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特開2023-177372電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177372
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20231207BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231207BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20231207BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20231207BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20231207BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20231207BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20231207BHJP
【FI】
B60W20/00
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60K6/46 ZHV
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089987
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】舟▲崎▼ 達彦
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB31
3D202CC01
3D202CC03
3D202CC15
3D202CC21
3D202CC24
3D202CC35
3D202CC59
3D202DD18
3D202DD24
3D202FF02
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC05
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA09
5H125DD01
5H125DD07
5H125DD18
5H125EE52
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】バッテリレス走行状態になった電動車両を坂道での停車状態から登坂方向に発進させるように制御することが可能な電動車両の制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】発電用モータ4をエンジン2で駆動させて発電した電力をバッテリ7に蓄え、エンジン2の駆動力と、必要に応じてバッテリ7から出力された電力で作動させた駆動用モータ9により、車輪12を回転させて走行する電動車両1の制御装置20において、電動車両1が、バッテリ7が使用できなくなった状態、かつ、坂道で停車していると判定した場合に、バッテリ7を介さずに、発電用モータ4で発電した電力で駆動用モータ9を直接作動させるように駆動用モータ9の作動方法を変更するとともに、電動車両1を登坂方向に発進させるために必要な電力量Pを算出し、必要な電力量Pが発電用モータ4で発電されるようにエンジン2の回転数Nを上昇させるように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用モータをエンジンで駆動させて発電した電力をバッテリに蓄え、前記エンジンの駆動力と、必要に応じて前記バッテリから出力された電力で作動させた駆動用モータにより、車輪を回転させて走行する電動車両の制御装置において、
前記電動車両が、前記バッテリが使用できなくなった状態、かつ、坂道で停車していると判定した場合に、前記バッテリを介さずに、前記発電用モータで発電した電力で前記駆動用モータを直接作動させるように前記駆動用モータの作動方法を変更するとともに、前記電動車両を登坂方向に発進させるために必要な電力量を算出し、前記発電用モータで前記必要な電力量が発電されるように前記エンジンの回転数を上昇させるように制御することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記必要な電力量を、登坂抵抗と、前記電動車両が発進する際の目標速度と、の積として算出することを特徴とする請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記電動車両は、車両の駆動方式をFF駆動とAWD駆動との間で切り替える構成、かつ、前記バッテリが使用できなくなった場合に前記駆動方式をFF駆動に切り替える構成であって、前記電動車両が坂道で停車していると判定した場合に、前記駆動方式をAWD駆動に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの回転数を上昇させる際、前記駆動方式のFF駆動からAWD駆動への切り替えに要する時間をかけて上昇させるように制御することを特徴とする請求項3に記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
