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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177397
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231207BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01G2/02 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090024
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】谷 昌和
(72)【発明者】
【氏名】山邊 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓哉
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA05
5H770AA21
5H770AA24
5H770BA02
5H770CA06
5H770JA11W
5H770KA01W
5H770LA04W
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA24
5H770PA26
5H770PA42
5H770PA43
5H770PA45
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA12
5H770QA22
5H770QA28
5H770QA33
5H770QA36
(57)【要約】
【課題】コンデンサ素子とパワーモジュールとの間の配線インダクタンスの増大を抑制しつつ、バスバーの放熱性を向上させた電力変換装置を得ること。
【解決手段】複数のパワー端子を有したパワーモジュール部と、コンデンサ素子、コンデンサケース、及びコンデンサバスバーを有したコンデンサモジュールとを備え、コンデンサバスバーは、外部に露出した平板部、複数のパワー端子接続部、電源接続部、及び複数の素子接続部を有し、両端に配置された二つの素子接続部の間の第一方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲、及び両端に配置された二つのパワー端子接続部の間の第一方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲は、平板部が配置された第一方向の位置範囲の内側で、素子接続部の位置範囲の長さとパワー端子接続部の位置範囲の長さとは同等であり、素子接続部の位置範囲の中心位置とパワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは同等位置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に並べられた複数の半導体素子、前記複数の半導体素子を複数に分けて又は1つにまとめて収容したパワー本体部、及び前記複数の半導体素子のそれぞれに接続され、前記パワー本体部から前記第一方向に直交する第二方向の一方側に突出し、前記第一方向に並べられた複数のパワー端子を有したパワーモジュール部と、
コンデンサ素子、コンデンサ用の封止樹脂を介して前記コンデンサ素子を収容したコンデンサケース、及び前記コンデンサ素子に接続されたコンデンサバスバーを有したコンデンサモジュールと、を備え、
前記コンデンサバスバーは、
前記第二方向の幅よりも前記第一方向の幅が長い板状に形成され、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出している平板部、
前記平板部から前記第二方向の他方側に延出し、前記第一方向に並べられ、前記複数のパワー端子のそれぞれに接続された複数のパワー端子接続部、
前記平板部に接続され、直流電源に接続される電源接続部、及び
前記平板部に接続され、前記平板部よりも前記第二方向の一方側に配置され、前記第一方向に並べられ、前記コンデンサ素子に接続された複数の素子接続部、を有し、
前記複数の素子接続部における前記第一方向の両端に配置された二つの前記素子接続部の間の前記第一方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲、及び前記複数のパワー端子接続部における前記第一方向の両端に配置された二つの前記パワー端子接続部の間の前記第一方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲は、前記平板部が配置された前記第一方向の位置範囲の内側であり、
前記素子接続部の位置範囲の長さと、前記パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であり、
前記素子接続部の位置範囲の中心位置と、前記パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置である電力変換装置。
【請求項2】
前記第二方向に見て、
前記素子接続部の位置範囲の80%以上は、前記パワー端子接続部の位置範囲と重複しており、
前記パワー端子接続部の位置範囲の80%以上は、前記素子接続部の位置範囲と重複している請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記コンデンサバスバーとして、前記コンデンサ素子の第1電極に接続された第1コンデンサバスバーと、前記コンデンサ素子の第2電極に接続された第2コンデンサバスバーとが設けられ、
前記第1コンデンサバスバーの前記平板部である第1平板部と、前記第2コンデンサバスバーの前記平板部である第2平板部とは、対向して配置されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1平板部と前記第2平板部との間に、絶縁性を有したスペーサを備えた請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記平板部における前記第一方向の一方側又は他方側の前記第二方向の一方側の部分から前記第二方向の一方側に延出し、
前記直流経路部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、前記コンデンサ用の封止樹脂に重複して配置されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、
前記第1電極の前記第1コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複した領域は、前記第1電極の前記第1コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複しない領域よりも小さく、
前記第2電極の前記第2コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複した領域は、前記第2電極の前記第2コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複しない領域よりも小さい請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記コンデンサバスバーとグラウンドとの間に接続された接地側のコンデンサ素子を備え、
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、少なくとも一部が前記接地側のコンデンサ素子に重複して配置されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部とグラウンドとの間に接続され、前記コンデンサ用の封止樹脂を介して前記コンデンサケースに収容された接地側のコンデンサ素子を備え、
前記コンデンサケースは、有底筒状に形成され、
前記接地側のコンデンサ素子は、前記コンデンサケースの底壁の側とは反対側の開口した側に配置されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記直流経路部から前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出した支持部を有している請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記コンデンサ用の封止樹脂を介して、前記コンデンサケースに収容された接地側のコンデンサ素子を備え、
前記支持部は、前記接地側のコンデンサ素子の一方の電極に接続され、前記接地側のコンデンサ素子の他方の電極は、グラウンドに接続されている請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記直流経路部は、複数の前記支持部を有している請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記支持部は、前記直流経路部における前記直流接続部の側よりも前記平板部の側に配置されている請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記直流経路部は、板状に形成され、
前記直流接続部及び前記支持部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、前記直流経路部の同じ側面に設けられている請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記直流経路部から前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出した支持部を有し、
前記スペーサは、前記第1平板部と前記第2平板部とに挟まれた対向部と、前記対向部から前記直流経路部の方向に延出すると共に、前記支持部に沿って前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出したスペーサ支持部と、を有している請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記スペーサ支持部は、前記支持部の周囲を取り囲む筒状に形成された筒状部を有し、
前記筒状部が、前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出している請求項14に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記支持部は、板状に形成され、
前記支持部は、前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出した部分において、側面から内側に切り欠かれた部分及び側面から前記コンデンサ用の封止樹脂の側に突出した部分の一方又は双方を有している請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記コンデンサバスバーとグラウンドとの間に接続された接地側のコンデンサ素子と、接地側コンデンサ用の封止樹脂を介して前記接地側のコンデンサ素子を収容した接地側のコンデンサケースと、を有した接地側のコンデンサモジュールを備え、
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、少なくとも一部が前記接地側のコンデンサモジュールに重複して配置されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、板状に形成され、
前記直流経路部の厚みは、前記平板部の厚みよりも厚い請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項19】
前記パワーモジュール部、前記コンデンサモジュール、及び前記接地側のコンデンサモジュールを収容した筐体を備え
前記コンデンサケース及び前記接地側のコンデンサケースは、有底筒状に形成され、
