(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177406
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】クレーンフック位置警報装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20231207BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B66C13/46 A
B66C13/22 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090037
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA01
3F204BA02
3F204CA03
3F204DB05
3F204DB08
3F204DC07
3F204FC03
(57)【要約】
【課題】フックとホイストとの位置関係が垂直であることを容易かつ確実に確認できるクレーンフック位置警報装置を提供する。
【解決手段】実施形態のクレーンフック位置警報装置は、光源を含む発光器と、前記光源に対向して配置されて前記光源から出射された光を受光することによってアクティブとなる信号を出力する受光素子を含む受光器と、を備える。前記発光器は、光を出射可能に前記光源を収納する第1ケースと、前記光の出射方向の反対方向に延伸するように設けられた下げ振り錘と、前記光源からの光の出射方向が前記下げ振り錘の延伸方向に平行となるように前記第1ケースを可動自在に支持する第2ケースと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動させる荷物を玉掛けするフックに設置され、光源を含む発光器と、
前記フックにロープを介して天井側に設けられたホイストに設置され、前記光源に対向して配置されて前記光源から出射された光を受光することによってアクティブとなる信号を出力する受光素子を含む受光器と、
を備え、
前記発光器は、
光を出射可能に前記光源を収納する第1ケースと、
前記光の出射方向の反対方向に延伸するように設けられた下げ振り錘と、
前記光源からの光の出射方向が前記下げ振り錘の延伸方向に平行となるように前記第1ケースを可動自在に支持する第2ケースと、
を含むクレーンフック位置警報装置。
【請求項2】
天井側に設けられたホイストに設置され、光源を含む発光器と、
前記ホイストにロープを介して接続され、移動させる荷物に玉掛けするフックに設置され、前記光源に対向して配置されて前記光源から出射された光を受光することによってアクティブとなる信号を出力する受光素子を含む受光器と、
を備え、
前記受光器は
光を受光可能に前記受光素子を収納する第3ケースと、
前記光の入射する受光面の法線方向に延伸するように設けられた下げ振り錘と、
前記受光面の法線方向が前記下げ振り錘の延伸方向に平行になるように前記第3ケースを可動自在に支持する第4ケースと、
を含むクレーンフック位置警報装置。
【請求項3】
前記受光器は、前記信号が非アクティブの場合に警報を出力し、前記信号がアクティブの場合に警報の出力を停止する請求項1または2に記載のクレーンフック位置警報装置。
【請求項4】
前記受光器は、前記信号がアクティブの場合に警報を出力し、前記信号が非アクティブの場合に警報の出力を停止する請求項1または2に記載のクレーンフック位置警報装置。
【請求項5】
前記受光器は、前記信号がアクティブの場合に警報を出力するか、前記信号が非アクティブの場合に警報を出力するかを選択可能とする請求項1または2に記載のクレーンフック位置警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、クレーンフック位置警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等での重量物等の移動には、天井クレーンが利用される。天井クレーンのホイストでは、繰り出されたロープの先端のフックに荷物を固定する。フックに荷物を固定する作業を玉掛け作業という。玉掛け作業時に、フックとホイストがほぼ垂直の位置関係にない場合には、荷物の地切りの際に荷物が振れることがある。荷物の振れが大きいと、荷物の落下やホイストやロープへの機械的ストレスが過大になるなど、事故や装置の不具合につながるおそれがある。
【0003】
そのため、荷物の吊り上げを行う作業者のほか、合図者が目視でフックとホイストとの位置が垂直であることを確認してから吊り上げを行っている。この確認作業は、合図者の目視に頼っているので、合図者の経験や目視する位置などによっては、フックとホイストとの位置関係がずれているにもかかわらず垂直であると判断され、地切り時に荷物が振れて事故につながる等との問題がある。
【0004】
クレーン作業時であることを周囲に知らせて危険を回避する技術(たとえば、特許文献1等)や、ホイストとフックとの垂直位置を検出して修正する技術(たとえば、特許文献2等)が知られている。しかしながら、これらの技術では、構成や構造の規模が大きく複雑であるため、実際に現場に導入することが容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-294596号公報
【特許文献2】特開2010-149943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、フックとホイストとの位置関係が垂直であることを容易かつ確実に確認できるクレーンフック位置警報装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、移動させる荷物を玉掛けするフックに設置され、光源を含む発光器と、前記フックにロープを介して天井側に設けられたホイストに設置され、前記光源に対向して配置されて前記光源から出射された光を受光することによってアクティブとなる信号を出力する受光素子を含む受光器と、を備える。前記発光器は、光を出射可能に前記光源を収納する第1ケースと、前記光の出射方向の反対方向に延伸するように設けられた下げ振り錘と、前記光源からの光の出射方向が前記下げ振り錘の延伸方向に平行となるように前記第1ケースを可動自在に支持する第2ケースと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、フックとホイストとの位置関係が垂直であることを容易かつ確実に確認できるクレーンフック位置警報装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るクレーンフック位置警報装置の一部である受光器を例示する模式的なブロック図である。
