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特開2023-177301皮膚マイクロバイオームに親和性を有する化粧料組成物
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  • 特開-皮膚マイクロバイオームに親和性を有する化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177301
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】皮膚マイクロバイオームに親和性を有する化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20231206BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231206BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/86
A61Q19/00
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087092
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0066841
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】サンガ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】スンファン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ナキュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ナム-ソ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン-ジン・ファン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC051
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC241
4C083AC351
4C083AC371
4C083AC391
4C083AC401
4C083AC421
4C083AC431
4C083AC441
4C083AC542
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD161
4C083AD171
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB04
4C083BB11
4C083BB51
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC19
4C083CC23
4C083CC25
4C083DD22
4C083DD23
4C083EE12
4C083EE13
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、皮膚有益菌に親和性を有する組成物の用途に関し、本発明の組成物は、皮膚有益菌の生長を阻害せず、皮膚有益菌に親和性を有し、プレバイオティクスやプロバイオティクスなどの効能性素材を追加しなくても有益菌の生長を維持又は促進できるので、マイクロバイオーム化粧品組成物として提供することができる。
【解決手段】本発明の皮膚有益菌維持又は増進用化粧料の組成物は、界面活性剤及びオイルを含むことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤及びオイルを含む、皮膚有益菌維持又は増進用化粧料組成物。
【請求項2】
前記組成物は、脂肪酸をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記皮膚有益菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、非イオン性(Non-ionic)、リン脂質系(Phospholipid)及び非リン脂質系(Non-Phospholipid)からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記非リン脂質系界面活性剤は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(Sodium dilauramidoglutamide lysine)及びラウリルカルバミン酸イヌリン(Inulin lauryl carbamate)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤は、PEG(Polyethylene glycol)系及び非PEG(non-PEG)系からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記PEG系非イオン性界面活性剤は、ステアリン酸PEG-100(PEG-100 stearate)、ステアレス-21(Steareth-21)、ステアリン酸PEG-40(PEG-40 stearate)及びPEG-60水添ヒマシ油(PEG-60 hydrogenated castor oil)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記非PEG系非イオン性界面活性剤は、ステアリン酸グリセリル(Glyceryl stearate)、セテアリルアルコール(Cetearyl alcohol)、セテアリルグルコシド(Cetearyl glucoside)、ラウリルアルコール(Lauryl alcohol)、ミリスチルアルコール(Myristyl alcohol)、セチルアルコール(Cetyl alcohol)、ステアリルアルコール(Stearyl alcohol)、アラキジルアルコール(Arachidyl alcohol)、ベヘニルアルコール(behenyl alcohol)、(C14-22)アルコール(C14-22 alcohols)、ラウリルグルコシド(Lauryl glucoside)、ミリスチルグルコシド(Myristyl glucoside)、セテアリルグルコシド(Cetearyl Glucoside)、アラキジルグルコシド(Arachidyl glucoside)、(C12-18)アルキルグルコシド(C12-18 alkyl glucoside)、(C12-20)アルキルグルコシド(C12-20 alkyl glucoside)、オリーブ油脂肪酸ソルビタン(Sorbitan olivate)、オリーブ油脂肪酸セテアリル(Cetearyl olivate)、ステアリン酸ソルビタン(Sorbitan stearate)、ポリステアリン酸スクロース(Sucrose polystearate)、パルミチン酸セチル(Cetyl palmitate)、オレイン酸ポリグリセリル-2(Polyglyceryl-2 oleate)、オレイン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-8、オレイン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-2(Polyglyceryl-2 laurate)、ラウリン酸ポリグリセリル-3、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-2(Polyglyceryl-2 