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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177391
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】減衰力切替ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/48 20060101AFI20231207BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20231207BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16F9/48
F16F9/34
F16F15/023 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090018
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青野 翔
(72)【発明者】
【氏名】欄木 龍大
【テーマコード(参考)】
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3J048AC04
3J048BE03
3J048CB21
3J048EA38
3J069AA50
3J069AA64
3J069EE01
3J069EE51
(57)【要約】
【課題】パルス性地震動を効率的に減衰する。
【解決手段】減衰力切替ダンパ1は、伸長動作時の減衰力を切り替える伸側減衰力切替手段110と、圧縮動作時の減衰力を切り替える圧側減衰力切替手段120と、を備え、第1基準値S1以上の大きさだけ伸長動作すると、伸側減衰力切替手段110は伸長動作時の減衰力を維持しつつ、圧側減衰力切替手段120は圧縮動作時の減衰力を大きくするように切り替え、第1基準値S1以上の大きさだけ圧縮動作すると、圧側減衰力切替手段120は圧縮動作時の減衰力を維持しつつ、伸側減衰力切替手段110は伸長動作時の減衰力を大きくするように切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設けられて、減衰力を発揮しつつ伸長及び圧縮することで、前記構造物の振動を緩和させ、前記振動の大きさに応じて前記減衰力を切替可能な、減衰力切替ダンパであって、
伸長動作時の前記減衰力を切り替える伸側減衰力切替手段と、
圧縮動作時の前記減衰力を切り替える圧側減衰力切替手段と、
シリンダと、
前記シリンダに対して相対移動するピストンロッドと、
を備え、
前記シリンダに対する前記ピストンロッドの動作量が、第1基準値以上の大きさとなるだけ伸長動作すると、前記伸側減衰力切替手段は伸長動作時の前記減衰力を維持しつつ、前記圧側減衰力切替手段は圧縮動作時の前記減衰力を大きくするように切り替え、
前記動作量が前記第1基準値以上の大きさとなるだけ圧縮動作すると、前記圧側減衰力切替手段は圧縮動作時の前記減衰力を維持しつつ、前記伸側減衰力切替手段は伸長動作時の前記減衰力を大きくするように切り替えることを特徴とする減衰力切替ダンパ。
【請求項2】
前記動作量が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上の大きさとなるだけ伸長動作すると、前記圧側減衰力切替手段が圧縮動作時の前記減衰力を大きくするように切り替えるのに加え、前記伸側減衰力切替手段も、伸長動作時の前記減衰力を大きくするように切り替え、
前記動作量が前記第2基準値以上の大きさとなるだけ圧縮動作すると、前記伸側減衰力切替手段が伸長動作時の前記減衰力を大きくするように切り替えるのに加え、前記圧側減衰力切替手段も、圧縮動作時の前記減衰力を大きくするように切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰力切替ダンパ。
【請求項3】
前記シリンダには液体が充填され、
前記ピストンロッドは、一端が前記シリンダ内に設けられ、他端が前記シリンダの外方に突出し、
前記ピストンロッドの前記一端に連結され、前記シリンダの内部を、前記ピストンロッド側に位置するロッド側室と、当該ロッド側室とは反対側のピストン側室に区画するピストンと、
前記ロッド側室から前記ピストン側室への前記液体の流れを許容するように、並列して設けられた主伸側通路及び副伸側通路と、
前記ピストン側室から前記ロッド側室への前記液体の流れを許容するように、並列して設けられた主圧側通路及び副圧側通路と、
前記主伸側通路、前記副伸側通路、前記主圧側通路、及び前記副圧側通路の各々の前記液体の流れに抵抗を与える、主伸側減衰手段、副伸側減衰手段、主圧側減衰手段及び副圧側減衰手段と、
前記副伸側通路を開閉する伸側ロジック弁と、
前記副圧側通路を開閉する圧側ロジック弁と、
を備え、
前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ロッド側室の方へと変位すると、前記伸側減衰力切替手段は前記伸側ロジック弁の開閉状態を維持しつつ、前記圧側減衰力切替手段は前記圧側ロジック弁を開状態から閉状態に切り替え、
前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ピストン側室の方へと変位すると、前記圧側減衰力切替手段は前記圧側ロジック弁の開閉状態を維持しつつ、前記伸側減衰力切替手段は前記伸側ロジック弁を開状態から閉状態に切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰力切替ダンパ。
【請求項4】
前記液体が貯留されるタンクを更に備え、
前記伸側ロジック弁は、
前記副伸側通路を開閉する伸側弁体と、
前記副伸側通路を閉じる方向へ前記伸側弁体を付勢する伸側付勢部材と、
前記伸側弁体の、前記副伸側通路とは反対側に位置する伸側背圧室を、前記タンクへ連通せしめる伸側パイロット通路と、を備え、
前記圧側ロジック弁は、
前記副圧側通路を開閉する圧側弁体と、
前記副圧側通路を閉じる方向へ前記圧側弁体を付勢する圧側付勢部材と、
前記圧側弁体の、前記副圧側通路とは反対側に位置する圧側背圧室を、前記タンクへ連通せしめる圧側パイロット通路と、を備え、
前記伸側減衰力切替手段は、前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ピストン側室の方へと変位すると、前記伸側パイロット通路を閉鎖し、
前記圧側減衰力切替手段は、前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ロッド側室の方へと変位すると、前記圧側パイロット通路を閉鎖し、
前記伸側パイロット通路が開通した状態で、前記副伸側通路に圧力が作用すると、前記伸側ロジック弁は開状態となり、
前記圧側パイロット通路が開通した状態で、前記副圧側通路に圧力が作用すると、前記圧側ロジック弁は開状態となる
ことを特徴とする請求項3に記載の減衰力切替ダンパ。
【請求項5】
前記ピストンロッドに連結されて前記ピストンロッドと連動して移動する、前記シリンダ外に設けられた検出ロッドを備え、
前記検出ロッドには、前記ピストンロッドの軸方向に沿って延在する凹部が形成され、
前記伸側減衰力切替手段と前記圧側減衰力切替手段の各々は、前記検出ロッドに対向して設けられ、各々が、
前記伸側パイロット通路と前記圧側パイロット通路のなかの対応するパイロット通路を開閉する制御弁体と、
前記検出ロッド側に突出し、前記検出ロッドに向かう方向へ進退自在に設けられて、前記制御弁体と連動して動作し、前記制御弁体の開閉を切り替える切替レバーと、
を備え、
前記伸側減衰力切替手段と前記圧側減衰力切替手段の各々は、前記凹部に対応して位置して前記切替レバーが前記凹部に当接している場合に前記制御弁体を開状態とし、かつ、前記凹部の外側に対応して位置して前記切替レバーが前記凹部の外側に当接している場合に前記制御弁体を閉状態とし、
前記ピストンが中立位置に在る場合に、前記伸側減衰力切替手段と前記圧側減衰力切替手段の各々の前記切替レバーは、前記凹部に当接され、前記伸側減衰力切替手段の前記切替レバーと、前記ピストンロッド側に位置する前記凹部の端部との前記軸方向における距離は、前記第1基準値であり、前記圧側減衰力切替手段の前記切替レバーと、前記ピストン側に位置する前記凹部の端部との前記軸方向における距離も、前記第1基準値である
ことを特徴とする請求項4に記載の減衰力切替ダンパ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の振動の大きさに応じて減衰力を切り替える、構造物用の減衰力切替ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物を計画する際に、上町断層帯地震などに代表されるパルス性地震動に備えることが望ましい。パルス性地震動においては、大きい振幅のパルス状の波が生じる。具体的には、パルス性地震動においては、まず一方向に、通常の地震よりも大きい振幅の第1の波が到来し、続いて逆方向に、第1の波よりも更に大きい振幅の第2の波が到来することが多い。
通常の免震用オイルダンパは、予め設定した振幅を越えた場合に、所定の減衰力を発揮するように構成されている。このため、例えば、免震用オイルダンパの減衰力を、パルス性地震動の第2の波の振幅を想定して大きく設定した場合には、第1の波は、第2の波よりも振幅が小さいため、第1の波を減衰するに際し、免震用オイルダンパのピストンが大きく変位しない。すると、第1の波に続く第2の波を減衰するに際し、ピストンの逆方向への変位量が大きくはなり得ない。このように、第2の波を減衰させる際におけるピストンの制動距離を十分に確保できず、したがって、効率的に、第2の波を減衰させることができないことがある。
【0003】
これに対し、特許文献1~3のような、減衰力切替ダンパを用い、振幅の大きさに応じて減衰力を切り替えることが考えられる。
例えば特許文献1には、制振対象に生じる振動を緩和させるオイルダンパによる減衰力を、制振対象に生じる振動に応じて変化させる可変減衰装置の構成が開示されている。この構成においては、制振対象に生じる振動による応答値に基づいてオイルダンパのリリーフ荷重(減衰量)を算出する。オイルダンパは、算出されたオイルダンパのリリーフ荷重に応じた減衰力を発生する。オイルダンパのリリーフ荷重の算出に必要なパラメータは、制振対象に生じる振動に応じた応答値とその応答値の所定の基準値との比率または差に応じて変化させる。オイルダンパのリリーフ荷重は、変数αの関数とし、応答値と所定の基準値との比率が「1」を下回っているときは、変数αの値を増加させ、応答値と所定の基準値との比率が「1」を上回っているときは、変数αの値を減少させるようになっている。
また、特許文献2には、地震時に、可変減衰ダンパが介装された制振構造物における柱または柱梁架構の応答量を検出し、その検出値に基づいて、可変減衰ダンパの減衰係数を切り換える構成が開示されている。この構成において、制振構造物における柱または柱梁架構の応答量の検出値から、柱に作用する軸力を評価し、柱に作用する軸力と予め設定された軸力の設定値とを比較して、軸力が設定値よりも大きい場合に、可変減衰ダンパの減衰係数をより低い値に切り換える。
また、特許文献3には、所定の値以上の大きさだけ伸長または圧縮動作すると、制御弁が伸側ロジック弁と圧側ロジック弁の双方を同時に閉じることで、伸側バイパス路と圧側バイパス路を閉じて、ロッド側室とピストン側室の間の液体の流通に際する抵抗を上げ、減衰力を高める液圧ダンパが開示されている。このような構成において、パルス性地震動の第1の波が到来すると、まず液圧ダンパが所定の値以上の大きさだけ伸長(圧縮)し、この際に、伸側バイパス路と圧側バイパス路が閉じられて、以降の伸長、圧縮においては、減衰力が大きい値となるように切り替えられる。続く第2の波による圧縮(伸長)動作に際しては、切り替えられた大きい減衰力で、地震動が減衰される。
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に開示されたような減衰力切替ダンパによっても、パルス性地震動を効率的に減衰することができない場合がある。
例えば、上記特許文献3において、パルス性地震動が生じたとしても、第1の波の振幅が所定の値より小さい場合には、伸側ロジック弁と圧側ロジック弁が閉じられないため、減衰力が大きい値へと切り替えられず、小さい状態のままである。このため、第1の波よりも大きい振幅の第2の波が到来した際に、少なくとも第2の波の振幅が所定の値に達して減衰力が大きい状態へと切り替えられるまでの間においては、第2の波を、小さい減衰力で減衰させなければならない。したがって、第2の波を、効率的に減衰させることができないことがある。
【0005】
これに対応するため、減衰力が切り替わる閾値となる、上記所定の値を小さくすることが考えられる。すると、特許文献3の構成によっては、第1の波が到来し、ダンパが所定の値以上の大きさだけ変位した瞬間に伸側バイパス路と圧側バイパス路が閉じられるので、第1の波の最大振幅を迎える前に、減衰力が大きい値へと切り替えられる。すなわち、特許文献3の構成では、第1の波が到来して所定の値だけダンパが変位した後、第1の波の最大振幅を迎えるまでの間、減衰力が大きい状態となる。このため、第1の波を減衰するに際し、ピストンが大きく変位しないことがある。このような場合においては、第1の波に続く第2の波を減衰するに際し、ピストンの逆方向への変位量(制動距離)が大きくはならないため、通常の免震用オイルダンパと同様、効率的に、第2の波を減衰させることができない。ダンパが変位して伸側バイパス路と圧側バイパス路が閉じられる、所定の値をある程度大きく設定したとしても、第1の波の振幅が想定以上に大きい場合においては、同様な問題が生じる。
このような事情を鑑み、パルス性地震動を、より効率的に減衰することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4144848号公報
【特許文献2】特許第5431185号公報
【特許文献3】特許第6006657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、パルス性地震動を効率的に減衰することができる、減衰力切替ダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の減衰力切替ダンパは、構造物に設けられて、減衰力を発揮しつつ伸長及び圧縮することで、前記構造物の振動を緩和させ、前記振動の大きさに応じて前記減衰力を切替可能な、減衰力切替ダンパであって、伸長動作時の前記減衰力を切り替える伸側減衰力切替手段と、圧縮動作時の前記減衰力を切り替える圧側減衰力切替手段と、シリンダと、前記シリンダに対して相対移動するピストンロッドと、を備え、前記シリンダに対する前記ピストンロッドの動作量が、第1基準値以上の大きさとなるだけ伸長動作すると、前記伸側減衰力切替手段は伸長動作時の前記減衰力を維持しつつ、前記圧側減衰力切替手段は圧縮動作時の前記減衰力を大きくするように切り替え、前記動作量が前記第1基準値以上の大きさとなるだけ圧縮動作すると、前記圧側減衰力切替手段は圧縮動作時の前記減衰力を維持しつつ、前記伸側減衰力切替手段は伸長動作時の前記減衰力を大きくするように切り替えることを特徴とする。
このような構成によれば、まず一方向に、通常の地震よりも大きい振幅の第1の波が到来し、続いて逆方向に、第1の波よりも更に大きい振幅の第2の波が到来するようなパルス性地震動が生じ、第1の波の到来により、シリンダに対するピストンロッドの動作量が、第1基準値以上の大きさとなるだけ、減衰力切替ダンパが伸長動作した場合には、伸長動作量が第1基準値に到達した際に、伸長動作時の減衰力は(小さいまま)維持され、圧縮動作時の減衰力のみが大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による減衰力切替ダンパの伸長動作中に、伸長動作量が第1基準値を超えた後においても、減衰力切替ダンパは、伸長動作時の減衰力を小さい状態としたまま、第1の波を減衰する。このとき、減衰力切替ダンパによる減衰力が小さい状態のままであるため、減衰力が大きい状態に切り替わった状態と比較すると、第1の波による伸長動作量が最大量に到達するまでの、減衰力切替ダンパの伸長動作量が大きくなる。
続いて、第1の波による伸長動作量が第1基準値を超えた後に、最大の伸長動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパは、圧縮動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパの圧縮動作時の減衰力は、伸長動作時の伸長動作量が第1基準値を超えているので、大きい状態に切り替えられている。また、前記したように、第1の波における減衰力切替ダンパの伸長動作量が大きくなっているため、減衰力切替ダンパが伸長動作から圧縮動作に移行した際の、制動距離、すなわち減衰力切替ダンパの圧縮動作量を大きく確保することができる。このように、大きい状態へと切り替えられた減衰力と、大きく確保された制動距離により、減衰力切替ダンパにおける第2の波に対する減衰を、より効率的に行うことができる。