【
図2】実施形態に係るクレーンフック位置警報装置の一部である発光器を例示する模式的なブロック図である。
【
図3】実施形態に係るクレーンフック位置警報装置の使用方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係るクレーンフック位置警報装置の一部である受光器を例示する模式的なブロック図である。
図2は、実施形態に係るクレーンフック位置警報装置の一部である発光器を例示する模式的なブロック図である。
後述する
図3に関連して説明するように、実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1は、受光器10と、発光器20と、を備える。受光器10をホイスト101側に設置し、発光器20をフック102側に設置し、受光器10の受光部と発光器20の発光部が対向することによって、発光器20が発光する光を受光器10が受光する。受光器の受光部を鉛直下方に向け、発光器20の発光部を鉛直上方に向けて、発光器20が発光する光を受光器10が受光したことによって、クレーンフック位置警報装置1は、ホイスト101とフック102との位置が垂直であることを検出する。クレーンフック位置警報装置1は、音や視覚に訴える手段によって、垂直位置関係の有無をクレーンの作業者に報知する。
【0012】
受光器10および発光器20の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、受光器10は、受光素子11、制御回路12およびスピーカ13を含んでいる。受光器10は、発光器20からの光を受光するように、透明ケース14で受光素子11を覆っている。制御回路12およびスピーカ13は、ケース15に収納されている。透明ケース14は、ケース15の下部に設けられており、受光器10がホイスト101に設置された場合に、受光素子11は、鉛直下方に受光面の法線がほぼ一致して配置されるように透明ケース14内に設けられている。
【0013】
受光素子11は、発光器20から発光される光の特性、たとえば波長に応じて適切なものが選定される。発光器20から発光される光が可視光の場合には、受光素子11には、可視光用のフォトダイオード等が適用される。受光素子11は、発光器20からの光を受光すると、アクティブな電気信号である受光信号を出力する。
【0014】
制御回路12は、受光素子11およびスピーカ13に接続されている。制御回路12は、受光素子11からの受光信号を入力する。制御回路12は、受光信号が非アクティブの場合に警報信号を生成し、受光信号がアクティブとなった場合に警報信号の生成を終了する。制御回路12は、生成された警報信号をスピーカ13に出力し、スピーカ13は、警報音を出力する。制御回路12は、警報信号に代えて、スピーカ13から音声合成によるアナウンス等を出力するようにしてもよい。また、警報音や音声に代えて、あるいは警報音や音声に加えて、受光信号が非アクティブの場合に赤色灯等を点灯させ、視覚情報に訴えるようにしてもよい。
【0015】
制御回路12には、外部から電源が供給される。外部からの電源の供給は、たとえば、ホイストのための電源を利用することができる。外部からの電源供給に限らず、制御回路12は、電池等の内部電源により動作するようにしてももちろんかまわない。
【0016】
図2に示すように、発光器20は、発光素子21および駆動回路22を含んでいる。発光素子21は、駆動回路22に接続されている。駆動回路22には、電源が接続されており、駆動回路22は、電源の供給により発光素子21を発光するように動作する。電源は、外部から供給されてもよいし、乾電池や二次電池等により提供されてもよい。
【0017】
発光素子21は、受光素子11の受光特性に応じた光の特性を有する。好ましくは、発光素子21は、可視光を発光する。発光素子21は、たとえば、白色光を発光する発光ダイオードであり、好ましくは、狭配光角特性を有する。発光素子21からの出射光を可視光とすることによって、後述する実際の使用方法において説明するように、受光器10と発光器20との位置のずれを容易に視認することができる。また、狭配光角特性の発光素子21とすることによって、ホイスト101までの高さの異なる工場等の現場への適用が容易となる。
【0018】
発光器20は、可動ケース23、下げ振り錘24およびケース25をさらに含んでいる。可動ケース23は、発光素子21および駆動回路22を収納するケースである。可動ケース23の下部には鉛直下方に向けて下げ振り錘24が設けられている。可動ケース23の上面は、発光素子21から出射された光が透過するように透明である。
【0019】
可動ケース(第1ケース)23は、発光素子21が鉛直上方に光を放射するのとは反対側に半球面状の摺動面を有する。下げ振り錘24は、摺動面の下端に設けられている。
【0020】
ケース(第2ケース)25は、ケース25の上部で可動ケース23を可動自在に支持しつつ、下げ振り錘24が自在に振れる空間を有している。ケース25は、摺動部25aおよび錘収納部25bを含んでおり、摺動部25aは、錘収納部25bの上部に配置されている。摺動部25aは、半球面の凹面状の摺動面を有している。上面視で、摺動面のほぼ中央部には、下げ振り錘24が振れるための開口が設けられている。錘収納部25bは、開口に連結して設けられている。摺動部25aの半球凹面の半径は、可動ケース23の半球面の半径とほぼ同じか、若干大きく設定されている。
【0021】
可動ケース23の摺動面は、摺動部25aの摺動面に接して自在に摺動するように配置される。半球面状の摺動面と半球凹面状の摺動面は、互いに自在に摺動することができる。下げ振り錘24は、鉛直下方に延伸するので、可動ケース23に収納された発光素子21が出射する光は、下げ振り錘24を延伸させた方向に平行となる。したがって、光の出射方向は、ケース25が多少傾いたとしても、常に鉛直上方に向かう。
