(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177279
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】解析方法及び解析支援装置
(51)【国際特許分類】
G01N 11/10 20060101AFI20231206BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20231206BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01N11/10
G01N11/00 C
G01N3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084134
(22)【出願日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2022088760
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.2022年11月16日付で、中島 響,小池 優巴,横山 義之,萩原 将也,早川 健が、化学とマイクロ・ナノシステム学会第46回研究会にて公開。 2.2022年11月7日付発行の化学とマイクロ・ナノシステム学会第46回研究会 発表要旨において、中島 響,小池 優巴,横山 義之,萩原 将也,早川 健が公開。 3.2023年1月16日付で、中島 響,小池 優巴,横山 義之,萩原 将也,早川 健が、The 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(IEEE MEMS 2023)にて公開。 4.2023年1月2日付で発行されたThe 36th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(IEEE MEMS 2023)に係る論文集において、中島 響,小池 優巴,横山 義之,萩原 将也,早川 健が公開。
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】早川 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 響
(72)【発明者】
【氏名】小池 優巴
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB04
2G061BA19
2G061CA09
2G061DA01
2G061EA02
2G061EB07
(57)【要約】
【課題】柔軟性を有する材料の内部の局所的な力学特性を解析できる、解析方法及び解析支援装置を提供する。
【解決手段】解析支援装置1を用いて、柔軟性を有する解析対象材料Sの内部の局所的な力学特性を解析するための、解析方法であって、解析支援装置は、板部材2と、アクチュエーター3と、アクチュエーターを駆動させるように構成された、駆動部4と、マーカー部材5 と、を備え、アクチュエーターは、板部材の上に載置されているとともに、解析対象材料によって覆われており、マーカー部材は、解析対象材料の内部に包含されており、解析方法は、駆動部によってアクチュエーターを駆動させる、駆動ステップと、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター及びマーカー部材の動きを測定する、測定ステップと、測定ステップで得られた測定結果に基づいて、解析対象材料のうちマーカー部材の近傍部分における力学特性を解析する、力学特性解析ステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析支援装置を用いて、柔軟性を有する解析対象材料の内部の局所的な力学特性を解析するための、解析方法であって、
前記解析支援装置は、
板部材と、
アクチュエーターと、
前記アクチュエーターを駆動させるように構成された、駆動部と、
マーカー部材と、
を備え、
前記アクチュエーターは、前記板部材の上に載置されているとともに、前記解析対象材料によって覆われており、
前記マーカー部材は、前記解析対象材料の内部に包含されており、
前記解析方法は、
前記駆動部によって前記アクチュエーターを駆動させる、駆動ステップと、
前記駆動ステップ中における、所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材の動きを測定する、測定ステップと、
前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における力学特性を解析する、力学特性解析ステップと、
を含む、解析方法。
【請求項2】
前記アクチュエーターは、収縮・膨張が可能に構成された、ゲルアクチュエーターである、請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記アクチュエーターは、
加熱されることによって収縮する、温度応答性ゲルと、
前記駆動部からの入力に応じて前記温度応答性ゲルを加熱する、1つ又は複数の加熱部材と、
を有する、ゲルアクチュエーターである、請求項1に記載の解析方法。
【請求項4】
前記アクチュエーターは、光が照射されることによって収縮するように構成された、光駆動ゲルアクチュエーターであり、
前記駆動部は、前記アクチュエーターに光を照射するように構成されている、請求項1に記載の解析方法。
【請求項5】
前記マーカー部材は、マイクロビーズである、請求項1に記載の解析方法。
【請求項6】
前記測定ステップでは、前記駆動ステップ中における、前記所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材のそれぞれの変位を測定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項7】
