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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177325
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】血管プロテーゼ送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/954 20130101AFI20231206BHJP
【FI】
A61F2/954
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023089189
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】10 2022 113 756.2
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508053212
【氏名又は名称】ヨーテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】JOTEC GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】クライン,カーステン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA32
4C267AA42
4C267AA45
4C267AA51
4C267AA53
4C267AA55
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB12
4C267BB17
4C267BB40
4C267BB53
4C267CC09
4C267CC10
4C267GG05
4C267GG08
4C267GG24
4C267HH08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】管腔内プロテーゼを患者の体腔内、特に血管内に送達して血管の開存性を回復させるシステムを提供する。
【解決手段】システム1は、送達カテーテル20と、送達されるプロテーゼ10とを含み、さらに、プロテーゼの主内腔の少なくとも一部を通って延びるように予め装填されたプリロードワイヤー40を含み、該プリロードワイヤーは、プロテーゼの遠位開口部114に近接する位置まで遠位方向に延びるとともに、プロテーゼの近位開口部113から近位方向にカテーテルシャフト22に沿ってハンドル30まで延び、該ハンドルは、前記プリロードワイヤーの近位端を収容する少なくとも1つのスプール50を備え、該スプール上に前記プリロードワイヤーの近位部分が巻き付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔内プロテーゼの送達システムであって、
該システムが、送達カテーテルと、送達されるプロテーゼとを含み、
該送達カテーテルが、カテーテル先端と、カテーテルシャフトと、該プロテーゼを配置するためのハンドルとを含み、
前記プロテーゼが、側壁、近位開口部および遠位開口部を有する中空円筒状の本体と、両開口部の間に延びる主内腔とを含み、
前記システムが、プロテーゼの主内腔の少なくとも一部を通って延びるように予め装填されたプリロードワイヤーをさらに含み、該プリロードワイヤーが、プロテーゼの遠位開口部に近接する位置まで遠位方向に延びるとともに、プロテーゼの近位開口部の近位側では近位方向にカテーテルシャフトに沿ってハンドルまで延び、該ハンドルが、前記プリロードワイヤー(40)の近位端を収容する少なくとも1つのスプールを備え、該スプール上に前記プリロードワイヤーの近位部分が巻き付けられている、
システム。
【請求項2】
前記プロテーゼが、ステント、グラフト、ステントグラフトまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロテーゼが、その中空円筒状の本体の側壁に少なくとも1つの開窓を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロテーゼが、少なくとも1つの側枝を含み、該側枝が、側壁、近位開口部および遠位開口部を有する中空円筒状の側枝本体と、両開口部の間に延びる側枝内腔とを含み、該側枝内腔が、前記主内腔と流体連通している、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記プリロードワイヤーが、カテーテルの近位端にあるスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開窓を通ってプロテーゼの内腔に入り、該内腔を通ってプロテーゼの遠位端に近接する位置まで延びる、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記プリロードワイヤーが、カテーテルの近位端にあるスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、さらに側枝内腔に入って延びる、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記プリロードワイヤーが、カテーテルの近位端にあるスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、側枝内腔に入り、該側枝内腔を通ってプロテーゼの主内腔に入り、プロテーゼの遠位端に近接する位置まで延びる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロテーゼが4つの側枝を含み、各側枝が側枝内腔を有し、各側枝内腔が前記主内腔と流体連通しており、各側枝内腔がプリロードワイヤーを収容する、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記送達カテーテルが、ガイドワイヤーを収容するガイドワイヤー用内腔をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記スプールが、保持具を介してハンドルに取り付けられている、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記スプールおよび/または前記保持具が、前記ハンドルから取り外し可能である、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記スプールが、取り外し可能なコネクターによって前記保持具に取り付けられている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記管腔内プロテーゼが4つの側枝を含み、各側枝がプリロードワイヤーを収容し、前記ハンドルが4つのスプールを備え、各スプールがそれぞれ1本のプリロードワイヤーを収容する、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
