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特開2023-177332,4-ジメチルピリミジン-5-オールの合成方法、その方法の新規中間体、およびレンボレキサントの合成における生成物の使用
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  • 特開-2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの合成方法、その方法の新規中間体、およびレンボレキサントの合成における生成物の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017733
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの合成方法、その方法の新規中間体、およびレンボレキサントの合成における生成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 221/00 20060101AFI20230131BHJP
   C07C 225/14 20060101ALI20230131BHJP
   C07C 205/37 20060101ALI20230131BHJP
   C07D 239/36 20060101ALI20230131BHJP
   C07D 239/34 20060101ALI20230131BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230131BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230131BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C07C221/00
C07C225/14 CSP
C07C205/37
C07D239/36
C07D239/34
A61K31/506
A61P25/20
C07D401/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117102
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P202130723
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(71)【出願人】
【識別番号】520027187
【氏名又は名称】モエス、イベリカ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】MOEHS IBERICA S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】アブデスラム、アカトゥ
(72)【発明者】
【氏名】アリシア、ドバロ、ロドリゲス
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB07
4C063CC29
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA05
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC25
4H006BJ50
4H006BP30
4H006BR10
4H006BU26
(57)【要約】
【課題】2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの新規合成方法、その方法の新規中間体、およびレンボレキサントの合成における生成物の使用の提供。
【解決手段】本発明は、レンボレキサントの合成における重要な中間体である2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの新規合成方法、その方法の新規中間体、およびレンボレキサントの合成における生成物の使用に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩の調製方法であって、式(II):
【化2】
の化合物をN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールと反応させることを含む、方法。
【請求項2】
前記式(I)および式(II)の化合物の-NO基が、オルト位またはパラ位、好ましくはオルト位にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式(II)の化合物に対するN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールの割合が、前記式(II)の化合物1モルに対して、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールが1~2モルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶媒の不在下で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
式(III):
【化3】
の化合物またはその塩の調製方法であって、
請求項1または2に記載の方法を行って、式(I):
【化4】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;および
前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(III)の化合物またはその塩に変換すること
を含む、方法。
【請求項6】
a)請求項1に記載の方法を行って、式(I):
【化5】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;
b)前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(IV)の化合物またはその塩と、塩基の存在下で反応させて、式(V)の化合物またはその塩を生成すること
【化6】
および
c)前記式(V)の化合物またはその塩を加水分解して、前記式(III)の化合物またはその塩を生成すること
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記式(I)の化合物および前記式(V)の化合物の-NO基が、オルト位またはパラ位、好ましくはオルト位にある、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
工程b)の塩基が、アルカリ金属C-Cアルコキシド、好ましくはナトリウムC-Cアルコキシド、より好ましくはナトリウムエトキシドまたはナトリウムメトキシド、さらにより好ましくはナトリウムエトキシドである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程c)が、水性溶媒、好ましくは水とC-Cアルカノールの混合物、好ましくは水とエタノールの混合物または水とメタノールの混合物、さらにより好ましくは水とエタノールの混合物の存在下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記式(II)の化合物が、式(VI)の化合物と式(VII)の化合物
【化7】
の反応によって得られる(式中、Xは、塩素または臭素、好ましくは塩素である)、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記式(VI)の化合物の-NO基が、オルト位またはパラ位、好ましくはオルト位にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
レンボレキサントの調製方法であって、
a)請求項5に記載の方法を行って、式(III):
【化8】
の化合物またはその塩を得ること;
b)前記式(III)の化合物またはその塩を式(VIII)の化合物と、塩基の存在下で反応させて、式(IX)の化合物を生成すること
【化9】
c)前記式(IX)の化合物を塩基の存在下で加水分解して、式(X):
【化10】
の化合物を生成すること;
d)前記式(X)の化合物を酸化剤で処理して、式(XI):
【化11】
の化合物を生成すること;および
e)前記式(XI)の化合物を式(XII):
【化12】
の化合物と、塩基およびカップリング剤の存在下で反応させて、レンボレキサントを生成すること
を含む方法。
【請求項13】
工程b)の塩基が、アルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸セシウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程c)の塩基が、水酸化ナトリウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
工程d)の酸化剤が、NaClOおよびNaClOである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
工程e)の塩基が、有機アミン、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、かつ/あるいは工程e)のカップリング剤が、プロピルホスホン酸無水物である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルは、9.9、12.2、16.2、18.7、20.0、24.5、27.0°2θ±0.2°2θにピークを含み、好ましくは、閾値温度が約57.6℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約208.0℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする、式(IIa):
【化13】
の化合物の結晶形態。
【請求項18】
好ましくは、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルは、11.6、16.6、18.7、21.5、22.9、23.4、23.7、26.4°2θ±0.2°2θにピークを含み、最も好ましくは、閾値温度が約149.9℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約230.4℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示す結晶性固体である、式(Ia):