前記筐体は、前記パワーモジュール部が熱的に接続された第一面と、前記コンデンサモジュール及び前記接地側のコンデンサモジュールが熱的に接続された第二面とを有し、前記第一面の裏側に、前記第一面を冷却する冷媒流路が設けられ、
前記第二面は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向の一方側を向き、前記第一面の前記第二方向の一方側であって、前記第一面よりも前記第三方向の他方側に配置され、前記筐体は、前記第一面と前記第二面との間に段差部を有し、
前記段差部の前記第二方向の他方側に前記冷媒流路が配置され、
前記コンデンサモジュール及び前記接地側のコンデンサモジュールの一方又は双方は、前記コンデンサケース及び前記接地側のコンデンサケースの底壁の側とは反対側の開口した側が、前記段差部に対向している請求項17に記載の電力変換装置。
【請求項20】
前記段差部と、前記コンデンサ用の封止樹脂及び前記コンデンサバスバーの一方又は双方が熱的に接続されている請求項19に記載の電力変換装置。
【請求項21】
前記素子接続部は、前記コンデンサ素子の側の端部に、前記コンデンサ素子に向かって突出した突出部を有し、
前記コンデンサ素子と前記突出部とが接続されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項22】
前記パワーモジュール部及び前記コンデンサモジュールを収容した筐体と、
前記パワーモジュール部を制御する制御基板と、を備え、
前記筐体は、前記パワーモジュール部が熱的に接続された第一面と、前記コンデンサモジュールが熱的に接続された第二面とを有し、
前記コンデンサケースは、第二方向の他方側に開口する有底筒状に形成され、前記第二面の側の周壁の部分が前記第二面に接すると共に、前記第二面とは反対側の前記周壁の部分に外周側に突出したブッシュを有し、
前記制御基板は、前記ブッシュにねじにより固定されている請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車又はハイブリッド自動車のように、駆動源にモータが用いられている電動車両には、複数の電力変換装置が搭載されている。電力変換装置としては、商用の交流電源から直流電源に変換して高圧バッテリに充電する充電器、高圧バッテリの直流電源から補助機器用のバッテリの電圧(例えば12V)に変換するDC/DCコンバータ、バッテリからの直流電力をモータへの交流電力に変換するインバータ等が挙げられる。
【0003】
電力変換装置には、電力変換を行う半導体素子が実装されたパワーモジュール、パワーモジュールを冷却する冷却器、及び外部の直流電源から供給される直流電圧を平滑化するコンデンサ素子を有したコンデンサを備えたものが開示されている(例えば特許文献1参照)。コンデンサ素子にはリップル電流が流れるため、コンデンサ素子は電力を消費して発熱する。また、コンデンサ素子はパワーモジュールとバスバーを介して接続されているため、パワーモジュールが高温になるとバスバーを介してパワーモジュールからコンデンサ素子へ熱が伝わり、伝わった熱によりコンデンサ素子も高温になる。特に高出力密度の電力変換装置では、パワーモジュールとコンデンサ素子とを接続するバスバーへの伝熱、及びバスバーのジュール熱による発熱が大きくなる。バスバーの温度上昇が顕著になると、熱がコンデンサ素子へ伝わりコンデンサ素子の温度が上昇する。コンデンサ素子の温度上昇は、コンデンサ素子の寿命を低下させるため、コンデンサ素子の温度上昇への対策が課題となっている。
【0004】
特許文献1に開示された構造では、コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子を封止する封止樹脂と、コンデンサ素子に接続される一対のバスバーとを有する。各バスバーは、封止樹脂から露出する露出部を有し、各露出部は、板状部と、板状部から延設されるとともに直流電源に電気的に接続される電源端子と、板状部から延設されるとともにパワーモジュールなどの他の電子部品に電気的に接続される部品接続端子とを有する。各板状部には、部品接続端子よりも電源端子側の領域に、周囲よりも厚みが小さい特定部が形成されている。特定部は、凹部、各板状部の厚み方向(Z)に貫通する貫通穴、又は板状部の端縁に連通するスリット状に形成されたスリット部である。露出部とコンデンサ素子との並び方向を横方向(X)とし、横方向から見たときの封止樹脂の長手方向を縦方向(Y)としたとき、電源端子は、露出部の縦方向における一方の端部に形成されており、部品接続端子は、露出部の、縦方向における、電源端子が形成された側とは反対側の端部に形成されている。特定部は、横方向において、電源端子と、バスバー及びコンデンサ素子の接続部と、の間に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7031452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1においては、バスバーは、コンデンサ素子と、直流電源と、パワーモジュールとを接続し、直流電源とパワーモジュールとの間の直流経路を封止樹脂の外部に露出させ、バスバーの露出部には、周囲よりも厚みが小さい特定部が形成されている。それゆえ、露出部は、特定部周辺において電気抵抗が高くなる。また、特定部は、露出部における部品接続端子よりも電源端子側の領域で、電源端子と、バスバー及びコンデンサ素子の接続部との間に形成されている。それゆえ、板状部における部品接続端子よりも電源端子側の領域の電気抵抗が高くなる。
【0007】
このように構成することで、電源端子に流入した直流電流の直流成分を、部品接続端子側に誘導しやすい。それゆえ、電源端子から板状部に流入した直流電流の直流成分が、封止樹脂内のコンデンサ素子に接続されたバスバー側へ向かって流れることを防止しやすい。また、電源端子から部品接続端子への直流経路部に大電流が流れたとき、その電流に起因する熱を、効率的に放熱しやすい。しかしながら、バスバーの露出部は、直流電源とパワーモジュールとの間の電流経路であり、直流電源とコンデンサ素子との間の電流経路であると共に、コンデンサ素子とパワーモジュールとの間の電流経路でもあるため、特定部における、コンデンサ素子とパワーモジュールとの間の電流経路の電気抵抗が高くなるので、コンデンサ素子とパワーモジュールとの間の配線インダクタンスが増大するという課題があった。また、コンデンサ素子とパワーモジュールとの間の配線インダクタンスが増大すると、バスバーの温度が上昇する。バスバーの温度上昇が顕著になると、熱がコンデンサ素子へ伝わりコンデンサ素子の温度が上昇することになる。
【0008】
そこで、本願は、コンデンサ素子とパワーモジュール部との間の配線インダクタンスの増大を抑制しつつ、コンデンサ素子とパワーモジュール部とを接続するバスバーの放熱性を向上させた電力変換装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される電力変換装置は、第一方向に並べられた複数の半導体素子、複数の半導体素子を複数に分けて又は1つにまとめて収容したパワー本体部、及び複数の半導体素子のそれぞれに接続され、パワー本体部から第一方向に直交する第二方向の一方側に突出し、第一方向に並べられた複数のパワー端子を有したパワーモジュール部と、コンデンサ素子、コンデンサ用の封止樹脂を介してコンデンサ素子を収容したコンデンサケース、及びコンデンサ素子に接続されたコンデンサバスバーを有したコンデンサモジュールと、を備え、コンデンサバスバーは、第二方向の幅よりも第一方向の幅が長い板状に形成され、コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出している平板部、平板部から第二方向の他方側に延出し、第一方向に並べられ、複数のパワー端子のそれぞれに接続された複数のパワー端子接続部、平板部に接続され、直流電源に接続される電源接続部、及び平板部に接続され、平板部よりも第二方向の一方側に配置され、第一方向に並べられ、コンデンサ素子に接続された複数の素子接続部を有し、複数の素子接続部における第一方向の両端に配置された二つの素子接続部の間の第一方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲、及び複数のパワー端子接続部における第一方向の両端に配置された二つのパワー端子接続部の間の第一方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲は、平板部が配置された第一方向の位置範囲の内側であり、素子接続部の位置範囲の長さと、パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であり、素子接続部の位置範囲の中心位置と、パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置である。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される電力変換装置によれば、パワーモジュール部とコンデンサモジュールとを備え、コンデンサバスバーは、第二方向の幅よりも第一方向の幅が長い板状に形成され、コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出している平板部、平板部から第二方向の他方側に延出し、第一方向に並べられ、複数のパワー端子のそれぞれに接続された複数のパワー端子接続部、平板部に接続され、直流電源に接続される電源接続部、及び平板部に接続され、平板部よりも第二方向の一方側に配置され、第一方向に並べられ、コンデンサ素子に接続された複数の素子接続部を有し、複数の素子接続部における第一方向の両端に配置された二つの素子接続部の間の第一方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲、及び複数のパワー端子接続部における第一方向の両端に配置された二つのパワー端子接続部の間の第一方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲は、平板部が配置された第一方向の位置範囲の内側であり、素子接続部の位置範囲の長さと、パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であり、素子接続部の位置範囲の中心位置と、パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置であるため、コンデンサバスバーは、複数の素子接続部と複数のパワー端子接続部との間の第二方向の電流経路において、第一方向に十分な幅を有するため、この電流経路の電気抵抗の増加が抑制されるので、コンデンサ素子とパワーモジュール部との間の配線インダクタンスの増大を抑制することができる。また、コンデンサ素子とパワーモジュール部との間の電流経路であり、直流電源とパワーモジュール部との間の電流経路である平板部が、コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出しているため、コンデンサバスバーの放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の概略を示す平面図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の正極バスバーの平面図である。
図3】実施の形態1に係る電力変換装置の負極バスバーの平面図である。
図4図1のA-A断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図5図1のB-B断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図6図1のC-C断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図7図1のD-D断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図8】実施の形態1に係る電力変換装置の要部を示す断面図である。
