(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177328
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】チェーンシステムのNVH性能に影響するパターンを有するテンショナガイド又はアームの表面
(51)【国際特許分類】
F16H 7/08 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
F16H7/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023089336
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】17/828,418
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】クランプ、マシュー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ルーン、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ティモシー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】グッドセル、ジョセフ ピー.
【テーマコード(参考)】
3J049
【Fターム(参考)】
3J049AA08
3J049BB02
3J049BB15
3J049BB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チェーンシステム内の騒音、振動、及びハーシュネスを低減する方法を提供する。
【解決手段】テンショナアーム、ガイド又は緩衝器のチェーンとの接触面に施されたパターンは、チェーンリンクの背面とテンショナアーム、ガイド又は緩衝器の表面との間のチェーン接触力を意図的に破壊する。これは、チェーンシステム内のNVHの原因となるチェーン関連次数とのアラインメントを防ぐために、又はチェーン関連次数を不明瞭にするために全体的なNVHを増加させるために行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンシステム内の騒音、振動、及びハーシュネスを低減する方法であって、
前記チェーンシステム内で騒音、振動、及びハーシュネスが発生するチェーン関連次数を決定するステップと、
増加を避けるべきチェーン関連次数を決定するステップと、
ある幅を有するスペーサによって分離された複数の溝を含むテンショナ、ガイド又は緩衝器の表面に施すもので、前記複数の溝及び前記スペーサが、前記表面の第1及び第2縁部に対して角度をなしているパターンを作製するステップであって、前記パターンは、前記テンショナ、前記ガイド又は前記緩衝器の表面が、回避すべきチェーン関連次数ではなく、少なくとも1つのチェーン次数の前記チェーンシステムのチェーンに係合するように、ピッチの倍数及び整数又はピッチの倍数及び整数分の1に等しくないパターン係合寸法を含むステップと、
前記テンショナ、前記ガイド、又は前記緩衝器の表面に前記パターンを施すステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記角度は、90度以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スペーサの幅は、前記パターン内で一定である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スペーサの幅は、前記パターン内で変化している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溝は、前記テンショナ、前記ガイド、又は前記緩衝器の前記表面を径方向に貫通する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溝は、前記テンショナ、前記ガイド、又は緩衝器の前記表面を軸方向に延びている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溝は、それぞれ軸方向チェーンパスを形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
チェーンシステム内のチェーンを緊張するためのテンショナアームであって、
前記チェーンシステムを収納するドライブトレイントランスファケースに取り付けられ、取り付けブラケットから垂直に延びるピボット軸を有する取り付けブラケットと、
第1端部と、第2端部と、第1表面と、前記第1表面に対向する第2表面とを有する本体を含み、前記第2表面は、前記第1端部から前記第2端部まで、チェーン摺動面と、非係合面と、前記ピボット軸を回転可能に受け入れるための孔を画定するボス部とを含み、前記第2表面は、第1縁部と第2縁部とによってさらに画定される、アームと、