【化14】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩。
【請求項19】
好ましくは、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルは、12.5、14.6、17.6、23.6、25.1°2θ±0.2°2θにピークを含み、最も好ましくは、閾値温度が約104.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示す結晶性固体である、式(Va):
【化15】
の化合物。
【請求項20】
前記式(III)の化合物またはその塩の調製における、式(IIa)の化合物、請求項17に記載の式(IIa)の化合物の結晶形態、請求項18に記載の式(Ia)の化合物もしくはその立体異性体、および/または請求項19に記載の式(Va)の化合物の使用。
【請求項21】
レンボレキサントの調製における、式(IIa)の化合物、請求項17に記載の式(IIa)の化合物の結晶形態、請求項18に記載の式(Ia)の化合物もしくはその立体異性体、および/または請求項19に記載の式(Va)の化合物の使用。
【請求項22】
CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、12.8、15.5、16.6、17.9、21.8、22.1、23.6、25.0、25.7、27.1、30.1°2θ±0.2°2θにピークを含み、好ましくは、閾値温度が約137.1℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約267.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする、前記式(III)の化合物の結晶形態。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンボレキサントの合成における有用な中間体である2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの新規合成方法、その方法の新規中間体、およびレンボレキサントの合成における生成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
レンボレキサントは、入眠困難または睡眠維持困難を特徴とする不眠症の治療のための医薬品である。
【0003】
レンボレキサントまたは(1S,2R)-2-[(2,4-ジメチルピリミジン-5-イル)オキシメチル]-2-(3-フルオロフェニル)-N-(5-フルオロ-2-ピリジニル)シクロプロパンカルボキサミドは次の化学構造を有する。
【化1】
【0004】
欧州特許EP3178814B1には、次の工程を含むレンボレキサントの取得方法が記載されている。
【化2】
【0005】
上記の合成スキームで見られるように、構造を以下に示す化合物、2,4-ジメチルピリミジン-5-オール
【化3】
は、レンボレキサントの製造のための重要な中間体である。
【0006】
欧州特許EP3178814B1は、化合物2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの取得方法を記載する文献WO2012/039371およびWO2013/123240を参照している。さらに、欧州特許EP3178814B1自体には、前記中間体を得るための別の方法が記載されている。
【0007】
文献WO2012/039371に記載されている方法は、次の工程を含む。
【化4】
【0008】
文献WO2013/123240に記載されている方法は、次の工程を含む。
【化5】
【0009】
文献WO2012/039371およびWO2013/123240に記載されている方法は、出発物質として、高価な製品である2,4-ジクロロ-5-メトキシピリミジンを使用し、揮発性生成物である中間体2,4-ジメチル-5-メトキシピリミジン、または吸湿性生成物であるその塩酸塩、ならびに細心の注意を払っての作業を必要とする腐食性刺激性試薬(例えば、トリメチルアルミニウムまたは三臭化ホウ素など)を含むため、2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの工業生産には適していない。
【0010】
従って、欧州特許EP3178814B1は、産業上利用可能な中間体である2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの合成方法を開発し、前記問題を解決している。
【0011】
文献EP3178814B1に記載されている合成は、次の工程を含む。
【化6】
【0012】
この合成では、容易に入手できる化合物である4-ニトロフェノールを出発物質として使用し、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールをこの方法のステップ2で使用する。さらに、4-ニトロフェニル基は、ステップ3の位置選択的縮合を助け、さらに、加水分解ステップ4では比較的緩やかな条件下で分離することができる保護基として機能する。
【発明の概要】
【0013】
産業レベルで重要な中間体である2,4-ジメチルピリミジン-5-オールを得るための改善がEP3178814B1に記載されているものの、工業規模での製品レンボレキサントの前記中間体の合成のための、特により高い収率での、さらに最適化された方法を提供する必要がある。
【0014】
発明者らは、意外にも、EP3178814B1に記載されている2,4-ジメチルピリミジン-5-オール(レンボレキサントの合成における重要な中間体)の調製のステップ2においてN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールの代わりにN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを使用することにより、収率が予想外に高まることを発見した。EP3178814B1に記載されているように、このステップの収率は41%~55%の範囲であるが、本発明では、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを使用することにより、約65%の収率が達成される。さらに、EP3178814B1のp-ニトロフェノールをo-ニトロフェノールで置換することにより、収率はさらに向上し、約85%に達する。さらに、重要な中間体である2,4-ジメチルピリミジン-5-オールとその合成方法の中間体の両方が高レベルの純度で得られる。
【0015】
従って、第1の側面において、本発明は、式(I):
【化7】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩の調製方法であって、式(II)
【化8】
の化合物をN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールと反応させること
を含む方法に関する。
【0016】
第2の側面において、本発明は、式(III):
【化9】
の化合物またはその塩の調製方法であって、
第1の側面において定義される方法を行って、式(I):
【化10】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;
および前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(III)の化合物またはその塩に変換すること
を含む方法に関する。
【0017】
具体的には、前記側面において定義される方法は、
a)第1の側面において定義される方法を行って、式(I):
【化11】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;
b)前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(IV)の化合物またはその塩と、塩基の存在下で反応させて、式(V)の化合物またはその塩を生成すること
【化12】
;および
c)前記式(V)の化合物またはその塩を加水分解して、前記式(III)の化合物またはその塩を生成すること
を含む。
【0018】
第3の側面において、本発明は、レンボレキサントの調製方法であって、
a)第2の側面において定義される方法を行って、式(III):
【化13】
の化合物またはその塩を得ること;
b)前記式(III)の化合物またはその塩を式(VIII)の化合物と、塩基の存在下で反応させて、式(IX)の化合物を生成すること
【化14】
c)前記式(IX)の化合物を塩基の存在下で加水分解して、式(X):
【化15】
の化合物を生成すること;
d)前記式(X)の化合物を酸化剤で処理して、式(XI):
【化16】
の化合物を生成すること;および
e)前記式(XI)の化合物を式(XII)
【化17】
の化合物と、塩基およびカップリング剤の存在下で反応させて、レンボレキサントを生成すること
を含む方法に関する。
【0019】
第4の側面において、本発明は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、9.9、12.2、16.2、18.7、20.0、24.5、27.0°2θ±0.2°2θにピークを含むことを特徴とする、式(IIa):
【化18】
の化合物の結晶形態に関する。
【0020】
第5の側面において、本発明は、式(Ia):
【化19】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩に関する。
【0021】
第6の側面において、本発明は、式(Va):
【化20】
の化合物に関する。
【0022】
別の側面において、本発明は、前記式(III)の化合物またはその塩の調製における、前記式(IIa)の化合物、前記式(Ia)の化合物またはその立体異性体もしくは塩、前記式(Va)の化合物、および/または前記化合物の結晶形態の使用に関する。
【0023】
別の側面において、本発明は、レンボレキサントの調製における、前記式(IIa)の化合物、前記式(Ia)の化合物またはその立体異性体、前記式(Va)の化合物、および/または前記化合物の結晶形態の使用に関する。
【0024】
