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  • 特開-配電電圧調整装置及びその方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177404
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】配電電圧調整装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20231207BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J3/38 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090034
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 信
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE01
5G066DA01
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】 変電所から遠隔の配電線が分岐した末端の一方に分散型電源、他方に負荷があっても、分散型電源の影響を最小にし、両者に適切な配電電圧を供給する配電電圧調整装置を提供する。
【解決手段】 配電系統の電圧監視地点の電圧を検出するセンサの出力に応じて、制御部が電圧調整器を制御し、所望の設定電圧を出力させる配電電圧調整装置であって、タップ付変圧器を有して出力可変の電圧調整器と、電圧監視地点の通過電力に基づいて負荷中心点及び動作整定値を算出する整定値算出部と、動作整定値に基づいて負荷中心点の電圧を補償する電圧補償部と、動作整定値を遠隔設定可能な遠隔操作部と、を備え、制御部は、遠隔地にある電圧調整器に、負荷中心点と、そこの補償された電圧と、動作整定値と、に基づいてタップ付変圧器の負荷側に有る複数の負荷点又は発電点の電圧を推定させ、それに対応して設定電圧を増減させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統の電圧監視地点の電圧を検出するセンサの出力に応じて、制御部が電圧調整器を制御することにより、所望の設定電圧を出力させる配電電圧調整装置であって、
タップ付変圧器を有して出力可変の電圧調整器と、
前記電圧監視地点の通過電力に基づいて負荷中心点及び動作整定値を算出する整定値算出部と、
該整定値算出部が算出した前記動作整定値に基づいて負荷中心点の電圧を補償する電圧補償部と、
電圧調整器に対し前記動作整定値を遠隔設定可能な遠隔操作部と、
を備え、
前記制御部は、遠隔地にある前記電圧調整器に、前記負荷中心点と、そこの前記補償された電圧と、前記動作整定値と、に基づいて前記タップ付変圧器の負荷側に有る複数の負荷点又は複数の発電点の電圧を推定させ、それら推定電圧に対応して前記設定電圧を増減させる、
配電電圧調整装置。
【請求項2】
前記電圧調整器は、計測する負荷電力と発電電力が混在した通過電力を実負荷電力成分と発電電力成分に分離し、負荷点や発電点の電圧を推定する、
請求項1に記載の配電電圧調整装置。
【請求項3】
前記電圧調整器は、推定した前記負荷点や前記発電点の電圧が、規定の上下限電圧から逸脱しているか否かを判定して逸脱させないようにタップ動作する、
請求項1に記載の配電電圧調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、動作整定値と、系統構成データと、負荷モデルデータと、発電モデルデータと、の少なくとも何れかに基づいて、前記電圧調整器から前記負荷点までと、前記発電点までと、の少なくとも何れかの電圧降下値を求めるための係数を算出する、
請求項1に記載の配電電圧調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、算出した前記係数を前記電圧調整器へ転送する、
請求項4に記載の配電電圧調整装置。
【請求項6】
配電系統の電圧監視地点の電圧を検出するセンサの出力に応じて、制御部がタップ付変圧器のタップを調整し、前記電圧を所望の設定電圧にする配電電圧調整方法であって、
前記制御部は、
整定値算出部に、前記電圧監視地点の通過電力に基づいて負荷中心点及び動作整定値を算出させ、