前記力学特性解析ステップでは、前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記駆動ステップ中での、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における粘弾性の経時変化を解析する、請求項6に記載の解析方法。
【請求項8】
前記力学特性解析ステップでは、前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における粘弾性を解析する、請求項6に記載の解析方法。
【請求項9】
前記測定ステップでは、前記駆動ステップ中における、前記所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材どうしの間の距離の変化を測定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の解析方法。
【請求項10】
前記力学特性解析ステップでは、前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分におけるひずみを解析する、請求項9に記載の解析方法。
【請求項11】
前記解析支援装置は、前記解析対象材料の内部に包含された前記マーカー部材を複数備えており、
前記解析方法は、前記マーカー部材毎に、前記測定ステップ及び前記力学特性解析ステップを行う、請求項1に記載の解析方法。
【請求項12】
柔軟性を有する解析対象材料の内部の局所的な力学特性を解析するために使用される、解析支援装置であって、
板部材と、
アクチュエーターと、
前記アクチュエーターを駆動させるように構成された、駆動部と、
マーカー部材と、
を備え、
前記アクチュエーターは、前記板部材の上に載置されているとともに、前記解析対象材料によって覆われており、
前記マーカー部材は、前記解析対象材料の内部に包含されている、解析支援装置。
【請求項13】
前記駆動部によって前記アクチュエーターが駆動される間、前記アクチュエーター及び前記マーカー部材を観察するように構成された、観察部と、
解析部と、
をさらに備え、
前記解析部は、
前記観察部による観察結果に基づいて、前記駆動部によって前記アクチュエーターが駆動される間における、所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材の動きを測定する、測定処理と、
前記測定処理で得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における力学特性を解析する、力学特性解析処理と、
を行うように構成されている、請求項12に記載の解析支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析方法及び解析支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、柔軟性を有する材料の力学特性(例えば、粘弾性等)を解析する手法として、プローブによって材料の表面を走査し、それにより得られる応答に基づいて、当該力学特性を解析するというものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の手法では、材料の表面の力学特性しか解析することができず、材料の内部の局所的な力学特性を解析することができなかった。
【0005】
本発明は、柔軟性を有する材料の内部の局所的な力学特性を解析できる、解析方法及び解析支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、以下の手段により解決される。
【0007】
〔1〕解析支援装置を用いて、柔軟性を有する解析対象材料の内部の局所的な力学特性を解析するための、解析方法であって、
前記解析支援装置は、
板部材と、
アクチュエーターと、
前記アクチュエーターを駆動させるように構成された、駆動部と、
マーカー部材と、
を備え、
前記アクチュエーターは、前記板部材の上に載置されているとともに、前記解析対象材料によって覆われており、
前記マーカー部材は、前記解析対象材料の内部に包含されており、
前記解析方法は、
前記駆動部によって前記アクチュエーターを駆動させる、駆動ステップと、
前記駆動ステップ中における、所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材の動きを測定する、測定ステップと、
前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における力学特性を解析する、力学特性解析ステップと、
を含む、解析方法。
【0008】
〔2〕前記アクチュエーターは、収縮・膨張が可能に構成された、ゲルアクチュエーターである、〔1〕に記載の解析方法。
【0009】
〔3〕前記アクチュエーターは、
加熱されることによって収縮する、温度応答性ゲルと、
前記駆動部からの入力に応じて前記温度応答性ゲルを加熱する、1つ又は複数の加熱部材と、
を有する、ゲルアクチュエーターである、〔1〕又は〔2〕に記載の解析方法。
【0010】
〔4〕前記アクチュエーターは、光が照射されることによって収縮するように構成された、光駆動ゲルアクチュエーターであり、
前記駆動部は、前記アクチュエーターに光を照射するように構成されている、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0011】
〔5〕前記マーカー部材は、マイクロビーズである、〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0012】
