(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177322
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】新規なアスペルギルス・オリーゼ菌株及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/14 20060101AFI20231206BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231206BHJP
A61K 36/258 20060101ALI20231206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231206BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20231206BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231206BHJP
C12P 33/20 20060101ALI20231206BHJP
C12P 19/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C12N1/14 A ZNA
A23L33/105
A61K36/258
A61P43/00 107
A61K8/9789
A61Q19/00
C12P33/20
C12P19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023089071
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0066545
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ミン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】スンファン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】スン・フン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】スンゴン・ナ
(72)【発明者】
【氏名】サド・イ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
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4B018MD43
4B064AH00
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4B064BJ10
4B064CA05
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4B065AA63X
4B065AC14
4B065CA19
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA111
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4C083FF01
4C088AB18
4C088AC11
4C088BA32
4C088CA08
4C088CA11
4C088MA52
4C088NA05
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】本発明の一つの目的は、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を提供することにある。
【解決手段】本発明は、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillusoryzae)LGYM4菌株;前記菌株またはその発酵物を含む紅参発酵物;前記紅参発酵物を含む食品組成物、化粧料組成物、医薬部外品組成物及び薬学組成物;紅参を含む組成物に前記菌株を接種して発酵する段階を含む紅参発酵物の製造方法;前記製造方法により製造された紅参発酵物;前記製造された紅参発酵物を含む食品組成物、化粧料組成物、医薬部外品組成物及び薬学組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC 14533BPで寄託されたアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株。
【請求項2】
前記菌株は、ジンセノサイド生物変換(bioconversion)能を有するものである、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
請求項1に記載の菌株又はその発酵物を含む紅参発酵物。
【請求項4】
前記紅参発酵物は、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加したものである、請求項3に記載の紅参発酵物。
【請求項5】
前記紅参発酵物は、(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が増加したものである、請求項3に記載の紅参発酵物。
【請求項6】
請求項3に記載の紅参発酵物を含む組成物であって、前記組成物は、食品組成物、化粧料組成物、医薬部外品組成物又は薬学組成物である、組成物。
【請求項7】
紅参を含む組成物に請求項1に記載の菌株を接種して発酵する段階を含む、紅参発酵物の製造方法。
【請求項8】
製造された紅参発酵物は、発酵前の紅参を含む組成物より(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加したものである、請求項7に記載の紅参発酵物の製造方法。
【請求項9】
製造された紅参発酵物は、発酵前の紅参を含む組成物より(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が増加したものである、請求項7に記載の紅参発酵物の製造方法。
【請求項10】
製造された紅参発酵物を濃縮する段階をさらに含むものである、請求項7に記載の紅参発酵物の製造方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項に記載の製造方法により製造された紅参発酵物。