2つのスプールが1つの保持具を介してハンドルに連結されており、各スプールを別々に操作することができる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ハンドルが、前記システムに収容されたプリロードワイヤー1本につき少なくとも1つのシールを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔内プロテーゼを患者の体腔内、特に血管内に送達して血管の開存性を回復させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、体腔内に管腔内プロテーゼを送達するシステムに関し、該システムは、送達カテーテルと、送達されるプロテーゼとを含み、該送達カテーテルは、カテーテル先端と、カテーテルシャフトと、該プロテーゼを配置するためのハンドルとを含み、前記プロテーゼは、中空円筒状の本体と、プロテーゼの主内腔の少なくとも一部を通って延びるように予め装填されたプリロードワイヤーとを含む。
【0003】
一般に、管腔内プロテーゼには、血管プロテーゼが含まれる。血管プロテーゼは、血管インプラントとも呼ばれ、動脈瘤、閉塞、病変や動脈の他の損傷を治療するために留置される。このような管腔内プロテーゼとしては、ステント、ステントグラフトまたはこれらの組み合わせが挙げられる。血管プロテーゼは、病変で妨げられた血管の開存性を回復させるために、管腔内技術により、適切な送達デバイスを用いて血管に導入される。
【0004】
さらにプリロードワイヤーを含む送達システムは、通常、プロテーゼが血管の標的部位に送達された後、損傷した動脈の治療プロセスの次の段階で、プロテーゼの所定の位置で別のアクセスが必要な場合に用いられる。したがって、例としては、分枝血管の病変や閉塞を治療するためのシステムや、胸腹部動脈の動脈瘤を治療するためのシステムが挙げられる。このような治療では、側枝血管への血流方向を確保するために、別の血管または側枝への追加のアクセスが必要となる。プロテーゼの留置手術時におけるこのような側枝へのアクセスは困難で時間がかかることが多いが、追加のワイヤー、いわゆるプリロードワイヤーをプロテーゼに予め装填しておくことにより、例えば、プロテーゼの開窓を通じて動脈の側枝への出口を確保することができる。
【0005】
例えば、EP2517671A1には、管状グラフト本体の側壁に分枝と開窓とを有し、さらに、該開窓と該分枝の内腔を通って延びるように予め装填されたプリロードワイヤーセグメントを有する管腔内プロテーゼを配置するためのシステムが開示されている。このシステムは、胸腹部大動脈の動脈瘤や病変を治療するために用いられる。このような治療では、血流を確保するために、大動脈主管と、大動脈から分岐した動脈、例えば腎動脈などとの接続を確立する必要がある。このような分枝の配置には、ガイドワイヤーと送達デバイスの挿入が必要であるが、複数の小さい分枝グラフトを配置する際に、グラフトの複数の開窓とそれに対応する分枝血管にカニュレーションを行うのは非常に複雑であるため、この操作は非常に時間がかかり困難であると考えられる。上記のプリロードワイヤーを使用すれば、時間のかかる開窓の探査を回避できるため、側枝への迅速なアクセスが可能となる。しかし、手術によっては、プリロードワイヤーは、体内を通るとともに、手術に必要な複数のガイドカテーテルを装填するため、非常に長いプリロードワイヤーが必要となり、これは当技術分野で開示されているシステムの大きな欠点である。このような長いワイヤーを使用する際は、その機能と無菌性を保つために手術に係わる人員の補充が必要である。さらに、EP2517671A1に開示されたシステムを使用する場合、複数個の側枝の半分については、ブリッジングステントをプロテーゼ本体内の血流に逆らって分枝の血流の方向に挿入する必要があるため、ピボット型開窓が必要である。あるいは、医師がすべての側枝を血流の方向に挿入できるようにするために、本体の側壁に追加の自己シール型開窓が必要である。しかし、いずれの要件も、手術の失敗のリスクを高めるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、管腔内プロテーゼの留置を効果的に安全かつ比較的短い時間で行うことができ、プロテーゼから側枝血管または分枝血管への内腔アクセスを提供することができる、管腔内プロテーゼの送達システムを提供することである。また、管腔内プロテーゼの留置を効果的に安全かつ比較的短い時間で行うことができれば、患者の放射線被曝の低減、造影剤の使用の低減、外傷性介入の低減にもつながる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明により、請求項1に記載の、患者の体腔内に管腔内プロテーゼを送達するシステムによって達成される。
【0008】
したがって、本発明は、管腔内プロテーゼの送達システムに関する。当該システムは、送達カテーテルと、送達されるプロテーゼとを含み、該送達カテーテルは、カテーテル先端と、カテーテルシャフトと、該プロテーゼを配置するためのハンドルとを含み、前記プロテーゼは、側壁、近位開口部および遠位開口部を有する中空円筒状の本体と、両開口部の間に延びる主内腔とを含み、前記システムは、プロテーゼの主内腔の少なくとも一部を通って延びるように予め装填されたプリロードワイヤーを含み、該プリロードワイヤーは、プロテーゼの遠位開口部に近接する位置まで遠位方向に延びるとともに、プロテーゼの近位開口部の近位側では近位方向にカテーテルシャフトに沿ってハンドルまで延び、該ハンドルは、前記プリロードワイヤーの近位端を収容する少なくとも1つのスプールを備え、該スプール上に前記プリロードワイヤーの近位部分が巻き付けられている。
【0009】
本明細書を通して、「近位」という用語は、一般に、位置、方向、または当該システムの構成要素の一部もしくは端部が、当該デバイスのハンドルまたは患者を治療する医師に近いことを意味する。これに対して、「遠位」という用語は、位置、方向、または当該システムの構成要素の一部もしくは端部が、当該デバイスのハンドルまたは患者を治療する医師から遠いもしくは遠ざかること、または最も遠いもしくは遠ざかることを意味する。
【0010】
プロテーゼ:
【0011】
送達される管腔内プロテーゼは、ステント、グラフト、ステントグラフト、弁またはこれらの任意の組み合わせである。一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、血管インプラントとも呼ばれる血管プロテーゼである。
【0012】
