(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177415
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ポリアミドイミド及びポリアミドイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20231207BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C08G73/10
H05K1/03 610N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090058
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 紗理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA05
4J043PC015
4J043PC016
4J043QB26
4J043QB32
4J043QB33
4J043QB58
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SA11
4J043SA43
4J043SA46
4J043SB03
4J043TA12
4J043TA13
4J043TA21
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA041
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA762
4J043UB011
4J043UB401
4J043XA03
4J043XA16
4J043XB27
4J043ZA42
4J043ZB11
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】低い誘電率及び誘電正接を有するポリアミドイミドを提供する。
【解決手段】ジアミン及びジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物に由来する構造と、トリカルボン酸無水物を少なくとも含むカルボン酸化合物に由来する構造とを含み、前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種が、少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基を有する化合物を含み、前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種が、芳香族炭化水素基を有する化合物を含む、ポリアミドイミド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン及びジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物に由来する構造と、トリカルボン酸無水物を少なくとも含むカルボン酸化合物に由来する構造とを含み、
前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種が、少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基を有する化合物を含み、
前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種が、芳香族炭化水素基を有する化合物を含む、
ポリアミドイミド。
【請求項2】
前記カルボン酸化合物が、ジカルボン酸を更に含む、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項3】
前記少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基が、炭素数8以上の飽和脂肪族炭化水素基を含む、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項4】
前記炭素数が、28以上である、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項5】
引張強度が、80MPa以上である、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項6】
破断伸度が、8%以上である、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項7】
引張弾性率が、1.5GPa以上である、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項8】
10GHzでの誘電率が、3.6以下である、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項9】
10GHzでの誘電正接が、0.015以下である、請求項1に記載のポリアミドイミド。
【請求項10】
請求項1に記載のポリアミドイミドと、溶剤とを含有する、ポリアミドイミド含有液。
【請求項11】
請求項1に記載のポリアミドイミドを用いて得られる、ポリアミドイミドフィルム。
【請求項12】
請求項1に記載のポリアミドイミドを用いて得られる、プリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミドイミド、ポリアミドイミド含有液、ポリアミドイミドフィルム、及びプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミドは、電気絶縁性、耐熱性、耐薬品性、及び耐溶剤性に優れているため、様々な用途で広く用いられる。例えば、ポリアミドイミドは、エナメル線用ワニス、電子部品用保護フィルム、光学又は表示用フィルム等の材料として使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子部品の高集積化及び高周波数化が求められ、高周波数を含む広い周波数領域において絶縁材料の誘電特性を更に改善することが望まれている。そこで本開示は、低い誘電率及び誘電正接を有するポリアミドイミド、並びに、該ポリアミドイミドを含有するポリアミドイミド含有液を提供する。また、本開示は、優れた絶縁性を示すポリアミドイミドフィルム及びプリント基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0006】