【請求項12】
請求項11に記載の紅参発酵物を含む組成物であって、前記組成物は、食品組成物、化粧料組成物、医薬部外品組成物又は薬学組成物である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株;前記菌株またはその発酵物を含む紅参発酵物;前記紅参発酵物を含む食品組成物、化粧料組成物、医薬部外品組成物及び薬学組成物;紅参を含む組成物に前記菌株を接種して発酵する段階を含む紅参発酵物の製造方法;前記製造方法により製造された紅参発酵物;前記製造された紅参発酵物を含む食品組成物、化粧料組成物、医薬部外品組成物及び薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紅参は、ウコギ科に属する多年生草である4~6年根高麗人参(Panax ginseng C.A. Meyer)を選別して皮を剥かない状態で蒸気に蒸して乾燥させたものである。
【0003】
漢方医学的には、性質はやや温かく、味は甘くてやや苦く、脾臓、肺、心臓に入って元気を補充し、津液を作るなど、健康増進と疾病予防の効果がある代表的な漢方薬材として使われてきた。
【0004】
紅参は、蒸熟後に乾燥する過程で有効成分がより濃縮されるが、サポニンのような人体に有効な生理活性成分が生成され、消化吸収がよくなり免疫体系の増進及び機能強化に役立つ。
【0005】
一方、サポニンは、化学的に配糖体(Glycoside)と呼ばれる化合物の一種である。植物の根、茎、葉、皮、種などにあるが、抗がん、抗酸化、コレステロールの低下に効果的な生理活性物質であり、高麗人参にあるサポニンはジンセノサイド(Ginsenoside)と呼ばれる。
【0006】
紅参に含まれているジンセノサイドの種類は約30余種であり、そのうち、ジンセノサイドRb1がサポニン全体の約23%を占めるほど最も含有量が多く、ジンセノサイドRg1が約19%、ジンセノサイドReが15%、ジンセノサイドRb2が11%、ジンセノサイドRcが12%、ジンセノサイドRdが約7%含まれていると知られている。
【0007】
数種類のジンセノサイド中、ジンセノサイドRg3は高麗人参にはなく、紅参にだけ微量で存在する成分である。ジンセノサイドRg3は血栓生成を抑制し、血小板の凝集を抑制し、血管を拡張して血行を促進し、血圧を下げる効能がある。また、がん細胞の転移を抑制し、抗がん剤に対する耐性の発生を抑制し、認知症予防作用が強い効能がある。
【0008】
前記ジンセノサイドRg3は、二つの異性体中、(R)型が(S)型に比べて著しく優れた免疫力増加効果及び抗酸化効果を有することが報告されているが、選択的発酵又は合成法は知られていない。
【0009】
紅参にだけ微量で存在するジンセノサイドRg3の紅参内含有量を高めるための方法として紅参発酵工程を使用する方法(大韓民国公開特許10-2018-0040784号、大韓民国公開特許10-2020-0000571号)などが提示されてきた。
【0010】
しかし、前記方法は、紅参発酵工程を通じて不特定ジンセノサイド全体に対して脱糖を進行し、単純低配糖体化することに過ぎず、より優れた効果を有する(R)型ジンセノサイドRg3を選択的に得られる方法は開示されていない。
【0011】
このような背景の下で、本発明者らは、新規なアスペルギルス・オリーゼ菌株を発掘し、紅参を含む組成物に前記新規菌株を接種して製造される紅参発酵物の場合、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加することを確認することにより本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】大韓民国公開特許10-2018-0040784号
【特許文献2】大韓民国公開特許10-2020-0000571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一つの目的は、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のもう一つの目的は、前記菌株またはその発酵物を含む紅参発酵物を提供することにある。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、前記紅参発酵物を含む食品組成物を提供することにある。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、前記紅参発酵物を含む化粧料組成物を提供することにある。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、前記紅参発酵物を含む医薬部外品組成物を提供することにある。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、前記紅参発酵物を含む薬学組成物を提供することにある。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、紅参を含む組成物に前記菌株を接種して発酵する段階を含む紅参発酵物の製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、前記の製造方法により製造された紅参発酵物を提供することにある。
【0021】
本発明のもう一つの目的は、前記製造された紅参発酵物を含む食品組成物を提供することにある。
【0022】
本発明のもう一つの目的は、前記製造された紅参発酵物を含む化粧料組成物を提供することにある。
【0023】
本発明のもう一つの目的は、前記製造された紅参発酵物を含む医薬部外品組成物を提供することにある。
【0024】
本発明のもう一つの目的は、前記製造された紅参発酵物を含む薬学組成物を提供することにある。
【0025】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用できる。すなわち、本発明で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範疇に属する。また、下記具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは見られない。
【0026】