前記第2表面の前記チェーン摺動面に施され、記本体の前記第2表面の前記第1縁部及び前記第2縁部に対して角度をなしている複数の溝及びスペーサを含むパターンであって、前記パターンは、前記パターンは、前記テンショナ、前記ガイド又は前記緩衝器の表面が、回避すべきチェーン関連次数ではなく、少なくとも1つのチェーン次数の前記チェーンシステムのチェーンに係合するように、ピッチの倍数及び整数又はピッチの倍数及び整数分の1に等しくないパターン係合寸法を含む、パターンと、
前記非係合面に隣接して前記取付けブラケットと前記ボス部との間に取り付けられ、前記ピボット軸におけるアームを前記チェーンのストランドに向けて付勢するトーションスプリングと、を含む、テンショナアーム。
【請求項9】
前記溝は、軸方向であり、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記チェーン摺動面を通って延びている、請求項8に記載のテンショナアーム。
【請求項10】
前記溝は、それぞれ軸方向チェーンパスを形成する、請求項9に記載のテンショナアーム。
【請求項11】
前記角度は90度以下である、請求項8に記載のテンショナアーム。
【請求項12】
前記スペーサの幅は、前記パターン内で一定である、請求項8に記載のテンショナアーム。
【請求項13】
前記スペーサの幅は、前記パターン内で変化している、請求項8に記載のテンショナアーム。
【請求項14】
前記取り付けブラケットから垂直に延びる軸をさらに含み、前記軸は前記ピボット軸と平行である、請求項8に記載のテンショナアーム。
【請求項15】
前記トーションスプリングの前記第1端部は、前記軸に取り付けられ、前記トーションスプリングの前記第2端部は、前記ブラケットに取り付けられている、請求項14に記載のテンショナアーム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、テンショナアーム、ガイド又は緩衝器の表面に関し、より具体的には、チェーンシステムの騒音、振動、ハーシュネス(NVH)に影響を与えるためにテンショナアーム、ガイド又は緩衝器の表面に適用される独特のパターンに関する。
【0002】
チェーン又は歯付きベルト駆動は振動により励振される。例えば、エンジンのクランク軸とカム軸との間で、チェーン又は歯付きベルト駆動を使用することができる。振動励振は、クランク軸のねじり振動及び/又は動弁機構及び/又は燃料ポンプからの変動トルク負荷であってもよい。
【0003】
チェーンの適用では、タイミング又はドライブシステムのいずれであっても、チェーンの動きを制御するために、チェーンの背面がテンショナガイド、アーム、又は緩衝器の表面に接触する必要がある場合がある。チェーンと表面との間の接触は、NVHを増加させ、チェーンシステムの知覚性能を低下させる係合騒音をもたらすことがある。特に、チェーン-表面接触力は、ピッチ周波数などのチェーン関連次数と一致することができ、追加の励振及び許容できない性能をもたらす。軸の1回転当たりのイベント数に関する次数は、単位時間当たりのイベント数である。
【0004】
チェーンシステムのNVHは、通常、チェーンの各リンクとスプロケット及びテンショナとの係合に関連する騒音であるピッチ次数と、ガイド列内のリンクから非ガイド列内のリンクへの係合の違い、又はチェーンのリンク歯の側面に沿った遷移の結果として、半ピッチ及び2倍ピッチ次数で発生する係合の違いと、によって引き起こされる。ピッチ次数は、駆動スプロケットの歯の数に等しい。したがって、駆動スプロケットの歯数が40であれば、スプロケットの回転数は40th次数に等しくなり、ピッチ次数と呼ばれる。周波数(Hz)は、(次数番号×rpm)/60と表すことができる。
【0005】
図1は、従来のチェーンシステム1を示している。チェーンシステム1は、駆動スプロケット2に歯付きチェーン8を介して連結された従動スプロケット6を備えている。歯付きチェーン8は、結合要素7により互いに結合された複数のチェーンリンク5を有する。チェーンリンク5の歯3は、歯従動スプロケット6と駆動スプロケット2とに係合している。第1テンショナ10は、チェーン8の第1ストランド8aに隣接して存在し、第1ストランド8aの張力を維持し、第2テンショナ12は、チェーン8の第2ストランド8bに隣接して存在し、第2ストランド8bの張力を維持する。チェーンストランド8a、8bの特定領域において、チェーンリンク5の背面の第1及び第2テンショナ10、12が付勢接触して、チェーンストランド8a、8bを互いに付勢することにより、張力が維持される。
【0006】
図2は、従来の第1テンショナ10又は第2テンショナ12の一例を示している。テンショナ10、12は、そこから垂直に延びるピボット軸64を有する取り付けブラケット62を有する。ピボット軸64と平行にストッパ69付き軸65が設けられている。ピボット軸64は、アーム68を受け入れる。アーム68は、好ましくは、第1端部68aと、第2端部68bと、第1端部68aと第2端部68bとの間で本体の大部分を延在する滑らかなチェーン摺動面74とを有する一体型本体78を有し、摺動面はチェーンストランド8a又はチェーンストランド8bと相互作用する。より具体的には、チェーン摺動面74は、歯3に対向するチェーンリンク5の背面9と相互作用する。本体78の第1端部68aは、ピボット軸64を受け入れるための孔(図示せず)を有する。
【0007】
