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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177405
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20231207BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20231207BHJP
   H02S 40/20 20140101ALI20231207BHJP
   H01L 31/0236 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L31/04 560
B64F1/36
H02S40/20
H01L31/04 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090036
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(74)【代理人】
【識別番号】100130166
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】森本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】隅田 健一郎
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151BA05
5F151BA11
5F151DA01
5F151EA19
5F151HA07
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA13
5F151JA14
5F151JA30
5F251BA05
5F251BA11
5F251DA01
5F251EA19
5F251HA07
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
5F251JA13
5F251JA14
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】着陸態勢にある航空機の操縦士が太陽光の反射光に眩惑され難くする。
【解決手段】太陽光発電システムは、1つ以上の太陽電池モジュールを備える。各太陽電池モジュールは、受光面を有し、太陽電池セルと受光面側の透光性部材とを含む。第1仮想線は、滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延び、且つ滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している。仮想直円錐は、第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する。透光性部材は、1つ以上の太陽電池モジュールのうちの仮想直円錐内に位置している反射領域における太陽光の反射に応じて第2点に位置している眼球の網膜に入射する反射光の推定放射照度を、反射領域についての眼球における視角ωを用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et未満にする形態を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の架台と、
該1つ以上の架台に固定された1つ以上の太陽電池モジュールと、を備え、
該1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれは、太陽光を受光するための受光面を有するとともに、太陽電池セルと、該太陽電池セルを前記受光面側から保護している透光性部材と、を含み、
滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延びているとともに、前記滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している仮想の直線を第1仮想線とし、該第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ前記第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する仮想の直円錐を仮想直円錐とした場合において、
前記透光性部材は、前記1つ以上の太陽電池モジュールのうちの前記仮想直円錐内に位置している反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記第2点に位置している眼球の網膜に入射する反射光の推定放射照度を、前記反射領域についての前記眼球における視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et[W/m]よりも小さくする形態を有する、太陽光発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽光発電システムであって、
前記推定放射照度は、前記反射領域において前記太陽光が拡散反射を生じて前記網膜に入射する拡散反射光の放射照度の推定値、あるいは該推定値に基づいて算出される放射照度の計算値を含む、太陽光発電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の太陽光発電システムであって、
前記計算値は、前記推定値に係数を乗じる計算によって算出される、太陽光発電システム。
【請求項4】
請求項1に記載の太陽光発電システムであって、
前記反射領域を平坦な第1仮想鏡面と仮定すると、前記反射領域において前記太陽光の照射に応じた正反射光を前記第2点に向けて発する第1反射領域が存在しており、前記反射領域を、前記第1反射領域と、前記太陽光の照射に応じた拡散反射光を前記第2点に向けて発する前記第1反射領域以外の第2反射領域とに分けることが可能な場合において、
前記透光性部材は、前記第1反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記網膜に入射する前記正反射光の第1推定放射照度を、前記第1反射領域についての前記眼球における第1の視角ω1[rad]を用いたEt1=0.359/ω11.77の式で算出される第1臨界放射照度Et1[W/m]よりも小さくするとともに、前記第2反射領域における前記太陽光の拡散反射に応じて前記網膜に入射する前記拡散反射光の第2推定放射照度を、前記第2反射領域についての前記眼球における第2の視角ω2[rad]を用いたEt2=0.359/ω21.77の式で算出される第2臨界放射照度Et2[W/m]よりも小さくする形態を有する、太陽光発電システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1つの請求項に記載の太陽光発電システムであって、
前記1つ以上の太陽電池モジュールは、前記受光面が凹凸を有する第1太陽電池モジュール、を含む、太陽光発電システム。
【請求項6】
請求項5に記載の太陽光発電システムであって、
前記受光面は、水平面に対して傾斜している第1方向および該第1方向に対して垂直であり且つ前記水平面に沿った第2方向のそれぞれに沿って位置しており、
前記第1太陽電池モジュールにおいて、前記透光性部材は、前記受光面側において、前記1方向および前記第2方向のそれぞれに沿った平面状の基底面と、前記第1方向および前記第2方向の双方に垂直な第3方向に前記基底面よりも突出している複数の凸部と、を有する、太陽光発電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の太陽光発電システムであって、
前記複数の凸部は、前記第1方向において第1ピッチで規則的に並んでいるとともに、前記第2方向において前記第1ピッチよりも小さな第2ピッチで規則的に並んでいる、太陽光発電システム。
【請求項8】
請求項6に記載の太陽光発電システムであって、
前記複数の凸部は、前記第1方向に沿って延びており且つ前記第3方向において第1高さを有する第1凸部と、前記第2方向に沿って延びており且つ前記第3方向において前記第1高さよりも小さな第2高さを有する第2凸部と、を含む、太陽光発電システム。
【請求項9】
請求項6に記載の太陽光発電システムであって、
前記複数の凸部は、仮想平面および前記受光面に沿った第4方向において並んでいる2つ以上の凸部を含み、
前記仮想平面は、前記第2点と前記反射領域とを結ぶ第2仮想線に沿って位置しており且つ前記第3方向に沿って位置しており、
前記2つ以上の凸部は、前記第4方向において隣り合って並んでいる第3凸部および第4凸部を含み、
前記第2仮想線は、前記基底面のうちの前記第4方向において前記第3凸部と前記第4凸部との間の中央に位置している中央部分を通る場合に、前記第4凸部と交差している、太陽光発電システム。
【請求項10】
請求項9に記載の太陽光発電システムであって、
前記第4方向において前記2つ以上の凸部が並んでいるピッチPt1と、前記基底面を基準とする前記第4凸部の高さH1bと、前記基底面の法線と前記第2仮想線とが成す角度θ3とが、Pt1≦2×H1b×tanθ3の関係式を満たしている、太陽光発電システム。
【請求項11】
請求項5に記載の太陽光発電システムであって、
前記1つ以上の太陽電池モジュールは、前記第1太陽電池モジュールと、前記受光面が平坦である第2太陽電池モジュールと、を含み、
前記1つ以上の太陽電池モジュールは、該1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれについて前記受光面に沿った平坦な第2仮想鏡面を設定し且つ太陽が通年の日周運動を行う場合に、前記第1仮想線に交差する前記太陽光の正反射光を生じ得る前記第2仮想鏡面に沿った前記受光面をそれぞれ有する第1の個数の太陽電池モジュールと、前記第1仮想線に交差する前記太陽光の正反射光を生じ得ない前記第2仮想鏡面に沿った前記受光面をそれぞれ有する第2の個数の太陽電池モジュールと、を含み、
前記第1の個数の太陽電池モジュールのそれぞれは、前記第1太陽電池モジュールであり、前記第2の個数の太陽電池モジュールのそれぞれは、前記第1太陽電池モジュールまたは前記第2太陽電池モジュールである、太陽光発電システム。
【請求項12】
1つ以上の架台と、
該1つ以上の架台に固定された1つ以上の太陽電池モジュールと、を備え、
該1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれは、太陽光を受光するための受光面を有するとともに、太陽電池セルと、該太陽電池セルを前記受光面側から保護している透光性部材と、を含み、
滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延びているとともに、前記滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している仮想の直線を第1仮想線とし、該第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ前記第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する仮想の直円錐を仮想直円錐とした場合において、
前記透光性部材は、前記1つ以上の太陽電池モジュールのうちの前記仮想直円錐内に位置している反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記第2点に位置している前記航空機の操縦室内の視点に入射する反射光の推定放射照度を、前記反射領域についての前記視点における視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et[W/m]よりも小さくする形態を有する、太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋上などに太陽光発電システムが設置されている空港がある(例えば、非特許文献1の記載を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Jason A. Rogers, Clifford K. Ho, Andrew Mead, Angel Millan, Melissa Beben, Gena Drechsler, "Evaluation of Glare as a Hazard for General Aviation Pilots on Final Approach", Aerospace Medicine Technical Reports, FAA Office of Aerospace Medicine Civil Aerospace Medical Institute, Report No: DOT/FAA/AM-15/12, July 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電システムについては、着陸態勢にある航空機の操縦士が太陽光の反射光に眩惑され難くする点で改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
太陽光発電システムが開示される。
【0006】
太陽光発電システムの一態様は、1つ以上の架台と、該1つ以上の架台に固定された1つ以上の太陽電池モジュールと、を備えている。前記1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれは、太陽光を受光するための受光面を有するとともに、太陽電池セルと、該太陽電池セルを前記受光面側から保護している透光性部材と、を含む。滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延びているとともに、前記滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している仮想の直線を第1仮想線とし、該第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ前記第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する仮想の直円錐を仮想直円錐とした場合において、前記透光性部材は、前記1つ以上の太陽電池モジュールのうちの前記仮想直円錐内に位置している反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記第2点に位置している眼球の網膜に入射する反射光の推定放射照度を、前記反射領域についての前記眼球における視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et[W/m]よりも小さくする形態を有する。
【0007】
太陽光発電システムの一態様は、1つ以上の架台と、該1つ以上の架台に固定された1つ以上の太陽電池モジュールと、を備えている。前記1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれは、太陽光を受光するための受光面を有するとともに、太陽電池セルと、該太陽電池セルを前記受光面側から保護している透光性部材と、を含む。滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延びているとともに、前記滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している仮想の直線を第1仮想線とし、該第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ前記第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する仮想の直円錐を仮想直円錐とした場合において、前記透光性部材は、前記1つ以上の太陽電池モジュールのうちの前記仮想直円錐内に位置している反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記第2点に位置している前記航空機の操縦席内の視点に入射する反射光の推定放射照度を、前記反射領域についての前記視点における視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et[W/m]よりも小さくする形態を有する。
【発明の効果】
【0008】
着陸態勢にある航空機の操縦士が太陽光発電システムによる太陽光の反射光に眩惑され難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る空港太陽光発電システムの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、太陽電池アレイの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、太陽電池モジュールの受光面側の外観の一例を示す平面図である。
図4図4は、図3の太陽電池モジュールの位置IV-IVにおける仮想の断面の一例を示す断面図である。
