(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177374
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】架空線地図作成装置及び運転支援システム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/60 20060101AFI20231207BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20231207BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20231207BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20231207BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20231207BHJP
G01S 19/43 20100101ALN20231207BHJP
【FI】
G01S13/60 210
B66C13/00 D
G01C15/00 102Z
G09B29/00 Z
G09B29/10 A
G01S19/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089989
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】花田 義博
【テーマコード(参考)】
2C032
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
2C032HA02
2C032HB05
2C032HC09
2C032HC17
2C032HD01
2C032HD16
2C032HD26
5J062AA01
5J062BB08
5J062CC07
5J062FF01
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC12
5J070AE20
5J070AF06
5J070AK14
(57)【要約】
【課題】好適に架空線の地図データを作成する。
【解決手段】飛行体40は、架空線PLを検出するミリ波レーダーである距離センサ425と、制御部48とを備えている。制御部48は、ミリ波レーダーにより検出された架空線PLの位置情報を記録した地図データを作成する。すなわち、カメラでは解像度の問題で細い架空線PLを検出しにくい場合があるところ、ミリ波レーダーの適用により、架空線PL内の金属がミリ波を強く反射する性質を利用して、好適に架空線PLを検出することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線を検出するミリ波レーダーと、
前記ミリ波レーダーにより検出された架空線の位置情報を記録した地図を作成する地図作成手段と、
を備える架空線地図作成装置。
【請求項2】
前記ミリ波レーダーのアンテナは、水平方向よりも鉛直方向の分解能が高く、かつ、鉛直方向よりも水平方向のビーム照射角が小さい、
請求項1に記載の架空線地図作成装置。
【請求項3】
前記ミリ波レーダーが無人航空機に搭載されている、
請求項1に記載の架空線地図作成装置。
【請求項4】
前記無人航空機の制御手段は、
前記ミリ波レーダーにより架空線を検出した場合に、
前記架空線と所定の相対位置まで前記無人航空機の機体を移動させた後、
前記ミリ波レーダーにより架空線を検出しつつ、当該架空線に沿って機体を移動させる、
請求項3に記載の架空線地図作成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記架空線が弛みを有する場合に、当該弛んだ前記架空線に沿って前記無人航空機の機体を移動させる、
請求項4に記載の架空線地図作成装置。
【請求項6】
前記地図作成手段は、予め地形情報を有する地図情報上に、前記架空線の位置情報を記録する、
請求項1に記載の架空線地図作成装置。
【請求項7】
架空線を検出するミリ波レーダーが搭載された無人航空機と、
前記無人航空機と通信可能に構成された建設機械と、
を備える運転支援システムであって、
前記建設機械の制御手段は、前記ミリ波レーダーにより検出された架空線の位置情報を記録した地図を作成する、
運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線地図作成装置及び運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、ドローン(無人航空機)に搭載したカメラで地上の対象物や架空線(送電線)の画像を取得し、この画像に基づいて当該対象物や架空線の位置情報(座標)を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラで撮影した画像からでは細い架空線を検出しにくい場合がある。つまり、架空線からの距離によっては、架空線のサイズの解像度が得られない場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、好適に架空線の地図データを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る架空線地図作成装置は、
架空線を検出するミリ波レーダーと、
前記ミリ波レーダーにより検出された架空線の位置情報を記録した地図を作成する地図作成手段と、