別の側面において、本発明は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、12.8、15.5、16.6、17.9、21.8、22.1、23.6、25.0、25.7、27.1、30.1°2θ±0.2°2θにピークを含むことを特徴とする、前記式(III)の化合物の結晶形態に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、1-(2-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンに対応する式(IIa)の化合物の粉末X線回折図(XRPD)を示す。
図2図2は、(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(2-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンに対応する式(Ia)の化合物の粉末X線回折図(XRPD)を示す。
図3図3は、2,4-ジメチル-5-(2-ニトロフェノキシ)ピリミジンに対応する式(Va)の化合物の粉末X線回折図(XRPD)を示す。
図4図4は、2,4-ジメチルピリミジン-5-オールに対応する式(III)の化合物の粉末X線回折図(XRPD)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
式(I)の化合物の調製方法
本発明の第1の側面は、式(I)
【化21】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩の調製方法であって、式(II):
【化22】
の化合物をN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールと反応させること
を含む方法に関する。
【0027】
前記方法は、EP3178814B1に記載されているものと類似しているが、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールの代わりにN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを使用する。意外にも、この試薬置換は、より高い反応収率を有する方法を提供する。EP3178814B1に記載されているように、このステップの収率は、41%~55%の範囲であるが、本発明では、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールを使用することにより、少なくとも約65%の収率が達成される。
【0028】
式(I)の化合物の-NO基(ニトロ基)は、オルト位、メタ位、またはパラ位に(別のフェニル環置換基に対して)、好ましくはオルト位またはパラ位に、より好ましくはオルト位にあり得る。
【0029】
式(I)の化合物の-NO基がオルト位にある場合、式(II)の化合物の-NO基もまた、オルト位にある。式(I)の化合物の-NO基がパラ位にある場合、式(II)の化合物の-NO基もまた、パラ位にある。式(I)の化合物の-NO基がメタ位にある場合、式(II)の化合物の-NO基もまた、メタ位にある。
【0030】
-NO基がパラ位にある式(I)および(II)の化合物は、EP3178814B1に記載されている。
【0031】
発明者らは、-NO基がオルト位にある場合に、反応収率がより高いことに気付いた。従って、好ましい態様において、-NO基はオルト位にある。
【0032】
好ましい態様において、式(II)の化合物に対するN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールの割合は、式(II)の化合物1モルに対してN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールが1~2モル、より好ましくは1.05~2モル、より好ましくは1.05~1.3モルである。
【0033】
反応は、溶媒の存在下および溶媒の不在下の両方で実施することができる。
【0034】
一態様において、反応は、溶媒の存在下で行われる。溶媒の存在下で反応が行われる場合、溶媒は、好ましくは芳香族炭化水素、例えば、トルエンまたはキシレン、より好ましくはトルエンなどである。
【0035】
別の態様において、反応は、溶媒の不在下で行われる。
【0036】
前記方法は、好ましくは35℃~90℃、より好ましくは35℃~60℃、さらにより好ましくは35℃~50℃、さらにより好ましくは45℃~50℃の温度で実施することができる。
【0037】
反応は、好ましくは少なくとも3時間、好ましくは少なくとも4時間、より好ましくは最大24時間まで行われる。1つの特定の態様において、反応は、3~6時間行われる。
【0038】
反応は、反応混合物を撹拌しながら行われる。
【0039】
好ましい態様において、反応後、得られた反応混合物に、例えば、C-Cアルカノール型溶媒またはC-Cジアルキルエーテルなどのプロトン性または非プロトン性極性溶媒を添加する次のステップが行われる。これらの溶媒の例は、イソプロパノール、tert-ブタノール、メチル-tert-ブチルエーテル、またはジイソプロピルエーテルである。好ましくは、式(II)の化合物1グラムに対して溶媒2~6mL、好ましくは式(II)の化合物1グラムに対して溶媒3~5mLが添加される。使用される溶媒は、好ましくはジイソプロピルエーテルである。具体的には、この処理は、得られた反応混合物にジイソプロピルエーテルを添加することを含む。好ましくは、溶媒を添加した後、得られた混合物を20℃~25℃の温度で、好ましくは撹拌しながら、より好ましくは10~15時間冷却する。好ましくは、この時間が経過した後、混合物を0~5℃の温度で、好ましくは撹拌しながら冷却する。この処理により懸濁液が生成し、得られた固体(式(I)の化合物)は、例えば、濾過によるなど従来の手段によって分離することができる。ジイソプロピルエーテルでの処理には、式(I)の化合物を精製するという利点がある。
【0040】
式(I)の化合物の立体異性体とは、二重結合に対する置換基の位置を指し、それらはシス(Z)位またはトランス(E)位にあり得る。
【0041】
式(I)の化合物は、シス異性体およびトランス異性体の両方ならびにそれらの任意の混合物、好ましくはシス異性体を指す。
【0042】
用語「塩」は、定義された化合物のいずれの形態も意味すると理解されなければならず、これらはイオン形態であるか、または電荷を有し、対イオン(陽イオンまたは陰イオン)と結合し、または溶解状態にある。例えば、式(I)の化合物の塩は、酸付加塩であり得、塩基性部分を含有する元の化合物から従来の化学法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、例えば、遊離塩基形態のそれらの化合物を化学量論量の好適な酸と、水または有機溶媒または両方の混合物中で反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、および例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。
【0043】
式(III)の化合物の調製方法
第2の側面において、本発明は、レンボレキサントの合成における重要な中間体である式(III):
【化23】
の化合物またはその塩の調製方法であって、
第1の側面において定義される方法を行って、式(I):
【化24】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;
および前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(III)の化合物またはその塩に変換すること
を含む方法に関する。
【0044】
式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩の式(III)の化合物またはその塩への変換は、当業者に公知の任意の合成方法を使用して実施することができる。
【0045】
好ましくは、前記方法は、
a)第1の側面において定義される方法を行って、式(I):
【化25】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;
b)前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(IV)の化合物またはその塩と、塩基の存在下で反応させて、式(V)の化合物またはその塩を生成すること
【化26】
c)前記式(V)の化合物またはその塩を加水分解して、前記式(III)の化合物またはその塩を生成すること
を含む。
【0046】
第2の側面の方法の第1のステップは、上記で詳細に説明した、本発明の第1の側面の方法を実施することである。
【0047】
式(I)の化合物の-NO基(ニトロ基)は、オルト位、メタ位、またはパラ位に(別のフェニル環置換基に対して)、好ましくはオルト位またはパラ位に、より好ましくはオルト位にあり得る。
【0048】
式(I)の化合物の-NO基がオルト位にある場合、式(V)の化合物の-NO基もまた、オルト位にある。式(I)の化合物の-NO基がパラ位にある場合、式(V)の化合物の-NO基もまた、パラ位にある。式(I)の化合物の-NO基がメタ位にある場合、式(V)の化合物の-NO基もまた、メタ位にある。
【0049】
-NO基がパラ位にある式(I)および(V)の化合物は、EP3178814B1に記載されている。
【0050】
発明者らは、-NO基がオルト位にある場合に、反応収率がより高いことに気付いた。従って、好ましい態様において、-NO基はオルト位にある。
【0051】
第2の側面の方法の工程b)は、前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(IV)の化合物またはその塩と、塩基の存在下で反応させて、式(V)の化合物またはその塩を生成すること
【化27】
を含む。
【0052】
用語「塩」は、定義された化合物のいずれの形態も意味すると理解されなければならず、これらはイオン形態であるか、または電荷を有し、対イオン(陽イオンまたは陰イオン)と結合し、または溶解状態にある。例えば、式(I)、式(IV)、および式(V)の化合物の塩は、酸付加塩であり得、塩基性部分を含有する元の化合物から従来の化学法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、例えば、遊離塩基形態のそれらの化合物を化学量論量の好適な酸と、水または有機溶媒または両方の混合物中で反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、および例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。