図5図5は、空港太陽光発電システムで太陽光の照射に応じた正反射によって生じた反射光が操縦士の眼球に入射される様子を模式的に示すイメージ図である。
図6図6は、空港太陽光発電システムで太陽光の照射に応じた拡散反射によって生じた反射光が操縦士の眼球に入射される様子を模式的に示すイメージ図である。
図7図7は、太陽光を反射する反射領域が操縦士の眼球の網膜に投影される様子を模式的に示すイメージ図である。
図8図8は、反射領域で太陽光の照射に応じて完全拡散反射および非均等拡散反射がそれぞれ生じる場合における反射光の強さの分布を模式的に示すイメージ図である。
図9図9は、反射領域で太陽光の照射に応じて完全拡散反射が生じる場合における反射光の強さの分布を模式的に示すイメージ図である。
図10図10は、反射領域で太陽光の照射に応じて非均等拡散反射が生じる場合における光沢に係る反射光の強さの分布を模式的に示すイメージ図である。
図11図11は、反射領域で太陽光の照射に応じて完全拡散反射が生じる場合における反射光の強さの分布と、反射領域で太陽光の照射に応じて非均等拡散反射が生じる場合における光沢に係る反射光の強さの分布とを合成した様子を模式的に示すイメージ図である。
図12図12は、第1形態を有する透光性部材の一部の外観の一例を模式的に示す平面図である。
図13図13は、図12の透光性部材の位置XIII-VIIIにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図14図14は、図12の透光性部材の位置XIV-XIVにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図15図15は、第2形態を有する透光性部材の一部の外観の一例を模式的に示す平面図である。
図16図16は、図15の透光性部材の位置XVI-XVIにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図17図17は、図15の透光性部材の位置XVII-XVIIにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図18図18は、第3形態を有する透光性部材の一部の外観の一例を模式的に示す平面図である。
図19図19は、図18の透光性部材の位置XIX-XIXにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図20図20は、図18の透光性部材の位置XX-XXにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図21図21は、太陽高度が大きい時間帯に太陽光の照射に応じて太陽電池モジュールの受光面で生じる正反射光の進行方向の一例を模式的に示す側面図である。
図22図22は、太陽高度が小さい時間帯に太陽光の照射に応じて太陽電池モジュールの受光面で生じる正反射光の進行方向の一例を模式的に示す斜視図である。
図23図23は、透光性部材の一部の外観の一例を模式的に示す平面図である。
図24図24は、図23の透光性部材の位置XXIV-XXIVにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図25図25は、図23の透光性部材の位置XXV-XXVにおける仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図26図26は、透光性部材の仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図27図27は、透光性部材の仮想の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図28図28は、別の一実施形態に係る太陽電池アレイの構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
空港においては、建物の屋上などに固定された複数の太陽電池パネルを有する太陽光発電システムが設置されている場合がある。また、滑走路の周囲にある土地(空港用地ともいう)を活かすための規制の緩和によって、この空港用地に太陽光発電システムを設置することが考えられる。
【0011】
この太陽光発電システムでは、各太陽電池パネルの受光面が太陽光を反射し得る。このため、例えば、太陽光発電システムが、滑走路への着陸直前に滑走路に向かって航空機が飛行する飛行経路に向けて、太陽光を反射する場面が考えられる。この場面では、航空機の操縦士が太陽光の反射光に眩惑されて、操縦士の計器を見る能力および航空機を操縦する能力を低下させるおそれがないとは言えない。
【0012】
ところで、例えば、着陸態勢にある航空機の操縦士を基準として、操縦士の視線の方向からの角度のずれが所定の角度以内の範囲に太陽光に応じた反射光の発生源である太陽光発電システムが存在していれば、操縦士による計器の認識能力および航空機の操縦能力が低下する可能性がある。例えば、上記の非特許文献1の記載によれば、所定の角度として、25度が考えられる。
【0013】
よって、太陽光発電システムについては、着陸態勢にある航空機の操縦士が太陽光の反射光に眩惑され難くする点で改善の余地がある。
【0014】
そこで、本開示の発明者は、太陽光発電システムについて、着陸態勢にある航空機の操縦士が太陽光の反射光に眩惑され難くすることができる技術を創出した。
【0015】
これについて、以下、各種実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面においては、同一または類似の構成および機能を有する部分に同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面では、各種構成などを模式的に示している。図1図2図22および図28のそれぞれには、東西南北の四方位が付されている。四方位は、東(East)の頭文字であるE、西(West)の頭文字であるW、南(South)の頭文字であるS、および北(North)の頭文字であるNで示されている。図21には、西南北の三方位が付されている。三方位は、西(West)の頭文字であるW、南(South)の頭文字であるS、および北(North)の頭文字であるNで示されている。図2から図4図8から図25および図28のそれぞれには、右手系のXYZ座標系が付されている。このXYZ座標系では、太陽電池モジュール12の受光面12sが傾斜している方向(第1方向ともいう)が-Y方向とされ、-Y方向に対して垂直であり且つ受光面12sに沿った方向(第2方向ともいう)が+X方向とされ、+X方向および+Y方向の両方に直交する受光面12sの法線方向が+Z方向とされている。図5図6図26および図27には、上記XYZ座標系のZ軸が付されている。
【0016】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「線上に位置」「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「垂直」または「中心」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表す場合がある。等しい状態を示す表現(例えば、「同一」「等しい」または「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表す場合がる。形状を示す表現(例えば、「矩形状」「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば、凹凸および面取りなどを有する形状も表す場合がある。1つの構成要素を「備える」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「~の上」および「~の下」とは、特に断らない限り、2つの要素が接している場合のほか、2つの要素が離れている態様も含む場合がある。
【0017】
<1.空港太陽光発電システムの概要>
第1実施形態に係る空港太陽光発電システム100について、図1から図4を参照しつつ説明する。空港太陽光発電システム100は、空港200の敷地内における滑走路2の周囲に設置された太陽光発電システムである。
【0018】
図1で示されるように、空港太陽光発電システム100は、1つ以上の架台11と、この1つ以上の架台11に固定された1つ以上の太陽電池モジュール12と、を備えている。換言すれば、空港太陽光発電システム100は、1つ以上の架台11と1つ以上の太陽電池モジュール12とを備えている部分である太陽電池アレイ1を含む。
【0019】
図1および図2の例では、空港太陽光発電システム100は、複数の架台11と、この複数の架台11に固定された複数の太陽電池モジュール12と、を備えている。より具体的には、東西方向に沿って並んでいる21枚の太陽電池モジュール12によってそれぞれ構成された3列の太陽電池モジュール12の列が、南北方向に並んでいる。換言すれば、63枚の太陽電池モジュール12がマトリックス状に並んでいる。1つ以上の架台11および1つ以上の太陽電池モジュール12のそれぞれについての数および配列は、図1および図2の例の数および配列に限られず、種々の数および配列であってもよい。例えば、空港太陽光発電システム100を構成している架台11の数は、1つであってもよいし、2つ以上の任意の数であってもよい。空港太陽光発電システム100を構成している太陽電池モジュール12の数は、1つであってもよいし、2つ以上の任意の数であってもよい。
【0020】
架台11は、空港200の敷地内における滑走路2の周囲の土地(空港用地)もしくは建造物に太陽電池モジュール12を固定している。滑走路2の長手方向は、例えば、東西方向に沿った方向である。図1および図2の例では、滑走路2を囲む土地(着陸帯ともいう)7に架台11が位置している。この場合には、架台11は、太陽電池モジュール12を着陸帯7に固定している。架台11には、例えば、柱および梁が組み合わされた構造(架構構造ともいう)が適用される。例えば、1つの架台11に1つの太陽電池モジュール12が固定されていてもよいし、1つの架台11に2つ以上の太陽電池モジュール12が固定されていてもよいし、2つ以上の架台11に1つの太陽電池モジュール12が固定されていてもよい。
【0021】
図3および図4で示されるように、例えば、1つ以上の太陽電池モジュール12のそれぞれは、太陽電池セル123cと、この太陽電池セル123cを受光面12s側から保護している透光性部材121と、を有する。受光面12sは、太陽電池モジュール12のうちの太陽光SL0を受光するための面である。別の観点から言えば、例えば、太陽電池モジュール12のうちの上方もしくは斜め上方を向いている面が受光面12sである。
【0022】
各太陽電池モジュール12は、例えば、太陽電池パネル12pと、この太陽電池パネル12pの外縁部を補強しているフレーム12fと、を有する。
【0023】
太陽電池パネル12pは、主として光を受光する受光面12sを構成している第1面F1と、この第1面F1の逆側に位置している第2面F2と、を有する。太陽電池パネル12pは、例えば、第1面F1側から順に、第1保護層としての透光性部材121と、第1封止層122と、光電変換部123と、第2封止層124と、第2保護層としての裏面保護部材125と、端子ボックス12bと、を有する。
【0024】
透光性部材121は、例えば、光電変換部123の第1面F1側に位置している。ここでは、例えば、透光性部材121の光電変換部123とは逆側の表面(第1表面ともいう)が第1面F1を構成している。透光性部材121は、例えば、光電変換部123を保護する役割と、光電変換部123を封止する役割と、を有する。透光性部材121は、例えば、特定範囲の波長の光に対する透光性を有する。特定範囲の波長は、例えば、光電変換部123が光電変換し得る光の波長を含む。特定範囲の波長に、太陽光SL0のうちの照射強度の高い光の波長が含まれていれば、太陽電池モジュール12の光電変換効率が向上し得る。透光性部材121の素材として、例えば、ガラスなどが採用され得る。透光性部材121の素材は、これに限られず、例えば、アクリルもしくはポリカーボネートなどの樹脂であってもよいし、他の透光性を有する素材であってもよい。ガラスには、例えば、厚さが2ミリメートル(mm)から5mm程度の板状の白板ガラス、強化ガラスまたは熱線反射ガラスなどの光透過率の高い材料が適用される。ガラスの厚さおよび種類は、これに限られず、種々の厚さおよび種々の種類のガラスであってもよい。
【0025】
第1封止層122は、透光性部材121と光電変換部123との間に位置している。第2封止層124は、光電変換部123と裏面保護部材125との間に位置している。換言すれば、第1封止層122と第2封止層124とが、光電変換部123を覆うように、透光性部材121と裏面保護部材125との間に充填された状態で位置している。第1封止層122および第2封止層124は、例えば、光電変換部123を保持する役割と、光電変換部123を封止する役割と、を有する。第1封止層122は、上述した特定範囲の波長の光に対する透光性を有する。第2封止層124は、上述した特定範囲の波長の光に対する透光性を有していてもよいし、この透光性を有していなくてもよい。第1封止層122および第2封止層124の素材の例は、熱硬化性樹脂など含む。この熱硬化性樹脂の例は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene-Vinyl Acetate)またはポリビニルブチラール(PVB:Poly-Vinyl Butyral)を主成分とする樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、架橋剤を含有していてもよい。ここで、主成分とは、含有される比率(含有率ともいう)が最も大きい(高い)成分のことを意味する。
【0026】
光電変換部123は、例えば、複数の太陽電池セル(太陽電池素子ともいう)123cと、複数の第1配線材W1と、複数の第2配線材W2と、を含む。図3および図4の例では、複数の太陽電池セル123cが2次元的に並んでいる。より具体的には、光電変換部123は、複数の太陽電池ストリングS1を含む。図3および図4では、光電変換部123が6つの太陽電池ストリングS1を含む一例が挙げられているが、これに限られない。例えば、光電変換部123は、5つ以下または7つ以上の太陽電池ストリングS1を含んでいてもよい。各太陽電池ストリングS1は、複数の太陽電池セル123cと、複数の第1配線材W1と、を含む。図3および図4では、各太陽電池ストリングS1が8個の太陽電池セル123cを含む一例が挙げられているが、これに限られない。例えば、各太陽電池ストリングS1は、7個以下または9個以上の太陽電池セル123cを含んでいてもよい。複数の第1配線材W1は、例えば、複数の太陽電池セル123cのうちの相互に隣り合う太陽電池セル123cの間をそれぞれ電気的に接続している。複数の第2配線材W2は、複数の太陽電池ストリングS1のうちの相互に隣り合う太陽電池ストリングS1の間をそれぞれ電気的に接続している。
【0027】
裏面保護部材125は、例えば、光電変換部123の第2面F2側に位置している。ここでは、例えば、裏面保護部材125の光電変換部123とは逆側の表面が第2面F2を構成している。裏面保護部材125は、例えば、光電変換部123を保護する役割と、光電変換部123を封止する役割と、を有する。裏面保護部材125は、例えば、上述した特定範囲の波長の光に対する透光性を有していてもよいし、この透光性を有していなくてもよい。裏面保護部材125には、例えば、柔軟性を有するシート状の部材(シート部材ともいう)または板状の部材などが適用される。シート部材の素材には、例えば、樹脂などの種々の素材が適用される。板状の部材の素材には、例えば、ガラスまたはアクリルもしくはポリカーボネートなどの樹脂などの種々の素材が適用される。
【0028】
端子ボックス12bは、例えば、光電変換部123で得られた出力を外部に取り出すことができる。端子ボックス12bは、例えば、第2面F2上に位置している。端子ボックス12bは、例えば、シリコンシーラントなどの樹脂が用いられて、第2面F2に固定され得る。端子ボックス12bは、太陽電池パネル12pの別の場所に位置していてもよい。端子ボックス12bは、例えば、箱体と、端子板と、ケーブルと、を有する。箱体の素材には、例えば、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)またはポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO樹脂)などの種々の素材が適用され得る。端子板は、箱体内に位置しており、光電変換部123の第2配線材W2が接続されている。ケーブルは、箱体の外部へ電力を導出することができる。
【0029】
フレーム12fは、太陽電池パネル12pを保持する機能を有する。フレーム12fは、例えば、太陽電池パネル12pの外周部に沿って位置している。フレーム12fは、例えば、太陽電池パネル12pの外周部における第1面F1に沿った位置から第2面F2に沿った位置に至るU字状の断面構造を有する部分を含む。フレーム12fは、例えば、アルミニウムの押し出し成形などで作製され得る。
【0030】
