(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177381
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】フィルタ装置、電源装置、及び、フィルタ回路の制御装置
(51)【国際特許分類】
H03H 7/06 20060101AFI20231207BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H03H7/06
H02M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089996
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 和宏
【テーマコード(参考)】
5H730
5J024
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730CC03
5J024AA02
5J024BA02
5J024CA14
5J024EA01
5J024EA09
5J024FA04
(57)【要約】
【課題】フィルタ回路の電力損失を負荷の消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができる。
【解決手段】直流電源1と負荷との間に接続されているインダクタ12aと、インダクタ12aと並列に接続されている可変直流抵抗12dとを有するフィルタ回路12を備えるように、フィルタ装置2を構成した。また、フィルタ装置2は、フィルタ回路12から負荷に出力された直流電圧を示す電圧情報とフィルタ回路12から負荷に出力された直流電流を示す電流情報とを取得し、電圧情報と電流情報とから、負荷の消費電力を算出する電力算出回路14と、電力算出回路14により算出された消費電力と直流電圧とに基づいて、可変直流抵抗12dの抵抗値を制御する抵抗値制御回路15とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と負荷との間に接続されているインダクタと、前記インダクタと並列に接続されている可変直流抵抗とを有するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電圧を示す電圧情報と前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電流を示す電流情報とを取得し、前記電圧情報と前記電流情報とから、前記負荷の消費電力を算出する電力算出回路と、
前記電力算出回路により算出された消費電力と前記直流電圧とに基づいて、前記可変直流抵抗の抵抗値を制御する抵抗値制御回路と
を備えたフィルタ装置。
【請求項2】
前記抵抗値制御回路は、
前記フィルタ回路の電力損失が、前記電力算出回路により算出された消費電力のα(0<α<1)倍以下になるように、前記可変直流抵抗の抵抗値を制御することを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記直流電源から前記フィルタ回路に出力された直流電圧を測定する電圧測定回路と、
前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電圧及び前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電流のそれぞれを測定する電流電圧測定回路とを備え、
前記抵抗値制御回路は、
前記電力算出回路により算出された消費電力と、前記電圧測定回路により測定された直流電圧と、前記電流電圧測定回路により測定された直流電圧及び直流電流のそれぞれとを用いて、前記可変直流抵抗の抵抗値の上限値を算出し、前記可変直流抵抗の抵抗値を前記上限値以下に制御することを特徴とする請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記直流電源から前記フィルタ回路に出力された直流電圧を測定する電圧測定回路と、
前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電圧及び前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電流のそれぞれを測定する電流電圧測定回路とを備え、
前記抵抗値制御回路は、
前記電力算出回路により算出された消費電力と、前記電圧測定回路により測定された直流電圧と、前記電流電圧測定回路により測定された直流電圧及び直流電流のそれぞれとを用いて、前記フィルタ回路の電力損失が前記消費電力のα倍以下になる前記可変直流抵抗の抵抗値を算出することを特徴とする請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記フィルタ回路が有する前記インダクタは、寄生直流抵抗を含んでいることを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記フィルタ回路が有する前記インダクタは、第1の寄生直流抵抗を含んでいる第1のインダクタであり、
前記フィルタ回路は、
前記可変直流抵抗と直列に接続されている第2のインダクタをさらに備え、
前記第2のインダクタは、前記第1の寄生直流抵抗の抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第2の寄生直流抵抗を含んでおり、
前記第2のインダクタのインダクタンス値は、前記第1のインダクタのインダクタンス値よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記可変直流抵抗は、トランジスタを含んでおり、
前記トランジスタの第1の端子は、前記インダクタの一端と接続され、前記トランジスタの第2の端子は、前記インダクタの他端と接続され、前記トランジスタの制御端子は、前記抵抗値制御回路と接続されており、
前記抵抗値制御回路は、前記トランジスタの制御端子に印加する電圧又は前記トランジスタの制御端子に流れる電流のいずれかを制御することで、前記可変直流抵抗の抵抗値を制御することを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記抵抗値制御回路は、直流増幅器を含んでおり、
前記直流増幅器は、前記電力算出回路により算出された消費電力と前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電圧を示す電圧情報とに基づいて、前記トランジスタの制御端子に印加する電圧又は前記トランジスタの制御端子に流れる電流のいずれかを制御することを特徴とする請求項7記載のフィルタ装置。
【請求項9】
前記直流増幅器に直流電圧を供給する電源として、矩形パルス電圧を2倍電圧又は3倍電圧に整流する整流回路を備えていることを特徴とする請求項8記載のフィルタ装置。
【請求項10】
直流電源と、
負荷であるDC/DCコンバータと、
請求項1記載のフィルタ装置と
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項11】