前記プロテーゼのステント部分は、金属、金属合金またはポリマー材料などの任意の適切な材料で作ることができる。例示的な材料としては、ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム合金、セラミックス、複合材料、生体吸収性ポリマー、生体安定性ポリマー、サーモトロピック液晶ポリマーなどが挙げられる。前記プロテーゼのステントは、当技術分野で知られている数多くの方法のうちのいずれかの方法により作製することができる。例えば、レーザー、放電ミリング加工、化学エッチングまたはその他の公知の技術を用いて機械加工された中空の管体または形成された管体からステントを作製することができる。また、前記ステントは、シートを丸めて作製した管状部材から作製することも可能であり、また、当技術分野で知られているように、トロイダルリング、ワイヤーまたはフィラメント構造から作製することも可能である。本発明の好ましい一実施形態において、本発明の医療デバイスは、金属ステントを含む。前記ステントは、分解性または非分解性のポリマーから作ることもできる。一般に、前記ステントは、バルーン拡張型であってもよく、自己拡張型であってもよい。好ましい一実施形態において、前記ステントは、例えばニチノールのような形状記憶合金で作られた自己拡張型ステントである。
【0013】
さらに好ましい一実施形態において、前記プロテーゼは、ステントグラフトであり、該ステントグラフトは、グラフト材で覆われた金属ステントであることが好ましい。適切なグラフト材としては、PTFE、延伸PTFE(ePTFE)、または例えば、Zeus Industrial Products社のBioweb(商標)などの、エレクトロスピニング法で作製されたPTFEが挙げられる。さらなる一実施形態において、前記ステントグラフトの膜は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)またはこれらの混合物から作られていてもよい。前記ステントグラフトの膜もしくはカバーまたはグラフト材は、ステント全体を覆っていてもよく、その一部のみを覆っていてもよい。さらに、グラフト材は、ステントの外側全体もしくは内側(内腔側とも呼ばれる)全体またはステントの外側と内側の全体を覆っていてもよく、これらの一部のみを覆っていてもよい。グラフト材をステントに固定する方法として、数多くの方法が当技術分野でよく知られているが、例えば、膜をステントに縫合または接着する方法、グラフト材をステント上で直接紡糸する方法、クランプとして機能するように構成されたステント支柱の間にグラフト材を固定する方法などが挙げられる。
【0014】
一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、その中空円筒状の本体の側壁に少なくとも1つの開窓を含む。本明細書において、「開窓」という用語は、プロテーゼの側壁に設けられた、プロテーゼの内部から外部まで貫通した開口部を意味する。前記開窓の形状は、円形、半円形、楕円形、長円形などの様々な形状であってもよい。
【0015】
別の実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、少なくとも1つの側枝を含み、該側枝は、側壁、近位開口部および遠位開口部を有する中空円筒状の側枝本体と、両開口部の間に延びる側枝内腔とを含み、該側枝内腔は、前記主内腔と流体連通している。
【0016】
一実施形態において、前記管腔内プロテーゼの前記少なくとも1つの側枝は、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁にある少なくとも1つの開窓から延び、該側枝は、第1の側枝開口部および第2の側枝開口部と、該第1の側枝開口部と該第2の側枝開口部の間に延びる側枝内腔とを有し、前記第1の側枝開口部は、プロテーゼの側壁の開窓の周囲と、プロテーゼ材上で強固に接続されている。
【0017】
本発明の別の実施形態において、前記管腔内プロテーゼの前記少なくとも1つの側枝は、プロテーゼの中空円筒状の本体と一体に形成されている。プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁と側枝の側壁は1枚の材料から作られている。この場合、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開口部は、該側壁を切開して作製された開窓ではなく、プロテーゼの二股形状による開口部である。このような二股に分かれたプロテーゼの例は、EP3920845A1に記載されている。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記側枝は、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開窓または開口部からプロテーゼの主内腔の外側に沿って血流方向に延びる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、前記側枝は、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開窓からプロテーゼの主内腔に入り、該主内腔内で血流方向に延びる。別の実施形態において、プロテーゼの中空円筒状の本体と側枝の側壁が1枚の材料から作られている場合、該側枝は、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開口部からプロテーゼの主内腔に入り、該主内腔内で血流方向に延びる。つまり、側枝は、プロテーゼ本体の内側の主内腔内へと折り込まれている。
【0020】
側枝がプロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開窓または開口部からプロテーゼの主内腔に入り、該主内腔内で血流方向に延びるこのような設計には、側枝の開口部が、主内腔の横断面内、すなわち、血流方向に対して横断する面内にあるという利点がある。したがって、ブリッジングステントがプロテーゼの側枝内腔内に容易に配置され、さらにプロテーゼから外向き血管の分枝に到達する。また、このコンセプトにより、側枝の断面を適切に選択することで、側枝血管に分かれる血液量が適切に確保される。
【0021】
さらなる一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、主内腔の側壁に複数の開窓、特に2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの開窓を含む。
【0022】
さらなる実施形態において、前記管腔内プロテーゼには、本体の開窓または開口部で分岐する側枝が本体内腔内、本体内腔外のいずれに設けられていてもよい。分岐を伴わない開窓、開窓もしくは開口部で分岐して本体内腔内に設けられた側枝、および開窓もしくは開口部で分岐して本体内腔外に設けられた側枝の任意の組み合わせが本発明に含まれる。
【0023】
本発明の特定の一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、4つの開窓、4つの側枝または4組の開窓と側枝を有する胸腹部動脈瘤の治療用のプロテーゼである。
