(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177367
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】組子格子飾りの製造方法、組子格子飾りの連結構造、組子格子飾り、及び組子格子飾りセット
(51)【国際特許分類】
B44B 9/00 20060101AFI20231207BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20231207BHJP
E04C 2/12 20060101ALI20231207BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B44B9/00
B27M3/00 H
E04C2/12 B
E04B2/74 541P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089979
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】399130614
【氏名又は名称】株式会社松屋
(71)【出願人】
【識別番号】521323358
【氏名又は名称】株式会社土佐組子
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健寛
(72)【発明者】
【氏名】柴田 亨一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 大輔
【テーマコード(参考)】
2B250
2E162
【Fターム(参考)】
2B250AA40
2B250BA03
2B250CA03
2B250CA04
2B250CA05
2B250CA09
2B250EA13
2B250FA13
2B250FA28
2B250HA01
2E162CC02
(57)【要約】
【課題】連結のさせ方次第で多様な装飾デザインを容易に表現することのできる組子格子飾りの製造方法、組子格子飾りの連結構造、組子格子飾り、及び組子格子飾りセットを提供する。
【解決手段】本発明に係る組子格子飾りの連結構造200S,200Nは、枠体10の内側へ複数の格子材12,13が嵌め込まれた組子格子飾り1の連結構造であって、前記枠体10の外側面10Pに形成され、マグネットを配置するための凹部CS,CNと、前記凹部CS,CNに配置された前記マグネット20S,20Nと、前記マグネット20S,20Nを覆うようにして前記外側面10Pに貼付され、前記枠体10と同じ材質の薄肉部材40とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の内側へ複数の格子材が嵌め込まれた組子格子飾りの製造方法であって、
前記枠体の外側面にマグネットを配置するための凹部を形成する工程と、
前記凹部に前記マグネットを配置する工程と、
前記マグネットを覆うようにして前記外側面の表面に前記枠体と同じ材質の薄肉部材を貼付する工程と、
を含むことを特徴とする組子格子飾りの製造方法。
【請求項2】
枠体の内側へ複数の格子材が嵌め込まれた組子格子飾りの連結構造であって、
前記枠体の外側面に形成され、マグネットを配置するための凹部と、
前記凹部に配置された前記マグネットと、
前記マグネットを覆うようにして前記外側面に貼付され、前記枠体と同じ材質の薄肉部材と、
を備えることを特徴とする組子格子飾りの連結構造。
【請求項3】
枠体の内側へ複数の格子材が嵌め込まれた組子格子飾りであって、
前記枠体を構成する全ての枠材に請求項2に記載の組子格子飾りの連結構造を備えていることを特徴とする組子格子飾り。
【請求項4】
請求項3に記載の組子格子飾りにおいて、
前記連結構造における前記マグネットの磁化方向は、前記枠体の外側に向けて設定されている
ことを特徴とする組子格子飾り。
【請求項5】
請求項4に記載の組子格子飾りにおいて、
前記枠体を構成する全ての前記枠材に2つずつ前記連結構造を備えている
ことを特徴とする組子格子飾り。
【請求項6】
請求項5に記載の組子格子飾りにおいて、