前記整定値算出部が算出した前記動作整定値に基づいて、電圧補償部に前記負荷中心点の電圧を補償させ、
遠隔操作部によって、電圧調整器に前記動作整定値を遠隔設定させることも可能であり、
電圧調整器に、前記負荷中心点と、そこの前記補償された電圧と、前記動作整定値と、に基づいて前記タップ付変圧器の負荷側に有る複数の負荷点又は複数の発電点の電圧を推定させ、それら推定電圧に対応して前記設定電圧を増減させる、
配電電圧調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電電圧調整装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の配電系統では太陽光発電装置の系統連系が増大しているが、配電系統の電圧調整器は負荷側の電圧補償範囲において、電圧の下限箇所が最低電圧を下回らない条件と、太陽光発電(Solar Photovoltaics、以下、「PV」ともいう)連系点等で電圧の上限箇所が最大電圧を上回らない条件と、を両立させる必要がある。
【0003】
従来の電圧調整器の動作整定値推定手法は、自装置で計測した通過電力に基づいて負荷中心点の電圧を補償する動作整定値を推定する手法である。また、下記の特許文献1においては、計測通過電力から負荷電力と発電電力を分離する新たな提案がある。
【0004】
なお、特許文献1でも有効電力P、及び無効電力Qと記載のとおり、以下、それぞれをP,Qと略すことにより、観測点の通過P,Q、負荷P,Q及び発電P,Qと表記して簡略に説明する。類似の略記号として、電圧調整器自体が計測している通過Ir(有効電流)と通過Ii(無効電流)も用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-037017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の配電系統にはPVの系統連系は少なく電圧調整器の通過電力は負荷電力とほぼ等しかったため、通過電力を用いれば精度よく負荷中心点や動作整定値を算出することができた。しかし、PVの系統連系が増大することで、電圧調整器の通過電力には負荷電力のみでなく発電電力も混在するようになり、当該通過電力で推定した負荷中心点の精度が問題となっている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とする所は、変電所から遠隔距離にある配電線の分岐した末端の一方に分散型電源があり、他方に負荷があったとしても、分散型電源による発電出力の影響を最小限にし、両者に対して適切な配電電圧を供給できる配電系電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、配電系統の電圧監視地点の電圧を検出するセンサの出力に応じて、制御部が電圧調整器を制御することにより、所望の設定電圧を出力させる配電電圧調整装置であって、タップ付変圧器を有して出力可変の電圧調整器と、電圧監視地点の通過電力に基づいて負荷中心点及び動作整定値を算出する整定値算出部と、整定値算出部が算出した動作整定値に基づいて負荷中心点の電圧を補償する電圧補償部と、電圧調整器に対し動作整定値を遠隔設定可能な遠隔操作部と、を備え、制御部は、遠隔地にある電圧調整器に、負荷中心点と、そこの補償された電圧と、動作整定値と、に基づいてタップ付変圧器の負荷側に有る複数の負荷点又は複数の発電点の電圧を推定させ、それら推定電圧に対応して設定電圧を増減させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変電所から遠隔距離にある配電線の分岐した末端の一方に分散型電源があり、他方に負荷があったとしても、分散型電源による発電出力の影響を最小限にし、両者に対して適切な配電電圧を供給する配電電圧調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る配電電圧調整装置(以下、「本電圧調整装置」ともいう)を適用した配電系統を例示する配電系統図である。
図2図1の自動電圧調整器(以下、「電圧調整器」ともいう)のSVR通過電力を負荷電力と発電電力に分離する負荷/発電分離部の説明図である。
図3】負荷中心点を導出するためのグラフである。