【0024】
本発明の別の特定の実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、5つの開窓、5つの側枝または5組の開窓と側枝を有する胸腹部動脈瘤の治療用のプロテーゼである。
【0025】
さらに特定された本発明の一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、好ましくは、長手方向軸、近位開口部および遠位開口部を有する中空円筒状の本体と、該近位開口部と該遠位開口部の間に延びる主内腔とを含む自己拡張型の血管プロテーゼまたはステントグラフトであり、該本体は、第1の開口部を含む近位端部分と、第2の開口部を含む遠位端部分と、該近位端部分と該遠位端部分の間に位置する中間部分とを有し、前記血管プロテーゼまたは前記ステントグラフトは、少なくとも4つの側枝を含み、各側枝は、プロテーゼ材の開窓または開口部から主内腔に入り、該主内腔内で遠位方向に延び、各側枝は、第1の側枝開口部と、第2の側枝開口部と、該第1の側枝開口部と該第2の側枝開口部の間に延びる側枝内腔とを有し、該側枝内腔は前記主内腔と流体連通している。
【0026】
さらなる一実施形態において、前記側枝は、前記管腔内プロテーゼの中央部分に配置され、該中央部分の直径は、プロテーゼの両末端部分の直径より小さいか、該直径と等しい。
【0027】
本発明の別の実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、大動脈弓の病変の治療用のプロテーゼであり、1つ、2つもしくは3つの開窓もしくは側枝、または3組の開窓と側枝を有する管腔内プロテーゼである。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、腸骨動脈の病変の治療用のプロテーゼであり、1つの開窓または側枝を有する管腔内プロテーゼである。
【0029】
好ましい一実施形態において、前記プロテーゼは、好ましくは、自己拡張性材料、好ましくはニチノールなどの形状記憶材料で作られたステントリングと、それに取り付けられた膜とを含むステントグラフトであり、該膜は、好ましくはポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)またはこれらの混合物から選択される材料を含むか、該材料で作られた膜である。このようなプロテーゼに関するより詳細な内容は、例えば、US10952840B2に記載されており、その開示全体は、定義、免責、否認および矛盾を除き、参照により本明細書に援用される。
【0030】
プリロードワイヤー:
【0031】
プリロードワイヤーは、プロテーゼに沿って、目的の用途に適した任意の様式で配置されていてもよい。一実施形態において、前記プリロードワイヤーは、カテーテルの近位端のハンドルに設けられたスプールから、プロテーゼ本体の近位開口部と遠位開口部を通って、プロテーゼの遠位開口部に近接した位置まで延びる。
【0032】
第1の好ましい実施形態において、前記プリロードワイヤーは、カテーテルの近位端のハンドルに設けられたスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開窓を通ってプロテーゼの内腔に入り、該内腔を通ってプロテーゼの遠位開口部に近接する位置まで延びる。
【0033】
第2の好ましい実施形態において、前記プリロードワイヤーは、カテーテルの近位端のハンドルに設けられたスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の開窓と側枝内腔を通ってプロテーゼの主内腔に入り、該主内腔を通ってプロテーゼの遠位端に隣接する位置または遠位端より遠位の位置まで延びる。
【0034】
前記管腔内プロテーゼが複数の開窓または側枝を有する場合、各開窓または各側枝にプリロードワイヤーが設けられていてもいなくてもよいことに留意されたい。
【0035】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、少なくとも2つの開窓を有する。少なくとも1本のプリロードワイヤーは、カテーテルの近位端のハンドルに設けられたスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の第1の開窓を通って、プロテーゼ本体の内腔内で本体側壁の第2の開窓まで延び、該第2の開窓を通って、プロテーゼ本体の内腔の外側に沿って、プロテーゼの近位端より近位の、ハンドルに隣接する位置まで延びるという形でループを形成している。
【0036】
前記管腔内プロテーゼのさらなる一実施形態において、前記開窓の1つ以上には、側枝がプロテーゼの主内腔内、主内腔外のいずれに設けられていてもよく、また、プロテーゼが本体と一体に形成された側枝を有していてもよいことは、当業者であれば容易に理解できるであろう。これらの実施形態において、前記プリロードワイヤーは、側枝の内腔を通る。
【0037】
これらのさらなる実施形態のうちの一実施形態において、側枝がプロテーゼの主内腔内に位置する場合、プリロードワイヤーは、カテーテルの近位端のハンドルに設けられたスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の第1の開窓または開口部と第1の側枝の内腔を通ってプロテーゼの主内腔に入り、該主内腔内で第2の側枝の開口部の位置まで達したら、第2の側枝の内腔に沿ってプロテーゼの中空円筒状の本体の側壁の第2の開窓または開口部まで延び、該第2の開窓または開口部を通って、プロテーゼ本体の内腔の外側に沿って、プロテーゼの近位端より近位の、ハンドルに隣接する位置まで延びるという形でループを形成している。
【0038】
本発明の別の実施形態において、前記プロテーゼは、その中空円筒状の本体の側壁に少なくとも1つの開窓または側枝と補助開窓とを含む。前記補助開窓は、側枝動脈へのアクセスを可能にするものではなく、プリロードワイヤーをカテーテルの近位端のハンドルに設けられたスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔内の位置まで延在させるための小さな開窓である。プリロードワイヤーは、プロテーゼの主内腔の中空円筒状の本体の側壁にあるこの補助開窓を通り、プロテーゼの中空円筒状の本体の内腔の外側に沿ってプロテーゼ本体の側壁の開窓または側枝まで延び、該開窓または該側枝を通ってプロテーゼの中空円筒状の本体の主内腔に入り、プロテーゼの遠位端に隣接する位置または遠位端より遠位の位置まで延びる。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態において、前記プロテーゼは、その中空円筒状の本体の側壁にある2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の数の開窓または開口部から延びる2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の数の側枝を含み、それぞれの側枝は、プリロードワイヤーを収容する。好ましくは、各プリロードワイヤーは、カテーテルの近位端にあるスプールから、プロテーゼの近位領域の主内腔の外側の位置まで延び、側枝内腔に入り、さらにプロテーゼの主内腔に入り、該主内腔を通ってプロテーゼの遠位端より遠位の位置まで延びる。