【0053】
1つの特定の態様において、式(IV)の化合物は、塩酸塩の形態である。
【0054】
前記方法の工程b)は、塩基の存在下で行われる。本発明の文脈において、用語「塩基」とは、(酸の)プロトンを受け取ることができる物質を指す。工程b)に好適な塩基の例は、アルカリ金属C-Cアルコキシド、好ましくはナトリウムC-Cアルコキシド、より好ましくはナトリウムエトキシドまたはナトリウムメトキシド、さらにより好ましくはナトリウムエトキシドである。
【0055】
表現「アルカリ金属」とは、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、およびフランシウム、好ましくはナトリウムまたはカリウム、より好ましくはナトリウムから選択される金属を指す。
【0056】
用語「アルコキシド」とは、アルキル-O基を指し、ここで、「アルキル」は、炭素原子および水素原子からなる、不飽和を含まない、示された数の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖炭化水素ラジカル(例えば、1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1個または2個の炭素原子であり、単結合によってOに結合している)である。アルコキシドの例は、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、tert-ブトキシド、n-ブトキシド、好ましくはメトキシドまたはエトキシド、より好ましくはエトキシドである。
【0057】
具体的には、工程b)において、塩基は、式(IV)の化合物またはその塩1モルに対して、1~4モル、好ましくは2~3モル、より好ましくは2.4~2.6モルが使用される。
【0058】
工程b)は、好ましくは、C-Cアルカノール、好ましくは、エタノール、メタノール、またはそれらの混合物からなる群から選択される溶媒、さらにより好ましくはエタノールの存在下で行われる。
【0059】
用語「アルカノール」とは、アルキル-OH基を指し、ここで、アルキルは、上記に定義された通りである。C-Cアルカノールの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、iso-ブタノール、好ましくは、メタノールおよびエタノールである。
【0060】
好ましくは、工程b)において、アルカノールおよびアルコキシドのアルキル基は同じである。より好ましくは、工程b)は、塩基としてのナトリウムエトキシドと溶媒としてのエタノールとを使用して、または塩基としてのナトリウムメトキシドと溶媒としてのメタノールとを使用して行われ、さらにより好ましくは、工程b)は、塩基としてのナトリウムエトキシドと溶媒としてのエタノールとを使用して行われる。
【0061】
1つの特定の態様において、工程b)において、式(IV)の化合物またはその塩は、式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩1モルに対して、1~3モル、好ましくは1~4モル、より好ましくは2~3モル、さらにより好ましくは2.2~2.6モルが使用される。
【0062】
具体的には、工程b)は、50℃~80℃、好ましくは65℃~80℃の温度で行われる。工程b)は、好ましくは3~10時間行われる。それは、好ましくは撹拌しながら行われる。
【0063】
工程b)の式(V)の化合物は、好ましくは塩の形態ではなく、すなわち、遊離塩基の形態である。
【0064】
第2の側面の方法の次のステップは、式(V)の化合物またはその塩を加水分解して、式(III)の化合物またはその塩を生成する工程c)である。
【0065】
上で説明したように、用語「塩」は、定義された化合物のいずれの形態も意味すると理解されなければならず、これらはイオン形態であるか、または電荷を有し、対イオン(陽イオンまたは陰イオン)と結合し、または溶解状態にある。例えば、式(III)の化合物の塩は、塩基付加塩であり得、酸性部分を含有する元の化合物から従来の化学法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、例えば、遊離酸形態のそれらの化合物を化学量論量の好適な塩基と、水または有機溶媒または両方の混合物中で反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。塩基付加塩の例としては、例えば、アンモニウムなどの無機塩、および例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルカミン、および塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。金属塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、およびリチウム塩が挙げられる。
【0066】
好ましい態様において、工程c)は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される塩基の存在下で行われる。塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムである。
【0067】
表現「アルカリ土類金属」とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびラジウム、好ましくはマグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される金属を指す。
【0068】
好ましい態様において、工程c)の塩基は、アルカリ金属水酸化物、好ましくは、水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウム、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0069】
具体的には、工程c)において、塩基は、式(V)の化合物またはその塩1モルに対して、1~5モル、好ましくは2~4モル、より好ましくは2.5~3.5モルが使用される。
【0070】
好ましい態様において、工程c)は、水性溶媒、好ましくは水とC-Cアルカノールの混合物、好ましくは、水とエタノールの混合物または水とメタノールの混合物、さらにより好ましくは水とエタノールの混合物の存在下で行われる。
【0071】
具体的には、工程c)は、50℃~80℃、好ましくは60℃~70℃の温度で行われる。工程c)は、好ましくは15~24時間行われる。それは、好ましくは撹拌しながら行われる。
【0072】
工程c)で得られた式(III)の化合物は、反応媒体から、従来の技術によって単離することができる。
【0073】
本発明の第1の側面および第2の側面の方法の特定の態様において、式(II)の化合物は、式(VI)の化合物と式(VII)の化合物
【化28】
を反応させることによって得られる(式中、Xは、塩素または臭素、好ましくは塩素である)。
【0074】
式(VI)の化合物の-NO基(ニトロ基)は、オルト位、メタ位、またはパラ位に(別のフェニル環置換基に対して)、好ましくはオルト位またはパラ位に、より好ましくはオルト位にあり得る。
【0075】
式(VI)の化合物の-NO基がオルト位にある場合、式(II)の化合物の-NO基もまた、オルト位にある。式(VI)の化合物の-NO基がパラ位にある場合、式(II)の化合物の-NO基もまた、パラ位にある。式(VI)の化合物の-NO基がメタ位にある場合、式(II)の化合物の-NO基もまた、メタ位にある。
【0076】
発明者らは、-NO基がオルト位にある場合に、反応収率がより高いことに気付いた。従って、好ましい態様において、-NO基はオルト位にある。
【0077】
1つの特定の態様において、式(VI)の化合物は、式(VII)の化合物1モルに対して1~2モル、好ましくは1~1.5モル、より好ましくは1~1.1モルが使用される。
【0078】
好ましい態様において、式(VI)の化合物と式(VII)の化合物の反応は、塩基および相間移動触媒の存在下で行われる。
【0079】
塩基は、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩である。塩基の例は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム、好ましくは炭酸カリウムである。1つの特定の態様において、塩基は、式(VI)の化合物1モルに対して1~2モル、好ましくは1~1.5モル、より好ましくは1~1.1モルが使用される。
【0080】
相間移動触媒の例は、例えば、テトラブチルアンモニウムヨージドおよびテトラメチルアンモニウムヨージドなどの第四級アンモニウム塩である。相間移動触媒は、好ましくはテトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)である。1つの特定の態様において、相間移動触媒は、式(VI)の化合物1グラムに対して0.001~0.1g、好ましくは0.001~0.01gが使用される。
【0081】
好ましい態様において、塩基は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムであり、かつ/あるいは相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムヨージドである。
【0082】
この反応は、好ましくは、例えば、C-Cジアルキルケトン(例えば、メチルエチルケトン、アセトン、またはメチルイソプロピルケトンなど)などの有機溶媒、好ましくはメチルエチルケトンの存在下で行われる。
【0083】
具体的には、この反応は、50℃~80℃、好ましくは55℃~65℃の温度で、好ましくは3~6時間行われる。それは、好ましくは撹拌しながら行われる。
【0084】
得られた式(II)の化合物は、反応媒体から、従来の技術によって単離することができる5。
【0085】
レンボレキサントの調製方法
第3の側面において、本発明は、レンボレキサントの調製方法であって、
a)第2の側面において定義される方法を行って、式(III):
【化29】
の化合物またはその塩を得ること;
b)前記式(III)の化合物またはその塩を式(VIII)の化合物と、塩基の存在下で反応させて、式(IX)の化合物を生成すること
【化30】
c)前記式(IX)の化合物を塩基の存在下で加水分解して、式(X):
【化31】
の化合物を生成すること;