stearate)、ステアリン酸ポリグリセリル-3、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-5、ステアリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-8及びステアリン酸ポリグリセリル-10からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記リン脂質系界面活性剤は、レシチン(Lecithin)又は水素化レシチン(Hydrogenated lecithin)である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記オイルは、炭化水素油(Hydrocarbon oil)、エステル油(Ester oil)、シリコン油(Silicone oil)及び天然油(Natural oil)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記炭化水素油は、(C13-15)アルカン(C13-15 alkane)、水添ポリデセン(Hydrogenated polydecene)、水添ポリイソブテン(Hydrogenated polyisobutene)、イソドデカン(Isododecane)、イソヘキサデカン(Isohexadecane)、スクアラン(Squalane)、ウンデカン(Undecane)、トリデカン(Tridecane)、(C13,14)アルカン(C13-14 Alkane)、(C14-17)アルカン(C14-17 Alkane)、(C14-19)アルカン(C14-19 Alkane)及び(C15-19)アルカン(C15-19 alkane)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記エステル油は、エチルヘキサン酸セチル(Cetyl ethylhexanoate)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(Hexyldecyl ethylhexanoate)、ミリスチン酸イソセチル(Isocetyl myristate)、イソノナン酸イソトリデシル(Isotridecyl isononanoate)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(Pentaerythrityl tetraisostearate)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(Pentaerythrityl tetraethylhexanoate)、トリエチルヘキサノイン(Triethylhexanoin)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(Caprylic/capric triglyceride)、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル(Coco-caprylate/caprate)、炭酸ジカプリリル(Dicaprylyl carbonate)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(Phytosteryl/octyldodecyl lauroyl glutamate)、トリ(カプリル/カプリン酸)トリメチロールプロパン(Trimethylolpropane tricaprylate/tricaprate)、ヘキサ脂肪酸(C5-9)ジペンタエリスリチルエステルズ(Dipentaerythrityl hexa C5-9 acid esters)、リンゴ酸ジイソステアリル(Diisostearyl malate)、ラウリン酸ヘキシル(Hexyl laurate)、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール(Neopentyl glycol diheptanoate)、イソステアリン酸エチル(Ethyl isostearate)、ミリスチン酸イソプロピル(Isopropyl myristate)、イソステアリン酸イソステアリル(Isostearyl isostearate)及びミリスチン酸オクチルドデシル(Octyldodecyl myristate)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記エステル油は、コハク酸ジエトキシエチル(Diethoxyethyl succinate)、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(Bis-ethoxydiglycol cyclohexane 1,4-Dicarboxylate)又はウンデシレン酸ヘプチル(Heptyl undecylenate)ではない、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記シリコン油は、カプリリルメチコン(Caprylyl methicone)、シクロヘキサシロキサン(Cyclohexasiloxane)、シクロペンタシロキサン(Cyclopentasiloxane)、ジメチコノール(Dimethiconol)、ジメチコン(Dimethicone)、メチルトリメチコン(Methyl trimethicone)、ジフェニルジメチコン(Diphenyl dimethicone)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(Diphenylsiloxy phenyl trimethicone)及びフェニルトリメチコン(Phenyl trimethicone)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記天然油は、ヒマワリ種子油(Helianthus annuus (sunflower) seed oil)、メドウフォーム種子油(Limnanthes alba (meadowfoam) seed oil)、マカデミア種子油(Macadamia ternifolia seed oil)、ホホバ種子油(Simmondsia chinensis (jojoba) seed oil)、カラスムギ穀粒油(Avena sativa (oat) kernel oil)及びシア脂(Butyrospermum parkii (shea) butter)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記天然油は、オリーブ油(Olea europaea (OLIVE) fruit oil)又はアボカド油(Persea gratissima (avocado) oil)ではない、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸(Myristic Acid)、ステアリン酸(Stearic Acid)及びベヘン酸(Behenic Acid)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、増粘剤及びビタミンから選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記増粘剤は、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer)、カルボマー(Carbomer)、ポリアクリレートクロスポリマー-6(Polyacrylate Crosspolymer-6)及びキサンタンガム(Xanthan Gum)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ビタミンは、パンテノール(Panthenol)である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、組成物の総重量に対して界面活性剤及びオイルを各成分当たり1~10重量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