図4】発電中心点を導出するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面について、本発明の一実施の形態について詳述する。図1は、本電圧調整装置1を適用した配電系統10を例示する配電系統図である。図1に示す配電系統10は、配電用変電所11と、ノード(母線)12と、それらノード12を接続する配電線路14と、電圧調整器30と、計測機能付き開閉器50と、制御部40と、ノード12に接続される負荷設備(以下、単に「負荷」ともいう)15及び太陽光発電装置PV16と、により主要部が構成されている。
【0012】
図1において、配電用変電所11のある左側をフィーダの送出し側とする一方、図1の右側をフィーダの末端側としている。制御部40は、不図示のメモリに格納されたプログラムを実行することにより、必要な機能部を形成すコンピュータである。そのコンピュータは、ワンチップマイコンで足りるが、通信機能と併せて、遠隔設備に備わるコンピュータの一部を兼用しても良い。
【0013】
本電圧調整装置1全体の構成は、電圧調整器30と制御部40を含むが、本実施の形態では、その代わりに、電圧調整器30自体に、配電系統10における制御部40の機能を内包し、電圧調整器30として一体化した構成であってもよい。
【0014】
何れにしても、各機能部の区別、及び配置は自由であり、その機能を意味する名称であれば良い。機能部として、後述する整定値算出部7、遠隔操作部8、電圧補償部9、及び本電圧調整装置1全体を統括制御する機能が形成される。また、これらを有効に機能させるため、メモリには、プログラム以外にも適宜データベースが形成されているほか、演算処理用の各種データが記憶再生可能である。
【0015】
配電用変電所11は、負荷時タップ切替変圧器(LRT:Load Ratio Control Transformer)を備えていてもよい。計測機能付き開閉器50は、電力を通電及び遮断する開閉器51と、電圧調整器30の通過電力を電圧、電流及び力率といった量により計測するセンサ17と、により構成される。
【0016】
図1において、一例を示した計測機能付き開閉器50は、配電系統10の各所に設置され、本発明でいう電圧監視地点50(共通符号)として機能する。電圧調整器30は、単巻変圧器及びタップチェンジャで構成されるSVR(Step Voltage Regulator)31と、電圧調整器30の通過電力P・を計測するセンサ17及びタップ制御器32を備える。
【0017】
電圧調整器30は、センサ17からの信号、制御部40からの動作整定値35を用いて、SVR31の二次側電圧(以下「タップ値」という)を操作している。なお、通過電力P・における・印は、例えば、V×I×cosθ=P・ベクトル量で交流の有効電力を示しており、図2及び図3に示した数式のベクトル量の文字の上に付した・印と同じ意味である。
【0018】
制御部40は、センサ17を含む各種の計測部20から適宜入力を得て、電圧調整器30に対して、その動作整定値35を与えている。なお、図1では、説明し易く簡素化した構成の配電系統10を例示しているが、実際には複数のフィーダの各所に電圧調整器30が適宜配設されており、制御部40、各電圧調整器30に対して、それぞれの設置場所における最適な動作整定値35を決定して与えている。
【0019】
電圧調整器30は、制御部40から動作整定値35として転送された負荷分の動作整定値35Zl・及び発電分の動作整定値35Zg・と、実負荷電流Il・及び発電電流Ig・と、を用いて負荷点Lの電圧Vl・=Il・×Zl・と、発電点Gの電圧Vg・=Ig・×Zg・と、を高精度に推定することが可能である。その推定のための動作整定値算出部7が制御部40に形成されている。
【0020】
図2で後述する負荷/発電分離部33は、電圧調整器30と制御部40と少なくとも何れかに有れば良く、配置はどこでも構わない。制御部40に保持する系統構成データや、負荷設備や発電設備の契約容量、又はモデルカーブデータ、負荷P,Q及び発電P,Qを基に、負荷点L又は発電点Gの電圧を算出する。系統構成データは、木構造の経路データ及びインピーダンスデータが例示列挙される。
【0021】
制御部40は、適宜プログラムを充実することによって、算出した負荷点L、発電点Gの電圧をデータベースに保存し、蓄積した電圧値から、需要ピーク断面による分析手法に基づいて、重負荷断面や軽負荷断面を検出することが可能である。このような重負荷断面や軽負荷断面の電圧を基に、電圧調整器30の動作整定値35も算出可能である。