〔6〕前記測定ステップでは、前記駆動ステップ中における、前記所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材のそれぞれの変位を測定する、〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0013】
〔7〕前記力学特性解析ステップでは、前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記駆動ステップ中での、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における粘弾性の経時変化を解析する、〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0014】
〔8〕前記力学特性解析ステップでは、前記変位解析ステップで得られた解析結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における粘弾性を解析する、〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0015】
〔9〕前記測定ステップでは、前記駆動ステップ中における、前記所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材どうしの間の距離の変化を測定する、〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0016】
〔10〕前記力学特性解析ステップでは、前記測定ステップで得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分におけるひずみを解析する、〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0017】
〔11〕前記解析支援装置は、前記解析対象材料の内部に包含された前記マーカー部材を複数備えており、
前記解析方法は、前記マーカー部材毎に、前記測定ステップ及び前記力学特性解析ステップを行う、〔1〕~〔10〕のいずれか一つに記載の解析方法。
【0018】
〔12〕柔軟性を有する解析対象材料の内部の局所的な力学特性を解析するために使用される、解析支援装置であって、
板部材と、
アクチュエーターと、
前記アクチュエーターを駆動させるように構成された、駆動部と、
マーカー部材と、
を備え、
前記アクチュエーターは、前記板部材の上に載置されているとともに、前記解析対象材料によって覆われており、
前記マーカー部材は、前記解析対象材料の内部に包含されている、解析支援装置。
【0019】
〔13〕前記駆動部によって前記アクチュエーターが駆動される間、前記アクチュエーター及び前記マーカー部材を観察するように構成された、観察部と、
解析部と、
をさらに備え、
前記解析部は、
前記観察部による観察結果に基づいて、前記駆動部によって前記アクチュエーターが駆動される間における、所定方向での前記アクチュエーター及び前記マーカー部材の動きを測定する、測定処理と、
前記測定処理で得られた測定結果に基づいて、前記解析対象材料のうち前記マーカー部材の近傍部分における力学特性を解析する、力学特性解析処理と、
を行うように構成されている、〔12〕に記載の解析支援装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、柔軟性を有する材料の内部の局所的な力学特性を解析できる、解析方法及び解析支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の任意の実施形態に係る解析方法において使用され得る、本発明の一実施形態に係る解析支援装置を概略的に示す、斜視図である。
【
図2】
図1の解析支援装置を概略的に示す、縦断面図である。
【
図3】
図1のアクチュエーターの構造の一例を説明するための、説明図である。
【
図4】
図1のアクチュエーターの動作例を説明するための、説明図である。
【
図5】
図1の解析対象本体部の準備方法の一例を説明するための、説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る解析方法における駆動ステップを説明するための、説明図であり、また、本発明の一実施形態に係る解析方法における測定ステップにおいて、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター及びマーカー部材のそれぞれの変位を測定する場合について説明するための、説明図でもある。
【
図7】本発明の一実施形態に係る解析方法における測定ステップで得られる測定結果を説明するための、説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る解析方法における測定ステップにおいて、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター及びマーカー部材どうしの間の距離の変化を測定する場合について説明するための、説明図である。
【
図9】解析対象材料A、Bについて行った実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の解析方法及び解析支援装置は、柔軟性を有する任意の解析対象材料(例えば、培養基質、ゴム、ゲル、ゼリー、クリーム等)の内部の局所的な(すなわち、解析対象材料の内部の一部分の)力学特性(例えば、粘弾性、粘性、弾性、硬さ、あるいは、これらの経時変化、ひずみ等)を解析するために好適に利用できるものである。