界面活性剤及びオイルを含む、皮膚マイクロバイオームバランス維持用化粧料組成物。
【請求項22】
前記組成物は、脂肪酸をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記皮膚マイクロバイオームバランス維持は、皮膚有益菌維持又は増進により行われる、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記皮膚有益菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディスである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
a)界面活性剤を溶解して分散させるステップと、
b)前記分散した界面活性剤にオイルを添加し、混合して混合物を作製するステップと、
c)前記混合物を精製水に投入して乳化するステップとを含む、皮膚有益菌維持又は増進用化粧料組成物の製造方法。
【請求項26】
前記界面活性剤は、非イオン性、リン脂質系及び非リン脂質系からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記非リン脂質系界面活性剤は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム及びラウリルカルバミン酸イヌリンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記オイルは、炭化水素油、エステル油、シリコン油及び天然油からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記オイルは、コハク酸ジエトキシエチル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、ウンデシレン酸ヘプチル、オリーブ油又はアボカド油ではない、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記b)ステップは、脂肪酸をさらに添加して混合するものである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記b)又はc)ステップは、増粘剤及びビタミンから選択される少なくとも1つをさらに添加して乳化するものである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記皮膚有益菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚有益菌に親和性を有する組成物の用途に関する。前記組成物は、化粧品として提供される。
【背景技術】
【0002】
ここ数年来、微細塵、紫外線などの外部刺激及びストレスにより損傷した皮膚や弱くなった皮膚の保護に効果的な「マイクロバイオーム化粧品」への消費者の関心が高まっている。
【0003】
マイクロバイオーム化粧品とは、ヒトの皮膚に生息する「皮膚常在菌」の生長に直接、間接的な影響を及ぼす素材を適用し、皮膚の菌叢(microbiota)の変化を誘導することにより、健康な皮膚の維持又は皮膚の状態の改善をもたらす化粧品を意味する。先行研究によれば、皮膚常在菌は、皮膚免疫系の維持、病原菌をはじめとする一部の環境的危害からの皮膚の保護などの重要な役割を果たす(非特許文献1)。よって、マイクロバイオーム化粧品の研究を通じて、皮膚に存在する常在菌叢のバランスを維持し、有益菌の生長に有利な環境を造成することにより、皮膚免疫力の強化、にきびの減少、皮膚障壁の改善などの効果が期待される(非特許文献2)。
【0004】
このような特長を有するマイクロバイオーム化粧品に対する市場のニーズは着実に発生しており、多国籍企業(MNC)はマイクロバイオーム化粧品の研究のために、自社研究所の運営や、製薬会社との協業により様々な研究を行っている。しかし、現在のマイクロバイオーム化粧品の研究は、「プレバイオティクス」又は「プロバイオティクス」効果を有する効能素材の開発とその適用に集中している。
【0005】
現在まで研究、発売されているマイクロバイオーム化粧品は、一般的な化粧品剤形成分(増粘系、乳化系、及び水/内相安定化に必要な成分)に、1)プレバイオティクス(Prebiotics, 菌叢の変化を誘導するか、有益菌の生存環境を助けることにより、宿主に利益をもたらす持続不可能な食品的要素)、2)プロバイオティクス(Probiotics, 宿主に利益をもたらし、その個体数が適切に維持されるように共生する微生物)を含有する製品がほとんどである。あるいは、やや広い範囲で、3)ポストバイオティクス(Postbiotics, プロバイオティクスの代謝や発酵などにより生成される物質)を含有する製品も登場している。
【0006】
しかし、プレバイオティクス、プロバイオティクス及び/又はポストバイオティクスなどの成分は、イオン化しているか、化学的性質が明確でないため、化粧品剤形成分との相溶性に劣り、その結果、高効能、高付加価値のために過剰量を使用すると、剤形安定性が低下し、析出、相分離が生じる。これを防止するために、概してマイクロバイオーム化粧品中のプレバイオティクス、プロバイオティクス及び/又はポストバイオティクス成分の含有量は、微々たるものにならざるを得ない。
【0007】
また、化粧料組成物の大部分を占める剤形成分においては、マイクロバイオームに関する先行研究が行われていないので、皮膚常在菌への影響や効能成分との相互作用について知られておらず、それらを考慮せずに剤形成分を使用すると、効能成分の効果だけでなく、化粧品の一般的な(水分、鎮静など)効果まで軽減するという問題がある。
【0008】
こうした背景の下、本発明者らは、皮膚有益菌の生長を阻害しない剤形成分及びその組成を確認すべく鋭意努力した結果、特定組成において皮膚有益菌の生長を阻害せず、皮膚有益菌に親和性を有することを確認し、それをマイクロバイオーム化粧品組成物に適用し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Byrd, A. L. et. al. (2018) Nature Reviews Microbiology, 16(3), 143
【非特許文献2】S. Lebeer et. al. (2018) BioRxiv. doi: doi.org/10.1101/463307
【非特許文献3】Parlet, C. P., et al. (2019) Trends in microbiology, 27(6), 497-507
【非特許文献4】Russell A. D., (2003), Int J Cosmet Sci., 25(3), 147-153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、界面活性剤及びオイルを含む、皮膚有益菌維持又は増進用化粧料組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、界面活性剤及びオイルを含む、皮膚マイクロバイオームバランス維持用化粧料組成物を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、a)界面活性剤を溶解して分散させるステップと、b)前記分散した界面活性剤にオイルを添加し、混合して混合物を作製するステップと、c)前記混合物を精製水に投入して乳化するステップとを含む、皮膚有益菌維持又は増進用化粧料組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。なお、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0014】