発電用モータをエンジンで駆動させて発電した電力をバッテリに充電し、前記エンジンの駆動力と、必要に応じて前記バッテリに蓄積された電力で作動させた駆動用モータにより、車輪を回転させて走行する電動車両の制御方法において、
前記バッテリが使用できなくなった場合に、前記電動車両が坂道で停車しているか否かを判定し、
前記電動車両が坂道で停止していると判定した場合に、前記発電用モータで発電した電力で前記バッテリを介さずに前記駆動用モータを直接作動させるように前記駆動用モータの作動方法を変更し、
前記電動車両を登坂方向に発進させるために必要な電力量を算出し、
前記発電用モータで前記必要な電力量が発電されるように前記エンジンの回転数を上昇させるように制御すること特徴とする電動車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にハイブリッド自動車は、エンジンと、2つのモータと、バッテリ等を備えており、バッテリが故障するなどした際にバッテリレス走行モードに移行する。そして、駆動輪に直結している側の一方のモータの回転数等を用いて、車両のずり下がりが生じているか否かを判定する。
そして、バッテリレス走行モードで車両のずり下がりが生じていると判定した場合、エンジンの燃料噴射を停止させる。そして、上記の一方のモータの回生駆動により同モータからシフトポジションに応じた方向のトルクが出力されるように同モータを駆動制御する。
【0003】
また、他方のモータについては、同モータの回生駆動により生じる電力が他方のモータからトルクが出力されずに熱として消費されるように当該他方のモータを駆動制御する。
このように構成することで、一方のモータからシフトポジションに応じた方向(車両のずり下がりを抑制する方向)のトルクを出力することができるため、車両のずり下がりの速度が大きくなるのを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-79790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に記載された車両では、バッテリが故障するなどしていわゆるバッテリレス走行状態になった際に、例えば坂道で停車状態から車両がずり下がる際の速度が大きくなることを抑制することができる。
しかしながら、このような制御のしかたでは、電動車両がバッテリレス走行状態になっても坂道を上るように発進させることができない。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、バッテリレス走行状態になった電動車両を坂道での停車状態から登坂方向に発進させるように制御することが可能な電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の問題を解決するために、本発明の一実施の形態は、
発電用モータをエンジンで駆動させて発電した電力をバッテリに蓄え、前記エンジンの駆動力と、必要に応じて前記バッテリから出力された電力で作動させた駆動用モータにより、車輪を回転させて走行する電動車両の制御装置において、
前記電動車両が、前記バッテリが使用できなくなった状態、かつ、坂道で停車していると判定した場合に、前記バッテリを介さずに、前記発電用モータで発電した電力で前記駆動用モータを直接作動させるように前記駆動用モータの作動方法を変更するとともに、前記電動車両を登坂方向に発進させるために必要な電力量を算出し、前記発電用モータで前記必要な電力量が発電されるように前記エンジンの回転数を上昇させるように制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の実施の形態は、
発電用モータをエンジンで駆動させて発電した電力をバッテリに充電し、前記エンジンの駆動力と、必要に応じて前記バッテリに蓄積された電力で作動させた駆動用モータにより、車輪を回転させて走行する電動車両の制御方法において、
前記バッテリが使用できなくなった場合に、前記電動車両が坂道で停車しているか否かを判定し、
前記電動車両が坂道で停止していると判定した場合に、前記発電用モータで発電した電力で前記バッテリを介さずに前記駆動用モータを直接作動させるように前記駆動用モータの作動方法を変更し、
前記電動車両を登坂方向に発進させるために必要な電力量を算出し、