前記抵抗値制御回路によって、前記可変直流抵抗の抵抗値が減少されるときには、前記DC/DCコンバータの動作周波数を増加させ、前記抵抗値制御回路によって、前記可変直流抵抗の抵抗値が増加されるときには、前記DC/DCコンバータの動作周波数を減少させる動作周波数制御回路を備えたことを特徴とする請求項10記載の電源装置。
【請求項12】
前記直流電源に内部抵抗が存在しており、
前記可変直流抵抗の抵抗値が第1の抵抗値であるときに、前記フィルタ回路から前記DC/DCコンバータに出力された直流電圧である第1の電圧と、前記可変直流抵抗の抵抗値が第2の抵抗値であるときに、前記フィルタ回路から前記DC/DCコンバータに出力された直流電圧である第2の電圧と前記DC/DCコンバータの一定の消費電力とに基づいて、前記内部抵抗の抵抗値を算出する内部抵抗値算出回路を備えたことを特徴とする請求項10記載の電源装置。
【請求項13】
前記可変直流抵抗の抵抗値が第1の抵抗値であるときに、前記フィルタ回路から前記DC/DCコンバータに出力された直流電圧である第1の電圧と、前記可変直流抵抗の抵抗値が第2の抵抗値であるときに、前記フィルタ回路から前記DC/DCコンバータに出力された直流電圧である第2の電圧と前記DC/DCコンバータの一定の消費電力とに基づいて、前記直流電源の起電力を算出する起電力算出回路を備えたことを特徴とする請求項10記載の電源装置。
【請求項14】
前記DC/DCコンバータの出力電力が一定であり、前記DC/DCコンバータの入力電力が低下に伴って、前記DC/DCコンバータの効率が低下する場合、
前記抵抗値制御回路は、
前記DC/DCコンバータの入力電圧に対応する前記DC/DCコンバータの効率に基づいて、前記フィルタ回路の電力損失が前記DC/DCコンバータの前記消費電力のα倍以下になる前記可変直流抵抗の抵抗値を算出することを特徴とする請求項10記載の電源装置。
【請求項15】
直流電源と負荷との間に接続されているインダクタと、前記インダクタと並列に接続されている可変直流抵抗とを有するフィルタ回路を制御する制御装置であって、
前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電圧を示す電圧情報と前記フィルタ回路から前記負荷に出力された直流電流を示す電流情報とを取得し、前記電圧情報と前記電流情報とから、前記負荷の消費電力を算出する電力算出回路と、
前記電力算出回路により算出された消費電力と前記直流電圧とに基づいて、前記可変直流抵抗の抵抗値を制御する抵抗値制御回路と
を備えたことを特徴とするフィルタ回路の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ装置、電源装置、及び、フィルタ回路の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルタ回路を備える電源装置がある(例えば、特許文献1を参照)。当該フィルタ回路は、電源から供給された電圧を昇圧する昇圧回路と負荷との間に接続されている可変抵抗を有している。当該フィルタ回路は、当該昇圧回路による昇圧後の電圧が振動する現象であるリップルを低減するために、昇圧後の電圧に応じて、可変抵抗の抵抗値を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電源装置は、負荷の消費電力の変動に伴って、フィルタ回路の電力損失が変動した場合に、フィルタ回路の電力損失を制御することができないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、フィルタ回路の電力損失を負荷の消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができるフィルタ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るフィルタ装置は、直流電源と負荷との間に接続されているインダクタと、インダクタと並列に接続されている可変直流抵抗とを有するフィルタ回路を備えている。また、フィルタ装置は、フィルタ回路から負荷に出力された直流電圧を示す電圧情報とフィルタ回路から負荷に出力された直流電流を示す電流情報とを取得し、電圧情報と電流情報とから、負荷の消費電力を算出する電力算出回路と、電力算出回路により算出された消費電力と直流電圧とに基づいて、可変直流抵抗の抵抗値を制御する抵抗値制御回路とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フィルタ回路の電力損失を負荷の消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
【
図2】式(5)を用いて計算したフィルタ回路12の合成直流抵抗Rtと直流電流Iiとの対応関係を示す説明図である。
【
図3】式(8)を用いて計算したフィルタ回路12の合成直流抵抗Rtと直流電圧Viとの対応関係を示す説明図である。
【
図4】αとインダクタの寄生直流抵抗値rpとの対応関係を示す説明図である。
【
図5】直流電圧Vs、直流電流Ii及び合成直流抵抗Rtにおけるそれぞれの時間変化の一例を示す説明図である。
【
図6】
図1に示す電源装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】フィルタ回路12に含まれている可変直流抵抗12dを示す構成図である。
【
図8】抵抗値制御回路15に含まれているゲート電位制御回路15aを示す構成図である。
【
図9】ゲート電位制御回路15aに直流電圧を供給するための矩形パルスの整流回路を示す構成図である。
【
図10】実施の形態2に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
【
図11】実施の形態3に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
【
図12】直流電圧Vs、直流電流Ii、合成直流抵抗Rt及びDC/DCコンバータ3の動作周波数fswにおけるそれぞれの時間変化の一例を示す説明図である。
【
図13】実施の形態4に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
【
図14】r0が0.01[Ω]である場合に、フィルタ回路12の電力損失Plossに対するDC/DCコンバータ3の消費電力Piの比αと可変直流抵抗12dの抵抗値Rvとの対応関係を示す説明図である。
【
図15】実施の形態5に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
【
図16】昇圧型のDC/DCコンバータの効率の入力電圧依存性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
図1に示す電源装置は、直流電源1及びフィルタ装置2を備えている。
電源装置は、負荷であるDC/DCコンバータ3に電力を供給する。
図1に示す電源装置では、負荷がDC/DCコンバータ3である。しかし、これは一例に過ぎず、負荷が、DC/DCコンバータ3以外の定電力負荷であってもよい。
【0011】
直流電源1は、電源電圧として、直流電圧Vsをフィルタ装置2に出力する。
