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特開2023-17738ベルトリトラクター及びこれを用いたバッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017738
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】ベルトリトラクター及びこれを用いたバッグ
(51)【国際特許分類】
   A45C 13/30 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
A45C13/30 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117603
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2021121152
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521450001
【氏名又は名称】株式会社エジソンラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100148127
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 耕太
(72)【発明者】
【氏名】小川 耕太
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA05
3B045GA01
3B045GA03
3B045GB01
3B045GB04
3B045GC01
3B045GD03
3B045LA10
3B045LB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ストラップベルトを収納することのできる、バッグ及びそのストラップベルトのリトラクターを実現する。
【解決手段】ストラップベルトを挿通可能な外側部材2と、外側部材2の内部に回転可能に設けられた芯部3,4と、芯部3,4におけるベルト巻取部33に対し軸方向にずれた位置において芯部3,4と外側部材2との間に設けられた弾性部材5とを備え、芯部3,4はストラップベルトが挿通される挿通部43aを有し、挿通部43aがベルトを把持した状態で芯部3,4が弾性部材5の付勢にしたがって外側部材2に対して回動することにより、ストラップベルトが芯部3,4の周囲に巻き付いて芯部3,4と外側部材2との間に収納される、ベルトリトラクター1を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材と、前記外側部材の内部に回転可能に設けられた芯部と、前記芯部と前記外側部材との間に設けられた弾性部材とを備え、前記芯部はストラップベルトが挿通される挿通部を有し、前記弾性部材は前記芯部における前記挿通部に対し軸方向にずれた位置に設けられ、前記挿通部がストラップベルトを把持した状態で前記芯部が前記弾性部材の付勢にしたがって前記外側部材に対して回動することにより、ストラップベルトが前記芯部の周囲に巻き付いて前記芯部と前記外側部材との間に収納される、ベルトリトラクター。
【請求項2】
前記弾性部材は前記芯部と同一の回転軸を中心に半径方向に重なるように巻回されたゼンマイである、請求項1に記載のベルトリトラクター。
【請求項3】
前記外側部材または前記芯部は、前記回転軸から一定の距離においてゼンマイの外周外側に設けられた壁部を有し、この壁部により、外部から前記ゼンマイに触れることを防止する、請求項1または2に記載のベルトリトラクター。
【請求項4】
前記芯部が、筒部材と、この筒部材の内部に設けられ前記挿通部を有するピン部材とを含み、前記ピン部材及び前記筒部材は、互いに係合可能な係合部を有するとともに、前記係合部における係合が解除された状態で互いに回動可能に設けられた、請求項1から3のいずれかに記載のベルトリトラクター。
【請求項5】
前記係合部は、前記ピン部材に設けられた係合凸部と、前記筒部材に設けられた係合凹部とからなる、請求項4に記載のベルトリトラクター。
【請求項6】
前記ゼンマイの内側端は前記外側部材に係止され、前記ゼンマイの外側端は前記筒部材に係止された、請求項4または5に記載のベルトリトラクター。
【請求項7】
前記ゼンマイの内側端は前記ピン部材に係止され、前記ゼンマイの外側端は前記外側部材に係止された、請求項4または5に記載のベルトリトラクター。
【請求項8】
前記外側部材に前記筒部材が組み込まれた状態において、前記外側部材と前記筒部材との間には軸方向において間隙があり、前記外側部材は前記筒部材を前記係合部が係合する方向へ付勢する押圧部を有する、請求項4から7に記載のベルトリトラクター。
【請求項9】
前記押圧部は、前記外側部材の一部に設けられた切り込みにより設けられ、弾性部と突起部とを有する、請求項8に記載のベルトリトラクター。
【請求項10】
前記ピン部材が前記外側部材に回転可能に係合する、請求項4から9に記載のベルトリトラクター。
【請求項11】
前記芯部と前記外側部材とが互いに係合可能な係合部を有するとともに、この係合部における係合が解除された状態で互いに回動可能であるとともに係合された状態では一体化する、請求項1から10に記載のベルトリトラクター。
【請求項12】
前記芯部と前記外側部材との係合部は、前記外側部材の弾性変形による押圧に伴って係合し、この押圧に抗って係合を解除することにより、前記芯部が前記外側部材に対して回動してストラップベルトを巻き取る、請求項11に記載のベルトリトラクター。
【請求項13】
前記外側部材は弾性素材からなる腕部を有し、この腕部の一端に前記芯部が回転可能に係合し、前記係合部は前記腕部の他端に設けられ、前記腕部の両端の間に押圧を加えることで前記係合部の係合が解除され、前記芯部が回転可能となる、請求項11に記載のベルトリトラクター。
【請求項14】
前記筒部材を前記押圧部の付勢に抗って軸方向へ移動させることで前記係合部の係合を解除するための係合解除機構を備えた、請求項4から10のいずれかに記載のベルトリトラクター。
【請求項15】
前記係合解除機構は、押圧可能なボタン部と、このボタン部に連接され前記筒部材に当接する脚部とを有するボタン部材であり、前記ボタン部を押圧することで前記脚部が前記筒部材を押圧して前記押圧部の付勢に抗って軸方向へ移動させることで前記係合部の係合を解除する、請求項14に記載のベルトリトラクター。
【請求項16】
バックパックストラップを有し、請求項1から15のいずれかに記載のベルトリトラクターが前記バックパックストラップに設けられている、バックパック。
【請求項17】
ショルダーストラップを有し、請求項1から15のいずれかに記載のベルトリトラクターが前記ショルダーストラップに設けられている、ショルダーバッグ。
【請求項18】
前記ショルダーストラップは、長さ方向中央に肩当てパッドを備え、前記肩当てパッドを挟んだ両サイドの長さ方向中央に前記ベルトリトラクターが設けられている、請求項17に記載のショルダーバッグ。
【請求項19】
顎ストラップを有し、請求項1から15のいずれかに記載のベルトリトラクターが前記顎ストラップに設けられている、ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラップベルトを巻き取るリトラクター及びこれを用いたバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッグ等の袋物は、小物を内蔵するための袋部分と、この袋部分を手、肩、腕等で提げるためのストラップベルト部分とを有している。特に、ベルトを一方の肩にかけるショルダーバッグや、ベルトを両肩にかけるバックパックにおいては、体格に合わせてストラップベルトの長さを調整するための、いわゆるコキカンが設けられているものは多い。しかし、バッグを下ろした状態においてはこのベルトが邪魔になり、バッグを電車の網棚や床に置いた際などに、はみ出たベルト部分に予期せず引っかかってしまうトラブルも多い。
【0003】
このようなことを回避するため、特許文献1には、持ち運びに便利なベルトを備え、しかも、当該ベルトをコンパクトに収納することができるレジャー用バッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-043233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のレジャー用バッグの技術は、ショルダーバッグやバックパックといった通常のバッグに適用することは難しい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ストラップベルトを収納することのできる、バッグ及びそのストラップベルトのリトラクターを実現することを目的とする。課題を解決するための手段
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のベルトリトラクターは、ストラップベルトを挿通可能な外側部材と、前記外側部材の内部に回転可能に設けられた芯部と、前記芯部におけるベルト巻取部に対し軸方向にずれた位置において前記芯部と前記外側部材との間に設けられた弾性部材とを備え、前記芯部はストラップベルトが挿通される挿通部を有し、前記挿通部がベルトを把持した状態で前記芯部が前記弾性部材の付勢にしたがって前記外側部材に対して回動することにより、ストラップベルトが前記芯部の周囲に巻き付いて前記芯部と前記外側部材との間に収納される、ベルトリトラクターである。このようなベルトリトラクターによれば、前記挿通部がストラップベルトを把持した状態で前記芯部が前記弾性部材の付勢にしたがって前記外側部材に対して回動することにより、ストラップベルトが前記芯部の周囲に巻き付いて前記芯部と前記外側部材との間に収納され、バッグのストラップベルトをコンパクトに収容することができる。特に前記弾性部材が芯部におけるベルト巻取部に対し軸方向にずれた位置において前記芯部と前記外側部材との間に設けられているから、前記芯部を細く設計することができ、コンパクトにベルトリトラクターを構成することができる。
【0008】
前記弾性部材は前記芯部と同一の回転軸を中心に半径方向に重なるように巻回されたゼンマイであることが好ましい。これにより、回転軸方向への大きさも小さく抑えることができる。
【0009】
前記外側部材または前記芯部は、前記回転軸から一定の距離においてゼンマイの外周外側に設けられた壁部を有し、この壁部により、外部から前記ゼンマイに触れることを防止することが好ましい。これにより、ゼンマイに軸方向から触れてしまうことを防止できる。
【0010】
また、本発明のベルトリトラクターは、前記芯部が、筒部材と、この筒部材の内部に設けられ前記挿通部を有するピン部材とを有し、前記ピン部材及び前記筒部材は、互いに係合可能な係合部を有するとともに、前記係合部における係合が解除された状態で互いに回動可能に設けられる。これにより、前記係合部における係合が解除された状態で前記ピン部材を前記筒部材に対して回動することで前記ピン部材にストラップベルトが巻き付いて前記筒部材との間に収納され、この状態で前記係合部が係合することでストラップベルトを収納状態で固定し、すなわちストラップベルトの長さ調節をすることができる。
【0011】
さらに、前記係合部は、前記芯部に設けられた係合凸部と、前記筒部材に設けられた係合凹部とからなることが望ましい。これにより、前記係合凹部と係合することで前記筒部材と前記ピン部材とが互いに固定される。前記筒部材はさらに前記係合凸部が通過するための切り欠き部を有することで前記係合凸部は前記切り欠き部を通過して前記筒部材に入る。
【0012】
前記ゼンマイの内側端は前記外側部材に係止され、前記ゼンマイの外側端は前記筒部材に係止されることが望ましい。これにより、筒部材が外側部材に対し付勢され、ストラップベルトを筒部材により巻き取ることができる。
【0013】
また、前記ゼンマイの内側端は前記ピン部材に係止され、前記ゼンマイの外側端は前記外側部材に係止されていてもよい。これにより、ストラップベルトの伸展長さの調整を前記ゼンマイの力で行うことができる。
【0014】
