(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017735
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】高温で動作する電気化学装置、及び関連するプロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230131BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20230131BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20230131BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230131BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/249
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117413
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】FR2107954
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】522294671
【氏名又は名称】テクニップ エナジーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】セリーニ マーク
(72)【発明者】
【氏名】ボヨルト ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ソルビエ ティボー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発電及び/又はガス状化合物の生成又は共電解のために、嵩高くないが信頼性が依然として高く操作し易い、高温で動作する電気化学装置を提供することを目的とする。
【解決手段】装置(10)は、電気化学反応を行うための複数のスタック(14)と、スタック(14)を受けるように構成されているチャンバ(60)及び加熱システム(62)を有する加熱炉(16)とを備えている。装置(10)は、スタック(14)の複数の重ね合わされた段を有する自立式構造、及び/又は、スタック(14)の複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を有する少なくとも1つのラック(12)を備えている。チャンバ(60)は少なくとも1つのラック(12)を含むことが可能であり、チャンバ(60)に含まれる1つのラック又は各ラック(12)の複数段のスタック(14)は、加熱システム(62)によって共に加熱されるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応を行うための複数のスタック(14)と、
各スタック(14)を受けるためのチャンバ(60)、及び加熱システム(62)を有する加熱炉(16)と、
少なくとも1つのラック(12)と
を備えており、
前記少なくとも1つのラック(12)は、前記スタック(14)の複数の重ね合わされた段を有する自立式構造、及び/又は、前記スタック(14)の複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を有しており、
各自立式構造は、各スタック(14)に少なくとも1つの流体を供給する、及び/又は各スタック(14)から少なくとも1つの流体を収集することが可能な流体分配器(30)を有しており、
前記チャンバ(60)は、少なくとも1つのラック(12)を含むことが可能であり、前記チャンバ(60)に含まれる少なくとも1つのラック(12)の複数段のスタック(14)は、前記加熱システム(62)によって共に加熱されるように構成されている、電気化学装置(10)。
【請求項2】
複数のラック(12)を備えており、前記チャンバ(60)は、前記複数のラック(12)を含むことが可能であり、前記チャンバ(60)に含まれる複数のラック(12)のスタック(14)は、前記加熱システム(62)によって共に加熱されるように構成されている、請求項1に記載の電気化学装置(10)。
【請求項3】
前記加熱炉(16)は、前記少なくとも1つのラック(12)の周囲のチャンバ(60)内の空気を撹拌可能な空気撹拌システム(64)を内部に有しており、
任意に前記加熱炉(16)は、前記加熱炉(16)の動作中にガスの超過圧力を前記チャンバ(60)内に発生させることができる中性ガス注入器を前記チャンバ(60)内に有しており、
前記加熱炉(16)は、有利には前記チャンバの外側に抽出されるガスのための分析器を有している、請求項1又は2に記載の電気化学装置(10)。
【請求項4】
ラック(12)のスタック(14)の各段におけるスタック(14)の数が4を超えている、請求項1~3のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)。
【請求項5】
前記加熱炉(16)の外側に設けられている共通の流体分配システム(18)を備えており、
前記流体分配システム(18)は、スタック(14)毎の第1の供給流体のための少なくとも1つの流入管(70)と、各スタック(14)で生成される第1の生成流体を放出するための少なくとも1つの放出管(72)とを有しており、
前記第1の供給流体のための流入管(70)及び前記第1の生成流体のための放出管(72)は、前記加熱炉(16)に含まれるラック(12)の複数の自立式構造に同時的に連結されるように構成されており、
前記チャンバ(60)内に配置されるラック(12)の各自立式構造の前記流体分配器(30)は、
前記ラック(12)の自立式構造が前記チャンバ(60)内に配置されるとき、前記第1の供給流体のための流入管(70)に着脱可能に連結されるように構成されて、前記ラック(12)の各スタック(14)に連結されている、前記第1の供給流体のための第1の共通供給パイプ(34)と、
前記ラック(12)の自立式構造が前記チャンバ(60)内に配置されるとき、前記第1の生成流体のための放出管(72)に着脱可能に連結されるように構成されて、各スタック(14)に連結されている、前記第1の生成流体のための第1の共通回収パイプ(36)と
を有している、請求項1~4のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)。
【請求項6】
前記流体分配システム(18)は、スタック(14)毎の第2の供給流体のための少なくとも1つの流入管(74)と、各スタック(14)で生成される第2の生成流体を放出するための少なくとも1つの放出管(76)とを有しており、
前記第2の供給流体のための流入管(74)及び前記第2の生成流体のための放出管(76)は、前記加熱炉(16)に含まれるラック(12)の複数の自立式構造に同時的に連結されるように構成されており、
前記チャンバ(60)内に配置されるラック(12)の各自立式構造の流体分配器(30)は、
前記ラック(12)の自立式構造が前記チャンバ(60)内に配置されるとき、前記第2の供給流体のための流入管(74)に着脱可能に連結されるように構成されて、前記ラック(12)の各スタック(14)に連結されている、前記第2の供給流体を供給するための第2の共通供給パイプ(38)と、
前記ラック(12)の自立式構造が前記チャンバ(60)内に配置されるとき、前記第2の生成流体のための第2の放出管(76)に着脱可能に連結されるように構成されて、各スタック(14)に連結されている、前記第2の生成流体のための第2の共通回収パイプ(40)と