トーションスプリング66は、取り付けブラケット62の間に存在し、アーム68を一方向に付勢するためのものである。スプリング66の第1端68aは取り付けブラケット62に対して接地され、スプリング66の第2端66bはアーム68に接触して付勢力を与える。
【0008】
他の従来技術は、チェーン摺動面にオイルを供給してチェーンとテンショナの表面との間の摩擦を低減するか、チェーンがチェーン摺動面に沿って摺動する間にチェーンを案内するためのディンプル又はスリットを含む。従来技術は、チェーンの背面とのアラインメントを積極的に制御して、特定のチェーン関連次数での係合を減少させてNVHを減少させたり、全体的な騒音を増加させて、NVHを増加させるチェーン関連次数を不明瞭にしたりするパターンを構成していない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、チェーンの背面とテンショナアーム、ガイド、又は緩衝器の表面との間のチェーン接触力を意図的に破壊し、チェーンシステム内のNVHの原因となるチェーン関連次数のアラインメントを防ぐために、テンショナアーム、ガイド、又は緩衝器の表面に特殊なパターンが施される。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、テンショナアーム、ガイド、又は緩衝器の表面に施されたパターンは、騒音振幅の小さい非チェーン関連次数を意図的に励振するように施され、それにより、全体的な騒音レベルが増加して、著しいNVHを引き起こす次数を隠蔽又は不明瞭にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】テンショナアーム、ガイド又は緩衝器の張力面と表面的に相互作用するチェーン駆動システムの概略図を示す。
【
図2】チェーン駆動システム用の従来のテンショナアームの図を示す。
【
図3】直線溝を含むパターンを有する張力面を有するテンショナアームの等角図を示す。
【
図4】直線溝を含むパターンを有する張力面を有するテンショナアームの上面図を示す。
【
図5】斜め溝を含むパターンを有する張力面を有するテンショナアームの等角図を示す。
【
図6】斜め溝を含むパターンを有する張力面を有するテンショナアームの上面図を示す。
【
図7】異なる軸方向チェーンパスを有するテンショナアームの斜視図を示す。
【
図8】テンショナのトルク量に対するテンショナの表面の幾何学的形状の半ピッチ周波数NVHメトリックのグラフを示す。
【
図9】テンショナのトルク量に対するテンショナの表面の幾何学的形状のピッチ周波数NVHメトリックのグラフを示す。
【
図10】テンショナのトルク量に対するテンショナの表面の幾何学的形状の2倍ピッチ周波数NVHメトリックのグラフを示す。
【
図11】可変間隔を含むパターンを有するテンショナアームの斜視図を示す。
【
図12】可変間隔を含むパターンを有するテンショナアームの上面図を示す。
【
図13】可変間隔及び斜め溝を含むパターンを有するテンショナアームの上面図を示す。
【
図14】NVHを変更するためにテンショナアーム、ガイド、又は緩衝器の表面に独特のパターンを施す方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図3~
図4は、直線溝180を含むパターンを有するテンショナアーム120を示している。テンショナアーム120は、チェーンストランド8a、8bの一方又は両方に隣接して存在する。各テンショナアーム120は、ブラケット162を有し、ブラケット162はボルト孔163を介してドライブトレインケース(図示せず)に連結されている。取り付けブラケット162からは、軸165とピボット軸164とが垂直に延びている。軸165は、ピボット軸164に平行である。ピボット軸164は、第1端部178aと、第2端部178bと、第1表面188と、第1表面181に対向する第2表面183とを有する本体178で形成されたアーム168を受け入れる。第2表面183は、第1端部183a、第2端部183b、第1側面183c、第2側面183d、及び弓状のボス部185によって画成される。第2表面183は、第1端部178aから第2端部178bまで、チェーン摺動面174と、非係合面174と、ボス部185とを含む。チェーン摺動面174は、チェーンストランド8a、8bの各々のチェーンリンク7の背面5に係合又は相互作用する溝180及びスペーサ181の独特のパターンを有する。このパターンは、幅wのスペーサ181によって分離された複数の放射状溝180を含む。本実施形態では、スペーサ180の幅wはパターン全体にわたって一定である。溝181は、第1及び第2側面183c、183dの間に延び、溝181が第1側面183c又は第2側面183dに対して直角をなすように直線状である。溝180、スペーサ181の数、スペーサ181の幅wは変化してもよい。溝180を離間させるスペーサ181の幅wと溝180の数は、チェーンストランド8a、8bのチェーンリンク7の背面5とテンショナアーム168のチェーン摺動面174との間のチェーン接触力を意図的に破壊し、チェーンシステム内でのNVHの原因となるチェーン関連次数とのアラインメントを防ぐ。
【0013】
第2表面183の非係合部175は、チェーンストランド8a、8bと係合せず、ピボット軸164を回転可能に受け入れるための孔186を画定するボス部185内に延びている。