他方、パルス性地震動が生じ、第1の波の到来により、シリンダに対するピストンロッドの動作量が、第1基準値以上の大きさとなるだけ、減衰力切替ダンパが圧縮動作した場合には、圧縮動作量が第1基準値に到達した際に、圧縮動作時の減衰力は(小さいまま)維持され、伸長動作時の減衰力のみが大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による減衰力切替ダンパの圧縮動作中に、圧縮動作量が第1基準値を超えた後においても、減衰力切替ダンパは、圧縮動作時の減衰力を小さい状態としたまま、第1の波を減衰する。このとき、減衰力切替ダンパによる減衰力が小さい状態のままであるため、減衰力が大きい状態に切り替わった状態と比較すると、第1の波による圧縮動作量が最大量に到達するまでの、減衰力切替ダンパの圧縮動作量が大きくなる。
続いて、第1の波による圧縮動作量が第1基準値を超えた後に、最大の圧縮動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパは、伸長動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパの伸長動作時の減衰力は、圧縮動作時の圧縮動作量が第1基準値を超えているので、大きい状態に切り替えられている。また、前記したように、第1の波における減衰力切替ダンパの圧縮動作量が大きくなっているため、減衰力切替ダンパが圧縮動作から伸長動作に移行した際の、制動距離、すなわち減衰力切替ダンパの伸長動作量を大きく確保することができる。このように、大きい状態へと切り替えられた減衰力と、大きく確保された制動距離により、減衰力切替ダンパにおける第2の波に対する減衰を、より効率的に行うことができる。
また、第1の波が到来して、シリンダに対するピストンロッドの動作量が第1基準値以上の大きさとなるだけ、減衰力切替ダンパが伸長、圧縮動作したとしても、このときの減衰力は小さい状態のまま維持されるので、仮に第1基準値を小さく設定したとしても、第1の波を小さい状態の減衰力で減衰させることができる。すなわち、第1の波を減衰させるための減衰性能とは独立して、第1基準値をある程度小さくすることができるので、第1の波が到来しても、振幅が想定よりも小さいために、続いて到来するより大きい第2の波に対応するための圧縮、伸長動作時の減衰力が大きい状態へと切り替えられないという事態を抑制できるような、減衰力切替ダンパの設定が可能である。
以上の効果が相乗し、パルス性地震動を、より効率的に減衰することができる減衰力切替ダンパを提供することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の減衰力切替ダンパは、前記動作量が前記第1基準値よりも大きい第2基準値以上の大きさとなるだけ伸長動作すると、前記圧側減衰力切替手段が圧縮動作時の前記減衰力を大きくするように切り替えるのに加え、前記伸側減衰力切替手段も、伸長動作時の前記減衰力を大きくするように切り替え、前記動作量が前記第2基準値以上の大きさとなるだけ圧縮動作すると、前記伸側減衰力切替手段が伸長動作時の前記減衰力を大きくするように切り替えるのに加え、前記圧側減衰力切替手段も、圧縮動作時の前記減衰力を大きくするように切り替える。
このような構成によれば、第1の波によって、ピストンロッドがシリンダに対して相対移動し、減衰力切替ダンパが伸長動作している場合に、動作量が、第1基準値よりも大きい第2基準値に到達すると、圧縮動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられるのに加え、伸長動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による伸長動作中、伸長動作量が第2基準値を超えた後、最大の伸長動作量に到達するまでの間、減衰力切替ダンパは、伸長動作時の減衰力を大きい状態として、第1の波を減衰する。これにより、第1の波が想定よりも大きい振幅を有するような場合であっても、第1の波を、より効率的に減衰させることができる。
続いて、第1の波による伸長動作時の動作量が、第2基準値を超えた後に最大の伸長動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパは、圧縮動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパの圧縮動作時の減衰力は、大きい状態に切り替えられている。これにより、減衰力切替ダンパにおける第2の波に対する減衰を、効率的に行うことができる。
他方、第1の波によって、ピストンロッドがシリンダに対して相対移動し、減衰力切替ダンパが圧縮動作している場合に、動作量が、第1基準値よりも大きい第2基準値に到達すると、伸長動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられるのに加え、圧縮動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による圧縮動作中、圧縮動作量が第2基準値を超えた後、最大の圧縮動作量に到達するまでの間、減衰力切替ダンパは、圧縮動作時の減衰力を大きい状態として、第1の波を減衰する。これにより、第1の波が想定よりも大きい振幅を有するような場合であっても、第1の波を、より効率的に減衰させることができる。
続いて、第1の波による圧縮動作時の動作量が、第2基準値を超えた後に最大の圧縮動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパは、伸長動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパの伸長動作時の減衰力は、大きい状態に切り替えられている。これにより、減衰力切替ダンパにおける第2の波に対する減衰を、効率的に行うことができる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の減衰力切替ダンパは、前記シリンダには液体が充填され、前記ピストンロッドは、一端が前記シリンダ内に設けられ、他端が前記シリンダの外方に突出し、前記ピストンロッドの前記一端に連結され、前記シリンダの内部を、前記ピストンロッド側に位置するロッド側室と、当該ロッド側室とは反対側のピストン側室に区画するピストンと、前記ロッド側室から前記ピストン側室への前記液体の流れを許容するように、並列して設けられた主伸側通路及び副伸側通路と、前記ピストン側室から前記ロッド側室への前記液体の流れを許容するように、並列して設けられた主圧側通路及び副圧側通路と、前記主伸側通路、前記副伸側通路、前記主圧側通路、及び前記副圧側通路の各々の前記液体の流れに抵抗を与える、主伸側減衰手段、副伸側減衰手段、主圧側減衰手段及び副圧側減衰手段と、前記副伸側通路を開閉する伸側ロジック弁と、前記副圧側通路を開閉する圧側ロジック弁と、を備え、前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ロッド側室の方へと変位すると、前記伸側減衰力切替手段は前記伸側ロジック弁の開閉状態を維持しつつ、前記圧側減衰力切替手段は前記圧側ロジック弁を開状態から閉状態に切り替え、前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ピストン側室の方へと変位すると、前記圧側減衰力切替手段は前記圧側ロジック弁の開閉状態を維持しつつ、前記伸側減衰力切替手段は前記伸側ロジック弁を開状態から閉状態に切り替える。
このような構成によれば、減衰力切替ダンパにおいては、地震動により、シリンダとピストンロッドとが相対移動する。減衰力切替ダンパが伸長動作する場合には、ピストンは、ピストンロッドとともに、シリンダ内でピストン側室の容積を増大させる方向、つまりロッド側室の方へと変位する。ピストンのロッド側室の方への変位により、ロッド側室内の液体が、主伸側通路及び副伸側通路を通り、ロッド側室からピストン側室へと流れ得る。減衰力切替ダンパが圧縮動作する場合には、ピストンは、ピストンロッドとともに、シリンダ内でロッド側室の容積を増大させる方向、つまりピストン側室の方へと変位する。ピストンのピストン側室の方への変位により、ピストン側室内の液体が、主圧側通路及び副圧側通路を通り、ピストン側室からロッド側室へと流れ得る。
減衰力切替ダンパの伸長動作時に、伸側ロジック弁が開いた状態では、副伸側通路が開通しており、液体は、主伸側通路及び副伸側通路の双方を通り、ロッド側室からピストン側室へと流れる。伸側ロジック弁が閉じた状態では、副伸側通路が閉鎖しており、液体は、主伸側通路のみを通り、ロッド側室からピストン側室へと流れる。このように、伸側ロジック弁が閉じた場合では、伸側ロジック弁が開いた状態に比較すると、伸長動作時に液体が流れる通路断面積が小さくなるので、液体が流れる際の抵抗が大きくなり、減衰力切替ダンパの減衰力が大きい状態に切り替わる。このように、伸側ロジック弁を開閉することで、減衰力切替ダンパの伸長動作時における減衰力を切り替えることができる。
また、減衰力切替ダンパの圧縮動作時に、圧側ロジック弁が開いた状態では、副圧側通路が開通しており、液体は、主圧側通路及び副圧側通路の双方を通り、ピストン側室からロッド側室へと流れる。圧側ロジック弁が閉じた状態では、副圧側通路が閉鎖しており、液体は、主圧側通路のみを通り、ピストン側室からロッド側室へと流れる。このように、圧側ロジック弁が閉じた場合では、圧側ロジック弁が開いた状態に比較すると、圧縮動作時に液体が流れる通路断面積が小さくなるので、液体が流れる際の抵抗が大きくなり、減衰力切替ダンパの減衰力が大きい状態に切り替わる。このように、圧側ロジック弁を開閉することで、減衰力切替ダンパの圧縮動作時における減衰力を切り替えることができる。
このような減衰力切替ダンパの、伸長動作時においては、ピストンが中立位置から第1基準値以上、ロッド側室の方へと変位すると、伸側ロジック弁の開閉状態を維持しつつ、圧側ロジック弁が開状態から閉状態に切り替えられる。これにより、減衰力切替ダンパの伸長動作時の減衰力は維持され、圧縮動作時の減衰力が大きい状態に切り替わる。
また、減衰力切替ダンパの、圧縮動作時においては、ピストンが中立位置から第1基準値以上、ピストン側室の方へと変位すると、圧側ロジック弁の開閉状態を維持しつつ、伸側ロジック弁が開状態から閉状態に切り替えられる。これにより、減衰力切替ダンパの圧縮動作時の減衰力は維持され、伸縮動作時の減衰力が大きい状態に切り替わる。
このようにして、減衰力切替ダンパを、適切に実現することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明の減衰力切替ダンパは、前記液体が貯留されるタンクを更に備え、前記伸側ロジック弁は、前記副伸側通路を開閉する伸側弁体と、前記副伸側通路を閉じる方向へ前記伸側弁体を付勢する伸側付勢部材と、前記伸側弁体の、前記副伸側通路とは反対側に位置する伸側背圧室を、前記タンクへ連通せしめる伸側パイロット通路と、を備え、前記圧側ロジック弁は、前記副圧側通路を開閉する圧側弁体と、前記副圧側通路を閉じる方向へ前記圧側弁体を付勢する圧側付勢部材と、前記圧側弁体の、前記副圧側通路とは反対側に位置する圧側背圧室を、前記タンクへ連通せしめる圧側パイロット通路と、を備え、前記伸側減衰力切替手段は、前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ピストン側室の方へと変位すると、前記伸側パイロット通路を閉鎖し、前記圧側減衰力切替手段は、前記ピストンが中立位置から、前記第1基準値以上、前記ロッド側室の方へと変位すると、前記圧側パイロット通路を閉鎖し、前記伸側パイロット通路が開通した状態で、前記副伸側通路に圧力が作用すると、前記伸側ロジック弁は開状態となり、前記圧側パイロット通路が開通した状態で、前記副圧側通路に圧力が作用すると、前記圧側ロジック弁は開状態となる。
このような構成によれば、伸側ロジック弁の伸側弁体は、副伸側通路側で、副伸側通路の圧力を受ける。伸側弁体の、副伸側通路とは反対側には、伸側背圧室内の圧力が作用する。伸側パイロット通路が開通し、タンクに連通した状態では、伸側背圧室内がタンク圧となる。この状態で、減衰力切替ダンパの伸長動作によりロッド側室内の圧力が上昇すると、ロッド側室の圧力を受けて副伸側通路に圧力が作用し、伸側弁体が伸側背圧室を圧縮する方向へ移動し、伸側ロジック弁が開状態となる。また、減衰力切替ダンパの圧縮動作により、ピストンが中立位置から、第1基準値以上、ピストン側室の方へと変位すると、伸側パイロット通路が閉鎖される。伸側パイロット通路が閉鎖され、タンクとの連通が阻止された状態において、減衰力切替ダンパの伸長動作によりロッド側室内の圧力が上昇しても、伸側背圧室内の液体の逃げ場がないため、伸側弁体が伸側背圧室側へ移動することができない。これにより、伸側弁体は副伸側通路を閉鎖したままとなり伸側ロジック弁は閉状態となる。伸側ロジック弁が閉状態となり、伸側弁体が副伸側通路を閉鎖することで、減衰力切替ダンパの伸長動作時における減衰力が大きい状態に切り替わる。
また、圧側ロジック弁の圧側弁体は、副圧側通路側で、副圧側通路の圧力を受ける。圧側弁体の、副圧側通路とは反対側には、圧側背圧室内の圧力が作用する。圧側パイロット通路が開通し、タンクに連通した状態では、圧側背圧室内がタンク圧となる。この状態で、減衰力切替ダンパの圧縮動作によりピストン側室内の圧力が上昇すると、ピストン側室の圧力を受けて副圧側通路に圧力が作用し、圧側弁体が圧側背圧室を圧縮する方向へ移動し、圧側ロジック弁が開状態となる。また、減衰力切替ダンパの伸長動作により、ピストンが中立位置から、第1基準値以上、ロッド側室の方へと変位すると、圧側パイロット通路が閉鎖される。圧側パイロット通路が閉鎖され、タンクとの連通が阻止された状態において、減衰力切替ダンパの圧縮動作によりピストン側室内の圧力が上昇しても、圧側背圧室内の液体の逃げ場がないため、圧側弁体が圧側背圧室側へ移動することができない。これにより、圧側弁体は副圧側通路を閉鎖したままとなり圧側ロジック弁は閉状態となる。圧側ロジック弁が閉状態となり、圧側弁体が副圧側通路を閉鎖することで、減衰力切替ダンパの圧縮動作時における減衰力が大きい状態に切り替わる。
このようにして、減衰力切替ダンパを、適切に実現することができる。
【0012】
本発明の一態様においては、本発明の減衰力切替ダンパは、前記ピストンロッドに連結されて前記ピストンロッドと連動して移動する、前記シリンダ外に設けられた検出ロッドを備え、前記検出ロッドには、前記ピストンロッドの軸方向に沿って延在する凹部が形成され、前記伸側減衰力切替手段と前記圧側減衰力切替手段の各々は、前記検出ロッドに対向して設けられ、各々が、前記伸側パイロット通路と前記圧側パイロット通路のなかの対応するパイロット通路を開閉する制御弁体と、前記検出ロッド側に突出し、前記検出ロッドに向かう方向へ進退自在に設けられて、前記制御弁体と連動して動作し、前記制御弁体の開閉を切り替える切替レバーと、を備え、前記伸側減衰力切替手段と前記圧側減衰力切替手段の各々は、前記凹部に対応して位置して前記切替レバーが前記凹部に当接している場合に前記制御弁体を開状態とし、かつ、前記凹部の外側に対応して位置して前記切替レバーが前記凹部の外側に当接している場合に前記制御弁体を閉状態とし、前記ピストンが中立位置に在る場合に、前記伸側減衰力切替手段と前記圧側減衰力切替手段の各々の前記切替レバーは、前記凹部に当接され、前記伸側減衰力切替手段の前記切替レバーと、前記ピストンロッド側に位置する前記凹部の端部との前記軸方向における距離は、前記第1基準値であり、前記圧側減衰力切替手段の前記切替レバーと、前記ピストン側に位置する前記凹部の端部との前記軸方向における距離も、前記第1基準値である。
このような構成によれば、伸側減衰力切替手段と圧側減衰力切替手段の各々の切替レバーは、検出ロッドに向かう方向へ進退自在に設けられ、ピストンが中立位置に在る場合に、検出ロッドの凹部に当接している。伸側減衰力切替手段と圧側減衰力切替手段の各々は、切替レバーが検出ロッドに向かう方向へ進出して検出ロッドの凹部に当接している場合に、制御弁体が開状態とされている。伸側減衰力切替手段と圧側減衰力切替手段の各々は、切替レバーが検出ロッドに向かう方向から退行して検出ロッドの凹部の外側に当接している場合に、制御弁体が閉状態とされる。このように、切替レバーが検出ロッドの凹部に当接している場合と、凹部の外側に当接している場合とで、制御弁体の開閉が切り替わる。検出ロッドは、ピストンロッドと連動して移動するため、ピストンロッドがシリンダに対して相対移動するに際し、ピストンロッドとともに検出ロッドが移動する。これにより、各切替レバーに対する凹部の位置が変わるため、切替レバーによって、制御弁体を開閉することができる。