【0040】
前記プリロードワイヤーは、高弾性で柔軟な弾力性のあるワイヤーであり、塑性変形せず、生体適合性があり、破断しにくい。前記プリロードワイヤーは、スプールに密に巻き付けることができるが、スプールから引き出すと直線形状に戻る。好適なワイヤーとしては、高弾性材料で作られたワイヤーが挙げられ、ニチノールを含む材料で作られたワイヤーが好ましい。また、プリロードワイヤーとして使用するのに適したワイヤーには、市場で入手可能なガイドワイヤーも含まれる。前記プリロードワイヤーは、ソリッドワイヤー、1つ以上の金属スプリングコイルでコアワイヤーが覆われているソリッドコアワイヤー、スプリングコイルでコアワイヤーとリボンワイヤーの両方が覆われているリボンワイヤー、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0041】
前記プリロードワイヤーによって治療対象の血管を傷つけないようにするために、ワイヤーの遠位先端は非外傷性かつ柔軟であることが求められる。好ましい一実施形態において、前記プリロードワイヤーの遠位先端は、研磨処理により、丸みを帯びた遠位端を有する円錐形状の先端である。
【0042】
好ましい一実施形態において、前記プリロードワイヤーの少なくとも遠位先端は、X線照射下で視認可能である。一実施形態において、ニチノール製のプリロードワイヤーの先端は、その周囲がタングステンなどの放射線不透過性材料で作られたワイヤーで覆われている。好ましい一実施形態において、前記プリロードワイヤーは、研磨処理されてタングステンコイルで覆われた遠位先端を有するソリッドニチノールワイヤーである。
【0043】
様々な状況において、実施される医療手術によっては、前記プリロードワイヤーを逆行性ワイヤーとして使用するために、前記プリロードワイヤーの遠位先端がラッソデバイスまたはスネアデバイスで捕捉される構成を有することが求められる。したがって、前記プリロードワイヤーの遠位先端は、容易に捕捉されると同時に、捕捉されても変形しないような構成を有する。
【0044】
カテーテルの特徴:
【0045】
上述したように、本発明による管腔内プロテーゼの送達システムは、送達カテーテルを含み、該送達カテーテルは、カテーテル先端、カテーテルシャフト、および該プロテーゼを配置するためのハンドルを含む。前記プロテーゼは、カテーテルシャフト上の、カテーテルの遠位端からすぐの近位部分に装填されている。前記プリロードワイヤーの遠位端は、プロテーゼの遠位開口部に近接する位置まで遠位方向に延びる。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態において、前記プリロードワイヤーは、カテーテルの遠位端のカテーテル先端内に取り外し可能な状態で捕捉されている。別の好ましい実施形態において、前記プリロードワイヤーの遠位端は、プロテーゼの主内腔内の遠位端に隣接する位置にあり、送達されるように構成されたプロテーゼの下に捕捉されている。
【0047】
操作中、プロテーゼが拡張されると、前記プリロードワイヤーの遠位端は、プロテーゼの本体の内腔内、側枝の内腔内、またはプロテーゼの遠位端より遠位の体腔内で緩く浮いた状態になり、プロテーゼの遠位部位または近位部位から内腔内に導入されたラッソデバイスまたはスネアデバイスにより捕捉される。次いで、プリロードワイヤーは引き出され、その遠位端が本体から遠位方向に引き出されることにより、このプリロードワイヤーは、ガイドカテーテルをプロテーゼの開窓または側枝を通して導入するためのガイドとして機能し、プロテーゼの側枝と分岐動脈の側枝との連結が可能になる。
【0048】
送達カテーテルは、ガイドワイヤーを収容するガイドワイヤー用内腔をさらに含んでいてもよい。ガイドワイヤー用内腔は、カテーテルの近位端から遠位端まで延びる「オーバーザワイヤー」型であるか、あるいは、カテーテルに装填されたプロテーゼより近位であって、カテーテルの近位端より遠位である位置からカテーテルの遠位端に延びる「ラピッドエクスチェンジ」型であり、いずれも当技術分野でよく知られている。
【0049】
カテーテルの近位端には、プリロードワイヤー用のスプールを備えたハンドルが取り付けられている。
【0050】
ハンドル/スプールの特徴:
【0051】
ハンドルは、プリロードワイヤーの近位端を収容するスプールを備えている。プリロードワイヤーの近位部分は、スプール上に巻き付けられている。プリロードワイヤーは、カテーテルの近位端にあるスプールからハンドル内を通り、カテーテルシャフトに沿ってプロテーゼまで延びる。ハンドルには、プリロードワイヤーが通るカテーテルシステムへの入口を密封するための適切なシールが設けられている。
【0052】
前記管腔内プロテーゼの配置中に当該システムや血管から血液が漏出しないように、ハンドルは、プリロードワイヤーが通る当該システムからスプールへの出口を液密封止する少なくとも1つのシールを含む。本発明の好ましい一実施形態において、前記シールは、プリロードワイヤーの外周を封止するシールリングまたはシールディスクである。本発明の別の実施形態において、前記シールは、リップシールまたはダックビルシールである。より好ましい一実施形態において、前記ハンドルは、直列に配置された2つのシールを含む。第1のシールは、上述したリングシールであり、プリロードワイヤーが通るハンドルおよび/または当該システムからの出口を封止する。第2のシールは、リップシールまたはダックビルシールである。ハンドルの内側にあるこの第2のシールにより、プリロードワイヤーが当該システムから完全に抜去されると、当該システムが封止される。リングシールとリップシールの組み合わせにより、管腔内プロテーゼの留置手術のすべての段階で当該システムの液密閉鎖が保証される。このような二重シールは、プリロードワイヤーが通る当該システムまたはハンドルからの各出口に設けられている。
【0053】
好ましい一実施形態において、プリロードワイヤーの近位端は、プリロードワイヤーがスプールの凹部に嵌め込まれた状態で、スプールに取り外し可能に固定されている。しかし、プリロードワイヤーの近位端が、接着、溶接または摩擦嵌めなどの任意の適切な方法でスプールに固定されていてもよいことは、当業者には容易に理解されるであろう。
【0054】
スプールは、ハンドルに連結されている。一実施形態において、前記スプールは、保持具を介してハンドルに取り付けられている。好ましい一実施形態において、前記スプールは、ハンドルに取り外し可能に取り付けられている。さらに好ましい一実施形態において、前記スプールは、取り外し可能なコネクターによってハンドルに取り付けられている。別の実施形態において、前記スプールは、ハンドルに取り付けられた保持具を介して、取り外し可能なコネクターによってハンドルに取り付けられている。