本発明は、新規なアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を発掘し、紅参を含む組成物に前記新規菌株を接種して製造される紅参発酵物の場合、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加することを新たに立証したことに起因する。
【0027】
本発明の一態様は、寄託番号KCTC14533BPで寄託されたアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を提供する。
【0028】
本発明において用語「アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)」は、黄麹菌として知られており、麹カビの代表菌として清酒、和風味噌、醤油類の製造に使用される菌株である。集落は、最初は白色であるが、分生子ができると黄色から黄緑色になり、古くなると茶色になる。でんぷん糖化力、蛋白分解力が強い特性を有すると知られている。
【0029】
本発明者らは、前記アスペルギルス・オリーゼに属する新規な菌株を開発し、これをアスペルギルス・オリーゼLGYM4と命名し、これを寄託番号KCTC14533BPで寄託した。
【0030】
一つの具体例として、前記菌株は、ジンセノサイド生物変換能を有するものであってもよい。
【0031】
本発明において用語「ジンセノサイド(Ginsenoside)」は、高麗人参の主要生理活性成分が含まれたサポニン成分を意味する。前記ジンセノサイド中、Re、Rg1、Rb1、Rc、Rb2、Rf及びRdは全体サポニンの90%以上を占めるメジャージンセノサイド(major ginsenoside)であり、これらは大きいサイズのため生体内での吸収率が非常に低い。
【0032】
一方、マイナージンセノサイド(minor ginsenoside)は、Rg2、Rh1、Rg6、F2、Rk3.Rh4及びRg3などで構成され、最近マイナージンセノサイドの優れた薬理効能に関する研究結果が発表されている。したがって、メジャージンセノサイドを生理活性に優れたマイナージンセノサイドに生物変換する方法に関する研究が脚光を浴びている。
【0033】
本明細書において用語「生物変換(bioconversion)」は、微生物が有している酵素的機能を利用して前駆物質から望む産物を製造する方法を意味する。前記生物変換は、微生物の発酵または酵素処理などの生物学的方法を通じて物質の構造的変化を誘導する。前記変化により有効成分の含量が増加したり吸収率が改善され、新たな機能成分が生成される。このような生物変換技術は、抗生剤、ステロイドを含む医薬品及び医薬品原料物質の生産だけでなく、アミノ酸、ビタミンなどの有用物質の生産に広く利用されている。
【0034】
本発明の一実施例では、前記アスペルギルス・オリーゼLGYM4菌株がメジャージンセノサイドをマイナージンセノサイドに生物変換する効果があることを確認したところ、前記アスペルギルス・オリーゼLGYM4菌株は、メジャージンセノサイドを生物変換して総ジンセノサイド中のマイナージンセノサイド含量を増加させて生理活性を高めることができることを確認し、特に、マイナージンセノサイドの中でも生理活性が高い特定マイナージンセノサイド((R)型ジンセノサイドRg3)含量を選択的に増加させることを確認した(実施例3)。
【0035】
本発明のもう一つの態様は、前記菌株またはその発酵物を含む紅参発酵物を提供する。
【0036】
本発明の目的上、前記菌株は、新規なアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を意味する。
【0037】
本発明において用語「発酵」は、微生物自身が持っている酵素を利用して有機物を分解させる過程中の腐敗反応ではないことを意味する。発酵反応と腐敗反応は、類似な過程により進行されるが、分解の結果、有用な物質が作られれば発酵と言い、悪臭がしたり有害な物質が作られれば腐敗という。
【0038】
本発明において、用語「発酵物」は、発酵された物質自体だけでなく、菌株及び培養物が共存する菌株の培養培地、前記培養培地から菌株をろ過させた発酵物、前記培養培地から菌株を滅菌処理し、これをろ過させた発酵物、前記発酵物又はこれを含む培養培地を抽出した抽出物、前記発酵物又はその抽出物を希釈した希釈液、前記発酵物又はその抽出物を乾燥させた乾燥物、前記菌株の菌体を捕集して破砕させた溶解物など、前記菌株から発生した発酵物を含むすべての種類の物質を含む。それだけでなく、前記発酵物を含むすべての種類の物質に加えて、前記発酵物を含むすべての種類の物質の希釈液、これらの濃縮液、これらの粗精製物、精製物などを全て含む。
【0039】
本発明において、用語「濃縮液」「培養液」及び「破砕物」の場合、微生物が有機化合物を分解した結果として製造されるものであるため、前記発酵物と混用することができる。
【0040】
本発明において、用語「紅参発酵物」は、紅参発酵物、紅参発酵物の濃縮液または紅参濃縮液の発酵物などを全て含む。
【0041】
具体的には、本発明において、前記紅参発酵物は、i)紅参を新規なアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株により発酵した発酵物、ii)紅参抽出物、紅参抽出物の濃縮液、または紅参を含む組成物に新規なアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を接種して得られた生成物、 iii)前記ii)の発酵物またはiv)前記 i)~iii)の濃縮液を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、前記菌株から発酵物を得る方法は特に制限されず、当該技術分野または類似分野において通常使用する方法により得ることができる。
【0043】
本発明において、発酵物を得るための発酵工程は、菌株のエネルギー源である糖に前記分離された菌株を処理して発酵させることにより得られるものであるが、前記発酵工程の温度、発酵時間などは特に制限されず、発酵前駆体物質、発酵条件、発酵物から得ようとする物質の種類などにより多様に選択され得る。
【0044】