前記外側部材に前記筒部材が組み込まれた状態において、前記外側部材と前記筒部材との間には軸方向において前記凸部の寸法以上の間隙があり、かつ、前記外側部材は前記筒部材を前記係合部が係合する方向へ付勢する押圧部を有することが望ましい。これにより、前記押圧部が前記筒部材を付勢して前記係合部の係合を保持し、この付勢に逆らって前記筒部材を動かした場合には係合が解除され、簡単にストラップベルトの長さ調節が可能となる。
【0015】
前記押圧部は、前記外側部材の一部に設けられた切り込みにより設けられ、弾性部と突起部とを有することが望ましい。これにより、あらたな部材を付加することなく押圧部を設けることができる。
【0016】
前記ピン部材が前記外側部材に回転可能に係合することが望ましい。これにより、外側部材からピン部材が抜けることを防ぐことができる。
【0017】
前記筒部材と前記外側部材とが互いに係合可能な係合部を有するとともに、この係合部における係合が解除された状態で互いに回動可能に設けられることが望ましい。これにより、外側部材からピン部材が抜けることを防ぐことができる。
【0018】
前記芯部と前記外側部材とが互いに係合可能な係合部を有するとともに、この係合部における係合が解除された状態で互いに回動可能であるとともに係合された状態では一体化することが望ましい。この係合部により回動を制御することができる。
【0019】
前記芯部と前記外側部材との係合部は、前記外側部材の弾性変形による押圧に伴って係合し、この押圧に抗って係合を解除することにより、前記芯部が前記外側部材に対して回動してストラップベルトを巻き取ることが望ましい。外部から簡単に係合を解除しストラップベルトを巻き取ることができる。
【0020】
前記外側部材は弾性素材からなる腕部を有し、この腕部の一端に前記芯部が回転可能に係合し、前記係合部は前記腕部の他端に設けられ、前記腕部の両端の間に押圧を加えることで前記係合部の係合が解除され、前記芯部が回転可能となることが望ましい。
【0021】
前記筒部材を前記押圧部の付勢に抗って軸方向へ移動させることで前記係合部の係合を解除するための係合解除機構を備えることが望ましい。
【0022】
本発明のバッグは、バックパックストラップを有し、前記ベルトリトラクターが前記バックパックストラップに設けられている。
【0023】
本発明のバッグは、ショルダーストラップを有し、前記ベルトリトラクターが前記ショルダーストラップに設けられている。
【0024】
前記ショルダーストラップは、長さ方向中央に肩当てパッドを備え、前記肩当てパッドを挟んだ両サイドの長さ方向中央に前記ベルトリトラクターが設けられていることが望ましい。これにより、ショルダーストラップを最大限に収納することができる。
【0025】
本発明のヘルメットは、顎ストラップを有し、前記ベルトリトラクターが前記顎ストラップに設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第一実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。
図2図1のベルトリトラクター別の角度から見た分解斜視図である。
図3図1のベルトリトラクターを組み立てた状態を示す(A)A-A断面図、(B)B-B断面図、(C)C-C断面図(D)平面図である。
図4図3のベルトリトラクターをバッグに装着した状態を示す(a)平面図、(b)左側面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)背面図である。
図5】第二実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。
図6図5のベルトリトラクターを組み立てて断面した斜視図である。
図7】第三実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。
図8図5のベルトリトラクターを別の角度から見た分解斜視図である。
図9】第四実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。
図10図9のベルトリトラクターを別の角度から見た分解斜視図である。
図11図9のベルトリトラクターをバッグに装着した状態を示す(a)側面図、(b)上面図、(c)正面図である。
図12】第五実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。
図13】第六実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のベルトリトラクターの実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態のベルトリトラクターの分解斜視図である。図2は、図1のベルトリトラクター別の角度から見た分解斜視図である。図3は、図1のベルトリトラクターを組み立てた状態を示す(A)A-A断面図、(B)B-B断面図、(C)C-C断面図(D)平面図である。
【0028】
図1~3に示すように、第一実施形態のベルトリトラクター1は、外側部材2と、外側部材2の内部に回転可能に設けられた芯部としての筒部材3及びピン部材4と、芯部としての筒部材3及びピン部材4を外側部材2に対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ5とを備え、芯部の一部であるピン部材4はベルトBを挿通する挿通部としてのスリット43aを有し、弾性部材としてのゼンマイ5の付勢にしたがって芯部としての筒部材3及びピン部材4がベルトBを把持した状態で外側部材2に対して回動することにより、ベルトBが芯部の一部である筒部材3の周囲に巻き付いて筒部材3と外側部材2との間の空間S1に収納される。ゼンマイ5は芯部におけるベルト巻取部である柱部33に対し軸方向にずれた位置に格納されている。
【0029】
また、ピン部材4及び筒部材3は、互いに係合可能な係合部としての係合凸部43b及び係合凹部37を有し、係合部における係合が解除された状態でピン部材4が筒部材3の内部で回動可能に設けられている。
【0030】
このような構造により、ピン部材4及び筒部材3が係合した状態で、図3の矢印Dの方向にゼンマイ5の付勢に抗って回動し、図3のBの位置にベルトを挿通し、手を離せば、筒部材3がゼンマイ5の復元力により巻き戻り、ベルトが筒部材3の周囲に巻き付いて巻き取られ、これによりカバンからベルトを収納し、ベルトが垂れ下がらないようにすることができる。
【0031】
さらに、係合凸部43bと係合凹部37との係合が解除された状態でピン部材4を筒部材3に対して回動させることにより、ベルトBがピン部材4に巻きつき、図3の空間S2に収容されることになる。この状態で係合凸部43bと係合凹部37との係合を行うことでピン部材4へのベルトBの巻き付き長が確定される。このようにして、カバンのベルトの伸展長さ調節を行うことができる。
【0032】
このようなベルトリトラクター1をバッグのストラップベルトに装着する態様について説明する。図4に示すように、本発明の実施形態のバッグ6は、本体60と、本体をバックパックとして背負うためのバックパックストラップ61と、本体をショルダーバッグとして肩に提げるためのショルダーストラップ62と、本体を手提げ状に把持するための一対の把手63 と、本体をホイール付きキャリーに取り付けるためのキャリーストラップ64と、本体内に荷物を出し入れするための開口であってジッパーにより開閉される開口部65とを少なくとも備えている。
【0033】
バックパックストラップ61は肩当てパッド61aとストラップベルト61bとが互いに一端において縫い付けられて構成されており、それぞれ他端において本体60に縫い付けられている。ストラップベルト61bの長さ方向中央付近にベルトリトラクター1が装着されている。上述のように設置されたベルトリトラクター1はストラップベルト61bを巻取り収納するから、図4に示すように、背負っていない状態において、ストラップベルト61bが収納され、バックパックストラップ61は本体60に一体となった状態となり、把手63を使用して手提げ状にバッグ6を持ったりショルダーストラップ62を使用してショルダーバッグとして使用した場合にも、バックパックストラップ61が垂れ下がってしまうことがない。また、従来のバックパックストラップと異なり、長さ調整機構をベルトリトラクター1に内蔵しているから、余ったバックパックストラップの端が垂れ下がってしまうこともなく、バックパックとして使用した際には、設定した通りの長さまでバックパックストラップ61が伸びる。当然ながら、ベルトリトラクター1の長さ調整機構は左右同程度に設定することが望ましい。バックパックストラップ6はパッド61a同士の間にチェストストラップ66を有するが、このチェストストラップ66は一端(図において下端)が軸によってパッド61aに軸動可能に接続され、他端は強力な磁石によりもう一方のパッド61aに対しても磁着する。
【0034】
また、ショルダーストラップ62は肩当てパッド62aがショルダーストラップ62の長さ方向中間において一対のストラップベルト62bのそれぞれの一端に縫い付けられて構成されており、一対のストラップベルト62bはそれぞれ他端において本体60に縫い付けられている。一対のストラップベルト62bのそれぞれの長さ方向中央付近にベルトリトラクター1が装着されている。上述のように設置されたベルトリトラクター1はストラップベルト62bを巻取り収納するから、図4に示すように、肩にかけていない状態において、ストラップベルト62bが収納され、ショルダーストラップ62は本体60に一体となった状態となり、把手63を使用して手提げ状にバッグ6を持ったりバックパックストラップ61を使用してバックパックとして使用した場合にも、ショルダーストラップ62が垂れ下がってしまうことがない。また、従来のショルダーストラップと異なり、長さ調整機構をベルトリトラクター1に内蔵しているから、いわゆるコキカンが不要となり、ショルダーストラップを取り外し可能とするための金具も不要となる。コキカンや金具が肩に当たって痛いという状態となることがないことに加え、肩当てパッド62aをショルダーストラップの中央に縫い付けることができるから、従来のショルダーストラップで起こりがちな、肩当てパッドが中央からずれてしまう、裏返ってしまうといった問題を回避できる。バックパックとして使用した際には、設定した通りの長さまでバックパックストラップ61が伸びる。当然ながら、ベルトリトラクター1の長さ調整機構は左右同程度に設定することが望ましい。
【0035】
ここで、ベルトリトラクター1の構成についてより詳細に説明する。図1に示すように、ベルトリトラクター1は、外側部材2と、外側部材2の内部に回転可能に設けられた芯部としての筒部材3及びピン部材4と、芯部としての筒部材3及びピン部材4を外側部材2に対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ5とを備える。ゼンマイ5以外の部品は樹脂製であるが、金属製とすることもできる。
【0036】
外側部材2は、ピン部材4の回転軸に対して垂直に設けられた一対の略ひし形の面である開放面21及び閉鎖面22と、これら開放面21及び閉鎖面22の端部同士の間に垂直な柱状に渡された一対の柱部23と、閉鎖面22の内側面中央に設けられたピン部材4を回転可能に軸受するための軸受部24と、開放面21に設けられた2対のスリット26およびこれらによって線対称に画成される一対の弾性部27並びにこれらの先端に設けられた一対の突起部28とを有し、開放面21の中心には開口29が形成されている。
【0037】
