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特開2023-177343感光性組成物及びその製造方法、硬化物及びその製造方法、表示素子並びにポリイミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177343
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】感光性組成物及びその製造方法、硬化物及びその製造方法、表示素子並びにポリイミド
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20231206BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20231206BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20231206BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20231206BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20231206BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20231206BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20231206BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231206BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G03F7/023
H10K59/122
H10K59/173
H10K50/84
H10K85/10
H10K71/20
H10K71/40
G09F9/30 348A
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090260
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2022089623
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】樫下 幸志
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
4J043
5C094
【Fターム(参考)】
2H225AE02P
2H225AE05P
2H225AE06P
2H225AF04P
2H225AF05P
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2H225AN02P
2H225AN24P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225BA01P
2H225BA22P
2H225CB02
2H225CC03
2H225CC21
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3K107DD90
3K107DD97
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3K107GG11
3K107GG26
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5C094HA05
5C094HA07
5C094HA08
5C094JA01
(57)【要約】
【課題】基板との密着性が高く、しかもアウトガスの発生が少ない硬化物を得ることができる感光性組成物を提供すること。
【解決手段】[A]ポリイミドと、[B]感光性化合物と、[C]溶剤とを含有し、[A]ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、ジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有するジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、かつ、テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である感光性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ポリイミドと、
[B]感光性化合物と、
[C]溶剤と、
を含有し、
前記[A]ポリイミドは、前記[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、前記[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する特定ジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、かつ、前記[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である、感光性組成物。
【請求項2】
前記特定ジアミンは、フルオレン環構造、インデン環構造、インダン環構造、ラクトン環構造、ステロイド構造及びハロゲン化アルキル構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記特定ジアミンの分子量が300以上である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記[A]ポリイミドは、フルオレン環構造、インデン環構造、インダン環構造、ラクトン環構造、ステロイド構造及びハロゲン化アルキル構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有するジアミン(ただし、前記特定ジアミンを除く。)に由来する構造単位を更に含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記[B]感光性化合物がキノンジアジド化合物である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記[A]ポリイミドのイミド化率が10%以上である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
モノカルボン酸化合物を含有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項8】
モノカルボン酸化合物の含有割合が0.001質量%以上7.0質量%以下である、請求項7に記載の感光性組成物。
【請求項9】
層間絶縁膜、平坦化膜又は隔壁形成用である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記[A]ポリイミドは、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記[C]溶剤は、非プロトン性極性溶媒及びフェノール性溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記[C]溶剤は更に、アルコール類、ケトン類、エステル類及びエーテル類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項11に記載の感光性組成物。
【請求項13】
更に架橋剤を含有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の感光性組成物を製造する方法であって、
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを前記[C]溶剤中で反応させて前記[A]ポリイミドを含有する溶液を得る重合工程と、
前記重合工程により得られた前記[A]ポリイミドを含有する重合体溶液をそのまま用い、前記重合体溶液と前記[B]感光性化合物とを混合する混合工程と、
を含む、感光性組成物の製造方法。
【請求項15】
前記重合工程は、酸無水物を用いた化学イミド化により前記[A]ポリイミドを製造する工程である、請求項14に記載の感光性組成物の製造方法。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の感光性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、
前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程と、
放射線照射後の前記塗膜を現像する工程と、
現像された前記塗膜を加熱する工程と、
を含む、硬化物の製造方法。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の感光性組成物を用いて形成された硬化物。
【請求項18】
層間絶縁膜、平坦化膜又は隔壁である、請求項17に記載の硬化物。
【請求項19】
請求項18に記載の硬化物を備える表示素子。
【請求項20】
ポリイミドであって、
前記ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、
前記ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基を有するジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、
前記ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である、ポリイミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物及びその製造方法、硬化物及びその製造方法、表示素子並びにポリイミドに関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスが有する層間絶縁膜や平坦化膜等の硬化膜を製造する方法として近年ではフォトリソグラフィ法が主流となっている。フォトリソグラフィ法により表示デバイスの硬化膜を製造する場合、重合体、感光性化合物及び溶剤を含有する感光性組成物を基板上に塗布して塗膜を形成した後、所定の開口パターンを有するフォトマスクを介して露光し、次いで現像液と接触させて露光部又は未露光部を溶解除去することによりパターン化された硬化膜を形成する方法が一般に採用されている。また、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた表示デバイスでは、表示エリアを隔壁(バンクともいう)により区画し、隔壁間に有機発光物質を塗布して有機発光層を形成することが行われている。近年では隔壁もまた、感光性組成物を用いたフォトリソグラフィ法により形成することが行われている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、特定の脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位と、ジアミノポリシロキサンに由来する構造単位とを含むポリイミドを特定の溶剤、感光性酸発生剤及び架橋剤と共に含有する感光性樹脂組成物により、半導体素子の層間絶縁膜や表面保護膜を形成することが開示されている。また、特許文献2には、アルカリ可溶性樹脂として、ケイ素原子を有するジアミンに由来する構造単位を含むポリイミドを感光剤と共に含有する感光性樹脂組成物により、有機EL表示装置の平坦化層及び画素分割層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/052540号
【特許文献2】特開2021-39295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示デバイスの新しい形態として、近年、折り畳み可能な(Foldable)携帯電話やスマートフォン、タブレット端末が提案されている。折り畳み可能な表示デバイスは、コンパクトに持ち運ぶことが可能でありながら広い表示画面を確保でき、利便性が高い一方、折り曲げ部に応力が集中しやすく、折り曲げ部において硬化膜の浮きや剥がれが生じやすい。こうした新しい形態の表示デバイスを考慮し、表示デバイスが有する硬化膜としては、従来よりも厳しい基準で基板との密着性を確保できることが要求される。
【0006】