d)前記式(X)の化合物を酸化剤で処理して、式(XI):
【化32】
の化合物を生成すること;および
e)前記式(XI)の化合物を式(XII):
【化33】
の化合物と、塩基およびカップリング剤の存在下で反応させて、レンボレキサントを生成すること
を含む方法に関する。
【0086】
第3の側面の方法の第1のステップは、上記で詳細に説明した、本発明の第2の側面の方法を実施することである。
【0087】
第3の側面の方法の工程b)は、前記式(III)の化合物またはその塩を式(VIII)の化合物と、塩基の存在下で反応させて、式(IX)の化合物を生成すること
【化34】
を含む。
【0088】
式(VIII)の化合物は、文献EP2814798B1の実施例Dに記載されている合成方法に従って得ることができる。
【0089】
工程b)の反応に好適な塩基は、アルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸セシウムである。具体的には、塩基は、式(VIII)の化合物1モルに対して、1~2モル、好ましくは1.5~2モルを使用することができる。この反応は、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、およびそれらの混合物などの有機溶媒、好ましくはアセトニトリルの存在下で行うことができる。この反応は、50℃~80℃、好ましくは65℃~75℃の温度で行うことができる。具体的には、工程b)は、撹拌しながら行われる。
【0090】
式(IX)の化合物は、引用することにより本明細書の一部とされる文献EP2814798B1の実施例Dに記載されている特定の条件を用いて得ることができる。
【0091】
第3の側面の方法の工程c)は、前記式(IX)の化合物を塩基の存在下で加水分解して、式(X):
【化35】
の化合物を生成することを含む。
【0092】
前記加水分解に好適な塩基は、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムである。具体的には、工程c)は、水の存在下で行われる。具体的には、工程c)は、20℃~25℃の温度で行われる。好ましくは、工程c)は、撹拌しながら行われる。
【0093】
式(X)の化合物は、引用することにより本明細書の一部とされる文献EP2814798B1の実施例Dに記載されている特定の条件を用いて得ることができる。
【0094】
第3の側面の方法の工程d)は、前記式(X)の化合物を酸化剤で処理して、式(XI):
【化36】
の化合物を生成すること
を含む。
【0095】
工程d)の酸化剤は、好ましくはNaClOおよびNaClOである。NaClOでの酸化によりアルコール基がアルデヒドに酸化され、NaClOでの酸化により前記アルデヒドが酸基に酸化され、それにより式(XI)の化合物が生成される。具体的には、酸化は2つのステップで行われ、まずNaClOが用いられ、形成されたアルデヒド中間体を単離することなく、第2のステップで、NaClOにより前記アルデヒドが酸化される。具体的には、酸化剤は、式(X)の化合物1モルに対して1~1.5モルが使用される。好ましくは、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン 1-オキシル(TEMPO)がさらに触媒として使用される。具体的には、この反応は、芳香族炭化水素、好ましくはトルエンの存在下で行われる。具体的には、この反応は、-5℃~5℃の温度で行われ、好ましくは、酸化剤/薬剤の添加は、-5℃~5℃の温度で行われ、反応混合物は、15℃~25℃で保たれる。具体的には、NaClOは、式(X)の化合物1モルに対して1~1.5モルが使用され、具体的には、NaClOは、式(X)の化合物1モルに対して1~1.2モルが使用される。工程d)は、好ましくは撹拌しながら行われる。
【0096】
式(XI)の化合物は、引用することにより本明細書の一部とされる文献EP2814798B1の実施例Fに記載されている特定の条件を用いて得ることができる。
【0097】
第3の側面の方法の工程e)は、前記式(XI)の化合物を式(XII):
【化37】
の化合物と、塩基およびカップリング剤の存在下で反応させて、レンボレキサントを生成すること
を含む。
【0098】
工程e)の実施に好適な塩基は、有機アミン、好ましくはN(C-Cアルキル)型アミンである(式中、各アルキル基は、好ましくは独立に、メチル、エチル、およびイソプロピルから選択される)。有機アミンは、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。具体的には、塩基は、式(XI)の化合物1モルに対して1~3モル、好ましくは1.8~2.2モルが使用される。
【0099】
工程e)に好適なカップリング剤の例は、プロピルホスホン酸無水物(T3P)である。具体的には、カップリング剤は、式(XI)の化合物1モルに対して1~2モル、好ましくは1.2~1.6モルが使用される。
【0100】
具体的には、工程e)は、例えば、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、トルエン、アセトニトリル、ジクロロメタン、およびそれらの混合物などの有機溶媒、好ましくは酢酸エチルの存在下で行われる。工程e)は、好ましくは撹拌しながら行われる。
【0101】
レンボレキサントは、引用することにより本明細書の一部とされる文献EP2814798B1の実施例Gに記載されている特定の条件を用いて得ることができる。
【0102】
式(IIa)の化合物
第4の側面において、本発明は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、9.9、12.2、16.2、18.7、20.0、24.5、27.0°2θ±0.2°2θにピークを含むことを特徴とする、式(IIa):
【化38】
の化合物の結晶形態に関する。
【0103】
別の態様において、前記式(IIa)の化合物の結晶形態は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、図1に示されるものと本質的に類似していることを特徴とする。
【0104】
別の態様において、前記式(IIa)の化合物の結晶形態は、閾値温度が約57.6℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約208.0℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする。
【0105】
式(Ia)の化合物
第5の側面において、本発明は、式(Ia):
【化39】
の化合物またはその立体異性体に関する。
【0106】
好ましい態様において、前記式(Ia)の化合物は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、11.6、16.6、18.7、21.5、22.9、23.4、23.7、26.4°2θ±0.2°2θにピークを含む結晶性固体であることを特徴とする。
【0107】
別の態様において、前記式(Ia)の化合物は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、図2に示されるものと本質的に類似している結晶性固体であることを特徴とする。
【0108】
別の態様において、前記式(Ia)の化合物は、閾値温度が約149.9℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約230.4℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことをさらに特徴とする、上記に定義されたような結晶性固体である。
【0109】
前記式(Ia)の化合物の立体異性体とは、二重結合に対する置換基の位置を指し、それらはシス(Z)位またはトランス(E)位にあり得る。
【0110】
式(Ia)の化合物は、シス異性体およびトランス異性体の両方ならびにそれらの任意の混合物、好ましくはシス異性体を指す。
【0111】
式(Va)の化合物
第6の側面において、本発明は、式(Va):
【化40】
の化合物に関する。
【0112】
好ましい態様において、前記式(Va)の化合物は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、12.5、14.6、17.6、23.6、25.1°2θ±0.2°2θにピークを含む結晶性固体であることを特徴とする。
【0113】
別の態様において、前記式(Va)の化合物は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、図3に示されるものと本質的に類似している結晶性固体であることを特徴とする。
【0114】
別の態様において、前記式(Va)の化合物は、閾値温度が約104.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことをさらに特徴とする、上記に定義されたような結晶性固体である。
【0115】
式(IIa)、式(Ia)、および式(Va)の化合物の使用
本明細書に記載の、式(IIa)、式(Ia)、および式(Va)の化合物、ならびにそれらの結晶形態は、式(III)の化合物またはその塩およびレンボレキサントの合成方法の新規中間体である。
【0116】
従って、別の側面において、本発明は、前記式(III)の化合物またはその塩の調製における、本発明において定義される、式(IIa)の化合物、式(Ia)の化合物またはその立体異性体もしくは塩、式(Va)の化合物、または前記化合物の結晶形態の使用に関する。
【0117】
前記式(III)の化合物またはその塩は、本発明の第1の側面および第2の側面において詳細に記載されるように、前記中間体を使用して調製することができる。
【0118】
別の側面において、本発明は、レンボレキサントの調製における、本発明において定義される、式(IIa)の化合物、式(Ia)の化合物またはその立体異性体もしくは塩、式(Va)の化合物、および/または前記化合物の結晶形態の使用に関する。
【0119】
レンボレキサントは、EP3178814B1およびEP2814798B1に記載されている合成方法ならびに次の工程を含む本発明の第3の側面において定義される方法を使用して、式(III)の重要な中間体から調製することができる。
【化41】
【0120】
式(III)の化合物の多形