(1) ジアミン及びジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物に由来する構造と、トリカルボン酸無水物を少なくとも含むカルボン酸化合物に由来する構造とを含み、
前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種が、少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基を有する化合物を含み、
前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種が、芳香族炭化水素基を有する化合物を含む、
ポリアミドイミド。
(2) 前記カルボン酸化合物が、ジカルボン酸を更に含む、上記(1)に記載のポリアミドイミド。
(3) 前記少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基が、炭素数8以上の飽和脂肪族炭化水素基を含む、上記(1)又は(2)に記載のポリアミドイミド。
(4) 前記炭素数が、28以上である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のポリアミドイミド。
(5) 引張強度が、80MPa以上である、上記(1)~(4)のいずれかに記載のポリアミドイミド。
(6) 破断伸度が、8%以上である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のポリアミドイミド。
(7) 引張弾性率が、1.5GPa以上である、上記(1)~(6)のいずれかに記載のポリアミドイミド。
(8) 10GHzでの誘電率が、3.6以下である、上記(1)~(7)のいずれかに記載のポリアミドイミド。
(9) 10GHzでの誘電正接が、0.015以下である、上記(1)~(8)のいずれかに記載のポリアミドイミド。
(10) 上記(1)~(9)のいずれかに記載のポリアミドイミドと、溶剤とを含有する、ポリアミドイミド含有液。
(11) 上記(1)~(9)のいずれかに記載のポリアミドイミド又は上記(10)に記載のポリアミドイミド含有液を用いて得られる、ポリアミドイミドフィルム。
(12) 上記(1)~(9)のいずれかに記載のポリアミドイミド又は上記(10)に記載のポリアミドイミド含有液を用いて得られる、プリント基板。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低い誘電率及び誘電正接を有するポリアミドイミド、並びに、該ポリアミドイミドを含有するポリアミドイミド含有液を提供することができる。また、本開示によれば、優れた絶縁性を示すポリアミドイミドフィルム及び基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下の実施形態は、単独で又は組み合わせて実施することが可能である。複数の実施形態の組み合わせも本発明に含まれる。
【0009】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、別の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本開示中に段階的に記載されている上限の数値と下限の数値とから、それぞれある数値を選択し、段階的な数値範囲としてもよい。また、本開示中に記載されている上限の数値と下限の数値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、ポリマー中の各構造には、該当する構造が複数種含まれていてもよい。ポリマー中に各構造に該当する構造が複数種存在する場合、各構造の含有率又は含有量は、特に断らない限り、ポリマー中に存在する当該複数種の構造の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において「層」には、連続する層と不連続な層とが含まれる。「層」の厚さは、均一であっても不均一であってもよい。「層」の面方向の外縁及び厚さ方向の外縁は、それぞれ、明確である場合と不明確である場合があり得る。「膜」についても同様である。
【0010】
<ポリアミドイミド>
本発明の実施形態において、ポリアミドイミドは、ジアミン及びジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物に由来する構造と、トリカルボン酸無水物を少なくとも含むカルボン酸化合物に由来する構造とを含む。前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種は、少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基を有する化合物を含む。かつ、前記化合物及び前記カルボン酸化合物から選択される少なくとも1種は、芳香族炭化水素基を有する化合物を含む。本開示において、「ジアミン及びジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物」を「ジアミン又はジイソシアネート化合物」という場合がある。カルボン酸化合物は、ジカルボン酸を更に含んでもよい。本開示において、「少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含み、該少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基」を「炭化水素基(X)」という場合がある。
【0011】
ポリアミドイミドにおいて、例えば、少なくともジアミン又はジイソシアネート化合物が炭化水素基(X)を有する化合物を含み、かつ、少なくともカルボン酸化合物が芳香族炭化水素基を有する化合物を含む。又は、ポリアミドイミドにおいて、例えば、少なくともジアミン又はジイソシアネート化合物が芳香族炭化水素基を有する化合物を含み、かつ、少なくともカルボン酸化合物が炭化水素基(X)を有する化合物を含む。なお、カルボン酸化合物が炭化水素基(X)を有する場合、カルボキシル基中の炭素数は、炭化水素基(X)の炭素数には含まれない。
【0012】