滑走路2は、航空機3の離着陸時の滑走に用いる、空港200内に設けられた直線状の舗装路である。図1で示されるように、滑走路2は、滑走路中心線標識2cおよび目標点標識2aなどの各種標識を有する。滑走路中心線標識2cは、滑走路2の幅方向の中心を示しているとともに、長手方向に沿って位置している中心線を示す標識である。滑走路中心線標識2cは、滑走路2の中心線に沿った破線で描かれている。目標点標識2aは、滑走路2上における航空機3のタイヤを接地させる目標点(着陸目標点ともいう)を示す標識である。目標点標識2aは、滑走路2の中心線を挟む2つの平行な四角形のマークを有する。図1では、図面の複雑化を避ける目的で、滑走路2の一部の記載が省略されており、滑走路2の各種標識および照明設備なども適宜省略されている。
【0031】
<2.透光性部材の形態>
透光性部材121は、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難くなる形態を有する。
【0032】
ここで、例えば、図1で示されるように、滑走路2への着陸直前に滑走路2に向かって航空機3が飛行する経路(着陸飛行経路ともいう)に沿って延びている仮想の直線を第1仮想線L1とする。着陸飛行経路は、滑走路2の目標点標識2aの間の点(第1点ともいう)P1に向かって航空機が飛行する経路である。滑走路2は、鉛直方向に垂直な面である水平面に沿って位置している。目標点標識2aは、滑走路中心線標識2cを挟む2つの四角形のマークを有する。第1点P1は、2つの四角形のマークの間に位置している。着陸飛行経路は、水平面に対して所定の角度(第1角度ともいう)θ1の傾斜角を成している。第1角度θ1は、国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization:ICAO)によって3度もしくは3度前後の角度に設定されている。3度前後の角度は、例えば、2.5度から3.5度の範囲にある角度を含む。また、第1仮想線L1は、滑走路2の滑走路中心線標識2cを通る仮想の鉛直面(仮想鉛直面ともいう)Vp1に沿って位置している。仮想鉛直面Vp1は、滑走路中心線標識2c上を通り且つ水平面に垂直な仮想的な面である。換言すれば、第1仮想線L1は、仮想鉛直面Vp1に沿って位置しているとともに、水平面に沿って位置している滑走路2に対して3度もしくは3度前後の傾斜角を成している。第1仮想線L1は、滑走路2から斜め下方に直線状に延びている部分を含む。換言すれば、第1仮想線L1は、着陸飛行経路を滑走路2の斜め下方に直線状に延ばした部分を含む。図1では、仮想鉛直面Vp1の一例の外縁が一点鎖線で描かれている。
【0033】
また、例えば、図1で示されるように、第1仮想線L1上のある一点を第2点P2とする。第2点P2は、第1仮想線L1上の任意の点であればよい。航空機3が滑走路2に対して着陸態勢にある場合には、第2点P2は、この航空機3の操縦士5の頭部の位置を示し得る。より具体的には、第2点P2は、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eの位置を示し得る。
【0034】
また、例えば、図1で示されるように、第2点P2を頂点として有するとともに、第1仮想線L1に沿って延びている中心線(回転軸ともいう)Lc1と所定の角度(第2角度ともいう)θ2の頂角とを有する仮想の直円錐を、仮想直円錐Cn1とする。ここでは、中心線Lc1は、第2点P2から滑走路2までの線分に限られず、滑走路2から斜め下方に直線状に延びている部分を含む。図1では、仮想直円錐Cn1の一例が破線で描かれている。
【0035】
直円錐は、真円の底面と、この底面の中心と頂点とを結び且つ底面に垂直である中心線(回転軸)とを有する円錐である。円錐の頂角は、中心線(回転軸)を通る平面で直円錐を切断した際にできる二等辺三角形の頂角である。この頂角の角度は、直円錐において中心線(回転軸)と母線とが成す角の角度の2倍であり、直円錐の任意の2本の母線が成す角における最大の角度でもある。
【0036】
第2角度θ2は、例えば、上記の非特許文献1の記載に基づいて、50度に設定される。上記の非特許文献1には、例えば、滑走路への着陸態勢にある航空機の操縦士を基準として、航空機の進行方向に沿った操縦士の視線の方向からの角度のずれが25度以内の範囲に太陽光に由来する反射光の発生源である太陽電池パネルが存在していれば、操縦士による計器の認識能力および航空機の操縦能力が低下する可能性があることが記載されている。このため、仮想直円錐Cn1は、空港太陽光発電システム100を構成している1つ以上の太陽電池モジュール12のうち、滑走路2への着陸態勢にある航空機3の操縦士5が眩惑され得る太陽光SL0に由来する反射光の発生源となり得る領域を規定する。換言すれば、1つ以上の太陽電池モジュール12のうちの仮想直円錐Cn1内に位置している領域(反射領域ともいう)A1は、滑走路2への着陸態勢にある航空機3の操縦士5が眩惑され得る太陽光SL0に由来する反射光の発生源となり得る。
【0037】
反射領域A1は、例えば、1つ以上の太陽電池モジュール12のそれぞれの受光面12sのうちの仮想直円錐Cn1内に位置している領域を含む。この場合には、受光面12sは、フレーム12fの第1面F1に沿って位置している部分のうちの太陽光SL0が照射される面(上面ともいう)を含んでもよい。反射領域A1は、例えば、1つ以上の太陽電池モジュール12のうちの受光面12s以外の部分を含んでいてもよい。この受光面12s以外の部分は、例えば、透光性部材121と第1封止層122との界面、第1封止層122と第2封止層124との界面、光電変換部123のうちの透光性部材121側の面、および裏面保護部材125のうちの第2封止層124側の面を含んでいてもよい。
【0038】
例えば、図5で示されるように、1つ以上の太陽電池モジュール12の反射領域A1では、太陽9からの太陽光SL0の照射に応じて、照射された太陽光SL0の少なくとも一部が正反射を生じる場合がある。この場合には、例えば、正反射で生じた光(正反射光ともいう)RL1が、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eに入射されることがある。
【0039】
また、例えば、図6で示されるように、1つ以上の太陽電池モジュール12の反射領域A1では、太陽9からの太陽光SL0の照射に応じて、照射された太陽光SL0の少なくとも一部が拡散反射を生じる場合がある。この場合には、例えば、拡散反射で生じた光(拡散反射光ともいう)DL1が、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eに入射されることがある。
【0040】
図5および図6では、反射領域A1が便宜的に楕円状の領域で示されている。また、図5および図6では、太陽光SL0の光路が細い二点鎖線で描かれている。また、図5および図6では、反射領域A1の法線12nが一点鎖線で描かれた直線で示されている。図5では、反射領域A1のうちの第1反射領域A11の外縁が一点鎖線で描かれた楕円で示されている。第1反射領域A11は、反射領域A1のうちの太陽光SL0に応じた正反射光を滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eに向けて発する領域である。換言すれば、第1反射領域A11は、反射領域A1のうちの太陽光SL0に応じた正反射光を第2点P2に向けて発し得る。また、図5では、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eに向かう正反射光RL1の光路が細い二点鎖線で描かれている。図6では、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eに向かう拡散反射光DL1の光路が細い二点鎖線で描かれている。図5の例では、反射領域A1は、鏡面反射のみを生じる鏡面状の領域(鏡面領域ともいう)および拡散反射のみを生じる領域(完全拡散反射領域ともいう)の何れでもない場合が考えられる。換言すると、反射領域A1は、一般的な反射面のように、正反射を生じる方向(正反射方向ともいう)へ反射する反射光の明るさが大きく、正反射方向から外れるに従って反射光の明るさが小さくなる反射面(非均等拡散反射面ともいう)である場合が考えられる。この場合には、反射領域A1のうちの第1反射領域A11以外の領域(第2反射領域ともいう)A12は、太陽光SL0に応じた拡散反射光を第2点P2に向けて発し得る領域として機能する。
【0041】
ここで、図7で示されるように、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eにおける反射領域A1についての視角をω[単位はラジアン(rad)]とする。視角ωは、観測者としての操縦士5の眼球5eに投影される視対象としての反射領域A1がなす角度である。別の観点から言えば、視角ωは、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eの網膜5e5に投影される視対象としての反射領域A1の両端をそれぞれ通るとともに眼球5まで延びる2直線が成す角度に相当する。
【0042】
図7には、眼球5eの構造が模式的に示されている。眼球5eは、角膜5e1、虹彩5e2、レンズとしての水晶体5e3、瞳孔5e4および網膜5e5を有する。図7には、反射領域A1から眼球5eまでの距離r、眼球5eの焦点距離f、反射領域A1から網膜5e5に至る光路の節点5e6、観測者としての操縦士5から見た反射領域A1の幅ds、網膜5e5において反射領域A1からの反射光が投影される領域の幅drおよび瞳孔の直径(瞳孔径ともいう)dpが示されている。幅dsは、観測者としての操縦士5の視線に対して直交する面に投影した反射領域A1の幅である。幅dsは、例えば、観測者としての操縦士5の視線に対して直交する面に投影した反射領域A1が四角形状である場合の反射領域A1の幅であってもよいし、観測者としての操縦士5の視線に対して直交する面に投影した反射領域A1が真円形状である場合の反射領域A1の幅であってもよい。
【0043】
ここでは、視角ωは、例えば、観測者としての操縦士5から見た反射領域A1の幅dsと、反射領域A1から観測者の眼球5eまでの距離rとを用いて算出され得る。例えば、視角ωは、幅dsと距離rと逆三角関数のアークタンジェント(arctan)とを用いたω=2×arctan{ds/(2×r)}の式によって算出され得る。また、例えば、視対象である反射領域A1の幅dsに対して、観測者から反射領域A1までの距離rが明らかに大きく、視角ωが小さな場合には、視角ωは、幅dsを距離rで除することで近似的に算出され得る。反射領域A1が、観測者の視線に対して傾斜している場合には、距離rには、反射領域A1から眼球5eまでの距離の平均値などが適用される。反射領域A1の幅dsについては、例えば、種々の計算によって算出されてもよい。例えば、反射領域A1が2つ以上の太陽電池モジュール12によって構成されている場合には、反射領域A1は、近似的に2つ以上の太陽電池モジュール12の間に位置している領域を含む領域とされてもよい。また、例えば、反射領域A1が2つ以上の太陽電池モジュール12によって構成されている場合に、反射領域A1は、2つ以上の太陽電池モジュール12の間に位置している領域を除いた領域とされてもよい。この場合には、例えば、反射領域A1の幅dsは、反射領域A1から2つ以上の太陽電池モジュール12の間に位置している領域を除いた一塊の領域に換算された後の操縦士5から見た一塊の領域の幅として算出されてもよい。
【0044】
また、ここで、例えば、反射領域A1における太陽光SL0の反射に応じて第2点P2に位置している眼球5eの網膜5e5に入射する反射光の放射照度の推定値(推定放射照度ともいう)をE1とする。
【0045】
この場合には、透光性部材121は、推定放射照度E1を、視角ω[rad]を用いた式(1)で算出される放射照度(臨界放射照度ともいう)Et[単位はワット毎平方メートル(W/m)]よりも小さくする形態を有する。
【0046】
Et=0.359/ω1.77 ・・・(1)。
【0047】
式(1)で規定される臨界放射照度Etは、非特許文献2(Clifford K. Ho, Cheryl M. Ghanbari, Richard B. Diver, "Methodology to Assess Potential Glint and Glare Hazards From Concentrating Solar Power Plants: Analytical Models and Experimental Validation", Journal of Solar Energy Engineering, AUGUST 2011, Vol. 133 / 031021-1 to 031021-9)におけるFig.2の緑色の線を規定するEq.(5)に対応する。この非特許文献2では、光源から網膜に入射される光の放射照度が、Eq.(5)で算出される放射照度を下回れば、操縦士がフラッシュによる一時的な残像(一時的なフラッシュ失明ともいう)を生じる可能性が低いとされている。
【0048】
このため、例えば、透光性部材121が、推定放射照度E1を式(1)で算出される臨界放射照度Et未満とする形態を有していれば、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0049】
<2-1.推定放射照度の算出方法および評価法>
推定放射照度E1は、例えば、種々の算出方法によって算出され得る。ここで、推定放射照度E1の算出方法の一例および推定放射照度E1の算出結果を用いた評価法の一例について説明する。
【0050】
例えば、反射領域A1が、凹凸を有するとともに太陽光SL0の照射に応じて均等拡散反射を生じる1つの面(均等拡散面ともいう)であると仮定して、推定放射照度E1を算出する方法が考えられる。均等拡散反射は、ランベルトの余弦則に従う反射であり、光の入射方向に関係なく、反射放射の輝度の空間分布がすべての反射方向において等しい拡散反射である。ここでは、反射領域A1を構成している受光面12sは、水平面に沿って位置していてもよいし、水平面に対して傾斜していてもよい。また、反射領域A1を構成している受光面12sが傾斜している方位が滑走路2の周辺の建造物に合わせて適宜設定されていてもよい。
【0051】
ここで、観測者としての操縦士5の角膜5e1に入射される拡散反射光DL1の放射照度(角膜放射照度ともいう)をEd[単位はW/m]とする。操縦士5の眼球5eの網膜5e5に入射される拡散反射光DL1の放射照度(網膜放射照度ともいう)をEr[単位はW/m]とする。網膜放射照度Erは、推定放射照度E1に対応する。拡散反射面としての反射領域A1に入射される太陽光SL0の放射照度をEs[単位はW/m]とする。拡散反射面としての反射領域A1から放射される全ての光のエネルギー(全光エネルギーともいう)をPd[単位はワット(W)]とする。拡散反射面としての反射領域A1で反射された後の拡散反射光DL1の放射輝度(拡散放射輝度ともいう)をLd[単位はワット毎平方メートル毎ステラジアン(W/m・sr)]とする。拡散反射面としての反射領域A1から観測者としての操縦士5までの距離をr[単位はメートル(m)]とする。拡散反射面としての反射領域A1の面積(反射領域面積ともいう)をAd[単位は平方メートル(m)]とする。観測者としての操縦士5から見た反射領域A1の幅(反射領域幅ともいう)をds[単位はm]とする。観測者としての操縦士5の眼球5eの網膜5e5上に投影される反射領域A1の光像の幅(網膜投影像幅ともいう)をdr[単位はm]とする。拡散反射面としての反射領域A1の中心を基準とした観測者としての操縦士5の瞳孔5e4の領域(瞳孔領域ともいう)の立体角(瞳孔立体角ともいう)をΩ[単位はrad]とする。拡散反射面としての反射領域A1における拡散反射率をρdとする。平面に対して直角に入射する太陽光SL0の放射照度(太陽光放射照度ともいう)をEDNI[W/m]とする。ここでは、太陽光放射照度EDNIを1000W/mの一定値とする。観測者としての操縦士5の瞳孔5e4の直径(瞳孔径)をdp[単位はm]とする。ここでは、瞳孔径dpを0.002mの一定値とする。観測者としての操縦士5の瞳孔5e4の面積をAp[単位はm]とする。観測者としての操縦士5の眼球5eにおいて角膜5e1の前面から網膜5e5まで至る光が透過する経路における光の透過率(眼球媒体の光の透過率ともいう)をτとする。この経路は、角膜5e1、前眼房、水晶体5e3および硝子体を含む。ここでは、透過率τを0.5の一定値とする。観測者としての操縦士5の眼球5eにおける焦点距離をf[単位はm]とする。ここでは、焦点距離fを0.017mの一定値とする。拡散反射面としての反射領域A1の法線12nに対して太陽光SL0の入射方向が成す角度(入射角度ともいう)をθ[単位は度(°)]とする。拡散反射面としての反射領域A1の法線12nに対して観測者としての操縦士5の視線が成す角度(視線角度ともいう)をφ[単位は度(°)]とする。上述したように観測者としての操縦士5の眼球5eにおける反射領域A1に係る視角をω[単位はrad]とする。この場合には、式(2-1)から式(2-8)が成立し得る。
【0052】
Es=Pd/Ad ・・・(2-1)