【0022】
接続部26は、この例のように、錘収納部25bの側面に設けられる。接続部26は、フックに発光器20を固定するために設けられている。接続部26の錘収納部25bの反対側の面には、フック102に接続するために、たとえば磁石が設けられている。フック102に接続できれば、磁石に限らず、両面テープや吸盤等でもよい。
【0023】
実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1の使用方法について説明する。
図3は、実施形態に係るクレーンフック位置警報装置の使用方法を説明するための模式図である。
図3に示すように、ホイスト101は、天井クレーンに結合されている。天井クレーンは、天井部Cに設けられたレールに結合されており、天井クレーンおよびホイスト101は、天井部Cを2次元で移動することができる。天井クレーンおよびホイスト101は、リモコンの操作により天井部Cを移動することができる。
【0024】
フック102は、ホイスト101からロープ103で繰り出されており、床面Gに載置された荷物200に玉掛けされる。
【0025】
受光器10は、たとえばホイスト101の底面に配置され、固定される。受光器10は、透明ケース14が下方を向いて、下方から放射される光を受光可能に配置される。
【0026】
発光器20は、たとえばフック102の側面に配置され、接続部26によりフック102に固定される。発光器20は、発光素子21が収納された可動ケースを上方に向くように配置され、鉛直上方に光を放射することができる。この場合、発光器20から放射される光は、下げ振り錘24により発光素子21の発光面が鉛直上方を向くので、発光器20を正確に鉛直上方に配置する必要はない。
【0027】
受光器10および発光器20の電源をそれぞれ投入すると、この図のように、ホイスト101とフック102との位置が垂直になっていない場合には、発光器20から鉛直上方に放射された光は、受光器10に到達しないので、受光器10は、警報音を出力する。
【0028】
天井クレーンの操作者は、リモコンを操作することにより、天井クレーンおよびホイスト101を移動させる。
【0029】
操作者は、警報音の出力が停止されるまで、天井クレーンおよびホイスト101を移動させる。
【0030】
操作者は、警報音の出力が停止した位置で天井クレーンおよびホイスト101の移動を停止する。
【0031】
このようにして、実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1により、ホイスト101とフック102との位置を垂直にすることができる。
【0032】
実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1の効果について説明する。
実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1は、受光器10と発光器20とを備えており、受光器10は、鉛直下方からの光を受光すると警報状態が解除される。また、発光器20は、鉛直上方へ光を放射することができる。そのため、上方のホイスト101に受光器10を設置し、下方のフック102に発光器20を設置することによって、ホイスト101とフック102との位置の垂直配置を容易かつ確実に検出することができる。
【0033】
ホイストとフックとの位置が垂直となっているか否かを検出し、垂直でない場合にホイストの位置を自動的に補正する技術(特許文献2等)が知られている。しかしながら、このような技術では、天井クレーンにホイストの位置検出のための新たな構造を追加する必要があり、この技術を適用するには、多大な費用や時間を要する。また、このような技術を既存の工場等に適用することは困難である。
【0034】
これに対して、実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1では、光の直進性を利用することによって、受光器10および発光器20を物理的に分離することができ、それぞれをホイスト101およびフック102に設置することが可能になる。そのため、多大な費用や時間を要することなく、容易に現場に適用することができる。
【0035】
実施形態に係るクレーンフック位置警報装置1では、発光器20に下げ振り錘24の延伸方向の逆向きに光を放射する構成としているので、直進する光を鉛直方向に平行な方向に設定することが容易である。そのため、発光器20の設置場所を選ぶことなく、容易かつ確実に鉛直上方に光を出射できる。
【0036】
なお、上述の具体例では、受光器10をホイスト101側に設置し、発光器20をフック102側に設置するものとしたが、発光器をホイスト101側に設置し、受光器をフック102側に設置するようにしてもよい。その場合には、発光器内の発光素子を鉛直下方に向くように配置し、受光器内の受光素子を鉛直上方に向くように配置する。また、受光素子の受光面が鉛直上方に正対するように、下げ振り錘が受光面と反対側に設けられる。
【0037】
上述の具体例では、受光器10は、発光器20から放射された光を受光することによって、警報出力が停止するものとしたが、発光器20から放射された光を受光することによって、警報を出力するようにしてもよい。警報の出力方式を受光器10側で切り替えられるようにしてもよい。発光器と受光器との上下の配置関係を入れ替えても同様である。現場の状況に応じて、いずれかを選択することができる。
【0038】
このようにして、フックとホイストとの位置関係が垂直であることを容易かつ確実に確認できるクレーンフック位置警報装置を実現することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…クレーンフック位置警報装置、10…受光器、11…受光素子、12…制御回路、13…スピーカ、14…透明ケース、15…ケース、20…発光器、21…発光素子、22…駆動回路、23…可動ケース、24…下げ振り錘、25…ケース、26…接続部、101…ホイスト、102…フック、103…ロープ