を備える。
【0007】
本発明に係る運転支援システムは、
架空線を検出するミリ波レーダーが搭載された無人航空機と、
前記無人航空機と通信可能に構成された建設機械と、
を備える運転支援システムであって、
前記建設機械の制御手段は、前記ミリ波レーダーにより検出された架空線の位置情報を記録した地図を作成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適に架空線の地図データを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る運転支援システムの概念図である。
【
図2】実施形態に係る運転支援システムの制御構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)距離センサの分解能を説明するための図であり、(b)距離センサの送信アンテナ及び受信アンテナの構成例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るマップ作成処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係るマップ作成処理を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係るマップ作成処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[運転支援システムの全体構成]
図1は、本実施形態に係る運転支援システム100の概念図であり、
図2は、運転支援システム100の概略の制御構成を示すブロック図である。
図1に示すように、運転支援システム100は、架空線PL等を含むクレーン20の周囲の情報を収集してクレーン20の運転を支援するものであり、クレーン20と、飛行体40と、情報端末60とを含む。
【0012】
[クレーンの構成]
クレーン20は、いわゆる移動式のクローラクレーンである。具体的に、クレーン20は、自走可能なクローラ式の下部走行体22と、下部走行体22上に旋回可能に搭載された上部旋回体23とを含む。
なお、以下では、クレーン20の搭乗者(オペレータ)から見た前後左右方向をクレーン20の前後左右方向として説明する。
【0013】
上部旋回体23の前側には、ブーム24が起伏可能に取り付けられている。上部旋回体23の後部には、ブーム24及び吊荷との重量バランスをとるカウンタウエイト25が取付けられている。
上部旋回体23の右側前部には、オペレータが着座してクレーン20の操縦を行うキャビン26が配置されている。
【0014】
ブーム24の起伏動作は、図示しない起伏ウィンチによるワイヤロープ(起伏ロープ)241の巻き取り又は巻き出しにより行われる。
ブーム24の先端(上端)には巻上ロープ242の一端がフック243に接続されている。巻上ロープ242の他端は上部旋回体23上の図示しない巻上ウィンチに巻回されており、巻上ウィンチの駆動によってフック243が昇降する。
【0015】
図2に示すように、さらに、クレーン20は、駆動部31、操作部32、表示部33、通信部34、記憶部37、制御部38を備える。
【0016】
駆動部31は、クレーン20の各部を動作させる駆動源であり、上述した起伏ウィンチや巻上ウィンチのほか、各種モータやアクチュエータ等を含む。
操作部32は、オペレータが各種操作を行う操作手段である。操作部32は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部38に出力する。
【0017】
表示部33は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部38から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部33は、操作部32の一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。
通信部34は、飛行体40及び情報端末60等との間で、直接(又は通信ネットワーク等を介して間接的)に各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0018】
記憶部37は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部38の作業領域としても機能する。
制御部38は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、クレーン20各部の動作を制御する。具体的に、制御部38は、オペレータの操作入力等に基づいて駆動部31を動作させたり、記憶部37に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0019】
[飛行体の構成]
飛行体40は、複数のロータを有し、各ロータの駆動源となるモータの出力を制御することにより飛行し、昇降動作、前後左右の移動、正逆の旋回等を自在に行うことが可能ないわゆるドローンと呼ばれる無人機(無人航空機)である。
飛行体40は、クレーン20の周囲を飛行し、架空線PLや建造物の位置情報等を収集する。架空線PLとは、例えば送電線のように、電柱や鉄塔等により空中に張り渡された架線をいう。
【0020】
具体的に、飛行体40は、カメラ41、測位センサ421、角速度センサ422、加速度センサ424、距離センサ425、駆動部43、通信部44、記憶部47、制御部48を備えている。本発明に係る架空線地図作成装置は、距離センサ425と制御部48を含む。
