾性要素140L、右脚用弾性要素140Rとして、
図9(a)に示したマッキベン型の人工筋肉、または、
図9(b)に示した軸方向繊維強化型人工筋肉が取り付けられており、作業者が腰を屈めると、
図9(a)の上側、
図9(b)の上側の状態となり、その後、
図9(a)の下側、
図9(b)の下側の状態になろうとする力、つまり、引張力が働き、作業者の作業を支援することができる。
【0059】
以上が
図2に示した第2の構成パターンについての説明である。
なお、上記説明は、左側の各要素について説明したが、右側の各要素である右脚用作業支援体110R、右下肢体120R、右上半身側部体130R、右脚用弾性要素140R、右脚用回動接続部150R、右脚用弾性力調整部160Rについても同様で良いので、ここでは右側の各要素の説明は省略する。
【0060】
[第3の構成パターン]
次に、
図3に示した第3の構成パターンについて説明する。
図3に示した第3の構成パターンは、
図1に示した第1の構成パターン同様、左脚用弾性要素140Lおよび右脚用弾性要素140Rが発生する力が引っ張り力の場合であって、左脚用弾性要素140Lおよび右脚用弾性要素140Rともエアシリンダを備えた空気ばねであるパターンであるが、各要素の接続が異なっている。
【0061】
以下、順を追って説明するが、
図1と同様の構成についての説明は適宜省略する。
図3に示すように、第3の構成パターンにかかる本発明の作業支援装置100は、
図1と同様、左脚用作業支援体110L、右脚用作業支援体110Rを備え、左右それぞれが相互に独立した構成となっており、左脚用作業支援体110Lは、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160L(
図3には図示されていない)を備えており、左脚用回動接続部150Lとしては、第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lを備えている。
右側の要素も同様であり、符号も同様であるが、右側の要素にはRの添字が付いている。
ここで、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160Lについては、それぞれ
図1に示した第1の構成パターンと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
第3の構成パターンにかかる本発明の作業支援装置100は、
図3に示すように、3つの要素である左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140Lの配置関係と、それらを回動可能に接続する第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lの接続関係が異なっている。
図3に示した第3の構成パターンは、左脚用作業支援体110Lの左下肢体120Lにおいて、第2の左脚用回動接続部150-2Lが第1の左脚用回動接続部150-1Lより上方に設けられ、左上半身側部体130Lにおいて、第3の左脚用回動接続部150-3Lが第1の左脚用回動接続部150-1Lより上方に設けられ、左脚用弾性要素140Lにおいて、第2の左脚用回動接続部150-2Lが第3の左脚用回動接続部150-3Lより下方に設けられた構成となっている。
右脚用作業支援体110Rも同様に配置された構成例となっている。
【0063】
この
図3に示すように、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140Lの3つの要素が、第1の前記左脚用回動接続部150-1L、第2の前記左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lによって回動可能に接続されることにより、作業者が腰を屈めた状態から腰を伸ばす状態への動作をアシストする。
図3の下方左図は、作業者が腰を屈めて左脚用弾性要素140Lが伸張した状態を示しており、
図3の下方右図は、作業者が腰を伸ばそうとして左脚用弾性要素140Lから引張力をアシストされている状態を示している。つまり、
図3の下方左図のように作業者が体重を用いて屈んで作業をした後、
図3の下方右図のように左脚用弾性要素140Lの引張力によって腰を伸ばす動作がアシストされる。
【0064】
以上が
図3に示した第3の構成パターンについての説明である。
なお、上記説明は、左側の各要素について説明したが、右側の各要素である右脚用作業支援体110R、右下肢体120R、右上半身側部体130R、右脚用弾性要素140R、右脚用回動接続部150R、右脚用弾性力調整部160Rについても同様で良いので、ここでは右側の各要素の説明は省略する。
【0065】
[第4の構成パターン]
次に、
図4に示した第4の構成パターンについて説明する。
図4に示した第4の構成パターンは、
図3に示した第3の構成パターンと比較して、左脚用弾性要素140Lが、エアシリンダの空気ばねではなく、空圧式の人工筋肉である点が異なっているだけである。
以下、順を追って説明するが、
図1と同様の構成についての説明は適宜省略する。
【0066】
図4に示すように、第4の構成パターンにかかる本発明の作業支援装置100は、
図3と同様、左脚用作業支援体110L、右脚用作業支援体110Rを備え、左右それぞれが相互に独立した構成となっており、左脚用作業支援体110Lは、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160L(
図4には図示されていない)を備えており、左脚用回動接続部150Lとしては、第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lを備えている。
右側の要素も同様であり、符号も同様であるが、右側の要素にはRの添字が付いている。
ここで、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160Lについては、それぞれ
図3に示した第3の構成パターンと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0067】
左脚用弾性要素140Lは、空圧式の人工筋肉である。空圧式の人工筋肉としては、上記したマッキベン型の人工筋肉や軸方向繊維強化型人工筋肉を適用することができる。
マッキベン型の人工筋肉や軸方向繊維強化型人工筋肉の構成例は、
図9に示したものと同様でよい。
【0068】
図4における左脚用弾性要素140L、右脚用弾性要素140Rとして、
図9(a)に示したマッキベン型の人工筋肉、または、
図9(b)に示した軸方向繊維強化型人工筋肉が取り付けられており、作業者が腰を屈めると、