を有している、請求項5に記載の電気化学装置(10)。
【請求項7】
前記流体分配システム(18)は、前記ラック(12)の自立式構造毎に、
前記ラック(12)の自立式構造の第1の供給流体のための前記第1の共通供給パイプ(34)に着脱可能に連結されるように構成されており、前記第1の供給流体のための前記流入管(70)を開閉する第1の供給タッピング(80)と、
前記ラック(12)の自立式構造の第1の生成流体のための前記第1の共通回収パイプ(36)に着脱可能に連結されるように構成されており、前記第1の生成流体のための前記放出管(72)を開閉する第2の放出タッピング(82)と
を有している、請求項5又は6に記載の電気化学装置(10)。
【請求項8】
前記チャンバ(60)は長手軸芯(A-A’)に沿って長手方向に延びており、前記ラック(12)の複数の自立式構造は、前記長手軸芯(A-A’)に沿って配置されており、前記第1の供給流体のための前記流入管(70)及び前記第1の生成流体のための前記放出管(72)は前記長手軸芯と平行に延びている、請求項5~7のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)。
【請求項9】
前記ラック(12)の各自立式構造は、前記チャンバ(60)の内側に配置される動作位置と前記チャンバ(60)の外側に配置される保守位置との間で前記加熱炉(16)に対して移動可能であるように取り付けられている、請求項1~8のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)。
【請求項10】
前記チャンバ(60)は、前記ラック(12)又は一群のラック(12)のための側方扉(65C) を有しており、前記ラック(12)又は一群のラック(12)の各自立式構造は、フォークリフト(90)によって前記側方扉(65C) を通して引き出されることが可能であるか、或いは、
前記チャンバ(60)は、前記ラック(12)又は一群のラック(12)のための上方扉(65C) を有しており、前記ラック(12)又は一群のラック(12)の各自立式構造は、天井クレーン(92)のウィンチ(96)によって前記上方扉(65C) を通して引き出されることが可能である、請求項9に記載の電気化学装置(10)。
【請求項11】
発電のための前記スタック(14)は燃料電池であり、前記燃料電池は、燃料で形成される第1の供給流体を受けて、水を含む第1の生成流体を生成し、空気を含む第2の供給流体を受けて、第2の生成流体を生成することが可能であるか、或いは、
生成のための前記スタック(14)は電解セル又は共電解セルであり、前記電解セル又は共電解セルは、水又は水及び二酸化炭素を含む第1の供給流体を受けて、水素又は水素及び一酸化炭素を含む第1の生成流体を生成し、空気を含む第2の供給流体を受けて、酸素を含む第2の生成流体を生成することが可能である、請求項1~10のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)。
【請求項12】
前記加熱システム(62)は、前記チャンバ(60)内に配置されている少なくとも1つの電気抵抗を有しており、
1つの電気抵抗又は各電気抵抗は、有利には貫通孔を有する少なくとも1つの金属管に挿入されて、優先的には前記チャンバ(60)内に配置されたマッフルの後方に配置されている、請求項1~11のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)。
【請求項13】
前記加熱炉(16)の前記チャンバ(60)が、前記スタック(14)の複数の重ね合わされた段を有する自立式構造を含む少なくとも1つのラック(12)、及び/又は、前記スタック(14)の複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を含む各ラック(12)を含んでいる、請求項1~12のいずれか1つに記載の電気化学装置(10)を準備する工程、
前記チャンバ(60)に含まれる少なくとも1つのラック(12)の複数段の前記スタック(14)を共に加熱するために前記チャンバ(60)内の加熱システム(62)を作動させる工程、並びに
特に発電、ガス状化合物の生成、及び/又は共電解のために、前記チャンバ(60)に含まれる各ラック(12)の各スタック(14)で電気化学反応を行い、任意に前記加熱システム(62)は、前記ラック又は各ラック(12)と接する、前記チャンバ(60)内の空気を400 ℃を超える温度、優先的には400 ℃~1300℃の範囲内の温度、有利には600 ℃~1200℃の範囲内の温度にする工程
を有する、電気化学プロセス。
【請求項14】
空気撹拌システム(64)によって前記少なくとも1つのラック(12)の周囲の空気を撹拌し、
複数段のスタック(14)を共に加熱している間、前記少なくとも1つのラック(12)の各スタック(14)の温度が、前記少なくとも1つのラック(12)のスタック(14)の平均温度と最大10%異なる、請求項13に記載の電気化学プロセス。
【請求項15】
前記少なくとも1つのラック(12)の複数段のスタックを共に加熱している間、前記チャンバ(60)からラック(12)の少なくとも1つの自立式構造を外して、前記ラック(12)の少なくとも1つの他の自立式構造を前記チャンバ(60)に配置されたままにする工程と、外す工程後、前記ラック(12)の外した自立式構造を前記チャンバ(60)に戻すか、又は前記ラック(12)の外した自立式構造の代わりに、前記ラック(12)の別の自立式構造を配置する工程とを有する、請求項14に記載の電気化学プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に発電、ガス状化合物の生成又は共電解のために電気化学反応を行うための複数の燃料電池スタック(以下「スタック」と称する)と、1つのラック又は各スタックを受けるように構成されているチャンバ及び加熱システムを有する加熱炉とを備えている電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、水素、メタン、プロパン、ブタン、発酵ガス、ガス化バイオマス、バイオ燃料、合成燃料、アンモニア、メタノール、一酸化炭素、天然ガス及び/又は塗料蒸気などの燃料から電気を発生させるために陸上又は海上に配置されるように構成されている。
【0003】
変形例では又は加えて、装置は、再生可能な電気源、特に風力タービン、潮力発電機若しくはソーラーパネル、又はより一般的に電力網によって発生した電気から、ガス状化合物、例えば水素を生成するように構成されている。
【0004】
更に別の変形例では、装置は、共電解によってガス状化合物を生成する、例えば水及び二酸化炭素から、電解によって化学成分の合成用の合成ガスを生成するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置は、例えば固体酸化物電解セル(SOEC)又は固体酸化物燃料電池(SOFC)である複数のスタックを備えている。本発明は、(100 ℃を超える)他の高温燃料電池技術に更に適用可能である。
【0006】
このようなセルは、主に出力電力が1kW~20MWの範囲内である据え付けの用途用である。セルのガス状放出物は、電気効率を高めるように二次ガスタービンに動力を供給するために使用され得る。ガス状放出物は、直接使用され得るか又は回収され得る水蒸気を発生させる触媒バーナーに更に供給され得る。例えば水蒸気は、追加の電気を発生させるために使用される場合にシステムの電気効率全体を高めるために発生させられる。