【0021】
カメラ41は、飛行体40の機体から所定方向に向けられて支持されており、機体の向きに応じて視線の先の光景を撮像する。カメラ41は、一定のフレームレートで連続的に撮像画像を取得することができる。撮像によって得られた画像信号は、カメラ41に接続された画像処理部により所定形式の撮像画像データに合成・変換されて、記憶部47内に記録される。
なお、カメラ41は、可視光線の画像を取得するものに限らず、赤外線を撮像する赤外線カメラを使用しても良い。赤外線カメラを使用した場合、位相差法等により、距離画像データを得ることが可能となる。また、カメラ41は単眼カメラに限定されず、ステレオカメラを使用しても良い。この場合も、距離画像データを得ることが可能となる。
【0022】
測位センサ421は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)受信機であり、飛行体40の現在位置(高度含む)を計測する。本実施形態の測位センサ421には、例えば、GPS(Global Positioning System)等の衛星を利用した測位と、地上に設置した基準局からの位置情報とを組み合わせた、より高精度な測位が可能なRTK(Real Time Kinematic)が適用されている。
角速度センサ422は、例えば三軸のジャイロ方位角センサであり、飛行体40の進行方向及び機体の傾斜角度を検出する。
加速度センサ424は、飛行体40に定められたX軸、Y軸、Z軸の各方向の加速度を検出する。これら各軸について検出される重力加速度から機体の姿勢を検出することができる。
【0023】
距離センサ425は、飛行体40の機体に所定方向(例えば前方)向きに搭載され、当該所定方向向きの計測領域内の距離情報を取得して、その結果を制御部38に出力する。距離センサ425はミリ波レーダーであり、
図3(a)に示すように、距離Dと鉛直方向Vの角度とに良好な分解能を有し、かつ、水平方向のビーム拡がり角(照射角)αを抑えた二次元方向が検出可能なように、そのアンテナが構成されて飛行体40に搭載される。この場合、鉛直方向Vは飛行体40の上下方向に、水平方向は飛行体40の左右方向にそれぞれ対応する。
距離センサ425の送信アンテナ426及び受信アンテナ427は、例えば
図3(b)に示すように、いずれもプリント基板PCB上に複数のパッチアンテナ426a、427aを配列したアレイアンテナである。複数のパッチアンテナ426a、427aは、水平方向のビーム拡がり角αを抑えられるように、プリント基板PCB上において機体の左右方向に対応する方向(
図3(b)の左右方向)に配列されている。また、受信アンテナ427は、鉛直方向V(機体の上下方向に対応)に良好な分解能を有するように、左右方向に配列された複数のパッチアンテナ427aの組が、機体の上下方向に対応する方向(
図3(b)の上下方向)に複数組配列されている。
なお、距離センサ425のアンテナ(送信アンテナ426及び受信アンテナ427)は、水平方向よりも鉛直方向の分解能が高く、かつ、鉛直方向よりも水平方向のビーム拡がり角αが小さければよい。このようなミリ波レーダーの特性は、例えば車載用等として比較的に汎用されるものとは、鉛直方向と水平方向の関係が逆転している。
また、上述した各種センサ421~425は所望の情報を検出できるものであればよく、そのセンサ種別や検出原理等は上述したものに限定されない。例えば、必要に応じて高度センサや気圧センサ等をさらに含んでもよい。
【0024】
図2に示すように、駆動部43は、飛行体40の移動動作のための推力を出力する構成であり、複数のロータと、各ロータに設けられた複数の回転駆動源であるモータとを有する。当該駆動部43は、機体が目標の移動方向に向かって移動するように、制御部48によって制御される。
通信部44は、クレーン20及び情報端末60等との間で、直接(又は通信ネットワーク等を介して間接的)に各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0025】
記憶部47は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部38の作業領域としても機能する。具体的に、記憶部47には、飛行体40の動作制御プログラムや、クレーン20の作業エリア周辺の地図データ(基本地図データ)が予め記憶されているほか、カメラ41により取得された画像データ、各種センサにより検出された検出データ等が記憶される。
【0026】
制御部48は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、記憶部47に記憶された制御プログラムや、情報端末60から送信された制御指令等に基づいて、飛行体40の各部を統括的に制御する。例えば、制御部48は、情報端末60からの制御指令等に基づいて駆動部43や各種センサを動作させたり、記憶部47に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0027】
[情報端末の構成]
情報端末60は、飛行体40の操作(遠隔操作)や、飛行体40が取得したデータの処理等をするものである。具体的に、情報端末60は、操作部61、表示部62、通信部64、記憶部67、制御部68を備える。
【0028】
操作部61は、操作者が情報端末60を動作させるための各種操作を行う操作手段であり、例えばマウスやキーボード等のポインティングデバイスを含む。