前記互いに隣り合う前記マグネットの間では磁化方向が反対に設定されている
ことを特徴とする組子格子飾り。
【請求項7】
請求項6に記載の組子格子飾りにおいて、
前記枠体は、6つの前記枠材を正六角形状に組み合わせたものである
ことを特徴とする組子格子飾り。
【請求項8】
請求項3~7の何れか1項に記載の組子格子飾りを複数備えたことを特徴とする組子格子飾りセット。
【請求項9】
請求項8に記載の組子格子飾りセットにおいて、
複数の前記組子格子飾りを立体的に連結する際に生じる隙間へ配置されるべき楔状角材を更に備えた
ことを特徴とする組子格子飾りセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、イベント会場、商業施設内、ショーウインド、ショーケース内の装飾等に用いられる組子格子飾りの製造方法、組子格子飾りの連結構造、組子格子飾り、及び組子格子飾りセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幾何学模様の格子パターンが形成されたパーティション用化粧パネルが提案されている(例えば特許文献1等を参照)。特許文献1に記載されたパーティション用化粧パネルの材質は、例えば、金属、木材、樹脂、セラミック等である。その一方で、日本の木工の伝統技法として、釘等の固定具を使わずに細い木片を組み合わせて緻密な幾何学紋様を生み出す組子(くみこ)が知られている(例えば特許文献2等を参照)。組子の技法によって制作された組子格子飾りは、障子などの建具、欄間などの建築設備、パーティションなどの家具、ランプシェードなどのインテリア雑貨、鍋敷きなどのキッチン雑貨、身の回り品などに用いられるだけでなく、イベント会場、商業施設内、ショーウインド、ショーケース内の装飾の装飾素材としての活用も期待されている。伝統工芸による演出により、地域の産業・文化の紹介を行い、地域の活性(地域共創)を図ることができるからである。因みに特許文献2には、仮想曲面に沿って形成された組子の構造物の製造方法や、その構造物を照明シェード、パーティションまたは壁面装飾材に用いる例などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3236594号公報
【特許文献2】特開2021-123947号公報
【特許文献3】特許第2918803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イベント会場、商業施設内、ショーウインド、ショーケース内の装飾は、イベントごと(季節ごと)に入れ替えられ、これに使用された装飾素材は全て廃棄物として処理されるのが通例となっている。なぜなら、同一の装飾素材を使いまわしていると装飾デザインが陳腐化する虞があると考えられていたからである。
【0005】
しかしながら、組子格子飾りのように緻密な幾何学紋様を含む工芸品の制作には手間と時間を要するため、仮に、個々のイベントごとに装飾素材である工芸品を入れ替えようとするとコストがかかるし、そもそも、手作業で制作された工芸品を廃棄すること自体が非現実的である。このため、装飾素材として組子格子飾りを用いることが強く望まれたとしても、コスト高であることが理由で採用を断念せざるを得ないというケースも多かったと考えられる。
【0006】
なお、特許文献3には、製造した後に使用者の好みに合わせて欄間の模様を変更でき、種々の模様の欄間に変更して安価に多量生産することを目的として、磁石の脱着連結部材を介して前面装飾部材を脱着自在に装着した仏壇が開示されているものの、イベント会場、商業施設内、ショーウインド、ショーケース等の装飾や装飾部材同士の連結については何ら想定していない。
【0007】