本発明の一態様は、界面活性剤及びオイルを含む、皮膚有益菌維持又は増進用化粧料組成物を提供する。
【0015】
本発明における「皮膚有益菌」とは、皮膚常在菌のうち、皮膚再生効果を高めることにより皮膚防御力を増進し、有害菌の細胞膜破壊(死滅)及び生長抑制により皮膚再生を増進し、炎症因子の発現を抑制して皮膚鎮静及び皮膚障壁強化効果を発揮し、皮膚水分量増加及び水分損失抑制効果を発揮し、皮膚のpHを弱酸性化してpH環境を改善し、皮膚恒常性を維持する上で役に立つ菌株を意味する。前記皮膚有益菌としては、例えばスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の化粧料組成物は、皮膚有益菌に親和性を有するものであってもよい。
【0017】
本発明において、前記皮膚有益菌に親和性を有する特性には、皮膚有益菌維持及び/又は皮膚有益菌増進が含まれてもよい。
【0018】
本発明における「皮膚有益菌維持」とは、前述した皮膚有益菌の成長を補助し、一定個体数を維持することを意味する。本発明の目的上、前記皮膚有益菌維持は、スタフィロコッカス・エピデルミディスの維持であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明における「皮膚有益菌増進」とは、前述した皮膚有益菌の成長を促進又は改善することを意味する。本発明の目的上、前記皮膚有益菌増進は、スタフィロコッカス・エピデルミディスの増進であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
例えば、本発明においては、「菌生長index」パラメータを用いて、菌接種1日後の菌生長indexが-1.00以上である組成物を皮膚有益菌維持及び/又は皮膚有益菌増進効果を有する「皮膚有益菌に親和性を有する化粧料組成物」として選定した。
【0021】
すなわち、本発明の化粧料組成物は、界面活性剤及びオイルを含む、菌接種1日後の菌生長indexが-1.00以上である化粧料組成物であってもよい。
【0022】
本発明の界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば非イオン性(Non-ionic)、リン脂質系(Phospholipid)、非リン脂質系(Non-Phospholipid)などが挙げられ、一例として前記非リン脂質系界面活性剤は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(Sodium dilauramidoglutamide lysine)、ラウリルカルバミン酸イヌリン(Inulin lauryl carbamate)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の目的上、前記界面活性剤は、非イオン性、リン脂質系及び/又は非リン脂質系であるが、有益菌の成長を阻害しない界面活性剤であればいかなるものでもよい。
【0023】
しかし、本発明の化粧料組成物において、非イオン性、リン脂質系及び非リン脂質系界面活性剤ではなく、アニオン性(Anionic)、カチオン性(Cationic)及び両性(Amphoteric)に属する界面活性剤は、本発明の化粧料組成物の総重量に対して1%以下で含まれることが好ましく、0.1%以下で含まれることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0024】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えばリン酸セチル(Cetyl phosphate)などが挙げられ、具体的にはセチルリン酸カリウム(Potassium cetyl phosphate)、リン酸セチル・アルギニン(Cetyl phosphate, arginine)、リン酸セチル・水酸化ナトリウム(Cetyl phosphate, sodium hydroxide)、リン酸セチル・トロメタミン(Cetyl phosphate, tromethamine)、メチルステアロイルタウリン酸ナトリウム(Sodium methyl stearoyl taurate)、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(Sodium stearoyl glutamate)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えばジステアリルジモニウムクロリド(Distearyldimonium chloride)、ステアラミドプロピルジメチルアミン(Stearamidopropyl dimethylamine)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
前記両性界面活性剤としては、例えばラウリルヒドロキシスルタイン(Lauryl hydroxysultaine)、コカミドプロピルベタイン(Cocamidopropyl betaine)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明において、非イオン性界面活性剤としては、例えばPEG(Polyethylene glycol)系及び/又は非PEG(non-PEG)系などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記PEG系非イオン性界面活性剤としては、例えばステアリン酸PEG-100(PEG-100 stearate)、ステアレス-21(Steareth-21)、ステアリン酸PEG-40(PEG-40 stearate)、PEG-60水添ヒマシ油(PEG-60 hydrogenated castor oil)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
しかし、前記PEG系非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート60(Polysorbate 60)、イソステアリン酸PEG-60グリセリル(PEG-60 glyceryl isostearate)、PEG-11メチルエーテルジメチコン(PEG-11 methyl ether dimethicone)、PEG-10ジメチコン(PEG-10 dimethicone)、ジステアリン酸PEG-150(PEG-150 distearate)などは、本発明の化粧料組成物の総重量に対して1%以下で含まれることが好ましく、0.1%以下で含まれることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0030】
