IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エリーパワー株式会社の特許一覧

特開2023-177360電池セルの選別方法および電池セル取扱装置
<>
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図1
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図2
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図3
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図4
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図5
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図6
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図7
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図8
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図9
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図10
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図11
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図12
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図13
  • 特開-電池セルの選別方法および電池セル取扱装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177360
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電池セルの選別方法および電池セル取扱装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20231206BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231206BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/48 P
G01R31/396
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146952
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2019182151の分割
【原出願日】2019-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】河手 昌大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尋史
(57)【要約】
【課題】リードタイムの短縮や適切な電池セルの再利用の判断、電池セルに対する適切な保守管理を実現する。
【解決手段】各工程における良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出し、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を入力して、良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の電池セルの特異点を抽出する。そして、特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式に基づく判定モデルを用い、製造過程等、各管理過程の各工程で得られる電池セルのデータから、判定モデルでの判定に必要なデータをそろえ、判定モデルを用いて、電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程を有する電池セルの取り扱いにおける各工程において得られるデータを用いて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な判定モデルを作成するステップと、
前記各工程において、各電池セルに対する種々のデータを取得するステップと、
前記各工程で取得したデータのうち、前記判定モデルを用いた電池セルの判定に必要なデータを入力データとして、前記判定モデルを用いて、前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行うステップと、
前記判定の結果、良品と判定された電池セルと不良品と判定された電池セルとはそれぞれ判定結果に応じた異なる取り扱いを施すステップと、
を含み、
前記各工程の1つが、充放電工程であって、
前記判定モデルを用いた前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行うステップにおいて、前記電池セルが良品と判定された場合に、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定するステップを備えたことを特徴とする電池セルの選別方法。
【請求項2】
前記判定モデルを用いた前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行うステップにおいて、前記電池セルが不良品と判定された場合に、製造ラインからの除外判断のために、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定するステップを備えたことを特徴とする請求項1記載の電池セルの選別方法。
【請求項3】
前記エージングは、自己放電量の大きさに基づく電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う判定処理であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電池セルの選別方法。
【請求項4】
前記判定モデルは、良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出し、該抽出された規則性情報に基づく前記良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点から前記良品と不良品の電池セルの特異点を抽出して、各工程で得られるデータを用いて前記特異点に基づく良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を用いて作成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電池セルの選別方法。
【請求項5】
前記各工程において得られるデータは電池セルの製造過程で得られるデータであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電池セルの選別方法。
【請求項6】
複数の工程を有する電池セルの取り扱いにおける各工程において得られるデータを用いて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な判定モデルを作成する判定モデル生成部と、
前記各工程において、各電池セルに対する種々のデータを取得するデータ取得部と、
前記各工程で取得したデータのうち、前記判定モデルを用いた電池セルの判定に必要なデータを入力データとして、前記判定モデルを用いて、前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う良品判定部と、
前記判定の結果、良品と判定された電池セルと不良品と判定された電池セルとはそれぞれ判定結果に応じた異なる取り扱いを施す電池セル取り扱い部と、
を含み、
前記各工程の1つが、充放電工程であって、
前記良品判定部において、前記電池セルが良品と判定された場合に、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定するエージング判定部を備えたことを特徴とする電池セル取扱装置。
【請求項7】
前記エージング判定部は、前記電池セルが不良品と判定された場合に、製造ラインからの除外判断のために、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定することを特徴とする請求項6記載の電池セル取扱装置。
【請求項8】
前記エージングは、自己放電量の大きさに基づく電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う判定処理であることを特徴とする請求項6または請求項7記載の電池セル取扱装置。
【請求項9】
各工程における良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出する規則性情報抽出部と、
前記規則性情報抽出部において抽出された良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を記憶する記憶部と、