【0007】
SOFC要素(又は電気化学セル)は一般に4層で構成されており、そのうちの3層はセラミックである。SOFC要素の通常の厚さは数ミリメートルである。数十又は数百のこのような要素が直列に重ね合わされて、スタックが形成される。
【0008】
このような要素では、アノード側で気体燃料、例えば水素と反応するために、酸素イオンが、高温で電解質として使用される固体酸化物膜を通って移動する。
【0009】
SOFCで使用されるセラミックは、非常に高い温度に達するときのみ電気的且つイオン的に活性になる。従って、活性膜を形成するために、スタックは600 ℃~1200℃程度の温度に達する必要がある。
【0010】
SOFC又はSOECの動作温度が高いため、プロトン交換膜燃料電池とは異なり、高価な触媒(例えば白金)を設ける必要がない。これは、SOFC又はSOECが一酸化炭素による触媒毒を受けないため、汎用性を非常に高めることを意味する。
【0011】
熱膨張は、開始時にゆっくりと均一に加熱することを必要とする。通常、1時間以上の温度上昇が必要である。
【0012】
既知の装置では、燃料電池スタック又は電解セルは、セラミックの燃焼に通常使用される小型の炉の断熱チャンバに一体化されている。従来、4個未満のスタックは、断熱チャンバに個々にロードされてチャンバの底部に配置される。諸設備が、必要な様々な流体を供給して、生じた流体を回収するように各チャンバに関連付けられて各スタックに連結されている。このような諸設備は、バランスオブプラント(BOP) と称され、ガスを処理するため、加えてスタック内での反応の前に熱回収によってガスの温度を上昇させるために更に使用される。
【0013】
従って、SOFCユニット又はSOECユニットの大規模な展開には、非常に多くの断熱チャンバと同数の多くのBOP との集積が伴う。
【0014】
低容量チャンバの集積は、材料の処理のためにチャンバにアクセス可能であるように、チャンバの配置に対する著しい制約を含めて、多くの問題を引き起こす。
【0015】
このため、チャンバはコンパクトに並べて配置され得ない。これは、パイプ及び遮断弁の増加に加えて、クリアランスゾーン及びマルチレベル構造が必要であることを意味する。
【0016】
従って、このような複雑さは、コンパクトな配置を妨げるだけでなく、パイプの長さとセンサ及び弁の数とを大幅に増加させる。そのため、システムの全体的な熱損失が増加し、溶液のエネルギー効率が低下する。加えて、このようにパイプが増加することにより、漏れ又は爆発の危険性が高まる。
【0017】
更に、小型のチャンバの増加には、複数の絶縁部品を設けて、チャンバのための加熱抵抗の数を増加させる必要がある。
【0018】
各チャンバを個別に動作温度にする必要があり、装置の起動時間及び停止時間が非常に長くなるため、このように細分化された配置には動作上の困難さが更に伴う。
【0019】
従って、本発明の一目的は、例えば発電及び/又はガス状化合物の生成又は共電解のために、嵩高くないが信頼性が依然として高く操作し易い、高温で動作する電気化学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的のために、本発明の主題は、前述のタイプの装置であって、少なくとも1つのラックを備えており、ラック又は各ラックは、スタックの複数の重ね合わされた段を有する自立式構造、及び/又は、スタックの複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を有しており、各自立式構造は、各スタックに少なくとも1つの流体を供給する、及び/又は各スタックから少なくとも1つの流体を収集することが可能な流体分配器を有しており、チャンバは、少なくとも1つのラックを含むことが可能であり、チャンバに含まれるラック又は各ラックの複数段のスタックは、加熱システムによって共に加熱されるように構成されている装置に関する。
【0021】
本発明に係る装置は、単独で又は技術的に可能な組み合わせに応じて、以下の一又は複数の特徴を備えてもよい。
【0022】
- チャンバは常時、地面又は床に取り付けられている。
【0023】
- 装置は複数のラックを備えており、チャンバは、複数のラックを含むのに適しており、チャンバに含まれるラックのスタックは、加熱システムによって共に加熱されるように構成されている。
【0024】
- 加熱炉は、各ラックの周囲のチャンバ内の空気を撹拌するのに適した空気撹拌システムを内部に有している。
【0025】
- 加熱炉は、加熱炉の動作中にガスの超過圧力をチャンバ内に発生させることができる中性ガス注入器をチャンバ内に有しており、加熱炉は、有利にはチャンバの外側に抽出されるガスの分析器を有している。
【0026】
- ラックの各スタック段のスタックの数が4を超えている。
【0027】
- 装置は、加熱炉の外側に設けられている共通の流体分配システムを備えており、流体分配システムは、スタック毎の第1の供給流体のための少なくとも1つの流入管と、各スタックから第1の生成流体を放出するための少なくとも1つの放出管とを有しており、第1の供給流体のための流入管及び第1の生成流体のための放出管は、加熱炉に含まれるラックの複数の自立式構造に同時的に連結されるように構成されており、チャンバ内に配置されるラックの各自立式構造の流体分配器は、
* ラックの自立式構造がチャンバ内に配置されるとき、第1の供給流体のための流入管に着脱可能に連結されるように構成されて、ラックの各スタックに連結されている、第1の供給流体のための第1の共通供給パイプと、
* ラックの自立式構造がチャンバ内に配置されるとき、第1の生成流体のための放出管に着脱可能に連結されるように構成されて、各スタックに連結されている、第1の生成流体を回収するための第1の共通回収パイプと
を有している。
【0028】
- 流体分配システムは、スタック毎の第2の供給流体のための少なくとも1つの流入管と、各スタックに第2の生成流体を放出するための少なくとも1つの放出管とを有しており、第2の供給流体のための流入管及び第2の生成流体のための放出管は、加熱炉に含まれるラックの複数の自立式構造に同時的に連結されるように構成されており、チャンバ内に配置されるラックの各自立式構造の流体分配器は、
* ラックの自立式構造がチャンバ内に配置されるとき、第2の供給流体のための流入管に着脱可能に連結されるように構成されて、ラックの各スタックに連結されている、第2の供給流体のための第2の共通供給パイプと、
* ラックの自立式構造がチャンバ内に配置されるとき、第2の生成流体のための放出管に着脱可能に連結されるように構成されて、各スタックに連結されている、第2の生成流体を回収するための第2の共通回収パイプと
を有している。
【0029】
- ラックの自立式構造毎に、流体分配システムは、
* ラックの自立式構造の第1の供給流体のための第1の共通供給パイプに着脱可能に連結されるように構成されており、第1の供給流体のための流入管を開閉する第1の供給タッピングと、
* ラックの自立式構造の第1の生成流体のための第1の共通回収パイプに着脱可能に連結されるように構成されており、第1の生成流体のための放出管を開閉する第2の放出タッピングと
を有している。
【0030】
- チャンバは長手軸芯に沿って長手方向に延びており、ラックの複数の自立式構造は長手軸芯に沿って配置されており、第1の供給流体のための流入管及び第1の生成流体のための放出管は長手軸芯と平行に延びている。
【0031】