フィルタ装置2は、電圧測定回路11、フィルタ回路12、電流電圧測定回路13、電力算出回路14及び抵抗値制御回路15を備えている。電力算出回路14及び抵抗値制御回路15を含む回路は、フィルタ回路12の制御装置である。
DC/DCコンバータ3は、フィルタ装置2から出力された直流電圧Viを他の直流電圧に変換し、他の直流電圧を出力電圧として出力する変換器である。なお、DC/DCコンバータ3は、出力電圧を一定値に保つことが可能な定電力負荷である。
【0012】
電圧測定回路11は、直流電源1によってフィルタ回路12に印加される直流電圧Vsを測定する。
電圧測定回路11は、直流電圧Vsを示す電圧情報を抵抗値制御回路15に出力する。
【0013】
フィルタ回路12は、インダクタ12a、キャパシタ12b,12c及び可変直流抵抗12dを有している。
インダクタ12aの一端は、直流電源1と電気的に接続されている。インダクタ12aの他端は、DC/DCコンバータ3と電気的に接続されている。
インダクタ12aのインダクタンス値はLであり、インダクタ12aは、寄生直流抵抗rpを含んでいる。
フィルタ回路12は、例えば、DC/DCコンバータ3に含まれているスイッチング素子から発生するスイッチングノイズを低減するためのローパスフィルタである。
【0014】
電流電圧測定回路13は、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電圧Viと、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電流Iiとを測定する。
電流電圧測定回路13は、直流電圧Viを示す電圧情報と直流電流Iiを示す電流情報とを電力算出回路14及び抵抗値制御回路15のそれぞれに出力する。
【0015】
電力算出回路14は、電流電圧測定回路13から、直流電圧Viを示す電圧情報と直流電流Iiを示す電流情報とを取得する。
電力算出回路14は、直流電圧Viと直流電流Iiとから、DC/DCコンバータ3の消費電力Piを算出する。
電力算出回路14は、DC/DCコンバータ3の消費電力Piを抵抗値制御回路15に出力する。
【0016】
抵抗値制御回路15は、電力算出回路14により算出された消費電力Piと直流電圧Viとに基づいて、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを制御する。
即ち、抵抗値制御回路15は、電力算出回路14から消費電力Piを示す電力情報を取得し、電圧測定回路11から直流電圧Vsを示す電圧情報を取得し、電流電圧測定回路13から直流電圧Viを示す電圧情報及び直流電流Iiを示す電流情報のそれぞれを取得する。そして、抵抗値制御回路15は、消費電力Piと、直流電圧Vsと、直流電圧Viと、直流電流Iiとを用いて、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍以下になる可変直流抵抗12dの抵抗値Rvαを算出する。抵抗値制御回路15は、可変直流抵抗12dの抵抗値が抵抗値Rvαになるように、可変直流抵抗12dを制御する。
【0017】
次に、
図1に示す電源装置の原理について、まずRvを無視して説明する。Rvを無視とは、Rvを無限大と仮定することを意味する。
出力電圧を一定値に保つ定電力負荷であるDC/DCコンバータ3は、フィルタ回路12を介して、直流電源1と接続されている。
インダクタ12aは、寄生直流抵抗rpを含んでいる。一方、DC/DCコンバータ3は、負性抵抗を有している。即ち、DC/DCコンバータ3の入力電圧である直流電圧Viが低下すれば、入力電流である直流電流Iiが増加する。
フィルタ回路12の電力損失Plossは、rp×Ii
2で表される。このため、フィルタ回路12の電力損失Plossは、寄生直流抵抗rpが大きくなるほど増加し、直流電圧Viが低下するほど増加する。
【0018】
DC/DCコンバータ3の入力電圧である直流電圧Viは、以下の式(1)のように表される。
また、DC/DCコンバータ3の消費電力Piは、以下の式(2)のように表される。
式(1)が式(2)に代入されると、DC/DCコンバータ3の消費電力Piは、以下の式(3)のように表される。
【0019】
【0020】
式(3)は、以下の式(4)のように変形することが可能であり、直流電流Iiは、式(5)のように表される。
【0021】
【0022】
また、DC/DCコンバータ3の消費電力Piは、以下の式(6)のように表すことができる。
【0023】
【0024】
式(6)は、以下の式(7)のように変形することが可能であり、直流電圧Viは、式(8)のように表される。
【0025】
【0026】
式(1)を変形して、直流電圧Vsについて解くと、直流電圧Vsは、以下の式(9)のように表される。
【0027】
【0028】
図2は、式(5)を用いて計算したフィルタ回路12の合成直流抵抗Rtと直流電流Iiとの対応関係を示す説明図である。合成直流抵抗Rtの値は、インダクタ12aの寄生直流抵抗rp及び可変直流抵抗12dによって決まる。
図2において、横軸は、合成直流抵抗Rt[Ω]を示し、縦軸は、直流電流Ii[A]を示している。
一点鎖線は、消費電力Piが30[W]であるときの、合成直流抵抗Rtと直流電流Iiとの関係を示している。
実線は、消費電力Piが15[W]であるときの、合成直流抵抗Rtと直流電流Iiとの関係を示している。
図2の例では、直流電圧Vsが3[V]である。
【0029】
図3は、式(8)を用いて計算したフィルタ回路12の合成直流抵抗Rtと直流電圧Viとの対応関係を示す説明図である。
図3において、横軸は、合成直流抵抗Rtを[Ω]示し、縦軸は、直流電圧Vi[V]を示している。
一点鎖線は、消費電力Piが30[W]であるときの、合成直流抵抗Rtと直流電圧Viとの関係を示している。
実線は、消費電力Piが15[W]であるときの、合成直流抵抗Rtと直流電圧Viとの関係を示している。
図3の例では、直流電圧Vsが3[V]である。
【0030】
合成直流抵抗Rtは、寄生直流抵抗rpの増加に伴って増加する。
直流電流Iiは、
図2に示すように、合成直流抵抗Rtの増加に伴って、2次カーブで変化する。
また、直流電流Iiは、寄生直流抵抗rpの増加に伴って合成直流抵抗Rtが後述のRt_matで与えられる閾値に近づくことで、急激に増加する。
図2の例では、消費電力Piが30[W]であるときの閾値Th
1は、75[mΩ]であり、消費電力Piが15[W]であるときの閾値Th
2は、150[mΩ]である。
直流電圧Viは、
図3に示すように、合成直流抵抗Rtの増加に伴って、2次カーブで変化する。
また、直流電圧Viは、寄生直流抵抗rpの増加に伴って合成直流抵抗Rtが閾値に近づくことで、急激に減少する。
図3の例では、消費電力Piが30[W]であるときの閾値Th
1は、75[mΩ]であり、消費電力Piが15[W]であるときの閾値Th
2は、150[mΩ]である。
【0031】
電源の直流電圧Vsの低下に伴い、直流電流Iiが急激に増加し、フィルタ回路12での直流電圧ドロップが大きくなることで、直流電圧Viが急激に減少し、その結果として、DC/DCコンバータ3に対して、所望の電力の供給ができなくなることがある。