前記非PEG系非イオン性界面活性剤としては、例えばステアリン酸グリセリル(Glyceryl stearate)、セテアリルアルコール(Cetearyl alcohol)、セテアリルグルコシド(Cetearyl glucoside)、脂肪アルコール類、アルキルグルコシド、オリーブ油脂肪酸ソルビタン(Sorbitan olivate)、オリーブ油脂肪酸セテアリル(Cetearyl olivate)、ステアリン酸ソルビタン(Sorbitan stearate)、ポリステアリン酸スクロース(Sucrose polystearate)、パルミチン酸セチル(Cetyl palmitate)、オレイン酸ポリグリセリル(Polyglyceryl oleate)、ラウリン酸ポリグリセリル(Polyglyceryl laurate)、ステアリン酸ポリグリセリル(Polyglyceryl stearate)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記脂肪アルコール類としては、例えばラウリルアルコール(Lauryl alcohol)、ミリスチルアルコール(Myristyl alcohol)、セチルアルコール(Cetyl alcohol)、ステアリルアルコール(Stearyl alcohol)、アラキジルアルコール(Arachidyl alcohol)、ベヘニルアルコール(behenyl alcohol)、(C14-22)アルコール(C14-22 alcohols)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記アルキルグルコシドとしては、例えばラウリルグルコシド(Lauryl glucoside)、ミリスチルグルコシド(Myristyl glucoside)、セテアリルグルコシド(Cetearyl Glucoside)、アラキジルグルコシド(Arachidyl glucoside)、(C12-18)アルキルグルコシド(C12-18 alkyl glucoside)、(C12-20)アルキルグルコシド(C12-20 alkyl glucoside)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記オレイン酸ポリグリセリルとしては、例えばオレイン酸ポリグリセリル-2(Polyglyceryl-2 oleate)、オレイン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-5、オレイン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-8、オレイン酸ポリグリセリル-10などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
前記ラウリン酸ポリグリセリルとしては、例えばラウリン酸ポリグリセリル-2(Polyglyceryl-2 laurate)、ラウリン酸ポリグリセリル-3、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記ステアリン酸ポリグリセリルとしては、例えばステアリン酸ポリグリセリル-2(Polyglyceryl-2 stearate)、ステアリン酸ポリグリセリル-3、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-5、ステアリン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-8、ステアリン酸ポリグリセリル-10などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
しかし、前記非PEG系非イオン性界面活性剤、例えばヤシ油アルキルグルコシド(Coco-glucoside)などは、本発明の化粧料組成物の総重量に対して1%以下で含まれることが好ましく、0.1%以下で含まれることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0037】
本発明において、リン脂質系界面活性剤は、レシチン(Lecithin)、水素化レシチン(Hydrogenated lecithin)などであるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明において、非リン脂質系界面活性剤は、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(Sodium dilauramidoglutamide lysine)、ラウリルカルバミン酸イヌリン(Inulin lauryl carbamate)などであってもよい。これについては前述した通りである。
【0039】
本発明のオイルは、コハク酸ジエトキシエチル(Diethoxyethyl succinate)、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(Bis-ethoxydiglycol cyclohexane 1,4-Dicarboxylate)、ウンデシレン酸ヘプチル(Heptyl undecylenate)、オリーブ油(Olea europaea (OLIVE) fruit oil)又はアボカド油(Persea gratissima (avocado) oil)でなくてもよい。具体的には、前記コハク酸ジエトキシエチル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、ウンデシレン酸ヘプチル、オリーブ油、アボカド油などは、本発明の化粧料組成物の総重量に対して1%以下で含まれることが好ましく、0.1%以下で含まれることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。本発明のオイルは、前述したオイルを除いて、有益菌の成長を阻害しないオイルであればいかなるものでもよい。
【0040】
例えば、本発明のオイルとしては、前述したオイルを除いて、炭化水素油(Hydrocarbon oil)、エステル油(Ester oil)、シリコン油(Silicone oil)、天然油(Natural oil)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明において、炭化水素油としては、例えば(C13-15)アルカン(C13-15 alkane)、水添ポリデセン(Hydrogenated polydecene)、水添ポリイソブテン(Hydrogenated polyisobutene)、イソドデカン(Isododecane)、イソヘキサデカン(Isohexadecane)、スクアラン(Squalane)、ウンデカン(Undecane)、トリデカン(Tridecane)、(C13,14)アルカン(C13-14 Alkane)、(C14-17)アルカン(C14-17 Alkane)、(C14-19)アルカン(C14-19 Alkane)、(C15-19)アルカン(C15-19 alkane)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明において、エステル油としては、例えばエチルヘキサン酸セチル(Cetyl ethylhexanoate)、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル(Hexyldecyl ethylhexanoate)、ミリスチン酸イソセチル(Isocetyl myristate)、イソノナン酸イソトリデシル(Isotridecyl isononanoate)、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル(Pentaerythrityl tetraisostearate)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(Pentaerythrityl tetraethylhexanoate)、トリエチルヘキサノイン(Triethylhexanoin)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(Caprylic/capric triglyceride)、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル(Coco-caprylate/caprate)、炭酸ジカプリリル(Dicaprylyl carbonate)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)(Phytosteryl/octyldodecyl lauroyl glutamate)、トリ(カプリル/カプリン酸)トリメチロールプロパン(Trimethylolpropane tricaprylate/tricaprate)、ヘキサ脂肪酸(C5-9)ジペンタエリスリチルエステルズ(Dipentaerythrityl hexa C5-9 acid esters)、リンゴ酸ジイソステアリル(Diisostearyl malate)、ラウリン酸ヘキシル(Hexyl laurate)、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール(Neopentyl glycol diheptanoate)、イソステアリン酸エチル(Ethyl isostearate)、ミリスチン酸イソプロピル(Isopropyl myristate)、イソステアリン酸イソステアリル(Isostearyl isostearate)、ミリスチン酸オクチルドデシル(Octyldodecyl myristate)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