そこで、本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、連結のさせ方次第で多様な装飾デザインを容易に表現することのできる組子格子飾りの製造方法、組子格子飾りの連結構造、組子格子飾り、及び組子格子飾りセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りの製造方法は、枠体の内側へ複数の格子材が嵌め込まれた組子格子飾りの製造方法であって、前記枠体の外側面にマグネットを配置するための凹部を形成する工程と、前記凹部に前記マグネットを配置する工程と、前記マグネットを覆うようにして前記外側面の表面に前記枠体と同じ材質の薄肉部材を貼付する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りの連結構造は、枠体の内側へ複数の格子材が嵌め込まれた組子格子飾りの連結構造であって、前記枠体の外側面に形成され、マグネットを配置するための凹部と、前記凹部に配置された前記マグネットと、前記マグネットを覆うようにして前記外側面に貼付され、前記枠体と同じ材質の薄肉部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りは、枠体の内側へ複数の格子材が嵌め込まれた組子格子飾りであって、前記枠体を構成する全ての枠材に請求項2に記載の組子格子飾りの連結構造を備えていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りにおいて、前記連結構造における前記マグネットの磁化方向は、前記枠体の外側に向けて設定されていることが望ましい。
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りにおいて、前記枠体を構成する全ての前記枠材に2つずつ前記連結構造を備えていてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りは、前記互いに隣り合う前記マグネットの間では磁化方向が反対に設定されていることが望ましい。
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りにおいて、前記枠体は、6つの前記枠材を正六角形状に組み合わせたものであるであってもよい。
【0015】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りセットは、本発明に係る組子格子飾りを複数備えることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために本発明に係る組子格子飾りセットは、複数の前記組子格子飾りを立体的に連結する際に生じる隙間へ配置されるべき楔状角材を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る組子格子飾りの製造方法、組子格子飾りの連結構造、組子格子飾り、及び組子格子飾りセットによれば、枠体に埋め込まれたマグネットの磁力により組子格子飾り同士を連結することが可能となる。しかも、マグネットを覆うようにして枠体と同じ材質の薄肉部材が貼付されているので、組子格子飾りパネルの単体としての美観を保ちつつ、マグネットの磁力を利用することができる。したがって、組子格子飾りの連結のさせ方次第で、装飾デザインの全体的な印象を変化させたり、デザイナーが自分のセンスを反映させたりすることができるので、多様な装飾デザインを容易に表現することができるという効果がある。
【0018】
なお、当該薄肉部材は接着剤により貼付することができるので、煩雑な工程を要しない。また、適切な接着剤を使用すれば、これを急速に硬化させ、薄肉部材の剥離を防止することも容易である。
【0019】
また、枠体におけるマグネットの配置を適切にすれば、複数の組子格子飾りを一次元状(シリアル)に連結するだけでなく、二次元状(マトリクス状)又は三次元状(立体的)に連結することも可能である。更には、複数の組子格子飾りを重ねて固定することもできるので、持ち運びや保管に便利という効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は本実施形態に係る組子格子飾りパネルの概略斜視図である。
【
図2】
図2は組子格子飾りパネルにおける連結構造の形成先を説明する概略平面図である。
【
図3】
図3は枠材に凹部を形成する工程を説明する図である。
【
図4】
図4は凹部にマグネットを配置する工程を説明する図である。
【
図5】