例えば、20℃~40℃、具体的には30℃~40℃、より具体的には約37℃内外の温度で遂行できる。また、例えば、1日~10日間、具体的には1日~5日間、さらに具体的には約2日内外の期間発酵させることができるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本発明において、前記紅参発酵物は、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加したものであってもよく、具体的には発酵前に比べて、(R)型ジンセノサイドRg3の含量を(S)型ジンセノサイドRg3の含量で除した値が増加したものであってもよい。具体的には、本発明において「(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値」は、ジンセノサイドRg3の二つの異性体である(R)型と(S)型の含量比率を数値で表した値を意味することであり、「R/S値」で表すことができる。例えば、発酵前に比べて前記R/S値が増加する場合、(S)型に比べて(R)型が選択的に増加したことを意味することである。
【0046】
本発明において、「(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加した」とは、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が発酵を経ていない紅参を含む組成物に比べて増加することを意味する。
【0047】
本発明の一実施例では、新規なアスペルギルス・オリーゼLGYM4菌株を利用して(R)型ジンセノサイドRg3の含量及び(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が選択的に増加した紅参発酵物を製造できることを確認した(実施例3)。
【0048】
本発明のもう一つの態様は、前記紅参発酵物を含む食品組成物を提供する。
【0049】
前記紅参発酵物は、前述した通りである。
【0050】
本発明の用語「食品」とは、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合体、健康機能食品及び健康食品などがあり、通常の意味の食品をすべて含む。
【0051】
前記健康機能食品とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて製造加工した食品をいう。ここで「機能(性)」とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節したり生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の食品は、当業界において通常使用される方法により製造可能であり、前記製造時には、当業界において通常添加する原料及び成分を添加して製造することができる。また、前記食品の剤形も食品として認められる剤形であれば、制限なく製造することができる。本発明の食品用組成物は、多様な形態の剤形で製造することができ、一般の薬品とは異なって食品を原料として薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがない長所があり、携帯性に優れ、本発明の食品は、免疫増進の効果を増進させるための補助剤として摂取が可能である。
【0052】
前記健康食品(health food)とは、一般食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、健康補助食品(health supplement food)とは、健康補助目的の食品を意味する。場合によっては、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は混用される。
【0053】
具体的には、前記健康機能食品は、前記紅参発酵物を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加したり、カプセル化、粉末化、懸濁液などで製造した食品であり、これを摂取する場合、健康上、特定の効果をもたらすことを意味するが、一般薬品とは異なって食品を原料とし、薬品の長期服用時に発生し得る副作用がない長所がある。
【0054】
本発明の食品組成物は、日常的に摂取することが可能であるため、高い免疫増進効果が期待でき、非常に有用である。
【0055】
前記組成物は、生理学的に許容可能な担体をさらに含むことができるが、担体の種類は特に制限されず、当該技術分野において通常使用される担体であれば、どれでも使用できる。
【0056】
また、前記組成物は、食品組成物に通常使用され、匂い、味、視覚などを向上させる追加成分を含むことができる。例えば、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)などを含むことができる。また、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、クロム(Cr)などのミネラルを含むことができる。また、リシン、トリプトファン、システイン、バリンなどのアミノ酸を含むことができる。
【0057】
また、前記の組成物は、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、殺菌剤(漂白粉と高度漂白粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニゾール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、亜酢酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウムなど)、調味料(MSGグルタミン酸ナトリウムなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、膨張剤(ミョウバン、D-錫酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、皮膜剤、ガム基剤、泡抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives) を含むことができる。前記添加物は、食品の種類に応じて選択され、適切な量で使用することができる。
【0058】
前記紅参発酵物をそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用することができ、常法により適切に使用できる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適切に決定することができる。一般に、食品または飲料の製造時に本発明の食品組成物は、食品または飲料に対して50重量部以下、具体的には20重量部以下の量で添加することができる。しかし、健康及び衛生を目的に長期間摂取する場合には、前記範囲以下の含量を含むことができ、安全性の面で何の問題もないため、有効成分は前記範囲以上の量でも使用できる。