開放面21は上述のように略ひし形をなし、中央に開口29が形成されている。この開口29はピン部材4が挿入され、その頭部41が回転可能に嵌まるための穴であるから、ピン部材4の頭部41より少し大きな内径の円形である。この円の円弧の一部は一対の突起部28により構成される。開放面21の長手方向に設けられた二対のスリット26により橋状に形成された一対の弾性部27は樹脂の素材に由来する弾性を有し、それらの先端に突起部28が設けられている。この弾性部27及び突起部28により押圧部を構成する。突起部28は筒部材3を閉鎖面22方向へ押圧するための部材であり、閉鎖面22方向へ突出している。また、図2に示すように、突起部28の側面はテーパー面28aとなっており、筒部材3を外側部材2内に側方から組み込む際に筒部材3によりこのテーパー面28aが押され、弾性部27の弾性により突起部28が外側に押されることで、筒部材3が外側部材2内にスムーズに入ることができる。さらに、突起部28は、開口29の周縁に設けられていることにより、筒部材3と外側部材2との間の摩擦面をなるべく半径方向内側に設けかつ小さい面積とし、筒部材3の回転性を高めるという効果を奏する。また、突起部28は筒部材3が外側部材2内に組み込まれた状態で筒部材3を閉鎖面22方向へ付勢する。逆に筒部材3が開放面21方向へ押圧された場合には突起部28は外側へ逃げるが、その際に筒部材3の開放面21方向への動きを制限するための部品として、開放面21の内部に、一対のブロック部21aが設けられている。このブロック部21aは、筒部材3を外側部材2内に組み込む際に必要な間隙を確保しつつ筒部材3の開放面21方向への動きを制限するための部分であるから、筒部材3を外側部材2内に組み込む側と逆の側におけるスリット26の脇に突出している。なお、このブロック部21aがなくその分開放面21を内側に設けても筒部材3を外側部材2内に組み込むことが可能な程度に素材が柔軟である場合には、ブロック部21aを備えなくてもよい。
【0038】
一対の柱部23は開放面21と閉鎖面22とに対し垂直に、それぞれの頂点をつなぐように設けられ、それぞれへの接続部の内側にそれぞれ一対の制限ブロック23a、23bを備える。これらの制限ブロック23a、23bは、ベルトBが巻き取られる際に開放面21側や閉鎖面22側に寄ってしまうことを防ぐために制限するものである。なお、柱部は素材の強度等により一対に限られず二対などであってもよい。
【0039】
閉鎖面22の中央にはピン部材4を軸受するための円形の凸部である軸受部24が設けられている。軸受部24の中央にはピン部材4の先端凸部42を受け入れるための円形の軸受凹部24aが設けられ、また、軸受部24の中央から少しずれた位置には、ゼンマイ5の内側端5bを受け入れるためのスリット24bが設けられている。ゼンマイ5は、L字型に折り曲げられて形成された内側端5bとU字型に曲げられて形成された外側端5aとを有するゼンマイであり、少なくとも4巻程度の巻回数を有する。
【0040】
筒部材3は、上述の開放面21及び閉鎖面22に対応する一対の円形の面である第一面31と第二面32とを有し、これらの面は面に垂直に設けられたベルト巻取部としての4本の柱部材33により互いに支えられている。第一面31及び第二面32にはそれぞれ中心にピン部材4の軸部43を受け入れるための第一穴35及び第二穴34が穿設されており、それらの内径はピン部材4の軸部43の外径より少しだけ大きい。なお、第二穴34の周囲には柱部材33に向かって十字に穴が設けられているが、これは型を抜くための工夫であり、機能上は第二穴34は円形の穴であってよい。
【0041】
第一面31には、第一穴35に連続して、ピン部材4の係合凸部43bが通過するための切り欠き部36が表裏に貫通する形で穿設されている。また、第一面31の内側面において第一穴35に連続する位置に、ピン部材4の係合凸部43aが係合するための係合凹部37が設けられている。この係合凹部37は第一面31の内側面から厚みの半分程度まで達する深さである。
【0042】
第二面32の外側面には、円周に近い部分において第二面32から垂直に突出して設けられたゼンマイ受け凸部32aが設けられている。これは、ゼンマイ5の外側端5aを受けるための突起である。これにより、筒部材3は外側部材2に対しゼンマイ5を介して回転付勢される。また、第二面32の外側面における第二穴34の周囲には円弧状突起32
bが設けられ、ゼンマイ5がなるべく第二面32に触れないようにすると共に筒部材3と外側部材2との間の間隙を調整する役割を担っている。また、第二面32の外周部には円周フランジ32cが第二面32に垂直に設けられ、ゼンマイ5に使用者が誤って触れてしまうことを防ぐ。
【0043】
ピン部材4は、一端に設けられた鍔状の頭部41と、他端に設けられた先端凸部42と、これらの間に延びた軸部43とを有する。頭部41は中央にマイナスドライバーやコインが係合可能な溝41aを有する。軸部43はベルトBを挿通する挿通部としてのスリット43aを長さ方向に沿って有する。また、軸部43は、頭部41付近から軸方向に垂直に突出し、切り欠き部36を通過するとともに係合凹部37に係合する一対の係合凸部43bを有する。
【0044】
このようなベルトリトラクター1を組み立てるには、スリット24bに内側端5bを挿入した状態で外側部材2にゼンマイ5をセットし、ゼンマイ受け凸部32aに外側端5aを引っ掛けた状態で筒部材3を外側部材2にセットする。この際、まず第二穴34が軸受部24に対応するように第二面32を閉鎖面22に対置し、続いて第一面31の円周部で突起部28のテーパー面28aを押して弾性部27の弾性を利用して突起部28を外側に押し出しながら、第一面31を開放面21と平行になるように押し込む。続いて、ピン部材4を開口29及び第一穴35に挿通し、先端凸部42を軸受凹部24aに挿入する。この際、係合凸部43bが切り欠き部36を通過するようにピン部材4を合わせる。そして、弾性部27の弾性を利用して突起部28を外側に押し出しながら筒部材3を開放面21側へ移動させる。すると、係合凸部43bが切り欠き部36を通過し、コイン等を溝41aに係合させてピン部材4を軸回転させることができる。係合凸部43bが係合凹部24aに対応する位置において突起部28への押圧を解除すると、筒部材3が閉鎖面22側へ移動し、係合凸部43bが係合凹部24aに係合することで、ピン部材4と筒部材3とが一体化する。このようにすることで、図4(a),(b),(d)に示すように組み立てが完成する。ここでわかるように、弾性部27は、筒部材3の外側部材2への組み込み時に突起部28を外側へ逃がすという機能と、係合凸部43bと係合凹部24aとの係合を解除するために突起部28を外側へ逃がすという機能を兼ねている。
【0045】
この状態で、ピン部材4と筒部材3とが一体化した芯部を、ゼンマイ5の付勢に抗って、図4(c)に矢印Dで示す方向に数回、軸回転させる。そしてそのままの状態を保持しつつ、ストラップベルトを、図4(c)に二点鎖線Bで示す位置、すなわち柱部23の一方から入り柱部23と柱部材33との間を通りスリット26の他方から一方へ抜け逆側の柱部材33と逆側の柱部23との間を通って他側へ抜ける、S字状のルートを通るように、ベルトリトラクター1内を通過させる。このような状態で、芯部の保持を解除すると、ゼンマイ5の付勢により芯部が図4(c)の矢印Dと逆方向に巻かれ、ストラップベルトはスリット26に把持されて芯部の周囲すなわち筒部材3の柱部材33の周りに巻回され、スペースS1に収納される。その後、ストラップをバッグに縫い付ける。これによりベルトリトラクター1はストラップベルトから外れなくなる。
【0046】
このようにベルトリトラクター1をショルダーストラップまたはバックパックストラップにセットしてバッグを背負うと、バッグの自重によりゼンマイ5の付勢に抗ってストラップベルトの収納が解除され、ストラップベルトが伸展する。ここで、ストラップベルトが長いと感じる場合には、ベルトリトラクター1の調整により、ストラップベルトの伸展する長さを制限することができる。
【0047】
ストラップベルトの伸展長さの調整方法について説明する。上述のようにバッグの自重によりストラップベルトが伸展した状態で、弾性部27の弾性を利用して突起部28を外側に押し出しながら筒部材3を開放面21側へ移動させる。すると、係合凸部43bと係合凹部24aとの係合が解除され、コイン等を溝41aに係合させてピン部材4を軸回転させることができる。ピン部材4を軸回転させると、ストラップベルトがピン部材4の周りに巻き取られ、すなわち柱部材33とピン部材4との間の空間S2内に収納される。ストラップベルトが適宜な長さになった状態で係合凸部43bと係合凹部24aとの位置を合わせ、筒部材3による突起部28の押圧を解除すると、係合凸部43bと係合凹部24aとが係合し、ピン部材4と筒部材3とが一体化し、空間S2内に収納されたストラップベルトが伸展することはなくなる。このようにして、ストラップベルトの伸展長さを適宜に調節することができる。なお、伸展長さの調節はピン部材4の半回転ごとを1段階とし、無段階調整ではないから、左右のベルトリトラクター1におけるピン部材4の回転回数を同じくすれば、ストラップベルトの伸展長さを左右で全く同じにすることができ、従来のコキカンに比して非常に容易かつ正確に左右均等な長さ調整ができる。
【0048】
以上のように、第一実施形態のベルトリトラクター1によれば、ストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならず、ストラップベルトの伸展長さを調節でき、ストラップベルトの邪魔な端部が出ることもない、バッグ6を実現することができる。ここで、第一実施形態のベルトリトラクター1は一例であり、同様に効果を奏する態様において様々な変更が可能である。例えば、外側部材の柱部や筒部材の柱部材の本数、形状、押圧部の形状や位置は適宜に変更でき、ピン部材と筒部材との係合部の係合関係も逆にすることもできる。ゼンマイ以外に弦巻バネやゴムなどの弾性部材を使用できる。ゼンマイの両端を外側部材とピン部材とに係合させることもできる。さらに、芯部を1つの部材で構成した場合には、伸展長さ調節に関して別の機構が必要であるとしても、少なくともストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならないバッグを実現することができる。また、ベルトリトラクターはバッグ以外にも、楽器のストラップやシートベルト、腰に巻くベルト、荷造り用のベルト、ケーブルやコード等にも使用することができる。
【0049】
続いて、第二実施形態のベルトリトラクター101について図5及び図6を用いて説明する。ベルトリトラクター101は第一実施形態のベルトリトラクター1と同様の部分も多いが、主に、外側部材ではなくピン部材に弾性構造が設けられている点、ピン部材の先が二股でありかつ外側部材の柱部にスリットがあることでストラップベルトに対し後付けできる点において大きく異なる。
【0050】
第二実施形態のベルトリトラクター101は、外側部材102と、外側部材102の内部に回転可能に設けられた芯部としての筒部材103及びピン部材104と、芯部としての筒部材103及びピン部材104を外側部材102に対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ105とを備える。ゼンマイ105以外の部品は樹脂製であるが、金属製とすることもできる。
【0051】
外側部材102は、ピン部材104の回転軸に対して垂直に設けられた一対の略ひし形の面である開放面121及び閉鎖面122と、これら開放面121及び閉鎖面122の端部同士の間に垂直な柱状に渡された一対の柱部123とを有し、開放面121の中心には開口129が形成され、閉鎖面122の内側面中央に設けられたピン部材104を回転可能に軸受するための軸受部124と、開放面121内側における開口129周縁に設けられた複数の突起部129aとを有している。
【0052】
開放面121は上述のように略ひし形をなし、中央に開口129が形成されている。この開口129はピン部材104が挿入され、その頭部141が回転可能に嵌まるための穴であるから、ピン部材104の頭部141より少し大きな内径の円形である。突起部129aは筒部材103の開放面121方向への動きを制限すると筒部材103と外側部材102との間の摩擦を減らして回転性を上げると共に筒部材103の外側部材102への挿入を容易にするための間隙を設けるための部材であり、閉鎖面122方向へ突出している。また、突起部129aの側面はテーパー面となっていると、筒部材103が外側部材102内によりスムーズに入ることができる。なお、突起部129aがなくその分開放面21を内側に設けても筒部材3を外側部材2内に組み込むことが可能な程度に素材が柔軟で、かつ筒部材103と外側部材102との摩擦係数が十分に小さい場合には、突起部129aを備えなくてもよい。
【0053】