別の実施形態では、アーム168の本体178は、複数の部品から製造することができる。
以下に示す式1.1及び1.2を用いて、独特のパターン及び関連する溝パターンの間隔を計算することが好ましい。パターン係合寸法は、溝間のスペーサの幅である。
【数1】
(1.1)
【数2】
(1.2)
ここで、
p=チェーンピッチ
n=任意の整数
式1.1及び式1.2は、各チェーンリンク7の係合に起因するチェーンシステムのNVHを引き起こすピッチ次数、及びチェーンシステムのチェーン8のチェーンリンク7のガイド列から非ガイド列又は側面への遷移の係合差を除去する。
【0014】
図8~
図10は、従来技術の平滑な又は連続した面74を含むテンショナの表面の幾何学的形状の例、溝パターン間隔を決定するために式1.1及び1.2とともに使用される整数、及び溝パターン間隔を決定するために使用される非整数を示している。たとえば、整数が2の場合、
【数3】
又はp(0.5)になる。つまり、溝180間の間隔チはチェーンピッチの0.5倍に設定されている。
図8に示す半ピッチNVHメトリックで示すように、溝のない連続面を使用すると、テンショナのトルク量が0.15Nmになり、0.5×ピッチ(整数2)を使用すると、テンショナのトルク量が0.5Nmになり、NVH性能が向上し、チェーンシステムでは連続面を使用するよりも多くのNVHが生成される。整数でない2.5の場合、
【数4】
又はp(0.4)になる。0.4×ピッチを使用すると、テンショナのトルク量は0.1Nmとなり、これは連続面及び0.5×ピッチのNVHよりも小さくなる。
図9は、ピッチ周波数NVHメトリックを示している。0.4×ピッチ(非整数2.5)では、テンショナのトルク量は2.5Nmであり、連続面のテンショナのトルク量は2.8Nmであり、0.5×ピッチ(整数2)では、テンショナのトルク量は3.1Nmである。整数倍以外のピッチを使用すると、連続面及び整数×ピッチよりもNVHが小さくなる。
図10は、ピッチ周波数の2倍のNVHメトリックを示している。0.4×ピッチ(非整数2.5)では、テンショナのトルク量は1.2Nmであり、連続面のテンショナのトルク量は1.7Nmであり、0.5×ピッチ(整数2)では。テンショナのトルク量は2.3Nmである。整数倍以外のピッチを使用すると、連続面及び整数×ピッチよりもNVHが小さくなる。
トーションスプリング166は、取り付けブラケット162とアーム185のボス部との間に存在し、第2表面183の非係合部174に隣接し、アーム168に作用してアーム168をチェーン8に向かって付勢する。スプリング166の第1端部166aは取り付けブラケット162に対して接地され、スプリング166の第2端部166bは軸165に対して接地されている。スプリング166のコイル166cは、ピボット軸164に巻回され、ボス部185とブラケット162とテンショナアーム168の第2端部183bとの間に存在する。
【0015】
ストッパ169は、軸165上に存在し、アーム168が過度に枢動した場合、アーム168のボス部185と相互作用することができる。
【0016】
図5~
図6は、角度の付いた又は斜め溝を含むパターンを有する張力面を有するテンショナアーム220を示している。
【0017】
ピボット軸164は、第1端部178aと、第2端部178bと、第1表面188と、第1表面188に対向する第2表面183とを有する本体178で形成されたアーム168を受け入れる。第2表面183は、第1端部183a、第2端部183b、第1側面183c、第2側面183d、及び弓状のボス部185によって画成される。第2表面183は、第1端部178aから第2端部178bまで、チェーン摺動面274と、非係合面175と、ボス部185とを含む。チェーン摺動面274は、各チェーンストランド8a、8bのチェーンリンク7の背面5に係合又は相互作用する溝280及びスペーサ281の固有のパターンを有する。パターンは、幅wのスペーサ281によって分離された複数の放射状溝280を含む式1.1及び式1.2を用いて、独特のパターン及び関連する溝パターンの間隔を計算することが好ましい。本実施形態では、スペーサ281の幅wはパターン全体にわたって一定である。溝280は、第1側面183cと第2側面183dとの間に延び、溝280が第1側面183c又は第2側面183dに対して90度にならないように角度をなしている。最小角度は、テンショナとの接触中にチェーン幅全体が所定の溝を通過することを可能にする。この角度θは、テンショナの接触長さ(x)とチェーンの幅(y)とからtan-1(y/x)として算出することができる。溝280及びスペーサ281の数は変化してもよい。溝280を離間させるスペーサ281の幅(w)と溝280の数は、チェーンストランド8a、8bのチェーンリンク7の背面5とテンショナアーム168のチェーン摺動面174との間のチェーン接触力を意図的に破壊し、チェーンシステム内でのNVHの原因となるチェーン関連次数とのアラインメントを防ぐ。
【0018】
第2表面181の非係合部175は、チェーンストランド8a、8bと係合せず、ピボット軸164を回転可能に受け入れるための孔186を画定するボス部185内に延びている。
【0019】