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る解析方法及び解析支援装置の実施形態を例示説明する。
【0023】
図1~
図2は、本発明の一実施形態に係る解析支援装置1を概略的に示している。解析支援装置1は、本発明の任意の実施形態に係る解析方法において使用されることができる。
なお、本発明の任意の実施形態に係る解析支援装置1、および、本発明の任意の実施形態に係る解析方法は、柔軟性を有する任意の解析対象材料S(例えば、培養基質、ゴム、ゲル、ゼリー、クリーム等)の内部の局所的な(すなわち、解析対象材料Sの内部の一部分の)力学特性(例えば、粘弾性、粘性、弾性、硬さ、あるいは、これらの経時変化、ひずみ等)を解析するために好適に利用できるものである。本発明の任意の実施形態に係る解析支援装置1、および、本発明の任意の実施形態に係る解析方法は、解析対象材料Sの内部の力学特性が不均一であり得る場合において、解析対象材料Sの内部のうち特定部分の力学特性を把握したい場合に利用されると、特に好適なものである。
本明細書において、解析対象材料Sに関し、「柔軟性を有する」とは、外力が加わったときに変形可能であること(非剛体であること)を意味する。解析対象材料Sは、粘弾性体であると、好適である。また、解析対象材料Sは、流動性を有していると、好適である。
【0024】
図1~
図2に示すように、本実施形態の解析支援装置1は、板部材2と、アクチュエーター3と、駆動部4と、1つ又は複数(
図1~
図2の例では、1つ)のマーカー部材5と、観察部6と、解析部7と、を備えている。
なお、解析支援装置1は、観察部6及び/又は解析部7を備えていなくてもよい。
【0025】
板部材2は、その上に載置されるアクチュエーター3、解析対象材料S、及びマーカー部材5を支持するように構成されている。板部材2は、平坦な上面を有していると好適である。板部材2は、例えばガラスから構成される。板部材2は、透明(特に、無色透明)であると好適であるが、半透明又は不透明でもよい。
【0026】
アクチュエーター3は、板部材2の上に載置されているとともに、解析対象材料Sによって覆われている。
図1~
図2に示すように、アクチュエーター3は、その底面を除く外表面の全部が、解析対象材料Sによって覆われている(ひいては、解析対象材料Sと接触している)と、好適である。
アクチュエーター3は、駆動部4からの入力E(
図4)に応じて、動くように構成されている。
アクチュエーター3は、駆動部4からの入力Eに応じて動くことにより、その周囲の解析対象材料Sを動かし、それにより、後述の力学特性の解析を可能にする。
【0027】
図4に示すように、本実施形態において、アクチュエーター3は、駆動部4からの入力Eに応じて、収縮・膨張するように構成されている。
本実施形態において、アクチュエーター3は、駆動部4からの入力Eに応じて収縮・膨張が可能に構成された、ゲルアクチュエーターである。より具体的に、
図3に示すように、アクチュエーター3は、本実施形態において、温度応答性ゲル31を有している。温度応答性ゲル31は、加熱されることによって収縮する性質を有しており、より具体的には、所定温度(例えば、32℃)以上の温度になると、水を放出する等して、収縮し、当該所定温度未満の温度になると膨張する性質を有する。温度応答性ゲル31としては、例えば、Poly N-isopropylacrylamide(PNIPAAm)が挙げられる。
本実施形態において、アクチュエーター3は、1つ又は複数(
図3の例では、複数)の加熱部材32を、さらに有している。当該1つ又は複数の加熱部材32は、温度応答性ゲル31の内部に包含されている。当該1つ又は複数の加熱部材32は、駆動部4からの入力Eに応じて、自身の温度が上昇し、それにより、温度応答性ゲル31を加熱するように構成されている。より具体的に、本実施形態において、加熱部材32は、光吸収部材32である。これにより、アクチュエーター3は、本実施形態において、光が照射されることによって収縮するように構成された、光駆動ゲルアクチュエーターとして構成されている。駆動部4は、本実施形態において、アクチュエーター3に、入力Eとしての光E(例えば、レーザー光)を照射するように構成されている(
図4)。光吸収部材32は、駆動部4から照射された光Eを吸収すると、自身の温度が上昇し、それにより、温度応答性ゲル31を加熱するように構成されている。このように構成されているので、本実施形態のアクチュエーター3は、駆動部4から光Eが照射されると、光吸収部材32の温度が上昇し、それにより温度応答性ゲル31の温度が上昇して、アクチュエーター3が収縮する(
図4)一方、駆動部4からの光Eの照射が停止されると、光吸収部材32ひいては温度応答性ゲル31の温度が降下して、アクチュエーター3が膨張するように、構成されている。なお、1つ又は複数の加熱部材32は、温度応答性ゲル31の内部に包含されていなくてもよく、少なくとも、温度応答性ゲル31に接触していればよい。
光吸収部材32は、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、又は、金属ナノ材料等から構成されることができる。
【0028】
なお、本実施形態の構成に限らず、加熱部材32は、光吸収部材に代えて、金属部材であってもよく、その場合、駆動部4は、アクチュエーター3に対して入力Eとしての光Eを照射する代わりに、アクチュエーター3に対して入力Eとしての交流磁場を印加するように構成されていてもよい。この場合、アクチュエーター3は、駆動部4から交流磁場が印加されると、金属部材からなる加熱部材32ひいては温度応答性ゲル31の温度が上昇して、アクチュエーター3が収縮する一方、駆動部4からの交流磁場の印加が停止されると、金属部材からなる加熱部材32ひいては温度応答性ゲル31の温度が降下して、アクチュエーター3が膨張するように、構成される。