一対の柱部123は開放面121と閉鎖面122とに対し垂直に、それぞれの頂点をつなぐように設けられ、それぞれへの接続部の内側にそれぞれ一対の制限ブロック123a、123bを備える。これらの制限ブロック123a、123bは、ベルトBが巻き取られる際に開放面121側や閉鎖面122側に寄ってしまうことを防ぐために制限するものである。ここで、一方(図において右側)の柱部123に並行して、補助柱部123cが設けられている。この補助柱部123cは、開放面121と閉鎖面122とから垂直に、柱部123に並行して設けられているが、その長さ方向中央部分に隙間123dがあり、開放面121から伸びた補助柱部123cと閉鎖面122から伸びた補助柱部123cとが繋がっていない。このため、柱部123と補助柱部123cとの間にスリット123eが形成される。隙間123dを通してストラップベルトをスリット123eに位置させれば、ストラップベルトがスリット123e内を摺動し、外れてしまうことがないから、バッグに縫い付けられたベルトストラップに対しベルトリトラクター101を後付けすることが可能となる。なお、柱部は素材の強度等により一対に限られず二対などであってもよい。
【0054】
閉鎖面122の中央にはピン部材104を軸受するための円形の凸部である軸受部124が設けられている。軸受部124の中央にはピン部材104の先端筒状部142に挿入される円形の軸受凸部124aが設けられ、また、軸受部124の中央を通る位置に、ゼンマイ105の内側端105bを受け入れるためのスリット124bが設けられている。ゼンマイ105は、L字型に折り曲げられて形成された内側端105bとU字型に曲げられて形成された外側端105aとを有するゼンマイであり、少なくとも4巻程度の巻回数を有する。
【0055】
筒部材103は、筒部材3とほぼ同様に構成されている。筒部材103は、上述の開放面121及び閉鎖面122に対応する一対の円形の面である第一面131と第二面132とを有し、これらの面は垂直に設けられた4本の柱部材133により互いに支えられている。第一面131及び第二面132にはそれぞれ中心にピン部材104の軸部143を受け入れるための第一穴135及び第二穴134が穿設されており、それらの内径はピン部材104の軸部143の外形より少しだけ大きい。なお、第二穴134の周囲には柱部材133に向かって十字に穴が設けられているが、これは型を抜くための工夫であり、機能上は第二穴134は円形の穴であってよい。
【0056】
第一面131には、第一穴135に連続して、ピン部材104の係合凸部143aが通過するための切り欠き部136が表裏に貫通する形で穿設されている。また、第一面131の内側面において第一穴135に連続する位置に、ピン部材104の係合凸部143aが係合するための係合凹部137が設けられている。この係合凹部137は第一面131の内側面から厚みの半分程度まで達する深さである。
【0057】
筒部材3と同様であるため一部図示省略するが、第二面132の外側面には、円周に近い部分において第二面132から垂直に突出して設けられたゼンマイ受け凸部が設けられている。これは、ゼンマイ105の外側端105aを受けるための突起である。これにより、筒部材103は外側部材102に対しゼンマイ105を介して回転付勢される。また、第二面132の外側面における第二穴134の周囲には円弧状突起132bが設けられ、筒部材103と外側部材102との間の間隙を調整する役割を担っている。また、第二面132の外周部には円周フランジ132cが第二面132に垂直に設けられ、ゼンマイ105に使用者が誤って触れてしまうことを防ぐ。
【0058】
ピン部材104は、一端に設けられた鍔状の頭部141と、他端に設けられた先端筒状部142と、これらの間に延びた軸部143とを有する。頭部141は中央にマイナスドライバーやコインが係合可能な溝141aを有する。軸部143はベルトBを挿通する挿通部としてのスリット143bを長さ方向に沿って有する。また、軸部143は、頭部141付近から軸方向に垂直に突出し、切り欠き部136を通過するとともに係合凹部37に係合する一対の係合凸部143aを有する。ピン部材104は、先端筒状部142が二股に分かれている点、軸部143に軸に対して垂直に設けられた複数の切り欠き143cを有する点において、ピン部材4と特に異なる。まず、先端筒
状部142が二股に分かれていることで、スリット143bがピン部材104の先端まで突き抜けており、これにより、先端側からベルトを挿入できるから、バッグに縫い付けられたストラップベルトにベルトリトラクター101を後付することができる。また、複数の切り欠き143cを有することにより、軸部143が軸方向に弾性を持って縮むことが可能となる。このため、筒部材103を軸方向に移動させることなく、係合凸部143aと係合凹部137との係合及び解除が可能となる。
【0059】
このようなベルトリトラクター101を組み立てるには、スリット124bに内側端15bを挿入した状態で外側部材1002にゼンマイ105をセットし、ゼンマイ受け凸部に外側端105aを引っ掛けた状態で筒部材103を外側部材2にセットする。この際、まず第二穴134が軸受部124に対応するように第二面132を閉鎖面122に対置し、続いて第一面131の円周部で突起部129aのテーパー面を押して外側部材102を弾性変形させながら、第一面131を開放面121と平行になるように押し込む。
【0060】
ここで、ベルトリトラクター101においては、バッグに縫い付けられたストラップベルトに対して後付けが可能である。後付けする場合、この時点で、筒部材103を、ゼンマイ105の付勢に抗って、数回、軸回転させる。この状態を保ったまま、ストラップベルトの側面からベルトリトラクター101を当て、隙間123dを利用してストラップベルトをスリット123eに入れる。さらに、ストラップベルトの中間部を筒部材103の隣り合う2つの柱部材133の間に入れ、続いて、ピン部材104を開口129及び第一穴135に挿通し、先端筒状部142の二股の間にストラップベルトを入れ、スリット143b内にストラップベルトが位置する状態で、先端筒状部142に軸受凸部124aを挿入し、係合凸部143bが切り欠き部136を通過するようにピン部材104を合わせる。そして、頭部141を軸方向に押し込んで軸部143を弾性変形により圧縮する。すると、係合凸部143bが切り欠き部136を通過し、非係合状態になるから、コイン等を溝141aに係合させてピン部材4を軸回転させることができる。係合凸部143bが係合凹部124aに対応する位置において頭部141への押圧を解除すると、ピン部材104の圧縮が解除され、係合凸部143bが係合凹部124aに係合することで、ピン部材4と筒部材3とが一体化する。このようにすることで、ストラップベルトが予めバッグに縫い付けられた状態であっても、このストラップベルトに対するベルトリトラクター101の組み付けが完成する。このようにストラップベルトに対する後付けが可能なのは、先端筒状部142が二股になっているためである。また、補助柱部123cの存在により、ストラップベルトに対しベルトリトラクター101がぶら下がるような状態になることを避け、ストラップベルトに沿うようにベルトリトラクター101を組み付けることができる。
【0061】
上述の状態で筒部材103とピン部材104とが一体化した芯部の保持を解除すると、ゼンマイ105の付勢により芯部が巻かれ、ストラップベルトはスリット127に把持されて芯部の周囲すなわち筒部材103の柱部材133の周りに巻回され、スペースS11に収納される。
【0062】
このようにベルトリトラクター101をショルダーストラップまたはバックパックストラップにセットしてバッグを背負うと、バッグの自重によりゼンマイ105の付勢に抗ってストラップベルトの収納が解除され、ストラップベルトが伸展する。ここで、ストラップベルトが長いと感じる場合には、ベルトリトラクター101の調整により、ストラップベルトの伸展する長さを制限することができる。
【0063】
ストラップベルトの伸展長さの調整方法について説明する。上述のようにバッグの自重によりストラップベルトが伸展した状態で、頭部141を軸方向に押し込んで軸部143を弾性変形により圧縮する。すると、係合凸部143bが切り欠き部136を通過し、非係合状態になるから、コイン等を溝141aに係合させてピン部材4を軸回転させることができる。すると、係合凸部143bと係合凹部124aとの係合が解除され、コイン等を溝141aに係合させてピン部材104を軸回転させることができる。ピン部材104を軸回転させると、ストラップベルトがピン部材104の周りに巻き取られ、すなわち柱部材133とピン部材104との間の空間S102内に収納される。ストラップベルトが適宜な長さになった状態で係合凸部143bと係合凹部124aとの位置を合わせ、頭部141の押圧を解除すると、係合凸部143bと係合凹部124aとが係合し、ピン部材104と筒部材103とが一体化し、空間S102内に収納されたストラップベルトが伸展することはなくなる。このようにして、ストラップベルトの伸展長さを適宜に調節することができる。なお、伸展長さの調節はピン部材104の半回転ごとを1段階とし、無段階調整ではないから、左右のベルトリトラクター101におけるピン部材104の回転回数を同じくすれば、ストラップベルトの伸展長さを左右で全く同じにすることができ、従来のコキカンに比して非常に容易かつ正確に左右均等な長さ調整ができる。
【0064】
以上のように、第二実施形態のベルトリトラクター101によれば、ストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならず、ストラップベルトの伸展長さを調節でき、ストラップベルトの邪魔な端部が出ることもない、バッグを実現することができる。ここで、第二実施形態のベルトリトラクター101は一例であり、同様に効果を奏する態様において様々な変更が可能である。例えば、素材は樹脂に限らず金属や木製であってもよく、弾性部分に他の素材を用いるなど組み合わせることもできる。外側部材の柱部や筒部材の柱部材の本数、形状、押圧部の形状や位置は適宜に変更でき、ピン部材と筒部材との係合部の係合関係も逆にすることもできる。ゼンマイ以外に弦巻バネやゴムなどの弾性部材を使用できる。ゼンマイの両端を外側部材とピン部材とに係合させることもできる。さらに、芯部を1つの部材で構成した場合には、伸展長さ調節に関して別の機構が必要であるとしても、少なくともストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならないバッグを実現することができる。
【0065】
続いて、第三実施形態のベルトリトラクター201について図7及び図8を用いて説明する。ベルトリトラクター201は第一実施形態のベルトリトラクター1と同様の部分も多いが、主に、ピン部材が外側部材を貫通して抜け止めを有する点、ゼンマイの内側端がピン部材に係合し外側端が外側部材に係合する点、筒部材を外側部材の付勢に抗って移動させると外側部材に係合する点、において大きく異なる。
【0066】
第三実施形態のベルトリトラクター201は、外側部材202と、外側部材202の内部に回転可能に設けられた芯部としての筒部材203及びピン部材204と、芯部としての筒部材203及びピン部材204を外側部材202に対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ205とを備える。ゼンマイ205以外の部品は樹脂製であるが、金属製とすることもできる。
【0067】
外側部材202は、ピン部材204の回転軸に対して垂直に設けられた一対の略ひし形の面である開放面221及び軸受面222と、これら開放面221及び軸受面222の端部同士の間に垂直な柱状に渡された一対の柱部223とを有し、開放面221の中心には開口229が形成され、軸受面222の内側面中央に設けられたピン部材204を回転可能に軸受するための軸受穴224と、開放面221内側における開口229周縁に設けられた係合突起部229aとを有している。
【0068】