【0059】
本発明の食品組成物の一例として健康飲料組成物として使用でき、この場合、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述の天然炭水化物は、ブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド;マルトース、スクロースのようなジサッカライド;デキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド;キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味料は、ソーマチン、ステビア抽出物などの天然甘味料;サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味料を使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100mL当たり一般的に約2~10g、具体的には約4~8gである。
【0060】
前記以外に健康飲料組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコールまたは炭酸化剤などを含有することができる。その他、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、又は野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。これらの成分は、独立してまたは混合して使用することができる。このような添加剤の比率は、それほど重要ではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.1重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0061】
本発明の食品組成物において、前記紅参発酵物は、前記食品組成物の全体重量を基準に0.001~90%、具体的には0.01~30%、より具体的には0.05~10%、さらに具体的には0.05~0.15%で含有することができるが、これに制限されない。
【0062】
本発明のもう一つの態様は、前記紅参発酵物を含む化粧料組成物を提供する。
【0063】
前記紅参発酵物は、前述した通りである。
【0064】
本発明の化粧料組成物において、前記紅参発酵物は、前記化粧料組成物の全体重量を基準に0.001~90%、具体的には0.01~30%、より具体的には0.05~10%、さらに具体的には0.05~0.15%で含有することができるが、これに制限されない。
【0065】
本発明の前記化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、香水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーで構成される群から選択される剤形であってもよいが、これに制限されない。
【0066】
本発明の前記化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を1種以上追加で含むことができ、通常の成分として、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合することができるが、これに制限されない。
【0067】
本発明の化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、前記化粧料組成物の剤形によって多様である。
【0068】
本発明の化粧料剤形が、軟膏、ペースト、クリーム、またはジェルである場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが利用できるが、これに制限されない。これらは単独で使用されたり、2種以上混合されて使用できる。
【0069】
本発明の剤形が、溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤などが用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルなどが用いられ、特に、綿実油、ピーナッツオイル、トウモロコシ胚芽油、オリーブオイル、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルが用いられるが、これらに制限されない。これらは単独で使用しても2種以上使用してもよい。
【0070】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー又はトラカントなどが用いられるが、これに限定されない。これらは単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
【0071】
本発明の剤形が石鹸の場合には、担体成分として、脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオネート、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセロール、糖などが用いられるが、これに制限されるものではない。これらは単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。
【0072】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーの場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダーまたはこれらの組成物が用いられ、特に、スプレーの場合には、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進剤を含むことができる。
【0073】
一方、本発明に記載されたすべての成分が望ましくは化粧品安全基準などに関する規定及び中国「化粧品安全・技術規範」で規定した最大使用値を超過しない範囲内で本発明の組成物に含まれてもよい。
【0074】