【0029】
ただし、アクチュエーター3は、ゲルアクチュエーター以外の種類のアクチュエーターとして構成されていてもよい。また、アクチュエーター3は、駆動部4からの入力Eに応じて、収縮・膨張とは異なる任意の動きをするように構成されてもよく、例えば、駆動部4からの入力Eに応じて、収縮・膨張以外の変形、振動、又は、移動等するように構成されてもよい。
【0030】
解析精度を向上させる観点から、アクチュエーター3は、駆動部4からの入力Eが加わっていない状態(本実施形態では、最も膨張した状態)において、上から平面視したときの直径が、500μm以下であると好適であり、200μm以下であるとより好適である。アクチュエーター3は、
図1の実施形態において、上から平面視したときに、略円形をなしているが、上から平面視したときに、略円形以外の形状をなしていてもよい。なお、上から平面視したときにおいて、アクチュエーター3の直径は、アクチュエーター3が略円形以外の形状をなす場合、アクチュエーター3の外接円の直径を指すものとする。
【0031】
駆動部4は、アクチュエーター3に入力Eを印加することにより、アクチュエーター3を駆動するように構成されている。本実施形態において、駆動部4は、上述のように、光駆動ゲルアクチュエーターとして構成されたアクチュエーター3に対して、入力Eとしての光Eを照射するように構成されている。
ただし、駆動部4は、アクチュエーター3を駆動させることができる限り、任意の入力Eをアクチュエーター3に印加するように構成されてよい。
駆動部4は、アクチュエーター3への入力Eをパルス状に印加する(すなわち、入力Eの印加及び停止を繰り返す)ように構成されてもよい。
【0032】
図1~
図2の例では、駆動部4は、上側からアクチュエーター3へ入力Eを印加するように配置されているが、駆動部4は、任意の方向から(例えば下側から)アクチュエーター3へ入力Eを印加するように配置されてよい。
【0033】
解析精度を向上させる観点から、駆動部4は、本実施形態のように、駆動部4とアクチュエーター3との間を物理的に配線等で繋ぐことなく、アクチュエーター3に入力Eを印加できるように構成されていると、好適である。
【0034】
駆動部4は、自身が有する回路又は処理装置(CPU、MPU等)による制御に従って入力Eを印加するように構成されてもよいし、あるいは、人の操作に応じて入力Eを印加するように構成されてもよいし、あるいは、解析部7による制御に従って入力Eを印加するように構成されてもよい。
【0035】
マーカー部材5は、解析対象材料Sの解析に先立って、解析対象材料Sの内部に包含される(言い換えれば、マーカー部材5は、解析対象材料Sに混合される)。マーカー部材5は、解析対象材料Sの内部に包含された状態で、観察部6による観察によって、又は、人の目による視認によって、マーカー部材5の位置を把握できるように構成されている。これにより、アクチュエーター3が駆動される間、観察部6による観察によって、又は、人の目による視認によって、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分の動きを把握できるようにされている。このような観点から、解析対象材料Sは、透明又は半透明であると、好適である。また、マーカー部材5は、不透明又は半透明であると、好適である。
【0036】
解析精度を向上させる観点から、マーカー部材5は、直径が、100μm以下であると好適であり、10μm以下であるとより好適である。マーカー部材5は、球状であると好適であるが、球状以外の形状をなしていてもよい。なお、マーカー部材5の直径は、マーカー部材5が球状以外の形状である場合、マーカー部材5の外接球の直径を指すものとする。
マーカー部材5は、例えば、マイクロビーズであると好適である。
【0037】
観察部6は、駆動部4によってアクチュエーター3が駆動される間、アクチュエーター3及びマーカー部材5を観察するように構成されている。観察部6は、観察した様子の画像及び/又は動画を撮影できるように構成されていてもよい。観察部6は、例えば、顕微鏡、カメラ、ビデオカメラ等を含んで構成されてもよい。
【0038】
図1~
図2の例では、観察部6は、下側から板部材2を介してアクチュエーター3及びマーカー部材5を観察するように配置されているが、観察部6は、任意の方向から(例えば上側から)アクチュエーター3及びマーカー部材5を観察するように配置されてよい。
また、観察部6は設けられなくてもよく、その場合、人による視認によってアクチュエーター3及びマーカー部材5が観察されてもよい。
【0039】
解析部7は、後述の測定処理や力学特性解析処理等の処理を行うように構成されている。解析部7は、CPU、MPU等の処理装置を含んで構成されており、図示しないROM、RAM等の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、上記処理を行うように構成されている。記憶装置は、処理装置の外部にあってもよいし処理装置の内部にあってもよい。
ただし、解析部7は設けられなくてもよく、その場合、人が測定処理や力学特性解析処理等の処理を行ってもよい。
解析部7は、駆動部4を制御するように構成されていてもよい。
【0040】
本明細書では、説明の便宜のため、板部材2、並びに、板部材2の上に設けられた、アクチュエーター3、解析対象材料S、及びマーカー部材5からなるユニットを、解析対象本体部10と称するものとする。
【0041】
ここで、
図5を参照しつつ、解析対象本体部10の準備方法の一例を説明する。
まず、板部材2の上に、アクチュエーター3を構成する材料3’(
図3のアクチュエーター3の例では、温度応答性ゲル31及び光吸収部材32)を載置する(