このような構成において、ピストンが中立位置に在る場合に、伸側減衰力切替手段と圧側減衰力切替手段の各々の切替レバーが、検出ロッドに向かう方向へ進出して凹部に当接することで、各制御弁体を開状態として伸側パイロット通路、圧側パイロット通路を開通させ、伸長動作時、圧縮動作時における減衰力が大きい状態とすることができる。
また、減衰力切替ダンパの伸長動作時、ピストンが中立位置からロッド側室の方に移動すると、ピストンロッドと連動して検出ロッドがロッド側室の方に移動する。検出ロッドが第1基準値以上、ロッド側室の方に移動すると、圧側減衰力切替手段の切替レバーが、ピストン側に位置する凹部の端部を乗り越え、検出ロッドに向かう方向から退行して、凹部の外側に当接した状態となる。これにより、圧側減衰力切替手段の制御弁体が閉状態となり、圧側パイロット通路が閉鎖される。したがって、ピストンが中立位置からロッド側室の方に第1基準値以上変位することによって、伸長動作に続く圧縮動作時において、減衰力が大きい状態に切り替わる。
更に、減衰力切替ダンパの圧縮動作時、ピストンが中立位置からピストン側室の方に移動すると、ピストンロッドと連動して検出ロッドがピストン側室の方に移動する。検出ロッドが第1基準値以上、ピストン側室の方に移動すると、伸側減衰力切替手段の切替レバーが、ピストンロッド側に位置する凹部の端部を乗り越え、検出ロッドに向かう方向から退行して、凹部の外側に当接した状態となる。これにより、伸側減衰力切替手段の制御弁体が閉状態となり、伸側パイロット通路が閉鎖される。したがって、ピストンが中立位置からピストン側室の方に第1基準値以上変位することによって、圧縮動作に続く伸長動作時において、減衰力が大きい状態に切り替わる。
このようにして、減衰力切替ダンパを、適切に実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パルス性地震動を効率的に減衰することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの構成を示す図である。
図2】地震動による波の到来により、減衰力切替ダンパが圧縮動作し、その圧縮動作量が第1基準値未満である状態を示す図である。
図3】地震動による波の到来により、減衰力切替ダンパが伸長動作し、その伸長動作量が第1基準値未満である状態を示す図である。
図4】パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパが圧縮動作し、その圧縮動作量が第1基準値以上である状態を示す図である。
図5図4に示される状態から、地震動による第2の波の到来により、減衰力切替ダンパが伸長動作した状態を示す図である。
図6】パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパが伸長動作し、その伸長動作量が第1基準値以上である状態を示す図である。
図7図5に示される状態から、地震動による第2の波の到来により、減衰力切替ダンパが圧縮動作した状態を示す図である。
図8図4に示した状態から、減衰力切替ダンパの圧縮動作量が更に増えた状態を示す図である。
図9図6に示した状態から、減衰力切替ダンパの伸長動作量が更に増えた状態を示す図である。
図10A】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例におけるシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位の経時変化を示す図である。
図10B】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例におけるシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位と減衰量との相関を示す図である。
図11A】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位の経時変化を示す図である。
図11B】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位と減衰量との相関を示す図である。
図12A】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位の経時変化を示す図である。
図12B】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位と減衰量との相関を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する免震変位の最大値を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、パルス性地震動に対する層間変形角を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、図13図14の各検討例における、応答低減率の最大値と平均値を示す図である。
図16A】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、図13図14の各検討例のうち、比較例よりも免震変位の最大値が大きかったケースについて、パルス性地震動に対する免震変位の経時変化を示す図である。
図16B】本発明の実施形態に係る減衰力切替ダンパの実施例における他のシミュレーション結果を示す図であり、図13図14の各検討例のうち、比較例よりも免震変位の最大値が大きかったケースについて、パルス性地震動に対する免震変位と減衰量との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、構造物の振動の大きさに応じて減衰力を切り替える、構造物用の減衰力切替ダンパである。減衰力切替ダンパ1の特徴は、ピストンロッド23の動作量に基づいて減衰力を切り替える、2種類の減衰力切替手段(主伸側減衰手段5、主圧側減衰手段6)を備える点である。
具体的には、2種類の減衰力切替手段を組み合わせた第一の切替則では、従来型の変位切替型オイルダンパと同様に、変位検知機構を有しており、所定の変位量(第1基準値)を検知した後に、変位の進行方向が逆転する(速度が0になる)まで低減衰モードを維持し、その時の変位の最大点付近で高減衰モードに切替る方法である。
また、第二の切替則では、あらかじめ設定された第一の検知変位を超過後に、あらかじめ設定された第二の検知変位(第2基準値)を超過しない場合は、変位の進行方向が逆転する(速度が0になる)まで低減衰モードを維持し、その時の変位の最大点付近で高減衰モードに切替る。変位の最大点に至るまでに、第二の検知変位(第2基準値)を超過した場合は、即座に高減衰モードに切替わり、以後高減衰モードを維持する方法である。
上記でいう低減衰モードとは、調圧弁62およびリリーフ弁63に加えて、伸側ロジック弁13、および圧側ロジック弁16が開いた状態で、ロッド側室R1とピストン側室R2との間での液体の流量に応じ基本となる初期段階での減衰力が発揮されている状態である。これに対して、高減衰モードでは、調圧弁62およびリリーフ弁63が開いた状態で、かつ伸側ロジック弁13、および圧側ロジック弁16のうち、少なくとも一方が閉じた状態であり、低減衰モードの減衰力に比べて、高い減衰力が発揮されている状態である。
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明による減衰力切替ダンパを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、減衰力切替ダンパ1は、ダンパ本体2と、回路部3と、減衰力切替部100と、を主に備えている。減衰力切替ダンパ1は、免震装置に用いるのに適している。減衰力切替ダンパ1は、構造物に設けられて、減衰力を発揮しつつ伸長及び圧縮することで、構造物の振動を緩和させる。減衰力切替ダンパ1は、振動の大きさに応じて減衰力を切替可能である。減衰力切替ダンパ1は、図示はしないが、例えば、地盤と構造物との間に、ボールアイソレータや積層ゴム等といった弾性体とともに介装されて免震装置に組み込まれる。減衰力切替ダンパ1の用途、設置位置等は、何ら限定するものではない。
ダンパ本体2は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23と、を備えている。シリンダ21は、軸方向Dcに延びる筒状に形成されている。シリンダ21の一端は、蓋24によって閉塞されている。シリンダ21の他端には、ロッドガイド25が装着されている。ロッドガイド25は、その中央部にロッド挿通孔25hを有した円環状に形成されている。
ピストン22は、シリンダ21内に配置されている。ピストン22は、シリンダ21内で、軸方向Dcに移動自在に設けられている。ピストン22は、ピストンロッド23の一端に連結されている。ピストンロッド23は、ピストン22に対して軸方向Dcの一方側Dc1に設けられている。ピストン22は、ロッド側室R1と、ピストン側室R2と、に区画する。ロッド側室R1は、ピストン22に対して軸方向Dcの一方側Dc1に設けられたピストンロッド23側に位置する。ピストン側室R2は、ピストン22に対してロッド側室R1とは反対側、つまり、軸方向Dcの他方側Dc2に位置する。シリンダ21内のロッド側室R1、及びピストン側室R2には、作動油等の液体が充填されている。液体は、作動油以外にも、水や水溶液を使用することも可能である。
ピストンロッド23は、シリンダ21の軸方向Dcに延びている。ピストンロッド23は、ロッドガイド25のロッド挿通孔25hに挿通されている。ピストンロッド23の他端は、ロッド挿通孔25hを通してシリンダ21の外方に突出している。ピストンロッド23は、ピストン22とともに、シリンダ21に対して軸方向Dcに相対移動する。
このようなダンパ本体2において、シリンダ21は、不図示のブラケットを介して、地盤側、または構造物側に固定されている。ピストンロッド23の他端は、不図示のブラケットを介して、シリンダ21とは反対側の、構造物側、または地盤側に固定されている。これにより、地震動により、地盤と構造物との間で、シリンダ21の軸方向Dcの相対変位が生じると、シリンダ21に対し、ピストンロッド23、及びピストン22が軸方向Dcに相対移動する。ここで、シリンダ21に対し、ピストンロッド23、及びピストン22が、ロッド側室R1が位置する軸方向Dcの一方側Dc1に移動し、ダンパ本体2が軸方向Dcに伸長する方向に動作することを、減衰力切替ダンパ1における伸長動作と称する。また、シリンダ21に対し、ピストンロッド23、及びピストン22が、ピストン側室R2が位置する軸方向Dcの他方側Dc2に移動し、ダンパ本体2が軸方向Dcに圧縮される方向に動作することを、減衰力切替ダンパ1における圧縮動作と称する。
【0017】
ピストン22には、主伸側通路51と、主圧側通路61と、主伸側減衰手段5と、主圧側減衰手段6とが設けられている。
主伸側通路51は、ピストン22に設けられてロッド側室R1をピストン側室R2へ連通する。主圧側通路61は、ピストン22に設けられてピストン側室R2をロッド側室R1に連通する。
主伸側減衰手段5は、主伸側通路51に並列して設けた調圧弁52およびリリーフ弁53を備えている。調圧弁52およびリリーフ弁53は、共に、ロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう液体の流れのみを許容し、かつ、液体の流れに抵抗を与える。これによって、主伸側減衰手段5は、ロッド側室R1からピストン側室R2への液体の流れを許容し、当該液体の流れに抵抗を与える。調圧弁52は、通過流量に対して圧力損失が略比例するような特性を備えている。調圧弁52は、ロッド側室R1とピストン側室R2の差圧が所定の開弁圧に達してリリーフ弁53が開弁するまでは、主伸側通路51を通過する液体の流量に対して圧力損失が略比例する。他方、リリーフ弁53が開弁すると、主伸側通路51の有効断面積が増えるので、リリーフ弁開弁時の主伸側減衰手段5における流量圧力特性の傾きは、リリーフ弁53が閉弁状態にあったときの当該特性に比較して小さくなる。
主圧側減衰手段6は、主圧側通路61に並列して設けた調圧弁62およびリリーフ弁63を備えている。調圧弁62およびリリーフ弁63は、共に、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう液体の流れのみを許容し、かつ、液体の流れに抵抗を与える。これによって、主圧側減衰手段6は、ピストン側室R2からロッド側室R1への液体の流れを許容し、当該液体の流れに抵抗を与える。調圧弁62は、調圧弁52と同様に、通過流量に対して圧力損失が略比例するような特性を備えている。これにより、主圧側減衰手段6における流量圧力特性は、リリーフ弁63の開弁後に傾きが開弁前よりも小さくなる特性を示す。
【0018】
回路部3は、ダンパ本体2のロッド側室R1と、ピストン側室R2とに接続されている。回路部3は、タンク4と、タンク側通路7と、吸込通路8と、副伸側通路9と、副圧側通路10と、排出通路11と、タンク側副圧減衰手段15と、タンク側減衰手段70と、を備えている。
タンク4には、シリンダ21内、及び回路部3内に充填される液体が貯留されている。タンク4には、液体のほかに気体が充填されている。なお、タンク4内は、特に、気体を圧縮して充填することによって加圧状態とする必要は無いが、加圧状態としてもよい。
【0019】
副伸側通路9は、主伸側減衰手段5を迂回してロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する。副伸側通路9は、シリンダ21の外部で、主伸側通路51に並列して設けられている。副伸側通路9は、ロッド側室R1からピストン側室R2への液体の流れを許容する。
副圧側通路10は、主圧側減衰手段6を迂回してロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する。副圧側通路10は、シリンダ21の外部で、主圧側通路61に並列して設けられている。副圧側通路10は、ピストン側室R2からロッド側室R1への液体の流れを許容する。
排出通路11は、副圧側通路10から分岐してピストン側室R2をタンク4に連通するよう設けられている。
【0020】
タンク側通路7は、ピストン側室R2をタンク4に連通する。タンク側減衰手段70は、タンク側通路7に並列して設けた調圧弁72およびリリーフ弁73を備えている。調圧弁72およびリリーフ弁73は、共に、ピストン側室R2からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容し、かつ、液体の流れに抵抗を与える。これによって、タンク側減衰手段70は、ピストン側室R2からタンク4への液体の流れを許容し、当該液体の流れに抵抗を与える。調圧弁72は、調圧弁52と同様に、通過流量に対して圧力損失が略比例するような特性を備えており、タンク側減衰手段70における流量圧力特性は、リリーフ弁73の開弁後に傾きが開弁前よりも小さくなる特性を示す。
タンク側副圧減衰手段15は、排出通路11の途中に設けられている。タンク側副圧減衰手段15は、ピストン側室R2からタンク4への液体の流れを許容するとともに当該液体の流れに抵抗を与える。タンク側副圧減衰手段15は、調圧弁であり、ピストン側室R2からタンク4へ向かう液体の流れのみを許容する。タンク側副圧減衰手段15は、調圧弁72と同様に、通過流量に対して圧力損失が略比例するような特性を備えている。
減衰力切替ダンパ1が圧縮動作する際にシリンダ21内へピストンロッド23が侵入する体積に見合った量の液体が、タンク側通路7とタンク側副圧減衰手段15を介してピストン側室R2からタンク4へ排出される。
吸込通路8は、タンク4からピストン側室R2への液体の流れを許容する。吸込通路8は、タンク4とピストン側室R2とを連通する連通路81と、連通路81の途中に設けられてタンク4からピストン側室R2への液体の流れのみを許容する逆止弁82と、を備えている。減衰力切替ダンパ1が伸長動作する際にシリンダ21内からピストンロッド23が退出する体積に見合った量の液体が、この吸込通路8を介してタンク4からピストン側室R2内に供給される。
【0021】
回路部3は、更に、副伸側減衰手段12と、伸側ロジック弁13と、副圧側減衰手段14と、圧側ロジック弁16と、を備えている。