【0055】
スプールおよび/または保持具がハンドルに取り外し可能に固定されていることで、スプールはハンドルから取り外すことができる。このような取り外し可能な固定は、以下に限定されないが、例えば、バヨネットロック、クリッククロージャまたはロッキングボタンなどの、当技術分野で知られている任意の適切な方式により実現可能である。
【0056】
これは、送達デバイスの取り扱いが容易となる点で有利である。つまり、プリロードワイヤーを含むスプールは、プリロードワイヤーがシステムから抜去されるか、手術で不要になった時点で取り外すことができる。こうすることで、当該システム全体がかさばらず、取り扱いやすくなる。また、スプールを取り外すことで、2人の医師が同時にスプールとハンドルの作業を行うことができる。
【0057】
スプールは、プリロードワイヤーを巻き取ることができれば、任意の適切な方法により構成されたものであってもよい。好ましい一実施形態において、前記スプールは、プリロードワイヤーを適切に巻き取ることができるように取り外し可能な蓋を含む。スプールでプリロードワイヤーを巻き取ることで、プリロードワイヤーの取り扱いが容易になる。カテーテルの遠位先端から解放されたプリロードワイヤーの遠位端は、スプールから引き出され、カテーテルの遠位端よりさらに遠位の方向に引っ張られてスネアデバイスに捕捉され、プリロードワイヤーの遠位端部分から管腔内プロテーゼの所望の治療部位に隣接する位置へとガイドカテーテルを誘導することが可能になる。一方、プリロードワイヤーをスプール上に巻き付けて所望の治療部位から後退させることも可能であり、またスプール上に完全に巻き付けて血管から完全に抜去することも可能である。
【0058】
2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の数の開窓または側枝を含むプロテーゼを含むシステムでは、各開窓または各側枝にそれぞれプリロードワイヤーを設けることができる。各プリロードワイヤーは、プロテーゼの遠位開口部に近接した位置から、カテーテルの近位端のハンドルに取り付けられたスプールまで延びる。一実施形態において、各スプールは、固定保持具を介して、あるいは保持具と取り外し可能なスプールコネクターを介して、それぞれ別々にハンドルに固定されている。
【0059】
別の実施形態において、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の数のスプールが並列に配置され、これらがすべて、1つの固定保持具を介してまたは1つの保持具と取り外し可能なスプールコネクターを介してハンドルに取り付けられている。複数のスプールが並列して使用される場合、各スプールは独立して可動する。本発明の好ましい一実施形態において、隣接するスプールは、それぞれ反対の巻取方向に動作し、プリロードワイヤー同士が十分な距離を保ってハンドルに配置されているため、各スプールを個別に簡単かつ好都合に操作できる。
【0060】
好ましい一実施形態において、前記管腔内プロテーゼは、胸腹部大動脈瘤の修復用のプロテーゼであり、その中空円筒状の本体の側壁にある4つの開窓から本体の内腔に入って延びる4つの側枝を含む。各側枝は、プリロードワイヤーを収容する。送達デバイスのハンドルは、4つのスプールを備え、各スプールはそれぞれ1本のプリロードワイヤーを収容する。各プリロードワイヤーは、その近位部分が巻き付けられているスプールからハンドル内を通り、カテーテルシャフトに沿って、さらに管腔内プロテーゼの主内腔の外側に沿ってプロテーゼ本体の側壁の1つの開窓または開口部まで延び、該開窓から入って側枝の内腔を通り、プロテーゼの主内腔の遠位開口部に近接する位置まで延びる。
【0061】
より好ましい一実施形態において、2組の2つのスプールがそれぞれ1つの保持具を介してハンドルに連結されており、2組の2つのスプールのそれぞれを別々に操作することができる。さらに好ましい一実施形態において、1つの保持具を介してハンドルに連結された2つのスプールは、それぞれ反対の巻取方向に動作する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本発明の例示的な実施形態が図面に示されており、以下、それらを参照しながらより詳細に説明する。
【0063】
図1】本発明によるシステムを示した図である。
【0064】
図2】本発明によるプリロードワイヤーが設けられた管腔内プロテーゼを示した図である。
【0065】
図3】プリロードワイヤーを巻き付けるためのスプールを含む、本発明による送達デバイスのハンドルの一部の概略図である。
【0066】
図4】プリロードワイヤーを巻き付けるためのスプールを含む、本発明の別の実施形態による送達デバイスのハンドルの一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、本発明のシステム(1)の例示的な一実施形態を示す。管腔内プロテーゼの送達システム(1)は、送達カテーテル(20)と、送達されるプロテーゼ(10)とを含む。送達カテーテル(20)は、カテーテル先端(21)と、カテーテルシャフト(22)と、前記プロテーゼを配置するためのハンドル(30)とを含む。任意選択で、前記カテーテルは、ガイドワイヤー(図示せず)を収容するガイドワイヤー用内腔(23)をさらに含んでいてもよい。カテーテル先端(21)の近位であって、カテーテルシャフト(22)の遠位領域に装填されているプロテーゼは、側壁(112)、近位開口部(113)および遠位開口部(114)を有する中空円筒状の本体(11)と、両開口部の間に延びる主内腔(115)とを含む。前記システム(1)は、プロテーゼ(10)の主内腔(115)の少なくとも一部を通って延びるように予め装填されたプリロードワイヤー(40)をさらに含み、該プリロードワイヤーは、プロテーゼ(10)の遠位開口部(114)に近接する位置まで遠位方向に延びるとともに、プロテーゼの近位開口部(113)の近位側ではカテーテルシャフト(22)に沿ってハンドル(30)まで延びる。前記ハンドル(30)は、プリロードワイヤーの近位端(441)を収容する少なくとも1つのスプール(50)を備える。プリロードワイヤー(40)の近位部分は、スプール(50)上に巻き付けられている。
【0068】
図1では、プリロードワイヤー(40)の遠位端は、プロテーゼ(10)の遠位開口部(114)に隣接した位置にあるが、別の実施形態において、プリロードワイヤー(40)の遠位端は、カテーテル先端(21)部内で取り外し可能な状態で捕捉されていてもよい。
【0069】