また、硬化膜から発生するアウトガスは、表示デバイスの信頼性に影響を及ぼすと考えられる。特に有機EL素子はより高精細であることが求められており、硬化膜から発生するアウトガスをできるだけ低減させる必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板との密着性が高く、しかもアウトガスの発生が少ない硬化物を得ることができる感光性組成物を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の感光性組成物及びその製造方法、硬化物及びその製造方法、表示素子並びにポリイミドが提供される。
【0009】
[1] [A]ポリイミドと、[B]感光性化合物と、[C]溶剤と、を含有し、前記[A]ポリイミドは、前記[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、前記[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する特定ジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、かつ、前記[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である、感光性組成物。
【0010】
[2] 上記[1]の感光性組成物を製造する方法であって、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを前記[C]溶剤中で反応させて前記[A]ポリイミドを含有する溶液を得る重合工程と、前記重合工程により得られた前記[A]ポリイミドを含有する重合体溶液をそのまま用い、前記重合体溶液と前記[B]感光性化合物とを混合する混合工程と、を含む、感光性組成物の製造方法。
[3] 上記[1]の感光性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程と、放射線照射後の前記塗膜を現像する工程と、現像された前記塗膜を加熱する工程と、を含む、硬化物の製造方法。
[4] 上記[1]の感光性組成物を用いて形成された硬化物。
[5] 上記[4]の硬化物を備える表示素子。
[6] ポリイミドであって、前記ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、前記ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基を有するジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、前記ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である、ポリイミド。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性組成物によれば、基板との密着性が高く、しかもアウトガスの発生が少ない硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】トップエミッション型構造の有機EL素子の概略構成を示す図。
図2】ボトムエミッション型構造の有機EL素子の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。「構造単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。
【0014】
[感光性組成物]
本開示の感光性組成物(以下、「本組成物」ともいう)は、表示装置が有する層間絶縁膜、平坦化膜及び隔壁のうち1種以上を形成するための感光性組成物として有用である。本組成物は、[A]ポリイミドと、[B]感光性化合物と、[C]溶剤とを含有する。以下、本組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。なお、各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。
【0016】
<[A]ポリイミド>
[A]ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重縮合体であり、イミド環構造を有する。[A]ポリイミドのイミド化率は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。[A]ポリイミドのイミド化率が上記範囲であると、本組成物を用いて得られる硬化物からのアウトガス量が少なく、また高温高湿の過酷な条件下における基板との密着性及び表面平坦性が良好であり、かつ金属腐食を生じさせにくい硬化物を得ることができる。また、[A]ポリイミドのアルカリ現像液への溶解性が高くなり過ぎず、良好な解像性を示す感光性組成物とすることができる。[A]ポリイミドのイミド化率は、合成容易性の観点から、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。なお、イミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。
【0017】
[A]ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることによりポリアミック酸を合成し、次いでポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。本組成物に含有される[A]ポリイミドは、以下の条件1、条件2及び条件3を満たす単量体組成を有する。
条件1:[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上である。
条件2:[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう)に由来する構造単位の割合が30モル%以上である。
条件3:[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である。
【0018】
(テトラカルボン酸二無水物)
[A]ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0019】
ここで、本明細書において、「脂肪族テトラカルボン酸二無水物」とは、テトラカルボン酸二無水物が有する2個の酸無水物基(-CO-O-CO-)が鎖状又は環状の脂肪族基に結合したテトラカルボン酸二無水物をいう。すなわち、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物が有する2個の酸無水物基が鎖状構造に結合した鎖状テトラカルボン酸二無水物であってもよく、テトラカルボン酸二無水物が有する2個の酸無水物基が同一若しくは異なる脂肪族環に結合しているか又は2個の酸無水物基のうち一方が脂肪族環に結合し、他方が鎖状構造に結合した脂環式テトラカルボン酸二無水物であってもよい。なお、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、テトラカルボン酸二無水物が有する2個の酸無水物基が鎖状又は環状の脂肪族基に結合している限り、芳香環構造を有していてもよい。「芳香族テトラカルボン酸二無水物」とは、テトラカルボン酸二無水物が有する2個の酸無水物基のうち1個以上が芳香環に結合したテトラカルボン酸二無水物をいう。芳香族テトラカルボン酸二無水物において、2個の酸無水物基が共に芳香環に結合している場合、2個の酸無水物基は同一の芳香環に結合していてもよく、異なる芳香環に結合していてもよい。
【0020】
[A]ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、鎖状テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-カルボキシメチルノルボルナン-2:3,5:6-二無水物等が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリメート、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0021】
[A]ポリイミドにつき、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して60モル%以上である。脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の含有割合が60モル%未満であると、[A]ポリイミドの[C]溶剤への溶解性が十分でなく、本組成物の塗布性及び本組成物により得られる硬化物の表面平坦性が劣る傾向がある。また、テトラカルボン酸二無水物の重合溶媒(好ましくは[C]溶剤)への溶解性が十分でなく、重合溶媒中の単量体濃度が低くなる結果、[A]ポリイミドの生産性に劣る傾向がある。このような観点から、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対して、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましい。
【0022】
[A]ポリイミドは、重合溶媒中の単量体濃度を高くして[A]ポリイミドの生産性の向上を図りつつ、得られる硬化物からのアウトガスが少なく、かつ高温高湿の厳しい条件に置いた後の基板との密着性及び平坦性に優れた硬化物を得る観点から、中でも、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含むことが好ましく、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物及びシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含むことがより好ましい。
【0023】
(ジアミン化合物)
[A]ポリイミドを構成するジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン及び芳香族ジアミンが挙げられる。
【0024】
ここで、本明細書において、「脂肪族ジアミン」とは、ジアミン化合物が有する2個の1級アミノ基(-NH)が鎖状又は環状の脂肪族基に結合したジアミン化合物をいう。すなわち、脂肪族ジアミンは、ジアミン化合物が有する2個の1級アミノ基が鎖状構造に結合した鎖状ジアミンであってもよく、ジアミン化合物が有する2個の1級アミノ基が同一若しくは異なる脂肪族環に結合しているか又は2個の1級アミノ基のうち一方が脂肪族環に結合し、他方が鎖状構造に結合した脂環式ジアミンであってもよい。なお、脂肪族ジアミンは、ジアミン化合物が有する2個の1級アミノ基が鎖状又は環状の脂肪族基に結合している限り、芳香環構造を有していてもよい。「芳香族ジアミン」とは、ジアミン化合物が有する2個の1級アミノ基のうち1個以上が芳香環に結合したジアミン化合物をいう。芳香族ジアミンにおいて、2個の1級アミノ基が共に芳香環に結合している場合、2個の1級アミノ基は同一の芳香環に結合していてもよく、異なる芳香環に結合していてもよい。
【0025】
・特定ジアミン
[A]ポリイミドを構成する特定ジアミンは、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基(-SOH)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基(以下、「官能基F1」ともいう)を有する。特定ジアミンが有する官能基F1の数は特に限定されない。特定ジアミンが有する官能基F1の数は、1~6個が好ましく、2~4個がより好ましい。アルカリ現像液への溶解性及び硬化物の透明性が高く、金属腐食の抑制効果が高い点において、官能基F1は上記の中でもフェノール性水酸基が好ましい。
【0026】
特定ジアミンの分子量は特に限定されない。重合溶媒(好ましくは[C]溶剤)への溶解性が高く、重合溶媒中の単量体濃度を高くできる点で、特定ジアミンの分子量は300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、450以上であることが更に好ましく、500以上であることがより更に好ましい。また、本組成物の塗布性及び本組成物により得られる硬化物の表面平坦性を良好にする観点から、特定ジアミンの分子量は850以下であることが好ましく、750以下であることがより好ましい。
【0027】