前記良品あるいは不良品の前記電池セルに関する各データ間の規則性情報を前記記憶部から入力して、前記良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の前記電池セルの特異点を抽出する特異点抽出部と、
前記特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する条件式算出部と、
前記条件式算出部において算出した前記条件式の正当性を検証し、判定モデルを生成する判定モデル生成部と、
を含むことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の電池セル取扱装置。
【請求項10】
前記データは、電池セルの製造過程で得られるデータであることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の電池セル取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セルの選別方法および電池セル取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルの長期間使用に対する特性に関しては、製造された電池セルに対して充放電を繰り返し行うサイクル充放電試験のように、例えば、3000サイクル(電池セルに対して、充電と放電を1回ずつ行うことを1サイクルとする)行った時の放電容量が製造初期の時の容量に比べて80%以上であれば良品と判断するようにしていた。
【0003】
また、エージング試験のように充電した電池セルを長期間放置し、電圧の変化に基づいて、電池セルの内部短絡等の有無を判断していた。
【0004】
しかしながら、これら試験を行うのには相当な時間が必要となる。
そのため、全ての電池セルに対して、これらの試験を実施するのではなく、製造ロット毎に、任意にサンプリング抽出した電池セルに対して、上記試験等を実施し、その結果が良品であると判断された場合に、同じロットの他の電池セルも良品であるとする管理がある。
【0005】
ところが、上記の選別方法では、サンプリング抽出された電池セルの判定結果に、ロット全体の電池セルの評価が左右されるために、信頼性の面からは、十分なものとは言えない。
【0006】
また、製造工程で良品と判定された電池セル単体あるいはこれらの電池セルを複数個組み合わせてモジュール化した電池モジュール(組電池とも称する)は蓄電装置の蓄電部として装置に搭載され、電池セルの充放電を制御する充放電制御部あるいは電池セルの電池電圧や温度を計測し監視するCMU(Cell Management Unit:蓄電部の電池セル毎に異常状態にならないよう監視・管理するもので、電池セルの電圧や温度などを監視する機能のみの“Cell Monitoring Unit”の場合も含む)やBMU(Battery Management Unit:蓄電部の電池モジュールを構成する電池セルが異常状態にならないよう監視・管理するもの)と接続された状態で、充放電制御とともに、電池セルの電池電圧や温度を計測して得られたデータに基づいて電池の異常検知、寿命推定を行うことが知られている。
【0007】
近年では、機械学習による様々な予測、特に、人工知能、いわゆるAI(Artificial Intelligence)技術の向上により取得した大量の情報を整理し、これらの情報を機械学習により分析することよって規則性を見出し、その見出された規則性を販売戦略や広告戦略等に用いられていることが行われているが、このようなAIを用いた分析による規則性を利用する試みが電池セルの製造販売に対しても検討されている。
【0008】
AIを用いた技術の一例として、バッテリーの初期特性を利用して長期特性を予測することにより、迅速に当該バッテリーの不良判定を行う技術(例えば、特許文献1参照。)やバッテリーセルを製作して寿命を評価する前にバッテリーセルの様々な特性因子に応じた寿命傾向から早期の寿命予測を可能とし、寿命予測に対する信頼性を向上される技術(例えば、特許文献2参照。)が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2010-539473号公報
【特許文献2】特開2013-217897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、AI技術の進歩により、測定等で得られた様々なデータの中から機械学習により規則性や法則性を見出し、その規則性に基づき被測定物を分類分けすることが提案されている。
特に、ビッグデータと呼ばれる多種類でかつ大量のデジタル化されたデータを用いて、データを分類化し、そこから規則性を見出すことが実現されてきている。
このような機械学習では、ディープラーニング(深層学習)により特徴点をマニュアルで抽出することなく、自動的に特徴点を抽出することが可能であり、マニュアルでは気づかない特徴点の抽出も期待できるようになってきている。
【0011】
しかしながら、上記のような技術は、電池セルにおける寿命予測には、適用可能であっても、電池セルの生産工程や、監視工程、管理工程における管理指標として適用するには、改善の余地がある。
【0012】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、電池セルの各工程における良品と不良品の規則性を測定等で得られたデータから導き出し、この規則性に基づいて電池セルの良品と不良品との特異点を抽出して、判定モデルを生成し、各工程における電池セルのデータを入力データとして、判定モデルを用いて、演算処理を行うことにより電池セルの各工程における良品、不良品の判定を適切に行い、リードタイムの短縮や適切な電池セルの再利用の判断、電池セルに対する適切な保守管理を実現する電池セルの選別方法および電池セル取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、複数の工程を有する電池セルの取り扱いにおける各工程において得られるデータを用いて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な判定モデルを作成するステップと、前記各工程において、各電池セルに対する種々のデータを取得するステップと、前記各工程で取得したデータのうち、前記判定モデルを用いた電池セルの判定に必要なデータを入力データとして、前記判定モデルを用いて、前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行うステップと、前記判定の結果、良品と判定された電池セルと不良品と判定された電池セルとはそれぞれ判定結果に応じた異なる取り扱いを施すステップと、を含み、前記各工程の1つが、充放電工程であって、前記判定モデルを用いた前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行うステップにおいて、前記電池セルが良品と判定された場合に、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定するステップを備えたことを特徴とする電池セルの選別方法を提案している。
【0014】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記判定モデルを用いた前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行うステップにおいて、前記電池セルが不良品と判定された場合に、製造ラインからの除外判断のために、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定するステップを備えたことを特徴とする電池セルの選別方法を提案している。
【0015】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記エージングは、自己放電量の大きさに基づく電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う判定処理であることを特徴とする電池セルの選別方法を提案している。
【0016】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記判定モデルは、良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出し、該抽出された規則性情報に基づく前記良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点から前記良品と不良品の電池セルの特異点を抽出して、各工程で得られるデータを用いて前記特異点に基づく良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を用いて作成することを特徴とする電池セルの選別方法を提案している。
【0017】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記各工程において得られるデータは電池セルの製造過程で得られるデータであることを特徴とする電池セルの選別方法を提案している。