dr=f×ω ・・・(2-2)
ds=r×ω ・・・(2-3)
Pd=EDNI×cosθ×Ad×ρd ・・・(2-4)
Ed=Ld×Ω×Ad×cosφ/Ap ・・・(2-5)
Es=Pd/Ad=πLd ・・・(2-6)
Ω=Ap/r ・・・(2-7)
Er=Ed×{(π×dp/4)/(π×dr/4)}×τ
=Ed×(dp/dr)×τ ・・・(2-8)。
【0053】
ここでは、観測者としての操縦士5から見た反射領域A1の幅dsとして、仮にAd×cosφの面積を有する真円であるとみなした場合に導出される直径を用いてもよい。
【0054】
式(2-3)を変形すれば、式(2-9)が得られる。
【0055】
ω=ds/r=(1/r)×(4×Ad×cosφ/π)0.5 ・・・(2-9)。
【0056】
式(2-5)に、式(2-6)および式(2-7)を代入すれば、式(2-10)が得られる。
【0057】
Ed=Pd×cosφ/(π×r) ・・・(2-10)。
【0058】
式(2-8)に、式(2-2)、式(2-4)、式(2-9)および式(2-10)を代入すれば、式(2-11)が得られる。
【0059】
Er=EDNI×cosθ×ρd×dp×τ/(4×f) ・・・(2-11)。
【0060】
式(2-11)を用いて推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erを算出することができる。ここでは、網膜放射照度Erは、太陽光放射照度EDNI、入射角度θ、拡散反射率ρd、瞳孔径dp、光の透過率τおよび焦点距離fに基づいて算出され得る。太陽光放射照度EDNI、瞳孔径dp、光の透過率τおよび焦点距離fのそれぞれに既知の値を適用すれば、網膜放射照度Erは、入射角度θおよび拡散反射率ρdを用いて算出され得る。例えば、網膜放射照度Erは、推定放射照度E1として算出される。この場合には、推定放射照度E1は、反射領域A1において太陽光SL0が拡散反射を生じて操縦士5の網膜5e5に入射される拡散反射光DL1の放射照度の推定値としての網膜放射照度Erである。
【0061】
また、式(2-9)で算出される視角ωを式(1)に代入することで、臨界放射照度Etを算出することができる。ここでは、視角ωは、距離r、反射領域面積Adおよび視線角度φに基づいて算出され得る。
【0062】
そして、例えば、推定放射照度E1が臨界放射照度Et未満であれば、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難くなる形態を透光性部材121が有しているとの評価(合格評価ともいう)が行われる。また、例えば、推定放射照度E1が臨界放射照度Et以上であれば、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難くなる形態を透光性部材121が有していないとの評価(不合格評価ともいう)が行われる。
【0063】
ここで、実際に設置された空港太陽光発電システム100の反射領域A1における拡散反射率ρdは、例えば、正反射率ρrと拡散反射率ρdとを分離して測定することができる測定装置を用いることで測定され得る。
【0064】
<<不合格評価が行われるケースの一例>>
距離rが120mであり、反射領域面積Adが6000mであり、視線角度φが45°であり、入射角度θが45度であり、拡散反射率ρdが0.7である場合を想定する。
【0065】
この場合には、式(2-9)から、視角ωが0.612radと算出される。そして、この視角ω(=0.612rad)を式(1)に代入することで、臨界放射照度Etが0.854W/mと算出される。また、式(2-11)から推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erが0.856W/mと算出される。このため、推定放射照度E1(=0.856W/m)が臨界放射照度Et(=0.854W/m)を超えている。よって、不合格評価が行われ得る。換言すれば、この場合には、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑されて、操縦士5がフラッシュによる一時的な残像(一時的なフラッシュ失明)を生じる可能性がある。
【0066】
<<合格評価が行われるケースの第1例>>
上記の不合格評価が行われるケースの一例において、拡散反射率ρdを低下させることで、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光によって眩惑され難くなる態様が考えられる。ここで、例えば、拡散反射率ρdを0.7から0.6に低下させた場合を想定する。
【0067】
この場合には、式(2-9)から、視角ωが0.612radと算出される。そして、この視角ω(=0.612rad)を式(1)に代入することで、臨界放射照度Etが0.854W/mと算出される。また、式(2-11)から推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erが0.734W/mと算出される。このため、推定放射照度E1(=0.734W/m)が臨界放射照度Et(=0.854W/m)よりも小さい。よって、合格評価が行われ得る。換言すれば、この場合には、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難く、操縦士5がフラッシュによる一時的な残像(一時的なフラッシュ失明)を生じる可能性が低い。
【0068】
ここで、例えば、透光性部材121が、光電変換部123とは逆側の表面において拡散反射率ρdを低下させる膜(反射防止膜ともAR膜ともいう)を有することで、拡散反射率ρdが低下し得る。例えば、塗布法、薬液処理または物理的薄膜形成法などを用いて透光性部材121の表面にAR膜を形成することができる。例えば、塗布法が採用される場合には、透光性部材121を構成するためのガラス板などの板状の部材(板状部材ともいう)の表面に有機溶液を塗布して該有機溶液を焼成することで、透光性部材121が表面において反射防止膜を有する形態が実現され得る。有機溶液には、例えば、フッ素系樹脂を含む溶液、または二酸化ケイ素(SiO)系もしくは二酸化チタン(TiO)系のゾル液などが適用され得る。また、例えば、薬液処理が採用される場合には、透光性部材121を構成するためのガラス板の表面に薬液による処理を施すことでガラス板の表面を変性させてガラスよりも低い屈折率を有する層を形成することによって、透光性部材121が表面において反射防止膜を有する形態が実現され得る。薬液には、例えば、フッ化水素、またはフッ化水素酸などのフッ素化剤が適用され得る。より具体的には、例えば、加熱されたガラス板の表面へのフッ素化剤の接触によってガラス板の表面に多孔質構造を形成することで、ガラス板の表面に反射防止膜を形成することができる。また、例えば、物理的薄膜形成法が採用される場合には、透光性部材121を構成するためのガラス板の表面上にスパッタリングなどによって二酸化ジルコニウム(ZrO)の薄膜を反射防止膜として形成することで、透光性部材121が表面において反射防止膜を有する形態が実現され得る。
【0069】
<<合格評価が行われるケースの第2例>>
上記の不合格評価が行われるケースの一例において、拡散反射面としての反射領域A1の面積(反射領域面積)Adを減少させることで、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光によって眩惑され難くなる態様が考えられる。ここで、例えば、反射領域面積Adを6000mから5000mに減少させた場合を想定する。
【0070】
この場合には、式(2-9)から、視角ωが0.559radと算出される。そして、この視角ω(=0.559rad)を式(1)に代入することで、臨界放射照度Etが1.004W/mと算出される。また、式(2-11)から推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erが0.856W/mと算出される。このため、推定放射照度E1(=0.856W/m)が臨界放射照度Et(=1.004W/m)よりも小さい。よって、合格評価が行われ得る。
【0071】
ここでは、反射領域面積Adの減少は、例えば、空港太陽光発電システム100を構成している1つ以上の太陽電池モジュール12の数の減少、または空港太陽光発電システム100を構成している1つ以上の太陽電池モジュール12の一部を仮想直円錐Cn1の外へ移動することなどによって実現され得る。
【0072】
<<合格評価が行われるケースの第3例>>
上記の不合格評価が行われるケースの一例において、拡散反射面としての反射領域A1が水平面に対して傾斜している方向および角度を調整することで、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光によって眩惑され難くなる態様が考えられる。ここで、例えば、入射角度θを45度から50度に変更し、視線角度φを45度から50度に変更した場合を想定する。
【0073】
この場合には、式(2-9)から、視角ωが0.583radと算出される。そして、この視角ω(=0.583rad)を式(1)に代入することで、臨界放射照度Etが0.930W/mと算出される。また、式(2-11)から推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erが0.778W/mと算出される。このため、推定放射照度E1(=0.778W/m)が臨界放射照度Et(=0.930W/m)よりも小さい。よって、合格評価が行われ得る。
【0074】
ここで、例えば、空港太陽光発電システム100は、推定放射照度E1および臨界放射照度Etのうちの少なくとも一方の値を算出することができる制御部を、さらに備えていてもよい。この制御部には、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの1つ以上のプロセッサにおいて各種の演算を行うことが可能な各種のコンピュータが適用され得る。この場合には、例えば、制御部は、1つ以上のプロセッサにおける演算によって、推定放射照度E1および臨界放射照度Etのうちの少なくとも一方の値を算出することができる。この制御部は、例えば、推定放射照度E1と臨界放射照度Etとの比較を行うことで、合格評価または不合格評価を行ってもよい。また、例えば、空港太陽光発電システム100は、反射領域A1が水平面に対して傾斜している方向および角度のうちの少なくとも一方を調整することができる駆動機構を備えていてもよい。より具体的には、駆動機構は、例えば、太陽電池モジュール12の受光面12sが水平面に対して傾斜している方向および角度のうちの少なくとも一方を調整することができてもよい。この駆動機構には、例えば、電動モータ、電動ジャッキ、電動アクチュエータ、電動シリンダまたは電動昇降機などを含む各種の駆動機構が適用され得る。この駆動機構は、例えば、架台11と太陽電池モジュール12とを連結している部分に組み込まれていてもよいし、架台11の柱および梁の一部に組み込まれていてもよい。ここでは、例えば、駆動機構は、制御部からの指令の信号に応じて、反射領域A1が水平面に対して傾斜している方向および角度のうちの少なくとも一方を調整することができてもよい。より具体的には、例えば、駆動機構は、制御部からの指令の信号に応じて、太陽電池モジュール12の受光面12sが水平面に対して傾斜している方向および角度のうちの少なくとも一方を調整することができてもよい。
【0075】
<<推定放射照度の算出方法の別の例>>
網膜放射照度Erが、推定放射照度E1として算出されなくてもよい。例えば、推定放射照度E1は、反射領域A1において太陽光SL0が拡散反射を生じて操縦士5の網膜5e5に入射する拡散反射光DL1の放射照度の推定値としての網膜放射照度Erに基づいて算出される放射照度の計算値であってもよい。ここでは、例えば、放射照度の計算値が、網膜放射照度Erに係数を乗じる計算によって算出される態様が採用され得る。係数には、例えば、安全係数が適用される。安全係数としては、例えば、1よりも大きく3以下の数値が設定され得る。
【0076】
ところで、仮に反射領域A1が1つの完全拡散反射面であれば、図8で示されるように、入射角度θで太い二点鎖線で描かれた太陽光SL0が反射領域A1の点P0に照射されると、反射領域A1で生じる拡散反射光の輝度は、点P0を中心とする一点鎖線Lpdで描かれた半円弧状の分布を示す。完全拡散反射面は、反射率が100%の均等拡散反射面である。
【0077】
一方、反射領域A1が完全拡散反射面でなく、一般的な光沢を有する反射面(非均等拡散反射面ともいう)であれば、図8で示されるように、反射領域A1で生じる反射光の輝度は、点P0を基準点とした破線Lrで描かれた分布を示す。点P0を基準点とした破線Lrで描かれた分布は、法線12nと反射光線とが成す角度(反射角度ともいう)θrに依存して変化する。換言すれば、反射領域A1が一般的な反射面(非均等拡散反射面)であれば、太陽光SL0の入射に応じて、鏡面反射光(正反射光ともいう)と拡散反射光とを含む反射光が生じる。これにより、反射角度θrが入射角度θに近い場合には、反射角度θrが入射角度θと近くない場合と比較して、反射光の輝度が高くなる。このため、操縦士5の視線角度φが入射角度θに近い場合には、反射領域A1における太陽光SL0の反射に応じて操縦士5の眼球5eの網膜5e5に入射する反射光の放射照度が、高くなり得る。
【0078】
そこで、例えば、推定放射照度E1の計算結果をより現実に近づけるために、操縦士5の視線角度φが入射角度θに近い場合には、式(2-11)などを用いて網膜放射照度Erを算出する際に、拡散放射輝度Ldもしくは拡散反射率ρdなどに重み付けを行ってもよい。より具体的には、例えば、拡散放射輝度Ldもしくは拡散反射率ρdなどに重み付け係数βを乗じてもよい。これにより、操縦士5の視線角度φが入射角度θに近い場合には、推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erが高くなるように算出され得る。また、例えば、操縦士5の視線角度φが、入射角度θに近い場合には、式(2-11)などを用いて算出された網膜放射照度Erに重み付けを行うことで、推定放射照度E1を算出してもよい。より具体的には、例えば、推定放射照度E1としての放射照度の計算値が、網膜放射照度Erに係数としての重み付け係数βを乗じる計算によって算出されてもよい。
【0079】
ここで、重み付け係数βの設定方法の一例について説明する。
【0080】
仮に反射領域A1が均等拡散反射面である場合を想定する。ここで、太陽9から反射領域A1へ入射する太陽光SL0の強さをIinとし、入射角度をθとし、反射領域A1における拡散反射率をρdとし、均等拡散反射面としての反射領域A1で生じる反射光の強さをIdとする。この場合には、式(3)が成立し得る。
【0081】
Id=Iin×ρd×cosθ ・・・(3)。
【0082】
ここでは、図9で示されるように、入射角度θで太い二点鎖線で描かれた太陽光SL0が反射領域A1の点P0に照射されると、反射領域A1で生じる反射光の強さIdは、点P0を基準点とした点P0を中心とする一点鎖線Lidで描かれた半円弧状の分布を示す。
【0083】
次に、反射領域A1が一般的な光沢を有する反射面(非均等拡散反射面)である場合を想定する。ここで、太陽9から反射領域A1へ入射する太陽光SL0の強さをIinとし、反射領域A1における正反射率をρrとする。また、図10で示されるように、太陽光SL0が反射領域A1で正反射を生じる方向(正反射方向)に沿った直線状の仮想線Lmrと観測者としての操縦士5の視線Losとが成す角度(ズレ角度ともいう)をγとする。また、非均等拡散反射面としての反射領域A1において正反射方向の近傍において生じる光沢に係る反射光の強さをIsとする。この場合には、Phongモデルを用いれば、式(4)が成立し得る。
【0084】
Is=Iin×ρr×cosγ ・・・(4)。
【0085】
ここで、nは、ズレ角度γが大きくなるにしたがって反射光が減衰する様子を近似的に表すための定数である。定数nには自然数が適用される。ここでは、図10で示されるように、入射角度θで太い二点鎖線で描かれた太陽光SL0が反射領域A1の点P0に照射されると、光沢に係る反射光の強さIsは、例えば、点P0を基準点とした破線Lsrで描かれた分布を示す。
【0086】
定数nは、例えば、次のようにして設定され得る。図9で示された反射光の強さIdの分布と、図10で示された反射光の強さIsの分布とを合成する。ここでは、反射光の強さIsの分布は、反射光の強さIsの分布のうちの反射光の強さIdの分布と重なる部分を除いて、反射光の強さIdの分布に加算されることで、反射光の強さIdの分布と反射光の強さIsの分布とが合成される。図11には、反射光の強さIdの分布と反射光の強さIsの分布とが合成された合成後の反射光の強さ(反射光の合成強さともいう)の分布が、太線Lcで模式的に描かれている。また、反射領域A1を対象として、図8において破線Lrで描かれたような反射光の強さの分布を、測定装置を用いた実際の測定(実測ともいう)で取得する。そして、nを変化させて、実測で得た反射光の強さの分布のうちの反射角度θrが入射角度θと近い部分における突起している形状の部分に、図11において太線Lcで描かれた反射光の合成強さの分布のうちの突起している形状の部分が最も近くなる際のnを定数nとして設定する。