重合溶媒(好ましくは[C]溶剤)への溶解性が高く、ひいては重合により得られる反応溶液中のポリイミド濃度を高くできる点において、特定ジアミンは、フルオレン環構造、インデン環構造、インダン環構造、ラクトン環構造、ステロイド構造及びハロゲン化アルキル構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有することが好ましい。中でも、フルオレン環構造を有するジアミンは重合溶媒への溶解性が高く好適である。
【0028】
重合溶媒への溶解性を確保しつつ、本組成物により得られる硬化物の表面平坦性を良好にする観点から、特定ジアミンは芳香族ジアミンであることが好ましい。特定ジアミンの具体例としては、下記式(A-1)~式(A-7)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化1】
【0029】
・他のジアミン
[A]ポリイミドを構成するジアミン化合物は、特定ジアミンのみであってもよいし、特定ジアミンと、官能基F1を有しないジアミン(以下、「他のジアミン」ともいう)との併用であってもよい。他のジアミンとしては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、鎖状ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。
【0030】
他のジアミンの具体例としては、鎖状ジアミンとして、メタキシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。脂環式ジアミンとしては、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘプタン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4-アミノフェニル-4-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサン、6,6’-(ペンタメチレンジオキシ)ビス(3-アミノピリジン)、N,N’-ジ(5-アミノ-2-ピリジル)-N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)エチレンジアミン、ビス[2-(4-アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェネチルウレア、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-(フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジアミノアクリジン、N4,N4’-ビス(4-アミノフェニル)-N4,N4’-ジメチルベンジジン、N,N’-ビス(5-アミノピリジン-2-イル)-N,N’-ジ(tert-ブトキシカルボニル)エチレンジアミン、ヘキサデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,4-ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ-2,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステリルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、コレステリルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステリル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6-ビス(4-アミノフェノキシ)コレスタン、4-(4’-トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート、1,1-ビス(4-((アミノフェニル)メチル)フェニル)-4-ブチルシクロヘキサン、3,5-ジアミノ安息香酸=5ξ-コレスタン-3-イル、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン等が挙げられる。ジアミノオルガノシロキサンとしては、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アニリノ)テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0031】
重合溶媒(好ましくは[C]溶剤)への溶解性に優れ、重合溶媒中の単量体濃度を高くできる点において、他のジアミンは、フルオレン環構造、インデン環構造、インダン環構造、ラクトン環構造、ステロイド構造及びハロゲン化アルキル構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有するジアミン(以下、「ジアミンD1」ともいう)を含むことが好ましい。中でも、フルオレン環構造、インデン環構造及びインダン環構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有するジアミンを含むことが好ましい。
【0032】
[A]ポリイミドにつき、特定ジアミンに由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して30モル%以上である。特定ジアミンに由来する構造単位の含有割合が30モル%未満であると、[A]ポリイミドのアルカリ現像液への溶解性が十分でなく、解像性に劣る傾向がある。また、得られる硬化物からのアウトガスが多くなったり、硬化物の平坦性及び基板との密着性(特に、金属表面との密着性)が低下したりする傾向がある。重合溶媒中の単量体濃度を高くして[A]ポリイミドの生産性の向上を図りつつ、得られる硬化物からのアウトガスが少なく、かつ平坦性及び高温高湿に曝した後の基板との密着性に優れた硬化物を得る観点から、特定ジアミンに由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。また、未露光部の現像液に対する溶解性が高くなりすぎることを抑制し、本組成物の解像性を良好に維持する観点から、特定ジアミンに由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましい。
【0033】
ジアミンD1に由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましい。また、ジアミンD1に由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対して、65モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましい。
【0034】
基板との密着性が高く、かつアウトガスの発生が少ない硬化物を得ることができる点、及び本組成物を用いて得られた硬化物による金属腐食を抑制できる点で、[A]ポリイミドは、スルホニル基(-SO-)を有する単量体に由来する構造単位を含まないか、又はスルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の含有割合が少ないことが好ましい。なお、スルホニル基(-SO-)は、2個の結合手が共に炭素原子に結合している点においてスルホ基(-SOH)とは区別される。
【0035】
具体的には、[A]ポリイミドにつき、[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合は、0モル%以上25モル%未満である。[A]ポリイミドにおいて、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の含有割合が25モル%以上であると、基板との密着性が低下しやすく、また本組成物を用いて得られた硬化物による金属腐食が生じやすい。このような観点から、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の含有割合は、[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対して、0モル%以上20モル%以下が好ましく、0モル%以上10モル%以下がより好ましく、0モル%以上5モル%以下が更に好ましく、0モル%以上0.5モル%以下がより更に好ましい。
【0036】
(ポリイミドの合成)
・ポリアミック酸の合成
[A]ポリイミドは、ポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリアミック酸の合成方法は特に限定されない。ポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。
【0037】
ポリアミック酸の合成反応において、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2~2当量となる割合が好ましい。分子量調整剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン等のモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
【0038】
ポリアミック酸の合成反応において、反応温度は-20℃~150℃が好ましく、反応時間は0.1~24時間が好ましい。
【0039】
反応に使用する有機溶媒(すなわち重合溶媒)としては、合成されるポリアミック酸を溶解可能な有機溶媒(以下、「第1溶媒」ともいう)を好ましく使用できる。第1溶媒の具体例としては、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒が挙げられる。これらの具体例としては、非プロトン性極性溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、プロピレンカーボネート、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ヘキシルオキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、イソプロピルオキシ-N-イソプロピル-プロピオンアミド、n-ブトキシ-N-イソプロピル-プロピオンアミド等が挙げられる。フェノール系溶媒としては、m-クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等が挙げられる。
【0040】
また、重合溶媒としては、合成されるポリアミック酸が析出しない範囲で、ポリアミック酸の貧溶媒(以下、「第2溶媒」ともいう)を併用してもよい。第2溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類及び炭化水素類が挙げられる。これらの具体例としては、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。エステル類としては、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルメトキシプロピオネ-ト、シュウ酸ジエチル、イソアミルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ギ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソペンチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、トリクロロエタン等が挙げられる。炭化水素類としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0041】
重合溶媒として第2溶媒を使用する場合、第2溶媒の割合を、合成に使用する重合溶媒の全量に対して50質量%以下とすることが好ましく、40質量%以下とすることがより好ましく、30質量%以下とすることが更に好ましい。ポリアミック酸の合成に際し、重合溶媒の使用割合は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計量が、重合溶液の全量に対して0.1~50質量%になる量とすることが好ましい。
【0042】
ポリアミック酸の合成に際し、重合溶媒として[C]溶剤と同一組成の溶媒を用いることにより、本組成物を製造する際に脱溶媒を行う工程を省略でき、本組成物の生産性を高めることができる。