前記発電用モータで前記必要な電力量が発電されるように前記エンジンの回転数を上昇させるように制御すること特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリレス走行状態になった電動車両を坂道での停車状態から登坂方向に発進させるように制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電動車両の制御装置が搭載された電動車両の構成例を示す図である。
図2】制御装置における制御のしかたを表すフローチャートである。
図3】電子制御カップリング機構がOFFからONの状態になるまでに時間がかかることを説明する図である。
図4】制御装置がエンジンの回転数を電子制御カップリング機構のOFFからONへの移行度合いに応じて上昇させることを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動車両の制御装置及び電動車両の制御方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
[電動車両の構成]
以下、本実施形態に係る電動車両の構成について説明する。
電動車両は、発電用モータをエンジンで駆動させて発電した電力をバッテリに蓄え、エンジンの動力と、必要に応じて前記バッテリから出力された電力で作動させた駆動用モータの動力により、車輪を回転させて走行するようになっている。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電動車両の制御装置が搭載された電動車両の構成例を示す図である。
なお、図1において、実線は動力的なつながりを表し、矢印は電力の送信を表し、破線の矢印は制御系統を表している。また、後述する制御装置20と車輪速センサ21や勾配検知センサ22、運転操作部23との間の矢印は、車輪速センサ21や勾配検知センサ22、運転操作部23から制御装置20への信号の送信を表している。
【0014】
電動車両1では、動力分割機構3はエンジン2の動力の一部を分割して減速機10に伝達する。
また、動力分割機構3は、分割した残りの動力を発電用モータ4に伝達して発電用モータ4を駆動する。駆動された発電用モータ4は、発電した電力を発電用モータのインバータ5に出力し、インバータ5は、電力を直流に変換して昇圧コンバータ6に出力する。昇圧コンバータ6は電力を適切な電圧に調整して、高電圧バッテリ7に蓄えさせる。
【0015】
一方、昇圧コンバータ6は、必要に応じて、すなわち図示しない電子制御装置(Electric Control Unit。以下、ECUという。)の指示に従って高電圧バッテリ7から出力された電力を昇圧して駆動用モータ用のインバータ8に出力する。インバータ8は、電力を交流に変換して駆動用モータ9に出力して駆動用モータ9を作動させる。
そして、駆動用モータ9は、発生させた動力を減速機10に伝達する。
【0016】
減速機10は、上記のようにして動力分割機構3から伝達されてきたエンジン2の動力と駆動用モータ9の動力を、差動装置11を介して前輪12に伝達する。
本実施形態に係る電動車両1は、このようにして、エンジン2の動力と、必要に応じてバッテリ(高電圧バッテリ7)から出力された電力で作動させた駆動用モータ9の動力により、車輪(前輪12)を回転させて走行するようになっている。
【0017】
また、本実施形態に係る電動車両1では、電子制御カップリング13を作動させることで、減速機10から差動装置11を介して伝達された動力を、差動装置14を介して後輪15にも伝達することができるようになっている。
すなわち、電子制御カップリング13を作動させなければ、電動車両1の駆動方式は、前輪12のみで駆動するFF駆動になる。
【0018】
また、電子制御カップリング13を作動させれば、電動車両1の駆動方式は、前輪12と後輪15の両方で駆動するAWD駆動になる。
このように、本実施形態では、電動車両1は、電子制御カップリング13を作動させるか否かで車両の駆動方式をFF駆動とAWD駆動との間で切り替えることができるようになっている。
【0019】
[電動車両の制御装置について]
電動車両の制御装置20は、例えばECUとして構成することができる。
その際、電動車両の制御装置20を、単独のECUとして構成することも可能であり、あるいはエンジン用のECU等と一体的に形成してもよい。なお、電動車両の制御装置20を、以下、単に制御装置20という。
【0020】
図1に示すように、制御装置20には、車輪速センサ21や勾配検知センサ22、運転操作部23等が接続されている。
車輪速センサ21は、前輪12及び後輪15の車輪速を計測することができるようになっている。また、勾配検知センサ22は、加速度センサや重力センサ等で構成され、電動車両1が走行又は停車している際の路面の勾配を検知するようになっている。