別の側面において、本発明は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、12.8、15.5、16.6、17.9、21.8、22.1、23.6、25.0、25.7、27.1、30.1°2θ±0.2°2θにピークを含むことを特徴とする、式(III)の化合物の結晶形態に関する。
【0121】
別の態様において、前記式(III)の化合物の結晶形態は、CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、図4に示されるものと本質的に類似していることを特徴とする。
【0122】
別の態様において、前記式(III)の化合物の結晶形態は、閾値温度が約137.1℃±2℃の吸熱ピークおよび閾値温度が約267.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする。
【0123】
本発明の文脈において、X線回折図は、特に、実施例に記載されている方法に従って、波長1.54ÅのCuKα線を放出する銅陽極を備えた粉末回折システムを使用して記録することができる
【0124】
本発明の文脈において、示差走査熱量測定図は、実施例に記載されているように得ることができる。
【0125】
本発明の文脈において、閾値温度または「T onset」とは、転移開始前のベースラインおよびエネルギー吸収中のベースラインの外挿(曲線の接線)から得られた温度を指す。それは、規格DIN ISO 11357-1:2016(E)において定義されるように計算することができる。
【0126】
本発明の文脈において、用語「およそ」および「約とは、前記値の±5%を特徴付けるに値するものを指す。
【0127】
本発明の文脈において、用語「塩基」とは、(酸の)プロトンを受け入れることができる物質を指す。
【0128】
以下、前記思想の理解を容易にするため、本発明の実験方法および態様のいくつかの例を説明する。それらの例は単なる例示である。
【実施例0129】
実施例1:(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンの取得
41.87g(204.95ミリモル)の純度96.4%の1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンを、120mLのトルエンおよび40.7mLのN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール(225.44ミリモル)と混合した。得られた混合物を80℃の温度で加熱して溶液を得、これを指示された温度で21時間撹拌し続けた。
【0130】
前記温度で撹拌を続けた後、80mLのトルエンを加え、反応混合物を約20℃の温度で冷却した。次に、反応塊を0~5℃の温度で冷却し、1.5時間撹拌し続けた。得られた固体を濾過し、25~30℃の炉で乾燥させ、最後に33.4gの(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オン(収率65.1%)を得た。純度はガスクロマトグラフィーにより99.9%であった。
【0131】
実施例A1:1-(2-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンの取得
156.5g(1.132モル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下、約20℃の温度で900mLのメチルエチルケトン中に懸濁した。前記温度を維持しながら、150.0g(1.078モル)のオルト-ニトロフェノールおよび1gのテトラブチルアンモニウムヨージドをゆっくりと加えた。得られた懸濁液を60~65℃の温度で徐々に加熱し、100mLのメチルエチルケトン中の94.14mL(1.132モル)のクロロアセトンの、事前に調製した溶液を前記温度間隔でゆっくりと加えた。反応混合物を60~65℃の温度で4時間撹拌し続けた。
【0132】
前記温度で撹拌を続けた後、反応混合物を約20℃の温度で冷却し、反応から得られた塩を濾別した。溶媒を真空蒸留し、208.3gの、1-(2-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンに相当する固体(純度はガスクロマトグラフィーにより99.5%であった)を得た。
【0133】
得られた生成物は、閾値温度が約57.6℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約208.0℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示す。
1H-NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm): 7.92 (1H, dd), 7.63 (1H, t), 7.25 (1H, d), 7.16 (1H, t), 5.07 (2H, s), 2.21 (3H, s).
13C-NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm): 203.94, 151.41, 140.34, 135.05, 125.85, 121.84, 116.08, 73.71, 27.04.
【0134】
図1は、実施例A1の1-(2-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンについて得られた粉末X線回折図(XRPD、X線粉末回折)を示す。それは、次の角度(2θ)±0.2:9.9、12.2、16.2、18.7、20.0、24.5、27.0にピークを示す結晶形態を有する。
【0135】
実施例A2:(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(2-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンの取得
30.16g(153.76ミリモル)の、実施例A1によって得られた1-(2-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンを、32.3mLのN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール(184.46ミリモル)と混合し、得られた混合物を45~50℃の温度で加熱して溶液を得、これを指示された温度で4時間撹拌し続けた。
【0136】
前記温度で撹拌を続けた後、120mLのジイソプロピルエーテルをゆっくりと加え、混合物の温度は45~50℃で維持した。得られた懸濁液を20℃の温度で冷却し、12時間撹拌し続けた。次に、混合物を0~5℃の温度で冷却し、得られた固体を濾過し、25~30℃の炉で乾燥させ、最後に、33.3gの(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(2-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オン(オルト-ニトロフェノールからの収率85.2%)を得た。純度はガスクロマトグラフィーにより99.6%であった。
【0137】
得られた生成物は、閾値温度が約149.9℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約230.4℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示す。
1H-NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm): 7.94 (d, 1H), 7.61 (d, 1H), 7.53 (s, 1H), 7.14 (t, 1H), 7.04 (s, 1H), 3.06 (s, 6H), 2.14 (s, 3H).
13C-NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm): 197.6, 152.52, 144.64, 139.69, 135.30, 134.20, 125.99, 125.41, 121.81, 117.04, 25.00.
【0138】
図2は、実施例A2の(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(2-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンについて得られた粉末X線回折図(XRPD、X線粉末回折)を示す。それは、次の角度(2θ)±0.2:11.6、16.6、18.7、21.5、22.9、23.4、23.7、26.4にピークを示す結晶形態を有する。
【0139】
実施例A3:2,4-ジメチル-5-(2-ニトロフェノキシ)ピリミジンの取得
49.3g(695.6ミリモルs)の96%EtONaを362mLのエタノールにゆっくりと加え、温度は15~20℃で維持した。得られた溶液に25~30℃の温度で、67.1g(695.6ミリモル)の98%アセトアミジン塩酸塩をゆっくりと加えた。前記温度を維持しながら、72.5g(289.7ミリモル)の(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(2-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンをゆっくりと加えた。反応混合物を75~80℃の温度に加熱し、前記温度で4時間撹拌し続けた。
【0140】
前記温度で撹拌を続けた後、反応混合物を18~20℃で冷却し、前記温度で1時間撹拌し続け、得られた固体を濾過した。それによって得られた溶液から溶媒を真空蒸留し、2,4-ジメチル-5-(2-ニトロフェノキシ)ピリミジンに相当する固体を得た。
【0141】
得られた生成物は、閾値温度が約104.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示す。
1H-NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm): 8.40 (s, 1H), 8.14 (dd, 1H), 7.71 (m, 1H), 7.42 (m, 1H), 7.16 (dd, 1H), 2.64 (s, 3H), 2.40 (s, 3H).
13C-NMR (d6-DMSO, 400 MHz) δ (ppm): 164.12, 159.43, 149.70, 148.30, 147.40, 141.16, 136.15, 126.80, 125.24, 119.99, 25.79, 19.32.