好ましい実施形態によれば、ポリアミドイミドにおいて、ジアミン又はジイソシアネート化合物が、炭化水素基(X)を有するジアミン又はジイソシアネート化合物と芳香族炭化水素基を有するジアミン又はジイソシアネート化合物とを含み、かつ、カルボン酸化合物が、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物を含む。他の好ましい実施形態によれば、ポリアミドイミドにおいて、ジアミン又はジイソシアネート化合物が、芳香族炭化水素基を有するジアミン又はジイソシアネート化合物を含み、かつ、カルボン酸化合物が、炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物と芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物とを含む。
【0013】
(炭化水素基(X))
ジアミン又はジイソシアネート化合物、及び、カルボン酸化合物が有し得る炭化水素基(X)は、少なくとも1つの非芳香族炭化水素基を含む。炭化水素基(X)において、少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数は、8以上である。炭化水素基(X)が1つの非芳香族炭化水素基を含む場合、合計の炭素数は、該1つの非芳香族炭化水素基に含まれる全ての炭素数を意味する。炭化水素基(X)が2つ以上の非芳香族炭化水素基を含む場合、合計の炭素数は、該2つ以上の非芳香族炭化水素基に含まれる全ての炭素数を意味する。炭化水素基(X)は、非芳香族炭化水素基以外の任意の基を更に含んでよい。炭化水素基(X)は、例えば、1~4価の基であり、好ましくは2~4価、より好ましくは2価である。
【0014】
非芳香族炭化水素基は、例えば、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂環式炭化水素基、不飽和脂環式炭化水素基、又は、これらから選択される2種以上からなる基である。飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってよい。不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状であってよい。炭化水素基(X)が2つ以上の非芳香族炭化水素基を含む場合、2つ以上の非芳香族炭化水素基は互いに同じであっても異なってもよい。
【0015】
飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、1~50、2~40、3~30、4~20、又は5~10である。飽和脂肪族炭化水素基は、例えば、直鎖状又は分岐状のアルカンから1~4個の水素原子を除いた原子団である。アルカンの例として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ヘキサコサン、オクタコサン、トリアコンタン、テトラコンタン、及びペンタコンタンが挙げられる。
【0016】
不飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、2~50、2~40、3~30、4~20、又は5~10である。不飽和脂肪族炭化水素基に含まれる炭素-炭素不飽和結合は、1個以上であり、例えば、5個以下、4個以下、3個以下、又は2個以下であってよい。不飽和脂肪族炭化水素は、1個の炭素-炭素二重結合を含むアルケン、又は、1個の炭素-炭素三重結合を含むアルキンであってよい。不飽和脂肪族炭化水素基は、例えば、直鎖状又は分岐状のアルケンから1~4個の水素原子を除いた原子団、又は、直鎖状又は分岐状のアルキンから1~4個の水素原子を除いた原子団である。アルケンの例として、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、ヘンエイコセン、ドコセン、トリコセン、テトラコセン、ペンタコセン、ヘキサコセン、ヘプタコセン、オクタコセン、ノナコセン、トリアコンテン、テトラコンテン、及びペンタコンテンが挙げられる。アルキンの例として、エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニン、デシン、ウンデシン、ドデシン、トリデシン、テトラデシン、ペンタデシン、ヘキサデシン、ヘプタデシン、オクタデシン、ノナデシン、エイコシン、ヘンエイコシン、ドコシン、トリコシン、テトラコシン、ペンタコシン、ヘキサコシン、ヘプタコシン、オクタコシン、ノナコシン、トリアコンチン、テトラコンチン、及びペンタコンチンが挙げられる。
【0017】
飽和脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば、3~20、4~16、5~10、又は6~8である。飽和脂環式炭化水素基は、例えば、シクロアルカンから1~4個の水素原子を除いた原子団である。シクロアルカンの例として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、デカリン、ビシクロブタン、ビシクロヘキサン、ビシクロオクタン、スピロペンタン、スピロヘプタン、グアドリシクラン、及びアダマンタンが挙げられる。
【0018】
不飽和脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば、4~20、5~10、又は6~8である。不飽和脂肪族炭化水素基に含まれる炭素-炭素不飽和結合は、1個以上であり、例えば、5個以下、4個以下、3個以下、又は2個以下であってよい。不飽和脂肪族炭化水素は、1個の炭素-炭素二重結合を含むシクロアルケン、又は、1個の炭素-炭素三重結合を含むシクロアルキンであってよい。不飽和脂環式炭化水素基は、例えば、シクロアルケンから1~4個の水素原子を除いた原子団、又は、シクロアルキンから1~4個の水素原子を除いた原子団である。不飽和脂環式炭化水素の例として、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、及びビシクロオクタジエンが挙げられる。
【0019】
炭化水素基(X)が含むことができる任意の基として、例えば、芳香族炭化水素基及びヘテロ原子を含む基が挙げられる。
【0020】
芳香族炭化水素基の炭素数は、例えば、6~30、6~20、又は6~10である。芳香族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素から1~4個の水素原子を除いた原子団である。芳香族炭化水素の例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、及びペンタンが挙げられる。
【0021】