図9】実施の形態1に係る電力変換装置の回路の概略を示す図である。
図10】実施の形態1に係る別の電力変換装置の断面図である。
図11】実施の形態2に係る電力変換装置の概略を示す平面図である。
図12図11のF-F断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図13図11のG-G断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図14図11のH-H断面位置で切断した電力変換装置の断面図である。
図15】実施の形態2に係る別の電力変換装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施の形態による電力変換装置を図に基づいて説明する。なお、各図において同一、又は相当部材、部位については同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る電力変換装置1の概略を示す平面図、図2は電力変換装置1の正極バスバー42aの平面図、図3は電力変換装置1の負極バスバー42bの平面図、図4図1のA-A断面位置で切断した電力変換装置1の断面図、図5図1のB-B断面位置で切断した電力変換装置1の断面図、図6図1のC-C断面位置で切断した電力変換装置1の断面図で、コンデンサモジュール4の部分を示した図、図7図1のD-D断面位置で切断した電力変換装置1の断面図で、コンデンサモジュール4の部分を示した図、図8は電力変換装置1の要部を示す断面図で、図1のE-E断面位置で切断した支持部47bとその周囲の部分を示した図、図9は電力変換装置1の回路の概略を示す図である。電力変換装置1は、入力電流を直流から交流、交流から直流、又は入力電圧を異なる電圧に変換する装置である。
【0014】
電力変換装置1は、図1に示すように、パワーモジュール部3、コンデンサモジュール4、及び筐体2を備える。筐体2は、パワーモジュール部3及びコンデンサモジュール4を収容する。本実施の形態における電力変換装置1は、図9に示すように、直流電源5に接続されたコンデンサモジュール4の電源接続部422から入力され、コンデンサモジュール4で平滑化した直流電力を、パワーモジュール部3で電力変換して出力端子33から出力する装置である。本実施の形態は3相交流を出力する電力変換装置1を示しており、図1に示すように、パワーモジュール部3は各相に対応した3つのパワー本体部32a、32b、32cから構成される。図9では1つのパワー本体部32aのみを示しているが、他の2つのパワー本体部32b、32cについても同様の構成である。電力変換装置1の外部に設けられ、電源接続部422に接続される直流電源5については図1に示していない。なお、電力変換装置1の構成はこれに限るものではなく、入力電流を交流から直流に変換する装置であっても構わない。
【0015】
<パワーモジュール部3>
パワーモジュール部3は、図1に示すように、第一方向に並べられた複数の半導体素子34、複数の半導体素子34を複数に分けて又は1つにまとめて収容したパワー本体部、及び複数の半導体素子34のそれぞれに接続され、パワー本体部から第一方向に直交する第二方向の一方側に突出し、第一方向に並べられた複数のパワー端子31を有する。図において、第一方向をY方向とし、Y1の方向を第一方向の一方側、Y2の方向を第一方向の他方側とする。第二方向をX方向とし、X1の方向を第二方向の一方側、X2の方向を第二方向の他方側とする。第一方向及び第二方向に直交する第三方向をZ方向とし、Z1の方向を第三方向の一方側、Z2の方向を第三方向の他方側とする。本実施の形態では、複数の半導体素子34を複数に分けて収容したパワー本体部32a、32b、32cを設けたが、複数の半導体素子34を1つのパワー本体部にまとめて収容し、1つのパワー本体部からパワーモジュール部3を構成しても構わない。
【0016】
また、図1では破線により半導体素子34を示しているが、1つのパワー本体部が収容する半導体素子34の個数は一つに限るものではなく、パワー本体部は単数又は複数の半導体素子34を収容する。パワーモジュール部3は、さらに出力端子33、及び複数の制御端子(図示せず)を有する。出力端子33、及び制御端子も、パワー本体部から外側に突出して設けられる。本実施の形態では、複数の出力端子33は、パワー本体部からX方向の他方側に突出し、Y方向に並べて設けられる。図1に示されたパワー本体部32a、32b、32cの部分は、例えば半導体素子34を取り囲む封止樹脂などの保護部材、又はケースである。ケースの場合、ケースの内部に樹脂を充填しても構わない。パワー端子31、出力端子33、及び制御端子は、例えば電気抵抗率が小さく導電性に優れた銅から作製される。パワー端子31は、コンデンサモジュール4のコンデンサバスバー42と電気的に接続される。コンデンサバスバー42は、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3とを接続するバスバーである。
【0017】
<筐体2>
筐体2は、アルミニウムなどの金属から作製される。筐体2は、図4に示すように、例えば、有底筒状に形成される。筐体2は、パワーモジュール部3が熱的に接続された第一面2aと、コンデンサモジュール4が熱的に接続された第二面2bとを有する。第一面2aの裏側に、第一面2aを冷却する冷媒流路21が設けられる。筐体2の冷媒流路21を設けた部分は流路形成部23である。冷媒流路21は、冷媒が流れる流路である。冷媒には、例えば、水又はエチレングリコール液が使用される。第二面2bは、図4に示すようにZ方向の一方側を向き、第一面2aのX方向の一方側であって、第一面2aよりもZ方向の他方側に配置される。筐体2は、第一面2aと第二面2bとの間に段差部2cを有する。段差部2cのX方向の他方側に冷媒流路21が配置されている。
【0018】
筐体2における第一面2aを有した部分は、板状に形成されたベース部22である。ベース部22は、例えば、筐体2の本体部分と同様にアルミニウムなどの金属から作製されるがこれに限るものではなく、熱伝導性に優れた樹脂部材から作製しても構わない。ベース部22における第一面2aの裏側の裏面は、冷媒流路21の内面の一部を構成する。ベース部22の裏面であって、Z方向の一方側に見てパワー本体部32aと重複する領域に単数または複数の冷却フィン22aが設けられる。冷媒流路21は、上流側流路21a、下流側流路21b、及び中間流路21cを有する。中間流路21cは、冷却フィン22aを通って、X方向の一方側からX方向の他方側に冷媒が流れる流路である。上流側流路21aは、中間流路21cのX方向の一方側に接続され、Y方向に延びる流路である。下流側流路21bは、中間流路21cのX方向の他方側に接続され、Y方向に延びる流路である。
【0019】
冷媒は、上流側流路21a、中間流路21c、下流側流路21bの順に流れる。流路形成部23は、図1に示すように、冷媒出入口23aを有する。冷媒出入口23aは、冷媒が冷媒流路21に流入または冷媒が冷媒流路21から流出する流出入口である。冷媒出入口23aは、筐体2の外壁面から突出して設けられる。上流側流路21aは、Z方向の一方側に見て、パワー本体部32a、32b、32cとコンデンサケース45との間の領域と重複するように配置されている。このように構成することで、上流側流路21aにはパワーモジュール部3を冷却する前の低温な冷媒が流れているため、上流側流路21aにより、第一面2aに隣接して配置された段差部2c、及び、第二面2bも効率よく冷却される。第二面2bが冷却されるため、第二面2bに熱的に接続されたコンデンサモジュール4を冷却することができる。
【0020】
<コンデンサモジュール4>
コンデンサモジュール4は、コンデンサ素子41、コンデンサ用の封止樹脂44を介してコンデンサ素子41を収容したコンデンサケース45、及びコンデンサ素子41に接続されたコンデンサバスバー42を有する。コンデンサ素子41は、両端にコンデンサ電極43を有する。コンデンサ電極43のそれぞれは、正極または負極である。コンデンサバスバー42は、X方向の一方側でコンデンサ素子41と電気的に接続され、X方向の他方側でパワー端子31と電気的に接続される。コンデンサバスバー42は、例えば、電気抵抗率が小さく導電性に優れた銅から作製される。コンデンサバスバー42とパワー端子31とは、双方が接したパワー端子接続部423の端部において溶接により接続される。コンデンサバスバー42とパワー端子31との接続は溶接に限るものではなく、はんだによる接続、嵌合、またはねじ締結による接続であっても構わない。コンデンサバスバー42の詳細は後述する。
【0021】
コンデンサケース45は、本実施の形態では、有底筒状に形成される。コンデンサケース45は、例えば成形樹脂、又はアルミニウムダイカストにて作製される。コンデンサ用の封止樹脂44は、エポキシ樹脂等からなる絶縁性を有した部材である。コンデンサケース45の材料及び形状はこれに限るものではない。樹脂製のコンデンサケース45が、コンデンサ素子41を直接収容しても構わない。コンデンサケース45の底壁45bは、例えば矩形状に形成される。コンデンサケース45は、コンデンサケース45の底壁45bの側とは反対側の開口した部分である開口部45aを有する。コンデンサバスバー42は、開口部45aにおいてコンデンサ用の封止樹脂44から突出する。本実施の形態では、開口部45aがZ方向の一方側に向くようにコンデンサケース45は配置され、コンデンサバスバー42はZ方向の一方側にコンデンサ用の封止樹脂44から突出する。コンデンサケース45の配置はこれに限るものではなく、コンデンサバスバー42がコンデンサ用の封止樹脂44からパワーモジュール部3の側に突出するように、開口部45aがX方向の他方側を向くようにコンデンサケース45を配置しても構わない。
【0022】
コンデンサケース45の底壁45bの外面と筐体2の第二面2bとは熱的に接続される。熱的な接続は、底壁45bと第二面2bとが直接接触して接続される場合に限るものではなく、グリス等の伝熱部材を介して底壁45bと第二面2bとを熱的に接続しても構わない。コンデンサケース45を筐体2に熱的に接続することで、コンデンサケース45の底壁45bの側からコンデンサ素子41を放熱させることができるため、コンデンサ素子41の放熱性能を向上させることができる。同様に、開口部45aがX方向の他方側を向くようにコンデンサケース45を配置した場合には、筐体2の第二面2bと接する、コンデンサケース45の開口部45a及び底壁45bと隣接する側壁部からコンデンサ素子41を放熱させることができる。
【0023】
コンデンサ素子41は、直流電力を平滑化する。コンデンサ素子41は、積層構造を有した巻回タイプのフィルムコンデンサである。コンデンサ素子41は、絶縁性を有した部材である誘電体を介して積層された金属フィルムを有する。コンデンサ素子41は、金属フィルムが積層された方向であるX方向に交差するZ方向の一方側及びZ方向の他方側の端面にコンデンサ電極43を有する。本実施の形態では、一方のコンデンサ電極43が底壁45bの側に配置され、他方のコンデンサ電極43が開口部45aの側に配置される。コンデンサ電極43の配置はこれに限るものではない。コンデンサ電極43をコンデンサ素子41の底壁45bの側と開口部45aの側に挟まれたコンデンサ素子41の側部に設けても構わない。金属フィルムの熱伝導率は、誘電体よりも高い。そのため、コンデンサ素子41の熱伝導率は、金属フィルムの積層された方向であるX方向よりも、金属フィルムの積層された方向に交差する方向で高くなる。本実施の形態のように、Z方向の他方側にコンデンサ電極43と底壁45bとを配置した場合、Z方向の他方側にコンデンサ素子41の熱伝導率が高くなるので、コンデンサケース45の底壁45bが配置された放熱経路の方向にコンデンサ素子41の熱伝導率の高い方向を合わせることで、より効率的に、コンデンサ素子41の熱をコンデンサケース45の底壁45bの側に放熱することができる。