- ラックの各自立式構造は、チャンバの内側に配置されている動作位置とチャンバの外側に配置されている保守位置との間で加熱炉に対して移動可能であるように取り付けられている。
【0032】
- チャンバは、ラック又は一群のラックのための側方扉を有しており、ラック又は一群のラックの各自立式構造は、フォークリフトを用いて側方扉を通して引き出されるのに適しているか、或いは、チャンバは、ラック又は一群のラックのための上方扉を有しており、ラック又は一群のラックの各自立式構造は、天井クレーンのウィンチによって上方扉を通して引き出されるのに適している。
【0033】
- 発電のためのスタックは燃料電池、特に固体酸化物燃料電池であり、燃料電池は、燃料で形成される第1の供給流体を受けて、水を含む第1の生成流体を生成し、空気を含む第2の供給流体を受けて、第2の生成流体を生成することができるか、或いは、
生成のためのスタックは、少なくとも1つのガス状化合物を生成するためのスタック、特に電解セル又は共電解セルであり、電解セル又は共電解セルは、有利には水又は水及び二酸化炭素を含む第1の供給流体を受けて、水素又は水素及び一酸化炭素を含む第1の生成流体を生成し、有利には空気を含む第2の供給流体を受けて、酸素を含む第2の生成流体を生成することができる。
【0034】
- 加熱システムは、チャンバ内に配置された少なくとも1つの電気抵抗を有しており、1つの電気抵抗又は各電気抵抗は、有利には貫通孔を有する少なくとも1つの金属管に挿入されて、優先的にはチャンバ内に配置されたマッフルの後方に配置されている。
【0035】
- 各スタックは、重ねて配置された複数の単位スタッキング要素を有しており、各単位スタッキング要素は、第1の電極、電解質、特に固体電解質、及び第1の電極の極性と逆の極性の第2の電極を有している。
【0036】
本発明は、本発明の主題として、
* 加熱炉のチャンバが、スタックの複数の重ね合わされた段を有する自立式構造を含む少なくとも1つのラック、及び/又は、スタックの複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を含む各ラックを含んでいる、上記に定められているような装置を準備する工程、
* チャンバに含まれる1つのラック又は各ラックの複数段のスタックを共に加熱するためにチャンバ内の加熱システムを作動させる工程、並びに
* 特に発電、ガス状化合物の生成、及び/又は共電解のために、チャンバに含まれる各ラックの各スタックで電気化学反応を行う工程
を有する、電気化学プロセスを有している。
【0037】
本発明に係るプロセスは、単独で又は技術的に可能な組み合わせに応じて、以下の一又は複数の特徴を備えることが可能である。
【0038】
- 加熱システムは、1つのラック又は各ラックと接する、チャンバ内の空気を、400 ℃を超える温度、優先的には400 ℃~1300℃の範囲内の温度、有利には600 ℃~1200℃の範囲内の温度にする。
【0039】
- プロセスでは、各ラックの周囲の空気を大気撹拌システムで撹拌し、複数段のスタックを共に加熱している間、ラック又は各ラックの各スタックの温度は、ラック又は各ラックのスタックの平均温度から最大10%異なる。
【0040】
- 1つのラック又は各ラックの複数段のスタックを共に加熱している間、プロセスは、チャンバからラックの少なくとも1つの自立式構造を外して、ラックの少なくとも1つの他の自立式構造をチャンバに配置されたままにする工程と、有利には、外す工程後、ラックの外した自立式構造をチャンバに戻すか、又はラックの外した自立式構造を取り替えるためにラックの別の自立式構造を配置する工程とを有する。
【0041】
本発明は、添付図面を参照して、単に一例として挙げられた以下の説明を読むと更に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る第1の生成装置を示す平面図である。
【
図2】
図1に示されている装置を垂直面に沿って示す部分断面図である。
【
図3】
図2に示されている装置のチャンバに導入されるように構成されて複数のスタックを有しているラックを示す部分斜視図である。
【
図4】
図2に示されている装置のチャンバへのラックの導入中の
図2と同様の図である。
【
図5】各ラックと共通パイプとの連結部と共に加熱チャンバの一側を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
特に発電、及び/又はガス状化合物の生成、及び/又は共電解のための本発明に係る第1の電気化学装置10が
図1~5に示されている。
【0044】
図1及び
図2に示されているように、装置10は複数の個々のラック12を備えており、各ラック12は、特に発電、ガス状化合物の生成又は共電解のために電気化学反応を行うための複数のスタック14を支持している。
【0045】
本発明によれば、生成装置10は少なくとも1つの炉16を備えており、炉16は、少なくとも1つのラック12を含んで炉16に含まれるラック又は各ラック12のスタック14を共に加熱するように構成されている。
【0046】
生成装置10は、炉16内に受けられる各ラック12に流体連結されるように構成されている流体分配システム18を備えている。
【0047】
装置10は、陸上又は海上に、例えば海上のプラットフォームに配置されるように構成されている。装置は地面又は床19に載置される。
【0048】
各スタック14は一般に、重ねて配置された複数の単位スタッキング要素を有している。各単位スタッキング要素(又はセル)は、第1の電極、固体電解質などの電解質、及び第1の電極の極性と逆の極性の第2の電極を有している。
【0049】
電極は、例えば平坦な単位要素で形成されており、スタック14の形状はサンドイッチ型の形状である。変形例では、各電極は管状要素で構成されており、スタック14の形状は管状である。
【0050】
図3を参照すると、各スタック14は、第1の供給流体を供給するための第1の入口22と、第1の生成流体を回収するための第1の出口24とを有している。第1の入口22及び第1の出口24は、スタック14に含まれる各単位要素の各第1の電極と流体連通する。
【0051】
同様に、スタック14は、第2の供給流体のための第2の入口26と、第2の生成流体を受けるための第2の出口28とを有している。第2の入口26及び第2の出口28は、スタック14に含まれる各単位要素の各第2の電極と流体連通する。
【0052】
スタック14は、例えば固体酸化物燃料電池(つまり上記で定められているような「SOFC」)である。このような場合、第1の電極はアノードであり、第1の供給流体は、水素、メタン、プロパン、ブタン、発酵ガス、ガス化バイオマス、バイオ燃料、及び/又は合成燃料、アンモニア、メタノール、一酸化炭素、天然ガス、及び/又は塗料蒸気を含むか又はこのような成分で特に構成されている燃料である。そのため、第1の生成流体は一般に水、二酸化炭素であり、場合によってはスタック14内で反応しなかった過剰な燃料を含む。
【0053】
第2の電極はカソードである。固体酸化物燃料電池(つまり上記で定められているような「SOFC」)の同一の場合、第2の供給流体は空気である。第2の生成流体は、酸素欠乏空気の残留物である。
【0054】
電解質は、アノード側の燃料をカソード側の空気から分離する膜として機能する。同様に、電解質は、例えば酸化ジルコニウムを基にした、例えばセラミック材料で形成されている。
【0055】
電子電流が、電力網に供給されるために各単位要素の電極全体で収集される。
【0056】