伸側ロジック弁13、及び副伸側減衰手段12は、副伸側通路9の途中に設けられている。伸側ロジック弁13、及び副伸側減衰手段12は、ロッド側室R1を上流として、順に設けられている。副伸側減衰手段12は、調圧弁とされていて、ロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する。副伸側減衰手段12は、ロッド側室R1からピストン側室R2への液体の流れを許容するとともに当該液体の流れに抵抗を与える。副伸側減衰手段12は、調圧弁52と同様に、通過流量に対して圧力損失が略比例するような特性を備えている。
伸側ロジック弁13は、副伸側通路9を開閉する。伸側ロジック弁13は、伸側弁体131と、伸側付勢部材132と、伸側パイロット通路134と、を備えている。伸側弁体131は、副伸側通路9を開閉する。伸側付勢部材132は、副伸側通路9を閉じる方向へ伸側弁体131を付勢するばねである。伸側付勢部材132は、ばねの以外の部材であってもよく、伸側弁体131を付勢して副伸側通路9を閉じることができる部材であればよい。伸側パイロット通路134は、伸側弁体131の、背面側、すなわち副伸側通路9とは反対側に位置する伸側背圧室133を、タンク4へ連通する。
【0022】
このような伸側ロジック弁13において、伸側弁体131は、副伸側通路9の上流の圧力、つまり、ロッド側室R1の圧力を、伸側弁体131の正面側135に受ける。伸側弁体131の背面側には、伸側背圧室133内の圧力が作用する。したがって、伸側パイロット通路134がタンク4に連通される状態では、伸側背圧室133内がタンク圧となる。この状態で、ロッド側室R1が圧縮されてロッド側室R1内の圧力が上昇すると、ロッド側室R1の圧力を受けて伸側弁体131が伸側背圧室133を圧縮する方向へ移動し、伸側ロジック弁13は開状態となる。
逆に、伸側パイロット通路134が、後述する伸側減衰力切替手段110により閉鎖されてタンク4との連通が阻止される状態では、ロッド側室R1が圧縮されてロッド側室R1内の圧力が上昇しても、伸側背圧室133内の液体の逃げ場がない。このため、伸側弁体131で伸側背圧室133を圧縮できず、伸側弁体131は副伸側通路9を閉鎖したままとなり、伸側ロジック弁13は閉状態となる。なお、伸側弁体131には、伸側弁体131の上流の圧力を伸側背圧室133へ導く絞り通路131aが設けられている。
伸側ロジック弁13においては、伸側弁体131が伸側背圧室133側に後退して副伸側通路9を開いている開状態にあって、伸側パイロット通路134が閉鎖されると、伸側背圧室133とタンク4との連通が閉鎖される。すると、伸側背圧室133内の圧力が上昇し、副伸側通路9を閉鎖する方向へ伸側弁体131を移動させ、伸側ロジック弁13は閉状態となる。
このように、伸側ロジック弁13は、伸側パイロット通路134が開通し、伸側背圧室133がタンク4へ通じる状態では、開弁可能な状態とされて、ロッド側室R1が圧縮されて副伸側通路9に圧力が作用すると、開状態となる。また、伸側ロジック弁13は、逆に伸側パイロット通路134が閉鎖されて、伸側背圧室133とタンク4との連通が断たれると、閉状態となる。
このように、伸側ロジック弁13は、伸側パイロット通路134がタンク4に通じると開弁可能な状態におかれ、伸側パイロット通路134が閉鎖されると閉弁する。
【0023】
副圧側減衰手段14は、副圧側通路10の途中であって排出通路11の分岐点より下流に設けられている。副圧側減衰手段14は、ピストン側室R2からロッド側室R1への液体の流れを許容するとともに当該液体の流れに抵抗を与える。副圧側減衰手段14は、調圧弁とされていて、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する。副圧側減衰手段14は、調圧弁62と同様に、通過流量に対して圧力損失が略比例するような特性を備えている。
圧側ロジック弁16は、副圧側通路10の途中であって排出通路11の分岐点より上流に設けられている。圧側ロジック弁16は、副圧側通路10を開閉する。圧側ロジック弁16は、圧側弁体161と、圧側付勢部材162と、圧側パイロット通路164と、を備えている。圧側弁体161は、副圧側通路10を開閉する。圧側付勢部材162は、副圧側通路10を閉じる方向へ圧側弁体161を付勢するばねである。圧側付勢部材162は、ばねの以外の部材であってもよく、圧側弁体161を付勢して副圧側通路10を閉じることができる部材であればよい。圧側パイロット通路164は、圧側弁体161の、背面側、すなわち副圧側通路10とは反対側に位置する圧側背圧室163を、タンク4へ連通する。
【0024】
このような圧側ロジック弁16において、圧側弁体161は、副圧側通路10の上流の圧力、つまり、ピストン側室R2の圧力を、圧側弁体161の正面側165に受ける。圧側弁体161の背面側には、圧側背圧室163内の圧力が作用する。したがって、圧側パイロット通路164がタンク4に連通される状態では、圧側背圧室163内がタンク圧となる。この状態で、ピストン側室R2が圧縮されてピストン側室R2内の圧力が上昇すると、ピストン側室R2の圧力を受けて圧側弁体161が圧側背圧室163を圧縮する方向へ移動し、圧側ロジック弁16は開状態となる。
逆に、圧側パイロット通路164が、後述する圧側減衰力切替手段120により閉鎖されてタンク4との連通が阻止される状態では、ピストン側室R2が圧縮されてピストン側室R2内の圧力が上昇しても、圧側背圧室163内の液体の逃げ場がない。このため、圧側弁体161で圧側背圧室163を圧縮できず、圧側弁体161は副圧側通路10を閉鎖したままとなり、圧側ロジック弁16は閉状態となる。なお、圧側弁体161には、圧側弁体161の上流の圧力を圧側背圧室163へ導く絞り通路161aが設けられている。
圧側ロジック弁16においては、圧側弁体161が圧側背圧室163側に後退して副圧側通路10を開いている開状態にあって、圧側パイロット通路164が閉鎖されると、圧側背圧室163とタンク4との連通が閉鎖される。すると、圧側背圧室163内の圧力が上昇し、副圧側通路10を閉鎖する方向へ圧側弁体161を移動させ、圧側ロジック弁16は閉状態となる。
このように、圧側ロジック弁16もまた、伸側ロジック弁13と同様の動作を呈するようになっている。具体的には、圧側パイロット通路164が開通し、圧側背圧室163がタンク4へ通じる状態では、開弁可能な状態とされて、ピストン側室R2が圧縮されて副圧側通路10に圧力が作用すると、開状態となる。また、圧側ロジック弁16は、逆に圧側パイロット通路164が閉鎖されて、圧側背圧室163とタンク4との連通が断たれると、閉状態となる。
このように、圧側ロジック弁16は、圧側パイロット通路164がタンク4に通じると開弁可能な状態におかれ、圧側パイロット通路164が閉鎖されると閉弁する。
【0025】
減衰力切替部100は、振動の大きさに応じて減衰力切替ダンパ1における減衰力を切り替える。減衰力切替部100は、検出ロッド200と、伸側減衰力切替手段110と、圧側減衰力切替手段120と、を備えている。
検出ロッド200は、シリンダ21外に設けられている。検出ロッド200は、ピストンロッド23に、連結棒28を介して連結されている。検出ロッド200は、シリンダ21に対してピストンロッド23が軸方向Dcに相対移動する際に、ピストンロッド23と連動して移動する。検出ロッド200は、ピストンロッド23に平行して軸方向Dcに延びている。
検出ロッド200には、その延伸方向の中央部に凹部201が設けられている。凹部201は、検出ロッド200の表面202に対し、軸方向Dcに直交する方向に窪んで形成されている。凹部201は、軸方向Dcに沿って所定長にわたって延在している。
【0026】
伸側減衰力切替手段110は、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力を切り替える。圧側減衰力切替手段120は、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力を切り替える。伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々は、検出ロッド200に対向して設けられている。地震動が生じていない初期状態においてピストン22が中立位置にある場合、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120とは、凹部201の軸方向Dcの中央部201cを挟んで対称に配置されている。
【0027】
伸側減衰力切替手段110は、伸側パイロット通路134の途中に設けられている。伸側減衰力切替手段110は、伸側パイロット通路134を開閉することで、伸側ロジック弁13の開閉制御を行う。
伸側減衰力切替手段110は、制御弁体111と、切替レバー114と、制御弁付勢手段115と、を備えている。制御弁体111は、伸側パイロット通路134を開閉する。より詳細には、制御弁体111は、伸側パイロット通路134を閉鎖する閉鎖ポジション113と、伸側パイロット通路134を開通させる開通ポジション112との間で切替可能とされている。
切替レバー114は、検出ロッド200の表面202に直交する、検出ロッド200に向かう方向に、進退自在に設けられている。切替レバー114は、制御弁体111と連動して動作する。切替レバー114は、表面202に直交する方向に進退することで、制御弁体111を、閉鎖ポジション113と開通ポジション112との間で切り替える。切替レバー114の先端部には、ローラ114aが設けられている。切替レバー114が検出ロッド200に向かう方向に進出している場合に、制御弁体111は開通ポジション112に位置して開状態となる。切替レバー114が検出ロッド200に向かう方向から退行している場合に、制御弁体111は閉鎖ポジション113に位置して閉状態となる。
制御弁付勢手段115は、制御弁体111を付勢し、切替レバー114のローラ114aを検出ロッド200へ当接させる。制御弁付勢手段115としては、ばねが用いられている。制御弁付勢手段115としては、ばね以外の部材であってもよい。
【0028】
ピストン22が中立位置に在る場合に、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114は、凹部201に当接される。
伸側減衰力切替手段110の切替レバー114と、軸方向Dcの一方側Dc1のピストンロッド23側に位置する凹部201の端部との、軸方向Dcにおける距離は、第1基準値S1である。
また、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114と、軸方向Dcの他方側Dc2のピストン22側に位置する凹部201の端部との、軸方向Dcにおける距離は、第2基準値S2である。
【0029】
このような伸側減衰力切替手段110においては、ピストンロッド23がシリンダ21に対して軸方向Dcに相対移動するのに伴って、検出ロッド200が軸方向Dcに変位した場合に、ローラ114aが検出ロッド200に沿って転動する。
伸側減衰力切替手段110は、ローラ114aが凹部201に当接している状態では、制御弁体111が開通ポジション112に位置して開状態となり、伸側パイロット通路134を開通させ、伸側背圧室133をタンク4に連通させる。
伸側減衰力切替手段110は、ピストン22が中立位置から、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作により、第1基準値S1以上、軸方向Dcの他方側Dc2のピストン側室R2の方へと変位すると、ローラ114aが、凹部201の軸方向Dcの一方側Dc1で凹部201から表面202に乗り上げる。また、伸側減衰力切替手段110は、ピストン22が中立位置から、減衰力切替ダンパ1の伸長動作により、第1基準値S1より大きい第2基準値S2以上、軸方向Dcの一方側Dc1のロッド側室R1の方へと変位すると、ローラ114aが、凹部201の軸方向Dcの他方側Dc2で凹部201から表面202に乗り上げる。このように、シリンダ21に対するピストンロッド23の動作量が第1基準値S1以上となって、ローラ114aが、凹部201の軸方向Dcの一方側Dc1、または他方側Dc2で表面202に乗り上げると、切替レバー114が退行して制御弁体111が開通ポジション112から閉鎖ポジション113へと移行して閉状態となり、伸側パイロット通路134が閉鎖される。
伸側減衰力切替手段110には、切替レバー114にディテント機構(図示無し)が設けられている。伸側減衰力切替手段110のディテント機構は、伸側ロジック弁13が一旦閉状態となると、その後、伸側ロジック弁13の閉状態を維持する。より詳細には、上記のように、伸側減衰力切替手段110が開通ポジション112から閉鎖ポジション113へ切り替わると、伸側減衰力切替手段110は、ディテント機構により、そのまま閉鎖ポジション113を維持して、伸側パイロット通路134が閉鎖された状態を維持するようになっている。伸側減衰力切替手段110が閉鎖ポジション113となった後、手動でディテント機構を操作して開通ポジション112へ復帰させることができるようになっている。
なお、切替レバー114の先端にはローラ114aが設けられているので、切替レバー114が検出ロッド200上を滑らかに走行することができ、ピストンロッド23のシリンダ21に対する相対移動は妨げられ難い。
【0030】
圧側減衰力切替手段120は、圧側パイロット通路164の途中に設けられている。圧側減衰力切替手段120は、圧側パイロット通路164を開閉することで、圧側ロジック弁16の開閉制御を行う。
圧側減衰力切替手段120は、伸側減衰力切替手段110と同様の、制御弁体121と、切替レバー124と、制御弁付勢手段125と、を備えている。制御弁体121は、圧側パイロット通路164を開閉する。より詳細には、制御弁体121は、圧側パイロット通路164を閉鎖する閉鎖ポジション123と、圧側パイロット通路164を開通させる開通ポジション122との間で切替可能とされている。
切替レバー124は、検出ロッド200の表面202に直交する、検出ロッド200に向かう方向に、進退自在に設けられている。切替レバー124は、制御弁体121と連動して動作する。切替レバー124は、表面202に直交する方向に進退することで、制御弁体121を、閉鎖ポジション123と開通ポジション122との間で切り替える。切替レバー124の先端部には、ローラ124aが設けられている。切替レバー124が検出ロッド200に向かう方向に進出している場合に、制御弁体121は開通ポジション122に位置して開状態となる。切替レバー124が検出ロッド200に向かう方向から退行している場合に、制御弁体121は閉鎖ポジション123に位置して閉状態となる。
制御弁付勢手段125は、制御弁体121を付勢し、切替レバー124のローラ124aを検出ロッド200へ当接させる。制御弁付勢手段125としては、ばねが用いられている。制御弁付勢手段125としては、ばね以外の部材であってもよい。
【0031】
ピストン22が中立位置に在る場合に、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124は、凹部201に当接される。
圧側減衰力切替手段120の切替レバー124と、軸方向Dcの他方側Dc2のピストン22側に位置する凹部201の端部との、軸方向Dcにおける距離は、第1基準値S1である。
また、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124と、軸方向Dcの一方側Dc1のピストンロッド23側に位置する凹部201の端部との、軸方向Dcにおける距離は、第2基準値S2である。
【0032】
このような圧側減衰力切替手段120においては、ピストンロッド23がシリンダ21に対して軸方向Dcに相対移動するのに伴って、検出ロッド200が軸方向Dcに変位した場合に、ローラ124aが検出ロッド200に沿って転動する。
圧側減衰力切替手段120は、ローラ124aが凹部201に当接している状態では、制御弁体121が開通ポジション122に位置して開状態となり、圧側パイロット通路164を開通させ、圧側背圧室163をタンク4に連通させる。
圧側減衰力切替手段120は、ピストン22が中立位置から、減衰力切替ダンパ1の伸長動作により、第1基準値S1以上、軸方向Dcの一方側Dc1のロッド側室R1の方へと変位すると、ローラ124aが、凹部201の軸方向Dcの他方側Dc2で凹部201から表面202に乗り上げる。また、圧側減衰力切替手段120は、ピストン22が中立位置から、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作により、第1基準値S1より大きい第2基準値S2以上、軸方向Dcの他方側Dc2のピストン側室R2の方へと変位すると、ローラ124aが、凹部201の軸方向Dcの一方側Dc1で凹部201から表面202に乗り上げる。このように、シリンダ21に対するピストンロッド23の動作量が第1基準値S1以上となって、ローラ124aが、凹部201の軸方向Dcの一方側Dc1、または他方側Dc2で表面202に乗り上げると、切替レバー124が退行して制御弁体121が開通ポジション122から閉鎖ポジション123へと移行して閉状態となり、圧側パイロット通路164が閉鎖される。