【0024】
本実施の形態では、コンデンサケース45は3つのコンデンサ素子41を収容する。図1において、コンデンサ素子41の外形を破線で示す。コンデンサ素子41の個数は3つに限るものではない。1つのコンデンサ素子41に複数のパワー本体部が接続されてもよく、複数のコンデンサ素子41と1つのパワー本体部とが接続されても構わない。なお、1つのコンデンサ素子41を設けた場合であっても後述する素子接続部425は複数設けられる。電流経路の偏りを抑制するためである。
【0025】
本実施の形態では、Y方向に並べられた複数のパワー本体部32a、32b、32cを有し、コンデンサモジュール4は、X方向に見て複数のパワー本体部32a、32b、32cと重複するように、複数のパワー本体部32a、32b、32cのX方向の一方側に配置される。コンデンサバスバー42は、Z方向の一方側に見て、コンデンサ素子41から複数のパワー本体部32a、32b、32cに向かってX方向の他方側に延びる平板部421を有する。このように構成することで、コンデンサ素子41はパワーモジュール部3と近接して配置されるため、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間を低い配線インダクタンスで接続することができる。
【0026】
<コンデンサバスバー42>
本願の要部であるコンデンサバスバー42について、図2及び図3により説明する。コンデンサバスバー42は、平板部421、複数のパワー端子接続部423、電源接続部422、及び複数の素子接続部425を有する。平板部421は、X方向の幅よりもY方向の幅が長い板状に形成され、コンデンサ用の封止樹脂44から外部に露出している。複数のパワー端子接続部423は、平板部421からX方向の他方側に延出し、Y方向に並べられ、複数のパワー端子31のそれぞれに接続される。電源接続部422は、平板部421に接続され、直流電源5に接続される。複数の素子接続部425は、平板部421に接続され、平板部421よりもX方向の一方側に配置され、Y方向に並べられ、コンデンサ素子41に接続される。コンデンサ素子41は、コンデンサ用の封止樹脂44を介してコンデンサケース45に収容されているため、複数の素子接続部425は、コンデンサ用の封止樹脂44の内部において、コンデンサ電極43に対向するように延出し、コンデンサ素子41に接続される。コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の電流経路であり、直流電源5とパワーモジュール部3との間の電流経路である平板部421が、コンデンサ用の封止樹脂44から外部に露出しているため、コンデンサバスバー42の放熱性を向上させることができる。
【0027】
本実施の形態では、電源接続部422は、コンデンサ用の封止樹脂44から外部に露出し、平板部421に接続された部分である直流経路部424と、直流経路部424に接続され、直流電源5に接続される部分である直流接続部426とを有する。直流経路部424は、平板部421と直流接続部426との間の直流電流が通電する部分である。直流経路部424は、コンデンサ用の封止樹脂44の外部に露出しているため、コンデンサバスバー42を効率的に放熱させることができる。電源接続部422は、直流経路部424と直流接続部426とを有した構成に限るものではなく、電源接続部422は、直流接続部426のみであっても構わないが、直流経路部424を設けることで、電源接続部422の配置の自由度を向上させることができる。
【0028】
コンデンサバスバー42として、第1コンデンサバスバー及び第2コンデンサバスバーが設けられる。第1コンデンサバスバー及び第2コンデンサバスバーの一方は正極バスバー42aであり、第1コンデンサバスバー及び第2コンデンサバスバーの他方は負極バスバー42bである。正極バスバー42aは正極のパワー端子31に接続され、負極バスバー42bは負極のパワー端子31に接続される。
【0029】
コンデンサ素子41は、第1コンデンサバスバーに接続されたコンデンサ電極43である第1電極、及び第2コンデンサバスバーに接続されたコンデンサ電極43である第2電極を有する。第1電極及び第2電極の一方は、コンデンサ素子41におけるコンデンサケース45の底壁45bの側に配置され、第1電極及び第2電極の他方は、コンデンサ素子41におけるコンデンサケース45の開口部45aの側に配置される。
【0030】
本実施の形態では、図4及び図5に示すように、第1電極及び第2電極の一方を底壁側電極43b、第1電極及び第2電極の他方を開口側電極43aとし、コンデンサ用の封止樹脂44内において、底壁側電極43bに負極バスバー42bが接続され、開口側電極43aに正極バスバー42aが接続されている。本実施の形態では、開口側電極43aを正極とし、底壁側電極43bを負極としたが、開口側電極43a、底壁側電極43bのどちらが正極であっても構わない。正極に接続されたコンデンサバスバー42が正極バスバー42aになり、負極に接続されたコンデンサバスバー42が負極バスバー42bになる。
【0031】
図2及び図3に示すように、複数の素子接続部425における第一方向の両端に配置された二つの素子接続部の間のY方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲(図ではYCと示す)、及び複数のパワー端子接続部423におけるY方向の両端に配置された二つのパワー端子接続部の間の第一方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲(図ではYPと示す)は、平板部421が配置されたY方向の位置範囲(図ではYFと示す)の内側である。また、素子接続部の位置範囲の長さと、パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であり、素子接続部の位置範囲の中心位置と、パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置である。
【0032】
素子接続部の位置範囲の長さと、パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であるとは、素子接続部の位置範囲の長さとパワー端子接続部の位置範囲の長さの差が、素子接続部の位置範囲の長さの25%以内にあるものとする。図1に示したように、複数のコンデンサ素子41を有し、かつコンデンサ電極43が短手方向と長手方向を有して形成されている場合、素子接続部の位置範囲の長さとパワー端子接続部の位置範囲の長さの差が、コンデンサ電極43の短手方向の長さ以下の差としても構わない。
【0033】
素子接続部の位置範囲の中心位置と、パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置であるとは、素子接続部の位置範囲の中心位置とパワー端子接続部の位置範囲の中心位置との差が、素子接続部の位置範囲の長さの20%以内にあるものとする。図1に示したように、複数のコンデンサ素子41を有し、かつコンデンサ電極43が短手方向と長手方向を有して形成されている場合、素子接続部の位置範囲の中心位置とパワー端子接続部の位置範囲の中心位置との差が、コンデンサ電極43の短手方向の長さの半分以下の差としても構わない。
【0034】
このように構成することで、コンデンサバスバー42は、各コンデンサ電極43に接続された複数の素子接続部425と各パワー端子31に接続された複数のパワー端子接続部423との間のX方向の電流経路において、Y方向に十分な幅を有するため、この電流経路の電気抵抗の増加が抑制されるので、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の配線インダクタンスの増大を抑制することができる。配線インダクタンスの増大が抑制されるので、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3とを接続するコンデンサバスバー42における余分な損失の発生を抑制することができる。コンデンサバスバー42の損失の発生が抑制されるので、コンデンサバスバー42のジュール熱による発熱が抑制され、コンデンサ素子41を温度上昇から保護することができる。
【0035】
本実施の形態では、X方向に見て、素子接続部の位置範囲の80%以上は、パワー端子接続部の位置範囲と重複しており、パワー端子接続部の位置範囲の80%以上は、素子接続部の位置範囲と重複している。素子接続部の位置範囲とパワー端子接続部の位置範囲をこのように定めることで、それぞれの重複の度合いのみにより、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の配線インダクタンスの増大を容易に抑制することができる。
【0036】
<平板部421>
本実施の形態1における平板部421の構成の詳細について説明する。本実施の形態では、第1コンデンサバスバーの平板部である第1平板部と、第2コンデンサバスバーの平板部である第2平板部は、対向して配置されている。図4及び図5に示すように、正極バスバー42aに第1平板部421aが設けられ、負極バスバー42bに第2平板部421bが設けられる。このように第1平板部421aと第2平板部421bとを対向して配置した場合、電力変換装置1におけるコンデンサバスバー42の占める投影面積を減らすことができるので、電力変換装置1を小型化することができる。また、正極バスバー42aと負極バスバー42bが対向した平板部421の領域において、配線インダクタンスを相互に打消し合うため、コンデンサバスバー42における配線インダクタンスを大幅に低減させることができる。なお、正極バスバー42aと負極バスバー42bとを対向させる部分は平板部421に限るものではなく、さらに直流経路部424の部分などの他の部分を対向させても構わない。
【0037】
また、本実施の形態では、第1平板部421aと第2平板部421bとの間に、絶縁性を有したスペーサ420を備えている。樹脂部材からなるスペーサ420は、例えば、樹脂成形により作製される。絶縁性を有したスペーサ420を備えた場合、第1平板部421aと第2平板部421bとの間の距離を狭くすることができる。第1平板部421aと第2平板部421bとの間の距離を狭くすることで、コンデンサバスバー42における配線インダクタンスをさらに低減させることができる。第1平板部421aと第2平板部421bとの間の距離が1.5mm以下であれば、配線インダクタンスの低減に好適である。なお、スペーサ420を設ける部分は平板部421に限るものではなく、直流経路部424の部分などの他の部分の対向した箇所にさらに設けても構わない。
【0038】
<直流経路部424>
直流経路部424は、平板部421におけるY方向の一方側又は他方側のX方向の一方側の部分から、X方向の一方側に延出する。本実施の形態では、図2及び図3に示すように、直流経路部424は、平板部421のY方向の一方側の、素子接続部425とは離間したX方向の一方側の部分から、X方向の一方側に延出する。正極バスバー42aの方が、負極バスバー42bよりもX方向の一方側に長く延出する。正極バスバー42a及び負極バスバー42bのそれぞれの直流接続部426は、正極バスバー42a及び負極バスバー42bのそれぞれの直流経路部424におけるX方向の一方側の領域から、Y方向に延出して配置される。直流接続部426の配置はこれに限るものではなく、例えば、直流経路部424からX方向の一方側に延出して配置しても構わない。
【0039】
直流経路部424は、図1に示すように、Z方向に見て、コンデンサ用の封止樹脂44に重複して配置されている。このように構成することで、直流経路部424とコンデンサ用の封止樹脂44とが重複しているため、外部に露出した直流経路部424の部分がコンデンサケース45から外側に突出しないので、電力変換装置1を小型化することができる。また、直流経路部424と素子接続部425とは離間して配置されるため、直流経路部424の発熱が素子接続部425を経由してコンデンサ素子41に伝わることを抑制することができる。