開放面221は上述のように略ひし形をなし、中央に開口229が形成されている。この開口229はピン部材204が挿入され、その頭部241が回転可能に嵌まるための穴であるから、ピン部材204の頭部241より少し大きな内径の円形である。この円の円弧の一部は一対の突起部228により構成される。開放面221の長手方向に設けられた二対のスリット226により橋状に形成された一対の弾性部227は樹脂の素材に由来する弾性を有し、それらの先端に突起部228が設けられている。この弾性部227及び突起部228により押圧部を構成する。突起部228は筒部材203を軸受面222方向へ押圧するための部材であり、軸受面222方向へ突出している。また、図8に示すように、突起部228の側面はテーパー面228aとなっており、筒部材203を外側部材202内に側方から組み込む際に筒部材203によりこのテーパー面228aが押され、弾性部227の弾性により突起部228が外側に押されることで、筒部材203が外側部材202内にスムーズに入ることができる。さらに、突起部228は、開口229の周縁に設けられていることにより、筒部材203と外側部材202との間の摩擦面をなるべく半径方向内側にかつ小さい面積とし、筒部材203の回転性を高めるという効果を奏する。突起部229aは筒部材203が開放面221方向へ動いた際に筒部材203の第一面231に設けられた溝203aに係合して筒部材203を外側部材202に対し回転不能にするための部材であり、軸受面222方向へ突出している。
【0069】
一対の柱部223は開放面221と軸受面222とに対し垂直に、それぞれの頂点をつなぐように設けられ、それぞれへの接続部の内側にそれぞれ一対の制限ブロック223a、223bを備える。これらの制限ブロック223a、223bは、ベルトBが巻き取られる際に開放面221側や軸受面222側に寄ってしまうことを防ぐために制限するものである。なお、柱部は素材の強度等により一対に限られず二対などであってもよい。
【0070】
軸受面222の中央にはピン部材204を軸受するための円形の貫通穴である軸受穴224が設けられている。軸受穴224はピン部材204の先端部242が挿入されるための円形の軸受貫通穴である。また、軸受面222の円周に近い位置に、ゼンマイ205の外側端205aを係合するためのブロック222aが設けられている。ゼンマイ205は、L字型に折り曲げられて形成された内側端205bとU字型に曲げられて形成された外側端205aとを有するゼンマイであり、少なくとも4巻程度の巻回数を有する。
【0071】
筒部材203は、上述の開放面221及び軸受面222に対応する一対の円形の面である第一面231と第二面232とを有し、これらの面は垂直に設けられた4本の柱部材233により互いに支えられている。第一面231及び第二面232にはそれぞれ中心にピン部材204の軸部243を受け入れるための第一穴235及び第二穴234が穿設されており、それらの内径はピン部材204の軸部243の外形より少しだけ大きい。なお、第二穴234の周囲には柱部材233に向かって十字に穴234aが設けられているが、これは型を抜くための工夫であると共に、後述するピン部材204の先側係合凸部243cが通過するためのものでもある。
【0072】
第一面231には、第一穴235に連続して、ピン部材204の4つの頭側係合凸部243b及び4つの先側係合凸部243cが通過するための4つの切り欠き部236が表裏に貫通する形で穿設されている。この切り欠き236は頭側係合凸部243bに対する係合凹部を兼ねる。
【0073】
第二面232の外側面には、穴234aに連続して、4つの係合凹部234bが設けられている。これは、ピン部材204の先側係合凸部243cが係合するためのものである。また、第二面232の外周部には円周フランジ232cが第二面232に垂直に設けられ、ゼンマイ205に使用者が誤って触れてしまうことを防ぐ。
【0074】
ピン部材204は、一端に設けられた鍔状の頭部241と、これに連接されて延びた軸部243と、他端に設けられた先端部242a及びこれより頭側に連接して設けられたゼンマイ係合部242bならびに先端部242aの先端に設けられた抜けどめ242cとを有する。ピン部材204は先端から先端部242aを経由してゼンマイ係合部242bに至るまで、軸を通るスリット242dが設けられている。このスリット242dはゼンマイ205の内側端205bを受容するためのものである。頭部241は中央にマイナスドライバーやコインが係合可能な溝241aを有する。なおこの溝241aはこの第三実施形態においてはなくても機能する。軸部243はベルトBを挿通する挿通部としてのスリット243bを長さ方向に沿って有する。このスリット243bは直線状に限らず、波状などに設計してもよく、その場合はベルトBにおいて任意の位置に固定しやすいという効果がある。また、軸部243は、頭部241付近から軸方向に垂直に突出し、切り欠き部236を通過し、また場合によってはこの切り欠き部236に係合する4つの頭側係合凸部243bを有する。さらに、軸部243は、ゼンマイ係合部242bに隣接する位置から軸方向に垂直に突出し、切り欠き部236及び十字の穴234aを通過し、また場合によってはこの十字の穴234
aに連接された係合凹部234bに係合する4つの先側係合凸部243cを有する。ゼンマイ係合部242bは軸部243の本体より細く形成され、ゼンマイ205が巻き付く位置である。先端部242aはさらに細く形成され、軸受穴224に挿通される部分であるから、軸受穴224の内径より少し細い内径を有する。その先に設けられた抜けどめ242cはカエシ状に軸受穴224の内径より太く形成され、スリット242dにより生じる可撓性を利用して軸受穴224を通過し、弾性変形が復帰した後はピン部材204が軸受穴224から抜けなくなる。
【0075】
このようなベルトリトラクター201を組み立てるには、軸受穴224の外側から、内側端205bを保持するための治具(図示省略)を軸受穴224に挿通し、ゼンマイ205の内側端205bを保持する。さらに、ゼンマイ205が巻かれた状態で、外側端205aをブロック222aに係合させる。なお、治具は軸受面222に保持される機構になっていると良い。続いて、筒部材203を外側部材202に側方から嵌め込む。この際、まず第二穴234が軸受穴224に対応するように第二面232を軸受面222に対置し、続いて第一面231の円周部で突起部228のテーパー面228aを押して弾性部227の弾性を利用して突起部228を外側に押し出しながら、第一面231を開放面221と平行になるように押し込む。この際、溝203aが係合突起部229aに対応する位置に設置する。続いて、ピン部材204を開口229及び第一穴235に挿通し、続いて先端部242aを軸受穴224に挿通すると共にゼンマイ係合部及び先側係合凸部243cを第二穴234に挿通する。すると、抜けどめ242cが軸受穴224を通過して復元し抜けどめとして機能する。この状態で治具は外れ、ゼンマイ205は復元力によりピン部材204を回そうとする。この際、頭側係合凸部243bが切り欠き236に対応する位置、すなわち先側係合凸部243cが係合凹部234bに対応する位置において突起部228への押圧を解除すると、筒部材203が軸受面222側へ移動し、頭側係合凸部243bが切り欠き236に係合し、先側係合凸部243cが係合凹部234bに係合することで、ピン部材204と筒部材203とが一体化する。さらに、第二面232の円周フランジ232cと軸受面222との間に図示しない厚紙などを挟んで、突起部229aに溝203aが係合する状態にすると、筒部材203と外側部材202とが一体化する。厚紙の厚みを調整し、筒部材203が外側部材202及びピン部材204の両方と一体化した状態においては、ゼンマイ205は復元力によりピン部材204を回すことはできない。ここでわかるように、弾性部227は、筒部材203の外側部材202への組み込み時に突起部228を外側へ逃がすという機能と、筒部材203を軸受面222側に移動させ先側係合凸部243c及び頭側係合凸部243bを係合凹部234b及び切り欠き236に係合させるという機能を兼ねている。
【0076】
この状態で、ストラップベルトを、柱部223の一方から入り柱部223と柱部材233との間を通りスリット226の一方から他方へ抜け逆側の柱部材233と逆側の柱部223との間を通って他側へ抜けるように、ベルトリトラクター201内を通過させる。このような状態で、厚紙を抜くと、突起部228に押圧されて筒部材203が軸受面222側へ移動し、突起部229aと溝203aとの係合が外れ、係合ゼンマイ5の付勢によりピン部材204と筒部材203とが一体化した芯部が巻かれ、ストラップベルトはスリット226に把持されて芯部の周囲すなわち筒部材203の柱部材233の周りに巻回され、外側部材202内に収納される。その後、ストラップをバッグに縫い付ける。これによりベルトリトラクター201はストラップベルトから外れなくなる。
【0077】
このようにベルトリトラクター201をショルダーストラップまたはバックパックストラップにセットしてバッグを背負うと、バッグの自重によりゼンマイ205の付勢に抗ってストラップベルトの収納が解除され、ストラップベルトが伸展する。ここで、ストラップベルトが長いと感じる場合には、ベルトリトラクター201の調整により、ストラップベルトの伸展する長さを制限することができる。
【0078】
ストラップベルトの伸展長さの調整方法について説明する。上述のようにバッグの自重によりストラップベルトが伸展した状態で、突起部229aを溝203aに合わせ、弾性部227の弾性を利用して突起部228を外側に押し出しながら筒部材203を開放面221側へ移動させる。すると、頭側係合凸部243bと切り欠き236との係合及び先側係合凸部243cと係合凹部234bとの係合が解除される。これと同時に、突起部229aと溝203aとが係合する。このように筒部材203が外側部材202に係合し、かつピン部材204と係合していない状態でバッグを持ち上げてストラップベルトの伸展を緩めると、ゼンマイ205の復元力によりピン部材204が軸回転し、ストラップベルトがピン部材204の周りに巻き取られ、すなわち柱部材233とピン部材204との間の空間内に収納される。ストラップベルトが適宜な長さになった状態で頭側係合凸部243bと切り欠き236との位置を合わせ、筒部材203による突起部228の押圧を解除すると、頭側係合凸部243bと切り欠き236とが係合し同時に先側係合凸部243cと係合凹部234bとが係合し、ピン部材204と筒部材203とが一体化し、柱部材233とピン部材204との間の空間内に収納されたストラップベルトが伸展することはなくなる。このようにして、ストラップベルトの伸展長さを適宜に調節することができる。この際、突起部229aと溝203aとの係合が外れるから、余ったストラップベルトが自動で柱部材233の周りに巻き取られることになる。なお、伸展長さの調節はピン部材204の4分の1回転ごとを1段階とし、無段階調整ではないから、左右のベルトリトラクター201におけるピン部材204の回転回数を同じくすれば、ストラップベルトの伸展長さを左右で全く同じにすることができ、従来のコキカンに比して非常に容易かつ正確に左右均等な長さ調整ができる。
【0079】
以上のように、第三実施形態のベルトリトラクター201によれば、ストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならず、ストラップベルトの伸展長さを調節でき、ストラップベルトの邪魔な端部が出ることもない、バッグを実現することができる。ここで、第三実施形態のベルトリトラクター201は一例であり、同様に効果を奏する態様において様々な変更が可能である。例えば、外側部材の柱部や筒部材の柱部材の本数、形状、押圧部の形状や位置は適宜に変更でき、ピン部材と筒部材との係合部の係合関係も逆にすることもできる。ゼンマイ以外に弦巻バネやゴムなどの弾性部材を使用できる。ゼンマイの両端を外側部材とピン部材とに係合させることもできる。さらに、芯部を1つの部材で構成した場合には、伸展長さ調節に関して別の機構が必要であるとしても、少なくともストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならないバッグを実現することができる。
【0080】
第三実施形態のベルトリトラクター201は、他の実施形態に比して、ストラップベルトの伸展長さの調節を手巻きでなくゼンマイ205の復元力により行うことができる点で有利である。これにより頭部241の溝241aはなくてもよく、頭部241を小さくすることもできる。さらに、係合凸部をピン部材204の頭側と先側に設け、また4つずつとすることで、ピン部材204の捻れを抑え、ピン部材204と筒部材203との係合が意図せず解除されてしまうことを避けることができる。伸展長さの調節はピン部材204の4分の1回転ごとを1段階とでき、意図せずにピン部材が抜けてしまうことも防げる。筒部材203がピン部材204及び外側部材202に係合することでゼンマイや各部材の組付け、ベルトストラップの通しが簡単になる。ゼンマイの内側端がピン部材に係合することでゼンマイの内径を小さくすることができ、巻回数を増やし、外径を小さくすることが可能となる。ピン部材と外側部材との係合はピン部材の先端の抜けどめ構造に限らず、頭部分において同様の抜けどめ構造を備えても良い。