【0043】
・イミド化
ポリアミック酸の脱水閉環は、[i]ポリアミック酸を加熱する方法(熱イミド化)により、又は[ii]ポリアミック酸が有機溶媒に溶解されたポリアミック酸溶液と、脱水剤と、脱水閉環触媒とを混合し、必要に応じて加熱する方法(化学イミド化)により行うことができる。
【0044】
上記[i]の方法において、反応温度は、好ましくは50~200℃であり、より好ましくは60~170℃である。反応温度を50℃以上とすることにより脱水閉環反応を十分に進行させることができる。また、反応温度を200℃以下とすることにより、得られるポリイミドの分子量が低下することを抑制できる。反応時間は、好ましくは0.5~48時間であり、より好ましくは2~20時間である。
【0045】
一方、上記[ii]の方法において、脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等のモノカルボン酸無水物を用いることができる。これらのうち、反応性の観点から、無水酢酸を好ましく使用できる。脱水剤の使用割合は、アミック酸構造単位の1モルに対して0.01~20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン、N-メチルピペリジン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用割合は、使用する脱水剤1モルに対して0.01~10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いる有機溶媒として例示した溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0~180℃であり、より好ましくは10~150℃である。反応時間は、好ましくは0.5~20時間であり、より好ましくは1~8時間である。
【0046】
上記方法[i]により得られたポリイミドは、これをそのまま感光性組成物の調製に用いてもよく、あるいは、得られたポリイミドを精製したうえで感光性組成物の調製に用いてもよい。上記方法[ii]では、ポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま感光性組成物の調製に用いてもよく、あるいは、溶媒置換等の方法により反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで感光性組成物の調製に用いてもよい。また、ポリイミドを単離したうえで感光性組成物の調製に用いてもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで感光性組成物の調製に用いてもよい。ポリイミドの単離及び精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0047】
[A]ポリイミドは、上記方法[ii](すなわち化学イミド化)により製造されることが好ましい。化学イミド化により製造された[A]ポリイミドを用いることにより、得られた硬化物による金属腐食を抑制できるとともに、有機EL素子の信頼性(特に発光信頼性)を高くできる。
【0048】
[A]ポリイミドの溶液粘度につき、濃度10質量%の溶液としたときに10~800mPa・sの溶液粘度を持つことが好ましく、15~500mPa・sの溶液粘度を持つことがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、[A]ポリイミドの良溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等)を用いて調製した濃度10質量%のポリイミド溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0049】
[A]ポリイミドにつき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
【0050】
<[B]感光性化合物>
本組成物に含まれる[B]感光性化合物としては、波長300nm以上(好ましくは300~450nm)の活性光線に感応し、酸を発生する感光剤を好ましく使用できる。波長300nm以上の活性光線に直接感応しない感光剤を用いる場合、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生するようにしてもよい。
【0051】
[B]感光性化合物としては、酸解離定数(pKa)が4以下である酸を発生する化合物を好ましく使用できる。[B]感光性化合物により発生される酸の酸解離定数は、より好ましくは3以下であり、更に好ましくは2以下である。
【0052】
[B]感光性化合物の具体例としては、例えば、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩(スルホニウム塩、ヨードニウム塩、第4級アンモニウム塩等)、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物(トリクロロメチル-s-トリアジン化合物等)、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物等が挙げられる。これらのうち、[B]感光性化合物は、キノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0053】
キノンジアジド化合物は、放射線の照射によりカルボン酸を発生する感光剤である。キノンジアジド化合物としては、フェノール性化合物又はアルコール性化合物(以下、「母核」ともいう)と、オルソナフトキノンジアジド化合物との縮合物が挙げられる。これらのうち、使用するキノンジアジド化合物は、母核としてのフェノール系水酸基を有する化合物と、オルソナフトキノンジアジド化合物との縮合物が好ましい。母核の具体例としては、例えば、特開2014-186300号公報の段落0065~0070に記載された化合物が挙げられる。オルソナフトキノンジアジド化合物は、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドが好ましい。
【0054】
キノンジアジド化合物としては、母核としてのフェノール性化合物又はアルコール性化合物と、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物を好ましく使用でき、フェノール性化合物と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物をより好ましく使用できる。
【0055】
キノンジアジド化合物の具体例としては、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,3,4,2',4'-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、1,4-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、4,6-ビス[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]-1,3-ジヒドロキシベンゼン、及び4,4'-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールから選ばれるフェノール性水酸基含有化合物と、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロリド又は1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリドとのエステル化合物が挙げられる。
【0056】
上記縮合物を得るための縮合反応において、母核と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの割合は、1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドの使用量を、母核中のOH基の数に対して、好ましくは30~85モル%、より好ましくは50~70モル%に相当する量とする。なお、上記縮合反応は、公知の方法に従って行うことができる。
【0057】
本組成物における[B]感光性化合物の含有割合は、硬化反応を十分に進行させる観点から、本組成物に含まれる[A]ポリイミドの全量100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。また、[B]感光性化合物の含有割合は、未露光部のアルカリ現像液への溶け残りを抑制する観点から、感光性組成物に含まれる[A]ポリイミドの全量100質量部に対して、55質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましい。
【0058】
<[C]溶剤>
本組成物は、[A]ポリイミド、[B]感光性化合物、及び必要に応じて配合される成分が、好ましくは[C]溶剤に溶解又は分散された液状の組成物である。[C]溶剤としては、感光性組成物に含まれる成分と反応せず、適度の揮発性を有する有機溶媒を好ましく使用できる。
【0059】
[C]溶剤の具体例としては、ポリアミック酸の合成反応に用いられる有機溶媒として例示した第1溶媒及び第2溶媒を挙げることができる。[C]溶剤は、非プロトン性極性溶媒及びフェノール性溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、塗布性を高くできる点において、アルコール類、ケトン類、エステル類及びエーテル類よりなる群から選択される少なくとも1種を更に含むことがより好ましい。
【0060】
第1溶媒としては、中でも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、第2溶媒は、アルコール類、エステル類及びエーテル類よりなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。[C]溶剤として第2溶媒を使用する場合、第2溶媒の使用割合は、ポリアミック酸の合成反応に用いられる有機溶媒の説明と同様である。[C]溶剤として重合溶媒と同一組成の溶媒を用いることにより、本組成物を製造する際に脱溶媒を行う工程を省略でき、本組成物の生産性を高めることができる。
【0061】
<その他の成分>
本組成物は、上述した[A]ポリイミド、[B]感光性化合物及び[C]溶剤に加え、これら以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、モノカルボン酸化合物、架橋剤、現像促進剤等が挙げられる。
【0062】
(モノカルボン酸化合物)
化学イミド化により[A]ポリイミドを合成し、得られたポリイミド溶液をそのまま用いて本組成物を製造した場合、[A]ポリイミドの合成に際し脱水剤として使用したモノカルボン酸無水物に由来するモノカルボン酸化合物が本組成物に含有される。本組成物にモノカルボン酸化合物が含まれている場合、[A]ポリイミドのアルカリ現像液への溶解が促進され、現像速度を速くできる点や、感度を良好にできる点で好ましい。例えば、ポリアミック酸のイミド化の際に脱水剤として無水酢酸を用いた場合、[A]ポリイミドの合成により得られたポリイミド溶液をそのまま用いて本組成物を製造することにより、酢酸が本組成物に含有される。なお、本組成物を調製する際にモノカルボン酸化合物を本組成物に添加し、本組成物中におけるモノカルボン酸化合物の濃度を調整してもよい。
【0063】
本組成物がモノカルボン酸化合物を含有する場合、モノカルボン酸化合物の含有割合は、本組成物の全量に対して、0.001質量%以上7.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上7.0質量%以下であることがより好ましい。得られた硬化物による金属腐食を抑制するとともに、有機EL素子の信頼性(特に発光信頼性)を高くする観点から、モノカルボン酸化合物の含有割合は、本組成物の全量に対して、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下がより更に好ましい。
【0064】
(架橋剤)
架橋剤は、感光性組成物を露光することにより、[A]ポリイミドの分子間又は分子内に架橋構造を形成させる成分である。本組成物に架橋剤を含有させることにより、得られる硬化物の強度及び基板に対する密着性を向上できる。