本発明のもう一つの態様は、前記紅参発酵物を含む医薬部外品組成物を提供する。
前記紅参発酵物は、前述した通りである。
【0075】
本発明において用語「医薬部外品」は、ボディクレンザー、消毒洗浄剤、洗浄剤、キッチン用洗浄剤、掃除用洗浄剤、歯磨き粉、うがい剤、ウェットティッシュ、洗剤、石鹸、ハンドウォッシュ、ヘア洗浄剤、ヘア柔軟剤、加湿器充填剤、マスク、軟膏剤及びフィルター充填剤からなる群から選択されるものであってもよいが、これに限定されない。
【0076】
本発明の医薬部外品組成物には、前記成分以外に必要に応じて薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤は、本発明の効果を損なわない限り制限されず、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。
【0077】
本発明の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤の代表的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、デンプン、ゼラチン、グリセリン、アカシアゴム、アルギネート、カルシウムホスフェート、カルシウムカルボネート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート、鉱物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油、注射可能なエステル、ウィテプゾール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂などが挙げられる。
【0078】
本発明の紅参発酵物を医薬部外品として使用する場合、さらに同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。
【0079】
本発明の医薬部外品組成物は、当業界に公知となった有効成分をさらに含むことができる。追加成分は、全体組成物の重量に対して0.0001重量%~10重量%で含むことができ、前記含量の範囲は、本発明の紅参発酵物の剤形化時の容易性などの要件により調節できるものである。
【0080】
医薬部外品の製剤化方法、用量、利用方法、構成成分などは、技術分野において公知となった通常の技術から適切に選択することができる。
【0081】
本発明のもう一つの態様は、前記紅参発酵物を含む薬学組成物を提供する。
【0082】
前記紅参発酵物は、前述した通りである。
【0083】
本発明の薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使用する薬学に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができ、前記担体は非自然的担体(non-naturally occuring carrier)を含むことができる。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0084】
また、前記薬学組成物は、それぞれ常法により錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥剤、経皮吸収剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤、カタプラズマ剤、ペースト剤、スプレー、皮膚乳化液、皮膚懸濁液、経皮送達性パッチ、薬物含有包帯または坐剤の形態に剤形化して使用することができる。
【0085】
具体的には、剤形化する場合、通常使用する充填剤、重量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などを含むが、これに限定されない。このような固形製剤は、少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤なども使用できる。経口のための液状物、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを添加して調製することができる。非経口投与のための製剤は、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤及び坐剤を含む。非水性溶剤及び懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテプゾール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0086】
本発明の薬学組成物において、前記紅参発酵物は、前記薬学組成物の全体重量を基準に0.001~90%、具体的には0.01~30%、より具体的には0.05~10%、さらに具体的には0.05~0.15%で含まれることができるが、これに制限されない。
【0087】
本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。前記用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られている要素によって決定することができる。例えば、前記薬学組成物は、1日0.01~500mg/kgで、具体的に10~100mg/kgの用量で投与でき、前記投与は1日に1回または数回に分けて投与することもできる。
【0088】
前記薬学組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。そして単一または多重投与されることができる。前記要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定することができる。
【0089】
また、前記薬学組成物は、目的とする方法によって経口投与したり非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は局所に適用)することができ、投与量は患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができる。
【0090】
本発明のもう一つの態様は、紅参を含む組成物に前記菌株を接種して発酵する段階を含む紅参発酵物の製造方法を提供する。
【0091】