ヘテロ原子を含む基としては、例えば、複素環式化合物基、ヘテロ原子を含む連結基、及びヘテロ原子を含む置換基が挙げられる。複素環式化合物基は、非芳香族複素環化合物から1~4個の水素原子を除いた原子団、又は、芳香族複素環化合物から1~4個の水素原子を除いた原子団である。非芳香族複素環化合物の例として、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、及びジオキサンが挙げられる。芳香族複素環化合物の例として、ピリジン、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェンが挙げられる。ヘテロ原子を含む連結基の例として、オキシ基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、イミノ基等が挙げられる。ヘテロ原子を含む置換基の例として、ヒロロキシル基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、カルボキシル基、フルオロ基、クロロ基等が挙げられる。
【0022】
炭化水素基(X)に含まれる少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数は、8以上である。以下に、炭化水素基(X)と、該炭化水素基(X)に含まれる少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数の例を挙げる。また、参考例として、炭化水素基(X)に該当しない基の例を挙げる。
【0023】
【0024】
炭化水素基(X)に含まれる少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数は、8以上である。炭素数は、例えば、12以上、16以上、20以上、24以上、28以上、32以上、又は36以上であってよい。炭化水素基(X)に含まれる少なくとも1つの非芳香族炭化水素基の合計の炭素数は、例えば、50以下である。炭素数は、例えば、48以下、44以下、40以下、又は36以下であってよい。非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である場合、誘電率が低く、かつ、誘電正接が低いポリアミドイミドを得ることができる。非芳香族炭化水素基の合計の炭素数が50以下である場合、原料モノマーを入手しやすく、ポリアミドイミドを容易に合成できる。ポリアミドイミドが芳香族炭化水素基の合計の炭素数が8以上である基を有していても、誘電率が低く、かつ、誘電正接が低いポリアミドイミドを得ることができない。
【0025】
炭化水素基(X)は、好ましくは飽和脂肪族炭化水素基を含み、より好ましくは炭素数6以上の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数8以上)を含む。ポリアミドイミドが、炭素数6以上の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を含む構造を含む場合、誘電率がより低く、かつ、低誘電正接がより低くなりやすい傾向がある。炭素数6以上の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を有することにより、ポリアミドイミド分子内の極性(双極子モーメント)が小さくなり、誘電率が低下すると考えられる。
【0026】
炭化水素基(X)は、好ましくは、下記式(G1)で表される基~下記式(G5)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0027】
【0028】
式中、Raは、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族炭化水素基、又は、直鎖状又は分岐状の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。Rbは、それぞれ独立に、飽和脂環式炭化水素基又は不飽和脂環式炭化水素基を表す。Lは、単結合又はヘテロ原子を含む連結基を表す。Ra及びRbは、それぞれ独立に、置換基を有しても、又は、置換基を有しなくてもよい。
【0029】
好ましい実施形態において、ポリアミドイミドは、式(G1)で表される基を有する化合物に由来する構造(例えば、Raの炭素数は8以上である。)を含む。そのような化合物として、ポリメチレンジアミン、ポリメチレンジイソシアネート、ポリメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
他の好ましい実施形態において、ポリアミドイミドは、式(G2)で表される基を有する化合物に由来する構造(例えば、Rbの炭素数はそれぞれ独立に6以上であり、好ましくは8以上である。)、式(G3)で表される基を有する化合物に由来する構造(例えば、Raの炭素数はそれぞれ独立に6以上であり、好ましくは8以上である。)、及び式(G5)で表される基を有する化合物に由来する構造(例えば、Rbの炭素数は6であり、Raの炭素数はそれぞれ独立に6以上であり、好ましくはRbの炭素数は6であり、Raの炭素数はそれぞれ独立に6以上である。)からなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む。これらの化合物として、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ダイマージアミン、水添ダイマージアミン、ダイマージイソシアネート、水添ダイマージイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
(芳香族炭化水素基)
ジアミン又はジイソシアネート化合物、及び、カルボン酸化合物が有し得る芳香族炭化水素基の炭素数は、例えば、6~30、6~20、又は6~10である。芳香族炭化水素基は、例えば、芳香族炭化水素から1~4個の水素原子を除いた原子団である。芳香族炭化水素の例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、及びペンタンが挙げられる。ポリアミドイミドが芳香族炭化水素基を含むと、良好な耐熱性及び機械的特性が得られやすい。
【0031】
(炭化水素基(X)を有するジアミン又はジイソシアネート化合物)
炭化水素基(X)を有するジアミン又はジイソシアネート化合物として、上述の炭化水素基(X)と該炭化水素基(X)に結合した2個のアミノ基とを有するジアミン、又は、上述の炭化水素基(X)と該炭化水素基(X)に結合した2個のイソシアネート基とを有するジイソシアネートが挙げられる。
【0032】
さらに、炭化水素基(X)を有するジアミンの具体例として、以下が挙げられる。