しかし、前記エステル油、例えばコハク酸ジエトキシエチル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、ウンデシレン酸ヘプチルなどは、本発明の化粧料組成物の総重量に対して1%以下で含まれることが好ましく、0.1%以下で含まれることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。これについては前述した通りである。
【0044】
本発明において、シリコン油としては、例えばカプリリルメチコン(Caprylyl methicone)、シクロヘキサシロキサン(Cyclohexasiloxane)、シクロペンタシロキサン(Cyclopentasiloxane)、ジメチコノール(Dimethiconol)、ジメチコン(Dimethicone)、メチルトリメチコン(Methyl trimethicone)、ジフェニルジメチコン(Diphenyl dimethicone)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(Diphenylsiloxy phenyl trimethicone)、フェニルトリメチコン(Phenyl trimethicone)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、天然油としては、例えばヒマワリ種子油(Helianthus annuus (sunflower) seed oil)、メドウフォーム種子油(Limnanthes alba (meadowfoam) seed oil)、マカデミア種子油(Macadamia ternifolia seed oil)、ホホバ種子油(Simmondsia chinensis (jojoba) seed oil)、カラスムギ穀粒油(Avena sativa (oat) kernel oil)、シア脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
しかし、前記天然油、例えばオリーブ油、アボカド油などは、本発明の化粧料組成物の総重量に対して1%以下で含まれることが好ましく、0.1%以下で含まれることがより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。これについては前述した通りである。
【0047】
本発明の化粧料組成物は、脂肪酸をさらに含んでもよい。
【0048】
本発明において、脂肪酸としては、ミリスチン酸(Myristic Acid)、ステアリン酸(Stearic Acid)、ベヘン酸(Behenic Acid)などが挙げられるが、有益菌の成長を阻害しない脂肪酸であればいかなるものでもよい。
【0049】
本発明の化粧料組成物は、前述したオイル及び/又は脂肪酸をそれぞれ少なくとも1つの成分として添加してもよい。
【0050】
本発明の化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ジェル、ローション、パウダー、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーからなる群から選択される剤形に製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明において、前記化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容される担体を1種以上さらに含んでもよく、通常の成分として、例えば油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適宜配合してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0052】
一具体例として、本発明の化粧料組成物は、増粘剤をさらに含んでもよい。前記増粘剤としては、例えば(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(Acrylates/C10-30 Alkyl Acrylate Crosspolymer)、カルボマー(Carbomer)、ポリアクリレートクロスポリマー-6(Polyacrylate Crosspolymer-6)、キサンタンガム(Xanthan Gum)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
他の具体例として、本発明の化粧料組成物は、ビタミンをさらに含んでもよい。前記ビタミンとしては、例えばパンテノール(Panthenol)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容される担体は、化粧料組成物の剤形によって様々である。
【0055】
本発明の剤形が軟膏、ペースト、クリーム又はジェルの場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが用いられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーの場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミドパウダーなどが用いられ、特にスプレーの場合は、ハイドロクロロフルオロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルなどの推進剤がさらに含まれるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、可溶化剤、乳濁化剤などが用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、炭酸ジエチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、綿実油、ピーナッツオイル、トウモロコシ胚種油、ヒマシ油、ゴマ油、グリセリン脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが用いられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
本発明の剤形が懸濁液の場合は、担体成分として、水、エタノール、プロピレングリコールなどの液状の希釈剤や、エトキシ化ステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤や、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガー、トラガカントなどが用いられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