【0022】
図2は、図1の電圧調整器30のSVR通過電力P・を、負荷電力Pl・と、発電電力Pg・と、に分離する負荷/発電分離部33の説明図である。図2に示す電圧調整器30は、単巻変圧器及びタップチェンジャで構成されるSVR31と、負荷/発電分離部33と、を備える。この電圧調整器30は、通過電力P・を負荷電力Pl・と発電電力Pg・に分離することが可能である。
【0023】
遠隔操作部8は、通信装置を有し、それによって、電圧調整器30のセンサデータである通過P,Qを制御部40に転送し、周期的に収集、及び保存させる。なお、負荷/発電分離部33は、特許文献1に開示されており、保存された電圧調整器30の通過P,Qを、制御部40の負荷電力Pl・と、発電電力Pg・と、に分離する。この負荷/発電分離部33は、通過P,Qを負荷P,Q及び発電P,Qに分離するための係数を電圧調整器30へ制御部40の通信装置を経由して転送するように構成されても良い。
【0024】
図2の構成の場合、例えば|Il・|=|Ig・|が与えられたとき、分岐元の通過電流I・は相殺されてゼロとなるため、分離せずに電圧を求めると負荷点L、発電点G何れも電圧降下も上昇もしない結果となる。分離をすることで、負荷点Lに対する電圧降下値ΔV、発電点Gに対する電圧上昇を的確に推定することが可能となる。
【0025】
図3は、負荷中心点5を導出するためのグラフ、図4は発電中心点6を導出するためのグラフである。図3及び図4は、横軸に配電線長3、縦軸にSVR電圧4をそれぞれ示す。まず、図3において、負荷中心点5を導出する場合、分離した負荷電力Pl・のみがSVRを通過することを考える。
【0026】
このとき、SVR31から末端側に対して電圧降下値ΔVが最大の断面のSVR地点2の電圧をVmaxl、電圧降下値ΔVが最小の断面のSVR地点2の電圧をVminlとする。Vmaxl,Vminl各々の電圧降下グラフの交点が負荷中心点5となり、当該負荷電力に対するSVR動作整定値35である基準電圧Vrefi、インピーダンスZl・=Rl・+jXl・を導出することができる。
【0027】
また、図4において、同様に発電中心点6についても、分離した負荷電力Pg・のみがSVRを通過することを考え、Vmaxg,Vming各々の電圧降下グラフの交点を発電中心点6として、基準電圧Vrefg、インピーダンスZg・=Rg・+jXg・を導出することができる。
【0028】
つぎに、本発明の特徴を簡単に説明する。本電圧調整装置1は、タップ付変圧器31の備わる電圧調整器30を制御部40が遠隔操作部8によりタップを遠隔制御するものであり、配電系統10に適切な動作整定値35を設定することが可能である。なお、遠隔操作部8は、制御部40の内外の何れでも良い。
【0029】
また、動作整定値35とは、電圧調整器30自体が計測している通過P(有効電力)と通過Q(無効電力)から電圧推定地点の電圧を算出するための係数(R,X)である。換言すると、動作整定値35は、電圧調整器30自体が計測している通過Ir(有効電流)と通過Ii(無効電流)から、電圧推定地点の電圧を算出するための係数(R,X)である。何れの整定値算出用の係数(R,X)であっても、単位変換などにより、適切な動作整定値35に変換することが可能である。
【0030】
従来、PV16の少ない時代、SVR31の通過電力が負荷電力と同じだったので、SVR31自体が通過P,Q又は通過Ir,Iiを計測して電圧推定値点の電圧を算出していた。しかし、その算出方法では、PV16の多い昨今において、逆潮流や潮流ゼロの場合もあるので、負荷中心点5や動作整定値35の算出精度が低下する。そこで、負荷/発電分離部33を用いて、算出精度を高めた。
【0031】
負荷/発電分離部33は、配電系統10の経路やインピーダンスZの情報を保持するデータベースを利用し、負荷点Lや発電点Gを算出する解析装置である。負荷/発電分離部33(図1及び図2)は、電圧調整器30により計測された通過電力P,Qを負荷電力と発電電力に分離する。
【0032】