【0040】
<素子接続部425>
本実施の形態では、素子接続部425は、コンデンサ素子41に隣接したコンデンサ用の封止樹脂44の内部に設けられる。素子接続部425は、複数の折り曲げ部を有したY方向に幅の広い連結部分により、平板部421のX方向の一方側と連結されている。このような構成に限るものではなく、連結部分を有さずに、コンデンサ用の封止樹脂44の内部に設けられた素子接続部425の部分を、平板部421のX方向の一方側まで延出させても構わない。本実施の形態のように、素子接続部425がY方向に幅の広い連結部分により平板部421と連結されることで、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の配線インダクタンスの増大を抑制することができる。
【0041】
Z方向に見て、第1電極の第1コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複した領域は、第1電極の第1コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複しない領域よりも小さく、第2電極の第2コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複した領域は、第2電極の第2コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複しない領域よりも小さい。本実施の形態では、開口側電極43aの正極バスバー42aにおける素子接続部425と重複した領域は、開口側電極43aの正極バスバー42aにおける素子接続部425と重複しない領域よりも小さく、底壁側電極43bの負極バスバー42bにおける素子接続部425と重複した領域は、底壁側電極43bの負極バスバー42bにおける素子接続部425と重複しない領域よりも小さい。
【0042】
このように構成することで、素子接続部425は、開口側電極43a及び底壁側電極43bのX方向の他方側に近い領域で開口側電極43a及び底壁側電極43bと接続されるため、コンデンサバスバー42とコンデンサ素子41の重複する領域を必要以上に広げる必要がないので、コンデンサバスバー42の体積増加によるコスト増加を抑制することができる。また、コンデンサバスバー42からコンデンサ素子41へ熱が伝わることを抑制することができる。
【0043】
本実施の形態では、素子接続部425は、図4に示すように、コンデンサ素子41の側の端部に、コンデンサ素子41に向かって突出した突出部4250を有する。コンデンサ素子41の開口側電極43aと突出部4250とは、例えば、はんだ接合又は溶接により接続されている。
【0044】
このように構成することで、素子接続部425の突出部4250以外の領域において、突出部4250の突出した高さ分だけ、コンデンサ用の封止樹脂44が素子接続部425と開口側電極43aとの間の隙間に介入するため、コンデンサバスバー42と開口側電極43aとの間の熱抵抗が高くなる。そのため、コンデンサバスバー42の発熱が、コンデンサ素子41に伝わることを抑制することができる。この構成に限らず、素子接続部425と開口側電極43aとの接合部以外の領域において、コンデンサバスバー42とコンデンサ素子41との間に、コンデンサ用の封止樹脂44よりも熱伝導率の高い部材を介在させても構わない。また、突出部4250を底壁側電極43bの側に設けて構わない。また、突出部4250を後述する接地側のコンデンサ素子との接合部に設けても構わない。
【0045】
<接地側のコンデンサ素子410>
接地側のコンデンサ素子410について説明する。電力変換装置1は、図9に示すように、コンデンサバスバー42である正極バスバー42a及び負極バスバー42bのそれぞれと、グラウンドとの間に接続された接地側のコンデンサ素子410を備える。本実施の形態では、図6に示すように、2つの接地側のコンデンサ素子410は、コンデンサ用の封止樹脂44を介して、コンデンサケース45に収容される。接地側のコンデンサ素子410の配置はこれに限るものではなく、コンデンサケース45の外部に設けても構わない。接地側のコンデンサ素子410は、正極バスバー42a及び負極バスバー42bとグラウンドとの間のノイズを除去する、Yコンデンサである。
【0046】
Y方向に見て、接地側のコンデンサ素子410は、コンデンサ素子41と一部が重複するように配置される。接地側のコンデンサ素子410は、コンデンサ素子41と同様に、フィルムコンデンサである。接地側のコンデンサ素子410は、コンデンサ素子41よりもサイズが小さい。接地側のコンデンサ素子410は、金属フィルムが積層された方向であるY方向に交差するX方向の両端面に接地側のコンデンサ電極430を有する。正極バスバー42a又は負極バスバー42bと接続される、接地側のコンデンサ電極430である正負電極430aは、X方向の一方側に配置される。正負電極430aと反対側の接地側のコンデンサ電極430は、GNDバスバー46の一端に接続されるGND電極430bである。GNDバスバー46の他端は、グラウンドに接続される。
【0047】
本実施の形態では、接地側のコンデンサ電極430は、短手方向と長手方向を有して形成されている。接地側のコンデンサ素子410は、接地側のコンデンサ電極430の長手方向であるZ方向の長さよりも、X方向の両端面の長さである正負電極430aとGND電極430bとの間の長さの方が大きくなるように形成されている。そのため、コンデンサケース45のY方向の寸法が最小となるように、X方向に接地側のコンデンサ電極430を並べて設け、X方向に見て2つの接地側のコンデンサ素子410が重複するように配置している。2つの接地側のコンデンサ素子410の配置は、これに限るものではなく、2つの接地側のコンデンサ電極430は、Z方向の一方側を向いても構わない。また、正負電極430aとGND電極430bとの間の長さが接地側のコンデンサ電極430の短手方向よりも短く、接地側のコンデンサ電極430がY方向を向いている構成であっても構わない。また、接地側のコンデンサ素子410は2つに限るものではない。GND電極430bに複数のYコンデンサが接続されていてもよく、複数の接地側のコンデンサ素子410におけるそれぞれのGND電極430bが1つのGNDバスバー46に並列に接続されていても構わない。
【0048】
本実施の形態では、直流経路部424は、Z方向に見て、少なくとも一部が接地側のコンデンサ素子410に重複して配置されている。このように構成することで、ノイズ除去の効果を持たせつつ、電力変換装置1を小型化することができる。また、本実施の形態では、接地側のコンデンサ素子410は、有底筒状に形成されたコンデンサケース45の底壁45bの側とは反対側の開口した側である開口部45aの側に配置されている。このように構成することで、直流接続部426に近づけて、接地側のコンデンサ素子410を配置することができる。直流接続部426と接地側のコンデンサ素子410とが近づくので、直流接続部426と接地側のコンデンサ素子410との間の配線インダクタンスを低減することができる。配線インダクタンスが低減するので、接地側のコンデンサ素子410のノイズ除去の効果を高めることができる。
【0049】
<支持部47とスペーサ支持部420b>
支持部47について説明する。直流経路部424は、直流経路部424からコンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出した支持部47を有している。本実施の形態では、図2に示すように、正極バスバー42aは、2つの支持部47a、47bを有し、図3に示すように、負極バスバー42bは、1つの支持部47cを有している。支持部47は直流経路部424と一体で形成され、Z方向の他方側に屈曲させて設けられる。支持部47を設けることで、支持部47がコンデンサ用の封止樹脂44に固定されるため、コンデンサバスバー42がコンデンサ用の封止樹脂44から露出した部分における振動を抑制することができる。また、正極バスバー42aのように、直流経路部424は、複数の支持部47を有しても構わない。複数の支持部47を有した場合、コンデンサバスバー42の振動を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0050】
支持部47aは、図6に示すように、接地側のコンデンサ素子410の一方の電極である正負電極430aに接続される。支持部47cは、接地側のコンデンサ素子410の一方の電極である正負電極430aに接続される。正負電極430aに接続される支持部47a、47cは、接地側のコンデンサ端子である。支持部47a、47cは、直流経路部424のX方向の一方側に配置される。接地側のコンデンサ素子410の他方の電極であるGND電極430bは、グラウンドに接続されている。支持部47a、47cが、固定の機能に加えて、接地側のコンデンサ端子の機能を有するため、新たに接地側のコンデンサ端子を設ける必要がないので、電力変換装置1の部品点数を減らすことができる。電力変換装置1の部品点数を減るので、電力変換装置1を低コスト化することができる。
【0051】
支持部47bは、コンデンサ用の封止樹脂44の内部において、端部が電気的な接続を有さない耐振アンカーである。支持部47bは、直流経路部424のX方向の他方側に配置される。このように、支持部47bは、直流経路部424における直流接続部426の側よりも平板部421の側に配置されている。このように構成することで、素子接続部425及びパワー端子接続部423から離間した平板部421のY方向の一方側の自由端に隣接して支持部47bが配置されるため、平板部421の耐振性を向上させることができる。
【0052】
本実施の形態では、コンデンサバスバー42のうち、平板部421のY方向の一方側の自由端のX方向の幅が広く、かつ直流経路部424のX方向の長さが長い正極バスバー42aにのみ耐振アンカーである支持部47bを設けることで、正極バスバー42aの耐振性を向上させている。支持部47bの配置はこれに限るものではなく、コンデンサバスバー42の種々の形状によって、耐振アンカーは削除、位置変更、又は追加しても構わない。また、支持部47は、接地側のコンデンサ端子又は耐振アンカーのどちらかだけ設けてもよく、異なる位置に複数設けても構わない。
【0053】
本実施の形態では、直流経路部424は、板状に形成され、直流接続部426及び支持部47bは、Z方向に見て、直流経路部424の同じ側面に設けられている。支持部47bをZ方向の他方側に屈曲させる前は、直流接続部426及び支持部47bは、同一方向に延出している。正極バスバー42aの作製時に、直流接続部426及び支持部47bが同一方向に延出していることで、正極バスバー42aの作製が容易になるため、正極バスバー42aの歩留まりを向上させることができる。
【0054】
支持部47bは、板状に形成され、支持部47bは、コンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出した部分において、側面から内側に切り欠かれた部分及び側面からコンデンサ用の封止樹脂44の側に突出した部分の一方又は双方を有している。本実施の形態では、図7に示すように、支持部47bは、側面から内側に切り欠かれた部分である切欠き部47dを2つ有している。また、図10に示した別の電力変換装置1では、支持部47bは、側面からコンデンサ用の封止樹脂44の側に突出した部分である突起部47eを2つ有している。図10図7と同等の位置で電力変換装置1を切断した断面図である。切欠き部47d及び突起部47eの個数はこれに限るものではなく、1つ又は3つ以上であっても構わない。また、切欠き部47d及び突起部47eの双方を一つの支持部に設けても構わない。また、切欠き部47d及び突起部47eをX方向の異なる位置に配置しても構わない。
【0055】