図5(a))。
その後、当該材料3’にパターニング加工(フォトリソグラフィ)を施すことによって、アクチュエーター3を形成する(
図5(b))。これにより、アクチュエーター3が板部材2の上に載置された状態となる。
その後、マーカー部材5を包含(混合)した解析対象材料Sによって、アクチュエーター3を上から覆う。
以上により、解析対象本体部10の準備が完了する。
なお、この準備方法は、解析対象材料Sが、培養基質やゲル等、流動性を有する場合に、特に好適である。
ただし、解析対象本体部10は、
図5に示す方法とは異なる方法によって準備されてもよい。
【0042】
つぎに、本発明の一実施形態に係る解析方法について、
図6~
図7を参照しつつ、説明する。本実施形態に係る解析方法は、上述した解析支援装置1を用いて行われる。
本実施形態に係る解析方法は、駆動ステップと、測定ステップと、力学特性解析ステップと、を含む。
【0043】
駆動ステップでは、駆動部4によってアクチュエーター3を駆動させる。
駆動ステップの間、アクチュエーター3が動くことによって、アクチュエーター3の周囲の解析対象材料S、ひいては、解析対象材料Sに包含されたマーカー部材5が、動かされる。
図6は、駆動ステップの一例を概略的に示している。
図6(a)は、光駆動ゲルアクチュエーターとして構成されたアクチュエーター3が膨張したときの解析対象本体部10の状態を示しており、
図6(b)は、当該アクチュエーター3が収縮したときの解析対象本体部10の状態を示している。
駆動ステップにおいて、駆動部4は、アクチュエーター3への入力Eをパルス状に印加し(すなわち、入力Eの印加及び停止を繰り返し)、それにより、アクチュエーター3に繰り返し動作をさせてもよい。例えば、駆動ステップにおいて、駆動部4は、光駆動ゲルアクチュエーターとして構成されたアクチュエーター3に、入力Eとしての光Eをパルス状に印加し、それにより、アクチュエーター3を繰り返し収縮・膨張させてもよい。
【0044】
駆動ステップにおいて、駆動部4は、自身が有する回路又は処理装置(CPU、MPU等)による制御に従って入力Eを印加してもよいし、あるいは、人の操作に応じて入力Eを印加してもよいし、あるいは、解析部7による制御に従って入力Eを印加してもよい。
駆動ステップの間、観察部6又は人が、アクチュエーター3及びマーカー部材5を観察する。
【0045】
測定ステップでは、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5の動きを測定する。
測定ステップにおいて測定され得る、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5の動きとは、例えば、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれの変位u(t)、x(t)(tは時間)が挙げられる。すなわち、測定ステップでは、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれの変位u(t)、x(t)(tは時間)を測定してもよい。ここで、「所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれの変位u(t)、x(t)」は、それぞれ、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれにおける所定の一点の変位を指すものとする。例えば、
図6の例では、上記所定方向は、水平に平行な所定の一方向(
図6における左右方向)であり、アクチュエーター3の変位u(t)とは、具体的に、アクチュエーター3の右端上の一点の変位を指しており、マーカー部材5の変位x(t)とは、具体的に、マーカー部材5の中心点の変位を指している。なお、上記所定方向は、例えば、駆動ステップ中においてマーカー部材5が最も大きく変位する方向に設定されてもよい。また、上記所定方向は、水平に対して非平行な任意の方向(例えば鉛直方向)に設定されてもよい。
図7は、測定ステップで得られ得る、駆動ステップ中における所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれの変位u(t)、x(t)の測定結果の一例を、概略的に示している。
図7に示すように、一般的に、特に解析対象材料Sが粘弾性体である場合、マーカー部材5の変位x(t)は、アクチュエーター3の変位u(t)よりも位相が遅れる傾向がある。
なお、マーカー部材5の変位x(t)、アクチュエーター3の変位u(t)は、正負も考慮するものとする。
【0046】
測定ステップでは、駆動ステップ中における観察部6による観察結果(例えば、観察した様子の画像及び/又は動画)に基づいて、解析部7が、画像処理等により、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5の動きを測定する、測定処理を、行ってもよい。
あるいは、測定ステップでは、駆動ステップ中における観察部6による観察結果(例えば、観察した様子の画像及び/又は動画)に基づいて、あるいは、駆動ステップ中における人による観察結果に基づいて、人が、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5の動きを測定する、測定処理を、行ってもよい。
測定ステップは、駆動ステップの後に行ってもよいし、あるいは、駆動ステップと並行して行ってもよい。
【0047】
力学特性解析ステップでは、測定ステップで得られた測定結果(例えば、
図7)に基づいて、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分における力学特性を解析する。