【0018】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、複数の工程を有する電池セルの取り扱いにおける各工程において得られるデータを用いて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な判定モデルを作成する判定モデル生成部と、前記各工程において、各電池セルに対する種々のデータを取得するデータ取得部と、前記各工程で取得したデータのうち、前記判定モデルを用いた電池セルの判定に必要なデータを入力データとして、前記判定モデルを用いて、前記電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う良品判定部と、
前記判定の結果、良品と判定された電池セルと不良品と判定された電池セルとはそれぞれ判定結果に応じた異なる取り扱いを施す電池セル取り扱い部と、を含み、前記各工程の1つが、充放電工程であって、前記良品判定部において、前記電池セルが良品と判定された場合に、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定するエージング判定部を備えたことを特徴とする電池セル取扱装置を提案している。
【0019】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記エージング判定部は、前記電池セルが不良品と判定された場合に、製造ラインからの除外判断のために、当該電池セルに対してエージングが必要か否かを判定することを特徴とする電池セル取扱装置を提案している。
【0020】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記エージングは、自己放電量の大きさに基づく電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う判定処理であることを特徴とする電池セル取扱装置を提案している。
【0021】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、各工程における良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出する規則性情報抽出部と、前記規則性情報抽出部において抽出された良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を記憶する記憶部と、前記良品あるいは不良品の前記電池セルに関する各データ間の規則性情報を前記記憶部から入力して、前記良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の前記電池セルの特異点を抽出する特異点抽出部と、前記特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する条件式算出部と、前記条件式算出部において算出した前記条件式の正当性を検証し、判定モデルを生成する判定モデル生成部と、を含むことを特徴とする電池セル取扱装置を提案している。
【0022】
形態10;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記データは、電池セルの製造過程で得られるデータであることを特徴とする電池セル取扱装置を提案している。
【発明の効果】
【0023】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、電池セルの各工程における良品と不良品の規則性を測定等で得られたデータから導き出し、この規則性に基づいて電池セルの良品と不良品との特異点を抽出して、判定モデルを生成し、各工程における電池セルのデータを入力データとして、判定モデルを用いて、演算処理を行うことにより電池セルの各工程における良品、不良品の判定を適切に行い、リードタイムの短縮や適切な電池セルの再利用の判断、電池セルに対する適切な保守管理を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電池セル取扱装置の電気的構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電池セル取扱装置におけるCPU内部の機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る電池セル取扱装置におけるCPUの処理フロー図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電池セル取扱装置の処理フロー図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る電池セル取扱装置の電気的構成図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る電池セル取扱装置におけるCPU内部の機能ブロック図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電池セル取扱装置の処理フロー図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る電池セル取扱装置の処理の変形例に関する処理フロー図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る電池セル取扱装置の電気的構成図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る電池セル取扱装置におけるCPU内部の機能ブロック図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る電池セル取扱装置の処理フロー図である。
図12】本発明の第4の実施形態に係る電池セル取扱装置の電気的構成図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る電池セル取扱装置におけるCPU内部の機能ブロック図である。
図14】本発明の第4の実施形態に係る電池セル取扱装置の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
以下、図1から図4を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
<電池セルの工程管理装置の電気的構成>
本実施形態に係る電池セル取扱装置10は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)100と、ROM(Read Only Memory)200と、RAM(Random Access Memory)300と、判定モデル記憶部400と、良品判定部500と、インターフェース部600と、を含んで構成されている。
【0027】
CPU100は、ROM200に予め格納された制御プログラムに従って、電池セル取扱装置10全体の処理を制御する。
特に、本実施形態においては、製造過程や管理過程での各工程において、今までに得られた種々のデータに基づいて、製造過程や管理過程における電池セルの良品と不良品との規則性を測定等で得られたデータから導き出し、この規則性に基づいて良品と不良品の特異点を抽出して、判定モデルを作成する処理を行う。
【0028】
ROM200は、読み出し専用の不揮発性メモリであって、上記のように、制御プログラムや初期パラメータ等が記憶されている。
【0029】
RAM300は、書き込みおよび読み込み可能なメモリであって、DRAM(Dynamic RAM)やSRAM(Static RAM)を例示的に挙げることができる。
RAM300には、CPU100の制御処理の過程で得られるデータ等が一時的に保存される。
【0030】
判定モデル記憶部400は、CPU100により生成された判定モデルを記憶する記憶部である。
当該判定モデル記憶部400に記憶させる判定モデルは、上述のRAM300に記憶されるようにしてもよいが、本実施形態のように、判定モデルを記憶する判定モデル記憶部400を独立して設けることにより、例えば、別の処理でRAM300が使用されている場合であっても、判定モデルを用いた演算処理が判定モデルの読出しの遅延によって、演算処理全体が遅延してしまうことを回避することができる。
【0031】
良品判定部500は、各工程における電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部400に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行うことにより電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う。
ここで、電池セルのデータとしては製造過程で得られるデータ、つまり、電池セルの製造工程の各工程において測定しているデータや生産管理のために取得しているデータであって、例えば、電池の容量、エネルギー密度、形状、サイズ、電極板の材料、電極板の厚さ、電極板の長さ、電極活物質層の材料や用いられる材料の混合割合、バインダーの有無やバインダーの種類、電極活物質層の厚さ、電極活物質層の未塗工部のサイズ、セパレータの種類、電極板とセパレータの積層構造(巻回式の場合には巻回数、スタック式の場合には積層数)、電解液の種類、電解液の組成比、難燃剤等の添加物の有無やその種類や添加物の濃度、乾燥時間、乾燥温度、集電体の材料、集電体の構造、集電体と電極板との接合方法や接合構造、電解液の注液時間、電解液の注液方法、含浸にかかる時間や含浸時の温度、化成充電時間、化成充電電圧値、化成充電時の温度、充放電試験時の電池電圧、電池温度、放電時間、充電時間、充電電圧、電池容量、製造ロット、製造時の天気(湿度)、製造時の時間、製造責任者名、各材料のメーカー名等を例示することができる。