上述したように、前記プロテーゼは、ベアステント、グラフト、ステントグラフトまたはこれらの任意の組み合わせであってもよい。図1に示すプロテーゼ(10)は、その中空円筒状の本体(11)の側壁(112)に1つの開窓(60)を含む。図1に示すように、プリロードワイヤー(40)は、カテーテル(28)の近位端にあるスプール(50)から、プロテーゼの近位領域の主内腔(115)の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体(11)の側壁(112)にある開窓(60)を通ってプロテーゼの内腔(115)に入り、該内腔(115)を通ってプロテーゼ(114)の遠位端に隣接する位置まで延びる。
【0070】
一般に、前記プロテーゼは、開窓を含む必要はない。しかし、前記プロテーゼが少なくとも1つの開窓を含むことは好ましい。あるいは、または、さらに、前記プロテーゼは、その中空円筒状の本体(11)の側壁(112)にある開窓(60)から延びる側枝(70)を含んでいてもよく、該側枝(70)は、第1の側枝開口部(771)と、第2の側枝開口部(772)と、第1の側枝開口部(771)と第2の側枝開口部(772)の間に延びる側枝内腔(773)とを有し、第1の側枝開口部(771)は、プロテーゼの中空円筒状の本体(11)の側壁(112)の開窓(60)の周囲と、プロテーゼ材上で強固に接続されている。このような側枝(70)は、プロテーゼの中空円筒状の本体(11)の側壁にある開窓(60)から主内腔(115)に入り、該主内腔内で遠位方向に延在していてもよい。後者の場合、プリロードワイヤー(40)は、カテーテル(28)の近位端にあるスプール(50)から、プロテーゼ(10)の近位領域の主内腔(115)の外側の位置まで延び、プロテーゼの中空円筒状の本体(11)の側壁の開窓(60)と側枝内腔(773)を通ってプロテーゼの主内腔(115)に入り、このプロテーゼ本体(11)の内腔(115)を通ってプロテーゼ(114)の遠位端より遠位の位置まで延びる。
【0071】
別の実施形態において、前記プロテーゼは、その中空円筒状の本体(11)の側壁(112)にある4つの開窓(60a、b、c、d)から延びる4つの側枝(70a、b、c、d)を含み、各側枝は、プリロードワイヤー(40a、b、c、d)を収容する。
【0072】
本発明で使用される管腔内プロテーゼ(10)の一実施形態の概略図を図2に示す。一般に、プロテーゼは、カテーテルへの装填時は、送達されるように圧縮された形態を有し、体内への留置後は拡張した形態を有するものであることは理解されるであろう。図2では、拡張形態のプロテーゼが描かれている。
【0073】
このプロテーゼは、胸腹部大動脈瘤の修復用に設計されたものである。このプロテーゼの本体(11)は、3つの部分、すなわち、近位部分(P)と、遠位部分(D)と、これらの間にある中間部分(M)とを有し、中間部分(M)の直径は、遠位部分(D)の直径と近位部分(P)の直径より小さい。前記プロテーゼ(10)は、その中空円筒状の本体(11)の側壁(112)の中央部分(M)にある4つの開窓(60a、b、c、d)から本体の内腔(115)に入って延びる4つの側枝(70a、b、c、d)を含む。各側枝(70a、b、c、d)は、プリロードワイヤー(40a、b、c、d)を収容する。送達デバイス(図示せず)のハンドル(30)は、4つのスプール(50a、b、c、d)(図示せず)を備え、各スプールはそれぞれ1本のプリロードワイヤー(40)を収容する。各プリロードワイヤー(40a、b、c、d)は、プリロードワイヤー(40)の近位部分が巻き付けられているスプール(50)からハンドル(30)内を通り、カテーテルシャフト(22)に沿って、さらに管腔内プロテーゼ(10)の主内腔(115)の外側に沿ってプロテーゼの中空円筒状の本体の側壁(112)の1つの開窓(60a、b、c、d)まで延び、該開窓(60a、b、c、d)から入って側枝の内腔(773a、b、c、d)を通り、プロテーゼ(10)の主内腔(115)内で主内腔(115)の遠位開口部(114)に隣接する位置まで延びる。
【0074】
本発明による胸腹部大動脈瘤の修復用システムには、従来技術と比較していくつかの利点がある。第1に、好ましくは自己拡張型である本発明のプロテーゼは、胸腹部動脈瘤を首尾よくブリッジングできると同時に、分岐した側枝血管への送血が確実に実施される血管プロテーゼシステムである。これは、血管プロテーゼの主内腔の内部に配置されたさらなる接続ステント/接続ステントグラフトを接続することによって達成される。側枝/分枝が内向きに分岐していることにより、血管プロテーゼの開放時に血管内に血管プロテーゼのための十分なスペースが確保され、同時に分枝/側枝の機能も維持される。内向きに分岐した側枝は、分岐した側枝血管用の接続ステント/接続ステントグラフトとの重複ゾーンが長くなるという利点を有する。また、このシステムは、側枝が主内腔に向かって内向きに分岐するという特定の構成により、高い柔軟性を有しているため、側枝の特定の配置および寸法を考慮して、治療される患者ごとに特別なプロテーゼをその都度作製する必要がなく、多くの患者に対して事前に作製することができる。
【0075】
さらに、プリロードワイヤーにより、分枝または分岐した側枝血管に比較的簡単かつ迅速にアクセスすることができる。各側枝がそれぞれプリロードワイヤーを備えていることで、時間のかかる開窓の探査を回避できるため、側枝への迅速なアクセスが可能になる。また、分枝へのアクセスは各側枝の血流方向であるため、ブリッジングステントをスムーズに配置することができ、血管の分枝への血流を再開する際の失敗のリスクが軽減される。
【0076】
図3および図4に、ハンドル(30)の一部と、保持具(51)を介してハンドル(30)に取り付けられたスプール構造(57)の2つの例示的な実施形態を示す。スプール構造(57)は、1つのシングルスプール(50)であってもよく、図3に示すように平行に配置された2つのスプール(50a、50b)を含んでいてもよい。スプール(50)および/または保持具(51)は、ハンドルに固定されている。図3では、スプール(50)および/または保持具(51)は、スプールの保持具(51)を収容するための、ハンドル(30)内のガジェット(552)に強固に固定されている。保持具は、任意の公知の適切な手段、例えば、接着により、あるいは任意の機械的な接続手段、例えばスナップ止めまたはネジ止めによりハンドルに固定することができる。図3に示すハンドル(30)は、平行に配置された2つのスプールを2組収容できるように設計されている。図3では、1つの保持具(51)を介してハンドル(30)に連結された2つのスプール(50a、50b)が示されているが、図中のハンドル(30)には、第3のスプールまたは1組の2つのスプールを収容するための第2のガジェット(552)がさらに設けられている。図3に示すように、2つのスプール(50a、50b)が1つの保持具(51)を介してハンドル(30)に連結されており、各スプール(50a、50b)を別々に操作することができる。ハンドル(30)は、4つのスプールを収容することができるように示されているが、ハンドル(30)が1つのシングルスプール、2つのシングルスプール、1つのダブルスプール(すなわち、1組の2つのスプール)と1つのシングルスプール、または2つのダブルスプールを保持するように容易に設計できることは当業者には明らかである。