図5はマグネットを単板(たんぱん)で覆う工程を説明する図である。
【
図6】
図6は組子格子飾りパネルがシリアルに連結される様子を示す図である。
【
図7】
図7は組子格子飾りパネルがマトリクス状に連結される様子を示す図である。
【
図8】
図8は組子格子飾りパネルが重ねて連結される様子を説明する図である。
【
図9】
図9は組子格子飾りパネルのバリエーションを示す図である。
【
図10】
図10は連結された組子格子飾りパネルを吊り下げた商業施設の装飾デザインの例である。
【
図11】
図11は連結された組子格子飾りパネルを壁面に取り付けた商業施設の装飾デザインの例である。
【
図12】
図12は組子格子飾りパネルを立体的に連結する際に使用される楔部材を説明する図である。
【
図13】
図13は組子格子飾りパネルを立体的に連結することにより制作されたオブジェの例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る組子格子飾りパネルの製造方法、組子格子飾りパネルの連結構造、組子格子飾りパネル、及び組子格子飾りパネルセットの一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
1.組子格子飾りパネルの構成
初めに、
図1,
図2に基づいて視組子格子飾りパネルの概略構成について説明する。
図1は本実施形態に係る組子格子飾りパネルの概略斜視図、
図2は組子格子飾りパネルにおける連結構造の形成先を説明する概略平面図である。
先ず、
図1に示すとおり、本実施形態の組子格子飾りパネル1は、例えば、杉、檜などからなる木製の枠材10A~10Fを正六角形状に組み合わせた枠体10を備えている(枠体10全体としての形状は扁平な正六角筒である。)。この枠体10の内側には、枠体10と同じ材質の地組用の格子材12,12,12が対角線状に嵌め込まれており、これらの格子材12,12,12が組子格子飾りパネル1の内部に正三角形状の地組100を6つ形成している。6つの地組100の各々の内部には、枠体10と同じ材質の葉組子13(
図1では麻の葉状の組子)が嵌め込まれている。以上の枠材10A~10F,格子材12,12,12,葉組子13、13,13,13、13,13は、いずれも釘等の固定具を用いることなく相欠き又は突き付けによって互いに嵌合されているので、固定具を用いた場合と比して組子格子飾りパネル1の重量は軽量に抑えられている。組子格子飾りパネル1の重量は、枠体10のサイズ、地組100の種類、葉組子13の種類又は有無、材質などによって異なるが、例えば174g~240gの範囲内に収まる(組子文様毎の重量の詳細は後述する。)。
【0023】
次に、
図2に点線で示すとおり、枠体10を構成する6つの枠材10A~10Fの各々には、一対の連結構造200S,200Nが各枠材10A~10Fの長手方向にかけて並べて設けられている。一方の連結構造200Sは板状のマグネット20Sを備え、他方の連結構造200Nはマグネット20Sと同一のマグネット20Nを備えている。これらマグネット20S,20Nの磁化方向は、いずれも枠体10の外側に向けて設定されているが、一方のマグネット20Sは枠体10の外側にS極を向けているのに対して、他方のマグネット20Nは枠体10の外側にN極を向けているという相違がある。そして、これらマグネット20S,20Nの深さ位置は、枠体10の外側寄りに設定されており、マグネット20S,20Nの長手方向の位置は、各枠材10A~10Fの端部寄り(枠体10の頂点寄り)に設定されている。したがって、正六角形状の枠体10の全周には、マグネット20Nとマグネット20Sとが交互に配置され、互いに隣り合うマグネットの間では磁化方向が必ず反対に設定されることになる。このような位置関係でマグネット20S,20Nを配置しておけば、複数の組子格子飾りパネル1を連結した際に位置合わせが容易であり、しかも外れにくいという利点がある(詳細は後述)。
【0024】
2.組子格子飾りパネルの製造方法
次に、
図3,
図4,
図5を参照して組子格子飾りパネルの製造方法について説明する。
図3は、枠材に凹部を形成する工程を説明する図、