このように構成することで、支持部47bは、切欠き部47d又は突起部47eの部分の複数の箇所でコンデンサ用の封止樹脂44と接触しているため、コンデンサ用の封止樹脂44と支持部47bとの密着性を向上させることができる。コンデンサ用の封止樹脂44と支持部47bとの密着性が向上するので、平板部421の耐振性をさらに向上させることができる。支持部47bに設ける構成は切欠き部47d又は突起部47eに限るものではなく、例えば、支持部47bをY方向に折り曲げた形状であってもよく、その他、コンデンサ用の封止樹脂44に支持部47bの部分が食い込むような形状であれば構わない。
【0056】
スペーサ支持部420bについて説明する。本実施の形態では、スペーサ420は、対向部420aとスペーサ支持部420bとを有している。対向部420aは、図4に示すように、スペーサ420における第1平板部421aと第2平板部421bとに挟まれた部分である。スペーサ支持部420bは、図8に示すように、対向部420aから直流経路部424の方向に延出すると共に、支持部47bに沿ってコンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出した部分である。このように構成することで、スペーサ支持部420bにより、スペーサ420の耐振性を向上させることができる。なお、図6に示すように、スペーサ支持部420bは、支持部47と離間した部分においてコンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出しても構わない。
【0057】
本実施の形態では、スペーサ支持部420bは、支持部47bの周囲を取り囲む筒状に形成された筒状部420b1を有し、筒状部420b1が、コンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出している。筒状部420b1は、コンデンサ用の封止樹脂44と外部の境界の部分において、支持部47bの周囲を取り囲んでいる。このように構成することで、スペーサ支持部420bは、スペーサ420の耐振性を向上させると共に、絶縁が必要な耐振アンカーである支持部47bとGNDバスバー46との間の樹脂沿面距離を延長させることができる。支持部47bとGNDバスバー46との間の樹脂沿面距離が延長するので、コンデンサ用の封止樹脂44と外部の境界の部分において、支持部47bとGNDバスバー46との距離を十分に近づけることができ、コンデンサモジュール4の大型化を抑制することができる。コンデンサモジュール4の大型化が抑制されるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1による電力変換装置1において、パワーモジュール部3とコンデンサモジュール4とを備え、コンデンサバスバー42は、平板部421、複数のパワー端子接続部423、電源接続部422、及び複数の素子接続部425を有し、複数の素子接続部425におけるY方向の両端に配置された二つの素子接続部425の間のY方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲、及び複数のパワー端子接続部423におけるY方向の両端に配置された二つのパワー端子接続部423の間のY方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲は、平板部421が配置されたY方向の位置範囲の内側であり、素子接続部の位置範囲の長さと、パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であり、素子接続部の位置範囲の中心位置と、パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置であるため、コンデンサバスバー42は、各コンデンサ電極43に接続された複数の素子接続部425と各パワー端子31に接続された複数のパワー端子接続部423との間のX方向の電流経路において、Y方向に十分な幅を有するため、この電流経路の電気抵抗の増加が抑制されるので、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の配線インダクタンスの増大を抑制することができる。また、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の電流経路であり、直流電源5とパワーモジュール部3との間の電流経路である平板部421が、コンデンサ用の封止樹脂44から外部に露出しているため、コンデンサバスバー42の放熱性を向上させることができる。
【0059】
X方向に見て、素子接続部の位置範囲の80%以上は、パワー端子接続部の位置範囲と重複しており、パワー端子接続部の位置範囲の80%以上は、素子接続部の位置範囲と重複している場合、それぞれの重複の度合いのみの指標により、コンデンサ素子41とパワーモジュール部3との間の配線インダクタンスの増大を容易に抑制することができる。
【0060】
第1コンデンサバスバーの平板部421である第1平板部と、第2コンデンサバスバーの平板部421である第2平板部とが、対向して配置されている場合、電力変換装置1におけるコンデンサバスバー42の占める投影面積を減らすことができるので、電力変換装置1を小型化することができる。また、正極バスバー42aと負極バスバー42bが対向した平板部421の領域において、配線インダクタンスを相互に打消し合うため、コンデンサバスバー42における配線インダクタンスを大幅に低減させることができる。
【0061】
第1平板部421aと第2平板部421bとの間に、絶縁性を有したスペーサ420を備えている場合、第1平板部421aと第2平板部421bとの間の距離を狭くすることができるので、コンデンサバスバー42における配線インダクタンスをさらに低減させることができる。
【0062】
直流経路部424が、平板部421におけるY方向の一方側又は他方側のX方向の一方側の部分からX方向の一方側に延出し、直流経路部424が、Z方向に見て、コンデンサ用の封止樹脂44に重複して配置されている場合、外部に露出した直流経路部424の部分がコンデンサケース45から外側に突出しないので、電力変換装置1を小型化することができる。また、直流経路部424と素子接続部425とが離間して配置されるため、直流経路部424の発熱が素子接続部425を経由してコンデンサ素子41に伝わることを抑制することができる。
【0063】
Z方向に見て、第1電極の第1コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複した領域が、第1電極の第1コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複しない領域よりも小さく、第2電極の第2コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複した領域が、第2電極の第2コンデンサバスバーにおける素子接続部425と重複しない領域よりも小さい場合、素子接続部425は、開口側電極43a及び底壁側電極43bのX方向の他方側に近い領域で開口側電極43a及び底壁側電極43bと接続されるため、コンデンサバスバー42の体積増加によるコスト増加を抑制することができ、コンデンサバスバー42からコンデンサ素子41へ熱が伝わることを抑制することができる。
【0064】
直流経路部424が、Z方向に見て、少なくとも一部が接地側のコンデンサ素子410に重複して配置されている場合、ノイズ除去の効果を持たせつつ、電力変換装置1を小型化することができる。また、接地側のコンデンサ素子410が、有底筒状に形成されたコンデンサケース45の底壁45bの側とは反対側の開口した側である開口部45aの側に配置されている場合、直流接続部426に近づけて、接地側のコンデンサ素子410を配置することができるので、直流接続部426と接地側のコンデンサ素子410との間の配線インダクタンスを低減することができる。配線インダクタンスが低減するので、接地側のコンデンサ素子410のノイズ除去の効果を高めることができる。
【0065】
直流経路部424が、直流経路部424からコンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出した支持部47を有している場合、支持部47がコンデンサ用の封止樹脂44に固定されるため、コンデンサバスバー42のコンデンサ用の封止樹脂44から露出した部分における振動を抑制することができる。また、支持部47a、47cが、接地側のコンデンサ素子410の一方の電極である正負電極430aに接続される場合、支持部47a、47cが、固定の機能に加えて、接地側のコンデンサ端子の機能を有するため、新たに接地側のコンデンサ端子を設ける必要がないので、電力変換装置1の部品点数を減らすことができる。
【0066】
直流経路部424が、複数の支持部47を有している場合、コンデンサバスバー42の振動を抑制する効果をさらに高めることができる。また、支持部47bが、直流経路部424における直流接続部426の側よりも平板部421の側に配置されている場合、素子接続部425及びパワー端子接続部423から離間した平板部421のY方向の一方側の自由端に隣接して支持部47bが配置されるため、平板部421の耐振性を向上させることができる。
【0067】
直流経路部424が、板状に形成され、直流接続部426及び支持部47bが、Z方向に見て、直流経路部424の同じ側面に設けられている場合、正極バスバー42aの作製時に、直流接続部426及び支持部47bが同一方向に延出していることで、正極バスバー42aの作製が容易になるため、正極バスバー42aの歩留まりを向上させることができる。また、スペーサ420が、対向部420aから直流経路部424の方向に延出すると共に、支持部47に沿ってコンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出した部分であるスペーサ支持部420bを有している場合、スペーサ支持部420bにより、スペーサ420の耐振性を向上させることができる。
【0068】
スペーサ支持部420bが、支持部47bの周囲を取り囲む筒状に形成された筒状部420b1を有し、筒状部420b1が、コンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出している場合、スペーサ支持部420bは、スペーサ420の耐振性を向上させると共に、絶縁が必要な耐振アンカーである支持部47bとGNDバスバー46との間の樹脂沿面距離を延長させることができる。支持部47bとGNDバスバー46との間の樹脂沿面距離が延長するので、コンデンサ用の封止樹脂44と外部の境界の部分において、支持部47bとGNDバスバー46との距離を十分に近づけることができ、コンデンサモジュール4の大型化を抑制することができる。
【0069】
支持部47bが、板状に形成され、支持部47bが、コンデンサ用の封止樹脂44の内部に延出した部分において、側面から内側に切り欠かれた部分及び側面からコンデンサ用の封止樹脂44の側に突出した部分の一方又は双方を有している場合、支持部47bが、切欠き部47d又は突起部47eの部分の複数の箇所でコンデンサ用の封止樹脂44と接触しているため、コンデンサ用の封止樹脂44と支持部47bとの密着性を向上させることができる。コンデンサ用の封止樹脂44と支持部47bとの密着性が向上するので、平板部421の耐振性をさらに向上させることができる。
【0070】
素子接続部425が、コンデンサ素子41の側の端部に、コンデンサ素子41に向かって突出した突出部4250を有し、コンデンサ素子41と突出部4250とが接続されている場合、突出部4250の突出した高さ分だけ、コンデンサ用の封止樹脂44が素子接続部425と開口側電極43aとの間の隙間に介入するため、コンデンサバスバー42と開口側電極43aとの間の熱抵抗が高くなるので、コンデンサバスバー42の発熱が、コンデンサ素子41に伝わることを抑制することができる。
【0071】
実施の形態2.