【0021】
運転操作部23は、図示しないステアリングやシフトレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル等を含み、ドライバの運転操作を受けて、運転操作の信号を制御装置20に出力する。
運転操作の信号には、シフトレバーの操作に基づくシフト位置信号が含まれる。シフト位置には、電動車両1を前進させるドライブ、電動車両1を後退させるリバース、電動車両1の停止を保持させるパーキングが含まれる。
【0022】
本実施形態では、制御装置20は、電子制御カップリング機構13を制御して、電動車両1の駆動方式を、FF駆動とAWD駆動との間で切り替えることができるようになっている。
なお、電子制御カップリング機構13は、通常の状態では、図示しない電子制御カップリング機構用のECUで動作が制御される。
【0023】
また、本実施形態では、制御装置20は、昇圧コンバータ6と接続されている。そして、昇圧コンバータ6は、バッテリ7が使用できなくなった場合には、バッテリ7が使用できなくなったことを制御装置20に通知する。
そして、制御装置20は、電動車両1のバッテリ7が使用できなくなった場合に制御を開始するようになっている。
【0024】
また、制御装置20は、電動車両1のバッテリ7が使用できなくなった場合に昇圧コンバータ6を制御するようになっている。
なお、昇圧コンバータ6は、通常の状態では、図示しない昇圧コンバータ用のECUで動作が制御される。
【0025】
また、制御装置20は、エンジン2用のECU30に接続されている。
そして、制御装置20は、ECU30にエンジン2の回転数を上昇させるように指示することで、エンジン2の回転数を上昇させるように制御することができるようになっている。
【0026】
[電動車両の制御装置における制御のしかたについて]
次に、本実施形態に係る制御装置20における制御のしかたについて説明する。
【0027】
[走行中にバッテリが使用できなくなった場合]
以下、まず、電動車両1が走行中にバッテリ7が使用できなくなった場合の制御装置20における制御のしかたの一例について説明する。
【0028】
制御装置20は、上記のように、昇圧コンバータ6からバッテリ使用不能を表す通知を受けると制御を開始する。
そして、制御装置20は、昇圧コンバータ6に、発電用モータ4から出力された電力を、高電圧バッテリ7には送らずに、インバータ8を介して駆動用モータ9に出力させる。
【0029】
そして、駆動用モータ9は、発生させた動力を、減速機10を介して前輪12等に伝達させる。このように、制御装置20は、電動車両1が走行中にバッテリ7が使用できなくなった場合、バッテリ7を介さずに、発電用モータ4で発電した電力で駆動用モータ9を直接作動させるように駆動用モータ9の作動方法を変更するようになっている。
なお、説明を簡単にするために、以下、「バッテリ7を介さずに、発電用モータ4で発電した電力で駆動用モータ9を直接作動させる」ことを「発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させる」という。
【0030】
また、本実施形態では、制御装置20は、バッテリ7が使用できなくなった場合に、電動車両1の駆動方式をFF駆動に切り替えるように構成されている。
すなわち、現在の電動車両1の駆動方式がAWD駆動であれば、制御装置20は、電子制御カップリング機構13を制御して、電動車両1の駆動方式を、AWD駆動からFF駆動に切り替える。また、現在の電動車両1の駆動方式がFF駆動であれば、FF駆動のままとするとするようになっている。
【0031】
このように、本実施形態で、バッテリ7が使用できなくなった場合に電動車両1の駆動方式をFF駆動に切り替える理由は以下のとおりである。
すなわち、上記のように発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させると、エンジン2の動力が安定しない場合には、発電用モータ4で発電した電力がエンジン2の駆動に同期して不安定になる場合がある。
【0032】
そのため、駆動用モータ9で発生させる動力が不安定になる場合があり、その場合、電子制御カップリング機構13の動作が不安定になる可能性がある。
そのような場合には、電子制御カップリング機構13を作動させない方が良い、すなわち車両の駆動方式をAWD駆動にはせずにFF駆動にする方が車両の動作が安定する可能性が高くなるためである。
【0033】
[坂道で停車した状態でバッテリが使用できなくなっている場合]
一方、電動車両1が坂道で停車している状態でバッテリ7が使用できなくなっている場合、坂道で停車中の電動車両1を登坂方向に発進させるためには、FF駆動ではパワーが足りない場合がある。