表示部62は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部68から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部62は、操作部61の少なくとも一部を兼ねるタッチパネルであってもよい。
通信部64は、クレーン20及び飛行体40等との間で、直接(又は通信ネットワーク等を介して間接的)に各種情報を送受信可能な通信デバイスである。
【0029】
記憶部67は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等により構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部68の作業領域としても機能する。具体的に、記憶部67には、例えば飛行体40から送信される各種データ等が記憶される。
制御部68は、例えばCPU(Central Processing Unit)等により構成され、情報端末60各部の動作を制御する。具体的に、制御部68は、操作部61の操作内容等に基づいて、記憶部67に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0030】
[マップ作成処理]
続いて、クレーン20周囲の地図データを作成するマップ作成処理について説明する。
図4は、マップ作成処理の流れを示すフローチャートであり、
図5及び
図6は、マップ作成処理を説明するための図である。
【0031】
マップ作成処理は、クレーン20の作業に影響しうる周囲環境の情報を記録した地図データを、当該作業の実施前に予め作成する処理である。周囲環境の情報とは、山や河川等の地形情報のほか、道路や鉄道、建造物等の土地の利用状態に関する情報を含み、本実施形態では、架空線PLの位置情報を含む。また、地図データのエリア範囲は、少なくともクレーン20の作業エリアを含む、クレーン20周囲の所定範囲であればよい。
このマップ作成処理は、例えば情報端末60のユーザの操作に基づいて、情報端末60の制御部68が記憶部67から該当するプログラムを読み出して展開することで実行される。
【0032】
図4に示すように、マップ作成処理が実行されると、情報端末60の制御部68は、飛行体40の飛行を開始させる(ステップS1)。
この場合の飛行経路は、クレーン20の作業エリア全域に亘る架空線PLの検出及び撮影が可能なものであれば特に限定されず、予め設定されたものでなくともよい。
【0033】
次に、飛行体40の制御部48は、カメラ41によりクレーン20の周囲を撮影し、その画像からクレーン20の周囲環境の情報(地形情報や建造物等の位置情報)を取得する(ステップS2)。そして、制御部48は、取得したクレーン20の周囲環境の情報を、記憶部47から読み出した地図データ(基本地図データ)に記録する。
基本地図データは、クレーン20の作業エリア周辺のものであって、例えば予め地形情報を有するものである。ただし、基本地図データが予め有する情報は特に限定されない。また、地図データは、基本地図データをベースとしたものでなくともよく、当該ステップS2で新規に作成してもよい。また、カメラ41により取得した画像に基づく建造物等の検出(抽出)手法は、従来より公知の手法を利用できる。
【0034】
次に、制御部48は、距離センサ425(ミリ波レーダー)によって架空線PLを検出する(ステップS3;
図5)。ここでは、ミリ波レーダーの適用により、架空線PL内の金属(電線に含まれる銅線など)がミリ波を強く反射する性質を利用して、好適に架空線PLを検出することができる。
このとき、制御部48は、飛行体40の回転方向から架空線PLの方位を特定し、距離センサ425によって架空線PLまでの距離Dとその仰俯角θを特定する。飛行体40の各種状態量は、センサ類(測位センサ421、角速度センサ422、加速度センサ424等)から得られる。飛行体40の高度は測位センサ421から得られる。
【0035】
次に、制御部48は、飛行体40を飛行させ、予め設定された所定の距離Da及び仰俯角θaの地点Aまで移動させる(ステップS4;
図6)。地点Aの位置(架空線PLとの相対位置)は、特に限定はされないが、例えば、比較的に架空線PLから近い所定の距離Da、かつ、仰俯角θa=ゼロ(架空線PL(の或る部分)の水平位置)となる位置である。
なお、制御部48は、飛行体40が地点Aに到達した後に、カメラ41によって測定対象物が架空線PLであることを確認してもよい。
【0036】
次に、制御部48は、距離センサ425での計測により、架空線PLとの所定の距離Da及び仰俯角θaを保ちつつ架空線PLに沿って飛行体40を移動させる(ステップS5)。これにより、架空線PLが弛度(弛み)を有する場合であっても、その弛みに沿って飛行体40を飛行させることができる。
そして、制御部48は、飛行体40を移動させながら、距離センサ425で検出した架空線PLの三次元位置(緯度、経度、高度)を取得し、この位置情報を記憶部67から読み出した地図データに記録する。この地図データは、ステップS2においてカメラ41により取得した情報が記録されたものである。
これにより、架空線PLの位置情報を記録した三次元の地図データが作成される。作成された地図データは、例えばクレーン20及び情報端末60に送信される。
【0037】
次に、制御部48は、マップ作成処理を終了させるか否かを判定し(ステップS6)、終了させないと判定した場合には(ステップS6;No)、上述のステップS2へ処理を移行する。これにより、ステップS2~S5の処理が繰り返され、地図データの作成・更新が続行される。