圧側減衰力切替手段120には、切替レバー124にディテント機構(図示無し)が設けられている。圧側減衰力切替手段120のディテント機構は、圧側ロジック弁16が一旦閉状態となると、その後、圧側ロジック弁16の閉状態を維持する。より詳細には、上記のように、圧側減衰力切替手段120が開通ポジション122から閉鎖ポジション123へ切り替わると、圧側減衰力切替手段120は、ディテント機構により、そのまま閉鎖ポジション123を維持して、圧側パイロット通路164が閉鎖された状態を維持するようになっている。圧側減衰力切替手段120が閉鎖ポジション123となった後、手動でディテント機構を操作して開通ポジション122へ復帰させることができるようになっている。
【0033】
以上のように構成された減衰力切替ダンパ1の動作について説明する。以降においては、減衰力切替ダンパ1が伸縮した際の、ロッド側室R1とピストン側室R2との間の液体の流れに関する、主伸側通路51、主圧側通路61、副伸側通路9、副圧側通路10について注目して、動作を説明する。
まず、ピストンロッド23の中立位置からの動作量が第1基準値S1未満である場合について説明する。
図2は、地震動による波の到来により、減衰力切替ダンパが圧縮動作し、その圧縮動作量が第1基準値未満である状態を示す図である。
図2に示されるように、地震動による波の到来により、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作した場合においては、圧縮動作量が第1基準値S1に到達しない限り、伸側減衰力切替手段110のローラ114aと、圧側減衰力切替手段120のローラ124aの双方が、凹部201に当接し、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の双方の切替レバー114、124が、検出ロッド200に向かう方向に進出した状態となっている。この状態で、伸側減衰力切替手段110、圧側減衰力切替手段120は、それぞれ、制御弁体111、112が開通ポジション112、122をとって開状態となり、伸側パイロット通路134と圧側パイロット通路164は共に開通している。そして、圧縮動作に伴いピストン側室R2の圧力が高まり、副圧側通路10に圧力が作用すると、圧側ロジック弁16が開状態となり、液体は、主圧側通路61及び副圧側通路10の双方を通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。
ここで、後に説明するような、圧側ロジック弁16が閉状態となって、副圧側通路10が閉鎖され、液体が主圧側通路61のみしか通り得ないような場合に比べると、上記のような圧縮動作量が第1基準値S1に到達しない程度に圧縮する場合には、液体が流れる通路断面積が大きくなり、液体が流れる際の抵抗が小さくなっているため、減衰力切替ダンパ1の減衰力が小さい状態となっている。
このように、地震動の波による圧縮動作量が第1基準値S1以下であれば、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力は、小さい状態となっているため、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作時の減衰力を小さい状態としたまま、地震動を減衰する。
【0034】
図3は、地震動による波の到来により、減衰力切替ダンパが伸長動作し、その伸長動作量が第1基準値未満である状態を示す図である。
図3に示されるように、地震動による波の到来により、減衰力切替ダンパ1が伸長動作した場合においては、伸長動作量が第1基準値S1に到達しない限り、伸側減衰力切替手段110のローラ114aと、圧側減衰力切替手段120のローラ124aの双方が、凹部201に当接し、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の双方の切替レバー114、124が、検出ロッド200に向かう方向に進出した状態となっている。この状態で、伸側減衰力切替手段110、圧側減衰力切替手段120は、それぞれ、制御弁体111、112が開通ポジション112、122をとって開状態となり、伸側パイロット通路134と圧側パイロット通路164は共に開通している。そして、伸長動作に伴いロッド側室R1の圧力が高まり、副伸側通路9に圧力が作用すると、伸側ロジック弁13が開状態となり、液体は、主伸側通路51及び副伸側通路9の双方を通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。
ここで、後に説明するような、伸側ロジック弁13が閉状態となって、副伸側通路9が閉鎖され、液体が主伸側通路51のみしか通り得ないような場合に比べると、上記のような伸長動作量が第1基準値S1に到達しない程度に伸長する場合には、液体が流れる通路断面積が大きくなり、液体が流れる際の抵抗が小さくなっているため、減衰力切替ダンパ1の減衰力が小さい状態となっている。
このように、地震動の波による伸長動作量が第1基準値S1以下であれば、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力は、小さい状態となっているため、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作時の減衰力を小さい状態としたまま、地震動を減衰する。
【0035】
図4は、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作し、その圧縮動作量が第1基準値以上、第2基準値以下である状態を示す図である。
パルス性地震動においては、まず一方向に、通常の地震よりも大きい振幅の第1の波が到来し、続いて逆方向に、第1の波よりも更に大きい振幅の第2の波が到来することが多い。本実施形態の減衰力切替ダンパ1は、このようなパルス性地震動を、効率的に減衰する。
まず、図4に示されるように、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作し、その圧縮動作量が第1基準値S1以上、第2基準値S2以下の大きさとなった場合を考える。この場合、シリンダ21に対してピストンロッド23が相対移動して、ピストンロッド23の動作量が第1基準値S1以上の大きさとなり、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位する。すると、伸側減衰力切替手段110のローラ114aが、凹部201に対して軸方向Dcの一方側Dc1で、検出ロッド200の表面202に乗り上げて、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114が、検出ロッド200に向かう方向から退行した状態となる。これにより、伸側減衰力切替手段110は、制御弁体111が閉鎖ポジション113に移行して開状態から閉状態となり、伸側パイロット通路134は閉鎖され、伸側ロジック弁13は閉状態となる。ここで、圧側ロジック弁16は依然として開状態となっているため、図2を用いて説明した場合と同様に、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でピストン側室R2の方へと変位すると、ピストン側室R2内の液体が、主圧側通路61及び副圧側通路10の双方を通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。
このようにして、圧側減衰力切替手段120は圧側ロジック弁16の開状態を維持しつつ、伸側減衰力切替手段110は伸側ロジック弁13を開状態から閉状態に切り替える。このため、第1の波による減衰力切替ダンパ1の圧縮動作中、圧縮動作量が第1基準値S1を超えた後においても、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作時の減衰力を小さい状態としたまま、第1の波を減衰する。このように、減衰力切替ダンパ1による減衰力が小さい状態のままであるため、減衰力切替ダンパ1による減衰力が大きい状態に切り替わった状態に比較すると、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作量が大きくなる。
このように、第1の波が到来して第1基準値S1以上の大きさだけ圧縮動作したとしても、圧縮動作時の減衰力は小さい状態のまま維持される。このため、仮に第1基準値S1を小さく設定したとしても、効率的に第1の波を減衰させることができる。
【0036】
図5は、図4に示される状態から、地震動による第2の波の到来により、減衰力切替ダンパが伸長動作した状態を示す図である。
第1の波による減衰力切替ダンパ1の圧縮動作量が、第1基準値S1を超え、(第2基準値S2以下の)最大の圧縮動作量に到達した後、地震動による第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、図5に示されるように、伸長動作に移行する。このとき、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114のディテント機構により、制御弁体111が、閉鎖ポジション113を維持し、伸側ロジック弁13が閉状態となった状態が維持されている。したがって、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でロッド側室R1の方へと変位し、ロッド側室R1の圧力が高まって副伸側通路9に圧力が作用しても、ロッド側室R1内の液体は、副伸側通路9を流れ得ない。したがって、液体は、主伸側通路51のみを通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。すなわち、伸側ロジック弁13が開状態となり、液体が主伸側通路51及び副伸側通路9の双方を通る場合に比べると、液体が流れる通路断面積が小さくなり、液体が流れる際の抵抗が大きくなっているため、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力が大きい状態となる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1が伸長動作に移行した瞬間から、伸長動作に対して大きい減衰力を発揮することができる。
また、図4を用いて説明したように、圧縮動作時に、圧縮動作量が第1基準値S1を超えた後も、圧縮動作時の減衰力が小さい状態に維持されていたので、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作量が大きくなる。このため、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作から伸長動作に移行した際、減衰力切替ダンパ1における伸長動作量(制動距離)を大きく確保することができる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰が、効率的に行われる。
【0037】
上記のように、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位する場合に、圧側減衰力切替手段120は圧側ロジック弁16の開状態を維持する。
ここで、図4においては、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作し、その圧縮動作量が第1基準値S1以上、第2基準値S2以下の大きさとなった場合を考えた。このため、図4においては、圧側減衰力切替手段120においては圧側ロジック弁16が開状態となっていた。ここで、第1基準値S1以上の伸長動作がまず生じ、その次に、第1基準値S1以上の圧縮動作が生じるような場合においては、図6図7を用いて次に説明するように、第1基準値S1以上の伸長動作によって、圧側減衰力切替手段120においては圧側ロジック弁16が閉状態となっている。この場合には、続く第1基準値S1以上の圧縮動作においては、図7に示されるように、圧側ロジック弁16が閉状態となり、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124のディテント機構により、制御弁体121の閉鎖ポジション123が維持されて、圧側ロジック弁16の閉状態が維持される。
このようにして、ピストン22がピストン側室R2の方へと変位するに際し、圧側減衰力切替手段120は圧側ロジック弁16の開閉状態を維持する。
【0038】
図6は、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が伸長動作し、その伸長動作量が第1基準値以上、第2基準値以下である状態を示す図である。
次に、図6に示されるように、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が伸長動作し、その伸長動作量が第1基準値S1以上、第2基準値S2以下の大きさとなった場合を考える。この場合、シリンダ21に対してピストンロッド23が相対移動して、ピストンロッド23の動作量が第1基準値S1以上の大きさとなり、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位する。すると、圧側減衰力切替手段120のローラ124aが、凹部201に対して軸方向Dcの他方側Dc2で、検出ロッド200の表面202に乗り上げて、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124が、検出ロッド200に向かう方向から退行した状態となる。これにより、圧側減衰力切替手段120は、制御弁体121が閉鎖ポジション123に移行して開状態から閉状態となり、圧側パイロット通路164は閉鎖され、圧側ロジック弁16は閉状態となる。ここで、伸側ロジック弁13は依然として開状態となっているため、図3を用いて説明した場合と同様に、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でロッド側室R1の方へと変位すると、ロッド側室R1内の液体が、主伸側通路51及び副伸側通路9の双方を通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。
このようにして、伸側減衰力切替手段110は伸側ロジック弁13の開状態を維持しつつ、圧側減衰力切替手段120は圧側ロジック弁16を開状態から閉状態に切り替える。このため、第1の波による減衰力切替ダンパ1の伸長動作中、伸長動作量が第1基準値S1を超えた後においても、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作時の減衰力を小さい状態としたまま、第1の波を減衰する。このように、減衰力切替ダンパ1による減衰力が小さい状態のままであるため、減衰力切替ダンパ1による減衰力が大きい状態に切り替わった状態に比較すると、減衰力切替ダンパ1の伸長動作量が大きくなる。
このように、第1の波が到来して第1基準値S1以上の大きさだけ伸長動作したとしても、伸長動作時の減衰力は小さい状態のまま維持される。このため、仮に第1基準値S1を小さく設定したとしても、効率的に第1の波を減衰させることができる。
【0039】
図7は、図6に示される状態から、地震動による第2の波の到来により、減衰力切替ダンパが圧縮動作した状態を示す図である。
第1の波による減衰力切替ダンパ1の伸長動作量が、第1基準値S1を超え、(第2基準値S2以下の)最大の伸長動作量に到達した後、地震動による第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、図7に示されるように、圧縮動作に移行する。このとき、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124のディテント機構により、制御弁体121が、閉鎖ポジション123を維持し、圧側ロジック弁16が閉状態となった状態が維持されている。したがって、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でピストン側室R2の方へと変位し、ピストン側室R2の圧力が高まって副圧側通路10に圧力が作用しても、ピストン側室R2内の液体は、副圧側通路10を流れ得ない。したがって、液体は、主圧側通路61のみを通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。すなわち、圧側ロジック弁16が開状態となり、液体が主圧側通路61及び副圧側通路10の双方を通る場合に比べると、液体が流れる通路断面積が小さくなり、液体が流れる際の抵抗が大きくなっているため、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力が大きい状態となる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作に移行した瞬間から、圧縮動作に対して大きい減衰力を発揮することができる。