実施の形態2に係る電力変換装置1について説明する。図11は実施の形態2に係る電力変換装置1の概略を示す平面図で、制御基板6を取り除いて示した図、図12図11のF-F断面位置で切断した電力変換装置1の断面図、図13図11のG-G断面位置で切断した電力変換装置1の断面図、図14図11のH-H断面位置で切断した電力変換装置1の断面図で、接地側のコンデンサモジュール40の部分を示した図、図15は実施の形態2に係る別の電力変換装置1の要部を示す断面図で、別の接地側のコンデンサモジュール40の断面である。実施の形態2に係る電力変換装置1は、接地側のコンデンサモジュール40を備え、接地側のコンデンサモジュール40に接地側のコンデンサ素子410を設けた構成になっている。
【0072】
<接地側のコンデンサモジュール40>
電力変換装置1は、図11に示すように、コンデンサモジュール4と接地側のコンデンサモジュール40とを備える。筐体2は、パワーモジュール部3、コンデンサモジュール4、及び接地側のコンデンサモジュール40を収容する。接地側のコンデンサモジュール40は、図14に示すように、コンデンサバスバー42とグラウンドとの間に接続された接地側のコンデンサ素子410と、接地側のコンデンサ用の封止樹脂440を介して接地側のコンデンサ素子410を収容した接地側のコンデンサケース450とを有する。接地側のコンデンサケース450は、例えば、有底筒状に形成される。このように構成することで、ノイズ除去を行う接地側のコンデンサモジュール40は、直流電圧を平滑化するコンデンサモジュール4とは別体で構成されるため、接地側のコンデンサモジュール40のみの交換を容易に行うことができる。接地側のコンデンサモジュール40の交換が容易なため、ノイズ特性に合わせて接地側のコンデンサモジュール40がマッチングするように接地側のコンデンサモジュール40を変更しやすく、コンデンサモジュール4の汎用性を向上させることができる。
【0073】
本実施の形態では、直流経路部424は、図11に示すように、Z方向に見て、少なくとも一部が接地側のコンデンサモジュール40に重複して配置されている。このように構成することで、直流経路部424と接地側のコンデンサモジュール40とが重複しているため、外部に露出した直流経路部424の部分が電力変換装置1から外側に突出しないので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0074】
コンデンサケース45及び接地側のコンデンサケース450の配置について説明する。コンデンサモジュール4及び接地側のコンデンサモジュール40の一方又は双方は、コンデンサケース45及び接地側のコンデンサケース450の底壁の側とは反対側の開口した側が、段差部2cに対向している。本実施の形態では、図12に示すように、コンデンサケース45の開口した側である開口部45aは段差部2cに対向し、図14に示すように、接地側のコンデンサケース450の開口した側である開口部450aは段差部2cに対向している。コンデンサケース45は、X方向の他方側に開口する有底筒状に形成され、第二面2bの側の周壁の部分である下側壁部45cが第二面2bに接する。下側壁部45cとは反対側の周壁の部分は、上側壁部45dである。
【0075】
このように構成することで、開口部45aが段差部2cに対向しているため、コンデンサバスバー42、及びコンデンサ素子41の熱を開口部45aから段差部2cに効率よく放熱することができる。同様に、開口部450aが段差部2cに対向しているため、コンデンサバスバー42、及び接地側のコンデンサ素子410の熱を開口部450aから段差部2cに効率よく放熱することができる。
【0076】
段差部2cと、コンデンサモジュール4及び接地側のコンデンサモジュール40とが、例えば、グリスを介して熱的に接続されていても構わない。このように構成することで、コンデンサモジュール4及び接地側のコンデンサモジュール40の放熱効果をさらに向上させることができる。特に、段差部2cと、コンデンサ用の封止樹脂44及びコンデンサバスバー42の一方又は双方が熱的に接続されていても構わない。本実施の形態では、図12に、段差部2cとコンデンサ用の封止樹脂44とを放熱部材7を介して熱的に接続した例を示す。放熱部材7は、グリスに限らず、放熱シート、もしくはコンデンサ用の封止樹脂44に一部が埋没する金属製の部品をであっても構わない。さらに、段差部2cと、接地側のコンデンサ用の封止樹脂440とが熱的に接続されていても構わない。
【0077】
コンデンサモジュール4は、図12及び図13に示すように、開口部45aがX方向の他方側に向くように配置される。コンデンサ用の封止樹脂44から突出したコンデンサバスバー42の突出方向がパワーモジュール部3の方向であるため、コンデンサバスバー42の曲げ加工を減らすことができ、コンデンサバスバー42の体積の増加が抑制されるため、コンデンサバスバー42のコストを削減することができる。
【0078】
コンデンサモジュール4及び接地側のコンデンサモジュール40は、開口部45a及び開口部450aのそれぞれが、Z方向の一方側に向くように配置されていてもよく、開口部45a、450aのそれぞれが異なる方向を向いても構わない。このように、コンデンサケース45と接地側のコンデンサケース450の開口部がそれぞれ別の方向を向くように配置させることが可能であるため、コンデンサバスバー42のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0079】
実施の形態1では、直流経路部424と平板部421とは、一体的に形成されていたが、直流経路部424と平板部421とを別体で形成しても構わない。本実施の形態では、図14に示すように、直流経路部424と平板部421とは別体で形成される。直流経路部424は、板状に形成され、直流経路部424の厚みは、平板部421の厚みよりも厚い。直流経路部424と平板部421とは、双方が重なった箇所において、例えば、ねじ(図示せず)により締結される。直流経路部424と平板部421との接続は、ねじ締結に限るものではなく、はんだによる接続、嵌合、または溶接による接続であっても構わない。直流経路部424は、例えば、電気抵抗率が小さく導電性に優れた銅から作製される。
【0080】
このように構成することで、直流経路部424の電気抵抗を小さくできるため、直流経路部424の発熱の増大を抑制でき、コンデンサ素子41及び接地側のコンデンサ素子410への受熱を抑制することができる。また、コンデンサバスバー42のうち、直流経路部424の部分のみの厚みの変更は容易であるため、直流経路部424の厚みの増大によるコストアップを抑制することができる。なお、直流経路部424は、コンデンサ用の封止樹脂44又は接地側のコンデンサ用の封止樹脂440と異なる追加の樹脂部材によって包括されていても構わない。
【0081】
接地側のコンデンサモジュール40は、接地側のコンデンサ素子410が入る大きさであればよいため、接地側のコンデンサケース450の大きさは、コンデンサケース45よりも小さくて構わない。接地側のコンデンサケース450の大きさが、コンデンサケース45よりも小さい場合、コンデンサ用の封止樹脂44及び接地側のコンデンサ用の封止樹脂440の総量は、実施の形態1におけるコンデンサ用の封止樹脂44の量よりも少なくすることができる。
【0082】
直流接続部426は、上側壁部450dの外壁に積層して配置される。接地側のコンデンサ素子410は、直流接続部426の近傍に配置されると共に、第二面2bに接した下側壁部450cの近傍に配置される。このように構成することで、接地側のコンデンサ素子410は、直流接続部426に近づけることで、ノイズフィルタ回路における配線インダクタンスを低減できるため、ノイズ除去の効果を向上させることができると共に、筐体2への放熱効果も大幅に向上させることができる。
【0083】
GNDバスバー46は、接地側のコンデンサケース450のX方向の他方側に端部に筐体と固定される固定部46aを有する。GNDバスバー46の筐体への固定及び接地と、接地側のコンデンサモジュール40の固定は共有化されている。そのため、電力変換装置1の組立工程の煩雑化を抑制することができる。接地側のコンデンサモジュール40の固定方法は、例えば、ねじ締結、溶接、嵌合、又ははんだによる接続である。GNDバスバー46は第二面2bと対向する下側壁部450cと第二面2bとの間に固定部を有するものでも構わない。
【0084】
図14に示した接地側のコンデンサモジュール40の構成では、2つの接地側のコンデンサ素子410は、Y方向に隣接させて配置される。GND電極430bはZ方向の一方側の端面に配置され、正負電極430aはZ方向の他方側の端面に配置される。接地側のコンデンサ電極430の配置は、図14に示した構成に限るものではない。2つの接地側のコンデンサ素子410は、図15に示すように、X方向に隣接させて配置しても構わない。図15に示した構成では、接地側のコンデンサケース450の底壁450bが第二面2b(図15では図示せず)に熱的に接続されている。また、接地側のコンデンサ電極430を開口部450aの側に設けても構わない。2つの接地側のコンデンサ素子410をX方向に隣接させて配置した場合、図14のようにY方向に接地側のコンデンサ素子410が並ぶ構成に対して、Y方向の電力変換装置1の大型化を抑制することができる。
【0085】
<制御基板6>
電力変換装置1は、パワーモジュール部3を制御する制御基板6を備える。コンデンサケース45は、第二面2bとは反対側の周壁の部分である上側壁部45dに外周側に突出したブッシュ48を有する。コンデンサケース45が樹脂部材から作製されている場合、ブッシュ48は、例えば、コンデンサケース45にインサート成形されている。制御基板6は、ブッシュ48にねじにより固定されている。このように構成することで、コンデンサモジュール4に制御基板6が積層して配置されるため、電力変換装置1の大型化を抑制することができる。また、制御基板6をコンデンサケース45に容易に固定できるので、電力変換装置1の生産性を向上させることができる。また、基板固定用の部品を削減できるため、電力変換装置1を低コスト化することができる。
【0086】
制御基板6は、コンデンサバスバー42から延出した制御端子(図示せず)と接続される。制御基板6には、線間のノイズを除去するXコンデンサ、及びコンデンサ素子41の電荷を放出する放電抵抗等の制御回路が実装されている。制御基板6はコンデンサケース45に固定され、制御基板6とコンデンサバスバー42とを近接して配置することができるため、コンデンサバスバー42と制御基板6とを接続する配線の煩雑化を抑制することができる。
【0087】
以上のように、実施の形態2による電力変換装置1において、接地側のコンデンサモジュール40を備え、Z方向に見て、直流経路部424の少なくとも一部が接地側のコンデンサモジュール40に重複して配置されているため、接地側のコンデンサモジュール40のみの交換を容易に行うことができると共に、外部に露出した直流経路部424の部分が電力変換装置1から外側に突出しないので、電力変換装置1を小型化することができる。また、直流経路部424が、板状に形成され、直流経路部424の厚みが、平板部421の厚みよりも厚いため、直流経路部424の電気抵抗を小さくできるので、直流経路部424の発熱の増大を抑制でき、コンデンサ素子41及び接地側のコンデンサ素子410への受熱を抑制することができる。
【0088】
筐体2が、第一面2aと第二面2bとの間に段差部2cを有し、コンデンサモジュール4及び接地側のコンデンサモジュール40の一方又は双方は、コンデンサケース45及び接地側のコンデンサケース450の底壁の側とは反対側の開口した側が、段差部2cに対向しているため、段差部2cに対向したコンデンサバスバー42、コンデンサ素子41、及び接地側のコンデンサ素子410の熱を、段差部2cに効率よく放熱することができる。また、段差部2cと、接地側のコンデンサ用の封止樹脂440及びコンデンサバスバー42の一方又は双方が熱的に接続されているため、コンデンサモジュール4及び接地側のコンデンサモジュール40の放熱効果をさらに向上させることができる。
【0089】
パワーモジュール部3を制御する制御基板6を備え、コンデンサケース45が、第二面2bとは反対側の周壁の部分である上側壁部45dに外周側に突出したブッシュ48を有し、制御基板6が、ブッシュ48にねじにより固定されているため、コンデンサモジュール4に制御基板6が積層して配置されるため、電力変換装置1の大型化を抑制することができる。
【0090】
また本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、又は複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、又は様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合又は省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0091】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