また、電池セルに関する情報や測定データ等は、共通の整理番号(製造番号)に紐ついて、各製造対象の電池セル毎に、例えば、ネットワーク上のデータサーバ等に格納管理されている。
また、RAM300には、上記データサーバから、判定モデルを用いた判定に必要な情報やデータが書き込まれ、この書き込まれた情報(データ)をもとに判定モデルを用いた判定処理が行われる。
なお、良品判定部500を個別に設けずに、良品判定部500の処理をCPU100で行うように構成してもよいが、良品判定部500を個別に設ける場合には、CPU100の処理と並行して良品判定部500による良品判定処理を実行することができるという効果がある。
【0032】
インターフェース部600は、ネットワークを介して、ネットワークに接続された各種装置とデータのやりとりを行う。
例えば、各工程において、今までに得られた種々のデータを格納するデータ記憶部1000がネットワーク上のサーバ等である場合、本実施形態に係る電池セル取扱装置10は、インターフェース部600を介して、データ記憶部1000に格納されたデータのやりとりを行う。
【0033】
<CPU内部の機能ブロック>
本実施形態に係る電池セル取扱装置10のCPU100は、図2に示すように、規則性情報抽出部101と、規則性情報記憶部102と、特異点抽出部103と、条件式算出部104と、判定モデル生成部105と、を含んで構成されている。
【0034】
規則性情報抽出部101は、例えば、外部に設けたデータ記憶部1000からの各工程における良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する規則性情報を抽出する。
具体的には、例えば、機械学習を用いて、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性をデータの関係性の分析により実行してもよい。
具体例を示すと、各電池セルの充電時や放電時のそれぞれ電池電圧や電池温度、電池容量と時間との関係等をグラフ化していく手法が挙げられる。
さらに、電池セルを生産ロット別に分類したり、適用した電解液種で分類したりした後、更に分類分けが可能な情報に基づき再分類処理を行う。
なお、必要なデータを入力し、その入力したデータに基づいて、各種の関係をグラフ化することはコンピュータによっても可能であり、グラフを電池セルの生産ロットや使用材料の種類等でさらに情報別に分類化することも、電池セルに関する情報と対象のグラフとのリンクが取れていればコンピュータにより実現可能である。
特に、本実施形態においては、得られたグラフを電池セルが良品なのか不良品なのかという情報とリンクさせておくことが重要である。
また、予測しない意外な共通点が見つかることもあるため、あまり関連性はないと思われる情報間においても、その関係性に関するグラフや分布図を作成してもよい。
【0035】
規則性情報記憶部102は、規則性情報抽出部101により抽出された良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を格納する。
なお、本実施形態では、規則性情報記憶部102をCPU100の構成要素としたが、規則性情報記憶部102を、例えば、データサーバとしてネットワーク上に設けてもよい。
【0036】
特異点抽出部103は、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を規則性情報記憶部102から入力して、良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の前記電池セルの特異点を抽出する。
具体的には、例えば、いくつかのグラフ化した情報を比較して、良品の電池セルにおける共通点、不良品の電池セルにおける共通点、良品の電池セルと不良品の電池セルにおける差異点を抽出し、良品と不良品が判定可能となる、電池セルが良品の場合と不良品の場合における差異となる特異点と成り得る要素を見つける。つまり、良品と不良品との差異点であっても、その差異点が良品の電池セルで共通していなければ、その差異点は良品と不良品との判定には使えない。また、良品の電池セルにおける共通点が、不良品の電池セルにも共通してしまう場合も、良品と不良品との区別はできない。このため、良品の電池セルにおける共通点、不良品の電池セルにおける共通点、良品の電池セルと不良品の電池セルにおける差異点から、良品と不良品が判定可能となる特異点を抽出する。
【0037】
条件式算出部104は、特異点抽出部103が抽出した特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する。
具体的には、抽出した特異点の算出に必要となるデータを特定し、それらデータを用いて特異点を算出できる式を算出し、算出した式から得られる特異点に関する数値が良品であるのか、あるいは、不良品であるのか、を判断する条件式の形で準備する。ここで、準備される条件式は1つに限定されるものではなく、特異点が複数見つかれば、各特異点毎にそれぞれ必要となるデータを用いて特異点の算出のための式が算出され、算出された式に基づく条件式がそれぞれ準備される。
【0038】
判定モデル生成部105は、条件式算出部104において算出した条件式の正当性を検証し、判定モデルを生成する。
具体的には、条件式算出部104において算出された条件式に基づき、良品あるいは不良品として判断済みの複数個の電池セルに対して、電池セルの良品あるいは不良品判定に必要な情報を当該条件式に当てはめて、電池セルが良品であるのか不良品あるのかを正しく判定できるのか否かを検証する。算出された条件式が複数あった場合には、各条件式それぞれに対して検証を行う。
検証の結果、電池セルが良品であるのか不良品あるのかを正しく判定できる(判定モデル検証用の電池セル全てにおいて、全品良品あるいは不良品が正しく判断できた場合でもよいし、95%が良品あるいは不良品を正しく判断できるものであってもよい)場合には、当該条件式を用いて良品あるいは不良品の判定を行うモデルを当該工程の判定モデルとして決定する。
検証した条件式が複数ある場合には、検証の結果、良品と判断できる確率が最も高い条件式のものを選択して良品あるいは不良品の判定を行うモデルを当該工程の判定モデルをとして決定する。
なお、工程に適用する判定モデルは複数であってもよい。例えば、検証の結果、複数の条件式で同程度の高い確率で良品と判断できていた場合や、検証結果で良品と判断できる確率が任意に定めた合格ラインの確率(例えば、85%以上が良品と判断できたもの)を超えるものであった場合には、それら複数の条件式それぞれを用いた良品あるいは不良品の判定を行うモデルをそれぞれ判定モデルとして用いるようにしてもよい。
判定に必要な情報がそれぞれ異なる複数の判定モデルが準備されることになる。
1つの判定モデルの場合に比べると、何度も良品あるいは不良品の判定を行うことになるため冗長になる可能性はあるものの、例えば、95%が良品・不良品を正しく判断できた判定モデルを採用している場合において、この判定モデルで正しく判定できなかった残り5%を、別の判定モデルで良品・不良品を正しく判断できることが期待できる。
また、複数の判定モデルでの判断する場合には、N(3以上の整数)個の判定モデルでの判断のうちX(Nより小さい2以上の整数)個の判定モデルでの判断結果が一致した場合には、その結果に応じて良品あるいは不良品として取り扱いを進めるようにすることでより精度高く良品あるいは不良品の取り扱いを行うことができる。
また、良品、不良品を正しく判断できる確率が高い順に優先順位をつけて、優先順位の高い判定モデルの結果を最優先に適用し、この判定モデルにおける良品と不良品との境界点の誤差範囲においては、次の優先順位の判定モデルの結果を採用するなど、複数段階で判断するようにしてもよい。
そして、決定した判定モデルを電池セル取扱装置10の良品判定部500に出力する。
なお、以上のような特異点をパーソナルコンピュータ等により抽出した特異点に基づいて、判定モデル化することに限らず、例えば、ディープラーニング(深層学習)により、入力した情報(データ)から特異点を自動的に抽出し、特異点に基づく条件式を算出し、条件式に対する検証を行って判定モデルを作成するようにしてもよい。
【0039】
<CPUの処理>
図3を用いて、本実施形態に係るCPU100における判定モデルの生成処理について説明する。
【0040】
規則性情報抽出部101は、データ記憶部1000から対象となる工程において、今までに取得した不良品の電池セルに関する過去のデータを入力する(ステップS110)。
【0041】
次いで、規則性情報抽出部101は、データ記憶部1000から入力した不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出する(ステップS120)。
【0042】
特異点抽出部103は、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を規則性情報記憶部102から入力して、例えば、入力データを分類ごとにグラフ化したもの等を用いて、良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の電池セルの特異点を抽出する(ステップS130)。