【0077】
別の実施形態(図示せず)において、各保持具は、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の数のスプールを平行に配置して保持することができ、各スプールは、独立で操作することができる。
【0078】
本発明のより好ましい一実施形態において、1つの保持具を介して保持されている複数のスプールは、平行に配置されているが、互いに反対方向に動作する。つまり、第1のスプールは、第1のプリロードワイヤーを第1の巻取方向に巻き取り、隣接する第2のスプールは、第2のプリロードワイヤーを第1の巻取方向とは反対の第2の巻取方向に巻き取る。このように巻取方向が反対であることで、2本のプリロードワイヤーが対向する位置にあるため、それぞれのプリロードワイヤーを容易かつ簡便に取り扱うことができる。
【0079】
各スプール(50)はそれぞれ1本のプリロードワイヤー(40)を収容する。プリロードワイヤーの近位端(441)は、プリロードワイヤーがスプールの凹部(図示せず)に嵌め込まれた状態で、スプールに取り外し可能に固定されていてもよい。プリロードワイヤー(40)の近位部分は、スプール(50)上に巻き付けられている。図から分かるように、プリロードワイヤー(40a、40b)は、シール(80)が設けられたハンドル(30)内に入り、カテーテルに沿ってプロテーゼ(図示せず)まで延びる。
【0080】
スプール(50)は、プリロードワイヤー(40)がスプール(50)上に巻き付けられた状態で保たれるように、取り外し可能な蓋(55)で覆われている。操作中、プリロードワイヤー(40)の遠位端の必要性に応じて、プリロードワイヤー(40)をスプール(50)上に巻き取ることも、スプール(50)から引き出すこともできる。プリロードワイヤー(40)がスプール(50)に巻き付けられていることで、システム全体が非常にコンパクトになり、取り扱いやすくなる。また、留置手術中に長いワイヤーを取り扱わずに済み、無菌状態に保つことができる。また、スプールは、ハンドル(30)から取り外すことができ、カテーテルとプリロードワイヤー(40)を別々に操作することができる。さらに、プリロードワイヤー(40)が必要でなくなった場合には、プリロードワイヤーを完全に引き上げる(巻き取る)ことができ、プリロードワイヤーが巻き付けられたスプールごと、ハンドルから取り外すことができる。
【0081】
図4に、図3に示した実施形態と同様に、ハンドル(30)の一部と、保持具(51)を介してハンドル(30)に取り付けられたスプール構造(57)とを示す。ただし、図4に示すスプール構造(57)は、保持具と取り外し可能なスプールコネクター(52)を介してハンドルに取り付けられている。図3の実施形態と同様であるが、スプール構造(57)は、1つのシングルスプール(50)であってもよく、図3のように平行に配置された2つのスプール(50a、50b)を含んでいてもよい。上述した通り、スプール構造は、平行に配置された3つ、4つ、5つまたはそれ以上の数のスプールを含んでいてもよい。
【0082】
図から分かるように、図4に示す2つのスプール(50a、50b)の巻取方向が反対であることから、プリロードガイドワイヤー(40a、40b)は、保持具の両側を通るため、血管内プロテーゼの留置プロセス中に片方のプリロードワイヤーのみの取り扱い、巻き取りや引き出しを容易に行うことができる。
【0083】
図4に示す実施形態において、取り外し可能なスプールコネクター(52)は、スプリングボタン(58)を含むクリッククロージャを介してスプールアセンブリ(57)をハンドルから取り外すことができるように構成されている。別の実施形態において、取り外し可能なコネクターは、以下に限定されないが、例えば、バヨネットロックまたはクリッククロージャなどの当技術分野で公知の適切な方式で具現化される。
【0084】
本明細書では、開示された主題について、特定の実施形態を挙げて説明がなされているが、当業者は、開示された主題に対して、その範囲から逸脱することなく、様々な変更および改良を加えることができることは理解できるであろう。さらに、開示された主題の1つの実施形態の個々の特徴について、その実施形態(他の実施形態ではない)で説明がなされたり、その実施形態に対応する図面に示されたりすることがあるが、これらの個々の特徴を、別の実施形態の1つ以上の特徴または他の複数の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせることができることは明らかであろう。
【0085】
また、開示された主題は、図面および特許請求の範囲に記載された様々な実施形態に限らず、以下の特許請求の範囲に記載された従属的特徴と上記で開示された特徴との任意の他の可能な組み合わせを有する他の実施形態にも関する。このように、従属請求項に記載され、上記で開示された個々の特徴は、開示された主題の範囲内であれば、別の方法で互いに組み合わせることができることから、開示された主題は、任意の他の可能な組み合わせを有する他の実施形態にも関することは理解されるであろう。したがって、開示された主題の特定の実施形態に関する上記の記載は、例示および説明の目的で提示されたものである。上記の記載は、網羅的であること、または開示された主題を開示された実施形態に限定することを意図するものではない。
【0086】
上述の特定の実施形態の多くの変更物、変形物および等価物が存在することは、当業者には明らかであろう。この開示された主題の範囲は、以下の特許請求の範囲だけでなく、当技術分野に精通した実務者にとって明らかな変更物、変形物および等価物によっても定義される。したがって、開示された主題には、添付の特許請求の範囲内の変更物および変形物ならびにその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0087】
システム(1)
管腔内プロテーゼ(10)
送達カテーテル(20)
カテーテル先端(21)
カテーテルシャフト(22)
カテーテルの近位端(28)
ハンドル(30)
中空円筒状の本体(11)
中空円筒状の本体の側壁(112)
近位開口部(113)
遠位開口部(114)
主内腔(115)
プリロードワイヤー(40)
スプール(50)
スプール構造(57)
プリロードワイヤー(40)の近位端(441)
開窓(60)
側枝(70)
第1の側枝開口部(771)
第2の側枝開口部(772)
側枝内腔(773)
ガイドワイヤー用内腔(23)
スプール保持具(51)
取り外し可能なスプールコネクター(52)
取り外し可能な蓋(55)
スプリングボタン(58)
スプール受入用ガジェット(552)
シール(80)
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】