【0065】
架橋剤は、2個以上の架橋性基を有する。架橋剤が有する架橋性基は特に限定されない。架橋反応性が高い点で、架橋剤は、メチロール基、アルコキシメチル基及びグリシジル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有することがより好ましい。架橋剤1分子が有する架橋性基の数は、例えば2~10個であり、好ましくは2~8個である。架橋剤は中でも、ベンゼン環を有する化合物が好ましく、ベンゼン環を2~5個有する化合物がより好ましい。このような架橋剤の具体例としては、特開2022-67054号公報等に記載の化合物等が挙げられる。
【0066】
本組成物における架橋剤の含有割合は、硬化反応を十分に進行させ、解像性を高める観点から、感光性組成物に含まれる[A]ポリイミドの全量100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましい。また、架橋剤の含有割合は、硬化物の透過性を確保する観点から、感光性組成物に含まれる[A]ポリイミドの全量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。
【0067】
(現像促進剤)
現像促進剤は、露光部のアルカリ現像液への溶解性を高める成分である。現像促進剤としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基(すなわち官能基F1)を合計2個以上有する化合物(ただし、[A]ポリイミド及び架橋剤を除く。)であることが好ましい。現像促進剤の分子量は100~1000が好ましく、150~800がより好ましい。現像促進剤は中でも、ベンゼン環を2~10個有するフェノール化合物が好ましく、ベンゼン環を2~5個有するフェノール化合物がより好ましい。
【0068】
本組成物において、現像促進剤の含有割合は、露光部のアルカリ現像液への溶解性を十分に高める観点から、感光性組成物に含まれる[A]ポリイミドの全量100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましい。また、現像促進剤の含有割合は、得られる硬化物の透過性を確保する観点から、感光性組成物に含まれる[A]ポリイミドの全量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0069】
その他の成分としては上記のほか、例えば、色素、分散剤、界面活性剤、密着助剤、重合禁止剤、酸化防止剤、酸増幅剤等が挙げられる。これらの成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲において、各成分に応じて適宜選択される。
【0070】
本組成物は、その固形分濃度(すなわち、感光性組成物中の[C]溶剤以外の成分の合計質量が、感光性組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に選択される。本組成物の固形分濃度は、好ましくは10~70質量%の範囲である。固形分濃度が10質量%以上であれば、塗布性を確保しつつ、感光性組成物を基板上に塗布した際に塗膜の膜厚を十分に確保できる。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との縮重合により高濃度で生産されたポリイミド溶液をそのまま用いて本組成物を調製することにより生産性を高めることができる。一方、固形分濃度が70質量%以下であると、塗膜の膜厚が過大となりすぎず、更に感光性組成物の粘性を適度に高くでき、良好な塗布性を確保できる。本組成物の固形分濃度は、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。
【0071】
なお、本明細書において「固形分」とは、感光性組成物中に含有される[C]溶剤以外の成分を意味する。すなわち、「全固形分」とは、[A]ポリイミドと、[B]感光性化合物と、[A]~[C]以外のその他成分とを合わせた成分である。したがって、例えば液状の添加剤成分(例えば、界面活性剤等)であっても、これらは固形分に含まれるものとする。
【0072】
<感光性組成物の調製>
本組成物は適宜の方法により調製することができる。その調製方法としては、[A]ポリイミド、[B]感光性化合物、及び必要に応じて使用されるその他の成分を[C]溶剤と混合し、溶解する方法が挙げられる。本組成物の調製は室温で行ってもよく、適宜加熱して行ってもよい。
【0073】
本組成物は、以下の重合工程及び混合工程を含む方法により製造することができる。この方法は、本組成物の生産性を向上できる点で好適である。
重合工程:テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを[C]溶剤中で反応させて[A]ポリイミドを含有する溶液を得る工程
混合工程:重合工程により得られた[A]ポリイミドを含有する溶液をそのまま用い、[A]ポリイミドを含有する溶液と[B]感光性化合物とを混合する工程
【0074】
上記重合工程を、化学イミド化により[A]ポリイミドを製造する工程とすることにより、本組成物を用いて得られる硬化物による金属腐食を抑制できるとともに、有機EL素子の信頼性(特に発光信頼性)を高くできる点で好適である。
【0075】
[硬化物及びその製造方法]
上述した本組成物を用いて硬化物を製造する方法は特に限定されない。本組成物を用いて硬化物を製造する場合、例えば、以下の工程1~工程4を含む方法により製造することができる。
工程1:本組成物を用いて塗膜を形成する工程
工程2:塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
工程3:放射線が照射された塗膜を現像する工程
工程4:現像された塗膜を加熱する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
【0076】
[工程1:膜形成工程]
まず、塗膜を形成する面(以下「被成膜面」ともいう)に本組成物を塗布する。被成膜面の材質は特に限定されない。例えば、TFT等のスイッチング素子が設けられた基板上に層間絶縁膜又は平坦化膜を形成する場合、スイッチング素子が設けられた基板面に本組成物を塗布する。基板としては、例えば、ガラス、シリコン等の無機系材料;ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の樹脂製材料;からなる基板が挙げられる。塗膜を形成する基板の表面は、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されていてもよい。
【0077】
本組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法等が挙げられる。均一な膜厚の塗膜を得ることができる点で、これらの中でも、スピンコート法、スリットダイ塗布法又はバー塗布法により行うことが好ましい。
【0078】
続いて、被成膜面に塗布された本組成物に対し、好ましくは加熱処理(プレベーク)を行うことにより溶剤を除去し、被成膜面上に塗膜を形成する。プレベーク条件としては、本組成物における各成分の種類及び含有割合等によっても異なるが、例えば60~130℃で0.5~10分である。形成される塗膜の膜厚(すなわち、プレベーク後の膜厚)は、0.1~12μmが好ましい。被成膜面に塗布した本組成物に対しては、プレベーク前に減圧乾燥(VCD)を行ってもよい。
【0079】
[工程2:照射工程]
工程2では、上記工程1で形成した本組成物からなる塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、塗膜に対し、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することにより、パターンを有する硬化物を形成することができる。
【0080】
露光する際に使用される放射線の光源としては、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。露光光源として、紫外線LEDを使用することもできる。また、露光する際に使用される放射線は、波長が190~450nmの範囲にある放射線が好ましく、300~450nmの範囲にある放射線がより好ましい。具体的には、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が挙げられる。放射線の露光量は、一般的には10~10,000J/m2が好ましい。放射線の露光量は、より好ましくは100J/m2以上であり、更に好ましくは200J/m2以上である。また、放射線の露光量は、より好ましくは5,000J/m2以下であり、更に好ましくは2,000J/m2以下である。
【0081】
[工程3:現像工程]
工程3では、上記工程2で放射線を照射した塗膜を現像する。具体的には、工程2で放射線が照射された塗膜に対し現像液により現像を行い、露光部を除去するポジ型現像を行う。現像液としてはアルカリ(塩基性化合物)の水溶液が挙げられる。
【0082】
アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。アルカリ水溶液におけるアルカリ濃度としては、適度な現像性を得る観点から、0.1~5質量%が好ましい。アルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温(25℃)で5~300秒が好ましい。
【0083】
[工程4:加熱工程]
工程4では、上記工程3で現像された塗膜を加熱して熱硬化させる処理(ポストベーク)を行う。ポストベークは、例えばオーブンやホットプレート等の加熱装置を用いて行うことができる。ポストベーク条件について、加熱温度は、例えば120~250℃である。加熱時間は、例えばホットプレート上で加熱処理を行う場合には5~40分、オーブン中で加熱処理を行う場合には10~80分である。この加熱処理により硬化反応が進行し、目的とするパターンを有する硬化物を基板上に形成することができる。硬化物が有するパターンの形状は特に限定されず、例えば、ライン・アンド・スペースパターン、ドットパターン、ホールパターン(例えば、スクエア・コンタクト・ホールパターン)、格子パターン等が挙げられる。
【0084】
本組成物により得られた硬化物は、ドライエッチングレジストとして使用することもできる。硬化物をドライエッチングレジストとして使用する場合、エッチング処理としては、アッシング、プラズマエッチング、オゾンエッチング等のドライエッチング処理を採用することができる。
【0085】
[表示素子]
本開示の表示素子は、上述した本組成物を用いて形成された硬化物(好適には、層間絶縁膜、平坦化膜及び隔壁のうち1種以上)を備えるものである。本開示の表示素子を備える表示装置の具体例としては、液晶表示装置及び有機EL表示装置が挙げられる。
【0086】
液晶表示装置は、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)の他、白色LEDを光源とするバックライトユニットを具備していてもよい。白色LEDとしては、例えば、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色LEDと緑色蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDとYAG系蛍光体の混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと橙色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、紫外線LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と青色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED等を挙げることができる。
【0087】
有機EL表示装置は、適宜の構造をとることが可能である。有機EL表示装置が有する有機EL素子の具体的態様について図面を用いて説明する。有機EL素子10の1つの実施態様は、図1に示すトップエミッション型構造の有機EL素子である。有機EL素子10は、マトリクス状に形成された複数の画素を有するアクティブマトリクス型である。有機EL素子10は、支持基板11と、画素電極12及び対向電極13からなる一対の電極と、有機発光層14と、封止基板15と、を備える。