【0087】
ここでは、例えば、2つ以上の入射角度θのそれぞれについて定数nを設定し、2つ以上の入射角度θとは異なる他の入射角度θに対する定数nについては、2つ以上の入射角度θのそれぞれについて設定された定数nを用いた内挿または外挿などの計算で算出されてもよい。2つ以上の入射角度θには、例えば、30度と60度などが適用される。
【0088】
式(3)および式(4)から式(5)が算出される。
【0089】
Is/Id=(ρr×cosγ)/(ρd×cosθ) ・・・(5)。
【0090】
ここで、IsをIdで除した値(Is/Id)が1よりも大きくなる場合には、値(Is/Id)に応じた重み付け係数βを設定することができる。ここでは、拡散反射率ρdおよび正反射率ρrは、反射領域A1を対象とした測定装置を用いた実測によって取得され得る。入射角度θが既知であれば、ズレ角度γに応じた重み付け係数βを設定することができる。ズレ角度γは、入射角度θと視線角度φとによって算出され得る。正反射率ρrは入射角度θに応じて変化するため、入射角度θに応じて正反射率ρrを変更してもよい。ここでは、2つ以上の入射角度θのそれぞれについて正反射率ρrを実測で得て、2つ以上の入射角度θごとにズレ角度γに応じた重み付け係数βを設定してもよい。この場合には、例えば、2つ以上の入射角度θとは異なる他の入射角度θに対するズレ角度γに応じた重み付け係数βとしては、2つ以上の入射角度θについてのズレ角度γに応じた重み付け係数βを用いた内挿もしくは外挿などの計算で算出してもよい。また、例えば、2つ以上の入射角度θとは異なる他の入射角度θに対するズレ角度γに応じた重み付け係数βとしては、2つ以上の入射角度θのうちの他の入射角度θと近い入射角度θにおけるズレ角度γに応じた重み付け係数βが採用されてもよい。
【0091】
なお、上述した推定放射照度E1に対応する網膜放射照度Erの算出方法の例としては、簡略化した算出方法を挙げて説明したが、これに限られない。例えば、光の減衰などの他の要因も含めた算出方法によって網膜放射照度Erが算出されてもよい。例えば、上述した網膜放射照度Erの算出方法の例では、太陽光SL0および拡散反射光DL1が減衰するものとして、大気中における光の減衰率を考慮した計算も含めて網膜放射照度Erが算出されてもよい。また、上述した網膜放射照度Erの算出方法の例では、太陽光SL0が反射領域A1に入射する方向に係るベクトル(入射方向ベクトルともいう)と、操縦士5の視線とが反射領域A1に直交する仮想的な1つの平面上に位置しているケースを仮定して、式(2-1)から式(2-8)を規定したが、これに限られない。例えば、入射方向ベクトルと操縦士5の視線とが反射領域A1に直交する仮想的な1つの平面上に位置していないケースについて、入射方向ベクトルと操縦士5の視線との間における角度についての変数を導入して、網膜放射照度Erを算出するようにしてもよい。
【0092】
なお、太陽光SL0が反射領域A1で生じる正反射光が通る領域は、例えば、1つの直線状の仮想線Lmrで規定される領域に限られず、1つの直線状の仮想線Lmrを中心とした円柱状の領域として、各種計算が行われてもよい。円柱状の領域は、例えば、観測者である操縦士5によって受光面12s上に映って見える略円状の太陽9の像の直径と同一あるいはこの直径以上の直径を有する円柱状の領域に設定されてもよい。ここで、例えば、受光面12sが、エンボス加工などが施された凹凸を有しており、観測者である操縦士5によって受光面12s上に映って見える太陽9の像の外縁が不明瞭である場合には、計算によって円柱状の領域が求められてもよい。この場合には、例えば、仮に観測者である操縦士5によって受光面12s上に映って見える太陽9の像の外縁が明瞭であるケースを仮定して、計算によって円柱状の領域を設定してもよい。
【0093】
<<推定放射照度の算出方法および評価法の他の例>>
例えば、反射領域A1を1つの平坦な仮想的な鏡面(第1仮想鏡面ともいう)と仮定すると、反射領域A1において太陽光SL0に応じた正反射光を第2点P2に向けて発する第1反射領域A11が存在している場合がある。この場合には、図5で示されるように、反射領域A1は、第1反射領域A11と、太陽光SL0に応じた拡散反射光を第2点P2に向けて発する第1反射領域A11以外の第2反射領域A12と、に分けることができる。この場合には、透光性部材121は、第1反射領域A11について第1の推定放射照度(第1推定放射照度ともいう)E11を第1の臨界放射照度(第1臨界放射照度ともいう)Et1よりも小さな放射照度にするとともに、第2反射領域A12について第2の推定放射照度(第2推定放射照度ともいう)E12を第2の臨界放射照度(第2臨界放射照度ともいう)Et2よりも小さな放射照度にする形態を有していてもよい。第1推定放射照度E11、第1臨界放射照度Et1、第2推定放射照度E12および第2臨界放射照度Et2のそれぞれの単位は、W/mである。この構成が採用されても、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0094】
ここで、第1推定放射照度E11は、第1反射領域A11における太陽光SL0の反射に応じて滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eの網膜5e5に入射する正反射光RL1の放射照度の推定値である。換言すれば、第1推定放射照度E11は、1つ以上の太陽電池モジュール12のうちの仮想直円錐Cn1内に位置している反射領域としての第1反射領域A11における太陽光SL0の反射に応じて第2点P2に位置している眼球5eの網膜5e5に入射する反射光の推定値としての推定放射照度である。ここでは、反射光は、反射領域A1で生じる反射光のうちの正反射光の成分である。また、第1臨界放射照度Et1は、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eにおける第1反射領域A11についての視角(第1の視角とも第1視角ともいう)としてのω1[単位はrad]を用いた式(6)で算出される放射照度である。
【0095】
Et1=0.359/ω11.77 ・・・(6)。
【0096】
式(6)は、上述した式(1)において、臨界放射照度Etを第1臨界放射照度Et1にして、視角ωに第1視角ω1を代入した式である。このため、透光性部材121は、第1推定放射照度E11を、第1反射領域A11についての眼球5eにおける第1視角ω1が代入される視角ωを用いた式(1)で算出される臨界放射照度Etとしての第1臨界放射照度Et1よりも小さくする形態を有する。
【0097】
また、ここで、第2推定放射照度E12は、第2反射領域A12における太陽光SL0の反射に応じて滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eの網膜5e5に入射する拡散反射光DL1の放射照度の推定値である。換言すれば、第2推定放射照度E12は、1つ以上の太陽電池モジュール12のうちの仮想直円錐Cn1内に位置している反射領域としての第2反射領域A12における太陽光SL0の反射に応じて第2点P2に位置している眼球5eの網膜5e5に入射する反射光の推定値としての推定放射照度である。ここでは、反射光は、反射領域A1で生じる反射光のうちの拡散反射光の成分である。また、第2臨界放射照度Et2は、滑走路2に対して着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eにおける第2反射領域A12についての視角(第2の視角とも第2視角ともいう)としてのω2[単位はrad]を用いた式(7)で算出される放射照度である。
【0098】
Et2=0.359/ω21.77 ・・・(7)。
【0099】
式(7)は、上述した式(1)において、臨界放射照度Etを第2臨界放射照度Et2にして、視角ωに第2視角ω2を代入した式である。このため、透光性部材121は、第2推定放射照度E12を、第2反射領域A12についての眼球5eにおける第2視角ω2が代入される視角ωを用いた式(1)で算出される臨界放射照度Etとしての第2臨界放射照度Et2よりも小さくする形態を有する。
【0100】
第1推定放射照度E11は、例えば、種々の算出方法によって算出され得る。ここで、第1推定放射照度E11の算出方法の一例について説明する。
【0101】
操縦士5の眼球5eの網膜5e5に入射する正反射光RL1の放射照度(第1網膜放射照度ともいう)をEr1[単位はW/m]とする。第1網膜放射照度Er1は、第1推定放射照度E11に対応する。観測者としての操縦士5の角膜5e1の前面に入射される正反射光RL1の放射照度(角膜前面放射照度ともいう)をEc[単位はW/m]とする。第1反射領域A11における正反射率をρrとする。平面に対して直角に入射する太陽光SL0の放射照度をEDNI[単位はW/m]とする。ここでは、太陽光放射照度EDNIを1000W/mの一定値とする。観測者としての操縦士5の瞳孔5e4の直径(瞳孔径)をdp[単位はm]とする。観測者としての操縦士5の眼球5eにおいて角膜5e1の前面から網膜5e5まで至る光が透過する経路における光の透過率(眼球媒体の光の透過率)をτとする。ここでは、透過率τを0.5の一定値とする。観測者としての操縦士5の眼球5eにおける焦点距離をf[単位はm]とする。ここでは、焦点距離fを0.017mの一定値とする。第1反射領域A11の法線12nに対して太陽光SL0の入射方向が成す角度(入射角度)をθ[単位は度(°)]とする。観測者としての操縦士5の眼球5eにおける第1反射領域A11についての視角(第1の視角とも第1視角ともいう)をω1[単位はrad]とする。ここでは、観測者としての操縦士5から見て、1つの太陽電池モジュール12の受光面12sに太陽9の像全体が映っているケースを仮定して、第1視角ω1を太陽9の視直径である0.0093radとする。観測者としての操縦士5の眼球5eの網膜5e5上に投影される第1反射領域A11の光像の幅(第1網膜投影像幅)をdr1[単位はm]とする。この場合には、式(8-1)から式(8-3)が成立し得る。
【0102】
dr1=f×ω1 ・・・(8-1)
Ec=EDNI×ρr ・・・(8-2)
Er1=Ec×{(π×dp/4)/(π×dr1/4)}×τ
=Ec×(dp/dr1)×τ ・・・(8-3)。
【0103】
式(8-3)に式(8-1)および式(8-2)を代入すれば、式(8-4)が得られる。
【0104】
Er1=EDNI×ρr×dp×τ/(f×ω1) ・・・(8-4)。
【0105】
式(8-4)によって第1推定放射照度E11に対応する第1網膜放射照度Er1を算出することができる。第1網膜放射照度Er1は、太陽光放射照度EDNI、正反射率ρr、瞳孔径dp、光の透過率τ、焦点距離fおよび第1視角ω1に基づいて算出され得る。ここでは、太陽光放射照度EDNI、瞳孔径dp、光の透過率τ、焦点距離fおよび第1視角ω1のそれぞれに既知の値を適用すれば、第1網膜放射照度Er1は、正反射率ρrを用いて算出され得る。例えば、第1網膜放射照度Er1は、第1推定放射照度E11として算出され得る。この場合には、第1推定放射照度E11は、第1反射領域A11における太陽光SL0の正反射に応じて操縦士5の網膜5e5に入射する正反射光RL1の放射照度の推定値としての第1網膜放射照度Er1である。なお、第1推定放射照度E11は、第1網膜放射照度Er1に基づいて算出される放射照度の計算値であってもよい。ここでは、例えば、放射照度の計算値が、第1網膜放射照度Er1に係数としての安全係数を乗じる計算によって算出される態様が採用され得る。安全係数としては、例えば、1よりも大きく3以下の数値が設定され得る。
【0106】
また、第2推定放射照度E12は、例えば、種々の算出方法によって算出され得る。ここで、第2推定放射照度E12の算出方法の一例について説明する。
【0107】
上述した式(2-11)を用いて第2推定放射照度E12に対応する網膜放射照度Er(第2網膜放射照度Er2ともいう)を算出することができる。ここでは、第2網膜放射照度Er2は、太陽光放射照度EDNI、入射角度θ、拡散反射率ρd、瞳孔径dp、光の透過率τおよび焦点距離fに基づいて算出され得る。太陽光放射照度EDNI、瞳孔径dp、光の透過率τおよび焦点距離fに既知の値を適用すれば、第2網膜放射照度Er2は、入射角度θおよび拡散反射率ρdを用いて算出され得る。例えば、第2網膜放射照度Er2は、第2推定放射照度E12として算出され得る。この場合には、第2推定放射照度E12は、第2反射領域A12における太陽光SL0の拡散反射に応じて操縦士5の網膜5e5に入射する拡散反射光DL1の放射照度の推定値としての第2網膜放射照度Er2である。
【0108】
また、第1臨界放射照度Et1は、例えば、式(6)に第1視角ω1(=0.0093rad)を代入することで算出される。第2臨界放射照度Et2は、例えば、式(9)で算出される第2視角ω2を式(7)に代入することで算出される。
【0109】
ω2=(1/r)×(4×Ad2×cosφ/π)0.5 ・・・(9)。
【0110】
式(9)は、上述した式(2-9)において、視角ωを第2視角ω2にして、反射領域面積Adに、拡散反射面としての第2反射領域A12の面積であるAd2[単位はm]を代入した式である。
【0111】
そして、例えば、第1推定放射照度E11が第1臨界放射照度Et1未満であり且つ第2推定放射照度E12が第2臨界放射照度Et2未満であれば、合格評価が行われる。
【0112】
また、例えば、第1推定放射照度E11が第1臨界放射照度Et1以上であるか、または第2推定放射照度E12が第2臨界放射照度Et2以上であれば、不合格評価が行われる。
【0113】
ここで、実際に設置された空港太陽光発電システム100について、第1反射領域A11における正反射率ρrおよび第2反射領域A12における拡散反射率ρdは、例えば、正反射率ρrと拡散反射率ρdとを分離して測定することができる測定装置を用いて測定され得る。
【0114】
ここでは、例えば、第1推定放射照度E11が第1臨界放射照度Et1以上であれば、第1反射領域A11における正反射率ρrの低減によって、第1推定放射照度E11が第1臨界放射照度Et1未満となり得る。例えば、透光性部材121が、光電変換部123とは逆側の表面において反射防止膜および凹凸の少なくとも一方を有していれば、第1反射領域A11を構成している受光面12sにおける正反射率ρrが低減され得る。また、例えば、第2推定放射照度E12が第2臨界放射照度Et2以上であれば、第2反射領域A12における拡散反射率ρdの低減、第2反射領域A12の面積Ad2の減少、および第2反射領域A12が水平面に対して傾斜している方向および角度の調整のうちの1つ以上の手法によって、第2推定放射照度E12が第2臨界放射照度Et2未満となり得る。例えば、透光性部材121が、光電変換部123とは逆側の表面において反射防止膜を有していれば、第2反射領域A12を構成している受光面12sにおける拡散反射率ρdが低減され得る。
【0115】
なお、例えば、正反射光の成分に係る第1網膜放射照度Er1と拡散反射光の成分に係る第2網膜放射照度Er2とを足し合わせた照度(合算照度ともいう)を推定放射照度E1として算出してもよい。この場合には、推定放射照度E1が、式(1)で算出される臨界放射照度Et未満であれば、合格評価が行われてもよい。また、推定放射照度E1が、式(1)で算出される臨界放射照度Et以上であれば、不合格評価が行われてもよい。
【0116】
ここでは、例えば、推定放射照度E1が臨界放射照度Et以上であれば、反射領域A1における正反射率ρrおよび拡散反射率ρdの低減などによって、推定放射照度E1が臨界放射照度Et未満となり得る。例えば、透光性部材121が、光電変換部123とは逆側の表面において反射防止膜を有していれば、反射領域A1を構成している受光面12sにおける正反射率ρrおよび拡散反射率ρdが低減され得る。
【0117】
<2-2.透光性部材の眩惑低減形態の具体例>
着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難い透光性部材121の形態(眩惑低減形態ともいう)としては、例えば、受光面12sを成す第1面F1が凹凸を有する形態が挙げられる。また、透光性部材121の眩惑低減形態は、例えば、透光性部材121が受光面12sにおける反射率を低下させる被覆層としての反射防止膜を有する形態を含んでいてもよいし、透光性部材121の水平面に対する傾斜の方向および角度などの姿勢が調整された形態を含んでいてもよい。
【0118】
換言すれば、例えば、受光面12sを成す第1面F1の凹凸状態、受光面12sの反射率、および透光性部材121の姿勢のうちの少なくとも1つの設定によって、推定放射照度E1が低減され得る。これにより、例えば、推定放射照度E1が、式(1)で規定される臨界放射照度Et未満の放射照度となり得る。なお、例えば、第1推定放射照度E11が第1臨界放射照度Et1未満であり且つ第2推定放射照度E12が第2臨界放射照度Et2未満となってもよい。
【0119】