【0081】
続いて、第四実施形態のベルトリトラクター301について図9及び図10を用いて説明する。ベルトリトラクター301は第一実施形態のベルトリトラクター1と同様の部分あるが、バッグ内に設置される点において大きく異なる。このため、ベルトリトラクター301はバッグの外から、ベルトの長さ制限を変更するアジャストモードとベルトの長さ制限が確定するフィックスモードとの切り替えを行うことができるよう、係合解除機構を備えた構成となっている。
【0082】
第四実施形態のベルトリトラクター301は、外側部材302と、外側部材302の内部に回転可能に設けられた芯部としての筒部材303及びピン部材304と、芯部としての筒部材303及びピン部材304を外側部材302に対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ305と、両腕部先端において筒部材303及び外側部材302を把持するコの字部材306と、コの字部材306及び外側部材302を覆うカバー部材307と、バッグ生地Fを挟んでカバー部材307に螺着する押さえ部材308と、押さえ部材308の凹部においてコの字部材306の軸に係合するツマミ部材309とを備える。ゼンマイ305以外の部品は樹脂製であるが、金属製とすることもできる。
【0083】
外側部材302は、ピン部材304の回転軸に対して垂直に設けられた一対の円盤型の面である開放面321及び軸受面322と、これら開放面321及び軸受面322の端部同士の間に垂直な柱状に渡された一対の柱部323a,323bとを有し、開放面321の中心には開口329が形成され、軸受面322の中央に設けられたピン部材304を回転可能に軸受するための軸受穴324とを有している。一対の柱部323a,323bは、それぞれの両側に、ベルトが通りベルトをガイドするための凹部323cを有する。
【0084】
開放面321は上述のように円盤型をなし、中央に開口329が形成されている。この開口329はピン部材304が挿入され、その頭部341が回転可能に嵌まるための穴であるから、ピン部材304の頭部341より少し大きな内径の円形である。この円の円弧の一部は一対の突起部328により構成される。開放面321の長手方向に設けられた二対のスリット326により橋状に形成された一対の弾性部327は樹脂の素材に由来する弾性を有し、それらの先端に突起部328が設けられている。この弾性部327及び突起部328により押圧部を構成する。突起部328は筒部材303を軸受面322方向へ押圧するための部材であり、軸受面322方向へ突出している。また、図10に示すように、突起部328の側面はテーパー面328aとなっており、筒部材303を外側部材302内に側方から組み込む際に筒部材303によりこのテーパー面328aが押され、弾性部327の弾性により突起部328が外側に押されることで、筒部材303が外側部材302内にスムーズに入ることができる。
【0085】
一対の柱部323は開放面321と軸受面322とに対し垂直に設けられる。なお、柱部は素材の強度等により一対に限られず二対などであってもよい。
【0086】
軸受面322の中央にはピン部材304を軸受するための円形の貫通穴である軸受穴324が設けられている。軸受穴324はピン部材304の先端部342が挿入されるための円形の軸受貫通穴である。また、軸受面322の円周に近い位置に、ゼンマイ305の外側端305aを係合し、またゼンマイ305の外周を制限するための二対のブロック322aが設けられている。ゼンマイ305は、L字型に折り曲げられて形成された内側端305bとU字型に曲げられて形成された外側端305aとを有するゼンマイである。
【0087】
筒部材303は、上述の開放面321及び軸受面322に対応する一対の円形の面である第一面331と第二面332とを有し、これらの面は垂直に設けられた4本の柱部材333により互いに支えられている。第一面331及び第二面332にはそれぞれ中心にピン部材304の軸部343を受け入れるための第一穴335及び第二穴334が穿設されており、それらの内径はピン部材304の軸部343の外径より少しだけ大きい。
【0088】
第一面331及び第二面332には、第一穴335及び第二穴334に連続して、ピン部材304の4つの頭側係合凸部343b及び4つの先側係合凸部343cが係合するためのそれぞれ4つの切り欠き部336a,336bが表裏に貫通する形で穿設されている。
【0089】
ピン部材304は、一端に設けられた鍔状の頭部341と、これに連接されて延びた軸部343と、他端に設けられた先端部342a及びこれより頭側に連接して設けられたゼンマイ係合部342bならびに先端部342aの先端に設けられた抜けどめ342cとを有する。ピン部材304は先端から先端部342aを経由してゼンマイ係合部342bに至るまで、軸を通るスリット342dが設けられている。このスリット3
42dはゼンマイ305の内側端305bを受容するためのものである。軸部343はベルトBを挿通する挿通部としてのスリット343aを長さ方向に沿って有する。このスリット343aは直線状に限らず、波状などに設計してもよく、その場合はベルトBにおいて任意の位置に固定しやすいという効果がある。また、軸部343は、頭部341付近から軸方向に垂直に突出し、切り欠き部336を通過し、また場合によってはこの切り欠き部336に係合する4つの頭側係合凸部343bを有する。さらに、軸部343は、ゼンマイ係合部342bに隣接する位置から軸方向に垂直に突出し、切り欠き部336a,336bを通過し、また場合によっては切り欠き部336bに係合する4つの先側係合凸部343cを有する。ゼンマイ係合部342bは軸部343の本体より一部細く形成され、ゼンマイ205が巻き付く位置である。先端部342aはさらに細く形成され、軸受穴324に挿通される部分であるから、軸受穴324の内径より少し細い内径を有する。その先に設けられた抜けどめ342cはカエシ状に軸受穴324の内径より太く形成され、スリット342dにより生じる可撓性を利用して軸受穴324を通過し、弾性変形が復帰した後は抜けどめ342cが軸受穴324に嵌合し、ピン部材304が軸受穴324から抜けなくなる。
【0090】
コの字部材306は、筒部材303を外側部材302の開放面321側に保持することで、ピン部材304の係合凸部343b,343cの筒部材303の切り欠き部336a,336bへの係合を解除し、また保持を解除する場合にはピン部材304の係合凸部343b,343cの筒部材303の切り欠き部336a,336bへの係合を行うための部材である。
【0091】
コの字部材306は、回転軸306aに対し垂直な対向方向に伸びた一対の腕部306bと、この腕部406bの先端に設けられたツメ部306cとを有する。ツメ部先端は腕部306bに対向する面であり、筒部材303の第一面331の円周に設けられたツバ部331aを把持する機能を有する。
【0092】
外側部材302の開放面321には、外側面円周に沿ってコの字部材306側に出っ張った傾斜を有する一対のテーパー部321aを有する。一対のテーパー部321aは回転対称であって時計回りに次第に高くなる傾斜を有する。コの字部材306の腕部406bがこの傾斜に沿って上ることにより筒部材303を外側部材302側に引きつける。テーパー部321aの頂上は平らになっており、コの字部材306を時計回りに回転させた状態において戻りのモーメントを生じないように構成されている。さらに時計回りに回転させた際に回転を制限する回り止め321bを有し、一方反時計回りに回転させた際にコの字部材306に当接する回り止め321cも備える。これら回り止め321b,321cにコの字部材306が当接した状態で保持するために、コの字部材306の内側と開放面321の外周には凹部306dと凸部321dとからなる係合機構が設けられ、凸部321dはパンタグラフ状の弾性構造を介して開放面321の外周に接続されている。これにより、コの字部材306が回り止め321b,321cに当接した状態である程度の応力を持って保持される。
【0093】
コの字部材306の回転軸306aは先端に係合部306eを有し、カバー部材307の穴308cを経由してツマミ部材309の係合穴309aに挿入され係合する。ツマミ部材309はツマミ部309bを有し、これを時計回りまたは反時計回りに回転させることでコの字部材306を操作することができる。コの字部材306は時計回りに回転した状態においてテーパー部321aを上り筒部材303を突起部328の応力に抗して外側部材302の開放面321に引きつけた状態である。ここでピン部材304は先端部342が軸受穴324から抜けないから軸方向に移動せず、切り欠き部336,切り欠き部336bと頭側係合凸部343b,先側係合凸部343cとの係合が解除される。その結果、ピン部材304は筒部材303に対し回転可能となり、スリット343aに挿通されたベルトはゼンマイ305の回転力によりピン部材303に巻き取られ、筒部材303の柱部材333により画成される空間内に収容される。ツマミ部材309を反時計回りに回せばコの字部材306はテーパー部321aを下り、ベルトを少し引いてピン部材303を回転させれば筒部材303は突起部328の付勢によりピン部材303と係合し一体となるから、ベルトはゼンマイ305の回転力により柱部材333の外側に巻き取られる。このようにして柱部材333の内側においてベルトの長さ調整が行われ、柱部材333の外側において残りのベルトの巻取りが行われる。
【0094】
カバー部材307は外側部材302及びコの字部材306の外側から全体を覆う部材であり、下側に開放している。柱部材323a、323bに対応した切り欠き307aと、外側部材302の4つのツメ受け溝322bに係合する4つのツメ307bを備える。上方にはネジ状開口307cを有し、バッグ生地Fの丸穴を介して挿入され螺着される押さえ部材308の雄ねじ部308aに螺合する。また、ネジ状開口307cの周囲にはバッグ生地Fに食い込んで相対的な回転を抑止する突起307dが円状に並んで構成されている。押さえ部材308は中心部が凹部308bとなっており、ここにツマミ309を受容する。
【0095】
このようなベルトリトラクター301を組み立てるには、軸受穴324の外側から、内側端305bを保持するための治具(図示省略)を軸受穴324に挿通し、ゼンマイ305の内側端305bを保持する。さらに、ゼンマイ305が巻かれた状態で、外側端305aをブロック322aに係合させる。なお、治具は軸受面322に保持される機構になっていると良い。内側端305bが自然と中央に位置する場合には治具がなくてもよい。続いて、筒部材303を外側部材302に側方から嵌め込む。この際、まず第二穴334が軸受穴324に対応するように第二面332を軸受面322に対置し、続いて第一面331の円周部で突起部328のテーパー面328aを押して弾性部327の弾性を利用して突起部328を外側に押し出しながら、第一面331を開放面321と平行になるように押し込む。続いて、ピン部材304を開口329及び第一穴335に挿通し、続いて先端部342aを軸受穴324に挿通すると共にゼンマイ係合部及び先側係合凸部343cを第二穴334に挿通する。すると、抜けどめ342cが軸受穴324を通過して復元し抜けどめとして機能する。この状態で治具は外れ、ゼンマイ305は復元力によりピン部材304を回そうとする。この際、頭側係合凸部343bが係合凹部336aに対応する位置、すなわち先側係合凸部343cが係合凹部334bに対応する位置において突起部328への押圧を解除すると、筒部材303が軸受面322側へ移動し、頭側係合凸部343bが係合凹部336aに係合し、先側係合凸部343cが係合凹部334bに係合することで、ピン部材304と筒部材303とが一体化する。この状態で、ストラップベルトを、柱部材323aの一方から入り柱部材333の間を通りスリット326の一方から他方へ抜け逆側の柱部材323bの他方または一方へ抜けるように、ベルトリトラクター301内を通過させる。