1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン等の飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数が8以上のジアミン;
1,9-ジアミノオクテン、1,9-ジアミノノネン、1,10-ジアミノデセン、1,11-ジアミノウンデセン、1,12-ジアミノドデセン、1,14-ジアミノテトラデセン、1,16-ジアミノヘキサデセン等の不飽和脂肪族炭化水素基を有する炭素数が9以上のジアミン;
イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,3-ジアミノアダマンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-(3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン等の飽和脂環式炭化水素基を有する炭素数が8以上のジアミン;
ビス(アミノメチル)ノルボルネン、4,4’-ジアミノジシクロヘキセニルメタン等の不飽和脂環式炭化水素基を有する炭素数が8以上のジアミン;
クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等のモノ不飽和脂肪酸;リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸などの不飽和脂肪酸の二量体(ダイマー酸ともいう。)から誘導される炭素数が8以上のダイマージアミン;
前記ダイマージアミンにおいて、分子内に含まれる炭素-炭素二重結合が水素化された化合物である炭素数が8以上の水添ダイマージアミン
【0033】
炭化水素基(X)を有するジイソシアネートの具体例として、アミノ基をイソシアネート基に置き換えた以外は上記ジアミンの具体例として示した化合物と同じ構造を持つ化合物が挙げられる。
【0034】
(炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物)
炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物として、上述の炭化水素基(X)と該炭化水素基(X)に結合した1個のカルボキシル基及び1個の酸無水物基とを有するトリカルボン酸無水物、又は、上述の炭化水素基(X)と該炭化水素基(X)に結合した2個のカルボキシル基とを有するジカルボン酸が挙げられる。
さらに、炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物の具体例として、以下が挙げられる。
デカヒドロナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビシクロヘキサントリカルボン酸無水物、2,3,2’-ビシクロヘキサントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビシクロヘキサンメタントリカルボン酸無水物、等の脂肪族トリカルボン酸無水物;
アミノ基をカルボキシル基に置き換えた以外は上記炭化水素基(X)を有するジアミンの具体例として示した化合物と同じ構造を持つジカルボン酸
【0035】
(芳香族炭化水素基を有するジアミン又はジイソシアネート化合物)
芳香族炭化水素基を有するジアミン又はジイソシアネート化合物として、上述の芳香族炭化水素基を1個以上と、2個のアミノ基とを有するジアミン、又は、上述の芳香族炭化水素基を1個以上と、2個のイソシアネート基とを有するジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
さらに、芳香族炭化水素基を有するジアミンの具体例として、以下が挙げられる。
1,4-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-(ビフェニル-2,5-ジイルビスオキシ)ビスアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ネオペンタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、N-(4-アミノフェノキシ)-4-アミノベンズアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、ノルボルナンジアミン、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル、5-トリフルオロメチル-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-{4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2-トリフルオロメチル-p-フェニレンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,7-ジアミノフルオレン、1,5-ジアミノナフタレン、及び3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェン5,5-ジオキシド等の芳香族炭化水素基を有するジアミン(ただし、ジアミン中に含まれる非芳香族炭化水素基に含まれる合計の炭素数は0~7である。)
【0037】
芳香族炭化水素基を有するジイソシアネートの具体例として、アミノ基をイソシアネート基に置き換えた以外は上記ジアミンの具体例として示した化合物と同じ構造を持つ化合物が挙げられる。
【0038】
(芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物)
炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物として、上述の炭化水素基(X)と該炭化水素基(X)に結合した2個のカルボキシル基とを有するジカルボン酸、又は、上述の炭化水素基(X)と該炭化水素基(X)に結合した1個のカルボキシル基及び1個の酸無水物基とを有するトリカルボン酸無水物が挙げられる。
さらに、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物の具体例として、以下が挙げられる。
トリメリット酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、又は3,4,4’-ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等の芳香族トリカルボン酸;