変形例として、スタックは、固体酸化物電解セル(上記で定められているような「SOEC」)である。
【0057】
このような場合、アノードへの第1の供給流体は空気であり、第1の生成流体は酸素である。カソードでの第2の供給流体は水蒸気であり、第2の生成流体は水素である。
【0058】
更なる変形例として、スタック14は、ガス状化合物の共電解、例えば化学成分の合成用の合成ガスなどを形成するための水蒸気及び二酸化炭素の共電解のために構成されている。
【0059】
電解反応は、例えば電力網、及び/又は発電プラント、特に、例えば少なくとも1つの風力タービン、少なくとも1つの潮力発電船舶タービン及び/又は少なくとも1つのソーラーパネルを含む再生可能な発電プラントから、各単位要素の電極端子に供給される電流の影響下で生じる。
【0060】
各スタック14の単位要素の数は、優先的に10より大きく、特に50~200 の範囲内である。
【0061】
図3を参照すると、ラック12は、個々に移動可能であって、他のラック12に対して一体の複数段を有する自立式構造を有している。変形例では、ラック12は自立式構造の複数段のスタックである。
【0062】
各自立式構造は、一体で炉16に導入されて炉16から引き出されることが可能である。
【0063】
図3には、2つの同一の基本段を有する自立式構造を有するラック12が示されている。
【0064】
ラック12の各自立式構造は、炉16に含まれる他のラック12にあるスタック14とは無関係に、又は必要に応じて、同一のラック12の別の自立式構造にあるスタック14とは無関係に、共に移動可能な複数のスタック14を支持している。
【0065】
ラック12の各自立式構造は、ラック12の自立式構造に固有の流体分配器30を更に有しており、流体分配器30は、全てのラック12に共通の分配システム18からラック12の各スタック14に第1の供給流体及び第2の供給流体を供給して、全てのラック12に共通の分配システム18に第1の生成流体及び第2の生成流体を戻すためにラック12の各スタック14から第1の生成流体及び第2の生成流体を回収するように構成されている。
【0066】
図3に示されている例では、ラック12の各自立式構造は、5以上のスタック14、特に8以上、特に16以上、有利には32~56の範囲内の多数のスタック14を有している。
【0067】
ラック12の各自立式構造のスタック14は、例えばスタック14の行32A ~行32D の形態で各段に構成されている。
【0068】
図3に示されている例では、少なくとも2つの行32A, 32Bが平行に同一の段に並んで配置されており、少なくとも2つの行32C, 32Dが、ラック12の別の段に行32A, 32Bの上側に夫々配置されている。
【0069】
ラック12の1つの段に配置されたスタック14は別個であり、ラック12の別の段に配置されたスタック14から垂直に離隔して配置されている。
【0070】
ラック12の各自立式構造の分配器30は、第1の供給流体を供給するための第1の共通パイプ34、第1の生成流体を回収するための第1の共通パイプ36、第2の供給流体を供給するための第2の共通パイプ38、及び第2の生成流体を回収するための第2の共通パイプ40を有しており、共通パイプ34~40は、分配システム18に連結されるように構成されている。
【0071】
分配器30は、各共通パイプ34~40を行32A ~32D に配置された各スタック14に流体連結するために各行32A ~32D に固有の分岐連結部44~50を更に有している。
【0072】
共通パイプ34~40は、スタック14及び連結部44~50を越えて互いに平行に突出している。この例では、共通パイプは水平に延びている。
【0073】
共通パイプ34~40は、分配システム18に着脱可能に連結されるように構成されているエンドフランジを夫々有している。
【0074】
同一のラック12の少なくとも4つの共通パイプ34~40の分配フランジは同一平面上にあり、各共通パイプ34~40の軸芯に垂直な垂直面に配置されていることが有利である。
【0075】
本例では、連結部44~50は剛性パイプであり、全ての連結部は対応する共通パイプ34~40に平行に延びている。
【0076】
各連結部44~50は、一又は複数の横分岐連結部を介して、対応する共通パイプ34~40に連結されている。
【0077】
このため、各連結部44は、一方では第1の共通パイプ34に連結されており、他方では第1の供給流体を行32A ~32Dの各スタック14に供給する第1の入口22に、対応するタッピングを介して連結されている。
【0078】
従って、共通パイプ34は、第1の供給流体をラック12の自立式構造の全てのスタック14に供給する唯一のパイプである。
【0079】
各連結部46は、一方では第1の共通パイプ36に連結されており、他方では第1の生成流体を行32A ~32D の各スタック14から回収するための第1の出口24に、対応するタッピングを介して連結されている。
【0080】
従って、共通パイプ36は、第1の生成流体をラック12の自立式構造の全てのスタック14を通して収集する唯一のパイプである。
【0081】
各連結部48は、一方では第2の共通パイプ38に連結されており、他方では第2の供給流体を行32A ~32D の各スタック14に供給する第2の入口26に、対応するタッピングを介して連結されている。
【0082】
従って、共通パイプ38は、第2の供給流体をラック12の自立式構造の全てのスタック14に供給する唯一のパイプである。
【0083】
各連結部50は、第2の共通パイプ40に連結されており、第2の生成流体を行32A ~32D の各スタック14から回収するための第2の出口28に、対応するタッピングを介して連結されている。
【0084】
従って、共通パイプ40は、第2の生成流体をラック12の自立式構造の全てのスタック14によって収集する唯一のパイプである。
【0085】
変形例として、連結部44~50は、一方では共通パイプ34~40に連結されている少なくとも1つの剛性マニホールドに連結されて、他方では各スタック14の入口22, 26及び出口24, 28に夫々連結されている可撓性パイプである。
【0086】
図1、
図2及び
図4に示されているように、ラック12の各自立式構造は、炉16の内側に配置される通常の動作位置と炉16の外側に配置される保守位置との間で一体に移動可能である。
【0087】
各ラック12は自己加熱手段を有していない。各ラック12の各自立式構造のスタック14は、同一の炉16に含まれる他のラック12のスタック14、又は必要に応じて同一のラック12の他の自立式構造のスタック14と一緒に共に加熱されるように構成されている。
【0088】
図1及び
図2を参照すると、炉16は、複数段に亘るスタック14を共に加熱するために少なくとも1つのラック12を同時的に受けるように構成されている断熱チャンバ60と、断熱チャンバ60を加熱するための加熱システム62と、特に起動段階中及び動作段階中に炉16内の温度を均一化するための空気撹拌システム64(
図2参照)とを有している。
【0089】
チャンバ60は、ここでは平行六面体の内部容積66を画定する壁65A ~65E によって形成されている。壁65A ~65E は断熱されている。壁は、例えば0.5 W/m.K 未満の熱伝導率を有する。
【0090】
本例では、チャンバ60の内部容積66は、少なくとも1つのラック12、特に1個のラック12から10個のラック12を受けることが可能である。このため、チャンバ60の内部容積66は、10を超えるスタック14、特に100 を超えるスタック、例えば数百のスタック14を含むことが可能である。