図4は凹部にマグネットを配置する工程を説明する図、
図5はマグネットを単板(たんぱん)で覆う工程を説明する図である。ここでは、枠体10を構成する1つの枠材10Aに着目して説明するが、他の枠材10B~10Fについても同様のことが当てはまるものとする。
【0025】
本実施形態の組子格子飾りパネル1の製造方法は、以下の工程(i)~(vi)を含む。
(i)格子材12及び葉組13が嵌め込まれた枠体10を準備する工程(不図示)。
(ii)枠体10を構成する枠材10Aの外側面10Pの側にマグネット20S,20Nを配置するための凹部CS,CNを工程(
図3(3-1),(3-2))。この工程では、例えば、トリマや、ルーターなどの工具が用いられる。
(iii)凹部CS,CNにマグネット20S,20Nを配置する工程(
図4(4―1),(4-2))。
(iv)枠材10Aの外側面10Pにマグネット20S,20Nの上から接着剤30を塗布する工程(
図5(5-1))。この工程では、例えば、糊つけローラーなどの道具が用いられる。
(v)枠材10Aの外側面10Pに、マグネット20S,20Nを覆うようにして枠体10と同じ材質の薄肉の単板(たんぱん)40を貼付する工程(
図5(5-2),(5-3))
(vi)接着剤30を硬化させる工程(不図示)。
【0026】
ここで、一対のマグネット20S,20Nとしては、前述したとおり互いに同型同大かつ同種のマグネットが使用され、両者の相違点は互いの姿勢が反転している点のみである。また、単板40の材質は、枠材10Aの材質と同じ(木製)であって、しかも十分に薄く設定されているので、枠材10Aの内部に埋め込まれたマグネット10S,10Nの磁力を外部へ通すことができる。なお、この単板10は、「突き板(つきいた)」と呼ぶこともできる。
【0027】
また、接着剤30としては、例えばハネムーン型(分別塗布)木工用水性接着剤を用いることができる。接着剤30は、マグネット20S,20Nを避けるようにして塗布する必要はなく、マグネット20S,20Nの上から塗布してもマグネットの機能を阻害しないことは実験により確認済みである。よって、単板10を貼付する工程(
図5)は短時間で効率的に実施される。
【0028】
以上の製造方法によれば、枠材10Aの外縁寄りに一対の連結構造200S,200Nを埋め込むことができる(
図2参照)。一方の連結構造200Sは、凹部CS、マグネット20S、単板40を備え、他方の連結構造200Nは、凹部CN、マグネット20N、単板40を備え、双方の連結構造200S,200Nは、同一の単板40を共有している。そして、このような連結構造200S,200Nは、枠体10を構成する他の枠材10B~10Fにも同様に設けられる(
図2参照)。
【0029】
これらの連結構造200S,200Nにおいて、マグネット20S,20Nは、後述するとおり、小型であるにも関わらず、十分な磁束密度を有しているので、組子格子飾りパネル1の重量を著しく増大させることなく、組子格子飾りパネル1同士を連結することが可能である。
【0030】
しかも、連結構造200S,200Nを構成する単板40は、枠体10と同じ材質(木製)であるから、その内部にマグネット20S,20Nが埋め込まれているにも関わらず、組子格子飾りパネル1の単体としての美観が損なわれることがない。
【0031】
さらに、単板40の厚みは十分に薄く設定されているので、マグネット20S,20Nの磁力を通し、マグネット20S,20Nにより発生する連結力を阻害することがない。
【0032】
また、単板40は接着剤30により貼付されるので煩雑な工程を要しない。しかも、接着剤30として後述する製品を使用すれば、主剤とプライマーを別々に塗布してから両面を張り合わせるだけで、急速に硬化させ、単板40が剥離するのを防止できることができる。
【0033】
3.組子格子飾りパネルの連結方法
次に、
図6,
図7,
図8を参照して組子格子飾りパネルの連結方法について説明する。
図6は組子格子飾りパネルがシリアル(一次元状)に連結される様子を示す図、
図7は組子格子飾りパネルがマトリクス状(二次元状)に連結される様子を示す図、
図8は組子格子飾りパネルが重ねて連結される様子を説明する図である。