アミノ基をカルボキシル基に置き換えた以外は上記芳香族炭化水素基を有するジアミンの具体例として示した化合物と同じ構造を持つジカルボン
【0039】
(任意の構造)
ポリアミドイミドは、ジアミン及びジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む化合物に由来する構造と、トリカルボン酸無水物を少なくとも含むカルボン酸化合物に由来する構造以外にも任意の構造を含むことができる。任意の構造の例として、3官能以上のアミン又はイソシアネートに由来する構造、1官能のアミン又はイソシアネートに由来する構造等が挙げられる。カルボン酸化合物は、トリカルボン酸無水物以外に任意の化合物を含むことができる。任意の化合物の例として、ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0040】
(製造方法)
ポリアミドイミドは、少なくとも、ジアミン又はジイソシアネート化合物とカルボン酸化合物とを反応させて得られる。反応には、これらの化合物を、それぞれ1種のみ使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。他の任意の化合物を反応させてもよい。
【0041】
ポリアミドイミドの合成条件は多様であり、一概に特定できないが、例えば、80~180℃の温度で行うことができる。合成は、空気中の水分の影響を低減するため、窒素等の雰囲気下で行うことが好ましい。合成されたポリアミドイミドは、例えば、反応に使用した溶媒に溶解したポリアミドイミド含有液として得られる。
【0042】
溶媒に特に制限はないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(MPA)、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルプロピレン尿素〔1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリジミン-2(1H)-オン〕、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン等の極性溶媒;キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒などを使用できる。溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(MPA)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(MPA)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0043】
反応時の溶媒の使用量は、カルボン酸化合物と、ジアミン又はジイソシアネート化合物との合計量100質量部に対して、100~300質量部とすることが好ましく、150~250質量部とすることがより好ましい。溶媒の使用量が100質量部以上であると、発泡を伴う反応を防止しやすい傾向がある。溶媒の使用量が300質量部以下であると、合成時間が長くなりすぎることを防止できる傾向があり、また、合成後に得られる溶液に含まれるポリアミドイミドの濃度が十分となる傾向がある。
【0044】
カルボン酸化合物と、ジアミン又はジイソシアネート化合物とは、カルボキシル基及び酸無水物基、並びに反応性のヒドロキシル基が存在するときは、それらの官能基のモル数に対するアミノ基及びイソシアネート基のモル数の比が、好ましくは0.6~1.4、より好ましくは0.7~1.3、更に好ましくは0.8~1.2となるように反応させることが好ましい。この比が0.6以上であるとポリアミドイミドの分子量を大きくすることが容易となる傾向がある。この比が1.4以下であると、発泡を伴う反応が激しくなり未反応物の残存量が多くなることを防止し、ポリアミドイミドの良好な安定性が得られやすい傾向がある。
【0045】
(炭化水素基(X)を有する化合物に由来する構造の含有率等)
ポリアミドイミドに含まれる炭化水素基(X)を有する化合物に由来する構造の含有率は、ジアミン又はジイソシアネート化合物に由来する構造とカルボン酸化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、5~50モル%、7~30モル%、又は8~20モル%である。ポリアミドイミドに含まれる芳香族炭化水素基を有する化合物に由来する構造の含有率は、ジアミン又はジイソシアネート化合物に由来する構造とカルボン酸化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、50~95モル%、70~93モル%、又は80~92モル%である。
【0046】
ポリアミドイミドにおいて、ジアミン又はジイソシアネート化合物が、炭化水素基(X)を有するジアミン又はジイソシアネート化合物と芳香族炭化水素基と有するジアミン又はジイソシアネート化合物とを含み、かつ、カルボン酸化合物が、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物を含む場合、炭化水素基(X)を有するジアミン又はジイソシアネート化合物に由来する構造の含有率は、ジアミン又はジイソシアネート化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、5~50モル%、8~40モル%、又は10~30モル%である。芳香族炭化水素基を有するジアミン又はジイソシアネート化合物に由来する構造の含有率は、ジアミン又はジイソシアネート化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、50~95モル%、60~92モル%、又は70~90モル%である。
ポリアミドイミドにおいて、ジアミン又はジイソシアネート化合物が、芳香族炭化水素基を有するジアミン又はジイソシアネート化合物を含み、かつ、カルボン酸化合物が、炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物と芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物とを含む場合、炭化水素基(X)を有するカルボン酸化合物に由来する構造の含有率は、カルボン酸化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、10~60モル%、15~50モル%、又は20~40モル%である。芳香族炭化水素基を有するカルボン酸化合物に由来する構造の含有率は、カルボン酸化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、40~90モル%、50~85モル%、又は60~80モル%である。