【0043】
条件式算出部104は、特異点抽出部103が抽出した特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する(ステップS140)。
【0044】
判定モデル生成部105は、条件式算出部104において算出した条件式に基づいて、判定モデルを生成する(ステップS150)。
【0045】
判定モデル生成部105は、加えて、条件式算出部104において算出された条件式に基づき、良品あるいは不良品として判断済みの複数個の電池セルに対して、電池セルの良品あるいは不良品判定に必要な情報を当該条件式に当てはめて、電池セルが良品であるのか不良品あるのかを正しく判定できるか否かを検証する(ステップS160)。
【0046】
判定モデル生成部105は、検討の結果、当該条件式では、電池セルが良品であるのか不良品あるのかを正しく判定できないと判断した時(ステップS160の「NO」)には、処理をステップS120に戻す。
【0047】
一方で、判定モデル生成部105は、検討の結果、当該条件式によれば、電池セルが良品であるのか不良品あるのかを正しく判定できると判断した時(ステップS160の「YES」)には、当該判定モデルを当該工程における判定モデルとして決定する(ステップS170)。
【0048】
<電池セル取扱装置の処理>
図4を用いて、本実施形態に係る電池セル取扱装置10における処理について説明する。
【0049】
CPU100は、例えば、ネットワーク上のサーバ等であるデータ記憶部1000から対象となる工程において、インターフェース部600を介して、処理を行ったことによって得られるデータを入力する(ステップS210)。
【0050】
良品判定部500は、各工程における電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部400に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行う(ステップS220)。
【0051】
良品判定部500は、演算処理の結果、電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う(ステップS230)。
【0052】
判定結果は、CPU100を介して、例えば、インターフェース部600から出力され、電池セルの良品、不良品との選別処理(後処理工程)を行う機能部の制御等に用いられる(ステップS240)。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態に係る電池セル取扱装置10においては、電池セルの各工程で取得される情報(データ)を使い、これらの情報から、電池セルの良品に見られる特徴点や電池セルの不良品に見られる特徴点、電池セルの良品と不良品との間に見られる特異点を抽出し、抽出した特徴点や特異点と実際の工程で得られる様々な情報(データ)との演算処理を行って、電池セルが良品であるのか不良品であるのかを判断する判定モデル生成することから、電池セルの各工程における電池セルの良品あるいは不良品の判定を適切に行うことができる。
【0054】
また、電池セルの各工程における電池セルの良品と不良品との規則性を測定等で得られたデータから導き出し、電池セルの良品と不良品との特異点を抽出して、電池セルの各工程における電池セルの良品あるいは不良品の判定を適切に行うことにより、例えば、製造工程においては、リードタイムの短縮化を図り、リユース工程では、適切な電池セルの再利用の判断を与え、保守管理工程では、電池セルに対する適切な保守管理を実現することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
以下、図5から図7を用いて、本発明の実施形態について説明する。
なお、本実施形態は、電池セルの生産工程のうち、充放電工程を例示したものである。
【0056】
<電池セル取扱装置の電気的構成>
本実施形態に係る電池セル取扱装置20は、図5に示すように、CPU(Central Processing Unit)110と、ROM(Read Only Memory)200と、RAM(Random Access Memory)300と、判定モデル記憶部410と、良品判定部510と、インターフェース部600と、エージング判定部700と、を含んで構成されている。
なお、第1の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0057】
CPU110は、ROM200に予め格納された充放電工程の制御プログラムに従って、電池セル取扱装置10全体の処理を制御する。
特に、本実施形態においては、充放電工程において、今までに得られた種々のデータに基づいて、充放電工程における電池セルの良品と不良品との規則性を測定等で得られたデータから導き出し、この規則性に基づいて良品と不良品の特異点を抽出して、判定モデルを生成する処理を行う。
【0058】
判定モデル記憶部410は、CPU110により生成された判定モデルを記憶する記憶部である。
【0059】
良品判定部510は、充放電工程における電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部410に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行うことにより電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う。
ここで、電池セルのデータとしては、例えば、充放電工程における電池電圧、電池温度、放電時間、充電時間、充電電圧等を例示することができる。
【0060】
エージング判定部700は、電池セルが良品と判定された場合に、エージングの有無を判定する。
なお、ここで、エージングとは、内部短絡等の原因に基づく異常な、つまり、良品の電池セルに比べて自己放電量が大きくなる状態が生じているか否かにより、当該電池セルが真の良品なのか不良品なのかを判定する処理であって、電池セルをある程度充電して、例えば、1週間あるいは1ヶ月といった長期間、電池セルを放置して行われる判定処理である。
【0061】
また、CPU110は、図6に示すように、規則性情報抽出部111と、規則性情報記憶部112と、特異点抽出部113と、条件式算出部114と、判定モデル生成部115と、を含んで構成されている。
【0062】
規則性情報抽出部111は、例えば、外部に設けたデータ記憶部1000からの充放電工程における良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出する。
【0063】
規則性情報記憶部112は、規則性情報抽出部111により抽出された良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を格納する。
【0064】
特異点抽出部113は、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を規則性情報記憶部112から入力して、良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品との電池セルの特異点を抽出する。
【0065】
条件式算出部114は、特異点抽出部113が抽出した特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する。
【0066】
判定モデル生成部115は、条件式算出部114において算出した条件式の正当性を検証し、判定モデルを生成する。
【0067】
<電池セル取扱装置の処理>
図7を用いて、本実施形態に係る電池セル取扱装置10における処理について説明する。
【0068】
CPU110は、例えば、ネットワーク上のサーバ等であるデータ記憶部1000から充放電工程において、インターフェース部600を介して、処理を行ったことによって得られるデータを入力する(ステップS310)。本実施形態では、判定モデルは1つとし、判定モデルによる判定に必要となるデータは充放電工程における電池セルのデータとして説明する。
【0069】
良品判定部510は、充放電工程における電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部410に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行う(ステップS320)。
これにより、充放電工程で得られる充電電圧、放電電圧と容量の情報を取得し、充電電圧、放電電圧と容量との関係から充放電特性が得られる。
【0070】
良品判定部510は、判定モデルによる演算の結果に基づき、当該電池セルが良品であると判定可能か否かを判断する(ステップS330)。
ここで、当該電池セルが良品であるのか不良品であるのかの判断は、判定モデルにより算出した結果が電池セルを良品と判断する範囲内の数値であるか否かで行う。
【0071】
当該電池セルが良品でないと判断された場合(ステップS330の「NO」)は、不良品として廃棄すべく、当該電池セルを次の処理工程に進めることなく本来の製造ラインから除外して、廃棄処理(廃棄物用の保管庫への搬入等)が行われる(ステップS340)。