そのため、本実施形態では、制御装置20は、電動車両が坂道で停車していると判定した場合には、車両の駆動方式をAWD駆動に切り替えるようになっている。
【0034】
なお、本発明において、電動車両1を登坂方向に発進させるという場合、電動車両1を登坂方向に前進させて発進させる場合だけでなく、電動車両1が登坂方向にバックさせる場合も含む。すなわち、坂道を上る方向に電動車両1をバックさせる場合も含む。
【0035】
そして、制御装置20は、上記のように、電動車両1が、バッテリ7が使用できなくなった状態で坂道で停車していると判定した場合に、上記のように発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させるように駆動用モータ9の作動方法を変更する。
そして、制御装置20は、それとともに、電動車両1を登坂方向に発進させるために必要な電力量を算出し、発電用モータ4で、算出した必要な電力量が発電されるように、エンジン2の回転数を上昇させるように制御するようになっている。
【0036】
以下、図2に示すフローチャートに基づいて制御装置20における制御のしかたを具体的に説明する。
また、本実施形態に係る電動車両1の制御方法についてもあわせて説明する。
【0037】
制御装置20は、バッテリ7が使用できなくなった場合に、電動車両1が停車しているか否かを判定する。
すなわち、制御装置20は、昇圧コンバータ6からバッテリ使用不能を表す通知を受けると(ステップS1;YES)、電動車両1が停車中か否かを判定する(ステップS2)。
【0038】
本実施形態では、制御装置20は、電動車両1が停車しているか否かの判定を、車輪速センサ21から送信されてくる前輪12及び後輪15の車輪速に基づいて行うようになっている。
そして、制御装置20は、前輪12及び後輪15の車輪速がいずれも0である場合に、電動車両1が停車していると判定する。
【0039】
制御装置20は、電動車両1が停車中であると判定すると(ステップS2;YES)、続いて、電動車両1が停車しているのが坂道か否かを判定する(ステップS3)。
本実施形態では、制御装置20は、電動車両1が停車しているのが坂道であるか否かの判定は、勾配検知センサ22から送信されてくる勾配θの信号に基づいて行うようになっている。そして、勾配θの絶対値が所定の閾値θth以上である場合に、制御装置20は、電動車両1が停車しているのが坂道であると判定する。
【0040】
制御装置20は、電動車両1が停車しているのが坂道であると判定すると(ステップS3;YES)、運転操作部23から送信されてくる運転操作の信号に基づいて、ドライバが電動車両1を前進、後退のいずれをさせようとしているかを判断する。
そして、制御装置20は、勾配θに基づいて、上り坂で前進させようとしている場合又は下り坂で後退させようとしている場合に、ドライバが電動車両1を登坂方向に発進させようとしていると判定する(ステップS4;YES)。
【0041】
なお、上り坂とは、前輪12側が後輪15側より高い状態で電動車両1が停止している場合の坂道の状態をいい、下り坂とは、前輪12側が後輪15側より低い状態で電動車両1が停止している場合の坂道の状態をいう。
また、制御装置20は、ドライバが坂道を下る方向に電動車両1を発進させようとしている場合は(ステップS4;NO)、以下の制御を行わない。この場合は、エンジン2の回転数を上昇させる制御を行わなくても重力で自然に電動車両1が坂道を下る方向に発進するためである。
【0042】
制御装置20は、ドライバが電動車両1を登坂方向に発進させようとしていると判定すると(ステップS4;YES)、前述したように、発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させるように駆動用モータ9の作動方法を変更する(ステップS5)。
すなわち、制御装置20は、発電用モータ4で発電した電力でバッテリ7を介さずに駆動用モータ9を直接作動させるように駆動用モータ9の作動方法を変更する。
【0043】
制御装置20は、それとともに、電動車両1を登坂方向に発進させるために必要な電力量Pを算出する(ステップS6)。
本実施形態では、制御装置20は、上記の電力量P[W]を、登坂抵抗R[N]と、電動車両1が発進する際の目標速度Vt[m/s]と、の積として算出する。
【0044】
ここで、登坂抵抗Rは、車両重量W[kg]と、重力加速度g[m/s]と、勾配検知センサ22から送信されてくる勾配θ[deg](正確には勾配θの絶対値)に基づいて、式(1)に従って算出される。
R=W×g×sinθ …(1)
【0045】
また、上記の電力量Pは、
P=R×Vt …(2)
で算出される。
目標速度Vtは、例えば時速5km(1.4[m/s])や時速10km(2.8[m/s])等の適宜の速度に設定される。
【0046】
続いて、本実施形態では、前述したように、制御装置20は、電動車両1の駆動方式をAWD駆動に切り替える(ステップS7)。