また、電力事業者は、配電系統末端電圧101±6Vの目標が、昼夜で大きく逸脱する場合、PV16の系統連系を許容するか否かについて連系審査する。PV事業者のみならず、社会的要請として、PV16の系統連系を可能な限り許容すべく、連系審査を合格させることが望ましい。そのため、PV出力過剰ならば、末端電圧を下げるようにSVR31のタップ値を制御する。本電圧調整装置1は、逆潮流でも負荷中心点5を適切に移動することにより、SVR31を適切に制御できる。
【0033】
なお、本願出願時点の日本国内において、無数に存在する小規模PV等や、小出力の再生可能発電機の数に合わせて本電圧調整装置1を適応させる必要性は少なく、主要な分散型電源である少数の大規模なPV16のみに絞って本電圧調整装置1を適応させるだけでも、配電系統10の末端電圧を安定化できる。つまり、本電圧調整装置1は、現実的で効率良い適用結果が期待できる。
【0034】
さらに、本電圧調整装置1は、構成、作用及び効果について、つぎのように総括できる。
[1]図1に示す本電圧調整装置1は、制御部40がタップ付変圧器(SVR)31のタップを調整することにより、配電系統10の電圧監視地点50における電圧を設定電圧とするものである。電圧監視地点50は、配電系統10のいたるところに有ると良いが、一例として、計測機能付き開閉器50のセンサ17が挙げられる。
【0035】
本電圧調整装置1は、電圧調整器30と、それを制御する制御部40と、により主要構成される。制御部40は、動作整定値算出部7と、遠隔操作部8と、電圧補償部9と、を備えるが、これらの配置は、どこでも良く、電圧調整器30に内蔵されていても構わない。制御部40の各機能部は、電圧調整器30をつぎのように制御する。なお、電圧調整器30に内蔵されたセンサ17を電圧監視地点50としても構わない。
【0036】
動作整定値算出部7は、電圧監視地点50の通過電力P,Qに基づいて負荷中心点5(図3)及び動作整定値35を算出する。電圧補償部9は、動作整定値算出部40が算出した動作整定値35により、負荷中心点5の電圧を補償する。電圧調整器30は、SVR31の負荷側に有る複数の負荷点Lや複数の発電点Gの電圧を推定する。遠隔操作部8は、遠隔地からでも電圧調整器30に動作整定値35を設定できる。
【0037】
制御部40は、電圧調整器30に、SVR31の負荷側の複数の負荷点Lや複数の発電点Gの電圧を推定させる。制御部40は、動作整定値算出部7に、電圧監視地点(例えば、計測機能付き開閉器50)の通過電力P,Qに基づいて、負荷中心点5及び動作整定値35を算出させる。
【0038】
制御部40は、遠隔操作部8により、電圧調整器30に対して動作整定値35を遠隔設定する。動作整定値算出部7が算出した動作整定値35により、電圧補償部9が負荷中心点5の電圧を補償する。制御部40は、タップ制御部32に、タップを調整させ、配電系統10の電圧監視地点50における電圧を設定電圧とする。
【0039】
本電圧調整装置1によれば、電圧調整器30において計測された通過電力を負荷電力と発電電力に分離する機能により、発電点G及び負荷点Lに対する電圧Vg・Vl・の推定精度を向上させるとともに、電圧調整器30に対する適切な動作整定値35を遠隔制御可能で決定し易くする。
【0040】
その結果、本電圧調整装置1は、変電所11から遠隔距離にある配電線の分岐した末端の一方に分散型電源Gがあり、他方に負荷15があったとしても、分散型電源Gによる発電出力の影響を最小限にし、両者に対して適切な配電電圧を供給できる。
【0041】
[2]上記[1]の本電圧調整装置1において、電圧調整器30で計測する負荷電力と発電電力が混在した通過電力P・を、負荷/発電分離部33(図2)を用いて、実負荷電力成分Pl・と発電電力成分Pg・に分離し、負荷点Lや発電点Gの電圧を推定すると良い。PV16の多い昨今の配電系統10では逆潮流やゼロのこともあって、負荷中心点5や動作整定値35の算出精度が低下する。
【0042】
そこで、本電圧調整装置1は、負荷/発電分離部33を用いて、算出精度を高めた。そうすることにより、本電圧調整装置1は、変電所11から遠隔距離にある配電線の分岐した一方の末端に分散型電源Gとして大規模PV16があり、分岐した他方の末端に負荷15があった場合でも、PV16による発電出力の影響を最小限にし、両者に対して適切な配電電圧を供給できる。
【0043】
[3]上記[1]の本電圧調整装置1において、推定した負荷点Lや発電点Gの電圧が、規定の上下限電圧(例えば、配電系統末端電圧101±6V)から逸脱しているか否かを判定して逸脱させないようにタップ動作すると良い。そうすれば、推定した負荷点Lや発電点Gの電圧を、規定の上下限電圧に収められる。