【0091】
チャンバ60の内部容積は、例えば9m3を超え、特に9m3 ~100 m3 の範囲内である。
【0092】
チャンバ60が1つのラック又は各ラック12を受ける場合、内部容積66内におけるラック12によって占有されない空きスペースは、加熱システム62、(例えば耐火鋼製の)マッフル、内部の空気撹拌システム及びパイプ34~40をチャンバ60内に配置し得るために、ラック12の容積の50%より大きい。
【0093】
壁65は、分配システム18と対向して配置された少なくとも1つの側壁65A と、少なくとも1つの側壁65B とを有しており、ここでは有利に、各ラック12を内部容積66に選択的に挿入するか又は各ラック12を内部容積66の外側に引き出すように内部容積66にアクセスするための、各ラック12の前方で対向する側方扉65C を有している。
【0094】
壁65は、適切な場合、内部容積66の上側及び下側を夫々閉じる下壁65D 及び上壁65E を更に有している。
【0095】
側壁65A は、共通パイプ34~40が横断するための開口部68を有しており、各開口部68は、ラック12の対応する共通パイプ34~40によって横断され得る。
【0096】
従って、ラック12の自立式構造が内部容積66に挿入される通常の動作位置を占める場合、ラック12の自立式構造の各共通パイプ34~40は、分配システム18に連結するために内部容積66から側壁65A の対応する開口部68を通って分配システム18に向かって突出している。
【0097】
ラック12の自立式構造が内部容積66の外側の保守位置を占める場合、通常の動作位置でラック12の前方にある横断用開口部68は、断熱スリーブ(不図示)による遮断に適していることが有利である。
【0098】
従って、内部容積66内に配置されているラック12の他の自立式構造は、内部容積66から引き出されたラック12の自立式構造の内の1つの保守中、通常の動作位置のままである。
【0099】
加熱システム62は、内部容積66内のガス状空気を450 ℃を超える温度、例えば450 ℃~1300℃の範囲内、特に600 ℃~1200℃の範囲内の温度にするためにガス状空気を加熱することが可能である。
【0100】
本例では、加熱システムは電気抵抗を有している。電気抵抗は、例えば断熱チャンバ60と前記ラック又は各ラック12との間に垂直に配置されている。そのため、炉16は「マッフル」と称される絶縁板を有していることが有利である。
【0101】
この板は、ラック12のコネクタを直接放射線から保護する。ラック12が並んでいる場合、ラック12間にマッフル/抵抗/マッフルシステムを配置することが更に可能である。
【0102】
一般に、抵抗は、起動のためにチャンバ60を急速に加熱し、必要に応じて(電解モードで発生する可能性がある)スタック14の吸熱動作の場合に温度を維持する。
【0103】
このような場合、スタック14に導入される供給流体は、スタック14を反応温度で維持するために加熱される。このようにして、特に電解/共電解構成では所望の電気化学反応を生じさせるために、スタック14に供給する必要がある電力を最小限度に抑える。
【0104】
各電気抵抗は、貫通孔を有する少なくとも1つの鋼金属管に挿入されることが有利である。
【0105】
そのため、電気抵抗は、起動段階及び停止段階中に外部から保護される。鋼管は、内部空気の流れ及び熱交換のために十分な開口部を有している。
【0106】
電気抵抗は、内部容積66に含まれる各ラック12及びラック12に含まれる各スタック14の温度を同時的に上昇させるように内部容積66全体を加熱するのに適している。
【0107】
変形例では又は加えて、加熱システムは少なくとも1つのバーナーを有している。
【0108】
撹拌システム64は、有利には上壁65E に配置されている攪拌器で、例えば構成されている。攪拌器は、内部容積66内のガス状空気を撹拌して、熱交換の均一性を向上させることができる。攪拌器は、強制的に炉16内の内部容積66の温度を急速に且つ制御して冷却すべく使用されるのにも適している。
【0109】
攪拌器は、熱伝達を大幅に高めて、加熱時間及び冷却時間を大幅に減らす。攪拌器は、前記ラック又は各ラック12の周囲の空気に気体流を発生させるのに適している。
【0110】
各攪拌器は、少なくとも1つのブレードを支持する回転式撹拌部材と、可動部材を回転させるためのモータとを有している。
【0111】
攪拌器は、優先的にチャンバ60の壁に取り付けられており、モータは内部容積66の外側に配置されており、回転式撹拌部材は内部容積66内に配置されている。
【0112】
撹拌システム64は、中性ガス(例えば窒素)を注入するためのシステム(不図示)と、適切な場合、炉16の外側の出口流に水素が存在する可能性を検出し得るパイプ内分析器とに関連付けられていることが有利である。
【0113】
撹拌により、チャンバ60の内部容積66に超過圧力が与えられる。
【0114】
このようにして、チャンバ60は不活性雰囲気で動作し、起こり得る漏れガスの放出による事故(爆発、発火)の危険性が制限される。
【0115】
空気、ひいては酸素の吸込みが回避され、爆発/発火の危険性に加えて、チャンバの化合物及びその成分の酸化を防ぐ。
【0116】
超過圧力により、スタック14からの漏れの危険性が更に制限される。
【0117】
炉16の緊密性は、押し流し及び/又は撹拌に伴う熱損失を低減するために更に最大限度にされる。
【0118】
撹拌システム64は内部容積66全体の内部の温度を均一にするため、複数のラック12、必要に応じて同一のラック12の自立式構造の複数段の同一のチャンバにおける並列動作が可能になる。
【0119】
撹拌により、炉16内の過熱点の出現、ひいては他のスタックと比較したあるスタック14の(例えばスタック14の平均温度と比較して10%を超える)著しい温度上昇が回避される。
【0120】
様々なスタック14の温度が一定で均一であるため、スタック14が破損して、スタック14の利用率に著しい不均衡が生じる危険性が制限される。従って、内部容積66に含まれる全てのスタック14の寿命は均一である。
【0121】
炉16の内部容積66内のラック12の形態でのスタック14の配置と、分配システム18による炉16の外側の各ラック12の供給の共有とにより、内部容積66内の空間がほとんどラック12によってのみ占有されるように最適化される。
【0122】
このようにして、各スタック14の分配連結部44~50がチャンバ60内の内部容積66に直接配置されてスタック14と同一の温度変化を受けるため、全てのパイプに与えられる熱応力が更に最小限度に抑えられる。
【0123】
加えて、内部容積66内の様々な共通パイプ34~40間、及び様々な連結部44~50間で熱交換が生じ得る。このようにして、プロセスの実施がより容易になり、実施専用の熱交換、特にシステムの最高温度で動作する最も扱い難い熱交換器が除かれる。
【0124】
加熱及び換気に加えて諸設備が分配システム18を介して共有されるので、複数のスタック14を支持する可動自立式構造、及び複数のラック12、必要に応じてラック12の複数の自立式構造に共通する炉16が設けられているため、スタック14毎、又は個々のスタック14の小さな群毎に特定の炉に供給する必要性が回避される。従って、スタック14毎、又はスタック14の小さな群毎に特定の加熱システム、諸設備の特定のシステム及び特定の換気を準備する必要がなくなる。
【0125】
図1及び
図2を参照すると、分配システム18は、第1の供給流体のための流入管70、第1の生成流体を放出するための放出管72、第2の供給流体のための流入管74、及び第2の生成流体を放出するための放出管76を有している。