【0142】
図3は、実施例A3の2,4-ジメチル-5-(2-ニトロフェノキシ)ピリミジンについて得られた粉末X線回折図(XRPD、X線粉末回折)を示す。それは、次の角度(2θ)±0.2:12.5、14.6、17.6、23.6、25.1にピークを示す結晶形態を有する。
【0143】
実施例A4:2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの取得
実施例A3のステップで得られた固体を、約20℃の温度で350mLのメタノールに溶解した。温度を35~40℃に維持しながら、72.4g(869.1ミリモル)の、事前に調製した48質量%の水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を約65℃の温度で加熱し、前記温度で20時間撹拌し続けた。
【0144】
前記温度で撹拌を続けた後、反応混合物を30~35℃で冷却し、約150mL量の溶媒を真空蒸留した。325mLの水および70mLのトルエンを加え、得られた混合物を30~35℃の温度で1時間撹拌し続けた。得られた有機相を分離し、60mLのトルエンを、前記温度を維持しながら水相に加えた。新しい有機相を分離し、得られた水相を約20℃の温度で冷却した。36%HCl水溶液を、pH値約3.5までゆっくりと加えた。それによって得られた水溶液を各60mLのトルエンで2回連続洗浄し、次に、pHを30%NaOH水溶液で約5.5の値に調整した。2gの炭素および2gの珪藻土を加え、得られた混合物を35~40℃の温度で30分間撹拌し続けた。固体を濾過によって分離し、20mLの水で3回洗浄し、これまでに得られた水溶液と共にプールした。pHを30%NaOH水溶液で6~7の値まで調整し、150mLの酢酸エチルを加えた。有機相を分離し、水相を各150mLの酢酸エチルで2回追加洗浄した。プールした有機相から溶媒を真空蒸留し、32.0g(257.8ミリモル)の、2,4-ジメチルピリミジン-5-オールに相当する固体((Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(2-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンからの収率88.9%)を得た。純度は、ガスクロマトグラフィー分析により99.6%またはUHPLC分析により99.78%であった。
【0145】
得られた生成物は、閾値温度が約137.1℃±2℃および267.9℃±2℃の2つの吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示す。
【0146】
図4は、実施例A4の2,4-ジメチルピリミジン-5-オールについて得られた粉末X線回折図(XRPD、X線粉末回折)を示す。それは、次の角度(2θ)±0.2:12.8、15.5、16.6、17.9、21.8、22.1、23.6、25.0、25.7、27.1、30.1にピークを示す結晶形態を有する。
【0147】
実施例B1:1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンの取得
52.16g(377.4ミリモル)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気下、約20℃の温度で175mLのメチルエチルケトン中に懸濁した。前記温度を維持しながら、50.0g(359.4ミリモル)のパラ-ニトロフェノールおよび0.25gのテトラブチルアンモニウムヨージドをゆっくりと加えた。得られた懸濁液を55~60℃の温度で徐々に加熱し、31.4mLのクロロアセトンを前記温度間隔でゆっくりと加えた。反応混合物を65~70℃の温度で加熱し、前記温度で4時間撹拌し続けた。
【0148】
前記温度で撹拌を続けた後、反応混合物を約20℃の温度で冷却し、反応から得られた塩を濾過した。溶媒を真空蒸留し、73.5gの、1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンに相当する固体を得た。
【0149】
実施例B2:(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンの取得
31.4g(153.7ミリモル)の、実施例B1によって得られた1-(4-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オンを、33.3mLのN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール(184.45ミリモル)と混合し、得られた混合物を45~50℃の温度で加熱して溶液を得、これを指示された温度で4時間撹拌し続けた。
【0150】
前記温度で撹拌を続けた後、120mLのジイソプロピルエーテルをゆっくりと加え、混合物の温度は45~50℃で維持した。得られた懸濁液を20℃の温度で冷却し、12時間撹拌し続けた。次に、混合物を0~5℃の温度で冷却し、1時間撹拌し続けた。得られた固体を濾過し、25~30℃の炉で乾燥させ、最後に、26.36gの(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オン(パラ-ニトロフェノールからの収率68.6%)を得た。純度はガスクロマトグラフィーにより99.5%であった。
【0151】
実施例B3:2,4-ジメチル-5-(4-ニトロフェノキシ)ピリミジンの取得
24.4g(252.8ミリモル)の98%アセトアミジン塩酸塩を、260mLのメタノールと混合した。温度を20~30℃に維持しながら、45.5gの、事前に調製した、メタノール中ナトリウムメトキシドの30質量%溶液をゆっくりと加え、次に、26.36g(105.3ミリモル)の(Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンをゆっくりと加えた。反応混合物を65~70℃の温度に加熱し、前記温度で6時間撹拌し続けた。
【0152】
前記温度で撹拌を続けた後、反応混合物を18~20℃で冷却し、前記温度で1時間撹拌し続け、得られた固体を濾過した。それによって得られた溶液から溶媒を真空蒸留し、2,4-ジメチル-5-(4-ニトロフェノキシ)ピリミジンに相当する固体を得た。
【0153】
実施例B4:2,4-ジメチルピリミジン-5-オールの取得
実施例B3のステップで得られた固体を、約20℃の温度で130mLのメタノールに溶解した。温度を35~40℃に維持しながら、26.4g(316.0ミリモル)の事前に調製した48質量%の水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を約65℃の温度で加熱し、前記温度で12時間撹拌し続けた。
【0154】
前記温度で撹拌を続けた後、反応混合物を30~35℃で冷却し、約65mL量の溶媒を真空蒸留した。130mLの水および40mLのトルエンを加え、得られた混合物を30~35℃の温度で1時間撹拌し続けた。得られた有機相を分離し、40mLのトルエンを、前記温度を維持しながら水相に加えた。新しい有機相を分離し、得られた水相を約20℃の温度で冷却した。36%HCl水溶液を、pH値約3.5に達するまでゆっくりと加えた。それによって得られた水溶液を各40mLのトルエンで2回連続洗浄し、次に、pHを30%NaOH水溶液で約5.5の値に調整した。1.5gの炭素および1.5gの珪藻土を加え、得られた混合物を20~25℃の温度で30分間撹拌し続けた。固体を濾過によって分離し、10mLの水で3回洗浄し、これまでに得られた水溶液と共にプールした。pHを30%NaOH水溶液で6~7の値まで調整し、100mLの酢酸エチルを加えた。有機相を分離し、水相を各80mLの酢酸エチルで2回追加洗浄した。プールした有機相から溶媒を真空蒸留し、10.43gの、2,4-ジメチルピリミジン-5-オールに相当する固体((Z)-4-(ジメチルアミノ)-3-(4-ニトロフェノキシ)ブタ-3-エン-2-オンからの収率79.7%)を得た。純度は、ガスクロマトグラフィー分析により99.7%またはUHPLC分析により99.81%であった。
【0155】
材料および方法
クロマトグラフィー
得られた生成物の純度をガスクロマトグラフィーにより分析した場合、以下の実験条件に従った:
・非極性CP Sil 5CBカラム(寸法10m×0.53mmのオープンチューブラーフューズドシリカカラム)
・インジェクター温度:220℃
・検出器温度:260℃
・カラム温度:50~250℃の10℃/分勾配、250℃で10分間維持
・感度:10-10
・減衰:4
・キャリアガス:N
・インジェクター:スプリット(スプリットサンプル注入)
【0156】
得られた生成物の純度を超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析した場合、可変波長検出器およびカラム用恒温槽を備えたWaters社製装置を使用した。CSH C18カラム(1.7μm×50mmおよび3mm)および移動相A(酢酸アンモニウム 10mM、pH4.8)およびB(アセトニトリル)以下の分析条件で使用した:
・流速:(mL/分):0.5
・カラム温度(℃):40
・波長(nm):225
・注入量(μL):1
・取得時間(分):10
・希釈剤:アセトニトリル/水(1:1)
・勾配:
【0157】
【表1】
【0158】
示差走査熱量測定(DSC)
DSC分析は、STARe SW15ソフトウェアを備えたMettler Toledo社製822e装置で行った。パラメーター:加熱範囲30~300℃(10℃/分の勾配)および50mL/分のN流。測定は、閉じた有孔カプセルを使用して行われる。
【0159】
核磁気共鳴
プロトン核磁気共鳴分析分析(H-NMR)および13C-NMRは、400MHz Brucker Avance III分光計で行った。化学シフトは、DMSO-dシグナルに関する(プロトンの場合は2.54ppmおよび炭素の場合は40.5ppm)。
【0160】
X線結晶学(XRPD)
XRPD分析は、銅陽極を備えたBRUKER D2 PHASER X線粉末回折計を使用して行った。使用される放射線は、波長1.54060ÅのCuKαである。スキャンパラメーター:3~50 2θ度、連続スキャン、割合:5.6度/分。
【0161】
本明細書において先に説明したように、本発明は、以下の側面および態様を包含する:
【0162】
態様1.式(I):
【化42】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩の調製方法であって、式(II)
【化43】
の化合物をN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールと反応させることを含む、方法。
【0163】
態様2.前記式(I)および式(II)の化合物の-NO基が、オルト位またはパラ位、好ましくはオルト位にある、態様1に記載の方法。
【0164】
態様3.前記式(II)の化合物に対するN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタールの割合が、前記式(II)の化合物1モルに対してN,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール1~2モルである、態様1~2のいずれか一項に記載の方法。
【0165】
態様4.トルエンの存在下で行われる、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
態様5.溶媒の不在下で行われる、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
態様6.45~50℃の温度で行われる、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0168】
態様7.ジイソプロピルエーテル、好ましくは、式(II)の化合物1グラムに対して3~5mLのジイソプロピルエーテルで処理する後の工程を含む、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0169】
態様8.ジイソプロピルエーテルでの処理が、20~25℃の温度で行われる、態様7に記載の方法。
【0170】
態様9.式(III):
【化44】
の化合物またはその塩の調製方法であって、
態様1~8のいずれか一項に記載の方法を行って、式(I):
【化45】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩を得ること;
および前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(III)の化合物またはその塩に変換すること
を含む、方法。
【0171】
態様10.