【0072】
一方、良品判定部510により、当該電池セルが良品であると判断された場合(ステップS330の「YES」)は、次に、良品判定部510は、エージング処理が必要か否かを判断する(ステップS350)。
ここで、エージング処理が必要か否かの判断は、例えば、ステップS340における良品判定部510による判定結果としては、当該電池セルは良品と判断されたものの、電池セルの良品と不良品とを区別する限界点の近傍であるか否かにより判断される。
具体的には、電池セルの良品と不良品との境界点に対して所定の誤差範囲に含まれるか否かで判断される。
【0073】
そこで、良品判定部510は、当該電池セルの充放電特性が電池セルの良品と不良品との境界点の所定の誤差範囲、例えば、境界点+(あるいはマイナス)15%の範囲内で良品と判断される場合(ステップS350の「NO」)には、通常のエージング処理が必要であるとして、通常のエージング処理を実行する判断を行う(ステップS370)。
【0074】
一方、良品判定部510は、当該電池セルの充放電特性が良品と不良品との境界点の所定の誤差範囲、例えば、境界点+(あるいはマイナス)15%の範囲外で良品と判断される場合(ステップS350の「YES」)は、通常のエージング処理は不要であると判断し、エージング処理を実行しない判断を行う(ステップS360)。
【0075】
以上、説明したように、本実施形態によれば、良品判定部510が、良品である電池セルのすべてについて通常のエージング処理の実行を判断するのではなく、当該電池セルの充放電特性が電池セルの良品と不良品との境界点の所定の誤差範囲、例えば、境界点+(あるいはマイナス)15%の範囲内で良品と判断される場合には、通常のエージング処理が必要であると判断し、当該電池セルの充放電特性が良品と不良品との境界点の所定の誤差範囲、例えば、境界点+(あるいはマイナス)15%の範囲外で良品と判断される場合は、通常のエージング処理は不要であると判断する。
そのため、電池セルの充放電工程に判定モデルを適用することで、電池セルの生産効率を向上させることができる。
【0076】
<変形例>
なお、本実施形態では、図7の判定モデルによる演算の結果に基づき、当該電池セルが良品であると判定可能か否かの判断工程(ステップS330)において、当該電池セルが良品でないと判断された場合(ステップS330の「NO」)には、廃棄処理(ステップS340)としている。しかしながら、良品でないと判断された場合であっても、エージング処理が必要か否かを判断するようにしてもよい。
例えば、前述のような電池セルの良品と不良品との境界点の誤差範囲内で不良品の電池セルと判断された場合には、通常のエージング処理が必要であると判断し、当該電池セルの充放電特性が良品と不良品との電池セルの境界点の所定の誤差範囲外で不良品の電池セルと判断された場合には廃棄処理とするようにしてもよい。
【0077】
具体的には、図8に示すように、良品判定部510は、判定モデルによる演算の結果に基づき、当該電池セルが良品であると判定可能か否かを判断する(ステップS330)。
そして、良品判定部510により、当該電池セルが良品でないと判断された場合(ステップS330の「NO」)には、エージング処理が必要か否かを判断する(ステップS380)。
ここで、当該電池セルの充放電特性が電池セルの良品と不良品との境界点の所定の誤差範囲、例えば、境界点+(あるいはマイナス)15%の範囲内で不良品と判断される場合(ステップS380の「NO」)には、良品判定部510は、通常のエージング処理が必要であるとして、通常のエージング処理を実行する判断を行う(ステップS390)。
【0078】
一方、良品判定部510は、当該電池セルの充放電特性が良品と不良品との境界点の所定の誤差範囲、例えば、境界点+(あるいはマイナス)15%の範囲外で不良品と判断される場合(ステップS350の「YES」)には、不良品として廃棄すべく、当該電池セルを次の処理工程に進めることなく本来の製造ラインから除外して、廃棄処理(廃棄物用の保管庫への搬入等)が行われる(ステップS340)。
【0079】
このように、電池セルの良品と不良品との境界点の誤差範囲で良品あるいは不良品と判断される電池セルについて、通常のエージング処理を行うようにすることにより、エージング処理が不要と判断された電池セルのエージング処理を割愛し、それ以外の電池セルには、エージング処理を行うことができる。
そのため、エージング対象の電池セルを減らしつつ、より確実に電池セルの良品と不良品とを振り分けることができる。
なお、このエージング処理の結果を判定モデルの作成へフィードバックして、確実に電池セルの良品と不良品とを判断できる判定モデルの作成(あるいは作成した判定モデルの更新)をすることにより、電池セルの良品と不良品との境界点の範囲に含まれる電池セルが数を低減させ、より高精度に電池セルの良品と不良品との判断を行える判定モデルを構築することができる。
【0080】
また、エージング処理の結果を判定モデルの作成へフィードバックして判定モデルの更新する以外にも、エージング処理の結果を判定モデルの作成における機械学習を用いた良品あるいは不良品の電池セルに関する規則性情報の抽出や良品あるいは不良品の電池セルに関する特異点の抽出(図3のS120、S130)で原材料ロットに起因する規則性情報や特異点であったりした場合には、判定モデルの作成へフィードバックするより、原材料の納入規格を見直しなど、生産工程の段階より前の段階へ規則性情報や特異点の情報を提供(フィードバック)するようにしてもよい。このように、判定モデルを適用した電池セルの取り扱い工程での新たな判定結果を、判定モデルの更新(作成)にフィードバックする以外に抽出された規則性や特異点の性質に応じて、規則性情報や特異点情報を出力して、電池セルの取り扱い工程におけるより適切な段階で活用できるようにすることで、電池の性能や品質の向上へ反映することも期待できる。
【0081】
また、本実施形態では、判定モデルによる判定に必要となるデータは充放電工程における電池セルのデータとして、エージング処理の実施を選択的実施に適用した例を説明した。
しかし、判定モデルによる判定に必要となるデータが充放電工程で得られるデータ以外、例えば、充放電工程より前の工程で得られるデータである場合には、充放電工程より前の段階、つまり、判定モデルによる判定が可能なデータがそろった段階で良品か不良品かの判断を行うようにしてもよい。
不良品と判断された電池セルは、その電池セルに付与されたバーコードで特定される製造番号等とリンクさせることにより、それ以降の工程を行う必要のない不良品として認識できるようにておくことが好ましい。
このようにすることにより、以降の工程で、バーコードを読み込んだ際に不良品であると認識された電池セルについては、製造ラインから外すことができるタイミングで外せるように管理できる。
【0082】
また、良品と判定した電池セルだけ(不良品と判定されなかった電池セルだけ)に対して、それ以降の充放電工程やエージング工程等を行うようにしてもよい。
このように、CPU等で、判定モデルに必要となるデータがそろうか否かを管理して、判定モデルによる判定に必要なデータがそろった時点で判定モデルによる電池セルの良品あるいは不良品の判定を行い、その判定モデルによる電池セルの良品判定あるいは不良品判定の判定結果と製造ラインに流れている電池セルを特定できる情報とをリンクさせておくことにより、次のような利点が生じる。
電池セルの製造工程は複数の工程からなり、これら複数の工程中の1つあるいはそれ以上の工程においては、本実施形態における判定モデルを用いることのない電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行って、不良品を排除するステップを含んでいる場合にこれら判定モデルを用いない電池セルの良品判定あるいは不良品判定とは別に並行して行われる前述の判定モデルによる電池セルの良品判定あるいは不良品判定の判定結果で電池セルを特定できる情報とリンクさせておけば、判定モデルを用いることのない電池セルの良品判定あるいは不良品判定の際に、判定対象の電池セルを特定できる情報を読み取るとともに、前述の判定モデルによる電池セルの良品判定あるいは不良品判定の判定結果とを確認することにより、前述の判定モデルによる電池セルの良品判定あるいは不良品判定の判定結果として不良品の電池セルであるという情報を認識することによって、不良品とされた電池セルに対しては、判定モデルを用いることのない電池セルの良品判定あるいは不良品判定をすることなく、不良品の電池セルを排除することができる。
【0083】
<第3の実施形態>
以下、図9から図11を用いて、本発明の実施形態について説明する。
なお、本実施形態は、工程として、リユース(再利用判定)工程を例示したものである。
【0084】
<電池セル取扱装置の電気的構成>
本実施形態に係る電池セル取扱装置30は、図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)120と、ROM(Read Only Memory)200と、RAM(Random Access Memory)300と、判定モデル記憶部420と、良品判定部520と、インターフェース部600と、リユース判定部800と、を含んで構成されている。
なお、第1の実施形態および第2の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0085】