本発明の剤形が石鹸の場合は、担体成分として、脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオン酸塩、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセリン、糖などが用いられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0060】
本発明の化粧料組成物は、精製水をさらに含んでもよい。
【0061】
本発明の化粧料組成物は、組成物の総重量に対して界面活性剤及びオイルを各成分当たり約0.1~30重量%含み、具体的には約1~10重量%、約2~10重量%、約3~10重量%、約4~10重量%、約5~10重量%、約1~8重量%、約2~8重量%、約3~8重量%、約4~8重量%、約5~8重量%、約1~7重量%、約2~7重量%、約3~7重量%、約4~7重量%、約5~7重量%、約1~6重量%、約2~6重量%、約3~6重量%、約4~6重量%、約5~6重量%、約1~5重量%、約2~5重量%、約3~5重量%、約4~5重量%含むが、これらに限定されるものではない。
【0062】
また、本発明の化粧料組成物は、さらに組成物の総重量に対して脂肪酸を各成分当たり約0.1~30重量%含み、具体的には約1~10重量%含むが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本発明における「約(about)」は、特定の数値の前に用いられる。本発明における「約」とは、約という用語の後に続く正確な数値のみでなく、ほとんどその数値であるか、又はその数値に近い範囲をも含むものである。その数値が用いられた文脈を考慮すると、言及された具体的な数値と近いか、ほとんどその数値であるかを決定することができる。一例として、「約」は、所定の数値の-10%~+10%の範囲を示すものである。他の例として、「約」は、所定の数値の-5%~+5%の範囲を示すものである。しかし、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明における全ての成分は、化粧品安全基準等に関する規定(韓国の規定)、化粧品安全技術規範(中国の規定)に規定された最大使用値を超えないことが好ましい。
【0065】
本発明の他の態様は、界面活性剤及びオイルを含む、皮膚マイクロバイオームバランス維持用化粧料組成物を提供する。
【0066】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0067】
本発明の組成物は、脂肪酸をさらに含んでもよい。
【0068】
さらに、本発明の組成物は、増粘剤及びビタミンから選択される1つ以上をさらに含んでもよい。
【0069】
本発明における「マイクロバイオーム(microbiome)」とは、微生物叢(microbiota)とゲノム(genome)の合成語であり、ヒト、動植物、土壌、海、湖、岩壁、大気などに共存する微生物叢とゲノムの全てを意味する。それらのうち、皮膚マイクロバイオームとは、皮膚内に存在する微生物と微生物、宿主と微生物の複雑な相互関係を形成する微生物群であり、ヒトマイクロバイオームの一部を指すものである。
【0070】
前記「皮膚マイクロバイオームバランス維持」とは、皮膚内の有益菌の活性及び生存を増進する反面、皮膚内の有害菌の増殖及び/又は活性を抑制することにより、皮膚内の微生物叢のバランスを適切に維持することを意味する。具体的には、前記マイクロバイオームバランス維持は、皮膚有益菌維持又は増進により行われるものであってもよい。本発明において、前記皮膚有益菌は、スタフィロコッカス・エピデルミディスであってもよい。
【0071】
本発明のさらに他の態様は、皮膚有益菌維持又は増進用化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0072】
具体的には、前記方法は、a)界面活性剤を溶解して分散させるステップと、b)前記分散した界面活性剤にオイルを添加し、混合して混合物を作製するステップと、c)前記混合物を精製水に投入して乳化するステップとを含むものである。
【0073】
ここで用いる用語については前述した通りである。
【0074】
前記a)ステップは、界面活性剤を溶解して分散させるステップであってもよい。
【0075】
前記溶解は、高温で行われるものであり、例えば各界面活性剤の活性化温度に応じて50℃~80℃の温度範囲で行われるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記界面活性剤としては、例えば非イオン性、リン脂質系、非リン脂質系などが挙げられ、さらに前記非リン脂質系界面活性剤としては、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ラウリルカルバミン酸イヌリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これについては前述した通りである。
【0077】
前記b)ステップは、前記a)ステップで分散した界面活性剤に油溶性成分としてオイルを添加し、混合して混合物を作製するステップであってもよい。
【0078】
ここで、前記界面活性剤及びオイルを各成分当たり約0.1~30重量%添加することができ、具体的には約1~10重量%、約2~10重量%、約3~10重量%、約4~10重量%、約5~10重量%、約1~8重量%、約2~8重量%、約3~8重量%、約4~8重量%、約5~8重量%、約1~7重量%、約2~7重量%、約3~7重量%、約4~7重量%、約5~7重量%、約1~6重量%、約2~6重量%、約3~6重量%、約4~6重量%、約5~6重量%、約1~5重量%、約2~5重量%、約3~5重量%、約4~5重量%添加することができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
前記オイルは、コハク酸ジエトキシエチル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、ウンデシレン酸ヘプチル、オリーブ油又はアボカド油でなくてもよい。本発明のオイルは、前述したオイルを除いて、有益菌の成長を阻害しないオイルであればいかなるものでもよい。
【0080】
例えば、本発明のオイルとしては、前述したオイルを除いて、炭化水素油、エステル油、シリコン油、天然油などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これについては前述した通りである。
【0081】
前記b)ステップは、油溶性成分として脂肪酸をさらに添加して混合するものであるが、これに限定されるものではない。
【0082】
脂肪酸としては、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられるが、有益菌の成長を阻害しない脂肪酸であればいかなるものでもよい。これについては前述した通りである。
【0083】
前記b)ステップは、前述したオイル及び/又は脂肪酸をそれぞれ少なくとも1つの成分として添加するものであってもよい。
【0084】
前記c)ステップは、前記b)ステップの混合物を精製水に投入して乳化するステップであってもよい。
【0085】
具体的には、混合物を精製水に総重量%が100重量%になるように徐々に投入し、その後ホモジナイザーにより約1~10分間乳化するものであるが、これに限定されるものではない。
【0086】
前記b)又はc)ステップは、増粘剤及びビタミンから選択される少なくとも1つをさらに添加して乳化するものであるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
前記方法は、前記c)ステップの後に、乳化した混合物を冷却し、次いで排出するステップをさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0088】