a)態様1~9のいずれか一項に記載の方法を行って、式(I):
【化46】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩得ること;
b)前記式(I)の化合物またはその立体異性体もしくは塩を式(IV)の化合物またはその塩と、塩基の存在下で反応させて、式(V)の化合物またはその塩を生成すること
【化47】
および
c)前記式(V)の化合物またはその塩を加水分解して、前記式(III)の化合物またはその塩を生成すること
を含む、態様9に記載の方法。
【0172】
態様11.前記式(I)の化合物および前記式(V)の化合物の-NO基が、オルト位またはパラ位、好ましくはオルト位にある、態様9または10に記載の方法。
【0173】
態様12.工程b)の塩基が、アルカリ金属C-Cアルコキシド、好ましくはナトリウムC-Cアルコキシド、より好ましくはナトリウムエトキシドまたはナトリウムメトキシド、さらにより好ましくはナトリウムエトキシドである、態様10または11に記載の方法。
【0174】
態様13.工程b)が、C-Cアルカノールからなる群から選択される溶媒、好ましくはエタノール、メタノール、またはそれらの混合物、さらにより好ましくはエタノールの存在下で行われる、態様10~12のいずれか一項に記載の方法。
【0175】
態様14.工程c)が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される塩基の存在下で行われる、態様10~13のいずれか一項に記載の方法。
【0176】
態様15.前記塩基が、水酸化ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択され、好ましくは水酸化ナトリウムである、態様14に記載の方法。
【0177】
態様16.工程c)が、水性溶媒、好ましくは水とC-Cアルカノールの混合物、好ましくは水とエタノールの混合物または水とメタノールの混合物、さらにより好ましくは水とエタノールの混合物の存在下で行われる、態様10~15のいずれか一項に記載の方法。
【0178】
態様17.前記式(II)の化合物が、式(VI)の化合物と式(VII)の化合物
【化48】
の反応によって得られる(式中、Xは、塩素または臭素、好ましくは塩素である)、態様1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0179】
態様18.前記式(VI)の化合物の-NO基が、オルト位またはパラ位、好ましくはオルト位にある、態様17に記載の方法。
【0180】
態様19.前記反応が、塩基および相間移動触媒の存在下で行われる、態様17または18に記載の方法。
【0181】
態様20.前記塩基が、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、好ましくは炭酸カリウムであり、かつ/あるいは前記相間移動触媒が、テトラブチルアンモニウムヨージドである、態様19に記載の方法。
【0182】
態様21.レンボレキサントの調製方法であって、
a)態様9~20のいずれか一項に記載の方法を行って、式(III):
【化49】
の化合物またはその塩を得ること;
b)前記式(III)の化合物またはその塩を式(VIII)の化合物と、塩基の存在下で反応させて、式(IX)の化合物を生成すること
【化50】
c)前記式(IX)の化合物を塩基の存在下で加水分解して、式(X):
【化51】
の化合物を生成すること;
d)前記式(X)の化合物を酸化剤で処理して、式(XI):
【化52】
の化合物を生成すること;および
e)前記式(XI)の化合物を式(XII):
【化53】
の化合物と、塩基およびカップリング剤の存在下で反応させて、レンボレキサントを生成すること
を含む、方法。
【0183】
態様22.工程b)の塩基が、アルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸セシウムである、態様21に記載の方法。
【0184】
態様23.工程c)の塩基が、水酸化ナトリウムである、態様21または22のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
態様24.工程d)の酸化剤が、NaClOおよびNaClOである、態様21~23のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
態様25.工程e)の塩基が、有機アミン、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、かつ/あるいは工程e)のカップリング剤が、プロピルホスホン酸無水物である、態様21~24のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
態様26.CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルは、9.9、12.2、16.2、18.7、20.0、24.5、27.0°2θ±0.2°2θにピークを含むことを特徴とする、式(IIa):
【化54】
の化合物の結晶形態。
【0188】
態様27.閾値温度が約57.6℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約208.0℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする、態様26に記載の式(IIa)の化合物の結晶形態。
【0189】
態様28.式(Ia):
【化55】
の化合物またはその立体異性体もしくは塩。
【0190】
態様29.CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、11.6、16.6、18.7、21.5、22.9、23.4、23.7、26.4°2θ±0.2°2θにピークを含む結晶性固体であることを特徴とする、態様28に記載の式(Ia)の化合物。
【0191】
態様30.閾値温度が約149.9℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約230.4℃±2℃の発熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする、態様29に記載の式(Ia)の化合物。
【0192】
態様31.式(Va):
【化56】
の化合物。
【0193】
態様32.CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルが、12.5、14.6、17.6、23.6、25.1°2θ±0.2°2θにピークを含む結晶性固体であることを特徴とする、態様31に記載の式(Va)の化合物。
【0194】
態様33.閾値温度が約104.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする、態様32に記載の式(Va)の化合物。
【0195】
態様34.前記式(III)の化合物またはその塩の調製における、式(IIa)の化合物、態様26もしくは27のいずれか一項に記載の式(IIa)の化合物の結晶形態、態様28~30のいずれか一項に記載の式(Ia)の化合物もしくはその立体異性体、および/または態様31~33のいずれか一項に記載の式(Va)の化合物の使用。
【0196】
態様35.レンボレキサントの調製における、式(IIa)の化合物、態様26もしくは27のいずれか一項に記載の式(IIa)の化合物の結晶形態、態様28~30のいずれか一項に記載の式(Ia)の化合物もしくはその立体異性体、および/または態様31~33のいずれか一項に記載の式(Va)の化合物の使用。
【0197】
態様36.CuKα線を使用して測定された粉末X線回折スペクトルは、12.8、15.5、16.6、17.9、21.8、22.1、23.6、25.0、25.7、27.1、30.1°2θ±0.2°2θにピークを含むことを特徴とする、前記式(III)の化合物の結晶形態。
【0198】
態様37.閾値温度が約137.1℃±2℃の吸熱ピークと閾値温度が約267.9℃±2℃の吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)図を示すことを特徴とする、態様36に記載の結晶形態。

図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】