具体的には、本発明において、前記発酵する段階は、紅参を含む組成物に菌株培養液を添加した後、発酵することができるが、これに制限されるものではなく、多様な形態で加工されたすべての紅参、山参、高麗人参、水参、白参、紅尾参、尾参、山養参、長脳参、尾参、玄参及び太極参などに適用することができる。
【0092】
本発明において用語「高麗人参」は、植物分類学上、セリ目ウコギ科に属する陰地性多年生草であり、紅参を作るための処理をしていない高麗人参を「水参」という。前記高麗人参は、山参、水参、白参、紅尾参、尾参、山養参、長脳参、尾参、玄参及び太極参などをすべて含む最も広い概念である。前記高麗人参は、紅参に比べてジンセノサイドRg3の含量が低い特徴がある。
【0093】
より具体的には、本発明の製造方法は、本発明の新規なアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を前記紅参を含む組成物に添加する段階を含むものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0094】
前記発酵する段階の温度、発酵時間などは特に制限されず、発酵前駆体物質、発酵条件、発酵物から得ようとする物質の種類などによって多様に選択できる。
【0095】
例えば、20℃~40℃、具体的には30℃~40℃、より具体的には約37℃前後の温度で遂行できる。また、例えば、1日~10日間、具体的には1日~5日間、さらに具体的には約2日前後の期間発酵させてもよいが、これに制限されるものではない。
【0096】
本発明の製造方法は、製造された紅参発酵物をろ過する段階をさらに含むことができる。
【0097】
また、本発明の製造方法は、濃縮する段階をさらに含むことができる。
【0098】
本発明において、前記ろ過方法及び濃縮方法は特に制限されず、当業者により適切に選択することができる。
【0099】
本発明において前記製造された紅参発酵物は、発酵前に紅参を含む組成物より(R)型ジンセノサイドRg3の含量が増加したものであってもよく、具体的には、(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が増加したものであってもよい。
【0100】
本発明において、「(R)型ジンセノサイドRg3の含有量が増加した」とは、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が発酵を経ていない紅参を含む組成物に比べて増加することを意味する。
【0101】
本発明の一実施例では、新規なアスペルギルス・オリーゼLGYM4菌株を利用して(R)型ジンセノサイドRg3の含量及び(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が選択的に増加した紅参発酵物を製造できることを確認した(実施例3)。
【0102】
本発明のもう一つの態様は、前記製造方法により製造された紅参発酵物を提供する。
前記の製造方法、紅参発酵物は、前述した通りである。
【0103】
本発明のもう一つの態様は、前記製造された紅参発酵物を含む食品組成物を提供する。
【0104】
前記食品組成物、紅参発酵物及びその製造方法は、前述した通りである。
【0105】
本発明のもう一つの態様は、前記製造された紅参発酵物を含む化粧料組成物を提供する。
【0106】
前記化粧料組成物、紅参発酵物及びその製造方法は、前述した通りである。
【0107】
本発明のもう一つの態様は、前記製造された紅参発酵物を含む医薬部外品組成物を提供する。
【0108】
前記医薬部外品組成物、紅参発酵物及びその製造方法は、前述した通りである。
【0109】
本発明のもう一つの態様は、前記製造された紅参発酵物を含む薬学組成物を提供する。
【0110】
前記薬学組成物、紅参発酵物及びその製造方法は、前述した通りである。
【発明の効果】
【0111】
本発明の新規菌株は、メジャージンセノサイドを生物変換して総ジンセノサイド中のマイナージンセノサイド含量を増加させて生理活性を高めることができ、特に、マイナージンセノサイドの中でも生理活性が高い特定マイナージンセノサイド((R)型ジンセノサイドRg3)の含量を選択的に増加させる優れた効能がある。
【0112】
また、本発明の紅参発酵物の製造方法は、前記菌株を利用して(R)型ジンセノサイドRg3の含量及び(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が選択的に増加した紅参発酵物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下、本発明を実施例を通じてより詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0114】
実施例1:新規な菌株の発掘
アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)菌株中、メジャージンセノサイドを生物変換して(R)型ジンセノサイドRg3の含量を選択的に増加させる菌株を選別した。
【0115】
具体的には、薬麹から微生物を同定し、24種の菌株を確認した後、分離した。分離された菌株24種中、食品に使用可能な菌株として再び5種(YM4、BS1、BS2、BS4、BS5)を選別し、これらが(R)型ジンセノサイドRg3の含量を選択的に増加させることができるかを評価した。より具体的には、選別された5種の菌株のそれぞれをPDB液体培地で180rpm、30℃の環境下で1日間培養した。続いて、40%(W/V)の紅参培地(紅参濃縮液400g+PBS total 1L)に1:10ratioで1日間継代培養した。紅参培地に使用した紅参濃縮液は、(株)大同高麗参から購入した。続いて180rpm、30℃の環境下で2日間培養した後、water bathで90℃、1h incubationを通じて滅菌した。滅菌後、マイクロフィルターを利用してろ過し、LC/Q-TOFを通じてジンセノサイド含量を定量した。その結果は、下記表1に示した。
【0116】
【0117】
前記の表1に示すように、他の菌に比べてYM4で発酵した紅参培地の場合、(R)型ジンセノサイドRg3の含量が遥かに高く、発酵前に比べて82%増加したことを確認し、(R)型ジンセノサイドRg3の含量を選択的に増加させる優れた効能を有する菌株として選別した。
【0118】
前記選別されたYM4菌株の下記ITS配列をNCBI blast分析した結果、既存の菌株との一致度が97.69%~99.82%の同一性を有するため、前記分離された菌株は、既存の菌株と異なる菌株であることを確認した。