図9(a)の左側、
図9(b)の左側の状態となり、その後、
図9(a)の右側、
図9(b)の右側の状態になろうとする力、つまり、引張力が働き、作業者の作業を支援することができる。
【0069】
以上が
図4に示した第4の構成パターンについての説明である。
なお、上記説明は、左側の各要素について説明したが、右側の各要素である右脚用作業支援体110R、右下肢体120R、右上半身側部体130R、右脚用弾性要素140R、右脚用回動接続部150R、右脚用弾性力調整部160Rについても同様で良いので、ここでは右側の各要素の説明は省略する。
【0070】
[第5の構成パターン]
次に、
図5に示した第5の構成パターンについて説明する。
図5に示した第5の構成パターンは、左脚用弾性要素140Lおよび右脚用弾性要素140Rが発生する力が反発力の場合であって、左脚用弾性要素140Lおよび右脚用弾性要素140Rともエアシリンダを備えた空気ばねであるパターンであるが、各要素の接続が異なっている。
【0071】
以下、順を追って説明するが、
図1と同様の構成についての説明は適宜省略する。
図5に示すように、第5の構成パターンにかかる本発明の作業支援装置100は、
図1と同様、左脚用作業支援体110L、右脚用作業支援体110Rを備え、左右それぞれが相互に独立した構成となっており、左脚用作業支援体110Lは、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160L(
図5には図示されていない)を備えており、左脚用回動接続部150Lとしては、第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lを備えている。
右側の要素も同様であり、符号も同様であるが、右側の要素にはRの添字が付いている。
【0072】
ここで、左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用回動接続部150L、左脚用弾性力調整部160Lについては、それぞれ
図1に示した第1の構成パターンと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0073】
第5の構成パターンにかかる本発明の作業支援装置100は、
図5に示すように、3つの要素である左下肢体120L、左上半身側部体130L、左脚用弾性要素140Lの配置関係と、それらを回動可能に接続する第1の左脚用回動接続部150-1L、第2の左脚用回動接続部150-2L、第3の左脚用回動接続部150-3Lの接続関係が異なっている。さらに、左脚用弾性要素140Lの補助力が反発力となっている点が異なっている。
図5に示した第5の構成パターンは、左脚用作業支援体110Lの左下肢体120Lにおいて、第2の左脚用回動接続部150―2Lが第1の左脚用回動接続部150-1Lより下方に設けられ、左上半身側部体130Lにおいて、第3の左脚用回動接続部150-3Lが第1の左脚用回動接続部150-1Lより上方に設けられ、左脚用弾性要素140Lにおいて、第2の左脚用回動接続部150-2Lが第3の左脚用回動接続部150-3Lより下方に設けられた構成となっている。
右脚用作業支援体110Rも同様に配置された構成例となっている。
【0074】
このような配置関係において、作業者が腰を屈めると左脚用弾性要素140Lが収縮する方向に力が掛かるが、この運動において左脚用弾性力調整部160Lが気密されており、エアシリンダ内部のロッドが押し込まれて内部の空気圧が高くなる。つまり、左脚用弾性要素140Lには伸長しようとする反発力が生じている。この状態で作業者が腰を伸ばそうとすると左脚用弾性要素140Lの反発力が作業者の運動、つまり、腰を伸ばそうとする動きを支援することができる。
【0075】
この場合の左脚用弾性力調整部160Lの構造は、
図6に示した左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが相互に独立した場合の構成図や、
図7に示した左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが一つの手動ポンプや電動ポンプで連動した構成図と同様で良いが、左弾性要素140Lの内部のロッドが押し込まれて左弾性要素140Lの内部の空気圧が増加し、左開放弁164Lが閉鎖されていると空気圧エネルギは、左弾性要素140L内部や左サージタンク163L内部に蓄積される。その空気圧エネルギが反発力となる。
【0076】
作業者が腰を伸ばす運動を行うと、左弾性要素140L内部や左サージタンク163L内部に蓄積されていた空気圧エネルギがロッドを左弾性要素140L内のロッドを押し返す方向に働き、左脚用弾性要素140Lが伸張し、作業者の腰を伸ばす運動を支援する。
なお、上記の空気圧、空気圧エネルギの働きは、
図6に示した左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが相互に独立した構成である場合も、
図7に示した左脚用弾性力調整部160Lおよび右脚用弾性力調整部160Rが一つの手動ポンプや電動ポンプで連動した構成である場合も同様であり、作業者の作業を支援する。
【0077】
以上が
図5に示した第5の構成パターンについての説明である。
なお、上記説明は、左側の各要素について説明したが、右側の各要素である右脚用作業支援体110R、右下肢体120R、右上半身側部体130R、右脚用弾性要素140R、右脚用回動接続部150R、右脚用弾性力調整部160Rについても同様で良いので、ここでは右側の各要素の説明は省略する。
【0078】
本発明の実施例1にかかる作業支援装置100の試作例を装着した状態を示しておく。
図10は、作業者が本発明の作業支援装置100を装着した様子を左側面から写した図である。
図10に示す試作例は、一例として、
図5の第5の構成パターンの作業支援装置100の試作例となっている。
図10に示すように、作業者は、左半身に左脚用作業支援体110Lを装着し、右半身に右脚用作業支援体110Rを装着している。作業者が腰を屈めた状態になっているが、左脚用弾性要素140Lが収縮する方向に作業者の体重が掛かっている。この状態において、左脚用弾性要素140Lに導通している左脚用弾性力調整部160Lの左弾性要素140Lの内部のロッドが押し込まれて左弾性要素140Lの内部の空気圧が増加している。
作業者が腰を伸ばす運動を行うと、左弾性要素140L内部や左サージタンク163L内部に蓄積されていた空気圧エネルギがロッドを左弾性要素140L内のロッドを押し返す方向に働き、左脚用弾性要素140Lが伸張し、作業者の腰を伸ばす運動を支援することが理解されよう。