【0096】
続いてコの字部材306を、その先端のツメ部306cがツバ部331aの下に位置するようにスライドさせながら、外側部材302及びピン部材303の頭部341の外側に位置するように設置する。さらに、カバー部材307を、柱部材323bに切り欠き307aが対応するようにかぶせる。ストラップベルトは柱部材の左右の凹部323cによりカバー部材307との間に生じるいずれかのスリットを通る。
【0097】
この状態で生地Fの穴にネジ状開口307cを合わせ、押さえ部材308を雄ねじ部308aにより瘰着することで生地を挟み込むように取り付ける。ツマミ部材309を回転軸306aに取り付けて組付け完了となる。
【0098】
このように組み付けが完了した状態で、通常時はツマミ部材309が反時計回りに回った状態となっており、ピン部材304と筒部材303とが一体化した状態となっているから、ストラップベルトは柱部333の回りに巻き付き、ゼンマイ305の付勢により巻き取られたり、これに抗して伸展されたりする。このようにしてストラップベルトを巻き取ることができる。一方、ストラップベルトの長さを調節したい場合は、ストラップベルトが伸展し柱部333の回りに巻き付いていない状態でツマミ部材309を時計回りに回す。すると、ピン部材304は筒部材303に対し回転可能となり、ストラップベルトを引っ張っていない状態ではスリット343aに挿通されたベルトはゼンマイ305の回転力によりピン部材303に巻き取られ、筒部材303の柱部材333により画成される空間内に収容される。ストラップベルトの長さを適度に調整したところでツマミ部材を反時計回りに合わすとアジャストモードからフィックスモードになり、ストラップベルトは柱部333の回りに巻き取られることになる。この場合にストラップベルトの伸展長さが限定される。
【0099】
このようなベルトリトラクター401をバッグに装着する方法について説明する。図11はこのベルトリトラクター301を装着したバッグの模式的な三面図であり、図11(a)は側面図、(b)は上面図、(c)は正面図である。本発明の実施形態のバッグ600は、本体660と、本体をバックパックとして背負うためのバックパックストラップ661と、本体をショルダーバッグとして肩に提げるためのショルダーストラップ662と、本体を手提げ状に把持するための把手663と、本体内に荷物を出し入れするための開口であってジッパーにより開閉される開口部665とを備えている。
【0100】
バックパックストラップ661は肩当てパッド661aとストラップベルト661bとが互いに一端において縫い付けられて構成されており、肩当てパッド661aは他端において本体660に縫い付けられている。図11(a)に示すように1つ目のベルトリトラクター301aはバッグ600の本体660の側面布、すなわちバッグ600をバックパックとして使用した場合の底面の中央に取り付けられている。具体的には、この部分には生地に円形の穴があいており、ここにバッグ内側からベルトリトラクター301aを当てがい、外側から押さえ部材308をカバー部材307に対し螺着することで、ベルトリトラクター301aがバッグ600に装着されている。この状態で、ストラップベルト661bはベルトリトラクター301aの中を通過し、両端が左右の肩当てパッド661aに接続されている。上述のように設置されたベルトリトラクター301はストラップベルト661bを巻取り収納するから、図11に示すように、バッグ600を背負っていない状態において、ストラップベルト661bがベルトリトラクター301aに収納され、バックパックストラップ661は本体660に一体となった状態となり、把手663を使用して手提げ状にバッグ600を持ったりショルダーストラップ662を使用してショルダーバッグとして使用した場合にも、バックパックストラップ661が垂れ下がってしまうことがない。また、従来のバックパックストラップと異なり、長さ調整機構をベルトリトラクター301aに内蔵されているから、余ったバックパックストラップの端が垂れ下がってしまうこともなく、バックパックとして使用した際には、設定した通りの長さまでバックパックストラップ661が伸びる。長さ調整に際しては、バッグ600をバックパックとして背負った状態で、ツマミ部材309を時計回しに回すことでアジャストモードとなる。この状態で好きな長さになるようバッグ600を上下して調整し、そのままツマミ部材309を反時計回しに回すことでフィックスモードとなり、バッグ600を下ろせばバックパックストラップは巻き取られ、また背負えば伸展するが、先程定められた長さ以上にはならない。
【0101】
また、ショルダーストラップ662は肩当てパッド662aがショルダーストラップ662の長さ方向中間において一対のストラップベルト662bの両端に縫い付けられて構成されており、ストラップベルト662bは2つ目のベルトリトラクター301b内を通過している。ベルトリトラクター301bはバッグ600の正面の布の角に配置され、ベルトリトラクター301aと同様、円形の穴まわりの生地を挟み込むことで固定されている。このように設置されたベルトリトラクター601はストラップベルト662bを巻取り収納するから、図11に示すように、肩にかけていない状態において、ストラップベルト662bが収納され、ショルダーストラップ662は本体660に一体となった状態となり、把手663を使用して手提げ状にバッグ600を持ったりバックパックストラップ661を使用してバックパックとして使用した場合にも、ショルダーストラップ662が垂れ下がってしまうことがない。また、従来のショルダーストラップと異なり、長さ調整機構をベルトリトラクター301bに内蔵しているから、いわゆるコキカンが不要となり、ショルダーストラップを取り外し可能とするための金具も不要となる。コキカンや金具が肩に当たって痛いという状態となることがないことに加え、肩
当てパッド662aをショルダーストラップの中央に縫い付けることができるから、従来のショルダーストラップで起こりがちな、肩当てパッドが中央からずれてしまう、裏返ってしまうといった問題を回避できる。ショルダーバッグとして使用した際には、設定した通りの長さまでショルダーバッグストラップ662が伸びる。
【0102】
このようにベルトリトラクター301をショルダーストラップ及びバックパックストラップにセットしてバッグを背負うと、バッグの自重によりゼンマイ305の付勢に抗ってストラップベルトの収納が解除され、ストラップベルトが伸展する。ここで、ストラップベルトが長いと感じる場合には、ベルトリトラクター301の調整により、ストラップベルトの伸展する長さを制限することができる。以上のように、第四実施形態のベルトリトラクター301によれば、ストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならず、ストラップベルトの伸展長さを調節でき、ストラップベルトの邪魔な端部が出ることもない、さらにベルトリトラクター自体もバッグに内蔵することで邪魔にならない、バッグを実現することができる。ここで、第四実施形態のベルトリトラクター301は一例であり、同様に効果を奏する態様において様々な変更が可能である。例えば、外側部材の柱部や筒部材の柱部材の本数、形状、押圧部の形状や位置は適宜に変更でき、ピン部材と筒部材との係合部の係合関係も逆にすることもできる。ゼンマイ以外に弦巻バネやゴムなどの弾性部材を使用できる。ゼンマイの両端を外側部材とピン部材とに係合させることもできる。カバー部材がなくてもリトラクターとしては機能するし、アジャストモードとフィックスモードの切替にコの字部材とツマミの構造以外の構造を使って筒部材をスライドさせるようにしてもよい。さらに、芯部を1つの部材で構成した場合には、伸展長さ調節に関して別の機構が必要であるとしても、少なくともストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならないバッグを実現することができる。
【0103】
本発明のベルトリトラクターはバッグに限らず、楽器のストラップ、ウェストポーチのストラップ、シートベルト等、種々のストラップに使用することができる。
【0104】
例えば、図12は、ヘルメットのベルトに使用するための本発明の第五実施形態のベルトリトラクターを示す斜視図である。従来、自転車のヘルメットは頭部に被った状態で左右のベルトの先端に備えられたコネクタを顎の下で互いに係合することで装着し、いわゆるコキカンにより長さを調整する。しかし、この操作時に特に子供ではコネクタに皮膚を挟んでしまうことがあり、また両手を使わないと装着できないので競技の自転車で急いでヘルメットを被る際に不便である。装着と長さ調整を別々に行わなければいけないという面倒もある。
【0105】
そこで、第五実施形態のベルトリトラクター401は、外側部材としての腕部材402及び一対のキャップ部材であるゼンマイ格納キャップ403,制御キャップ404と、外側部材の内部に回転可能に設けられた芯部としてのピン部材405と、芯部としてのピン部材405をゼンマイ格納キャップ部材403に対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ406とを備える。ゼンマイ405以外の部品は樹脂製であるが、金属製とすることもできる。
【0106】
腕部材402はU字型の腕部421と、この腕部421の両端に対向して設けられた平面であるゼンマイ格納キャップ受け部422及び制御キャップ受け部423とを有する。腕部421はその形状と素材に由来する可撓性を有し、長方形や長円形の断面構造に選定されている。ゼンマイ格納キャップ受け部422及び制御キャップ受け部423はゼンマイ格納キャップ403及び制御キャップ404に対応する略長方形の平面であり、それぞれ一対の係合爪424を有する。係合爪424の先端は抜け止めのためのカエシ424aを備える。
【0107】
ゼンマイ格納キャップ部材403は、ピン部材405の回転軸に対して垂直に設けられた略長方形の面である軸受面431と、この軸受面431の四辺から回転軸に平行な外側方向に垂立した壁面432とを有する。軸受面431の中央にはピン部材405を軸受するための円形の貫通穴である軸受穴434が設けられている。軸受穴434はピン部材405の先端部452が挿入されるための円形の軸受貫通穴である。軸受穴434の上下に連接してスリット434aが設けられている。これはピン部材405の先端部452を受け入れやすくするために可撓変形を促すスリットである。軸受面431と壁面432との間には左右一対の係合穴432aが設けられ、腕部材402の係合爪424と係合する。また、図面では見えないが、軸受面431の軸方向外側であって外縁に近い位置に、ゼンマイ406の外側端406aを係合するためのブロックが設けられている。ゼンマイ406は、L字型に折り曲げられて形成された内側端406bとU字型に曲げられて形成された外側端406aとを有するゼンマイである。
【0108】
制御キャップ404は、ピン部材405の回転軸に対して垂直に設けられた略長方形の面である軸受面441と、この軸受面441の四辺から回転軸に平行な外側方向に垂立した壁面442とを有する。軸受面441の中央にはピン部材405を軸受するための円形の貫通穴である軸受穴444が設けられている。軸受穴444の周囲であって軸受面441の軸方向外側面にはピン部材405の頭部にスプライン状に回転軸に垂立して設けられた6つの係合凸部453を受容する6つの係合凹部443を備える。軸受面441と壁面442との間には左右一対の係合穴442aが設けられ、腕部材402の係合爪424と係合する。係合凹部443より軸方向外側は係合凸部453が妨げられることなく回転する回転空間444となっている。
【0109】
ピン部材405は、一端に設けられたスプライン状の頭部454と、これに連接されて延びた軸部455と、他端に設けられた先端部452とを有する。先端部452は先端側にスリット452aを有し、ゼンマイ405の内側端406を保持するとともに軸受穴434に挿入されやすくするための可撓性を付与される。先端部452の先端は面取り452bにより先が細く尖った形状となっており、軸受穴434に挿入されやすく形成されている。軸受に当接する軸受当接部452cは半径が小さく形成されているから、軸受穴434に先端部452が挿入された後に抜けることが抑止される。軸部455はベルトを挿通する挿通部としてのスリット455aを長さ方向に沿って有する。このスリット455aは直線状に限らず、波状などに設計してもよく、その場合はベルトにおいて任意の位置に固定しやすいという効果がある。また、頭部454は、軸方向と垂直に突出して設けられた6つの係合凸部453を有する。