例えば、消費電力Piが15[W]であるとき、直流電圧Vsが3[V]、インダクタ12aに含まれている寄生直流抵抗rpが0[Ω]であれば、直流電流Iiは、5[A]である。
インダクタ12aに含まれている寄生直流抵抗rpが例えば0.12[Ω]である場合、インダクタ12aを流れる直流電流Iiが上記と同じ5[A]であると仮定すれば、インダクタ12aでの電圧ドロップは、0.6[V](=5[A]×0.12[Ω])程度インダクタ12aでの電圧ドロップは、
図3に示すように、約0.83[V]である。
【0032】
インダクタ12aでの電圧ドロップが0.6[V]と想定するときのインダクタ12aの電力損失Plossは、3[W](=0.62/0.12)である。
一方、実際に生じる電力損失Plossは、インダクタ12aでの電圧ドロップが0.83[V]であるときの5.7[W](=0.832/0.12)である。
したがって、実際に生じる電力損失Plossは、インダクタ12aでの電圧ドロップが0.6[V]と想定するときの電力損失Plossの1.9倍になる。この結果、インダクタ12aにおいて、焼損事故の発生を招く可能性がある。
定常時の電圧と比べて、直流電圧Vsが極端に低下する現象としては、例えば、車載機器における車両クランキング時のバッテリー電圧低下がある。
【0033】
図1に示す電源装置は、DC/DCコンバータ3の消費電力Piが30[W]であれば、合成直流抵抗Rtが閾値Th
1以上のとき、DC/DCコンバータ3に対して、所望の電力を供給することができない。
また、
図1に示す電源装置は、DC/DCコンバータ3の消費電力Piが15[W]であれば、合成直流抵抗Rtが閾値Th
2以上のとき、DC/DCコンバータ3に対して、所望の電力を供給することができない。
【0034】
フィルタ回路12の合成直流抵抗Rtが、閾値Th1、又は、閾値Th2に近づくときの直流抵抗値は、負荷整合状態での値である。即ち、合成直流抵抗Rtが、閾値Th1、又は、閾値Th2に近づくときの直流抵抗値は、DC/DCコンバータ3の入力直流抵抗値と等しくなっており、DC/DCコンバータ3の入力直流電圧はVs/2である。
このときの合成直流抵抗Rtの抵抗値をRt_mat[Ω]として、式(5)に含まれている√の中、又は、式(8)に含まれている√の中を0とすることで、Rt_mat[Ω]は、以下の式(10)のように表される。これは、一般に良く知られている負荷整合条件であり、供給側の合成直流抵抗値と負荷の直流抵抗値とが一致するとき、負荷への最大供給可能電力Pmaxが、Vs2/4Rt_matで与えられることを意味している。
【0035】
【0036】
フィルタ回路12の電力損失Plossが、DC/DCコンバータ3の消費電力Piのα(0<α<1)倍になる合成直流抵抗Rtの抵抗値がRcであるとすれば、以下の式(11)が成立する。
【0037】
【0038】
直流電圧Vs及び消費電力Piのそれぞれが既知であるとして、合成直流抵抗Rtの直流抵抗値Rcについて解くと、直流抵抗値Rcは、以下の式(12)のように表される。
【0039】
【0040】
合成直流抵抗Rtの抵抗値がRcであるとき、フィルタ回路12の電力損失Plossは、DC/DCコンバータ3の消費電力Piのα倍になる。
また、寄生直流抵抗rpの直流抵抗値Rcは、以下の式(13)のように表される。Rcはフィルタ回路12のPlossをPiのα倍にするための閾値である。
【0041】
【0042】
したがって、直流抵抗値Rcの最大値は、αの値に関係なく、Vs
2/4Piであり、式(10)と整合している。
図4は、αと直流抵抗値Rcとの対応関係を示す説明図である。
図4において、横軸は、α(=Ploss/Pi)を示し、縦軸は、寄生直流抵抗rp[Ω]を示している。
一点鎖線は、消費電力Piが30[W]であるときの、αと直流抵抗値Rcとの関係を示している。
実線は、消費電力Piが15[W]であるときの、αと直流抵抗値Rcとの関係を示している。
【0043】
次に、
図1に示す電源装置の動作について説明する。
図1に示す電源装置の運用が開始されると、電圧測定回路11は、直流電源1によってフィルタ回路12に印加される直流電圧Vsを測定する。
電圧測定回路11は、直流電圧Vsを示す電圧情報を抵抗値制御回路15に出力する。
【0044】
電流電圧測定回路13は、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電圧Viを測定し、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電流Iiを測定する。
電流電圧測定回路13は、直流電圧Viを示す電圧情報と直流電流Iiを示す電流情報とを電力算出回路14及び抵抗値制御回路15のそれぞれに出力する。
【0045】
電力算出回路14は、電流電圧測定回路13から、直流電圧Viを示す電圧情報と直流電流Iiを示す電流情報とを取得する。
電力算出回路14は、直流電圧Vi及び直流電流Iiのそれぞれを式(2)に代入することで、DC/DCコンバータ3の消費電力Piを算出する。
電力算出回路14は、DC/DCコンバータ3の消費電力Piを示す電力情報を抵抗値制御回路15に出力する。
【0046】
抵抗値制御回路15は、電圧測定回路11から直流電圧Vsを示す電圧情報を取得し、電力算出回路14から消費電力Piを示す電力情報を取得する。
抵抗値制御回路15は、直流電圧Vs及び消費電力Piのそれぞれを、式(12)に代入することで、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍になる、フィルタ回路12の直流抵抗値である直流抵抗値Rcを算出する。
【0047】
また、抵抗値制御回路15は、電流電圧測定回路13から、直流電圧Viを示す電圧情報と直流電流Iiを示す電流情報とを取得する。
抵抗値制御回路15は、以下の式(15)に示すように、直流電圧Vs、直流電圧Vi及び直流電流Iiを用いて、フィルタ回路12の合成直流抵抗Rtを算出する。
【0048】
なお、合成直流抵抗Rtは、rpとRvの並列接続から算出されるので、図示しないメモリに保存されたrpの値と、後述のトランジスタにおけるドレインソース間のオン抵抗Rvと電圧Vgsとの対応関係のテーブルから読み取ったRvの値とから、Rtを算出しても良く、この場合は、電圧測定回路11から直流電圧Vsを示す電圧情報を取得して、式(15)を用いてRtを算出する必要がない。
【0049】
抵抗値制御回路15は、寄生直流抵抗rpと可変直流抵抗12dの抵抗値Rvの合成直流抵抗Rtと、直流抵抗値Rcとを比較し、合成直流抵抗Rtが直流抵抗値Rcよりも大きければ、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍よりも大きいと判断する。
抵抗値制御回路15は、フィルタ回路12の電力損失Plossを消費電力Piのα倍よりも小さくするため、可変直流抵抗12dの抵抗値が、以下の式(16)に表されるRv以下になるように制御する。式(16)に表されるRvは、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍以下になる、可変直流抵抗12dの抵抗値の上限値である。
【0050】
【0051】
[実施例]