上述したとおり本実施形態の組子格子飾りパネル1には、枠材10A~10Fの各々に一対のマグネット20S,20Nが埋め込まれているので、
図6に示すとおり、複数の組子格子飾りパネル1,1,…を用意し、これらを同じ姿勢で互いの外側面同士を近づけると、マグネット20NのN極とマグネット20SのS極とが必ず対向するので、隣り合う組子格子飾りパネル1,1の外側面同士がぴったりと重なり合って引き寄せ合う。したがって、複数の組子格子飾りパネル1,1,…が
図6に示すようにシリアル(一次元状)に連結される。
【0034】
更に、
図7に示すとおり、同じ姿勢の組子格子飾りパネル1,1,…を2方向(
図7の例では横方向及び斜め方向)にかけて配置した場合にも、隣り合う組子格子飾りパネル1,1マグネット20NのN極とマグネット20SのS極とが必ず対向するので、複数の組子格子飾りパネル1,1,…が
図7に示すようにマトリクス状(二次元状)に連結される。
【0035】
更に、
図8に示すとおり、同じ姿勢の組子格子飾りパネル1,1,…を高さ方向に積み重ねた(縦積みした)場合には、磁化方向の揃った複数のマグネット20Nが高さ方向に積み重なり、磁化方向の揃った複数のマグネット20Sが高さ方向に積み重なるので、縦積みされた組子格子飾りパネル1,1,…をブロック状に固定することができる。ブロック状に固定された複数の組子格子飾りパネル1,1,…は、持ち運びや収納に便利である。
【0036】
4.組子格子飾りパネルセットの例
以下、
図9を参照して本実施形態に係る組子格子飾りパネルセットについて説明する。
図9は組子格子飾りパネルのバリエーションを示す図である。
本実施形態の組子格子飾りパネルセットは、上述した本実施形態の組子格子飾りパネル1を複数備えている。本実施形態の組子格子飾りパネルセットには、例えば、
図9に示すとおり組子文様(地組及び葉組子の組み合わせで決まる格子パターン)の異なる2種以上の組子格子飾りパネル1,1,…が含まれていてもよいし、同一セット内に同種の組子格子飾りパネル1,1,…のみが含まれていても良い。
因みに、
図9(A)に示す組子文様は「麻の葉(小)」であり、
図9(B)に示す組子文様は「麻の葉(大)」であり、
図9(C)に示す組子文様は「三つ組手(小)」であり、
図9(D)に示す組子文様は「胡麻柄(小)」であり、
図9(E)に示す組子文様は「七宝亀甲」である。但し、組子格子飾りパネル1の組子文様は、
図9に示すものに限定されることはない。
なお、基本的に、セットに含まれる複数の組子格子飾りパネル1の外形及びサイズ(すなわち枠体10の外形及びサイズ)は共通である。組子格子飾りパネル同士を連結する際に、互いの外側面10Pのサイズ・互いのマグネット20S,20Nの位置が揃っている必要があるからである。
但し、互いに連結できるようにマグネットの位置が予め調整されているのであれば、外形又はサイズの異なる複数の組子格子飾りパネルを1セット内に含めてもよい。例えば、六角形状の枠体を有した六角組子格子飾りパネル1と、四角形状(正方形状)の枠体を有した四角組子格子飾りパネル(後述)とを1セット内に含めてもよいし、六角形状の枠体を有した六角組子格子飾りパネル1と、五角形状の枠体を有した五角組子格子飾りパネル(後述)とを1セット内に含めてもよい。
【0037】
5.実施例
以下、本実施形態の組子格子飾りパネル1の実施例について説明する。組子格子飾りパネル1の仕様は例えば以下の通りである。
・枠材の長さL:200mm
・枠体の長径L1:400mm
・枠体の短径L2:346.4mm
・枠体の高さH:12mm
・枠体の厚みd:10mm
・マグネット:ネオジム磁石
・マグネットの長さML:30mm
・マグネットの幅MW:5mm
・マグネットの厚みMd:3mm
・マグネットの磁化方向:厚みMdの方向
・マグネットの表面処理:ニッケルめっき
・マグネットの表面磁束密度:3,450ガウス(345ミリテスラ)
・マグネットの吸着力:約5.6kgf
・マグネットの推奨使用温度:80℃以下
・枠体の頂点から凹部までの間隙Δ:17mm
・凹部の長さCL:35mm
・凹部の幅CW:5.1mm