【0047】
ポリアミドイミドにおいて、トリカルボン酸無水物に由来する構造の含有率は、カルボン酸化合物に由来する構造の含有率を基準として、例えば、50モル%超、60モル%以上、又は65モル%以上である。上限は100モル%でよいが、ジカルボン酸等の他のカルボン酸に由来する構造を含む場合は、例えば、90モル%以下、80モル%以下、又は75モル%以下である。ポリアミドイミドにおいて、ジカルボン酸に由来する構造を含む場合、ジカルボン酸に由来する構造の含有率は、例えば、50モル%未満、40モル%以下、又は35モル%以下である。
【0048】
(数平均分子量)
ポリアミドイミドの数平均分子量は、3,000~100,000であることが好ましい。数平均分子量が3,000以上であると、強度等の諸特性が向上する傾向がある。ポリアミドイミドの数平均分子量は、5,000以上、8,000以上、15,000以上、又は20,000以上であってよい。数平均分子量が100,000以下であると、良好な塗工性が得られやすい傾向がある。ポリアミドイミドの数平均分子量は、80,000以下、50,000以下、35,000以下、30,000以下、又は27,000以下であってよい。
【0049】
ポリアミドイミドの比誘電率(10GHz)は、例えば、優れた絶縁性を得る観点から、4.0以下、3.6以下、3.3以下、又は3.1以下である。ポリアミドイミドの比誘電率は、特に制限されないが、耐熱性、引張強度、及び引張弾性率の低下を防止する観点から、例えば2.0以上である。
【0050】
ポリアミドイミドの誘電正接(10GHz)は、例えば、伝送損失を抑える観点から、0.020以下、0.015以下、又は0.010以下である。ポリアミドイミドの誘電正接は、特に制限されないが、0.0001以上であってよく、0.0005以上であってよい。
【0051】
ポリアミドイミドの引張強度は、例えば、成形体の強度の観点から、30MPa以上、50MPa以上、又は80MPa以上である。ポリアミドイミドの引張強度は、特に制限されないが、例えば、加工時の延伸性の観点から、400MPa以下、300MPa以下、又は250MPa以下である。
【0052】
ポリアミドイミドの破断伸度は、例えば、成形体の柔軟性の観点から、3%以上、5%以上、又は8%以上である。20%以上、30%以上、又は50%以上であってもよい。ポリアミドイミドの破断伸度は、特に制限されないが、例えば、300%以下、200%以下、又は100%以下である。
【0053】
ポリアミドイミドの引張弾性率は、例えば、成形体の強度の観点から、0.5GPa以上、0.7GPa以上、1.0GPa以上、又は1.5GPa以上である。ポリアミドイミドの引張弾性率は、例えば、成形体の柔軟性の観点から、7GPa以下、6GPa以下、又は5GPa以下である。
【0054】
ポリアミドイミドのガラス転移温度(Tg)は、例えば、成形体の耐熱性の観点から、120℃以上、140℃以上、又は160℃以上である。上限は特に制限されないが、例えば、350℃以下、又は300℃以下である。
【0055】
本開示において、ポリアミドイミドの比誘電率、誘電正接、引張強度、破断伸度、引張弾性率、及びガラス転移温度(Tg)は、それぞれ、実施例に記載の方法に従ってポリアミドイミドフィルムを作製し、作製したポリアミドイミドフィルムを用いて実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0056】
[用途]
ポリアミドイミドは、各種の電子部品及び機械部品に用いることができ、例えば、ディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、有機EL照明、プリント基板等に用いることができる。
【0057】
<ポリアミドイミド含有液>
本発明の実施形態であるポリアミドイミド含有液は、ポリアミドイミドと溶媒とを含有する。溶媒として、ポリアミドイミドの合成に使用できる上述の反応時の溶媒が挙げられる。溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(MPA)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、及び3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(MPA)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0058】
ポリアミドイミド含有液中のポリアミドイミドの含有量は、ポリアミドイミド含有液の用途に適した範囲にできる。ポリアミドイミドの含有量は、ポリアミドイミド含有液の質量を基準として、例えば、5~60質量%、10~50質量%、又は、20~45質量%である。
【0059】
ポリアミドイミド含有液は、絶縁体用組成物、耐熱絶縁体用組成物、又はプリント基板用組成物として、又は、これらの組成物の調製のために好ましく使用できる。組成物は、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、アクリルポリマー、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、充填材、消泡剤、防腐剤、界面活性剤等の任意の成分を更に含有してよい。組成物は、例えば、ポリアミドイミド含有液と、必要に応じて使用される任意の成分とを混合し、撹拌する方法により製造することができる。
【0060】
<ポリアミドイミドフィルム>
本発明の実施形態であるポリアミドイミドフィルムは、上記実施形態のポリアミドイミド、若しくはポリアミドイミド含有液を用いて得られるか、又は、上記実施形態のポリアミドイミドフィルムを含む。本発明の実施形態であるポリアミドイミドフィルムは、絶縁性に優れている。
【0061】
ポリアミドイミドフィルムは、例えば、ガラス板等の基材上にポリアミドイミド含有液を塗布し、乾燥させた後に加熱して得ることができる。乾燥温度は、例えば、50~100℃でよい。加熱温度は、例えば、230~350℃でよい。ポリアミドイミドフィルムの膜厚は用途に応じて適宜設定すればよく、例えば、5~1,000μm、10~100μm、又は20~50μmとできる。
【0062】