図5は、直流電圧Vs、直流電流Ii及び合成直流抵抗Rtにおけるそれぞれの時間変化の一例を示す説明図である。
図5において、横軸は、時間を示し、縦軸は、直流電圧Vs、直流電流Ii及び合成直流抵抗Rtのそれぞれを示している。縦軸における直流電圧Vs、直流電流Ii及び合成直流抵抗Rtのそれぞれは、相対値である。
図6は、
図1に示す電源装置の動作を示すフローチャートである。
図5において、
図1に示す電源装置の運用が開始された当初の直流電圧Vsは、Vs1であり、当初の直流電流Iiは、Ii1である。また、当初の合成直流抵抗Rtは、Rt1である。
以下、直流電圧Vsが、Vs1からVs2に低下したのち、Vs2からVs3に上昇する例を説明する。直流抵抗値Rcは、式(12)から明らかなように、直流電圧Vsの関数であり、直流電圧Vsが、Vs1からVs2に低下することで、それらに対応する直流抵抗値Rcが、Rc1からRc2に低下し、直流電圧Vsが、Vs2からVs3に上昇することで、直流抵抗値Rcが、Rc2からRc3に上昇する。
【0052】
電力算出回路14は、当初の直流電圧Vi1及び当初の直流電流Ii1のそれぞれを式(2)に代入することで、DC/DCコンバータ3の消費電力Piを算出する。ここでは、消費電力Piは、直流電圧Viにかかわらず一定とする。
抵抗値制御回路15は、当初の直流電圧Vs1及び消費電力Piのそれぞれを、式(12)に代入することで、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍になる、フィルタ回路12の合成直流抵抗値Rc1を算出する(
図6のステップST1)。
図5の例では、Rt1<Rc1が成立している前提とする。
【0053】
図5に示すように、時刻t1から時刻t2にかけて、直流電圧Vsが、Vs1からVs2に低下した場合、直流電流Iiが増加する。
電圧測定回路11は、時刻t1から時刻t2にかけて、直流電圧Vsを繰り返し測定する。
抵抗値制御回路15は、時刻t1から時刻t2にかけて、直流電圧Vs及び前記消費電力Piのそれぞれを、式(12)に代入することで、直流抵抗値Rcを繰り返し算出する。
直流電圧Vsが、Vs1からVs2に低下しても、Rt1≦Rc1が成立していれば(
図6のステップST2:YESの場合)、ステップST1,ST2の処理が繰り返される。
【0054】
Rt1≦Rc1が成立していなければ(
図6のステップST2:NOの場合)、抵抗値制御回路15は、時刻t3から時刻t4にかけて、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを低下させることで、フィルタ回路12の合成直流抵抗Rtを低下させる(
図6のステップST3)。即ち、抵抗値制御回路15は、合成直流抵抗RtをRt1からRt2に低下させる。
抵抗値制御回路15は、電圧測定回路11から直流電圧Vsを取得する。そして、抵抗値制御回路15は、直流電圧Vs及び前記消費電力Piのそれぞれを、式(12)に代入することで、フィルタ回路12の合成直流抵抗値Rc2を算出する。
【0055】
Rt2≦Rc2が成立していなければ(
図6のステップST4:NOの場合)、抵抗値制御回路15は、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを更に低下させることで、合成直流抵抗Rtを更に低下させる(
図6のステップST3)。
抵抗値制御回路15は、Rt2≦Rc2が成立していれば(
図6のステップST4:YESの場合)、合成直流抵抗RtをRt2に維持する(
図6のステップST5)。
抵抗値制御回路15は、電圧測定回路11により測定された直流電圧Vsが上昇しなければ(
図6のステップST6:NOの場合)、合成直流抵抗Rtの維持を継続する(
図6のステップST5)。
【0056】
抵抗値制御回路15は、電圧測定回路11により測定された直流電圧Vsが上昇していれば(
図6のステップST6:YESの場合)、時刻t7から時刻t8にかけて、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを上昇させることで、合成直流抵抗Rtを上昇させる(
図6のステップST7)。即ち、抵抗値制御回路15は、合成直流抵抗RtをRt2からRt3に上昇させる。これはインダクタ12aへの分流を増加させ、インダクタ12aのローパスフィルタ機能を増大させるためである。
抵抗値制御回路15は、電圧測定回路11から直流電圧Vsを取得する。そして、抵抗値制御回路15は、直流電圧Vs及び前記消費電力Piのそれぞれを、式(12)に代入することで、フィルタ回路12の合成直流抵抗値Rc3を算出する(
図6のステップST8)。
【0057】
抵抗値制御回路15は、Rt3≦Rc3が成立していても、合成直流抵抗Rt3が合成直流抵抗値Rc3に漸近していなければ(
図6のステップST9:NOの場合)、ステップST7,ST8の処理を繰り返し行う。
抵抗値制御回路15は、Rt3≦Rc3が成立しており、かつ、合成直流抵抗Rt3が合成直流抵抗値Rc3に漸近していれば(
図6のステップST9:YESの場合)、一連の処理を終了する。なお、ここでは、直流電圧Vsを取得する例を示したが、式(12)からもわかる通り、後述のトランジスタにおけるドレインソース間のオン抵抗Rvと電圧Vgsとの対応関係のテーブルから読み取ったRvの値から、Rtを算出できる場合は、各ステップでVsの代わりにViを取得してもよい。
【0058】
図7は、フィルタ回路12に含まれている可変直流抵抗12dを示す構成図である。
図7の例では、可変直流抵抗12dとして、ディスクリート素子であるトランジスタTrが用いられている。トランジスタTrとしては、例えば、Nチャネル型の電界効果トランジスタ(以下「MOSFET」という)を用いることができる。
ただし、トランジスタTrは、Nチャネル型のMOSFETに限るものではなく、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
トランジスタTrのドレイン端子D(第1の端子)は、インダクタ12aの一端と接続されている。
トランジスタTrのソース端子S(第2の端子)は、インダクタ12aの他端と接続されている。
トランジスタTrの制御端子であるゲート端子Gは、抵抗値制御回路15に含まれているゲート電位制御回路15aと接続されている。
【0059】
図8は、抵抗値制御回路15に含まれているゲート電位制御回路15aを示す構成図である。
ゲート電位制御回路15aは、直流増幅器によって実現されている。直流増幅器は、例えば
図8に示すように、トランジスタ素子Q2,Q3,Q4、抵抗R1,R2,R3,R4,R5及びキャパシタC1,C2を備えている。
直流増幅器は、電力算出回路14により算出された消費電力Piに基づいて、トランジスタTrのゲート端子Gに印加する電圧、又は、トランジスタTrのゲート端子Gに流れる電流のいずれかを制御する。
図8において、直流増幅器のVoutは、トランジスタTrのゲート端子Gと接続されている。
【0060】
以下、ゲート電位制御回路15aによるトランジスタTrの制御動作を説明する。