CPU120は、ROM200に予め格納されたリユース工程の制御プログラムに従って、電池セル取扱装置10全体の処理を制御する。
特に、本実施形態においては、生産工程あるいは回収した電池セルに対する充放電を行う充放電処理、満充電時の容量測定等を含む処理からなるリユース工程において得られた種々のデータに基づいて、リユース工程における電池セルの良品と不良品との規則性を測定等で得られたデータから導き出し、この規則性に基づいて良品と不良品の特異点を抽出して、判定モデルを生成する処理を行う。
【0086】
判定モデル記憶部420は、CPU120により生成された判定モデルを記憶する記憶部である。
【0087】
良品判定部520は、生産工程あるいは回収した電池セルに対する充放電を行う充放電処理、満充電時の容量測定等を含む処理からなるリユース工程において得られた電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部420に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行うことにより電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う。
ここで、電池セルのデータとしては、例えば、電池温度、電池電圧、電池容量、充放電回数、使用年数、長期の未使用期間の有無、エラー回数、エラー発生時間、エラー内容に関する情報等を例示することができる。
【0088】
リユース判定部800は、電池セルが良品と判定された場合に、満充電特性および温度特性がともに、電池セルのリユースを可能とする範囲内であるか否かを判定する。
なお、ここで、リユースとは、回収した電池セルや蓄電システムをそのままの形で再び使用することを意味し、劣化によって満充電時の充電容量が納入時より下がったとしても所望の容量までの充電が確保できること、および充放電による電池セルの温度が高くなるようなことがないことが求められる。
以下では、特に、電池セルの充放電電圧と容量との関係(充放電特性)や満充電時の容量値(満充電特性)や充放電電圧と電池セルの温度変化との関係(温度特性)から電池セルを良品と不良品とに振り分けできる判定モデルを用いる場合について説明する。
【0089】
また、CPU120は、図9に示すように、規則性情報抽出部121と、規則性情報記憶部122と、特異点抽出部123と、条件式算出部124と、判定モデル生成部125と、を含んで構成されている。
【0090】
規則性情報抽出部121は、例えば、外部に設けたデータ記憶部1000からの生産工程あるいは回収した電池セルに対する充放電を行う充放電処理、満充電時の容量測定等を含む処理からなるリユース工程において得られた良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出する。
【0091】
規則性情報記憶部122は、規則性情報抽出部121により抽出された良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を格納する。
【0092】
特異点抽出部123は、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を規則性情報記憶部122から入力して、良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の電池セルの特異点を抽出する。
【0093】
条件式算出部124は、特異点抽出部123が抽出した特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する。
【0094】
判定モデル生成部125は、条件式算出部124において算出した条件式の正当性を検証し、判定モデルを生成する。
【0095】
<電池セル取扱装置の処理>
図10を用いて、本実施形態に係る電池セル取扱装置30における処理について説明する。
【0096】
CPU120は、例えば、データサーバ等であるデータ記憶部1000からインターフェース部600を介して、生産工程あるいは回収した電池セルに対する充放電を行う充放電処理、満充電時の容量測定等を含む処理からなるリユース工程において得られたデータを入力する(ステップS410)。
【0097】
良品判定部520は、生産工程あるいは回収した電池セルに対する充放電を行う充放電処理、満充電時の容量測定等を含む処理からなるリユース工程において得られた電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部420に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行う(ステップS420)。
これにより、電池セルの充放電電圧と容量との関係(充放電特性)や満充電時の容量値(満充電特性)や充放電電圧と電池セルの温度変化との関係(温度特性)が得られる。
【0098】
良品判定部520は、判定モデルによる演算の結果に基づき、当該電池セルが良品であると判定可能か否かを判断する(ステップS430)。
ここで、当該電池セルが良品であるのか不良品であるのかの判断は、例えば、充放電特性に基づく判定モデルにより算出した結果が電池セルを良品と判断する範囲内の数値か否かで行う。
【0099】
当該電池セルが良品でないと判断された場合(ステップS430の「NO」)は、不良品として廃棄すべく、当該電池セルを次の処理工程に進めることなく本来の製造ラインから除去して、廃棄処理(廃棄物用の保管庫への搬入等)が行われる(ステップS440)。
【0100】
一方、良品判定部520により、当該電池セルが良品であると判断された場合(ステップS430の「YES」)は、次に、リユース判定部800により当該電池セルがリユース可能か否かを判断する(ステップS450)。
ここで、リユースが可能か否かの判断は、例えば、満充電特性や温度特性に基づき判断する。
【0101】
当該電池セルの満充電特性あるいは温度特性のうち少なくとも1つがリユース可能と判断される範囲外であるとリユース判定部800が判断する場合(ステップS450の「NO」)には、当該電池セルは、リユースできない不良品として廃棄処理とする(ステップS440)。
【0102】
一方、満充電特性及び温度特性がともにリユース可能と判断される範囲内であるとリユース判定部800が判断する場合(ステップS450の「YES」)には、電池セルとして再利用し、その状態管理がなされる(ステップS460)。
【0103】
以上、説明したように、本実施形態によれば、リユース判定部800が、良品判定部520により良品と判定された電池セルのうち、当該電池セルの満充電特性あるいは温度特性のうち少なくとも1つがリユース可能と判断される範囲内であるか否かにより、当該電池セルがリユース可能か否かを判定する。
そのため、電池セルのリユース工程に判定モデルを適用することで、電池セルを効率的かつ適切に、リユースすることができる。
【0104】
<第4の実施形態>
以下、図12から図14を用いて、本発明の実施形態について説明する。
なお、本実施形態は、工程として、例えば、蓄電システムに搭載され稼動中の電池セルの挙動を監視する監視工程を例示したものである。
【0105】
<電池セル取扱装置の電気的構成>
本実施形態に係る電池セル取扱装置40は、図11に示すように、CPU(Central Processing Unit)130と、ROM(Read Only Memory)200と、RAM(Random Access Memory)300と、判定モデル記憶部430と、良品判定部530と、インターフェース部600と、寿命予測部900と、を含んで構成されている。
なお、第1の実施形態、第2の実施形態および第3の実施形態と同一の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明は省略する。
【0106】
CPU130は、ROM200に予め格納された監視工程の制御プログラムに従って、電池セル取扱装置10全体の処理を制御する。
特に、本実施形態においては、生産工程あるいは監視工程において得られた種々のデータに基づいて、監視工程における電池セルの良品と不良品との規則性を測定等で得られたデータから導き出し、この規則性に基づいて良品と不良品の特異点を抽出して、判定モデルを生成する処理を行う。
【0107】
判定モデル記憶部430は、CPU130により生成された判定モデルを記憶する記憶素子である。
【0108】
良品判定部530は、生産工程あるいは監視工程において得られた電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部430に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行うことにより電池セルの良品判定あるいは不良品判定を行う。
ここで、電池セルのデータとしては、例えば、電池温度、電池電圧、電池容量、充放電回数、使用年数、長期の未使用期間の有無、エラー回数、エラー発生時間、エラー内容に関する情報等を例示することができる。
【0109】
寿命予測部900は、電池セルが良品と判定された場合に、当該電池セルの寿命予測を行う。