・凹部の深さCd:3.3mm
・単板の厚みPd:0.75mm~1mm
・接着剤:コニシ社製ボンドHB-10(ハネムーン型)
・組子格子飾りパネルの重量(三ツ組手(小)):174g
・組子格子飾りパネルの重量(麻の葉(小)):240g
・組子格子飾りパネルの重量(胡麻柄(小)):256g
・組子格子飾りパネルの重量(麻の葉(大)):212g
・組子格子飾りパネルの重量(七宝亀甲(大)):238g
【0038】
6.組子格子飾りパネルセットの使用方法
以下、
図10,
図11を参照して組子格子飾りパネルセットを利用した装飾方法の例について説明する。
図10は連結された組子格子飾りパネルを吊り下げた商業施設の装飾デザインの例、
図11は連結された組子格子飾りパネルを壁面に取り付けた商業施設の装飾デザインの例である。
図10に示すとおり、マトリクス状(二次元状)に連結された本実施形態の組子格子飾りパネルを、ナイロンテグスなどの透明な長尺部材によって天井から容易に吊り下げることが可能である。そして、連結された組子格子飾りパネル1を例えば上方から照明すれば、組子格子飾りパネル1の透過光が織りなす幻想的な空間を演出することができる。
また、
図11に示すとおり、シリアル(一次元状)又はマトリクス状(二次元状)に連結された本実施形態の組子格子飾りパネルを壁面に沿って配置すれば、当該壁面を装飾することができる。しかも、予め当該壁面の表面に磁性体からなるシート(例えば鉄製)を貼付しておけば、固定具又は接着剤を用いることなく本実施形態の組子格子飾りパネルを壁面の任意の位置へ貼り付けたり、貼り直したりすることが可能である。また、
図11中に白抜き矢印で示すとおり、組子格子飾りパネル同士を、角度を付けて連結することにより、壁面から突出した立体的な(三次元状の)オブジェにすることも可能である。
【0039】
7.立体的な連結方法
以下、
図12,
図13を参照して立体的な連結方法について説明する。
図12は組子格子飾りパネルを立体的に連結する際に使用される楔部材を説明する図、
図13は組子格子飾りパネルを立体的に連結することにより制作されたオブジェの例である。
【0040】
先ず、2つの組子格子飾りパネル1,1を立体的(三次元状)に連結しようとした場合には、一方の組子格子飾りパネル1の外側面と他方の組子格子飾りパネル1の外側面との間に
図12に示すとおり隙間が生じるので、当該隙間と同じ形状の楔状角材50を予め用意しておき、これを当該隙間へ挿入する(挟み込む)ことにより、2つの組子格子飾りパネル1,1の互いの姿勢を安定させるとよい。この楔状角材50の材質は、枠体10の材質と同じであって、しかも十分に薄いので、2つの組子格子飾りパネル1,1の内部に埋め込まれたマグネットの磁力を通すことができる。このような楔状角材50は、組子格子飾りパネルセットに組み立て部品として同梱されてもよい。
【0041】
また、このような立体的な連結の技術を応用すれば、例えば、
図13(A),(B)に示すような立体的なオブジェを作成することも可能である。
図13(A)に示すのは、切稜立方体状に連結された組子格子飾りパネルの例であり、
図13(B)に示すのは、切頂二十面体状に連結された組子格子飾りパネルの例である。
【0042】
なお、切稜立方体状(
図13(A))、又は部分切稜立方体状のオブジェを作成するためには、六角形状の枠体を有した複数の六角組子格子飾りパネル1と、四角形状(正方形状)の枠体を有した複数の四角組子格子飾りパネル101と、六角組子格子飾りパネル1同士の隙間を充填するための複数の楔状角材(不図示)と、六角組子格子飾りパネル1と四角組子格子飾りパネル101の隙間を充填するための複数の楔状角材(不図示)とを1セットに含めるとよい。なお、四角組子格子飾りパネル101は、上述した組子格子飾りパネル1において枠体10を四角形状(正方形状)に変更したものである。
【0043】
また、切稜立方体状(