ゲート電位制御回路15aである直流増幅器は、トランジスタTrのソース端子Sに印加されているソース電圧とトランジスタTrの閾値電圧との和の電圧よりも高い電圧Vgsをゲートソース間に印加する。電圧Vgsがゲートソース間に印加されることで、トランジスタTrのドレインソース間が導通する。
トランジスタTrにおけるゲートソース間のコンダクタンスは、電圧Vgsに比例するため、ドレインソース間のオン抵抗であるRvは、電圧Vgsに逆比例する。ドレインソース間のオン抵抗であるRvは、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvである。
例えば、ドレインソース間のオン抵抗Rvと電圧Vgsとの対応関係がテーブル化されていれば、ゲート電位制御回路15aは、テーブルを参照することで、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍以下になる、オン抵抗Rvに対応する電圧Vgsを特定することができる。ゲート電位制御回路15aは、特定した電圧Vgsをゲートソース間に印加する。
【0061】
なお、ゲート電位制御回路15aの制御電圧としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)におけるデジタルアナログコンバータから出力された直流電圧、又は、PWM(Pulse Width Modulation)信号における矩形パルス電圧の平均値を用いることができる。ゲート電位制御回路15aは、外部から印加された電圧Vccを超えない範囲で、当該制御電圧を(1+R2/R3)倍に増幅し、増幅後の制御電圧をトランジスタTrのゲート端子Gに印加する。
PWM信号における矩形パルス電圧をゲート電位制御回路15aに供給する電源として、
図9に示すような電圧整流回路を用いることができる。
【0062】
図9は、ゲート電位制御回路15aに直流電圧を供給するための矩形パルス整流回路を示す構成図である。
図9に示す整流回路は、PNPトランジスタQ1、ダイオードD1,D2,D3,D4、キャパシタC3,C4,C5,C6及び矩形波生成回路SWを備えている。
図9に示す整流回路は、矩形パルス電圧を2倍電圧又は3倍電圧に整流し、ゲート電位制御回路15aに供給する電圧Vccとして、2倍電圧又は3倍電圧のいずれかをゲート電位制御回路15aに出力する。
【0063】
以上の実施の形態1では、直流電源1と負荷との間に接続されているインダクタ12aと、インダクタ12aと並列に接続されている可変直流抵抗12dとを有するフィルタ回路12を備えるように、フィルタ装置2を構成した。また、フィルタ装置2は、フィルタ回路12から負荷に出力された直流電圧を示す電圧情報とフィルタ回路12から負荷に出力された直流電流を示す電流情報とを取得し、電圧情報と電流情報とから、負荷の消費電力を算出する電力算出回路14と、電力算出回路14により算出された消費電力と直流電圧とに基づいて、可変直流抵抗12dの抵抗値を制御する抵抗値制御回路15とを備えている。したがって、フィルタ装置2は、フィルタ回路12の電力損失を負荷の消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができる。
【0064】
即ち、DC/DCコンバータ3のように消費電力が入力電圧にかかわらず一定な負荷に接続されたフィルタ装置2は、フィルタ回路12に印加される直流電圧Vsが低下した際に生じる、負荷消費電流増加に伴うフィルタ回路12での過大な電力ロスを回避できるようにするため、直流電圧Vsを監視して、フィルタ回路12での損失を消費電力Piの一定割合以下に保つことが可能な合成直流抵抗Rtの閾値となる直流抵抗値Rcを計算している。そして、フィルタ装置2は、直流電圧Vsが低下しているときには、交流ノイズを除去するというフィルタ回路12の機能を多少犠牲にしても、フィルタ回路12の直流抵抗成分をシャントできる抵抗値制御回路15を設けている。フィルタ装置2は、インダクタ12aと可変直流抵抗12dとの合成直流抵抗成分を直流抵抗値Rc以下にすることで、安定した電力をDC/DCコンバータ3に供給できるほか、フィルタ回路12での損失をDC/DCコンバータ3の消費電力Piの一定割合以下にして、フィルタ回路12での過大なジュール損失を回避することができる。
【0065】
実施の形態2.
実施の形態2では、フィルタ回路12が、第1のインダクタであるインダクタ12aの他に、第2のインダクタであるインダクタ12eを有しているフィルタ装置2について説明する。
【0066】
図10は、実施の形態2に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
図10において、
図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
フィルタ回路12は、インダクタ12a、キャパシタ12b,12c、可変直流抵抗12d及びインダクタ12eを有している。
図10に示す電源装置では、第1のインダクタであるインダクタ12aが含んでいる寄生直流抵抗rpは、第1の寄生直流抵抗rp1である。
【0067】
第2のインダクタであるインダクタ12eは、可変直流抵抗12dと直列に接続されている。インダクタ12eが含んでいる寄生直流抵抗は、第2の寄生直流抵抗rp2である。
第2の寄生直流抵抗rp2の直流抵抗値は、第1の寄生直流抵抗rp1の直流抵抗値よりも小さい。
インダクタ12eのインダクタンス値L2は、インダクタ12aのインダクタンス値L1よりも小さい。
【0068】
次に、
図10に示す電源装置の動作について説明する。
図10に示すフィルタ回路12は、インダクタ12aのほかに、インダクタ12eを有している。このため、
図10に示すフィルタ回路12の全体の直流抵抗は、rp1×rp2/(rp1+rp2)以上に制限される。
しかしながら、
図1でRvを0に近づけるように制御した場合には、インダクタ12aのインダクタンス分がショートされてしまうので、
図1のフィルタ回路12はローパスフィルタ(以下「LPF」という)としての機能が消失してしまうのに対し、
図2のフィルタ回路12ではRvを0に近づけてもインダクタ12eのインダクタンス値L2が残るため、
図10に示すフィルタ回路12においては、LPFとして、ある程度のノイズ除去性能を確保することができる。
【0069】
抵抗値制御回路15は、フィルタ回路12の電力損失Plossを消費電力Piのα倍よりも小さくするため、可変直流抵抗12dの抵抗値が、以下の式(17)に表されるRv以下になるように制御する。式(17)に表されるRvは、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍になる、可変直流抵抗12dの抵抗値の上限値である。つまり、式(17)に表されるRv以下の抵抗値は、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍以下になる、可変直流抵抗12dの閾値となる抵抗値である。
【0070】
【0071】
図10に示すフィルタ装置2においても、
図1に示すフィルタ装置2と同様に、フィルタ回路12の電力損失を負荷の消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができる。
【0072】
実施の形態3.