また、図6を用いて説明したように、伸長動作時に、伸長動作量が第1基準値S1を超えた後も、伸長動作時の減衰力が小さい状態に維持されていたので、減衰力切替ダンパ1の伸長動作量が大きくなる。このため、減衰力切替ダンパ1が伸長動作から圧縮動作に移行した際、減衰力切替ダンパ1における圧縮動作量(制動距離)を大きく確保することができる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰が、効率的に行われる。
【0040】
上記のように、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位する場合に、伸側減衰力切替手段110は伸側ロジック弁13の開状態を維持する。
ここで、図6においては、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が伸長動作し、その伸長動作量が第1基準値S1以上、第2基準値S2以下の大きさとなった場合を考えた。このため、図6においては、伸側減衰力切替手段110においては伸側ロジック弁13が開状態となっていた。ここで、第1基準値S1以上の圧縮動作がまず生じ、その次に、第1基準値S1以上の伸長動作が生じるような場合においては、図4図5を用いて説明したように、第1基準値S1以上の圧縮動作によって、伸側減衰力切替手段110においては伸側ロジック弁13が閉状態となっている。この場合には、続く第1基準値S1以上の伸長動作においては、図5に示されるように、伸側ロジック弁13が閉状態となり、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114のディテント機構により、制御弁体111の閉鎖ポジション113が維持されて、伸側ロジック弁13の閉状態が維持される。
このようにして、ピストン22がロッド側室R1の方へと変位するに際し、伸側減衰力切替手段110は伸側ロジック弁13の開閉状態を維持する。
【0041】
次に、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作し、その圧縮動作量が第2基準値S2以上の大きさとなる場合を考える。
まず、減衰力切替ダンパ1が第2基準値S2以上の大きさだけ圧縮する過程で、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位した段階では、図4を用いて説明したように、伸側減衰力切替手段110のローラ114aが、凹部201に対して軸方向Dcの一方側Dc1で検出ロッド200の表面202に乗り上げる。これにより、伸側減衰力切替手段110は、閉鎖ポジション113に移行し、伸側ロジック弁13を閉状態とする。この状態で圧縮動作が進行し、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でピストン側室R2の方へと変位すると、圧側ロジック弁16は依然として開状態となっているため、ピストン側室R2内の液体が、主圧側通路61及び副圧側通路10を通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。このようにして、圧側減衰力切替手段120は圧縮動作時の減衰力を維持しつつ、伸側減衰力切替手段110は伸長動作時の減衰力を大きくするように切り替える。
【0042】
図8は、図4に示した状態から、減衰力切替ダンパの圧縮動作量が第2基準値以上に増えた状態を示す図である。
図8に示されるように、第1の波により、減衰力切替ダンパ1が、更に圧縮動作し、ピストン22が中立位置から第2基準値S2以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、伸側減衰力切替手段110のローラ114aに加えて、圧側減衰力切替手段120のローラ124aが、凹部201に対して軸方向Dcの一方側Dc1で検出ロッド200の表面202に乗り上げて、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124が、検出ロッド200に向かう方向から退行した状態となる。これにより、伸側減衰力切替手段110に加えて、圧側減衰力切替手段120においても、制御弁体121が閉鎖ポジション123に移行して閉状態となり、圧側パイロット通路164は閉鎖され、圧側ロジック弁16は閉状態となり、液体が副圧側通路10を通らなくなる。この状態で、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でピストン側室R2の方へと更に変位しようとすると、ピストン側室R2内の液体は、主圧側通路61のみを通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。
このようにして、圧縮動作量が第2基準値S2以上となった場合には、圧縮動作中に、圧側減衰力切替手段120が圧側ロジック弁16を閉状態とするように切り替える。したがって、圧側減衰力切替手段120は、圧縮動作中に、減衰力を大きくし、第1の波が想定以上に大きい場合であっても、これを効率良く減衰することができる。
その後、第1の波による圧縮動作量が最大量に到達し、第2の波により、減衰力切替ダンパ1が、伸長動作に移行する。このとき、図5を用いて説明したように、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114のディテント機構により、制御弁体111が、閉鎖ポジション113を維持し、伸長動作時の減衰力が大きい状態を維持している。したがって、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でロッド側室R1の方へと変位すると、ロッド側室R1内の液体は、主伸側通路51のみを通り、ピストン側室R2へと流れる。これにより、減衰力切替ダンパ1が伸長動作に移行した瞬間から、伸長動作に対して大きい減衰力を発揮することができる。
【0043】
次に、パルス性地震動が生じ、地震動による第1の波の到来により、減衰力切替ダンパ1が伸長動作し、その伸長動作量が第2基準値S2以上の大きさとなる場合を考える。
まず、減衰力切替ダンパ1が第2基準値S2以上の大きさだけ伸長する過程で、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位した段階では、図6を用いて説明したように、圧側減衰力切替手段120のローラ124aが、凹部201に対して軸方向Dcの他方側Dc2で検出ロッド200の表面202に乗り上げる。これにより、圧側減衰力切替手段120は、閉鎖ポジション123に移行し、圧側ロジック弁16を閉状態とする。この状態で伸長動作が進行し、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でロッド側室R1の方へと変位すると、伸側ロジック弁13は依然として開状態となっているため、ロッド側室R1内の液体が、主伸側通路51及び副伸側通路9を通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。このようにして、伸側減衰力切替手段110は伸長動作時の減衰力を維持しつつ、圧側減衰力切替手段120は圧縮動作時の減衰力を大きくするように切り替える。
【0044】
図9は、図6に示した状態から、減衰力切替ダンパの伸長動作量が第2基準値以上に増えた状態を示す図である。
図9に示されるように、第1の波により、減衰力切替ダンパ1が、更に伸長動作し、ピストン22が中立位置から第2基準値S2以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、圧側減衰力切替手段120のローラ124aに加えて、伸側減衰力切替手段110のローラ114aが、凹部201に対して軸方向Dcの他方側Dc2で検出ロッド200の表面202に乗り上げて、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114が、検出ロッド200に向かう方向から退行した状態となる。これにより、圧側減衰力切替手段120に加えて、伸側減衰力切替手段110においても、制御弁体111が閉鎖ポジション113に移行して閉状態となり、伸側パイロット通路134は閉鎖され、伸側ロジック弁13は閉状態となり、液体が副伸側通路9を通らなくなる。この状態で、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でロッド側室R1の方へと更に変位しようとすると、ロッド側室R1内の液体は、主伸側通路51のみを通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。
このようにして、伸長動作量が第2基準値S2以上となった場合には、伸長動作中に、伸側減衰力切替手段110が伸側ロジック弁13を閉状態とするように切り替える。したがって、伸側減衰力切替手段110は、伸長動作中に、減衰力を大きくし、第1の波が想定以上に大きい場合であっても、これを効率良く減衰することができる。
その後、第1の波による伸長動作量が最大量に到達し、第2の波により、減衰力切替ダンパ1が、圧縮動作に移行する。このとき、図7を用いて説明したように、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124のディテント機構により、制御弁体121が、閉鎖ポジション123を維持し、圧縮動作時の減衰力が大きい状態を維持している。したがって、ピストン22が、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でピストン側室R2の方へと変位すると、ピストン側室R2内の液体は、主圧側通路61のみを通り、ロッド側室R1へと流れる。これにより、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作に移行した瞬間から、圧縮動作に対して大きい減衰力を発揮することができる。
【0045】
上述したような減衰力切替ダンパ1は、構造物に設けられて、減衰力を発揮しつつ伸長及び圧縮することで、構造物の振動を緩和させ、振動の大きさに応じて減衰力を切替可能な、減衰力切替ダンパ1であって、伸長動作時の減衰力を切り替える伸側減衰力切替手段110と、圧縮動作時の減衰力を切り替える圧側減衰力切替手段120と、シリンダ21と、シリンダ21に対して相対移動するピストンロッド23と、を備え、シリンダ21に対するピストンロッド23の動作量が、第1基準値S1以上の大きさとなるだけ伸長動作すると、伸側減衰力切替手段110は伸長動作時の減衰力を維持しつつ、圧側減衰力切替手段120は圧縮動作時の減衰力を大きくするように切り替え、動作量が第1基準値S1以上の大きさとなるだけ圧縮動作すると、圧側減衰力切替手段120は圧縮動作時の減衰力を維持しつつ、伸側減衰力切替手段110は伸長動作時の減衰力を大きくするように切り替える。
このような構成によれば、まず一方向に、通常の地震よりも大きい振幅の第1の波が到来し、続いて逆方向に、第1の波よりも更に大きい振幅の第2の波が到来するようなパルス性地震動が生じ、第1の波の到来により、シリンダ21に対するピストンロッド23の動作量が、第1基準値S1以上の大きさとなるだけ、減衰力切替ダンパ1が伸長動作した場合には、伸長動作量が第1基準値S1に到達した際に、伸長動作時の減衰力は(小さいまま)維持され、圧縮動作時の減衰力のみが大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による減衰力切替ダンパ1の伸長動作中に、伸長動作量が第1基準値S1を超えた後においても、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作時の減衰力を小さい状態としたまま、第1の波を減衰する。このとき、減衰力切替ダンパ1による減衰力が小さい状態のままであるため、減衰力が大きい状態に切り替わった状態と比較すると、第1の波による伸長動作量が最大量に到達するまでの、減衰力切替ダンパ1の伸長動作量が大きくなる。
続いて、第1の波による伸長動作量が第1基準値S1を超えた後に、最大の伸長動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力は、伸長動作時の伸長動作量が第1基準値S1を超えているので、大きい状態に切り替えられている。また、第1の波における減衰力切替ダンパ1の伸長動作量が大きくなっているため、減衰力切替ダンパ1が伸長動作から圧縮動作に移行した際の、制動距離、すなわち減衰力切替ダンパ1の圧縮動作量を大きく確保することができる。このように、大きい状態へと切り替えられた減衰力と、大きく確保された制動距離により、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰を、より効率的に行うことができる。
他方、パルス性地震動が生じ、第1の波の到来により、シリンダ21に対するピストンロッド23の動作量が、第1基準値S1以上の大きさとなるだけ、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作した場合には、圧縮動作量が第1基準値S1に到達した際に、圧縮動作時の減衰力は(小さいまま)維持され、伸長動作時の減衰力のみが大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による減衰力切替ダンパ1の圧縮動作中に、圧縮動作量が第1基準値S1を超えた後においても、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作時の減衰力を小さい状態としたまま、第1の波を減衰する。このとき、減衰力切替ダンパ1による減衰力が小さい状態のままであるため、減衰力が大きい状態に切り替わった状態と比較すると、第1の波による圧縮動作量が最大量に到達するまでの、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作量が大きくなる。
続いて、第1の波による圧縮動作量が第1基準値S1を超えた後に、最大の圧縮動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力は、圧縮動作時の圧縮動作量が第1基準値S1を超えているので、大きい状態に切り替えられている。また、第1の波における減衰力切替ダンパ1の圧縮動作量が大きくなっているため、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作から伸長動作に移行した際の、制動距離、すなわち減衰力切替ダンパ1の伸長動作量を大きく確保することができる。このように、大きい状態へと切り替えられた減衰力と、大きく確保された制動距離により、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰を、より効率的に行うことができる。
また、第1の波が到来して、シリンダ21に対するピストンロッド23の動作量が第1基準値S1以上の大きさとなるだけ、減衰力切替ダンパ1が伸長、圧縮動作したとしても、このときの減衰力は小さい状態のまま維持されるので、仮に第1基準値S1を小さく設定したとしても、第1の波を小さい状態の減衰力で減衰させることができる。すなわち、第1の波を減衰させるための減衰性能とは独立して、第1基準値S1をある程度小さくすることができるので、第1の波が到来しても、振幅が想定よりも小さいために、続いて到来するより大きい第2の波に対応するための圧縮、伸長動作時の減衰力が大きい状態へと切り替えられないという事態を抑制できるような、減衰力切替ダンパ1の設定が可能である。
以上の効果が相乗し、パルス性地震動を、より効率的に減衰することができる減衰力切替ダンパ1を提供することが可能となる。
【0046】
また、減衰力切替ダンパ1は、動作量が第1基準値S1よりも大きい第2基準値S2以上の大きさとなるだけ伸長動作すると、圧側減衰力切替手段120が圧縮動作時の減衰力を大きくするように切り替えるのに加え、伸側減衰力切替手段110も、伸長動作時の減衰力を大きくするように切り替え、動作量が第2基準値S2以上の大きさとなるだけ圧縮動作すると、伸側減衰力切替手段110が伸長動作時の減衰力を大きくするように切り替えるのに加え、圧側減衰力切替手段120も、圧縮動作時の減衰力を大きくするように切り替える。