【0119】
LGYM4菌株のITS配列(配列番号1): ATTGATATGCTTAAGTTCAGCGGGTATCCCTACCTGATCCGAGGTCAACCTGGAAAAAGATTGATTTGCGTTCGGCAAGCGCCGGCCGGGCCTACAGAGCGGGTGACAAAGCCCCATACGCTCGAGGATCGGACGCGGTGCCGCCGCTGCCTTTGGGGCCCGTCCCCCCCGGAGAGGGGACGACGACCCAACACACAAGCCGTGCTTGATGGGCAGCAATGACGCTCGGACAGGCATGCCCCCCGGAATACCAGGGGGCGCAATGTGCGTTCAAAGACTCGATGATTCACGGAATTCTGCAATTCACACTAGTTATCGCATTTCGCTGCGTTCTTCATCGATGCCGGAACCAAGAGATCCATTGTTGAAAGTTTTAACTGATTGCGATACAATCAACTCAGACTTCACTAGATCAGACAGAGTTCGTGGTGTCTCCGGCGGGCGCGGGCCCGGGGCTGAGAGCCCCCGGCGGCCATGAATGGCGGGCCCGCCGAAGCAACTAAGGTACAGTAAACACGGGTGGGAGGTTGGGCTCGCTAGGAACCCTACACTCGGTAATG
【0120】
また、公知菌株に該当する、アスペルギルス・オリーゼ菌株(NCBI GenBank accession number: NR_135395.1)と遺伝子配列を比較した結果、99.82%の一致度を示すため、実施例1で発掘した菌株は、前記公知菌株と異なる新規な菌株であることを改めて確認した。
【0121】
前記の新規菌株(YM4)は、アスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4と命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)に国際寄託し、2021年4月12日付で寄託番号KCTC14533BPの付与を受けた。
【0122】
実施例2:紅参発酵物の製造
[比較例]
発酵槽に紅参抽出物4kgと精製水4kgを投入した後、溶解して約25Brixにした後、121℃で30分間滅菌して発酵していない紅参抽出物を製造し、比較例として使用した。
【0123】
[実施例]
全粒小麦粉3%、酵母抽出物0.3%、第一リン酸カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%の培地を121℃で30分間滅菌した後、前記実施例1で選別したアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)LGYM4菌株を接種して160rpm、37℃の環境下で2日間培養してseed cultureを製造した。
【0124】
一方、発酵槽に紅参抽出物4kgと精製水4kgを投入した後、溶解して約25Brixにした後、121℃で30分間滅菌して実験具を製造した。
【0125】
滅菌後、発酵槽を37℃に冷却させ、前記seed culture 1.2Lを前記実験具に接種して37℃、150rpm、0.5vvm、0.6barの環境下で1日間培養して紅参発酵物を製造した。
【0126】
続いて、これを再び95℃で1時間殺菌した後、珪藻土を利用したろ過を通じて不純物が除去されろ過された発酵液を得た。
【0127】
続いて、珪藻土に吸着されたジンセノサイドの回収のために液量対比50%(v/v)の95%酒精を投入して洗浄し、吸着されたジンセノサイドが含まれた酒精を得た。
【0128】
続いて、前記濾過された発酵液及び前記吸着されたジンセノサイドが含まれた酒精(2:1)を混合して67Brix以上になるよう濃縮した後、95℃で1時間熱処理を通じて殺菌して紅参発酵物の濃縮液を製造した。
【0129】
実施例3:紅参発酵物のジンセノサイド分析
前記実施例2で製造した紅参発酵物に含まれたジンセノサイド成分の含量を測定するために、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC、Agilent)を利用した。その結果は、下記表2に示す。紅参抽出物、紅参発酵物、紅参発酵物の濃縮液それぞれのジンセノサイドの濃度は固形分72%基準比に換算した時の値で計算し、同一濃度(brix)の水準で比較した。
【0130】
【0131】
前記の表2に示すように、紅参発酵物のジンセノサイド分析の結果、(R)型ジンセノサイドRg3の含量は8.81mg/gであり、これは、発酵前の紅参抽出物比492%に増加した含量であることを確認した。また、ジンセノサイドRg3の2種類の異性体である(R)型と(S)型の含量比率を見た時、R/S値の場合、発酵前の紅参抽出物は60.27%であったが、紅参発酵物は77.08%で(S)型に比べて(R)型が選択的に増加したことを確認した。
【0132】
また、紅参発酵物の濃縮液のジンセノサイド分析の結果、(R)型ジンセノサイドRg3の含量は8.72mg/gであり、これは、発酵前の紅参抽出物比487%に増加した含量であることを確認した。また、ジンセノサイドRg3の2種類の異性体である(R)型と(S)型含量比率を見た時、R/S値の場合、発酵前の紅参抽出物は60.27%であったが、紅参発酵物の濃縮液は75.17%で(S)型に比べて(R)型が選択的に増加したことを確認した。
【0133】
これにより、本発明の新規な菌株は、メジャージンセノサイドを生物変換して総ジンセノサイド中のマイナージンセノサイド含量を増加させて生理活性を高めることができ、特にマイナージンセノサイドの中でも生理活性が高い特定マイナージンセノサイド(R)型ジンセノサイドRg3)の含量を選択的に増加させる優れた効能があることを確認し、よって、本発明の新規菌株を用いた紅参発酵物の製造方法を用いて、(R)型ジンセノサイドRg3の含量及び(R)型ジンセノサイドRg3/(S)型ジンセノサイドRg3値が選択的に増加した紅参発酵物を製造できることを確認した。
【0134】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0135】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)
受託番号: KCTC14533BP
受託日付: 20210412
【0136】