実施の形態3では、DC/DCコンバータ3の動作周波数を制御する動作周波数制御回路16を備える電源装置について説明する。
【0073】
図11は、実施の形態3に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
図11において、
図1及び
図10と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
動作周波数制御回路16は、抵抗値制御回路15によって、可変直流抵抗12dの抵抗値を減少させるときには、DC/DCコンバータ3の動作周波数を増加させる。
動作周波数制御回路16は、抵抗値制御回路15によって、可変直流抵抗12dの抵抗値を増加させるときには、DC/DCコンバータ3の動作周波数を減少させる。
【0074】
図11に示すフィルタ装置2は、
図1に示すフィルタ装置2に対して動作周波数制御回路16が適用されたものである。しかし、これは一例に過ぎず、
図10に示すフィルタ装置2に対して動作周波数制御回路16が適用されたものであってもよい。
【0075】
図12は、直流電圧Vs、直流電流Ii、合成直流抵抗Rt及びDC/DCコンバータ3の動作周波数fswにおけるそれぞれの時間変化の一例を示す説明図である。
図12において、横軸は、時間を示し、縦軸は、直流電圧Vs、直流電流Ii、合成直流抵抗Rt及び動作周波数fswのそれぞれを示している。縦軸における直流電圧Vs、直流電流Ii、合成直流抵抗Rt及び動作周波数fswのそれぞれは、相対値である。
【0076】
次に、
図11に示す電源装置の動作について説明する。動作周波数制御回路16以外は、
図1に示す電源装置と同様であるため、ここでは、動作周波数制御回路16の動作のみを説明する。
抵抗値制御回路15によって、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvが減少されるときには、動作周波数制御回路16は、
図12に示すように、DC/DCコンバータ3の動作周波数fswを増加させる。これにより、DC/DCコンバータ3に含まれているスイッチング素子におけるスイッチングパルスの周波数が上昇する。このため、フィルタ回路12の実効インダクタンス値が小さくなり、LPFのカットオフ周波数が上昇しても、除去すべきスイッチングノイズの周波数も上昇するため、ノイズの除去効果の低下を軽減することができる。
一方、抵抗値制御回路15によって、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvが増加されるときには、フィルタ回路12の実効インダクタンス値が大きくなり、LPFのカットオフ周波数が低下するため、動作周波数制御回路16は、
図12に示すように、DC/DCコンバータ3の動作周波数fswを減少させる。
【0077】
実施の形態4.
実施の形態4では、内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18を備える電源装置について説明する。
【0078】
図13は、実施の形態4に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
図13において、
図1、
図10及び
図11と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図13に示す電源装置では、直流電源1に内部抵抗1aが存在している。
図13に示す電源装置は、内部抵抗1aの不明な抵抗値r0と、直流電源1の不明な起電力E0を算出する機能を有している。
【0079】
内部抵抗値算出回路17は、第1の電圧Vi1と、第2の電圧Vi2及びViの値に依存しない消費電力Piとに基づいて、内部抵抗1aの抵抗値r0を算出する。
第1の電圧Vi1は、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvが第1の抵抗値Rv1であるときに、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電圧Viであり、内部抵抗値算出回路17は、電流電圧測定回路13から第1の電圧Vi1を示す電圧情報とIi1を示す電流情報とを取得し、第1の電圧Vi1とIi1との積から消費電力Piを計算する。
第2の電圧Vi2は、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvが第2の抵抗値Rv2であるときに、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電圧Viであり、内部抵抗値算出回路17は、電流電圧測定回路13から第2の電圧Vi2を示す電圧情報を取得する。
【0080】
起電力算出回路18は、電流電圧測定回路13から、第1の電圧Vi1を示す電圧情報と、Ii1を示す電流情報と、第2の電圧Vi2を示す電圧情報とを取得する。Vi1とIi1の積から消費電力Piを計算する。
起電力算出回路18は、第1の電圧Vi1と、第2の電圧Vi2と、消費電力Piとに基づいて、直流電源1の起電力E0を算出する。
【0081】
図13に示すフィルタ装置2は、
図1に示すフィルタ装置2に対して、内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18のそれぞれが適用されたものである。しかし、これは一例に過ぎず、
図10に示すフィルタ装置2、又は、
図11に示すフィルタ装置2に対して、内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18のそれぞれが適用されたものであってもよい。
【0082】
次に、
図13に示す電源装置の動作について説明する。内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18以外は、
図1に示す電源装置と同様であるため、ここでは、内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18の動作のみを説明する。
【0083】
上記にてr0及びE0を算出し、実施の形態1と同様の制御を行う。ただし、Rcは以下の式(18)で与えられ、Rvは以下の式(20)で与えられる。
【0084】
【0085】
図14は、r0が0.01[Ω]である場合に、フィルタ回路12の電力損失Plossに対するDC/DCコンバータ3の消費電力Piの比αと可変直流抵抗12dの抵抗値Rvとの対応関係を示す説明図である。
図14において、横軸は、αを示し、縦軸は、可変直流抵抗12dの抵抗値Rv[Ω]を示している。
一点鎖線は、消費電力Piが30[W]、寄生直流抵抗rpが0.1[Ω]であるときの、αと可変直流抵抗12dの抵抗値Rvとの関係を示している。
実線は、消費電力Piが15[W]、寄生直流抵抗rpが0.2[Ω]であるときの、αと可変直流抵抗12dの抵抗値Rvとの関係を示している。
【0086】
内部抵抗1aの抵抗値r0及び直流電源1の起電力E0のそれぞれが不明である場合、抵抗値制御回路15は、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを第1の抵抗値Rv1に制御する。