【0088】
トップエミッション型構造の有機EL素子10において、支持基板11は、例えば無アルカリガラス等のガラス材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等の樹脂材料からなる透明基板である。支持基板11上には、画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)16が形成されている。TFT16は、ゲート電極上にゲート絶縁膜及び半導体層を順に備えるボトムゲート型であってもよく、半導体層上にゲート絶縁膜及びゲート電極を順に備えるトップゲート型であってもよい。
【0089】
支持基板11上には平坦化膜17が配置されている。平坦化膜17は絶縁性の硬化膜であり、TFT16を被覆するように支持基板11の面全体に形成されている。支持基板11上に平坦化膜17が形成されることにより、TFT16による表面凹凸が平坦化される。平坦化膜17上には、陽極としての画素電極12が形成されている。
【0090】
画素電極12は、導電性材料により形成されている。有機EL素子10がトップエミッション型構造の場合、画素電極12は光反射性を有することが求められる。光反射性の電極を構成する導電性材料は、Al(アルミニウム)、APC合金(銀、パラジウム及び銅の合金)、ARA合金(銀、ルビジウム及び金の合金)、MoCr合金(モリブデンとクロムの合金)、NiCr合金(ニッケルとクロムの合金)、又はこれらの金属と光透過性の高い電極(例えばITO(Indium Tin Oxide))との積層膜等が挙げられる。画素電極12は、平坦化膜17に形成されたスルーホール18を介してTFT16に電気的に接続されている。
【0091】
対向電極13は、画素電極12に対向する位置に配置されている。対向電極13は、導電性材料により形成され、各画素の共通電極として機能する。有機EL素子10がトップエミッション型構造の場合、対向電極13は光透過性を有することが求められる。光透過性の電極を構成する導電性材料としては、ITO、IZO(Indium Zinc Oxide)、酸化スズ等が挙げられる。
【0092】
有機発光層14は、画素電極12と対向電極13との間に配置されている。具体的には、平坦化膜17上には、膜表面から突出する隔壁19が形成されている。隔壁19は、各画素電極12の外周部上を覆うように配置されており、複数の画素電極12をそれぞれ区画している。隔壁19によって囲まれた領域には凹部21が形成されており、各凹部21において画素電極12上に有機発光層14が配置されている。有機発光層14は、電界発光する有機発光材料を含む層である。有機発光材料は、低分子化合物であってもよく、重合体であってもよい。また、有機発光層14は、発光層とともに、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層のうち少なくともいずれかを含む複数の薄膜層からなるものであってもよい。
【0093】
有機EL素子10においては、平坦化膜17及び隔壁19の一方又は両方が本組成物を用いて形成されている。例えば、本組成物を用いて平坦化膜17を形成する場合、まず、TFT16を備える支持基板11のTFT16側の面に本組成物を塗布し、好ましくはプレベークすることにより、支持基板11上に塗膜を形成する。次いで、この塗膜に対し、必要に応じてマスクを介して放射線を照射する。露光後、現像処理及びポストベーク処理を行うことにより、平坦化膜17を形成することができる。
【0094】
隔壁19を形成する場合も同様である。まず、平坦化膜17の電極形成面に本組成物を塗布し、好ましくはプレベークすることにより塗膜を形成する。次いで、この塗膜に対し、隔壁19の形状に対応するパターンを有するマスクを介して放射線を照射する。その後、現像処理及びポストベーク処理を行うことにより、画素電極12を有する平坦化膜17上に隔壁19及び凹部21を形成することができる。こうして形成された凹部21に有機発光層14を形成する。平坦化膜17において有機発光層14の形成面には、対向電極13及びパッシベーション膜22がこの順に積層される。
【0095】
封止基板15は、支持基板11において有機発光層14等が配置された面に対向するように、当該配置面に対し所定間隔をあけて配置されている。封止基板15は、光透過性の高い絶縁材料により形成されており、例えば無アルカリガラス基板等のガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等の透明樹脂基板からなる。封止基板15の外周端部は、シール剤を用いて支持基板11と貼り合わせられている。支持基板11、封止基板15及びシール剤により囲まれた空間には封止層23が形成されている。封止層23は、例えば無機層及び有機層を含む積層構造を有する。封止基板15における封止層23側の面には、ブラックマトリクス24及びカラーフィルタ25が配置されていてもよい。
【0096】
有機EL素子10の他の実施態様は、図2に示すボトムエミッション型構造の有機EL素子である。なお、以下の図2の説明では、図1と同一の点については図1の説明を援用することとし、図1との相違点を中心に説明する。
【0097】
図2に示す有機EL素子10において、支持基板11上には、TFT16とカラーフィルタ25とが設けられている。平坦化膜17上には、画素電極12及び対向電極13からなる一対の電極と、一対の電極間に配置された有機発光層14とが設けられている。有機EL素子10がボトムエミッション型構造の場合、支持基板11及び画素電極12は光透過性を有することが求められ、対向電極13は光反射性を有することが求められる。各画素の有機発光層14から白色光が放射される場合、白色光はカラーフィルタ25により透過選択された色光となって支持基板11を透過する。
【0098】
本開示の表示装置は、種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示デバイスとして用いることができる。
【0099】
上述した本開示によれば、以下の手段が提供される。
<手段1> [A]ポリイミドと、[B]感光性化合物と、[C]溶剤と、を含有し、
前記[A]ポリイミドは、前記[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、前記[A]ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基、カルボキシ基、チオフェノール基及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種の基を有する特定ジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、かつ、前記[A]ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である、感光性組成物。
<手段2> 前記特定ジアミンは、フルオレン環構造、インデン環構造、インダン環構造、ラクトン環構造、ステロイド構造及びハロゲン化アルキル構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有する、<手段1>に記載の感光性組成物。
<手段3> 前記特定ジアミンの分子量が300以上である、<手段1>又は<手段2>に記載の感光性組成物。
<手段4> 前記[A]ポリイミドは、フルオレン環構造、インデン環構造、インダン環構造、ラクトン環構造、ステロイド構造及びハロゲン化アルキル構造よりなる群から選択される少なくとも1種の部分構造を有するジアミン(ただし、前記特定ジアミンを除く。)に由来する構造単位を更に含む、<手段1>~<手段3>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段5> 前記[B]感光性化合物がキノンジアジド化合物である、<手段1>~<手段4>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段6> 前記[A]ポリイミドのイミド化率が10%以上である、<手段1>~<手段5>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段7> モノカルボン酸化合物を含有する、<手段1>~<手段6>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段8> モノカルボン酸化合物の含有割合が0.001質量%以上7.0質量%以下である、<手段7>に記載の感光性組成物。
<手段9> 層間絶縁膜、平坦化膜又は隔壁形成用である、<手段1>~<手段8>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段10> 前記[A]ポリイミドは、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-8-メチル-3a,4,5,9b-テトラヒドロナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、2,4,6,8-テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン-2:4,6:8-二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種に由来する構造単位を含む、<手段1>~<手段9>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段11> 前記[C]溶剤は、非プロトン性極性溶媒及びフェノール性溶媒よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、<手段1>~<手段10>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段12> 前記[C]溶剤は更に、アルコール類、ケトン類、エステル類及びエーテル類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、<手段11>に記載の感光性組成物。
<手段13> 更に架橋剤を含有する、<手段1>~<手段12>のいずれかに記載の感光性組成物。
<手段14> <手段1>~<手段13>のいずれかに記載の感光性組成物を製造する方法であって、
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを前記[C]溶剤中で反応させて前記[A]ポリイミドを含有する溶液を得る重合工程と、
前記重合工程により得られた前記[A]ポリイミドを含有する重合体溶液をそのまま用い、前記重合体溶液と前記[B]感光性化合物とを混合する混合工程と、
を含む、感光性組成物の製造方法。
<手段15> 前記重合工程は、酸無水物を用いた化学イミド化により前記[A]ポリイミドを製造する工程である、<手段14>に記載の感光性組成物の製造方法。
<手段16> <手段1>~<手段13>のいずれかに記載の感光性組成物を用いて塗膜を形成する工程と、前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程と、放射線照射後の前記塗膜を現像する工程と、現像された前記塗膜を加熱する工程と、を含む、硬化物の製造方法。
<手段17> <手段1>~<手段13>のいずれかに記載の感光性組成物を用いて形成された硬化物。
<手段18> 層間絶縁膜、平坦化膜又は隔壁である、<手段17>に記載の硬化物。
<手段19> <手段18>に記載の硬化物を備える表示素子。
<手段20> ポリイミドであって、前記ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の全量に対し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位の割合が60モル%以上であり、前記ポリイミドが有するジアミン化合物に由来する構造単位の全量に対し、フェノール性水酸基を有するジアミンに由来する構造単位の割合が30モル%以上であり、前記ポリイミドが有するテトラカルボン酸二無水物に由来する構造単位とジアミン化合物に由来する構造単位との全量に対し、スルホニル基を有する単量体に由来する構造単位の割合が25モル%未満である、ポリイミド。