力学特性解析ステップでは、測定ステップ(測定処理)で得られた測定結果に基づいて、解析部7又は人が、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分における力学特性を解析する、力学特性解析処理を行う。
力学特性解析ステップ(力学特性解析処理)では、アクチュエーター3の変位u(t)に対するマーカー部材5の変位x(t)の位相遅れ、及び/又は、アクチュエーター3の変位u(t)のピーク値に対するマーカー部材5の変位x(t)のピーク値の比等に基づいて、当該力学特性を解析してもよい。
当該力学特性としては、例えば、粘弾性、粘性、弾性、硬さ、あるいは、これらの経時変化、ひずみ等が挙げられる。
【0048】
力学特性解析ステップでは、測定ステップで得られた測定結果に基づいて、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分における粘弾性を解析してもよい。
例えば、一般的に、ゲル状の培養基質に細胞を包含させた状態で細胞を培養するにあたり、細胞が一回通った経路においては培養基質が柔らかくなり(ひいては、粘弾性が変化し)、それにより、細胞の育ち具合が変わるという傾向がある。したがって、ゲル状の培養基質からなる解析対象材料Sの内部の特定部分における粘弾性を解析することは、大いに意義がある。
ここで、測定ステップで得られた測定結果に基づいて、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分における粘弾性を解析する手法の一例を、説明する。以下に説明する例では、測定ステップにおいて、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれの変位u(t)、x(t)を測定するものとする。
アクチュエーター3の変位u(t)、マーカー部材5の変位x(t)、及びその相対変位をy(t)=x(t)-u(t)として、それぞれをラプラス変換したものをU(s)、Y(s)とする。系がばね定数kのバネ、質量m、粘性減衰係数cのばね・質量・ダンバー系からなる二次遅れ系であるとすると、その伝達関数は、
【数1】
と表される。式(1)において、ζは系の減衰比を表し、ω
nは系の固有振動数を表す。
ここで、
【数2】
【数3】
である。
求めたい系の粘弾性は、このc(粘性)とk(弾性)により表される。
伝達関数G(s)に、s=iωを代入することで、様々な入力振動の周波数ωにおける系の周波数応答が得られることは一般に知られているため、実験において様々な周波数ωにおいて得られたy(t)=x(t)-u(t)とu(t)の比から周波数応答G(iω)を求め、パラメータ同定を行うことで、ζ及びω
nを決定することができる。また、マーカー部材5の質量mが既知であれば、粘性cと弾性kを求めることが可能となる。
ここで、
【数4】
【数5】
である。
以上により、上記粘弾性を求めることができる。
【0049】
力学特性解析ステップでは、測定ステップで得られた測定結果に基づいて、駆動ステップ中での、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分における粘弾性の経時変化を解析してもよい。
例えば、上述のように、一般的に、ゲル状の培養基質に細胞を包含させた状態で細胞を培養するにあたり、細胞が一回通った経路においては、培養基質が柔らかくなり(ひいては、粘弾性が変化し)、それにより細胞の育ち具合が変わるという傾向がある。したがって、ゲル状の培養基質からなる解析対象材料Sの内部の特定部分における粘弾性が、アクチュエーター3の駆動に応じてどのように経時変化していくかを解析することは、大いに意義がある。
具体的には、例えば、駆動ステップ中における複数(例えば2つ)の異なるタイミングでの上記粘弾性をそれぞれ求めて、それらを比較する、又は、それらの比を算出することで、当該粘弾性の経時変化を解析することが可能である。
【0050】
測定ステップにおいて測定され得る、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5の動きとしては、別の例として、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離の変化が挙げられる。すなわち、測定ステップでは、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離の変化を測定してもよい。
このことについて、
図8を参照しつつ、説明する。
図8は、
図6と同様に、駆動ステップの一例を概略的に示している。
図8(a)は、光駆動ゲルアクチュエーターとして構成されたアクチュエーター3が膨張したときの解析対象本体部10の状態を示しており、
図8(b)は、当該アクチュエーター3が収縮したときの解析対象本体部10の状態を示している。
例えば、測定ステップでは、駆動ステップ中において、アクチュエーター3が膨張したときの、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離L(
図8(a))と、アクチュエーター3が収縮したときの、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離L’(
図8(b))と、をそれぞれ測定してもよい。
ここで、「所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離(L、L’)」とは、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5のそれぞれにおける所定の一点どうしの間の距離を指すものとする。例えば、