ストッパ169は、軸165上に存在し、アーム168が過度に枢動した場合、アーム168のボス部185と相互作用することができる。
【0020】
図11~
図12は、直線溝を含むパターンを有する引張面を有する代替のテンショナアーム420を示している。本実施形態では、チェーン摺動面474の複数の溝480間のスペーサ481a、481bの幅はパターン内で変化している。例えば、図示のパターンにおいて、少なくとも1つのスペーサ481bは、パターンの他のスペーサ481aの幅wよりも大きい幅w1を有している。溝480は、テンショナアーム420の第2表面183の第1側面又は第2側面183c、183dに対して直角になるように、第1及び第2側面183c、183dの間に延びて直線状である。
【0021】
図13は、斜め溝又は傾斜溝を含むパターンを有する引張面674を有する代替のテンショナアーム620を示している。本実施形態では、チェーン摺動面の複数の溝間のスペーサの幅はパターン内で変化している。例えば、図示のパターンにおいて、少なくとも1つのスペーサ681bは、パターンの他のスペーサ681aの幅wよりも大きい幅w1を有する。溝680は、第1側面183cと第2側面183dとの間に延び、溝680が第1側面183c又は第2側面183dに対して90度未満の角度をなすように角度をなしている。
【0022】
図14は、NVHを変更するためにテンショナアーム、ガイド、又は緩衝器の表面に独特のパターンを施す方法の流れ図である。
【0023】
第1ステップでは、チェーンシステム内でNVHが発生するチェーン関連次数を決定する(ステップ502)。チェーン関連次数は、コンピュータシミュレーションにより、又はチェーンシステム自体のテストにより決定され得る。
【0024】
決定されたNVH問題の原因となるチェーン関連次数に基づいて、テンショナアーム、ガイド又は緩衝器の表面に施すための、複数の溝及びスペーサを含むパターンを作製する(ステップ506)。溝の具体的な幾何学的形状は、シミュレーション、テスト、又はそれらの組み合わせによって決定され得る。この過程は実験によって繰り返し行われる。溝の幾何学的形状は、式1.1及び1.2で決定された既知のチェーン関連次数の配列が減少しないように選択されるべきである。
【0025】
次に、このパターンをテンショナアームのチェーン摺動面、ガイド又は緩衝器に施し(ステップ508)、この方法を終了する。
【0026】
図8~
図10では、チェーンシステムが半ピッチ及び2倍ピッチ周波数で既知のNVH問題を有することが確認されている。2種類のテンショナの表面の幾何学的形状を解析したところ、溝形状が0.5×ピッチでは性能が劣るが、0.4×ピッチでは性能が良いことが分かった。
【0027】
図7は、異なる軸方向チェーンパス321、322、323を有するテンショナアーム320の別の実施形態の斜視図を示しており、軸方向チェーンパス321、322、323は、それぞれ、他の実施形態におけるスペーサと同様の凸部380と、チェーンストランド8a、8bのリンクの背面と接触する他の実施形態における溝と同様の凹部381とから形成されている。本実施形態では、アーム320は、他の実施形態のアームに取って代わるものであり、孔386を介してブラケット162のピボット軸164に接続されている。アーム320は、第1端部378aと、第2端部378bと、第1表面388と、第1表面388に対向する第2表面383とを有する本体378で形成される。第2表面383は、第1端部383a、第2端部383b、第1側面383c、第2側面383d、及び弓状のボス部385によって画成される。第2表面383は、第1端部378aから第2端部378bまで、チェーン摺動面374と、非係合面375と、ボス部385とを含む。チェーン摺動面374は凸部380と凹部381の独特のパターンを有し、隆起した凸部380は軸方向チェーンパス321、322、323の異なる領域に存在し、チェーンリンク7の背面5がテンショナアーム320と相互作用する位置を変化させる。
【0028】
アーム320の第2表面383の第1側面383cから第2側面383dに延びる3つの異なる軸方向パスは、チェーン摺動面の側面間に延びる溝及びスペーサを有する代わりに設けられている。各軸方向パスは、テンショナがチェーンストランドを緊張するとき、チェーンが各軸方向パスの異なる凸部及び後退部に接触するように、異なる点に配置された一連の凸部及び凹部を有する。凸部及び凹部は、溝が付いた上記の実施形態と同様に、チェーン関連次数が破壊されるように配置される。同様に、これらの凸部の次元は、式1.1及び1.2によって制御される。
【0029】
チェーン摺動面に施されるパターンの例は、テンショナアームに施されるものとして示されているが、本発明の範囲を逸脱することなく、ガイドや緩衝器のチェーン摺動面に施すこともできる。
【0030】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用例にすぎないことが理解されるべきである。本明細書において示された実施形態の詳細への参照は特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではなく、それら自体が本発明に不可欠であるとみなされる特徴を列挙している。