【実施例0100】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。以下に、各実施例及び比較例で用いた各成分を示す。
【0101】
以下の例において、重合体の溶液粘度、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、ポリイミドのイミド化率並びに感光性組成物中の酢酸濃度は以下の方法により測定した。
<重合体の溶液粘度>
重合体の溶液粘度は、E型粘度計を用いて25℃において測定した。
<重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でMw及びMnを測定した。分子量分布(Mw/Mn)は、得られたMw及びMnより算出した。
装置:昭和電工株式会社製「GPC-101」
GPCカラム:(株)島津ジーエルシー製「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を結合
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
<ポリイミドのイミド化率>
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMR測定を行った。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(1)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1-(β/(β×α)))×100 …(1)
(数式(1)中、βは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、βはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
<組成物中の酢酸濃度>
ガスクロマトグラフィー(GC)により下記条件で測定し、クロマトグラフィーの面積値より組成物中の酢酸濃度を算出した。
装置:Agilent株式会社製「HP5890型」
シリンジ注入量:5.0μL
注入口温度:210℃
ガス種、圧力:He、33.5psi
検出方式:FID
検出器温度:250℃
【0102】
下記の例で使用した化合物の略称を以下に示す。なお、以下では便宜上、「式(X)で表される化合物」を単に「化合物(X)」と示すことがある。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0103】
<重合体の合成>
1.ポリイミドの合成
[合成例1](化学イミド化によるポリイミドの合成)
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(AN-1)100モル部、並びに、ジアミンとして9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(DA-1)58モル部、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(DA-4)40モル部、及び1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(DA-5)2モル部をγ-ブチロラクトン(GBL)に溶解し、40℃で2時間反応させることにより、ポリアミック酸を30質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にGBLを追加し、ピリジン及び無水酢酸を、ポリアミック酸のカルボキシ基に対して2.50モル当量ずつ添加して、120℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなGBLで溶媒置換し、更に濃縮することにより、イミド化率89%のポリイミド(これを「重合体(PI-1)」とする)を25質量%含有する溶液を得た。この溶液を少量分取し、GBLを加えて濃度10質量%の溶液として測定した溶液粘度は30mPa・sであった。また、得られた重合体(PI-1)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はそれぞれ9,000及び3,100であった。さらに、この溶液の酢酸濃度をガスクロマトグラフィーにより定量したところ、0.5質量%であった。
【0104】
[合成例2~8、12、13]
重合に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を表1に記載のとおり変更した点以外は合成例1と同様に重合を行い、ポリイミドである重合体(PI-2)~(PI-8)、(PI-12)、(PI-13)をそれぞれ含有する溶液を得た。なお、合成例3ではモノアミンを併用した。表1中、酸二無水物の数値は、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量100モル部に対する各化合物の割合(モル部)を表す。ジアミン化合物及びモノアミンの数値は、合成に使用したジアミン化合物及びモノアミンの全量100モル部に対する各化合物の割合(モル部)を表す。
【0105】
[合成例9](熱イミド化によるポリイミドの合成)
9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(DA-1)20モル部、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(DA-5)30モル部及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DA-8)50モル部、並びに水素化3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(AN-8)100モル部をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、40℃で6時間反応させることにより、ポリアミック酸を15質量%含有する溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを加え10質量%とし、180℃で8時間加熱し脱水閉環反応を行った。次いで、反応溶液を室温まで冷却した後に大量のエタノール中へ投入後、ろ別乾燥することでイミド化率80%のポリイミド(これを「重合体(PI-9)」とする)の粉体を得た。
【0106】
[合成例10、11]
重合に使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類及び量を表1に記載のとおり変更した点以外は合成例9と同様に重合を行い、ポリイミドである重合体(PI-10)、(PI-11)をそれぞれ含有する溶液を得た。
【0107】
【表1】
【0108】
表1中の各記号の意味は以下のとおりである。
・酸二無水物
AN-1~AN~8:上記式(AN-1)~(AN-8)のそれぞれで表される化合物
・ジアミン化合物
DA-1~DA-8、DA-10:上記式(DA-1)~(DA-8)、(DA-10)のそれぞれで表される化合物
DA-9:ジアミノポリジメチルシロキサン(アミン当量400)
【0109】
2.ポリアミック酸エステルの合成
[合成例14]
乾燥窒素気流下、化合物(DA-3)80モル部、及び1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(DA-5)5モル部、並びに4,4’-オキシジフタル酸無水物(AN-5)100モル部を脱水されたNMPに溶解させ、40℃にて1時間反応させた。ここに、末端封止剤として3-アミノフェノール(MA-1)30モル部をNMPに溶液として加え、40℃にて2時間反応させた。次いで、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを、投入したテトラカルボン酸二無水物に対して200モル部添加し、40℃にて6時間反応させた。反応後の溶液を室温まで冷却した後、溶液を大量の蒸留水に投入し、得られた沈殿物を濾過により回収して水で3回洗浄した後、80℃で20時間真空乾燥を行い、ポリアミック酸エステル(これを「重合体(PAE-1)」とする)の粉末を得た。
【0110】
<感光性樹脂組成物の調製>
感光性樹脂組成物の調製に用いた成分は以下のとおりである。
・重合体
PI-1~PI~13:合成例1~13のそれぞれで合成した重合体
PAE-1:合成例14で合成した重合体
・感光性化合物
B-1:4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
B-2:1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン(1.0モル)と1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物
・架橋剤
M-1~M-8:上記式(M-1)~(M-8)のそれぞれで表される化合物
・現像促進剤
add-1:上記式(add-1)で表される化合物
【0111】
[実施例1]
重合体(PI-1)を含有する溶液に、重合体(PI-1)100質量部(固形分)に相当する量に対して、感光性化合物(B-1)20質量部、感光性化合物(B-2)10質量部、架橋剤(M-1)20質量部、及び現像促進剤(add-1)10質量部を混合し、最終の固形分濃度が25質量%、γ-ブチロラクトン(GBL):乳酸エチル=70:30(質量比)となるように溶剤を添加した。次いで、孔径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、感光性樹脂組成物(PR-1)を調製した。重合体(PI-1)を含有する溶液から持ち込まれる酢酸により、感光性樹脂組成物(PR-1)に含まれる酢酸濃度は0.3質量%であった。なお、適宜、酢酸を添加することで所定の濃度に調製した。
【0112】
[実施例2~12及び比較例1~3]
重合体、感光性化合物、架橋剤及び現像促進剤の種類及び配合量を表2に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物(PR-2)~(PR-12)及び(pr-1)~(pr-3)を調製した。
【0113】
【表2】
【0114】
<評価>
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物を用いて、以下に示す方法に従い、塗布性、現像後の面内均一性、アウトガス特性、平坦性、高温高湿後の密着性、金属腐食性及び有機EL素子の信頼性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0115】
[塗布性(面内均一性)の評価]
調製した各感光性樹脂組成物を-15℃の冷凍庫で7日間保管した後、感光性樹脂組成物を室温まで解凍し、解凍した感光性樹脂組成物を用いて塗布性(面内均一性)を評価した。評価は以下のようにして行った。
解凍後の感光性樹脂組成物を、スピンコート法を用いて、乾燥後の膜厚が1μmとなる液量でITO基板上に連続塗布を実施した。感光性樹脂組成物を塗布した基板をホットプレート上にて120℃で1分間プレベークし、その後230℃で30分間、クリーンオーブン内、窒素雰囲気下でポストベークを行った後、塗膜の周辺部及び中央部を20倍の顕微鏡にて観察した。評価は、ピンホール及び塗布ムラ(膜厚ムラ等)がない場合を「良好(○)」、ピンホール及び塗布ムラのうち少なくともいずれかが性能に影響を及ぼさない程度に僅かに観測された場合を「可(△)」、ピンホール及び塗布ムラが明確に観察された場合を「不良(×)」と判断した。
【0116】
[現像後の面内均一性]
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物を6インチのシリコン基板上にスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。次いで、2.38%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって25℃で現像処理を行った。現像処理の時間を80秒とし、現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させた。このシリコン基板をクリーンオーブン内にて230℃で30分加熱して硬化膜を得た。なお、感光性樹脂組成物を230℃で30分間加熱した後の膜厚が3μmとなるように、プレベーク前の感光性樹脂組成物の膜厚を調整した。