内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18のそれぞれは、電流電圧測定回路13により測定された直流電圧Vi1を示す電圧情報と、直流電流Ii1を示す電流情報と、前記Rv1とインダクタ12aの寄生直流抵抗rpとから成るフィルタ回路12の合成直流抵抗Rt1と、電力算出回路14により算出された消費電力Piを示す電力情報とを取得する。消費電力Piは一定値とする。
次に、抵抗値制御回路15は、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvが第2の抵抗値Rv2に制御する。
内部抵抗値算出回路17及び起電力算出回路18のそれぞれは、電流電圧測定回路13により測定された直流電圧Vi2を示す電圧情報と、前記Rv2とインダクタ12aの寄生直流抵抗rpとから成るフィルタ回路12の合成直流抵抗Rt2とを取得する。
このとき、以下の式(21)が成立する。
【0087】
【0088】
式(21)において、内部抵抗1aの抵抗値r0について解くと、抵抗値r0は、以下の式(22)のように表される。また、直流電源1の起電力E0について解くと、起電力E0は、以下の式(23)のように表される。
【0089】
【0090】
内部抵抗値算出回路17は、第1の電圧Vi1と、第2の電圧Vi2と、合成直流抵抗Rt1,Rt2と、消費電力Piとを式(22)に代入することで、内部抵抗1aの抵抗値r0を算出する。
起電力算出回路18は、第1の電圧Vi1と、第2の電圧Vi2と、合成直流抵抗Rt1,Rt2と、消費電力Piとを式(23)に代入することで、直流電源1の起電力E0を算出する。
【0091】
以上の実施の形態4では、直流電源1に内部抵抗1aが存在しており、可変直流抵抗12dの抵抗値が第1の抵抗値であるときに、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電圧である第1の電圧と、可変直流抵抗12dの抵抗値が第2の抵抗値であるときに、フィルタ回路12からDC/DCコンバータ3に出力された直流電圧である第2の電圧とDC/DCコンバータ3の一定の消費電力とに基づいて、内部抵抗1aの抵抗値を算出する内部抵抗値算出回路17を備えるように、電源装置を構成した。したがって、電源装置は、r0、E0および式(18)、式(20)を用いて制御することにより、フィルタ回路12の電力損失を負荷の消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができる。
【0092】
実施の形態5.
実施の形態5では、抵抗値制御回路19が、DC/DCコンバータ3の入力電圧に応じてDC/DCコンバータ3の効率が変化する場合、フィルタ回路12の電力損失が消費電力のα倍以下になる可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを算出する電源装置について説明する。
【0093】
図15は、実施の形態5に係るフィルタ装置2を含む電源装置を示す構成図である。
図15において、
図1、
図10、
図11及び
図13と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図15に示す電源装置では、DC/DCコンバータ3の出力電力が一定であり、DC/DCコンバータ3の入力電圧が低下する程、DC/DCコンバータ3の効率が低下するものとする。一例として、昇圧型のDC/DCコンバータの効率の入力電圧依存性の例を
図16に示す。また、DC/DCコンバータ3の出力電力は、既知であるものとする。
図16は、昇圧型のDC/DCコンバータの効率の入力電圧依存性を示す説明図である。
図16において、横軸は、DC/DCコンバータ3の効率の入力電圧を示し、縦軸は、DC/DCコンバータ3の効率を示している。実線は、DC/DCコンバータ3の出力電力Poutが15[W]であるときの効率ηを示し、破線は、DC/DCコンバータ3の出力電力Poutが30[W]であるときの効率ηを示している。
抵抗値制御回路19は、DC/DCコンバータ3の入力電圧に対応するDC/DCコンバータ3の効率に基づいて、フィルタ回路12の電力損失が消費電力のα倍以下になる可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを算出する。
【0094】
DC/DCコンバータ3の場合、一般に入出力の電位差が大きければ大きいほど変換効率が悪化する。
効率が悪化するということは、入力減電圧時に入力電力が大きくなるということである。DC/DCコンバータ3の出力電力が一定値であれば、DC/DCコンバータ3の消費電力Piは、効率が低下した分増加する。
したがって、抵抗値制御回路19は、式(12)によって、フィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍になる、寄生直流抵抗rpの直流抵抗値Rcを算出する際に、消費電力Piが直流電圧Viの減少に伴って増加することを考慮する必要がある。
DC/DCコンバータ3の効率がη(<1)、DC/DCコンバータ3の出力電力がPoutであれば、電力損失Plossを消費電力Piのα倍に保つ場合の合成直流抵抗値Rcは、以下の式(24)のように表される。
【0095】
【0096】
抵抗値制御回路19の内部メモリには、DC/DCコンバータ3の効率ηと直流電圧Viとの関係が格納されている。出力電力Poutは、既知で一定であるとする。
抵抗値制御回路19は、内部メモリから、直流電圧Viに対応する効率ηを取得する。実施の形態4と同様な手順で、式(22)及び式(23)からr0とE0とを算出し、次いで式(24)よりRcを算出する。
次にフィルタ回路12の電力損失Plossが消費電力Piのα倍以下になる、可変直流抵抗12dの抵抗値Rvを式(20)より算出し、制御を行う。
【0097】
以上の実施の形態5では、DC/DCコンバータ3の出力電力が一定であり、DC/DCコンバータ3の入力電力の低下時に効率が低下する場合、抵抗値制御回路19が、DC/DCコンバータ3の入力電圧に対応するDC/DCコンバータ3の効率に基づいて、フィルタ回路12の電力損失が消費電力のα倍以下になる可変直流抵抗12dの抵抗値を算出するように、電源装置を構成した。したがって、電源装置は、フィルタ回路12の電力損失を負荷であるDC/DCコンバータ3の入力消費電力のα(0<α<1)倍以下に抑えることができる。
【0098】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 直流電源、1a 内部抵抗、2 フィルタ装置、3 DC/DCコンバータ(負荷)、11 電圧測定回路、12 フィルタ回路、12a インダクタ(第1のインダクタ)、12b,12c キャパシタ、12d 可変直流抵抗、12e インダクタ(第2のインダクタ)、13 電流電圧測定回路、14 電力算出回路、15 抵抗値制御回路、15a ゲート電位制御回路、16 動作周波数制御回路、17 内部抵抗値算出回路、18 起電力算出回路、19 抵抗値制御回路。