そして、例えばクレーン20の作業エリア全域の地図データを作成し終える等により、マップ作成処理を終了させると判定した場合には(ステップS6;Yes)、制御部48は、マップ作成処理を終了させ、その旨を伝える信号を情報端末60に送信する。
【0038】
こうして、架空線PLの位置情報を含む地図データが作成される。作成された地図データは、クレーン20において、例えばブーム24等と架空線PLとの接触を回避する(又は接触のおそれがある場合に警告する)ような動作制御に用いられてもよいし、表示部33に表示されてオペレータの操作を援けてもよい。あるいは、情報端末60において、表示部62に表示され、例えば作業の関係者等のユーザに架空線PLの位置情報等を提示してもよい。
【0039】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、ミリ波レーダーである距離センサ425により架空線PLが検出され、この架空線PLの位置情報を記録した地図データが作成される。
すなわち、カメラでは解像度の問題で細い架空線PLを検出しにくい場合があるところ、ミリ波レーダーの適用により、架空線PL内の金属(電線に含まれる銅線など)がミリ波を強く反射する性質を利用して、好適に架空線PLを検出することができる。したがって、好適に架空線PLの地図データを作成することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、工事現場等のローカルな架空線PLの地図データを事前に作成しておくことで、クレーン20等の建設機械の空中での安全範囲を把握し、架空線PLと接触しないような動作制御等を行うことができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、距離センサ425のアンテナは、水平方向よりも鉛直方向の分解能が高い。
これにより、水平方向又はこれに準じる方向に張り渡された架空線PLを好適に検出することができる。また、鉛直方向よりも水平方向のビーム拡がり角αが小さいが、これは飛行体40自体の動作(移動等)によって補われるので問題ない。
【0042】
また、本実施形態によれば、距離センサ425により架空線PLを検出した場合に、架空線PLと所定の相対位置まで飛行体40の機体を移動させた後、距離センサ425により架空線PLを検出しつつ当該架空線に沿って機体を移動させる。
これにより、一度架空線PLを検出できれば、好適にその地図データを作成することができる。また、架空線PLが弛みを有する場合であっても、当該弛んだ架空線PLに沿って飛行体40の機体を好適に移動させることができる。
【0043】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態及びその変形例に限られない。
例えば、上記実施形態では、架空線PLの位置情報を有する地図データをクレーン20の操作に利用することとしたが、当該地図データの用途は特に限定されない。例えば、この地図データを利用して飛行体40の飛行経路を生成し、飛行体40を自律飛行させるナビゲーションシステムを構成してもよい。これにより、架空線PLの位置を考慮したうえで目的地までの最短の経路を飛行させることができる。この場合の経路生成(経路変更)は、実際(本番)の飛行前でも飛行中でもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、カメラ41により取得したクレーン20の周囲環境の情報と、距離センサ425により取得した架空線PLの位置情報とを、地図データに記録することとした。しかし、架空線PLの位置情報以外の情報は、カメラ41以外のセンサで取得してもよいし、飛行体40以外(例えばクレーン20)に設けられたセンサで取得してもよいし、予め基本地図データに含まれていてもよい。また、地図データには、架空線PLの位置情報以外の情報が無くてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、飛行体40の制御部48が主たる処理を実行することとしたが、クレーン20の制御部38又は情報端末60の制御部68が、飛行体40からカメラ41の画像や距離センサ425の検出結果を受信して、これに基づいて地図データを作成することとしてもよい。また、ミリ波レーダーは飛行体40に搭載されていなくともよい。つまり、本発明に係る架空線地図作成装置は、ミリ波レーダーと、当該ミリ波レーダーが検出した架空線の位置情報を記録した地図を作成する手段と、を備えるものであればよい。
【0046】
また、上記実施形態では、クレーン20としていわゆるクローラクレーンを例示したが、クレーンの種類は特に限定されず、クローラクレーンやホイールクレーン、トラッククレーン等の移動式クレーンに加えて、港湾クレーン、天井クレーン、門型クレーン、アンローダ、固定式クレーン等のあらゆるクレーンを含んでよい。
さらに言えば、本発明に係る建設機械はクレーンに限定されず、例えばショベルなど、作業(動作)中に架空線との接触の可能性がある建設機械を広く含む。
【0047】
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
20 クレーン(建設機械)
38 制御部
40 飛行体(無人航空機)
41 カメラ
47 記憶部
48 制御部
60 情報端末
68 制御部
100 運転支援システム
425 距離センサ(ミリ波レーダー)
PL 架空線
α 水平方向のビーム拡がり角(ビーム照射角)