図13(B))、又は部分切稜立方体状のオブジェを作成するためには、六角形状の枠体を有した複数の六角組子格子飾りパネル1と、五角形状の枠体を有した複数の五角組子格子飾りパネル102と、六角組子格子飾りパネル1同士の隙間を充填するための複数の楔状角材(不図示)と、六角組子格子飾りパネル1と五角組子格子飾りパネル102の隙間を充填するための複数の楔状角材(不図示)とを1セットに含めるとよい。なお、五角組子格子飾りパネル102は、上述した組子格子飾りパネル1において枠体10を五角形状に変更したものである。
【0044】
なお、ここでは立体的に連結するために組子格子飾りパネルと組子格子飾りパネルとの隙間に挿入される楔状角材を用いたが、組子格子飾りパネルの枠材の外側面へ予めテーパーを付けておくことにより隙間が生じないようにしてもよい。
【0045】
8.実施形態の効果
以上説明したとおり、本実施形態によれば、枠体10に埋め込まれたマグネット20S,20Nの磁力により、組子格子飾りパネル1,1,…同士を様々な方向に連結することが可能となる(
図6,
図7,
図8,
図12)。しかも、マグネット20S,20Nを覆うようにして枠体10と同じ材質の単板40が貼付されているので(
図5(5-3))、組子格子飾りパネル1の単体としての美観を保ちつつマグネット20S,20Nの磁力を利用することができる。したがって、本実施形態によれば、組子格子飾りパネル1の連結のさせ方次第で、装飾デザインの全体的な印象を変化させたり、デザイナーが自分のセンスを反映させたりすることができるので、多様な装飾デザインを容易に表現することができるという効果がある(
図10,
図11,
図13)。
【0046】
9.用途のバリエーション
なお、上述した組子格子飾りパネルセットの用途としては、以下の例が挙げられる。
・商業施設の店内装飾、ショーウインド装飾、ショーケース内装飾
・宿泊施設のエントランス装飾、客室装飾
・イベント会場装飾
・オフィス内装飾
・建築物の内装(一般家庭装飾含む)
【0047】
10.装飾方法のバリエーション
また、組子格子飾りパネルセットを用いた装飾方法としては、以下の例が挙げられる。
・1又は連結された複数の組子格子飾りパネルを吊り下げる。
・1又は連結された複数の組子格子飾りパネルを連結して壁に貼り付ける(磁性体からなる壁面)。
・1又は連結された複数の組子格子飾りパネルを平坦な面に寝かせて配置する。
・立体的に連結された複数の組子格子飾りパネルを吊り下げる。
・立体的に連結された複数の組子格子飾りパネルを連結して壁に貼り付ける(磁性体からなる壁面)。
・立体的に連結された複数の組子格子飾りパネルを平坦な面に載置する。
【0048】
11.枠形状のバリエーション
また、上述した実施形態では、枠体10の平面視形状を正方形、正五角形、又は正六角形としたが、正三角形、正八角形、正十角形、星形正多角形などの他の正多角形状としてもよいし、直角三角形、二等辺三角形、長方形、平行四辺形、ひし形、変形六角形、変形五角形、変形星形多角形などの、辺の長さが均等でない多角形状(変形多角形状)としてもよいし、円形、楕円形、雲形などの閉曲線状としてもよいし、部分多角形と部分閉曲線を組み合わせた閉曲線状としてもよい。
【0049】
12.セット内容のバリエーション
また、上述した組子格子飾りパネルのサイズ違い、文様違い、色違いを実現することもできる。また、枠形状、サイズ、文様、色の少なくとも1つの異なる複数種類の組子格子飾りパネルを1セット内に含めてもよいし、枠形状、サイズ、文様、色の少なくとも1つの異なる複数種類の組子格子飾りパネルを別セットに含めてもよい(つまり、一種類の組子格子飾りパネルのみを1セット内に含めてもよい)。
【0050】
13.その他
また、上述した何れかの実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 組子格子飾りパネル
10 枠体
12 格子材
13 葉組子
10A~10F 枠材
20S,20N マグネット
10P 外側面
CS,CN 凹部
10P 外側面10P
L 枠材の長さ
L1 枠体の長径
L2 枠体の短径
H 枠体の高さ
d 枠体の厚み
ML マグネットの長さ
MW マグネットの幅
Kd マグネットの厚み
Δ 枠体の頂点から凹部までの間隙Δ:17mm
CL 凹部の長さ
CW 凹部の幅
Cd 凹部の深さ
Pd 単板の厚み
200S,200N 連結構造