ここで、例えば、反射領域A1が非均等拡散反射面である場合には、受光面12sを成す第1面F1が凹凸を有していれば、正反射率ρrの低減によって、太陽光SL0の照射に応じて反射領域A1で正反射光が生じ難くなる。このため、例えば、1つ以上の太陽電池モジュール12が、受光面12sが凹凸を有する太陽電池モジュール(第1太陽電池モジュールともいう)12Aを含む場合には、受光面12sでは、凹凸の存在によって、太陽光SL0の拡散反射が生じ、太陽光SL0の正反射が生じ難い。これにより、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。その結果、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0120】
例えば、透光性部材121がガラス製の板材(ガラス板ともいう)である場合には、受光面12sの凹凸は、ガラス板を製造する際に、このガラス板の片面に凹凸を形成することで実現され得る。この場合には、例えば、上下に並んだ2本の水冷ロールの間に溶融したガラスを通してガラス板を製造する際に、2本の水冷ロールのうちの下方の水冷ロールの表面が彫刻などで形成された模様を有していれば、その模様の転写によってガラス板の片面に凹凸が形成され得る。
【0121】
ところで、図2で示されるように、受光面12sが、水平面に対して傾斜している態様が考えられる。この場合には、受光面12sが、水平面に対して傾斜している方向(傾斜方向ともいう)としての第1方向およびこの第1方向に垂直であり且つ水平面に沿った方向(横方向ともいう)としての第2方向のそれぞれに沿って位置している態様が考えられる。第1実施形態では、第1方向は-Y方向であり、第2方向は+X方向である。また、第1実施形態では、空港太陽光発電システム100が北半球に設置されている場合を想定して、上方向から太陽9が正中する方向(正中方向ともいう)である南方向に傾いた斜め上方向を向くように受光面12sが水平面に対して傾斜している。換言すれば、受光面12sは、南に進むほど下方に位置する形態で水平面に対して傾斜している。これにより、太陽9が日周運動を行う際に、受光面12sに入射される太陽光SL0の光量が増加し、空港太陽光発電システム100における発電量が向上し得る。受光面12sが水平面に対して傾斜している角度(傾斜角度ともいう)は、例えば、空港太陽光発電システム100が設置されている緯度に応じて設定される。
【0122】
ここで、例えば、図12から図14の組、図15から図17の組および図18から図20の組のうちの何れの組の図面でも示されるように、第1太陽電池モジュール12Aの透光性部材121が、受光面12s側において、基底面B1と、複数の凸部C1と、を有していてもよい。基底面B1は、第1方向および第2方向のそれぞれに沿った平面状の面である。複数の凸部C1は、それぞれ第1方向および第2方向の双方に垂直な方向(第3方向ともいう)に基底面B1よりも突出している部分である。第3方向は、基底面B1の法線方向である。第1実施形態では、第3方向は+Z方向である。
【0123】
例えば、図12から図14で示されるように、第1太陽電池モジュール12Aにおいて、透光性部材121が、受光面12sを平面視した場合に複数の凸部C1がドット状に位置している形態(第1形態ともいう)を有していてもよい。図12から図14の例では、第1方向としての-Y方向に沿って複数の凸部C1が並んでおり、第2方向としての+X方向に沿って複数の凸部C1が並んでいる。換言すれば、複数の凸部C1がマトリックス状に位置している。別の観点から言えば、第1方向としての-Y方向に沿って並んだ複数の凸部C1によってそれぞれ構成されている複数の凸部C1の列が、第2方向としての+X方向に並んでいる。第1方向としての-Y方向に沿って並んだ複数の凸部C1が並んでいる方向は、第1方向としての-Y方向に対して若干の角度を成していてもよい。この若干の角度は、例えば、0度よりも大きく30度以下の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度以下の角度であってもよい。第2方向としての+X方向に沿って並んだ複数の凸部C1が並んでいる方向は、第2方向としての+X方向に対して若干の角度を成していてもよい。この若干の角度は、例えば、0度よりも大きく30度以下の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度以下の角度であってもよい。
【0124】
ここでは、例えば、図13および図14で示されるように、受光面12sを構成している凸部C1の表面が曲面状であれば、太陽光SL0の照射に応じて、受光面12sでは、拡散反射が生じることで正反射が生じ難い。これにより、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。その結果、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0125】
例えば、図15から図17で示されるように、第1太陽電池モジュール12Aにおいて、透光性部材121が、複数の凸部C1が複数の第1凸部C11と複数の第2凸部C12とを含む形態(第2形態ともいう)を有していてもよい。
【0126】
複数の第1凸部C11のそれぞれは、第1方向としての-Y方向に沿って延びている凸部である。第1凸部C11が延びている方向(第1長手方向ともいう)は、例えば、第1方向としての-Y方向に対して若干の角度を成していてもよい。この若干の角度は、例えば、0度よりも大きく30度以下の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度以下の角度であってもよい。複数の第2凸部C12のそれぞれは、第2方向としての+X方向に沿って延びている凸部である。第2凸部C12が延びている方向(第2長手方向ともいう)は、例えば、第2方向としての+X方向に対して若干の角度を成していてもよい。この若干の角度は、例えば、0度よりも大きく30度以下の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度以下の角度であってもよい。
【0127】
図15から図17の例では、複数の第1凸部C11のそれぞれは、第1方向としての-Y方向に沿って直線状に位置している。複数の第1凸部C11は、第2方向としての+X方向に並んでいる。複数の第2凸部C12のそれぞれは、第2方向としての+X方向に沿って直線状に位置している。複数の第2凸部C12は、第1方向としての-Y方向に並んでいる。換言すれば、複数の凸部C1が格子状に位置している。ここで、第1凸部C11が延びている方向(第1長手方向)と第2凸部C12が延びている方向(第2長手方向)とは直交していてもよいし、直交していなくてもよい。換言すれば、第1凸部C11の第1長手方向に対して第2凸部C12の第2長手方向が交差していてもよい。第1凸部C11の第1長手方向と第2凸部C12の第2長手方向とが成している角度は、例えば、90度未満であり且つ60度以上の角度であってもよいし、90度未満であり且つ70度以上の角度であってもよい。
【0128】
ここで、第1凸部C11は、例えば、それぞれ第1方向としての-Y方向に沿って延びているとともに相互に離れている2つ以上の凸状の部分(第1凸状部分ともいう)によって構成されていてもよい。第2凸部C12は、例えば、それぞれ第2方向としての+X方向に沿って延びているとともに相互に離れている2つ以上の凸状の部分(第2凸状部分ともいう)によって構成されていてもよい。
【0129】
ここでは、例えば、図16および図17で示されるように、受光面12sを構成している凸部C1の表面が曲面状であれば、太陽光SL0の照射に応じて、受光面12sでは拡散反射が生じることで正反射が生じ難い。これにより、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。その結果、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。ここでは、例えば、図16で示されるように、受光面12sを構成している第1凸部C11の表面が、第2方向としての+X方向において湾曲している面である形態が採用される。例えば、図17で示されるように、受光面12sを構成している第2凸部C12の表面が、第1方向としての-Y方向において湾曲している面である形態が採用される。
【0130】
例えば、図18から図20で示されるように、第1太陽電池モジュール12Aにおいて、透光性部材121が、受光面12sを平面視した場合に、複数の凸部C1が複数の亀甲模様を構成している形態(第3形態ともいう)を有していてもよい。
【0131】
図18から図20の例では、複数の凸部C1は、複数の第1凸部C11と複数の第2凸部C12とを含む。複数の第1凸部C11のそれぞれは、第1方向としての-Y方向に沿って延びている凸部である。複数の第2凸部C12のそれぞれは、第2方向としての+X方向に沿って延びている凸部である。複数の第2凸部C12のそれぞれは、第2方向としての+X方向に沿って若干蛇行しながら延びている。複数の第2凸部C12は、第1方向としての-Y方向に並んでいる。複数の第1凸部C11のそれぞれは、隣り合う2つの第2凸部C12の間において第1方向としての-Y方向に沿って直線状に位置している。また、隣り合う2つの第2凸部C12の間において、複数の第1凸部C11が第2方向としての+X方向に並んでいる。そして、隣り合う2つの第2凸部C12によってそれぞれ構成されている複数の第2凸部C12の組のそれぞれについて、隣り合う2つの第2凸部C12の間において、複数の第1凸部C11が第2方向としての+X方向に並んでいる。ここでは、隣り合う2つの第2凸部C12と、隣り合う2つの第1凸部C11と、によって1つの亀甲模様が構成されている。換言すれば、第1凸部C11が延びている方向(第1長手方向)と第2凸部C12が延びている方向(第2長手方向)とは直交していなくてもよい。第1凸部C11の第1長手方向に対して第2凸部C12の第2長手方向が交差していてもよい。第1凸部C11の第1長手方向と第2凸部C12の第2長手方向とが成している角度は、例えば、90度未満であり且つ60度以上の角度であってもよいし、90度未満であり且つ70度以上の角度であってもよい。
【0132】
ここで、第1凸部C11が延びている方向(第1長手方向ともいう)は、例えば、第1方向としての-Y方向に対して若干の角度を成していてもよい。この若干の角度は、例えば、0度よりも大きく30度以下の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度以下の角度であってもよい。第2凸部C12が延びている方向(第2長手方向ともいう)は、例えば、第2方向としての+X方向に対して若干の角度を成していてもよい。この若干の角度は、例えば、0度よりも大きく30度以下の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度以下の角度であってもよい。
【0133】
ここでは、例えば、図19および図20で示されるように、受光面12sを構成している凸部C1の表面が曲面状であれば、太陽光SL0の照射に応じて、受光面12sでは拡散反射が生じることで正反射が生じ難い。これにより、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。その結果、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。ここでは、例えば、図19で示されるように、受光面12sを構成している第1凸部C11の表面が、第2方向としての+X方向において湾曲している面である形態が採用される。例えば、図20で示されるように、受光面12sを構成している第2凸部C12の表面が、第1方向としての-Y方向において湾曲している面である形態が採用される。
【0134】
ここで、例えば、図12から図14の組、図15から図17の組および図18から図20の組のうちの何れの組の図面でも示されるように、複数の凸部C1が、第1方向としての-Y方向において第1のピッチ(第1ピッチともいう)Py1で規則的に並んでいるとともに、第2方向としての+X方向において第1ピッチPy1よりも小さな第2のピッチ(第2ピッチともいう)Px1で規則的に並んでいてもよい。
【0135】
図12から図14の例では、ドット状の複数の凸部C1が、第1方向としての-Y方向において第1ピッチPy1で規則的に並んでいるとともに、第2方向としての+X方向において第2ピッチPx1で規則的に並んでいる。別の観点から言えば、図12から図14の例では、第2方向としての+X方向に沿って並んだ複数の凸部C1によってそれぞれ構成されている複数の凸部C1の列が、第1方向としての-Y方向において第1ピッチPy1で並んでいる。第1方向としての-Y方向に沿って並んだ複数の凸部C1によってそれぞれ構成されている複数の凸部C1の列が、第2方向としての+X方向において第2ピッチPx1で並んでいる。そして、第1ピッチPy1よりも第2ピッチPx1が小さい。ここで、第1ピッチPy1は、例えば、600マイクロメートル(μm)から1100μmに設定される。第1ピッチPy1は、例えば、700μmから1000μmに設定されてもよい。第2ピッチPx1は、例えば、300μmから700μmに設定される。第2ピッチPx1は、例えば、400μmから600μmに設定されてもよい。凸部C1の高さは、例えば、15μmから50μmに設定される。凸部C1の高さは、第3方向としての+Z方向において基底面B1から凸部C1が突出している長さである。凸部C1の高さは、例えば、20μmから40μmに設定されてもよい。
【0136】
図15から図17の例および図18から図20の例のそれぞれでは、複数の第2凸部C12が、第1方向としての-Y方向において第1ピッチPy1で規則的に並んでいるとともに、複数の第1凸部C11が、第2方向としての+X方向において第2ピッチPx1で規則的に並んでいる。そして、第1ピッチPy1よりも第2ピッチPx1が小さい。ここで、第1ピッチPy1は、例えば、600μmから1100μmに設定される。第1ピッチPy1は、例えば、700μmから1000μmに設定されてもよい。第2ピッチPx1は、例えば、300μmから700μmに設定される。第2ピッチPx1は、例えば、400μmから600μmに設定されてもよい。第1凸部C11および第2凸部C12のそれぞれの高さは、例えば、15μmから50μmに設定される。第1凸部C11の高さは、第3方向としての+Z方向において基底面B1から第1凸部C11が突出している長さである。第2凸部C12の高さは、第3方向としての+Z方向において基底面B1から第2凸部C12が突出している長さである。第1凸部C11および第2凸部C12のそれぞれの高さは、例えば、20μmから40μmに設定されてもよい。第1凸部C11の幅(第1線幅ともいう)および第2凸部C12の幅(第2線幅ともいう)のそれぞれは、例えば、200μmから300μmに設定される。第1凸部C11の幅(第1線幅)は、第1凸部C11における第1長手方向に垂直であり且つXY平面に沿った方向における長さである。第2凸部C12の幅(第2線幅)は、第2凸部C12における第2長手方向に垂直であり且つXY平面に沿った方向における長さである。
【0137】
ところで、第1実施形態では、上方向から太陽9の正中方向である南方向に傾いた斜め上方向を向くように受光面12sが水平面に対して傾斜している。滑走路2への着陸直前に滑走路2に向かって航空機3が飛行する着陸飛行経路が水平面に対して成す角度(着陸角度ともいう)は、3度もしくは3度前後の角度である。そして、着陸態勢にある航空機3の操縦士5の視線は、滑走路2の目標点標識2aを中心とした領域に向けられている。ここで、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が眩惑される可能性がある空港太陽光発電システム100で生じる太陽光SL0の反射光の進行方向は、操縦士5の視線に沿った方向と考えられる。このため、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が眩惑される可能性がある太陽光SL0の反射光の進行方向が水平面と成す角度は、水平面に沿った地面に対して約3度の角度を中心とした小さな角度になると推測される。
【0138】
例えば、正午前後において太陽9が正中方向である南方向に位置している場合には、太陽9の太陽高度が大きい状態が想定される。このため、例えば、図21で示されるように、太陽高度が大きな太陽9からの太陽光SL0の照射に応じて受光面12sで生じる正反射光RL1の進行方向が水平面と成す角度は、ある程度大きな角度となる。図21では、太陽光SL0の進行方向の一例が2点鎖線で描かれた矢印で示されており、正反射光RL1の進行方向の一例が2点鎖線で描かれた矢印で示されている。この場合には、正反射光RL1の進行方向は、着陸態勢にある航空機3の操縦士5の視線に沿った方向から大きく外れる。このため、着陸態勢にある航空機3の操縦士5は太陽光SL0の照射に応じて受光面12sで生じる反射光によって眩惑され難い。
【0139】