【0110】
以上のような構成のベルトリトラクター401の組み立て方を説明する。まず、制御キャップ404の軸受穴444にピン部材405を挿通し、続いてゼンマイ格納キャップ403の軸受穴434にピン部材405の先端部452を挿入する。この際スリット434aにより軸受面431が可撓変形し、スリット452aにより先端部452が可撓変形することで挿入することができる。続いてスリット452aと軸受面431に設けられたブロックとの間にゼンマイ406の内側端406bと外側端406aとを張架する。
【0111】
続いて、制御キャップ404及びゼンマイ格納キャップ403を係合穴442a、432aに係合爪424を挿入し、カエシ424aが出るまで押し込んで、制御キャップ404及びいゼンマイ格納キャップ403をゼンマイ格納キャップ受け部422及び制御キャップ受け部423に固定する。この際、腕部材402の寸法により、係合凸部453は係合凹部443に係合した状態となる。この状態では、ピン部材405は回転しない。そこで、ゼンマイ格納キャップ受け部422及び制御キャップ受け部423を外側からつまむように押圧すると、ゼンマイ格納キャップ403にピン部材405が押され、制御キャップ404内にさらに入り込むことにより、係合凸部453と係合凹部443との係合が外れ、ピン部材405のスプライン状の頭部454は回転空間444内へ移動する。すると頭部454は回転可能となるから、ピン部材405をゼンマイ406の付勢に逆らって回すことができる。十分にピン部材405を回したところでゼンマイ格納キャップ受け部422及び制御キャップ受け部423への押圧を解除すると、再度係合凸部453と係合凹部443とが係合し、ピン部材405が回転しない状態となる。そこでスリット455a内にヘルメットの顎ストラップベルトを通す。ベルトはヘルメットの右側から左側へ、ベルトリトラクター401を経由して切れ目なく繋がった状態となる。この状態でゼンマイ格納キャップ受け部422及び制御キャップ受け部423を外側からつまむように押圧すると、ピン部材405がゼンマイ406の付勢に従って回転し、ベルトが巻かれる。このように、ベルトリトラクター401をつまむだけでベルトを巻取り、ヘルメットのベルトの長さを適宜調節できる。ベルトリトラクター401を離すだけでベルトの長さが固定され、ヘルメットを引っ張っても伸びることがなく、顎に食い込んで痛いとか皮が挟まるということもない。腕部材402がベルトに対して外側に位置するように装着すれば、腕部材402が顔に当たることも回避できる。
【0112】
以上のように、本発明のベルトリトラクターは、様々な用途で使用可能である。もちろん、巻き取る対象は平たいベルトのみならず、紐であっても使用することができる。もちろん、第五実施形態のベルトリトラクター401をバッグに使用することもできるし、他の実施形態のベルトリトラクターをヘルメットに適用することもできる。第五実施形態のベルトリトラクター401は押圧によりピン部材と外側部材との係合を解除したが、逆に、通常時において係合が解除され、押圧により係合されるものであってもよい。ラッチを使うことで、一方に対してのみ芯部の回転を可能とすることもできる。
【0113】
続いて、第六実施形態のベルトリトラクター501について図14を用いて説明する。ベルトリトラクター501は第四実施形態のベルトリトラクター301と同様の部分あるが、ツマミではなくプッシュボタンによりアジャストモードに入る点において大きく異なる。このため、ベルトリトラクター501はバッグに対する部品の位置関係がベルトリトラクター301と比して180度回転した構成となっている。
【0114】
第六実施形態のベルトリトラクター501は、外側部材502a及び502bと、外側部材502aの内部に回転可能に設けられた芯部としての筒部材503a及び503b並びにピン部材504と、ピン部材504と外側部材502aとの間に設置され、芯部としての筒部材503a及び503b並びにピン部材504を外側部材502a及び502bに対して回動するよう付勢された弾性部材としてのゼンマイ(図示省略)と、バッグ生地と外側部材502aとの間に設けられ筒部材503aを押圧可能なボタン部材505と、バッグ生地を挟んで外側部材502aに係合する押さえ部材508とを備える。ゼンマイ以外の部品は樹脂製であるが、金属製とすることもできる。
【0115】
第一外側部材502aは、ピン部材504の回転軸に対して垂直に設けられた円盤型の面である軸受面522と、軸受面522と502bとの間に垂直な柱状に渡された一対の柱部523a,523bとを有し、軸受面522の中央に設けられたピン部材504の一端を回転可能に軸受するための軸受穴524を有している。一対の柱部523a,523bは、それぞれの先端に、第二外側部材502bに係合するための係合部523dを有し、幅方向中央にはベルトが通りベルトをガイドするためのスリット523cを有する。また、バッグ生地を押さえるための羽状部525と、位置決めピンを受容する受容穴525aを有する。
【0116】
第二外側部材502bは円盤型をなし、中央に軸受穴529が形成されている。この軸受穴529はピン部材504の他端が回転可能に挿入される。この軸受穴529の周囲には一対の突起部528が設けられる。第二外側部材502bの半径方向に巴状に設けられた二対のスリット526により橋状に形成された一対の弾性部527は樹脂の素材に由来する弾性を有し、それらの先端に突起部528が筒部材503b方向に突出して設けられている。この弾性部527及び突起部528により押圧部を構成する。突起部528は筒部材503を軸受面522方向へ押圧するための部材であり、軸受面522方向へ突出している。
【0117】
一対の柱部523は第二外側部材502bと軸受面522とに対し垂直に設けられる。なお、柱部は素材の強度等により一対に限られず二対などであってもよい。
【0118】
軸受面522の中央にはピン部材504を軸受するための円形の貫通穴である軸受穴524が設けられている。軸受穴524はピン部材504の先端部542が挿入され
るための円形の軸受貫通穴である。また、軸受面522の円周に近い位置に、ゼンマイの外側端を係合し、またゼンマイの外周を制限するための一対の壁部522aが設けられている。ゼンマイは、L字型に折り曲げられて形成された内側端とU字型に曲げられて形成された外側端とを有するゼンマイである。
【0119】
筒部材503は、上述の第二外側部材502b及び軸受面522に対応する第一面531を有する第一筒部材503aと第二面532を有する第二筒部材503bとを有し、第二筒部材503bは第一面531に垂直に立設された2本の柱部材533の先端の係合部に係合し、支えられている。第一面531及び第二面532にはそれぞれ中心にピン部材504の軸部543を受け入れるための第一穴535及び第二穴534が穿設されている。また、第二筒部材503bの円周近くには、円周に沿って並んだ歯部535があり、第二外側部材502bの内面に設けられた、対応する山状部(図示省略)に係合した場合には筒部材の回転を止める。
【0120】
第一面531及び第二面532には、第一穴535及び第二穴534に連続して、ピン部材504の4つの頭側係合凸部543b及び4つの先側係合凸部543cが係合するためのそれぞれ4つの切り欠き部が表裏に貫通する形で穿設されている。これらの内面は頭側係合凸部543b及び4つの先側係合凸部543cに当接する位置において頭側係合凸部543b及び4つの先側係合凸部543cの当接面に対応した斜面となっており、付勢によってピン部材504が回転した時に筒部材503をバッグ側に押し付ける方向に付勢する。
【0121】
ピン部材504は、一端に設けられた鍔状部541と、これに連接されて延びた軸部543と、他端に設けられた先端部542を有し、先端部542は、ゼンマイ係合部と、軸受穴524に対する抜けどめとを有する。ピン部材504は軸部543に、長さ方向に沿って軸を通るスリット542dが設けられている。このスリット542dはベルトを挿通する挿通部である。また、軸部543は、鍔状部541に連接して軸方向に垂直に突出し、場合によっては第一穴535の切り欠き部に係合する4つの頭側係合凸部543bを有する。さらに、軸部543は、スリット542dを挟んだ逆側の位置から軸方向に垂直に突出し、場合によっては第二穴534切り欠き部に係合する4つの先側係合凸部543cを有する。
【0122】
ボタン部材505は、バッグに開けられた丸穴を通して押さえ部材608の丸穴からバッグ外側に露出するボタン部505aと、これに連接し、第一面531の外側に当接して筒部材503を第二外側部材502b側に押圧する、4本の脚部505bとを有する。
【0123】
押さえ部材508は中心部が丸穴508bとなっており、ここにボタン部505aを受容する。また、位置決めピン508cにより、位置決め穴525aに対して位置決めし、一対の係合爪508dが、対応する外側部材502aの係合部に係合する。
【0124】
このようなベルトリトラクターがバッグに組み付けられた状態で、通常時は筒部材503が突起部528に押されて頭側係合凸部543b及び先側係合凸部543cが切り欠きに係合しているため、ピン部材504と筒部材503とが一体化した状態となっているから、ストラップベルトは柱部533の回りに巻き付き、ゼンマイの付勢により巻き取られたり、これに抗して伸展されたりする。このようにしてゼンマイの付勢によりストラップベルトを巻き取ることができる。一方、ストラップベルトの長さを調節したい場合は、ストラップベルトが伸展し柱部533の回りに巻き付いていない状態でボタン部材505を押し込む。すると、脚部505bが筒部材503を第二外側部材502b側へ押圧し、筒部材503が歯部535と山状部との係合により第二外側部材502bと一体化して回転不能となり、かつ凸部543b及び先側係合凸部543cと切り欠きとの係合が解除されるため、ピン部材504は筒部材503に対し回転可能となり、ストラップベルトを引っ張っていない状態ではスリット543aに挿通されたベルトはゼンマイの回転力によりピン部材503に巻き取られ、筒部材503の柱部材533により画成される空間内に収容される。ストラップベルトの長さを適度に調整したところでボタン部505aへの押圧を解除するとアジャストモードからフィックスモードになり、ストラップベルトは柱部533の回りに巻き取られることになる。この場合にストラップベルトの伸展長さが限定される。すなわち、ボタン部材505は係合解除機構として機能する。
【0125】
このようなベルトリトラクター501は、ベルトリトラクター301と異なり、バッグに対し、螺着ではなく、係合により装着する。まず、バッグに穴にベルトリトラクター501を取り付けるための円形の穴があり、その両側に位置決めのための一対のピン穴が設けられている。これらに嵌合するように押さえ部材508をバッグの外側から設置し、バッグの内側からボタン部材505を、爪508dを弾性変形させながら丸穴508b内に設置する。続いて他の部材一式が一体化した状態で外側部材522の爪部を爪508dに、弾性変形させながら係合させる。これにより、ベルトリトラクター501がバッグに係合により装着される。
【0126】
このようなベルトリトラクター501によれば、アジャストモードとフィックスモードの切替を、ツマミを回すことなくボタンを押し、離すだけで行うことができる。そのため、現状がアジャストモードとフィックスモードのどちらであるかということを意識する必要もなく、操作部分を見る必要もなく、直感的に操作できる。また、ベルトリトラクター301に比べて少ない部品で、ストラップベルトを自動的に巻取ることでストラップベルトが邪魔にならないバッグを実現することができる。
【符号の説明】
【0127】
1,101,201,301,401,501 ベルトリトラクター2,102,202,302,502 外側部材3,103,203,303,503 筒部材4,104,204304,504 ピン部材5,105,205,305,406 ゼンマイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13