このような構成によれば、第1の波によって、ピストンロッド23がシリンダ21に対して相対移動し、減衰力切替ダンパ1が伸長動作している場合に、動作量が、第1基準値S1よりも大きい第2基準値S2に到達すると、圧縮動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられるのに加え、伸長動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による伸長動作中、伸長動作量が第2基準値S2を超えた後、最大の伸長動作量に到達するまでの間、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作時の減衰力を大きい状態として、第1の波を減衰する。これにより、第1の波が想定よりも大きい振幅を有するような場合であっても、第1の波を、より効率的に減衰させることができる。
続いて、第1の波による伸長動作時の動作量が、第2基準値S2を超えた後に最大の伸長動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力は、大きい状態に切り替えられている。これにより、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰を、効率的に行うことができる。
他方、第1の波によって、ピストンロッド23がシリンダ21に対して相対移動し、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作している場合に、動作量が、第1基準値S1よりも大きい第2基準値S2に到達すると、伸長動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられるのに加え、圧縮動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による圧縮動作中、圧縮動作量が第2基準値S2を超えた後、最大の圧縮動作量に到達するまでの間、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作時の減衰力を大きい状態として、第1の波を減衰する。これにより、第1の波が想定よりも大きい振幅を有するような場合であっても、第1の波を、より効率的に減衰させることができる。
続いて、第1の波による圧縮動作時の動作量が、第2基準値S2を超えた後に最大の圧縮動作量に到達すると、第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力は、大きい状態に切り替えられている。これにより、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰を、効率的に行うことができる。
【0047】
また、減衰力切替ダンパ1は、シリンダ21には液体が充填され、ピストンロッド23は、一端がシリンダ21内に設けられ、他端がシリンダ21の外方に突出し、ピストンロッド23の一端に連結され、シリンダ21の内部を、ピストンロッド23側に位置するロッド側室R1と、ロッド側室R1とは反対側のピストン側室R2に区画するピストン22と、ロッド側室R1からピストン側室R2への液体の流れを許容するように、並列して設けられた主伸側通路51及び副伸側通路9と、ピストン側室R2からロッド側室R1への液体の流れを許容するように、並列して設けられた主圧側通路61及び副圧側通路10と、主伸側通路51、副伸側通路9、主圧側通路61、及び副圧側通路10の各々の液体の流れに抵抗を与える、主伸側減衰手段5、副伸側減衰手段12、主圧側減衰手段6及び副圧側減衰手段14と、副伸側通路9を開閉する伸側ロジック弁13と、副圧側通路10を開閉する圧側ロジック弁16と、を備え、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、伸側減衰力切替手段110は伸側ロジック弁13の開閉状態を維持しつつ、圧側減衰力切替手段120は圧側ロジック弁16を開状態から閉状態に切り替え、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、圧側減衰力切替手段120は圧側ロジック弁16の開閉状態を維持しつつ、伸側減衰力切替手段110は伸側ロジック弁13を開状態から閉状態に切り替える。
このような構成によれば、減衰力切替ダンパ1においては、地震動により、シリンダ21とピストンロッド23とが相対移動する。減衰力切替ダンパ1が伸長動作する場合には、ピストン22は、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でピストン側室R2の容積を増大させる方向、つまりロッド側室R1の方へと変位する。ピストン22のロッド側室R1の方への変位により、ロッド側室R1内の液体が、主伸側通路51及び副伸側通路9を通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れ得る。減衰力切替ダンパ1が圧縮動作する場合には、ピストン22は、ピストンロッド23とともに、シリンダ21内でロッド側室R1の容積を増大させる方向、つまりピストン側室R2の方へと変位する。ピストン22のピストン側室R2の方への変位により、ピストン側室R2内の液体が、主圧側通路61及び副圧側通路10を通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れ得る。
減衰力切替ダンパ1の伸長動作時に、伸側ロジック弁13が開いた状態では、副伸側通路9が開通しており、液体は、主伸側通路51及び副伸側通路9の双方を通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。伸側ロジック弁13が閉じた状態では、副伸側通路9が閉鎖しており、液体は、主伸側通路51のみを通り、ロッド側室R1からピストン側室R2へと流れる。このように、伸側ロジック弁13が閉じた場合では、伸側ロジック弁13が開いた状態に比較すると、伸長動作時に液体が流れる通路断面積が小さくなるので、液体が流れる際の抵抗が大きくなり、減衰力切替ダンパ1の減衰力が大きい状態に切り替わる。このように、伸側ロジック弁を開閉することで、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時における減衰力を切り替えることができる。
また、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時に、圧側ロジック弁16が開いた状態では、副圧側通路10が開通しており、液体は、主圧側通路61及び副圧側通路10の双方を通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。圧側ロジック弁16が閉じた状態では、副圧側通路10が閉鎖しており、液体は、主圧側通路61のみを通り、ピストン側室R2からロッド側室R1へと流れる。このように、圧側ロジック弁16が閉じた場合では、圧側ロジック弁16が開いた状態に比較すると、圧縮動作時に液体が流れる通路断面積が小さくなるので、液体が流れる際の抵抗が大きくなり、減衰力切替ダンパ1の減衰力が大きい状態に切り替わる。このように、圧側ロジック弁16を開閉することで、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時における減衰力を切り替えることができる。
このような減衰力切替ダンパ1の、伸長動作時においては、ピストン22が中立位置から第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、伸側ロジック弁13の開閉状態を維持しつつ、圧側ロジック弁16が開状態から閉状態に切り替えられる。これにより、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力は維持され、圧縮動作時の減衰力が大きい状態に切り替わる。
また、減衰力切替ダンパ1の、圧縮動作時においては、ピストン22が中立位置から第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、圧側ロジック弁16の開閉状態を維持しつつ、伸側ロジック弁13が開状態から閉状態に切り替えられる。これにより、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力は維持され、伸縮動作時の減衰力が大きい状態に切り替わる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1を、適切に実現することができる。
【0048】
また、減衰力切替ダンパ1は、液体が貯留されるタンク4を更に備え、伸側ロジック弁13は、副伸側通路9を開閉する伸側弁体131と、副伸側通路9を閉じる方向へ伸側弁体131を付勢する伸側付勢部材132と、伸側弁体131の、副伸側通路9とは反対側に位置する伸側背圧室133を、タンク4へ連通せしめる伸側パイロット通路134と、を備え、圧側ロジック弁16は、副圧側通路10を開閉する圧側弁体161と、副圧側通路10を閉じる方向へ圧側弁体161を付勢する圧側付勢部材162と、圧側弁体161の、副圧側通路10とは反対側に位置する圧側背圧室163を、タンク4へ連通せしめる圧側パイロット通路164と、を備え、伸側減衰力切替手段110は、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、伸側パイロット通路134を閉鎖し、圧側減衰力切替手段120は、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、圧側パイロット通路164を閉鎖し、伸側パイロット通路134が開通した状態で、副伸側通路9に圧力が作用すると、伸側ロジック弁13は開状態となり、圧側パイロット通路164が開通した状態で、副圧側通路10に圧力が作用すると、圧側ロジック弁16は開状態となる。
このような構成によれば、伸側ロジック弁13の伸側弁体131は、副伸側通路9側で、副伸側通路9の圧力を受ける。伸側弁体131、副伸側通路9とは反対側には、伸側背圧室133内の圧力が作用する。伸側パイロット通路134が開通し、タンク4に連通した状態では、伸側背圧室133内がタンク4圧となる。この状態で、減衰力切替ダンパ1の伸長動作によりロッド側室R1内の圧力が上昇すると、ロッド側室R1の圧力を受けて副伸側通路9に圧力が作用し、伸側弁体131が伸側背圧室133を圧縮する方向へ移動し、伸側ロジック弁13が開状態となる。また、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作により、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、伸側パイロット通路134が閉鎖される。伸側パイロット通路134が閉鎖され、タンク4との連通が阻止された状態において、減衰力切替ダンパ1の伸長動作によりロッド側室R1内の圧力が上昇しても、伸側背圧室133内の液体の逃げ場がないため、伸側弁体131が伸側背圧室133側へ移動することができない。これにより、伸側弁体131は副伸側通路9を閉鎖したままとなり伸側ロジック弁13は閉状態となる。伸側ロジック弁13が閉状態となり、伸側弁体131が副伸側通路9を閉鎖することで、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時における減衰力が大きい状態に切り替わる。
また、圧側ロジック弁16の圧側弁体161は、副圧側通路10側で、副圧側通路10の圧力を受ける。圧側弁体161の、副圧側通路10とは反対側には、圧側背圧室163内の圧力が作用する。圧側パイロット通路164が開通し、タンク4に連通した状態では、圧側背圧室163内がタンク4圧となる。この状態で、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作によりピストン側室R2内の圧力が上昇すると、ピストン側室R2の圧力を受けて副圧側通路10に圧力が作用し、圧側弁体161が圧側背圧室163を圧縮する方向へ移動し、圧側ロジック弁16が開状態となる。また、減衰力切替ダンパ1の伸長動作により、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、圧側パイロット通路164が閉鎖される。圧側パイロット通路164が閉鎖され、タンク4との連通が阻止された状態において、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作によりピストン側室R2内の圧力が上昇しても、圧側背圧室163内の液体の逃げ場がないため、圧側弁体161が圧側背圧室163側へ移動することができない。これにより、圧側弁体161は副圧側通路10を閉鎖したままとなり圧側ロジック弁16は閉状態となる。圧側ロジック弁16が閉状態となり、圧側弁体161が副圧側通路10を閉鎖することで、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時における減衰力が大きい状態に切り替わる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1を、適切に実現することができる。
【0049】
また、減衰力切替ダンパ1は、ピストンロッド23に連結されてピストンロッド23と連動して移動する、シリンダ21外に設けられた検出ロッド200を備え、検出ロッド200には、ピストンロッド23の軸方向Dcに沿って延在する凹部201が形成され、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々は、検出ロッド200に対向して設けられ、各々が、伸側パイロット通路134と圧側パイロット通路164のなかの対応するパイロット通路を開閉する制御弁体111、121と、検出ロッド200側に突出し、検出ロッド200に向かう方向へ進退自在に設けられて、制御弁体111、121と連動して動作し、制御弁体111、121の開閉を切り替える切替レバー114、124と、を備え、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々は、凹部201に対応して位置して切替レバー114、124が凹部201に当接している場合に制御弁体111、121を開状態とし、かつ、凹部201の外側に対応して位置して切替レバー114、124が凹部201の外側に当接している場合に制御弁体111、121を閉状態とし、ピストン22が中立位置に在る場合に、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々の切替レバー114、124は、凹部201に当接され、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114と、ピストンロッド23側Dc1に位置する凹部201の端部との軸方向Dcにおける距離は、第1基準値S1であり、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124と、ピストン22側Dc2に位置する凹部201の端部との軸方向Dcにおける距離も、第1基準値S1である。
このような構成によれば、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々の切替レバー114、124は、検出ロッド200に向かう方向へ進退自在に設けられ、ピストン22が中立位置に在る場合に、検出ロッド200の凹部201に当接している。伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々は、切替レバー114、124が検出ロッド200に向かう方向へ進出して検出ロッド200の凹部201に当接している場合に、制御弁体111、121が開状態とされている。伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々は、切替レバー114、124が検出ロッド200に向かう方向から退行して検出ロッド200の凹部201の外側に当接している場合に、制御弁体111、121が閉状態とされる。このように、切替レバー114、124が検出ロッド200の凹部201に当接している場合と、凹部201の外側に当接している場合とで、制御弁体111、121の開閉が切り替わる。検出ロッド200は、ピストンロッド23と連動して移動するため、ピストンロッド23がシリンダ21に対して相対移動するに際し、減衰力切替ダンパ1の伸長動作、圧縮動作に応じてピストンロッド23とともに検出ロッド200が移動する。これにより、各切替レバー114、124に対する凹部201の位置が変わるため、切替レバー114、124によって、制御弁体111、121を開閉することができる。