一方、例えば、日の出の直後の時間帯において太陽9が東方向に位置している場合、あるいは日の入り直前の時間帯において太陽9が西方向に位置している場合には、太陽9の太陽高度が小さい。このため、例えば、図22で示されるように、太陽高度が小さな太陽9からの太陽光SL0の照射に応じて受光面12sで生じる正反射光RL1の進行方向が水平面と成す角度は、小さな角度となる。図22では、日の入り直前の太陽高度が小さな時間帯について、太陽光SL0の進行方向の一例が2点鎖線で描かれた矢印で示されており、正反射光RL1の進行方向の一例が2点鎖線で描かれた矢印で示されている。この場合には、正反射光RL1の進行方向は、着陸態勢にある航空機3の操縦士5の視線に沿った方向に近くなる可能性がある。このため、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の照射に応じて受光面12sで生じる反射光によって眩惑される可能性がある。
【0140】
ここで、例えば、上述したように、第1ピッチPy1よりも第2ピッチPx1が小さければ、日の出の直後および日の入り直前などの太陽高度が小さな時間帯において、東側または西側から受光面12sに向かう太陽光SL0が、複数の凸部C1によって遮られて、基底面B1に照射され難い。このため、受光面12sでは、太陽9から受光面12sへの太陽光SL0の照射に応じた正反射が生じ難い。これにより、太陽光SL0の照射に応じて受光面12sから着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向かう反射光の光量が高まり難い。よって、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。その結果、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。また、例えば、第1ピッチPy1が第2ピッチPx1よりも大きければ、太陽高度が大きな時間帯においては、南側から受光面12sに向かう太陽光SL0が凸部C1に照射され難く、基底面B1に照射され易い。これにより、例えば、第1太陽電池モジュール12Aにおいて太陽電池セル123cに照射される光の量が低下し難い。その結果、空港太陽光発電システム100における発電量が高まり得る。したがって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難く、発電量の向上を図ることが可能な空港太陽光発電システム100が実現され得る。
【0141】
ここで、例えば、図15から図17で例示された第2形態では、図23から図25で示されるように、第3方向としての+Z方向において、第1凸部C11の高さ(第1高さともいう)H1が、第2凸部C12の高さ(第2高さともいう)H2よりも大きくてもよい。第1高さH1は、第3方向としての+Z方向において基底面B1から第1凸部C11が突出している長さである。第2高さH2は、第3方向としての+Z方向において基底面B1から第2凸部C12が突出している長さである。換言すれば、例えば、複数の凸部C1は、第1方向としての-Y方向に沿って延びており且つ第3方向としての+Z方向において第1高さH1を有する第1凸部C11と、第2方向としての+X方向に沿って延びており且つ第3方向としての+Z方向において第1高さH1よりも小さな第2高さH2を有する第2凸部C12とを含んでいてもよい。
【0142】
この構成が採用されれば、例えば、日の出の直後および日の入り直前などの太陽高度が小さな時間帯において、東側または西側から受光面12sに向かう太陽光SL0が、複数の第1凸部C11によって遮られて、基底面B1に照射され難い。このため、受光面12sでは、太陽9から受光面12sへの太陽光SL0の照射に応じた正反射が生じ難い。これにより、太陽光SL0の照射に応じて受光面12sから着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向かう反射光の光量が高まり難い。その結果、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。よって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。また、例えば、太陽高度が大きな時間帯においては、南側から受光面12sに向かう太陽光SL0が第1凸部C11および第2凸部C12の何れにも照射され難く、基底面B1に照射され易い。これにより、例えば、第1太陽電池モジュール12Aにおいて太陽電池セル123cに照射される光の量が低下し難い。その結果、空港太陽光発電システム100における発電量が高まり得る。したがって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難く、発電量の向上を図ることが可能な空港太陽光発電システム100が実現され得る。
【0143】
図18から図20で例示された第3形態においても、例えば、第3方向としての+Z方向において、第1凸部C11の高さ(第1高さ)が、第2凸部C12の高さ(第2高さ)よりも大きくてもよい。この場合にも、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難く、発電量の向上を図ることが可能な空港太陽光発電システム100が実現され得る。
【0144】
また、例えば、東側または西側から受光面12sに向かう太陽光SL0が、複数の凸部C1によって遮られて、基底面B1に照射され難くなるように、複数の凸部C1の配列状態と複数の凸部C1の高さとを調整してもよい。
【0145】
例えば、図26で示されるように、第2点P2と反射領域A1とを結ぶ仮想の直線を第2仮想線L2とする。また、例えば、第2仮想線L2に沿って位置しており且つ第3方向としての+Z方向に沿って位置している仮想的な平面を仮想平面Vp2とする。ここで、例えば、複数の凸部C1が、仮想平面Vp2と受光面12sとに沿った方向(第4方向ともいう)D4において並んでいる2つ以上の凸部C1を含んでいる場合を想定する。図26では、第4方向D4が右方に向かう矢印で示されている。ここでは、2つ以上の凸部C1には、例えば、上述した第1凸部C11が適用され得る。また、例えば、2つ以上の凸部C1のうちの第4方向D4において隣り合って並んでいる2つの凸部C1を、第3の凸部(第3凸部ともいう)C1aおよび第4の凸部(第4凸部ともいう)C1bとする。換言すれば、2つ以上の凸部C1は、第3凸部C1aおよび第4凸部C1bを含む。また、例えば、基底面B1のうちの第4方向D4において第3凸部C1aと第4凸部C1bとの間の中央に位置している部分を中央部分Pc1とする。また、例えば、中央部分Pc1における基底面B1の法線N1を基準として、第2仮想線L2と線対称の関係にある仮想の直線を第3仮想線L3とする。法線N1は、反射領域A1の法線12nと同一であってもよい。第3仮想線L3が、反射領域A1に対する太陽光SL0の入射方向に沿って位置している場合が想定される。
【0146】
ここで、例えば、図26で示されるように、第2仮想線L2が、中央部分Pc1を通る場合に、第4凸部C1bと交差していてもよい。この場合には、例えば、基底面B1のうちの中央部分Pc1および該中央部分Pc1よりも第4凸部C1b側の部分において着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向けて基底面B1で正反射光が生じても、この正反射光は第4凸部C1bに照射され得る。このため、例えば、受光面12sでは、受光面12sへの太陽光SL0の照射に応じて、着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向かう正反射光が基底面B1で生じ難い。これにより、太陽光SL0の照射に応じて受光面12sから着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向かう反射光の光量が高まり難い。その結果、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。よって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0147】
ここで、例えば、図27で示されるように、第4方向D4において2つ以上の凸部C1が並んでいるピッチ(第3ピッチともいう)をPt1とし、基底面B1を基準とする第4凸部C1bの高さをH1bとし、基底面B1の法線N1と第2仮想線L2とが成す角度(正反射角度ともいう)をθ3とした場合に、式(10)の関係式を満たしていてもよい。
【0148】
Pt1≦2×H1b×tanθ3 ・・・(10)。
【0149】
また、ここで、例えば、図26で示されるように、第3仮想線L3が、中央部分Pc1を通る場合に、第3凸部C1aと交差していてもよい。この場合には、例えば、基底面B1のうちの中央部分Pc1および該中央部分Pc1よりも第3凸部C1a側の部分に向けた太陽光SL0が、第3凸部C1aに照射され得る。このため、例えば、受光面12sでは、受光面12sへの太陽光SL0の照射に応じて、着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向かう正反射光が基底面B1で生じ難い。これにより、太陽光SL0の照射に応じて受光面12sから着陸態勢にある航空機3の操縦士5に向かう反射光の光量が高まり難い。その結果、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。よって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0150】
ここでは、例えば、図27で示されるように、基底面B1を基準とする第3凸部C1aの高さをH1aとし、基底面B1の法線N1と第3仮想線L3とが成す角度(入射角度)をθ3とした場合に、第4方向D4において2つ以上の凸部C1が並んでいるピッチ(第3ピッチ)Pt1を用いた式(11)の関係式を満たしていてもよい。
【0151】
Pt1≦2×H1a×tanθ3 ・・・(11)。
【0152】
ここでは、例えば、第3凸部C1aの高さH1aと第4凸部C1bの高さH1bとが同一であってもよいし、第3凸部C1aの高さH1aが第4凸部C1bの高さH1bよりも大きくてもよい。第4方向D4において並んでいる2つ以上の凸部C1の高さは、例えば、同一であってもよいし、高さH1b以上の高さであってもよい。
【0153】
ここで、例えば、高さH1bが350μmであり、入射角度θ3が70度である場合には、第3ピッチPt1が1923μm以下であれば、式(10)の関係式を満たす。また、例えば、高さH1aが350μmであり、入射角度θ3が70度である場合には、第3ピッチPt1が1923μm以下であれば、式(11)の関係式を満たす。ここで、例えば、高さH1bが50μmであり、入射角度θ3が80度である場合には、第3ピッチPt1が567μm以下であれば、式(10)の関係式を満たす。また、例えば、高さH1aが50μmであり、入射角度θ3が80度である場合には、第3ピッチPt1が567μm以下であれば、式(11)の関係式を満たす。
【0154】
<2-3.第1実施形態のまとめ>
第1実施形態に係る空港太陽光発電システム100では、例えば、透光性部材121は、反射領域A1における太陽光SL0の反射に応じて第2点P2に位置している眼球5eの網膜5e5に入射する反射光の推定放射照度E1を、臨界放射照度Etよりも小さくする形態を有する。反射領域A1は、1つ以上の太陽電池モジュール12のうちの仮想直円錐Cn1内に位置している領域である。仮想直円錐Cn1は、第1仮想線L1上の第2点P2を頂点として有し且つ第1仮想線L1に沿って延びている中心線Lc1と50度の頂角とを有する仮想の直円錐である。第1仮想線L1は、滑走路2の目標点標識2aの間の第1点P1に向かって航空機が飛行する着陸飛行経路に沿って延びているとともに、滑走路2の滑走路中心線標識2cを通る仮想鉛直面Vp1に沿って位置している。臨界放射照度Etは、反射領域A1についての眼球5eにおける視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77[W/m]の式で算出される。これにより、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0155】
<3.他の実施形態>
本開示は上述の第1実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良などが可能である。
【0156】
上記第1実施形態において、例えば、図28で示されるように、太陽電池アレイ1における1つ以上の太陽電池モジュール12は、受光面12sが凹凸を有する第1太陽電池モジュール12Aと、受光面12sが平坦な太陽電池モジュール(第2太陽電池モジュールともいう)12Bと、を含んでいてもよい。第2太陽電池モジュール12Bと第1太陽電池モジュール12Aとは互いに異なる太陽電池モジュールである。図28では、第1太陽電池モジュール12Aの受光面12sには砂地の模様を用いたハッチングが付されており、第2太陽電池モジュール12Bの受光面12sには左上がりの斜線を用いたハッチングが付されている。
【0157】
ここで、例えば、1つ以上の太陽電池モジュール12のそれぞれについて受光面12sに沿った平坦な仮想的な鏡面(第2仮想鏡面ともいう)12mを設定し且つ太陽9が通年の日周運動を行う場合を想定する。この場合に、1つ以上の太陽電池モジュール12は、第1の個数の太陽電池モジュール12と、第2の個数の太陽電池モジュール12と、を含んでいてもよい。第1の個数および第2の個数のそれぞれには、1個以上の個数が適用され得る。第1の個数の太陽電池モジュール12のそれぞれは、第1仮想線L1に交差する太陽光SL0の正反射光を生じ得る第2仮想鏡面12m(第2A仮想鏡面12m1ともいう)に沿った受光面12sを有する。第2の個数の太陽電池モジュール12のそれぞれは、第1仮想線L1に交差する太陽光SL0の正反射光を生じ得ない第2仮想鏡面12m(第2B仮想鏡面12m2ともいう)に沿った受光面12sを有する。そして、第1の個数の太陽電池モジュール12のそれぞれが、第1太陽電池モジュール12Aであり、第2の個数の太陽電池モジュール12のそれぞれが、第1太陽電池モジュール12Aまたは第2太陽電池モジュール12Bである構成が採用されてもよい。
【0158】
換言すれば、太陽光SL0の照射に応じて、滑走路2への着陸直前に滑走路2に向かって航空機3が飛行する着陸飛行経路に向けて正反射光を照射し得る位置および姿勢にある受光面12sを有する太陽電池モジュール12は、第1太陽電池モジュール12Aであってよい。また、太陽光SL0の照射に応じて、滑走路2への着陸直前に滑走路2に向かって航空機3が飛行する着陸飛行経路に向けて正反射光を照射し得る位置および姿勢にない受光面12sを有する太陽電池モジュール12は、第1太陽電池モジュール12Aまたは第2太陽電池モジュール12Bであってよい。
【0159】
この構成が採用されれば、例えば、空港太陽光発電システム100では、第1太陽電池モジュール12Aの存在によって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eの網膜5e5に向かう太陽光SL0の正反射光が生じ難い。このため、着陸態勢にある航空機3の操縦士5の眼球5eの網膜5e5に向かう太陽光SL0の光束のエネルギー密度が減少し得る。これにより、例えば、推定放射照度E1または第1推定放射照度E11が高まり難い。その結果、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。また、第2太陽電池モジュール12Bでは、受光面12sが凹凸を有しないことで、第1太陽電池モジュール12Aと比較して、雨水に含まれている砂塵および泥などが受光面12sに付着し難い。このため、例えば、受光面12sが汚れにくく、空港太陽光発電システム100における発電量が低下し難い。したがって、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が太陽光SL0の反射光に眩惑され難く、発電量の向上を図ることが可能な空港太陽光発電システム100が実現され得る。
【0160】
ここで、例えば、太陽電池モジュール12ごとに、仮想的な3次元空間のモデルを利用したシミュレーションなどを用いて、第1太陽電池モジュール12Aおよび第2太陽電池モジュール12Bの何れを適用すべきか決定することができる。具体的には、シミュレーションの対象である太陽電池モジュール12の受光面12sの配置が予定されている領域を示す平坦な仮想の鏡面状の受光面(仮想受光面ともいう)を設定する。また、滑走路2への着陸直前に滑走路2に向かって航空機3が飛行する着陸飛行経路に沿って延びている第1仮想線L1を設定する。通年の日周運動を行う太陽9からの太陽光SL0の照射に応じて仮想受光面で生じる正反射光が通過する3次元の領域(正反射光通過領域ともいう)をマッピングする。そして、マッピングされた正反射光通過領域の少なくとも一部に対して第1仮想線L1が交わる場合には、シミュレーションの対象としての太陽電池モジュール12に第1太陽電池モジュール12Aを適用すべきであることが決定され得る。一方、マッピングされた正反射光通過領域に対して第1仮想線L1が全く交わらない場合には、シミュレーションの対象としての太陽電池モジュール12に第1太陽電池モジュール12Aまたは第2太陽電池モジュール12Bを適用すべきであることが決定され得る。