なお、ここで、寿命予測は、監視工程において測定された電池セルの電池電圧や電池温度が通常の電池セルの場合では計測され得ない範囲の電圧値や温度となる場合になされるものであり、電池セルとして正常に使用できないと判断された電池セルについては、継続した使用の禁止を知らせるための警告がなされる。
これは、実際の監視工程において、監視対象としている電池セルの電池電圧や電池温度が正常値範囲内か否かで判断することができる。
本実施形態では、監視している電池セルの電池電圧や電池温度を見る限りでは正常であると判断されるものについても、測定したデータから電池セルの寿命が近い(電池セルの劣化が進む)兆候を示す状態を判定モデル化して演算で判断する。
以下では、電池セルの監視工程において測定する電池セルの電池電圧や電池温度に関する情報を用いて、劣化判定ができる判定モデルを例示して説明する。
【0110】
また、CPU130は、図12に示すように、規則性情報抽出部131と、規則性情報記憶部132と、特異点抽出部133と、条件式算出部134と、判定モデル生成部135と、を含んで構成されている。
【0111】
規則性情報抽出部131は、例えば、外部に設けたデータ記憶部1000からの生産工程あるいは監視工程において得られた良品あるいは不良品の電池セルに関する過去の複数のデータから良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を抽出する。
【0112】
規則性情報記憶部132は、規則性情報抽出部131により抽出された良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を格納する。
【0113】
特異点抽出部133は、良品あるいは不良品の電池セルに関する各データ間の規則性情報を規則性情報記憶部132から入力して、良品あるいは不良品の電池セルごとの共通点、良品と不良品の電池セルの特異点を抽出する。
【0114】
条件式算出部134は、特異点抽出部133が抽出した特異点に基づいて、良品の電池セルと不良品の電池セルとを判別可能な条件式を算出する。
【0115】
判定モデル生成部135は、条件式算出部134において算出した条件式の正当性を検証し、判定モデルを生成する。
【0116】
<電池セル取扱装置の処理>
図13を用いて、本実施形態に係る電池セル取扱装置40における処理について説明する。
【0117】
CPU130は、例えば、データサーバ等であるデータ記憶部1000からインターフェース部600を介して、生産工程あるいは監視工程において得られた、例えば、電池セルの電池電圧や電池温度をはじめとするデータを入力する(ステップS510)。
【0118】
良品判定部530は、生産工程あるいは監視工程において得られた、例えば、電池セルの電池電圧や電池温度をはじめとする電池セルのデータを入力データとして、判定モデル記憶部420に記憶されている判定モデルを用いて、演算処理を行う(ステップS520)。
これにより、電池セルの充放電電圧と温度変化との関係(温度特性)が得られる。
【0119】
良品判定部530は、判定モデルによる演算の結果に基づき、当該電池セルが良品(正常)であると判定可能か否かを判断する(ステップS530)。
ここで、当該電池セルが良品であるのか不良品であるのかの判断は、例えば、温度特性に基づく判定モデルにより算出した結果が当該電池セルを良品と判断する範囲内の数値か否かで行う。
【0120】
当該電池セルが良品(正常)でないと判断された場合(ステップS530の「NO」)は、電池セルに何らかの異常があるとして、当該電池セルが搭載された蓄電システムのユーザーに対して当該電池セルの異常を知らせる(ステップS540)。
なお、この時、安全のため、遠隔操作により蓄電システムの動作自体を禁止するようにしてもよい。
【0121】
一方、良品判定部520により、当該電池セルが良品(正常)であると判断された場合(ステップS530の「YES」)は、次に、寿命予測部900により当該電池セルが劣化していないか否かを判断する(ステップS550)。
ここで、電池セルが劣化しているか否かの判断は、判定モデルを用いて測定した電池電圧と電池温度を演算して得た演算結果により判断することができる。
【0122】
寿命予測部900により当該電池セルに劣化の兆候があると判断され、当該電池セルの寿命が短いと判断される場合(ステップS550の「NO」)は、その旨をユーザーに警告し、当該電池セルに対する監視を強化する等、当該電池セルが急速に劣化して、停電等の発生時に十分な機能を発揮できないということがないよう事前に当該電池セルを交換する等の対応を促す(ステップS570)。
【0123】
一方で、当該電池セルに劣化の兆候はないと判断された場合(ステップS550の「YES」)は、特に、ユーザーへの警告等を行うことなく継続して当該電池セルの監視を行う(ステップS560)。
【0124】
以上説明したように、本実施形態によれば、寿命予測部900が、良品判定部530により良品と判定された電池セルのうち、監視工程において、監視対象としている当該電池セルの電池電圧や電池温度が正常値範囲内か否かを判断する。
【0125】
また、当該電池セルの寿命を予測し、寿命が短いものについては、その旨をユーザーに警告し、当該電池セルに対する監視を強化する等、当該電池セルが急速に劣化して、停電等の発生時に十分な機能を発揮できないということがないよう事前に当該電池セルを交換する等の対応を促す。
そのため、電池セルの監視工程に判定モデルを適用することにより、電池セルの監視をよりきめ細やかに行うことができる。
【0126】
なお、上記実施形態においては、判定モデルを作成し、この判定モデルを用いた各種選択(良品・不良品の選択、リユースの可否選択、監視度合の選択)についても例示したが、これに限るものではない。
【0127】
例えば、上述した通り、作成する判定モデルは1つでなく複数であってもよい。
【0128】
例えば、判定に必要な情報がそれぞれ異なる複数の判定モデルが作成された場合には、それらを適宜用いて、判定可能な処理工程の後に、各判定モデルによる判定を行い、その都度、適宜、選択処理を行うようにしてもよい。
【0129】
また、例えば、電池セルの良品あるいは不良品の判断を複数の判定モデルにより行って選択処理を実行し、これを、それぞれ適切な処理工程毎に行うようにすれば、各処理工程において適宜、電池セルの不良品を取り除くことができ、電池セルの不良品に対して無駄な処理を行うことなく、処理の効率化を図ることができる。
【0130】
また、例えば、1の判定モデルで電池セルの不良品を90%の確率で判断することができ、1の判定モデルで必要な情報とは異なる情報を用いた他の判定モデルを用いることにより、残り10%分の電池セルに対して90%程度の確率で電池セルの不良品が判断できるような場合、1の判定モデルによる電池セルの良品あるいは不良品の選択処理を行った後に、電池セルの不良品と判断できなかった電池セルに対して他の判定モデルにより電池セルの良品あるいは不良品を選択処理するようにしてもよい。
このように2段階あるいはそれ以上の段階で、異なる判定モデルを準備して選択処理を行うようにすれば、電池セルの不良品をより高精度に抽出することができ、電池セルの不良品に対する処理の効率化を図ることができる。
【0131】
なお、電池セルの選別方法をコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを、電池セル取扱装置等に読み込ませ、実行することによって本発明の電池セル取扱装置を実現することができる。
ここでいうコンピュータシステムとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0132】
また、「コンピュータシステム」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されても良い。
ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0133】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0134】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0135】
10;電池セル取扱装置
20;電池セル取扱装置
30;電池セル取扱装置
40;電池セル取扱装置
100;CPU
101;規則性情報抽出部
102;規則性情報記憶部
103;特異点抽出部
104;条件式算出部
105;判定モデル生成部
110;CPU
111;規則性情報抽出部
112;規則性情報記憶部
113;特異点抽出部
114;条件式算出部
115;判定モデル生成部
120;CPU
121;規則性情報抽出部
122;規則性情報記憶部
123;特異点抽出部
124;条件式算出部
125;判定モデル生成部
130;CPU
131;規則性情報抽出部
132;規則性情報記憶部
133;特異点抽出部
134;条件式算出部
135;判定モデル生成部
200;ROM
300;RAM
400;判定モデル記憶部
410;判定モデル記憶部
420;判定モデル記憶部
430;判定モデル記憶部
500;良品判定部
510;良品判定部
520;良品判定部
530;良品判定部
600;インターフェース部
700;エージング判定部
800;リユース判定部
900;寿命予測部
1000;データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14