【0126】
図1及び
図2を参照すると、分配システム18は、各ラック12に関連付けられて各管70~76に夫々連結されているタッピング80~86を更に有しており、各タッピング80~86は、夫々の対応する管70~76を各ラック12の夫々の共通パイプ34~40に連結するための対応する連結弁(
図2の82A, 86A参照)を有している。
【0127】
この例では、管70~76の少なくとも1つの群が、炉16に含まれる各ラック12に連結されるために各炉16に関連付けられている。
図1に示されている例では、2つの炉16が互いに平行に配置されており、各炉16は、2つの炉に共有される分配システム18を有している。
【0128】
図1に示されている例では、管70~76は、側壁65A の前方に側壁65A に沿って炉16の長手軸芯A-A’に平行に延びている。
【0129】
タッピング80~86は、軸芯A-A’に対して壁65A に向かって壁65A の外側に横断して突出している。
【0130】
タッピング80~86の自由端部の少なくとも一部は、軸芯A-A’と平行な同一の垂直面にある。
【0131】
前記ラック又は各ラック12がチャンバ60の内部容積66内に配置される場合、共通パイプ34~40の自由端部は、タッピング80~86の自由端部と着脱可能に連結されることができ、共通パイプ34~40は横開口部68を介して突出する。
【0132】
従って、タッピング80~86と各ラック12との連結部は、確認され得るように容易にアクセス可能であり、ラック12、必要に応じてラック12の自立式構造が炉16の内部容積66の外側に移動する必要がある場合に容易に分離可能である。
【0133】
管70~76を炉16の軸芯A-A’と平行に配置することにより、連結部への容易なアクセスを維持しながら、装置10の小型化が更に高められる。
【0134】
従って、地面での同一の表面積に関して、発電及び/又は燃料流体のための装置10の能力が向上する。対して、電気及び/又は燃料流体を生成する同一の能力に関して、装置10の外形寸法が減少する。
【0135】
装置10の動作を説明する。
【0136】
最初に、起動前、例えば
図4に示されているようにリフトトラック90を使用して、各ラック12又はラック12の各自立式構造を炉16の内部容積66内の所定の位置に載置する。
【0137】
各ラック12又はラック12の各自立式構造が内部容積66内の位置に配置されると、側方扉65C を開放し、共通パイプ34~40を夫々の開口部68を横切らせることにより、ラック又はラック12の自立式構造を側壁65A に向かって進める。
【0138】
次に、共通パイプ34~40の自由端部を、分配システム18の対応するタッピング80~86に着脱可能に連結する。
【0139】
全てのラック12又はラック12の全ての自立式構造がチャンバ60内に配置されると、側方扉65C を閉じて内部容積66を閉じる。
【0140】
内部容積66内のガス状空気を450 ℃を超える温度、特に450 ℃~1300℃の範囲内の温度、例えば600 ℃~1200℃の範囲内の温度にするように電気抵抗に電力を供給することにより、加熱システム62が作動する。従って、複数のラック12、必要に応じてラック12の各自立式構造及び1つのラック又は各ラック12に含まれる各スタック14の内部空気の撹拌によって支援される進行性且つ共通の加熱が非常に簡単に行われる。
【0141】
その後、対応するタッピング80~86のバルブを開放する。第1の供給流体は、流入管70から各タッピング80を通って各ラック12の第1の共通パイプ34に流れ、次にラック12の各連結部44を通って流れる。その後、流体は、連結部44に連結された第1の入口22を介して各スタック14に入る。第1の供給流体は第1の電極で反応して第1の生成流体を生成する。
【0142】
第1の生成流体は、各第1の出口24で収集されて、次に連結部46で収集され、その後に第1の共通パイプ36に達する。その後、第1の生成流体を、タッピング82を介して放出管72を通して放出する。
【0143】
同様に、第2の供給流体は、流入管74から各タッピング84を通って各ラック12の第2の共通パイプ38に流れ、次にラック12の各連結部48を通って流れる。その後、流体は、連結部48に連結された第2の入口26を介して各スタック14に入る。
【0144】
第2の供給流体は第2の電極で反応して第2の生成流体を生成する。第2の生成流体を、第2の出口28を通して、次に連結部50を通して第2の共通パイプ40に放出する。その後、流体を、タッピング86を介して放出管76に収集する。
【0145】
特定のスタック14又は特定のラック12で保守を行う場合、このラック12に対向して配置されている側方扉65C を開放する。
【0146】
ラック12に連結されている弁80A ~86A を閉じて、ラック12のパイプ34~40の自由端部をタッピング80~86から外す。
【0147】
他のラック12、必要に応じてラック12の他の自立式構造を移動させる必要なく、ラック12、必要に応じてラック12の自立式構造を内部容積66から外し、内部容積66の外側の保守位置に運ぶ。保守を行うと、ラック12、必要に応じてラック12の自立式構造を同じ場所の所定の位置に戻すことができ、或いは、別のラック12、必要に応じてラック12の別の自立式構造と取り替えることができる。
【0148】
図6に示されている変形例では、内部容積66へのアクセス扉65C は上壁65E に設けられている。場合によってはチャンバ60の上側に設けられている分配システム18の連結パイプスプール(「スプール」)を分解した後、各ラック12、必要に応じてラック12の各自立式構造は、天井クレーン92によって上壁65E を通して移動可能である。
【0149】
本例では、天井クレーン92は、炉16の上側に設けられている水平梁94と、炉16の軸芯A-A’に対して横断して水平梁94に沿って移動可能であるように取り付けられたウィンチ96とを有している。
【0150】
このような構成では、撹拌システム64は、例えば前記ラック又は各ラック12の下側に配置される。攪拌器のモータをチャンバ60の下側に配置するために、チャンバ60を上昇させる。
【0151】
従って、保守作業中にモータ及び攪拌器の組立体の分解作業は不要である。
【0152】
更に、このような変形例の装置10の動作は、
図1~
図5に示されている装置10の動作と同様である。
【0153】
(図示されていない)変形例では、分配システム18の管70~76は炉16の下側に配置されているため、開口部68はチャンバ60の床65D に設けられている。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応を行うための複数のスタックと、
各スタックを受けるためのチャンバ、及び加熱システムを有する加熱炉と、
少なくとも1つのラックと
を備えており、
前記少なくとも1つのラックは、前記スタックの複数の重ね合わされた段を有する自立式構造、及び/又は、前記スタックの複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を有しており、
各自立式構造は、各スタックに少なくとも1つの流体を供給する、及び/又は各スタックから少なくとも1つの流体を収集することが可能な流体分配器を有しており、
前記チャンバは、少なくとも1つのラックを含むことが可能であり、前記チャンバに含まれる少なくとも1つのラックの複数段のスタックは、前記加熱システムによって共に加熱されるように構成されている、電気化学装置。