【0161】
ここでは、例えば、空港太陽光発電システム100を構成している複数の太陽電池モジュール12のうち、受光面12sにおける少なくとも一部が仮想直円錐Cn1に含まれている1つ以上の太陽電池モジュール12に対して、第1太陽電池モジュール12Aが適用され得る。また、例えば、空港太陽光発電システム100を構成している複数の太陽電池モジュール12のうち、受光面12sにおける少なくとも一部が仮想直円錐Cn1に含まれていない太陽電池モジュール12については、第1太陽電池モジュール12Aおよび第2太陽電池モジュール12Bの何れが適用されてもよい。
【0162】
上記第1実施形態において、例えば、第2封止層124が透光性を有する場合には、裏面保護部材125のうちの受光面12s側の部分を黒色としてもよい。これにより、例えば、太陽電池モジュール12において太陽光SL0の照射に応じて生じる反射光の光量が低減され得る。
【0163】
上記第1実施形態において、例えば、透光性部材121には、光電変換部123とは逆側の表面(第1表面)および光電変換部123側の表面(第2表面ともいう)のそれぞれに反射防止膜およびエンボス加工などが施された凹凸を有するガラス板が適用されてもよい。
【0164】
上記第1実施形態において、例えば、複数の太陽電池セル123cのうちの相互に隣り合う太陽電池セル123cの間をそれぞれ電気的に接続している複数の第1配線材W1の本数は、4本から15本などであってもよい。
【0165】
上記第1実施形態において、例えば、複数の太陽電池セル123cは、略正方形状の太陽電池セルが分割されることで形成された略長方形状の複数の太陽電池セルを含んでいてもよい。
【0166】
上記第1実施形態において、例えば、透光性部材121は、フィルム状の部材であってもよい。この場合には、例えば、太陽電池モジュール12の剛性を維持するために、裏面保護部材125に板状の部材が適用されてもよい。板状の裏面保護部材125の素材には、例えば、ガラスまたはアクリルもしくはポリカーボネートなどの樹脂などが適用され得る。フィルム状の透光性部材121の素材には、例えば、耐候性を有する樹脂が適用される。耐候性は、例えば、屋外で使用された場合に、変形、変色および劣化などの変質を起こしにくい性質を意味する。ここで、耐候性を有する樹脂は、例えば、フッ素系の樹脂を含む。フッ素系の樹脂は、例えば、フッ化エチレンプロピレン共重合体(Fluorinated Ethylene Propylene:FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(Ethylene Tetrafluoroethylene:ETFE)およびエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(Ethylene Chlorotrifluoroethylene:ECTFE)などを含む。ここで、例えば、透光性部材121が、2層以上の耐候性を有する樹脂で構成されてもよい。この場合には、透光性部材121に適用されるフッ素系の樹脂は、例えば、2種類以上の樹脂であってもよい。このため、例えば、透光性部材121に適用されるフッ素系の樹脂が、FEP、ETFEおよびECTFEのうちの少なくとも1つの樹脂を含む態様が考えられる。また、透光性部材121の厚さは、例えば、0.05mmから0.5mm程度とされてもよい。
【0167】
上記第1実施形態において、例えば、空港太陽光発電システム100が南半球に設置されている場合には、太陽9が正中方向である北方向において斜め上方を向くように受光面12sが水平面に対して傾斜していてもよい。換言すれば、受光面12sは、北に進むほど下方に位置する形態で水平面に対して傾斜していてもよい。
【0168】
上記第1実施形態において、例えば、滑走路2の長手方向は、東西方向に対してある程度の角度を成す方向に延びていてもよい。このある程度の角度は、例えば、0度よりも大きく45度未満の角度であってもよいし、0度よりも大きく20度未満の角度であってもよい。
【0169】
上記第1実施形態において、例えば、受光面12sは、水平面に対して傾斜していなくてもよい。この場合には、第1方向としての-Y方向が南北方向に沿った方向であってもよいし、第2方向としての+X方向が東西方向に沿った方向であってもよい。
【0170】
上記第1実施形態において、推定放射照度E1が計算で算出されたが、これに限られない。推定放射照度E1は、例えば、航空機3の操縦室において測定装置を用いて実際に測定される照度(実測照度ともいう)であってもよいし、この実測照度に基づいて算出されてもよい。また、実測照度は、例えば、ドローンなどの無人航空機に搭載された測定装置を用いた測定によって取得されてもよい。
【0171】
上記第1実施形態において、第1太陽電池モジュール12Aにおける透光性部材121が第1面F1において有する凹凸の形状および配置は、上述したものに限られない。第1太陽電池モジュール12Aにおける透光性部材121が第1面F1において有する凹凸の形状および配置には、種々の形状および配置が適用されてもよい。例えば、第1太陽電池モジュール12Aにおける透光性部材121には、第1面F1に凹凸状の型模様が形成されたガラス板(型板ガラスとも梨地ガラスともいう)が適用されてもよい。
【0172】
上記第1実施形態において、例えば、第2点P2に位置している眼球5eおよび該眼球5eの網膜5e5は、第2点P2に位置している航空機3の操縦室内の視点であってもよい。操縦室内の視点は、例えば、着陸態勢にある航空機3において、目標点標識2aおよび反射領域A1を含む対象物を眺める位置となり得る。ここで、操縦室内の視点は、例えば、眼球5eの位置、操縦室の位置、操縦席の位置または操縦士5の頭の位置などによって特定され得る。眼球5eの位置には、例えば、眼球5eの網膜5e5の略中心の位置または眼球5eの略中心の位置などの眼球5eの所定の位置(第1所定位置ともいう)が適用され得る。操縦室の位置には、例えば、操縦室の略中心の位置などの操縦室の所定の位置(第2所定位置ともいう)が適用され得る。操縦席の位置には、例えば、操縦席のヘッドレストの略中心の位置などの操縦席の所定の位置(第3所定位置ともいう)が適用され得る。例えば、操縦室に複数の操縦席が存在している場合には、操縦席の位置には、複数の操縦席のうちの航空機3を操縦する操縦士5もしくは機長(主操縦士ともいう)が通常使用する操縦席の所定の位置(第3所定位置)、または複数の操縦席の間の略中心の位置などの複数の操縦席についての所定の位置(第4所定位置ともいう)が適用されてもよい。操縦士5の頭の位置には、例えば、操縦士5の頭の略中心の位置などの操縦士5の頭の所定の位置(第5所定位置ともいう)が適用され得る。例えば、操縦室に複数の操縦士5が存在する場合には、操縦士5の頭の位置には、複数の操縦士5のうちの主操縦士の頭の所定の位置(第5所定位置)、または複数の操縦士の頭の間の略中心の位置などの複数の操縦士の頭についての所定の位置(第6所定位置ともいう)が適用されてもよい。ここでは、例えば、推定放射照度E1には、反射領域A1における太陽光SL0の反射に応じて第2点P2に位置している航空機3の操縦室内の視点に入射する反射光の放射照度の推定値が適用される。例えば、臨界放射照度Etには、操縦室内の視点における反射領域A1についての視角ωを用いた式(1)で算出される放射照度が適用される。この場合には、視角ωには、例えば、反射領域A1の両端をそれぞれ通るとともに操縦室内の視点まで延びる2直線が成す角度が適用され得る。そして、例えば、透光性部材121が、推定放射照度E1を臨界放射照度Etよりも小さくする形態を有していれば、着陸態勢にある航空機3の操縦士5が空港太陽光発電システム100による太陽光SL0の反射光に眩惑され難い。
【0173】
以上のように、太陽光発電システムは詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0174】
本開示には、以下の内容が含まれる。
【0175】
一実施形態において、(1)太陽光発電システムは、1つ以上の架台と、該1つ以上の架台に固定された1つ以上の太陽電池モジュールと、を備え、該1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれは、太陽光を受光するための受光面を有するとともに、太陽電池セルと、該太陽電池セルを前記受光面側から保護している透光性部材と、を含み、滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延びているとともに、前記滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している仮想の直線を第1仮想線とし、該第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ前記第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する仮想の直円錐を仮想直円錐とした場合において、前記透光性部材は、前記1つ以上の太陽電池モジュールのうちの前記仮想直円錐内に位置している反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記第2点に位置している眼球の網膜に入射する反射光の推定放射照度を、前記反射領域についての前記眼球における視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et[W/m]よりも小さくする形態を有する。
【0176】
(2)上記(1)の太陽光発電システムにおいて、前記推定放射照度は、前記反射領域において前記太陽光が拡散反射を生じて前記網膜に入射する拡散反射光の放射照度の推定値、あるいは該推定値に基づいて算出される放射照度の計算値を含んでいてもよい。
【0177】
(3)上記(2)の太陽光発電システムにおいて、前記計算値は、前記推定値に係数を乗じる計算によって算出されてもよい。
【0178】
(4)上記(1)の太陽光発電システムにおいて、前記反射領域を平坦な第1仮想鏡面と仮定すると、前記反射領域において前記太陽光の照射に応じた正反射光を前記第2点に向けて発する第1反射領域が存在しており、前記反射領域を、前記第1反射領域と、前記太陽光の照射に応じた拡散反射光を前記第2点に向けて発する前記第1反射領域以外の第2反射領域とに分けることが可能な場合において、前記透光性部材は、前記第1反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記網膜に入射する前記正反射光の第1推定放射照度を、前記第1反射領域についての前記眼球における第1の視角ω1[rad]を用いたEt1=0.359/ω11.77の式で算出される第1臨界放射照度Et1[W/m]よりも小さくするとともに、前記第2反射領域における前記太陽光の拡散反射に応じて前記網膜に入射する前記拡散反射光の第2推定放射照度を、前記第2反射領域についての前記眼球における第2の視角ω2[rad]を用いたEt2=0.359/ω21.77の式で算出される第2臨界放射照度Et2[W/m]よりも小さくする形態を有していてもよい。
【0179】
(5)上記(1)から(4)の何れか1つの太陽光発電システムにおいて、前記1つ以上の太陽電池モジュールは、前記受光面が凹凸を有する第1太陽電池モジュール、を含んでいてもよい。
【0180】
(6)上記(5)の太陽光発電システムにおいて、前記受光面は、水平面に対して傾斜している第1方向および該第1方向に対して垂直であり且つ前記水平面に沿った第2方向のそれぞれに沿って位置しており、前記第1太陽電池モジュールにおいて、前記透光性部材は、前記受光面側において、前記1方向および前記第2方向のそれぞれに沿った平面状の基底面と、前記第1方向および前記第2方向の双方に垂直な第3方向に前記基底面よりも突出している複数の凸部と、を有していてもよい。
【0181】
(7)上記(6)の太陽光発電システムにおいて、前記複数の凸部は、前記第1方向において第1ピッチで規則的に並んでいるとともに、前記第2方向において前記第1ピッチよりも小さな第2ピッチで規則的に並んでいてもよい。
【0182】
(8)上記(6)または(7)の太陽光発電システムにおいて、前記複数の凸部は、前記第1方向に沿って延びており且つ前記第3方向において第1高さを有する第1凸部と、前記第2方向に沿って延びており且つ前記第3方向において前記第1高さよりも小さな第2高さを有する第2凸部と、を含んでいてもよい。
【0183】
(9)上記(6)から(8)の何れか1つの太陽光発電システムにおいて、前記複数の凸部は、仮想平面および前記受光面に沿った第4方向において並んでいる2つ以上の凸部を含み、前記仮想平面は、前記第2点と前記反射領域とを結ぶ第2仮想線に沿って位置しており且つ前記第3方向に沿って位置しており、前記2つ以上の凸部は、前記第4方向において隣り合って並んでいる第3凸部および第4凸部を含み、前記第2仮想線は、前記基底面のうちの前記第4方向において前記第3凸部と前記第4凸部との間の中央に位置している中央部分を通る場合に、前記第4凸部と交差していてもよい。
【0184】
(10)上記(9)の太陽光発電システムにおいて、前記第4方向において前記2つ以上の凸部が並んでいるピッチPt1と、前記基底面を基準とする前記第4凸部の高さH1bと、前記基底面の法線と前記第2仮想線とが成す角度θ3とが、Pt1≦2×H1b×tanθ3の関係式を満たしていてもよい。
【0185】
(11)上記(5)から(10)の何れか1つの太陽光発電システムにおいて、前記1つ以上の太陽電池モジュールは、前記第1太陽電池モジュールと、前記受光面が平坦である第2太陽電池モジュールと、を含み、前記1つ以上の太陽電池モジュールは、該1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれについて前記受光面に沿った平坦な第2仮想鏡面を設定し且つ太陽が通年の日周運動を行う場合に、前記第1仮想線に交差する前記太陽光の正反射光を生じ得る前記第2仮想鏡面に沿った前記受光面をそれぞれ有する第1の個数の太陽電池モジュールと、前記第1仮想線に交差する前記太陽光の正反射光を生じ得ない前記第2仮想鏡面に沿った前記受光面をそれぞれ有する第2の個数の太陽電池モジュールと、を含み、前記第1の個数の太陽電池モジュールのそれぞれは、前記第1太陽電池モジュールであり、前記第2の個数の太陽電池モジュールのそれぞれは、前記第1太陽電池モジュールまたは前記第2太陽電池モジュールであってもよい。
【0186】
一実施形態において、(12)太陽光発電システムは、1つ以上の架台と、該1つ以上の架台に固定された1つ以上の太陽電池モジュールと、を備え、該1つ以上の太陽電池モジュールのそれぞれは、太陽光を受光するための受光面を有するとともに、太陽電池セルと、該太陽電池セルを前記受光面側から保護している透光性部材と、を含み、滑走路の目標点標識の間の第1点に向かって航空機が飛行する経路に沿って延びているとともに、前記滑走路の滑走路中心線標識を通る仮想の鉛直面に沿って位置している仮想の直線を第1仮想線とし、該第1仮想線上の第2点を頂点として有し且つ前記第1仮想線に沿って延びている中心線と50度の頂角とを有する仮想の直円錐を仮想直円錐とした場合において、前記透光性部材は、前記1つ以上の太陽電池モジュールのうちの前記仮想直円錐内に位置している反射領域における前記太陽光の反射に応じて前記第2点に位置している前記航空機の操縦室内の視点に入射する反射光の推定放射照度を、前記反射領域についての前記視点における視角ω[rad]を用いたEt=0.359/ω1.77の式で算出される臨界放射照度Et[W/m]よりも小さくする形態を有する。
【符号の説明】
【0187】
1 太陽電池アレイ
11 架台
12 太陽電池モジュール
12A 第1太陽電池モジュール
12B 第2太陽電池モジュール
100 空港太陽光発電システム(太陽光発電システム)
121 透光性部材
123c 太陽電池セル
12m 第2仮想鏡面
12n,N1 法線
12s 受光面
2 滑走路
2a 目標点標識
2c 滑走路中心線標識
3 航空機
5 操縦士
5e 眼球
5e5 網膜
9 太陽
A1 反射領域
A11 第1反射領域
A12 第2反射領域
B1 基底面
C1 凸部
C11 第1凸部
C12 第2凸部
C1a 第3凸部
C1b 第4凸部
Cn1 仮想直円錐
D4 第4方向
DL1 拡散反射光
E1 推定放射照度
E11 第1推定放射照度
E12 第2推定放射照度
Er 網膜放射照度
Er1 第1網膜放射照度
Er2 第2網膜放射照度
Et 臨界放射照度
Et1 第1臨界放射照度
Et2 第2臨界放射照度
L1 第1仮想線
L2 第2仮想線
L3 第3仮想線
Lc1 中心線
P1 第1点
P2 第2点
Pc1 中央部分
Pt1 第3ピッチ
Px1 第2ピッチ
Py1 第1ピッチ
RL1 正反射光
SL0 太陽光
Vp1 仮想鉛直面
Vp2 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28