本発明の方法で製造された化粧料組成物は、皮膚有益菌維持又は増進効果を有し、皮膚有益菌に親和性を有するものであってもよく、皮膚マイクロバイオームバランス維持効果を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0089】
本発明の組成物は、皮膚有益菌の生長を阻害せず、皮膚有益菌に親和性を有し、プレバイオティクスやプロバイオティクスなどの効能性素材を追加しなくても有益菌の生長を維持又は促進できるので、マイクロバイオーム化粧品組成物として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】皮膚有益菌親和性評価のための組成物の作製方法の模式図である。
図2】各界面活性剤に対する皮膚有益菌親和性評価における菌生長indexを示す図である。
図3a】各油溶性成分(オイル)に対する皮膚有益菌親和性評価における菌生長indexを示す図である。
図3b】各油溶性成分(オイル)に対する皮膚有益菌親和性評価における菌生長indexを示す図である。
図4】実施例1及び比較例1~3の化粧料組成物に対する皮膚有益菌親和性評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。これは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【実施例0092】
作製例1.皮膚有益菌親和性評価のための組成物の作製
剤形成分中の界面活性剤と油溶性成分に対する皮膚有益菌親和性評価のために、次のように組成物を水中油型の分散相として作製した。
【0093】
具体的には、図2に示すように、官能基により分類した計7つの系列[非イオン系(PEG(polyethylene glycol),non-PEG),イオン系(アニオン性,カチオン性,両性),その他(リン脂質,非リン脂質)]から1種の界面活性剤を選択して計量し、その後各界面活性剤の活性化温度に応じて50℃~80℃の温度範囲で溶解、分散させた。図3に示すように、官能基により分類した計4つの系列[炭化水素系,エステル系,シリコン系,天然(自然由来)]から最大4種の油溶性成分(オイル)を選択して1成分当たり5重量%(本発明においては、最大20重量%)に計量し、その後界面活性剤と混合して均一になるまで攪拌した。混合物を精製水に総重量%が100重量%になるように徐々に投入し、その後ホモジナイザーにより約5分間乳化し、冷却してから排出した(図1)。
【0094】
実験例1.皮膚有益菌親和性の評価
作製例1で作製した各組成物に対する親和性評価の基準となる有益菌として、グラム陽性菌(Gram positive bacteria)に属するスタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis, S. epidermidis)を選定した。S.epidermidisは、健康な皮膚に多数存在する皮膚常在菌であり、ペプチド抗生物質やPSM(Phenol-soluble modulins)などを生成し、皮膚免疫を改善すると共に、外部環境要素からの皮膚防御をサポートする代表的な有益菌である(非特許文献3)。有益菌に対する親和性評価は、challenge test method(非特許文献4)により、次のように行った。
【0095】
具体的には、まずS.epidermidisをTSA(Tryptic Soy Agar)培地にて37℃で24時間培養し、その後1×10~1×10CFU(Colony-forming unit)/mlになるように、作製例1で作製して準備しておいた各組成物50.0gに接種した。接種後に、ボルテックスするか、又は滅菌した棒で菌体が組成物に均等に混ざるように混合した。接種後は常温で保管した。化粧料などの製品を用いる周期、ユーザの一般的な使用形態を考慮して、最大24時間を確認必要時点として設定した。このような判断の下、接種24時間経過後に、菌体を接種した組成物1mlを0.85%NaCl溶液で段階的に希釈し、希釈した各溶液100μlをTSA培地にスプレッディングして37℃で48時間培養し、次いでCFUを計数した。
【0096】
親和性評価の基準としては、次のような「菌生長index」パラメータを用いて、菌接種1日後の菌生長indexが-1.00以上である組成物を皮膚有益菌維持又は皮膚有益菌増進効果を有する「皮膚有益菌に親和性を有する化粧料」として選定した。
【0097】
[数1]
菌生長index=log10[{生存菌数(cfu/g)}/{接種菌数(cfu/g)}]
【0098】
その結果、図2に示すように、界面活性剤のうち、イオン性(アニオン系、カチオン系及び両性)及び複数のPEG含有界面活性剤は、有益菌の成長を大きく阻害することが確認された。それに対して、非イオン性界面活性剤であるPEG系又は非PEG系界面活性剤、リン脂質系界面活性剤及び非リン脂質系界面活性剤(ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム(Sodium dilauramidoglutamide lysine)及びラウリルカルバミン酸イヌリン(Inulin lauryl carbamate))は、有益菌の成長を阻害しなかった。
【0099】
特に、これらの結果から、リン脂質系界面活性剤において、有益菌を維持又は増進する効果が大きいことが観察され、皮膚有益菌に親和性を有する化粧料組成物に適することが確認された。
【0100】
また、図3に示すように、油溶性成分のうち、オイルであるコハク酸ジエトキシエチル(Diethoxyethyl succinate)、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(Bis-ethoxydiglycol cyclohexane 1,4-Dicarboxylate)、ウンデシレン酸ヘプチル(Heptyl undecylenate)、オリーブ油(Olea europaea (OLIVE) fruit oil)又はアボカド油(Persea gratissima (avocado) oil)は、有益菌の成長を阻害することが確認された。それに対して、炭化水素油とシリコン油は、1~2日目まで菌生長indexが-1.0以上であり、有益菌成長を阻害せず、維持することが確認された。エステル油と天然油は、程度の差は多少あるが、菌生長indexが-1.0超であり、有益菌成長をほとんど阻害しなかった。
【0101】
作製例2.皮膚有益菌に親和性を有する化粧料組成物の作製
実験例1の結果に基づいて、有益菌成長を阻害しないことが確認された界面活性剤及び油溶性成分を含む化粧料組成物を作製例1の方法で作製した。表1の組成で混合して実施例1、比較例1~3を作製した。
【0102】
【表1】
【0103】
実験例2.実施例1、比較例1~3の皮膚有益菌親和性の評価
作製例2で作製した実施例1、比較例1~3の化粧料組成物の皮膚有益菌親和性の評価を実験例1の方法で行った。その結果を表2及び3に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表2及び3に示すように、有益菌に親和性を有する炭化水素油と非イオン性、リン脂質界面活性剤とを用いて作製した実施例1の剤形は、S.epidermidisの成長を阻害せず、比較例1~3の剤形は、S.epidermidisの成長を阻害した(図4)。
【0107】
これらの実験例の結果から、実施例1が皮膚有益菌の生長を阻害せず、皮膚有益菌に親和性を有し、プレバイオティクスやプロバイオティクスなどの効能性素材を追加しなくても有益菌の生長を維持又は促進できることが確認され、これをマイクロバイオーム化粧品組成物として提供できることが確認された。
【0108】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図4
【外国語明細書】