このような構成において、ピストン22が中立位置に在る場合に、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々の切替レバー114、124が、検出ロッド200に向かう方向へ進出して凹部201に当接することで、各制御弁体111、121を開状態として伸側パイロット通路134、圧側パイロット通路164を開通させ、伸長動作時、圧縮動作時における減衰力が大きい状態とすることができる。
また、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時、ピストン22が中立位置からロッド側室R1の方に移動すると、ピストンロッド23と連動して検出ロッド200がロッド側室R1の方に移動する。検出ロッド200が第1基準値S1以上、ロッド側室R1の方に移動すると、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124が、ピストン22側Dc2に位置する凹部201の端部を乗り越え、検出ロッド200に向かう方向から退行して、凹部201の外側に当接した状態となる。これにより、圧側減衰力切替手段120の制御弁体121が閉状態となり、圧側パイロット通路164が閉鎖される。したがって、ピストン22が中立位置からロッド側室R1の方に第1基準値S1以上変位することによって、伸長動作に続く圧縮動作時において、減衰力が大きい状態に切り替わる。
更に、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時、ピストン22が中立位置からピストン側室R2の方に移動すると、ピストンロッド23と連動して検出ロッド200がピストン側室R2の方に移動する。検出ロッド200が第1基準値S1以上、ピストン側室R2の方に移動すると、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114が、ピストンロッド23側Dc1に位置する凹部201の端部を乗り越え、検出ロッド200に向かう方向から退行して、凹部201の外側に当接した状態となる。これにより、伸側減衰力切替手段110の制御弁体111が閉状態となり、伸側パイロット通路134が閉鎖される。したがって、ピストン22が中立位置からピストン側室R2の方に第1基準値S1以上変位することによって、圧縮動作に続く伸長動作時において、減衰力が大きい状態に切り替わる。
このようにして、減衰力切替ダンパ1を、適切に実現することができる。
【0050】
また、減衰力切替ダンパ1は、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1よりも大きい第2基準値S2以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、圧側減衰力切替手段120が圧側ロジック弁16を閉状態とするように切り替えるのに加え、伸側減衰力切替手段110も、伸側ロジック弁13を閉状態とするように切り替え、ピストン22が中立位置から、第2基準値S2以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、伸側減衰力切替手段110が伸側ロジック弁13を閉状態とするように切り替えるのに加え、圧側減衰力切替手段120も、圧側ロジック弁16を閉状態とするように切り替える。
このような構成によれば、第1の波によって減衰力切替ダンパ1が伸長動作している場合に、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1よりも大きい第2基準値S2以上、ロッド側室R1の方へと変位すると、圧側減衰力切替手段120が圧側ロジック弁16を閉状態として、圧縮動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられるのに加え、伸側減衰力切替手段110も、伸側ロジック弁13を閉状態として、伸長動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による減衰力切替ダンパ1の伸長動作中、伸長動作量が第2基準値S2を超えた後、最大の伸長動作量に到達するまでの間、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作時の減衰力を大きい状態として、第1の波を減衰する。これにより、第1の波が想定よりも大きい振幅を有するような場合であっても、第1の波を、より効率的に減衰させることができる。
続いて、第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパ1の圧縮動作時の減衰力は、大きい状態に切り替えられている。これにより、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰を、効率的に行うことができる。
他方、第1の波によって減衰力切替ダンパ1が圧縮動作している場合に、ピストン22が中立位置から、第1基準値S1よりも大きい第2基準値S2以上、ピストン側室R2の方へと変位すると、伸側減衰力切替手段110が伸側ロジック弁13を閉状態として、伸長動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられるのに加え、圧側減衰力切替手段120も、圧側ロジック弁16を閉状態として、圧縮動作時の減衰力が大きくなるように切り替えられる。このため、第1の波による減衰力切替ダンパ1の圧縮動作中、圧縮動作量が第2基準値S2を超えた後、最大の圧縮動作量に到達するまでの間、減衰力切替ダンパ1は、圧縮動作時の減衰力を大きい状態として、第1の波を減衰する。これにより、第1の波が想定よりも大きい振幅を有するような場合であっても、第1の波を、より効率的に減衰させることができる。
続いて、第2の波により、減衰力切替ダンパ1は、伸長動作に移行する。このとき、減衰力切替ダンパ1の伸長動作時の減衰力は、大きい状態に切り替えられている。これにより、減衰力切替ダンパ1における第2の波に対する減衰を、効率的に行うことができる。
【0051】
また、伸側減衰力切替手段110には、伸側ロジック弁13が一旦閉状態となると、その後、伸側ロジック弁13の閉状態を維持する、伸側減衰力切替手段110のディテント機構が設けられ、圧側減衰力切替手段120には、圧側ロジック弁16が一旦閉状態となると、その後、圧側ロジック弁16の閉状態を維持する、圧側減衰力切替手段120のディテント機構が設けられている。
例えば、第1の波により、減衰力切替ダンパ1が圧縮動作する場合に、動作量が第1基準値S1を超え、最大の圧縮動作量に到達した後、地震動による第2の波により、伸長動作に移行する場合において、伸側減衰力切替手段110の切替レバー114は、一旦、凹部201に対して軸方向Dcの一方側Dc1で、検出ロッド200の表面202に乗り上げて、検出ロッド200に向かう方向から退行した状態となった後に、再び、凹部201に対応した位置に位置するようになる。ここで、伸側減衰力切替手段110にディテント機構が設けられていない場合においては、制御弁付勢手段115によって切替レバー114が凹部201に当接されてしまい、制御弁体111が開通ポジション112となって伸側ロジック弁13が開状態となる。したがって、小さい減衰力で、第2の波による伸長動作を減衰することとなる。
これに対し、上記のような形態においては、伸側減衰力切替手段110のディテント機構は、伸側ロジック弁13が一旦閉状態となると、その後、伸側ロジック弁13の閉状態を維持する。このため、伸側ロジック弁13が再度開状態となるのを抑制し、伸長動作時の減衰力を大きい状態に維持することができる。
同様に、第1の波により、減衰力切替ダンパ1が伸長動作する場合に、動作量が第1基準値S1を超え、最大の伸長動作量に到達した後、地震動による第2の波により、圧縮動作に移行する場合において、圧側減衰力切替手段120の切替レバー124は、一旦、凹部201に対して軸方向Dcの他方側Dc2で、検出ロッド200の表面202に乗り上げて、検出ロッド200に向かう方向から退行した状態となった後に、再び、凹部201に対応した位置に位置するようになる。ここで、圧側減衰力切替手段120にディテント機構が設けられていない場合においては、制御弁付勢手段125によって切替レバー124が凹部201に当接されてしまい、制御弁体121が開通ポジション122となって圧側ロジック弁16が開状態となる。したがって、小さい減衰力で、第2の波による圧縮動作を減衰することとなる。
これに対し、上記のような形態においては、圧側減衰力切替手段120のディテント機構は、圧側ロジック弁16が一旦閉状態となると、その後、圧側ロジック弁16の閉状態を維持する。このため、圧側ロジック弁16が再度開状態となるのを抑制し、圧縮動作時の減衰力を大きい状態に維持することができる。
【0052】
(その他の変形例)
なお、上記実施形態において、検出ロッド200に凹部201を設けて、この凹部201に切替レバー114、124が当接する際に、伸側減衰力切替手段110、圧側減衰力切替手段120が開弁するようになっているが、これに限られない。例えば、検出ロッド200に凸部を設けるとともに、図1中の制御弁体111、121の開通ポジション112、122と閉鎖ポジション113、123の上下を逆に配置した構造を採用して、凸部に切替レバー114、124が当接する際に、伸側減衰力切替手段110、圧側減衰力切替手段120が開弁するようにすることも可能である。
また、検出ロッド20は、1本の棒材でもよいし、伸側減衰力切替手段110と圧側減衰力切替手段120の各々に対応するように、分離させて、計2本設けるようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0053】
[検討例]
上記したような構成を模して、パルス性地震動に対する免震建物の応答についてシミュレーションを行ったので、その結果を以下に示す。
高さ80m、建物重量約30000t、免震周期6秒の免震建物に、免震装置として、以下に示すようなオイルダンパを備え、パルス性地震動(上町断層帯地震波の想定波)に対する応答について、シミュレーションを行い、それぞれ、免震変位の経時変化、及び免震変位と減衰量との相関について、検討を行った。
(比較例1)
免震装置として、合計最大減衰力3600tfの一般的なリリーフ型オイルダンパー(通常の免震用オイルダンパー)を用いた。
(比較例2)
免震装置として、合計最大減衰力6600tfの一般的なリリーフ型オイルダンパー(通常の免震用オイルダンパー)を用いた。
(比較例3)
変位が40cmまでは減衰力が低い低減衰モード、変位が40cmを超過すると減衰力が高い高減衰モードに切り替わる変位切替型オイルダンパを用いた。
【0054】
その比較検討結果を、図10A図10Bに示す。
図10A図10Bに示すように、一般的なリリーフ型オイルダンパを用いた比較例1、2では、比較例3と比較すると、第1の波(図10A中、時刻10秒付近の正側の波)における免震変位量に対し、第2の波(図10A中、時刻12秒付近の負側の波)における免震変位量が大きくなっている。比較例1、2のリリーフ型オイルダンパは、地震動によってオイルダンパが伸長動作するときと、圧縮動作するときとで、対称な特性を有している。このため、第1の波よりも第2の波の変位量が大きいパルス性地震動に対し、第2の波を低減するに際し、同時に、第2の波よりも変位量が小さい第1の波を低減してしまう。その結果、第1の波の振幅の最大値から、第2の波の振幅の最大値までに確保できるオイルダンパの変位量(制動距離)が減じられ、第2の波に対して十分な減衰効果を付与することができず、第2の波の振幅が増える方向に作用してしまう。
これに対し、変位切替型オイルダンパを用いた比較例3では、変位が40cmを超過後に減衰力を低減衰モードから高減衰モードに切替える設定にしている。このため、第1の波に対しては、低減衰モードによって抵抗し、比較例1、2よりも免震変位が増大しているが、第1の波の免震変位が大きいので、第2の波に対する制動距離が増大し、最大減衰力を増すことなく、最大変位量を低減している。
しかし、比較例3のような構成においては、第1の波の変位(振幅)が想定よりも小さく、低減衰モードから高減衰モードに切り替わる設定変位まで到達しなかった場合、第2の波において、変位が設定変位に到達するまでの間は、低減衰モードであり、第2の波に対する減衰効果が十分に得られず、第2の波の変位が増大してしまう可能性がある。
また、第1の波の変位が小さいパルス性地震動に対応できるよう、低減衰モードから高減衰モードに切り替わる設定変位を小さくした場合、第1の波において、変位の最大値を迎える前に、低減衰モードから高減衰モードに切り替わり、第1の波に対して大きい減衰力を発揮した結果、第1の波の変位が小さくなり、第2の波に対する制動距離増加の効果が十分に発揮できない可能性がある。
【0055】
そこで、本実施形態に係る減衰力切替ダンパと同様の構成を模した変位切替型ダンパを用い、比較例1~3と同様のシミュレーションを行った。
(実施例1)
変位量が15cmに到達した後、変位の進行方向が逆転する(速度が0になる)まで低減衰モードを維持し、その時の変位の最大点付近で高減衰モードに切り替わる変位切替型オイルダンパを用いた。ただし、本実施例1においては、第1の波において、変位量が第2基準値S2を超えた時点で、減衰力を大きくして低減衰モードから高減衰モードに移行させる構成を有してはいない。
(比較例4)
比較例3と同様の変位切替型オイルダンパを用い、低減衰モードから高減衰モードに切り替わる設定変位を25cmとした。
(比較例5)
比較例3と同様の変位切替型オイルダンパを用い、低減衰モードから高減衰モードに切り替わる設定変位を40cmとした。
その比較検討結果を、図11A図11B図12A図12Bに示す。図11A図11B図12A図12Bとでは、入力地震波が異なる。
図11A図11Bに示すように、設定変位を40cmとした比較例5において、第1の波が設定変位に到達せず、第2の波が増大している。
また、図12A図12Bに示すように、設定変位を25cmとした比較例4において、第1の波側で早期に高減衰モードに移行し、第1の波の変位が減じられ、第2の波に至るまでの制動距離が減じられた結果、第2の波が増大している。
これに対し、図11A図11B図12A図12Bにおいて、実施例1では、第1の波の最大値に至るまで低減衰モードを維持することで、第1の波に対する減衰効果を得つつ、第2の波に対して制限距離を確保することで、第1の波、第2の波の双方に対して、有効な減衰効果が得られている。
【0056】
図10A図10B図12A図12Bと同様の解析条件で、様々な入力地震波を入力したときの応答について検討を行った中で、免震変位の大きかった上町断層帯想定地震波14ケースと生駒断層帯想定地震波5ケースと熊本地震観測波1ケース(合計最大減衰力3600tfのリリーフ型オイルダンパで免震変位60cmを超過したケースを抽出)について、最大免震変位と上部構造の最大層間変形角を算出した。その結果を図13図14に示す。また、図13図14の検討事例における各比較例と実施例1との応答低減率の最大値と平均値を、図15に示す。
図13から図15に示すように、実施例1の構成により、パルス性地震動に対する免震層の応答と、上部構造の応答を効果的に低減できることがわかる。
なお、図13中で、実施例1における免震変位が他よりも大きくなるケース(生駒A7B2EW1)がある。図16A図16Bは、このケースにおける、免震変位の経時変化、及びを示す図である。この図16A図16Bに示すように、第1の波が最も大きくなる入力地震波形の場合、実施例1の構成では、第1の波の最大点まで低減衰モードを保つため、比較例4、5に比較し、免震変位が大きくなる。
このような場合、上記実施形態で示したように、第1の波において、変位量が第2基準値S2を超えた時点で、減衰力を大きくして低減衰モードから高減衰モードに移行させることで、第1の波における免震変位を有効に低減できる。
【符号の説明】
【0057】
1 減衰力切替ダンパ 121 制御弁体
4 タンク 124 切替レバー
5 主伸側減衰手段 125 制御弁付勢手段
6 主圧側減衰手段 131 伸側弁体
9 副伸側通路 132 伸側付勢部材
10 副圧側通路 133 伸側背圧室
12 副伸側減衰手段 134 伸側パイロット通路
13 伸側ロジック弁 161 圧側弁体
14 副圧側減衰手段 162 圧側付勢部材
16 圧側ロジック弁 163 圧側背圧室
20 検出ロッド 164 圧側パイロット通路
21 シリンダ 200 検出ロッド
22 ピストン 201 凹部
23 ピストンロッド R1 ロッド側室
51 主伸側通路 R2 ピストン側室
61 主圧側通路 S1 第1基準値
110 伸側減衰力切替手段 S2 第2基準値
111 制御弁体 Dc 軸方向
114 切替レバー Dc1 軸方向の一方側(ピストンロッド側)
115 制御弁付勢手段 Dc2 軸方向の他方側(ピストン側)
120 圧側減衰力切替手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B