その場合、前述したように、現在の電動車両1の現在の駆動方式がFF駆動であればAWD駆動に切り替える。また、現在の電動車両1の駆動方式がAWD駆動であればAWD駆動のままとする。
【0047】
また、制御装置20は、それと同時に、発電用モータ4で、上記のように算出した電力量Pが発電されるように、エンジン2用のECU30に指示して、エンジン2の回転数[rpm]を上昇させるように制御する(ステップS8)。
その際、前述したように、発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させる状態では、電子制御カップリング機構13の動作が不安定になる可能性がある。
【0048】
そのため、本実施形態では、制御装置20は、エンジン2の回転数を上昇させる際、電動車両1の駆動方式のFF駆動からAWD駆動への切り替えに要する時間をかけて、回転数を上昇させるように制御するようになっている。
具体的には、電動車両1の駆動方式をFF駆動からAWD駆動に切り替える際、電子制御カップリング機構13を作動させて、減速機10から差動装置11を介して伝達された動力を後輪15に伝達する。
【0049】
その際、図3に示すように、電子制御カップリング機構13で図示しないシリンダ等のアクチュエータがOFFの状態から動作を開始してから後輪15に動力が伝達される状態すなわちONの状態になるまでに時間Tがかかる。
このような場合に、エンジン2の回転数を急激に上昇させると、上記のように発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させた場合に不安定になる電子制御カップリング機構13の動作が、より不安定になるおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態では、制御装置20は、エンジン2の回転数Nを、図3に示した電子制御カップリング機構13のOFFからONへの移行度合いに応じて上昇させるようになっている。すなわち、制御装置20は、エンジン2の回転数を上昇させる際、図4に示すように、電動車両1の駆動方式のFF駆動からAWD駆動への切り替えに要する時間Tをかけて、回転数を上昇させるように制御する。
このように構成すれば、エンジン2の回転数を急激に上昇させて電子制御カップリング機構13の動作が不安定になることを抑制することが可能となる。
【0051】
続いて、制御装置20は、車輪速センサ21から送信されてくる前輪12及び後輪15の車輪速に基づいて電動車両1の速度Vを算出し、電動車両1の速度Vが目標速度Vtに達したか否かを判定する(ステップS9)。
そして、制御装置20は、電動車両1の速度Vが目標速度Vtに達していなければ(ステップS9;NO)、図4に一点鎖線で示すように、エンジン2の回転数[rpm]をさらに上昇させる(ステップS8)。
【0052】
また、本実施形態では、制御装置20は、電動車両1の速度Vが目標速度Vtに達すると(ステップS9;YES)、まだバッテリ7が使用できない状態であるため、ステップS2の処理に戻る。
なお、このようにして電動車両1が坂道で発進した後、路面が坂道でなくなり平坦になった場合に、[走行中にバッテリが使用できなくなった場合]で説明したように、電動車両1の駆動方式のAWD駆動からFF駆動に切り替えるように構成することも可能である。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る電動車両1の制御装置20及び電動車両1の制御方法によれば、電動車両1が、バッテリ7が使用できなくなった状態で坂道で停車している場合に、発電用モータ4で駆動用モータ9を直接作動させる。
そして、電動車両1を登坂方向に発進させるために必要な電力量Pを算出し、発電用モータ4でこの電力量Pが発電されるようにエンジン2の回転数を上昇させるように制御する。
【0054】
このように構成すれば、バッテリレス走行状態の電動車両1が坂道で停車中に、電動車両1を登坂方向に前進させて発進させ又は登坂方向にバックさせる場合に、エンジン2の回転数を上昇させて、電動車両1を登坂方向に発進させることが可能となる。
そのため、バッテリレス走行状態になった電動車両1を坂道での停車状態から登坂方向に発進させるように制御することが可能となる。
【0055】
なお、本発明が上記の実施形態や変形例等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 電動車両
2 エンジン
4 発電用モータ
7 バッテリ
9 駆動用モータ
12 前輪(車輪)
15 後輪(車輪)
20 制御装置(電動車両の制御装置)
N エンジンの回転数
P 電力量(電動車両を登坂方向に発進させるために必要な電力量)
R 登坂抵抗
T 時間
Vt 目標速度
図1
図2
図3
図4