【0044】
[4]図3及び図4に示すように、上記[1]の本電圧調整装置1において、制御部40は、動作整定値と、系統構成データと、負荷モデルデータと、発電モデルデータと、の少なくとも何れかに基づいて、電圧調整器30から負荷点Lまでと、電圧調整器30から発電点Gまでと、の少なくとも何れかの電圧降下値ΔVを求めるための係数(R,X)を算出すると良い。
【0045】
このような係数(R,X)を周期的に算出するか、平均的な算出値を制御部40のデータベースに格納しておけば、それを適宜用いて電圧降下値ΔVを容易かつ高精度に求められる。
【0046】
[5]上記[4]の本電圧調整装置1において、算出した係数(R,X)を電圧調整器30に転送すると良い。電圧調整器30は、転送された電圧降下値ΔVに対応する設定電圧を増減することにより、推定した負荷点Lや発電点Gの電圧を、規定の上下限電圧に収めるために調整する電圧値も容易かつ高精度に算出できる。
【0047】
本発明の実施形態に係る配電電圧調整方法(以下、「本方法」ともいう)は、つぎのように総括できる。
[6]本方法は、制御部40が、タップ付変圧器(SVR)31のタップを調整する配電電圧調整方法であり、制御部40は、つぎのように制御する。
【0048】
制御部40は、電圧調整器30に、SVR31の負荷側の複数の負荷点Lや複数の発電点Gの電圧を推定させる。制御部40は、動作整定値算出部7に、電圧監視地点(例えば、計測機能付き開閉器50)の通過電力P,Qに基づいて、負荷中心点5及び動作整定値35を算出させる。
【0049】
制御部40は、遠隔操作部8により、電圧調整器30に対して動作整定値35を遠隔設定する。動作整定値算出部7が算出した動作整定値35により、電圧補償部9が負荷中心点5の電圧を補償する。制御部40は、タップ制御部32に、タップを調整させ、配電系統10の電圧監視地点50における電圧を設定電圧とする。
【0050】
本方法によれば、電圧調整器30にて計測された通過電力を負荷電力と発電電力に分離する機能により、発電点G及び負荷点Lに対する電圧Vg・Vl・の推定精度を向上させるとともに、電圧調整器30に対する適切な動作整定値35を遠隔制御可能で決定し易くする。
【0051】
その結果、本電圧調整装置1は、変電所11から遠隔距離にある配電線の分岐した末端の一方に分散型電源Gがあり、他方に負荷15があったとしても、分散型電源Gによる発電出力の影響を最小限にし、両者に対して適切な配電電圧を供給できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本電圧調整装置1及び本方法は、配電系統10の電圧を調整する電圧調整器30(SVR,LRT)のほか、電圧調整の計画を支援するシステムにも広く適用される可能性がある。また、本電圧調整装置1及び本方法は、配電系統10における電圧調整器30の負荷側に有る複数の負荷点Lや複数の発電点Gを推定する制御部40と、その制御対象である電圧調整器30に関する技術とも言える。
【符号の説明】
【0053】
1…配電電圧調整装置(本電圧調整装置)、2…SVR地点、3…配電線長、4…SVR電圧、5…負荷中心点、6…発電中心点、7…整定値算出部、8…遠隔操作部、9…電圧補償部、10…配電系統、11…配電用変電所、12…ノード、14…配電線路、15…負荷、16…太陽光発電、17…センサ、30…電圧調整器、31…SVR(タップ付変圧器)、32…タップ制御器、33…負荷/発電分離部、35…動作整定値、40…制御部、50…計測機能付き開閉器、51…開閉器、Ig・…発電電流、Il・…実負荷電流、Ii…無効通過電流、Ir…有効通過電流、LRT…負荷時タップ切替変圧器、L…負荷点、G…発電点、P…有効通過電力、Pl・…負荷電力、Pg・…発電電力、Q…無効通過電力、Vg・…発電点Gの電圧、Vl・…負荷点Lの電圧、Vmaxl…電圧降下が最大となる断面のSVR地点2の電圧、Vminl…電圧降下が最小となる断面のSVR地点2の電圧、Vrefg…発電中心点6としての基準電圧、Vrefi…負荷電力に対するSVR整定値である基準電圧、Zg・…発電分の整定値、Zl・…負荷分の整定値、Zl・…インピーダンス、ΔV…電圧調整器30から負荷点L及び発電点Gまでの電圧降下値、(R,X)…電圧降下値ΔVを求めるための係数
図1
図2
図3
図4