【請求項2】
複数のラックを備えており、前記チャンバは、前記複数のラックを含むことが可能であり、前記チャンバに含まれる複数のラックのスタックは、前記加熱システムによって共に加熱されるように構成されている、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記加熱炉は、前記少なくとも1つのラックの周囲のチャンバ内の空気を撹拌可能な空気撹拌システムを内部に有している、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記加熱炉は、前記加熱炉の動作中にガスの超過圧力を前記チャンバ内に発生させることができる中性ガス注入器を前記チャンバ内に有している、請求項3に記載の電気化学装置。
【請求項5】
ラックのスタックの各段におけるスタックの数が4を超えている、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記加熱炉の外側に設けられている共通の流体分配システムを備えており、
前記流体分配システムは、スタック毎の第1の供給流体のための少なくとも1つの流入管と、各スタックで生成される第1の生成流体を放出するための少なくとも1つの放出管とを有しており、
前記第1の供給流体のための流入管及び前記第1の生成流体のための放出管は、前記加熱炉に含まれるラックの複数の自立式構造に同時的に連結されるように構成されており、
前記チャンバ内に配置されるラックの各自立式構造の前記流体分配器は、
前記ラックの自立式構造が前記チャンバ内に配置されるとき、前記第1の供給流体のための流入管に着脱可能に連結されるように構成されて、前記ラックの各スタックに連結されている、前記第1の供給流体のための第1の共通供給パイプと、
前記ラックの自立式構造が前記チャンバ内に配置されるとき、前記第1の生成流体のための放出管に着脱可能に連結されるように構成されて、各スタックに連結されている、前記第1の生成流体のための第1の共通回収パイプと
を有している、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記流体分配システムは、スタック毎の第2の供給流体のための少なくとも1つの流入管と、各スタックで生成される第2の生成流体を放出するための少なくとも1つの放出管とを有しており、
前記第2の供給流体のための流入管及び前記第2の生成流体のための放出管は、前記加熱炉に含まれるラックの複数の自立式構造に同時的に連結されるように構成されており、
前記チャンバ内に配置されるラックの各自立式構造の流体分配器は、
前記ラックの自立式構造が前記チャンバ内に配置されるとき、前記第2の供給流体のための流入管に着脱可能に連結されるように構成されて、前記ラックの各スタックに連結されている、前記第2の供給流体を供給するための第2の共通供給パイプと、
前記ラックの自立式構造が前記チャンバ内に配置されるとき、前記第2の生成流体のための第2の放出管に着脱可能に連結されるように構成されて、各スタックに連結されている、前記第2の生成流体のための第2の共通回収パイプと
を有している、請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記流体分配システムは、前記ラックの自立式構造毎に、
前記ラックの自立式構造の第1の供給流体のための前記第1の共通供給パイプに着脱可能に連結されるように構成されており、前記第1の供給流体のための前記流入管を開閉する第1の供給タッピングと、
前記ラックの自立式構造の第1の生成流体のための前記第1の共通回収パイプに着脱可能に連結されるように構成されており、前記第1の生成流体のための前記放出管を開閉する第2の放出タッピングと
を有している、請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記チャンバは長手軸芯に沿って長手方向に延びており、前記ラックの複数の自立式構造は、前記長手軸芯に沿って配置されており、前記第1の供給流体のための前記流入管及び前記第1の生成流体のための前記放出管は前記長手軸芯と平行に延びている、請求項6に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記ラックの各自立式構造は、前記チャンバの内側に配置される動作位置と前記チャンバの外側に配置される保守位置との間で前記加熱炉に対して移動可能であるように取り付けられている、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記チャンバは、前記ラック又は一群のラックのための側方扉を有しており、前記ラック又は一群のラックの各自立式構造は、フォークリフトによって前記側方扉を通して引き出されることが可能であるか、或いは、
前記チャンバは、前記ラック又は一群のラックのための上方扉を有しており、前記ラック又は一群のラックの各自立式構造は、天井クレーンのウィンチによって前記上方扉を通して引き出されることが可能である、請求項10に記載の電気化学装置。
【請求項12】
発電のための前記スタックは燃料電池であり、前記燃料電池は、燃料で形成される第1の供給流体を受けて、水を含む第1の生成流体を生成し、空気を含む第2の供給流体を受けて、第2の生成流体を生成することが可能であるか、或いは、
生成のための前記スタックは電解セル又は共電解セルであり、前記電解セル又は共電解セルは、水又は水及び二酸化炭素を含む第1の供給流体を受けて、水素又は水素及び一酸化炭素を含む第1の生成流体を生成し、空気を含む第2の供給流体を受けて、酸素を含む第2の生成流体を生成することが可能である、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項13】
前記加熱システムは、前記チャンバ内に配置されている少なくとも1つの電気抵抗を有している、請求項1又は2に記載の電気化学装置。
【請求項14】
前記加熱炉の前記チャンバが、前記スタックの複数の重ね合わされた段を有する自立式構造を含む少なくとも1つのラック、及び/又は、前記スタックの複数の重ね合わされた段を画定する複数の自立式構造を含む各ラックを含んでいる、請求項1又は2に記載の電気化学装置を準備する工程、
前記チャンバに含まれる少なくとも1つのラックの複数段の前記スタックを共に加熱するために前記チャンバ内の加熱システムを作動させる工程、並びに
前記チャンバに含まれる各ラックの各スタックで電気化学反応を行う工程
を有する、電気化学プロセス。
【請求項15】
前記加熱システムは、前記少なくとも1つのラックと接する、前記チャンバ内の空気を400 ℃を超える温度にする、請求項14に記載の電気化学プロセス。
【請求項16】
空気撹拌システムによって前記少なくとも1つのラックの周囲の空気を撹拌し、
複数段のスタックを共に加熱している間、前記少なくとも1つのラックの各スタックの温度が、前記少なくとも1つのラックのスタックの平均温度と最大10%異なる、請求項14に記載の電気化学プロセス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのラックの複数段のスタックを共に加熱している間、前記チャンバからラックの少なくとも1つの自立式構造を外して、前記ラックの少なくとも1つの他の自立式構造を前記チャンバに配置されたままにする工程と、外す工程後、前記ラックの外した自立式構造を前記チャンバに戻すか、又は前記ラックの外した自立式構造の代わりに、前記ラックの別の自立式構造を配置する工程とを有する、請求項14に記載の電気化学プロセス。
【外国語明細書】