第一方向に並べられた複数の半導体素子、前記複数の半導体素子を複数に分けて又は1つにまとめて収容したパワー本体部、及び前記複数の半導体素子のそれぞれに接続され、前記パワー本体部から前記第一方向に直交する第二方向の一方側に突出し、前記第一方向に並べられた複数のパワー端子を有したパワーモジュール部と、
コンデンサ素子、コンデンサ用の封止樹脂を介して前記コンデンサ素子を収容したコンデンサケース、及び前記コンデンサ素子に接続されたコンデンサバスバーを有したコンデンサモジュールと、を備え、
前記コンデンサバスバーは、
前記第二方向の幅よりも前記第一方向の幅が長い板状に形成され、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出している平板部、
前記平板部から前記第二方向の他方側に延出し、前記第一方向に並べられ、前記複数のパワー端子のそれぞれに接続された複数のパワー端子接続部、
前記平板部に接続され、直流電源に接続される電源接続部、及び
前記平板部に接続され、前記平板部よりも前記第二方向の一方側に配置され、前記第一方向に並べられ、前記コンデンサ素子に接続された複数の素子接続部、を有し、
前記複数の素子接続部における前記第一方向の両端に配置された二つの前記素子接続部の間の前記第一方向の位置範囲である素子接続部の位置範囲、及び前記複数のパワー端子接続部における前記第一方向の両端に配置された二つの前記パワー端子接続部の間の前記第一方向の位置範囲であるパワー端子接続部の位置範囲は、前記平板部が配置された前記第一方向の位置範囲の内側であり、
前記素子接続部の位置範囲の長さと、前記パワー端子接続部の位置範囲の長さとは、同等であり、
前記素子接続部の位置範囲の中心位置と、前記パワー端子接続部の位置範囲の中心位置とは、同等位置である電力変換装置。
(付記2)
前記第二方向に見て、
前記素子接続部の位置範囲の80%以上は、前記パワー端子接続部の位置範囲と重複しており、
前記パワー端子接続部の位置範囲の80%以上は、前記素子接続部の位置範囲と重複している付記1に記載の電力変換装置。
(付記3)
前記コンデンサバスバーとして、前記コンデンサ素子の第1電極に接続された第1コンデンサバスバーと、前記コンデンサ素子の第2電極に接続された第2コンデンサバスバーとが設けられ、
前記第1コンデンサバスバーの前記平板部である第1平板部と、前記第2コンデンサバスバーの前記平板部である第2平板部とは、対向して配置されている付記1又は2に記載の電力変換装置。
(付記4)
前記第1平板部と前記第2平板部との間に、絶縁性を有したスペーサを備えた付記3に記載の電力変換装置。
(付記5)
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記平板部における前記第一方向の一方側又は他方側の前記第二方向の一方側の部分から前記第二方向の一方側に延出し、
前記直流経路部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、前記コンデンサ用の封止樹脂に重複して配置されている付記1から4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記6)
前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、
前記第1電極の前記第1コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複した領域は、前記第1電極の前記第1コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複しない領域よりも小さく、
前記第2電極の前記第2コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複した領域は、前記第2電極の前記第2コンデンサバスバーにおける前記素子接続部と重複しない領域よりも小さい付記3又は4に記載の電力変換装置。
(付記7)
前記コンデンサバスバーとグラウンドとの間に接続された接地側のコンデンサ素子を備え、
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、少なくとも一部が前記接地側のコンデンサ素子に重複して配置されている付記1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記8)
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部とグラウンドとの間に接続され、前記コンデンサ用の封止樹脂を介して前記コンデンサケースに収容された接地側のコンデンサ素子を備え、
前記コンデンサケースは、有底筒状に形成され、
前記接地側のコンデンサ素子は、前記コンデンサケースの底壁の側とは反対側の開口した側に配置されている付記1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記9)
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記直流経路部から前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出した支持部を有している付記1から8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記10)
前記コンデンサ用の封止樹脂を介して、前記コンデンサケースに収容された接地側のコンデンサ素子を備え、
前記支持部は、前記接地側のコンデンサ素子の一方の電極に接続され、前記接地側のコンデンサ素子の他方の電極は、グラウンドに接続されている付記9に記載の電力変換装置。
(付記11)
前記直流経路部は、複数の前記支持部を有している付記9又は10に記載の電力変換装置。
(付記12)
前記支持部は、前記直流経路部における前記直流接続部の側よりも前記平板部の側に配置されている付記9から11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記13)
前記直流経路部は、板状に形成され、
前記直流接続部及び前記支持部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、前記直流経路部の同じ側面に設けられている付記9から12のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記14)
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記直流経路部から前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出した支持部を有し、
前記スペーサは、前記第1平板部と前記第2平板部とに挟まれた対向部と、前記対向部から前記直流経路部の方向に延出すると共に、前記支持部に沿って前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出したスペーサ支持部と、を有している付記4に記載の電力変換装置。
(付記15)
前記スペーサ支持部は、前記支持部の周囲を取り囲む筒状に形成された筒状部を有し、
前記筒状部が、前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出している付記14に記載の電力変換装置。
(付記16)
前記支持部は、板状に形成され、
前記支持部は、前記コンデンサ用の封止樹脂の内部に延出した部分において、側面から内側に切り欠かれた部分及び側面から前記コンデンサ用の封止樹脂の側に突出した部分の一方又は双方を有している付記9から13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記17)
前記コンデンサバスバーとグラウンドとの間に接続された接地側のコンデンサ素子と、接地側コンデンサ用の封止樹脂を介して前記接地側のコンデンサ素子を収容した接地側のコンデンサケースと、を有した接地側のコンデンサモジュールを備え、
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向に見て、少なくとも一部が前記接地側のコンデンサモジュールに重複して配置されている付記1から16のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記18)
前記電源接続部は、前記コンデンサ用の封止樹脂から外部に露出し、前記平板部に接続された部分である直流経路部と、前記直流経路部に接続され、直流電源に接続される部分である直流接続部と、を有し、
前記直流経路部は、板状に形成され、
前記直流経路部の厚みは、前記平板部の厚みよりも厚い付記1から17のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記19)
前記パワーモジュール部、前記コンデンサモジュール、及び前記接地側のコンデンサモジュールを収容した筐体を備え
前記コンデンサケース及び前記接地側のコンデンサケースは、有底筒状に形成され、
前記筐体は、前記パワーモジュール部が熱的に接続された第一面と、前記コンデンサモジュール及び前記接地側のコンデンサモジュールが熱的に接続された第二面とを有し、前記第一面の裏側に、前記第一面を冷却する冷媒流路が設けられ、
前記第二面は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向の一方側を向き、前記第一面の前記第二方向の一方側であって、前記第一面よりも前記第三方向の他方側に配置され、前記筐体は、前記第一面と前記第二面との間に段差部を有し、
前記段差部の前記第二方向の他方側に前記冷媒流路が配置され、
前記コンデンサモジュール及び前記接地側のコンデンサモジュールの一方又は双方は、前記コンデンサケース及び前記接地側のコンデンサケースの底壁の側とは反対側の開口した側が、前記段差部に対向している付記17に記載の電力変換装置。
(付記20)
前記段差部と、前記コンデンサ用の封止樹脂及び前記コンデンサバスバーの一方又は双方が熱的に接続されている付記19に記載の電力変換装置。
(付記21)
前記素子接続部は、前記コンデンサ素子の側の端部に、前記コンデンサ素子に向かって突出した突出部を有し、
前記コンデンサ素子と前記突出部とが接続されている付記1から20のいずれか1項に記載の電力変換装置。
(付記22)
前記パワーモジュール部及び前記コンデンサモジュールを収容した筐体と、
前記パワーモジュール部を制御する制御基板と、を備え、
前記筐体は、前記パワーモジュール部が熱的に接続された第一面と、前記コンデンサモジュールが熱的に接続された第二面とを有し、
前記コンデンサケースは、第二方向の他方側に開口する有底筒状に形成され、前記第二面の側の周壁の部分が前記第二面に接すると共に、前記第二面とは反対側の前記周壁の部分に外周側に突出したブッシュを有し、
前記制御基板は、前記ブッシュにねじにより固定されている付記1から21のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【符号の説明】
【0092】
1 電力変換装置、2 筐体、2a 第一面、2b 第二面、2c 段差部、21 冷媒流路、21a 上流側流路、21b 下流側流路、22 ベース部、22a 冷却フィン、23 流路形成部、23a 冷媒出入口、3 パワーモジュール部、31 パワー端子、32a、32b、32c パワー本体部、33 出力端子、34 半導体素子、4 コンデンサモジュール、41 コンデンサ素子、42 コンデンサバスバー、42a 正極バスバー、42b 負極バスバー、420 スペーサ、420a 対向部、420b スペーサ支持部、420b1 筒状部、421 平板部、421a 第1平板部、421b 第2平板部、422 電源接続部、423 パワー端子接続部、424 直流経路部、425 素子接続部、4250 突出部、426 直流接続部、43 コンデンサ電極、43a 開口側電極、43b 底壁側電極、44 コンデンサ用の封止樹脂、45 コンデンサケース、45a 開口部、45b 底壁 、45c 下側壁部、45d 上側壁部、46 GNDバスバー、46a 固定部、47、47a、47b、47c 支持部、47d 切欠き部、47e 突起部、48 ブッシュ、410 接地側のコンデンサ素子、430 接地側のコンデンサ電極、430a 正負電極、430b GND電極、40 接地側のコンデンサモジュール、440 接地側のコンデンサ用の封止樹脂、450 接地側のコンデンサケース、450a 開口部、450b 底壁、450c 下側壁部、450d 上側壁部、5 直流電源、6 制御基板、7 放熱部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15