<プリント基板>
本発明の実施形態であるプリント基板は、上記実施形態のポリアミドイミド、若しくはポリアミドイミド含有液を用いて得られるか、又は、上記実施形態のポリアミドイミドフィルムを含む。本発明の実施形態であるプリント基板は、伝送損失が小さく、耐熱性に優れている。
【0063】
プリント基板の例として、プリント配線板とプリント回路板とが挙げられる。プリント基板の例として、フレキシブル基板とリジッド基板とが挙げられる。プリント基板の例として、片面基板、両面基板、及び多層基板が挙げられる。例えば、これらの基板の材料、保護膜、絶縁層等がポリアミドイミド若しくはポリアミドイミド含有液を用いて得られるか、又は、ポリアミドイミドフィルムを含む。
【0064】
フレキシブル基板の例として、ベースフィルムを備え、ベースフィルムがポリアミドイミド若しくはポリアミドイミド含有液を用いて得られるか、又は、ポリアミドイミドフィルムを含む基板が挙げられる。フレキシブル基板の他の例としては、ベースフィルムと、ベースフィルム上に形成された耐熱絶縁層とを備え、少なくとも耐熱絶縁層がポリアミドイミド若しくはポリアミドイミド含有液を用いて得られるか、又は、ポリアミドイミドフィルムを含む基板が挙げられる。
【実施例0065】
本発明の実施形態について実施例により具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例に限定されない。
【0066】
[実施例1]
(ポリアミドイミドの調製)
無水トリメリット酸(TMAC)19.2g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)20.0g、ダイマー酸ジアミン(DDA)(炭素数36の炭化水素基(X)を有する。「PRIAMINE1075」、クローダジャパン株式会社))10.7g、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)60.0gを、温度計、撹拌機、及び冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら、2時間かけて徐々に130℃まで昇温した。反応により生じる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら、130℃に保持し、そのまま6時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド溶液を得た。得られたポリアミドイミドの数平均分子量は32,000であった。数平均分子量は以下の方法により求めた。使用したダイマー酸ジアミンの構造式を以下に示す。
【0067】
【0068】
(数平均分子量)
数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(「TSK standard POLYSTYRENE」、東ソー株式会社製)を用いて3次式で近似した。GPCの条件を、以下に示す。
GPC装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
検出器:紫外吸光検出器 UV-8320(東ソー株式会社製)
カラム:Gelpack GL-S300MDT-5(計2本)(昭和電工マテリアルズ株式会社製)
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)+LiBr(0.06mol/L)+H3PO4(0.06mol/L)
流量:1mL/分
カラムサイズ:8mmI.D.×300mm
試料濃度:5mg/1mL
注入量:5μL
測定温度:40℃
【0069】
(ポリアミドイミドフィルムの作製)
得られたポリアミドイミド溶液をガラス基材に塗布して塗膜を形成した。80℃、30分間の条件で加熱して塗膜を乾燥させた後、270℃、30分間の条件で加熱して膜厚が20μmのポリアミドイミドフィルムを作製した。ガラス基材からポリアミドイミドフィルムを剥離し各種評価に使用した。
【0070】
[実施例2及び比較例1、2]
表2に示すジアミン化合物及び/又はジイソシアネート化合物と、酸成分とに変更した以外は実施例1と同様にしてポリアミドイミド溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量を表2に示す。得られたポリアミドイミド溶液を用いて実施例1と同様にしてポリアミドイミドフィルムを作製し、各種評価に使用した。表2中、SEBACはセバシン酸を(炭素数8の炭化水素基(X)を有する)、TODIは3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイルジイソシアネートを意味する。
【0071】
<フィルムの評価>
以下の方法に従い、実施例1、2及び比較例1、2のワニスを用いて作製したフィルムの特性を評価した。表2に評価結果を示す。
【0072】
(引張強度、引張弾性率、及び破断伸度)
ポリアミドイミドフィルムを幅10mm、長さ60mmのサイズに切り出し、試験片を作製した。以下の測定条件にて引張試験をし、引張試験中に加わった最大引張応力を引張強度(MPa)とした。破断伸度(%)は、破断するまでの試験片の伸び量をチャック間距離20mmで割ることにより算出した。また、応力立ち上がり初期の弾性変形領域の傾きからヤング率(MPa)を算出し、得られた値を引張弾性率(MPa)とした。その他の詳細な条件及び算出方法は、国際規格ISO 5271(1993)に準じて行った。
装置名:株式会社島津株式会社製「オートグラフAGS-100NG」
試験速度:5mm/min
チャック間距離:20mm
試験片サイズ:幅10mm,長さ60mm
設定温度:室温(25℃)
【0073】
(ガラス転移温度)
ポリアミドイミドフィルムを幅4mm、長さ25mmに切り出し、試料片を作製した。測定には、熱機械分析装置(「TMA7100」、日立ハイテクサイエンス社製)を使用した。試験片を、チャック間距離10mm、荷重10g、引張法にて室温から10℃/分の速度で350℃まで昇温し、線熱膨張係数曲線の変曲点に対応する温度をガラス転移温度(℃)とした。
【0074】
(比誘電率及び誘電正接)
ポリアミドイミドフィルムを60mm×60mmサイズに切り出し、125℃で1時間にわたり乾燥処理を行った後、測定を実施した。フィルムの誘電特性(比誘電率Dk及び誘電正接Df)を空洞共振器法(TEモード)にて測定した。測定には、アンリツ株式会社製「MS46122B」を使用した。条件は周波数10GHz、測定温度25℃とした。
【0075】