得られた硬化膜の中心部と、中心部から2cm右上、右下、左上及び左下の合計5か所の膜厚を光学式膜厚計にて計測し、平均膜厚3μmのときの標準偏差を見積もった。評価は、標準偏差が0.10未満である場合を「良好(○)」、0.10以上である場合を「不良(×)」と判断した。
【0117】
[アウトガスの評価]
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物を6インチのシリコン基板上にスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。次いで、2.38%濃度のTMAH水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって25℃で現像処理を行った。現像処理の時間は100秒とした。現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させた。このシリコン基板をクリーンオーブン内にて250℃で30分加熱して、平均膜厚2.0μmの硬化膜を得た。
硬化膜付きシリコン基板を1cm×5cm片に切断し、切断したシリコン基板4枚について、シリコンウエハーアナライザー装置(日本分析工業社の「加熱脱着装置JTD-505」、島津製作所社の「ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS-QP2010Plus」)を用いて、昇温速度10℃/分で300℃に上げ、同温度で15分保持した際のアウトガス量(ng/cm2)を求めた。評価は、50ng/cm2未満である場合を「良好(○)」、50ng/cm2以上100ng/cm2未満である場合を「可(△)」、100ng/cm2以上である場合を「不良(×)」と判断した。
【0118】
[平坦性]
東レ株式会社製「フォトニースDL-1000-C」を6インチのシリコン基板上にスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。次いで、ライン・アンド・スペース比(L/S)が1:1(20μmのライン幅と同サイズのスペース幅)のマスクを用い、120mJ/cm2の露光量で紫外線を照射した後に、2.38%濃度のTMAH水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって25℃で現像処理を行った。現像処理の時間は100秒とした。現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させた。このシリコン基板をクリーンオーブン内にて250℃で30分加熱して、平均膜厚2.5μmのL/S付きの基板を得た。
得られたL/S付きの基板に、実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で90℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。この基板をクリーンオーブン内にて250℃で30分加熱して、L/Sの凹凸を平坦化させた基板を得た。得られた基板を表面凹凸計(α-Step D600、ULVAC社製)を用いて表面凹凸性を測定した。凹凸の最大値と最小値の差が0.5μm未満である場合を「良好(○)」、0.5μm以上1μm未満である場合を「可(△)」、1μm以上である場合を「不良(×)」と判断した。
【0119】
[高温高湿後の基板密着性]
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物を、モリブデンが蒸着された6インチのガラス基板上にスピンコート法により塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。次いで、ライン・アンド・スペース比(L/S)が1:1(ライン幅と同サイズのスペース幅)5μm刻みで5~40μmのマスクを用い、80mJ/cm2の露光量でi線(365nm)を照射した後に、2.38%濃度のTMAH水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって25℃で現像処理を行った。現像処理の時間は80秒とした。現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させた。このシリコン基板をクリーンオーブン内にて250℃で60分加熱して、平均膜厚2.5μmのL/S付きの基板を得た。得られた基板を85℃、85%RHの環境下に240時間静置させた。次いで、基板を取り出し、光学顕微鏡にて観察した。剥離せずに残るラインの最小幅が10μm未満である場合を「良好(○)」、最小幅が10μm以上30μm未満である場合を「可(△)」、最小幅が30μm以上である場合を「不良(×)」と判断した。
【0120】
[金属腐食評価]
6インチシリコンウエハ基板上にアルミ蒸着層とシリコン窒化膜層とがこの順に設けられたウエハにおけるシリコン窒化膜層上に、実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物を、250℃で60分の加熱による硬化後の膜厚が約3μmとなるようにスピンコート法により塗布し、120℃で2分間ホットプレートにてプレベークを行い、塗膜を形成した。膜厚は膜厚測定装置(大日本スクリーン製造社製、ラムダエース)にて測定した。この塗膜に、直径3μmホールパターンが形成されたマスクを用い、80mJ/cm2の露光量でi線(365nm)を照射した。その後、2.38%濃度のTMAH水溶液(現像液)を用い、液盛り法によって25℃で現像処理を行った。現像処理の時間は80秒とした。現像処理後、超純水で1分間、塗膜の流水洗浄を行い、乾燥させた。このシリコン基板をクリーンオーブン内にて250℃で60分加熱し、ホールパターンが形成された硬化膜を得た。
この硬化膜をRIE装置(ANELVA製DEM-451)でCF/O=47.5/2.5(v/v)のガスによって20分間シリコン窒化膜層のエッチング処理を行い、続いてOガスによる表面クリーニングを1分間行うことで、硬化膜の開口部にアルミが露出したサンプルを得た。このサンプルを85℃、85%RHの条件下で240時間静置した。その後、サンプルの開口部を倍率500倍の光学顕微鏡で観察した。85℃85%RHの条件下で240時間静置する前のサンプルと比較して、開口部のアルミが変色していない場合を金属腐食耐性が「良好(○)」、開口部周辺は変色しているが、開口部全面は変色していない場合を「可(△)」、開口部全面が変色している場合を「不良(×)」とした。
【0121】
[有機EL表示装置の信頼性]
図1に従い有機EL素子10を作製した。38×46mmの無アルカリガラス基板(支持基板11)に、実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で2分間プレベークを行い、塗膜を形成した。この塗膜にフォトマスクを介してUV露光した後、2.38%TMAH水溶液で現像し、露光部を溶解させた後、純水でリンスした。得られた塗膜を窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間焼成(ポストベーク)し、表示エリアに厚さ約2.0μmの平坦化層(平坦化膜17)を形成した。次に、スパッタ法によりAPC合金膜100nmを基板全面に形成し、エッチング処理を行い反射電極(図示略)を形成した。その後、スパッタ法によりITO透明導電膜10nmを基板全面に形成し、エッチング処理により第1電極(画素電極12)を形成した。また、第2電極を取り出すために補助電極(図示略)を同時に形成した。得られた基板を「セミコクリーン56」(商品名、フルウチ化学社製)で10分間超音波洗浄し、超純水で洗浄した。
次に、この基板全面に、実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で2分間プリベークし、塗膜を形成した。この塗膜にフォトマスクを介してUV露光した後、2.38%TMAH水溶液で現像した。露光部を現像液に溶解させた後、純水でリンスした。得られたパターンを窒素雰囲気下250℃のオーブン中で60分間ベークした。これにより、幅70μm、長さ260μmの開口部(凹部21)が幅方向にピッチ155μm、長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第1電極を露出させる形状のバンク層(隔壁19)を表示エリアに形成した。この開口部が最終的に発光画素となる。表示エリアは16mm四方とし、表示エリアに開口率18%でバンク層を設けた。バンク層の厚さは約1.0μmとした。
【0122】
次に、平坦化層、反射電極、第1電極及びバンク層を形成した基板に、前処理として窒素プラズマ処理を行った後、正孔注入層、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を有する有機発光層(有機発光層14)を真空蒸着法により形成した。なお、蒸着時の真空度を1×10-3Pa以下とし、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。有機発光層は以下のようにして形成した。まず、正孔注入層として化合物(H-1)を10nm、正孔輸送層として化合物(H-2)を50nm蒸着した。次に、発光層に、ホスト材料としての化合物(H-3)とドーパント材料としての化合物(H-4)を、ドープ濃度が10%になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として化合物(H-6)と化合物(H-5)を体積比1:1で40nmの厚さに積層し、電子輸送層を形成した。次に、化合物(H-5)を2nmの厚さとなるように蒸着した後、Mg、Agを体積比10:1で10nmの厚さとなるように蒸着して第2電極(対向電極13)とした。最後に、低湿窒素雰囲気下で、エポキシ樹脂系接着剤を用いてキャップ状ガラス板を封止し、1枚の基板上に5mm四方の発光装置を4つ作製した。なお、ここでいう膜厚は水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0123】
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物を用いて得られた有機EL表示装置を15mA/cmで直流駆動させて2000時間発光させ、発光画素の面積に対する発光部の面積率(画素発光面積率)を測定した。2000時間経過後の画素発光面積率が95%以上である場合を「良好(○)」とし、95%未満85%以上である場合を「可(△)」とし、85%未満である場合を「不良(×)」と評価した。2000時間経過後の画素発光面積率が高いほど、発光不良点が少なく信頼性が高いと言える。
【0124】
【表3】
【0125】
表3に示すように、実施例1~12の感光性樹脂組成物は塗布性が良好又は可の評価であり、また得られた硬化膜は、現像後の面内均一性、アウトガス特性、平坦性、高温高湿後の基板密着性、金属腐食耐性及び有機EL素子の発光信頼性がバランス良く改善されたことが明らかとなった。これに対し、[A]ポリイミドを含有しない比較例1の感光性樹脂組成物では、得られる硬化膜の高温高湿後の基板密着性が不良(×)の評価であり、更には金属腐食耐性及び有機EL素子の発光信頼性にも劣っていた。比較例2,3の感光性樹脂組成物では、アウトガス特性が不良(×)の評価であった。比較例2の感光性樹脂組成物については更に、膜の平坦性も不良(×)であり、比較例3の感光性樹脂組成物については、塗布性、現像後の面内均一性、高温高湿後の基板密着性及び有機EL素子の発光信頼性も劣っていた。
【0126】
これらの結果から、[A]ポリイミド、[B]感光性化合物及び[C]溶剤を含有する本発明の感光性組成物によれば、アウトガス特性及び高温高湿後の基板密着性に優れた硬化物を製造でき、更に、塗布性、現像後の面内均一性、平坦性、金属腐食耐性及び有機EL素子の発光信頼性についても優れていることが分かった。したがって、本発明の感光性組成物により得られる硬化物は、液晶ディスプレイ用絶縁膜、有機EL素子が有する平坦化膜や層間絶縁膜、隔壁(バンク)等として特に好適である。
【符号の説明】
【0127】
10…有機EL素子、11…支持基板、12…画素電極、13…対向電極、14…有機発光層、15…封止基板、16…薄膜トランジスタ(TFT)、17…平坦化膜、18…スルーホール、19…隔壁、21…凹部、22…パッシベーション膜、23…封止層、24…ブラックマトリクス、25…カラーフィルタ
図1
図2