図8の例では、上記所定方向は、上から平面視したときのアクチュエーター3の中心点とマーカー部材5の中心点とを結んでなる水平方向の直線に平行な方向であり、上記所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離(L、L’)とは、アクチュエーター3の表面と上記直線との交点と、マーカー部材5の中心点との間の、上記所定方向での距離を指している。上記所定方向は、例えば、駆動ステップ中においてマーカー部材5が最も大きく変位する方向に設定されてもよい。また、上記所定方向は、水平に平行な方向に設定されてもよいし、あるいは、水平に対して非平行な任意の方向(例えば鉛直方向)に設定されてもよい。
【0051】
力学特性解析ステップ(力学特性解析処理)では、測定ステップで得られた測定結果に基づいて、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分におけるひずみεを解析してもよい。
ここで、測定ステップで得られた測定結果に基づいて、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分におけるひずみεを解析する手法の一例を、説明する。以下に説明する例では、測定ステップにおいて、駆動ステップ中における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離の変化(より具体的には、駆動ステップ中において、アクチュエーター3が膨張したときの、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離L(
図8(a))と、アクチュエーター3が収縮したときの、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離L’(
図8(b))を測定するものとする。
解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分におけるひずみεは、以下の式(6)により求められる。
【数6】
解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分におけるひずみεは、その値が高いほど、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分が、より変形しやすく、ひいては、より柔らかいことを、意味する。したがって、解析対象材料Sのうちマーカー部材5の近傍部分におけるひずみεを求めることによって、当該部分の硬さ(弾性)を把握することができる。
【0052】
なお、
図1~
図2に示す解析支援装置1は、マーカー部材5を1つのみ備えているが、解析支援装置1は、解析対象材料Sの内部に包含されたマーカー部材5を複数備えていてもよい。その場合、測定ステップ(測定処理)及び力学特性解析ステップ(力学特性解析処理)は、マーカー部材5毎に、特には、解析対象材料S内で力学的特性の解析を希望する特定の部分近傍のマーカー部材5毎に、個別に行うと、好適である。それにより、解析対象材料S内における複数の異なる部分、特には、解析対象材料S内で力学的特性の解析を希望する特定の部分における力学特性(ひいては、力学特性分布)をそれぞれ把握することができる。このように、マーカー部材5を解析対象材料S内に複数備えることにより、解析対象材料S内で力学的特性の解析を希望する特定の部分とその近傍のマーカー部材5との間の距離がより近くなりやすく、解析精度がより向上することが期待される。なお、この場合、測定ステップ(測定処理)における上記「所定方向」については、マーカー部材5毎に異なる方向としてもよいし、すべてのマーカー部材5において同じ方向としてもよい。
【0053】
図9は、解析支援装置1を用いて、それぞれ複数のマーカー部材5を内部に包含した2種類の解析対象材料A、Bについて、解析対象材料のうちマーカー部材5の近傍部分におけるひずみεを算出した、実験結果を示している。
解析対象材料Aは、コラーゲンであった。解析対象材料Bは、コラーゲンに加えて、架橋剤としてのゲニピンを、含むものであった。解析対象材料Bは、解析対象材料Aよりも、硬い(すなわち、弾性率が高い)ものであった。
ひずみεは、上記式(6)により算出した。式(6)における、所定方向でのアクチュエーター3及びマーカー部材5どうしの間の距離(L、L’)は、具体的に、上から平面視したときのアクチュエーター3の中心点とマーカー部材5の中心点とを結んでなる水平方向の直線に平行な方向での、アクチュエーター3の表面と上記直線との交点と、マーカー部材5の中心点との間の、距離(
図8)とした。
図9において、横軸は、アクチュエーター3の中心点からマーカー部材5までの距離(μm)であり、縦軸は、ひずみε(単位無し)である。
図9から見て取れるように、アクチュエーター3の中心点からの距離に関わらず、より柔らかい解析対象材料Aで、より大きなひずみεが生じた。この結果は、柔らかい材料ほど変形しやすいという一般的な傾向と一致しており、本手法の妥当性を示している。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の解析方法及び解析支援装置は、柔軟性を有する任意の解析対象材料(例えば、培養基質、ゴム、ゲル、ゼリー、クリーム等)の内部の局所的な(すなわち、解析対象材料の内部の一部分の)力学特性(例えば、粘弾性、粘性、弾性、硬さ、あるいは、これらの経時変化、ひずみ等)を解析するために好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 解析支援装置
2 板部材
3 アクチュエーター
31 温度応答性ゲル
32 加熱部材(光吸収部材)
4 駆動部
5 マーカー部材
6 観察部
7 解析部
10 解析対象本体部
S 解析対象材料
E 入力(光)