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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177427
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090081
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD11
3D023BE04
(57)【要約】
【課題】内装製品を構成する他の部材との締結部を基材の裏面の外縁寄り側に設定して意匠の見切りに近づけることができる内装材を提供する。
【解決手段】本内装材(オーナメント1)は、板状の基材2と、基材の表面を覆う表皮材3と、を備え、表皮材は、光ファイバー5が構成糸として織り込まれた織物6を有する。そして、基材の裏面の端部には、表皮材の端部から露出する複数の光ファイバーを基材の裏面に沿うようにまとめる束ね構造21Aが設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材と、前記基材の表面を覆う表皮材と、を備える内装材であって、
前記表皮材は、光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物を有し、
前記基材の裏面の端部には、前記表皮材の端部から露出する複数の前記光ファイバーを前記基材の裏面に沿うようにまとめる束ね構造が設けられていることを特徴とする内装材。
【請求項2】
前記束ね構造は、前記基材の裏面上に立ち上げられた立壁を有し、
前記立壁には、複数の前記光ファイバーが挿通可能な挿通孔が形成されている請求項1に記載の内装材。
【請求項3】
前記束ね構造は、前記基材の裏面上に立ち上げられて互いに対向する一対の立壁を有し、
一対の前記立壁の各先端側には、複数の前記光ファイバーを一対の前記立壁の間に挿入可能な鉤状部が設けられている請求項1に記載の内装材。
【請求項4】
前記束ね構造は、前記基材の少なくとも一辺部に沿って複数設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内装材。
【請求項5】
車両用ドアトリムを構成するオーナメントである請求項1に記載の内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装材に関し、さらに詳しくは、板状の基材と基材の表面を覆う表皮材とを備える内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内装材として、車両用ドアトリムを構成するオーナメントが一般に知られている。このオーナメント101は、例えば図13に示すように、板状の基材102と、基材102の表面を覆う表皮材103と、を備えている。この表皮材103として、光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物を有する光ファイバー表皮材103を採用することがある(例えば、特許文献1等を参照)。この光ファイバー表皮材103においては、表皮材103の端部から露出する複数の光ファイバー105は、その先端部がスリーブ108などにより結束されることで熊手状の光ファイバー束Bをなしている。このような光ファイバー表皮材103を基材102の表面に貼り合わせた際には、表皮材103の端部から意匠外に出る熊手状の光ファイバー束Bが運搬等の取り回し時にぶらつき、むき出しの光ファイバー105が傷ついてしまう恐れがある。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、例えば図13(b)中に仮想線で示すように、コルゲートチューブ148などで熊手状の光ファイバー束Bをロープ状にまとめて保護する対策が考えられる。さらに、例えば図14に示すように、光ファイバー表皮材103の末端を延長して基材102の裏面に巻き込むことにより、基材102の裏面に沿うように熊手状の光ファイバー束Bをある程度固定する対策が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-193200号公報
【特許文献2】特開2018-140674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前者の対策では、コルゲートチューブ148などを設定する必要があり、生産コストが高くなる。また、後者の対策では、光ファイバー表皮材103の基材102の裏面への巻き込み代149(例えば、10~30mm程度)があるため、基材102の裏面の光ファイバー表皮材103の貼り付けエリアには、ドアトリム141の他の構成部材143との締結部110を設定することができない(図12(c)参照)。さらに、基材102の裏面には熊手状の光ファイバー束Bが存在しているため、光ファイバー105の噛み込みを考慮して締結部110を熊手状の光ファイバー束Bから離れた位置に設定する必要がある。その結果、締結部110を基材102の外縁寄り側に設定できず、オーナメント101の意匠の見切りD2(即ちオーナメント101の意匠面に対する他の内装材145の当接部位)から遠ざけて設定しなければならない。なお、この問題は、車両用ドアトリムを構成するオーナメントの他に、光ファイバー表皮材で基材の表面を覆う内装材においては同様に生じる。
【0006】
なお、特許文献2には、スラッシュ成形型により形成される表皮材の延長部を基材の裏面側に折り返し、その延長部に設けた表皮側係止部を基材の裏面に設けた基材側係止部で係止する技術が記載されているが、内装製品を構成する他の部材との締結部を基材の裏面の外縁寄り側に設定して意匠の見切りに近づけるための技術に関しては全く記載されていない。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、内装製品を構成する他の部材との締結部を基材の裏面の外縁寄り側に設定して意匠の見切りに近づけることができる内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、板状の基材と、前記基材の表面を覆う表皮材と、を備える内装材であって、前記表皮材は、光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物を有し、前記基材の裏面の端部には、前記表皮材の端部から露出する複数の前記光ファイバーを前記基材の裏面に沿うようにまとめる束ね構造が設けられていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記束ね構造は、前記基材の裏面上に立ち上げられた立壁を有し、前記立壁には、複数の前記光ファイバーが挿通可能な挿通孔が形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記束ね構造は、前記基材の裏面上に立ち上げられて互いに対向する一対の立壁を有し、一対の前記立壁の各先端側には、複数の前記光ファイバーを一対の前記立壁の間に挿入可能な鉤状部が設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記束ね構造は、前記基材の少なくとも一辺部に沿って複数設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、車両用ドアトリムを構成するオーナメントであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内装材によると、表皮材は、光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物を有し、基材の裏面の端部には、表皮材の端部から露出する複数の光ファイバーを基材の裏面に沿うようにまとめる束ね構造が設けられている。これにより、内装製品を構成する他の部材との締結部を基材の裏面の外縁寄り側に設定して意匠の見切りに近づけることができる。
また、前記束ね構造が立壁を有し、前記立壁に挿通孔が形成されている場合は、複数の光ファイバーを挿通孔に挿通することで簡易にまとめることができる。
また、前記束ね構造が一対の立壁を有し、一対の前記立壁の各先端側に鉤状部が設けられている場合は、複数の光ファイバーを各鉤状部から一対の立壁の間に挿入することで簡易にまとめることができる。さらに、各鉤状部により一対の立壁の間に挿入された複数の光ファイバーの抜け出しが抑制される。
さらに、前記束ね構造が前記基材の少なくとも一辺部に沿って複数設けられている場合は、表皮材の端部から露出する複数の光ファイバーを所定数毎に分けて各束ね構造でまとめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施例に係るオーナメントを備える車両用ドアトリムの正面図である。
図2図1のII-II線断面拡大図である。
図3図1のIII-III線断面拡大図である。
図4】上記オーナメントの裏面から見た斜視図である。
図5図4の要部拡大図である。
図6】実施例に係る束ね構造の斜視図である。
図7図6のVII矢視部の拡大図であり、(a)は立壁と補強リブが離れている形態を示し、(b)(c)は立壁と補強リブが繋がっている形態を示す。
図8】実施例に係る表皮材の斜視図である。
図9】他の形態に係る束ね構造の斜視図であり、(a)は長孔状の挿通孔を有する形態を示し、(b)は複数の挿通孔を有する形態を示す。
図10】他の形態に係るオーナメントを説明するための説明図であり、(a)は束ね構造の斜視図を示し、(b)は束ね構造の断面図を示し、(c)はc矢視図を示す。
図11】更なる他の形態に係るオーナメントを説明するための説明図である。
図12】更なる他の形態に係るオーナメントを説明するための説明図である。
図13】従来のオーナメントを説明するための説明図であり、(a)はオーナメントの裏面から見た斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図14】従来のオーナメントを説明するための説明図であり、(a)はオーナメントの裏面から見た斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示し、(c)はc-c線断面拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本実施形態に係る内装材1A~1Cは、例えば図2及び図5等に示すように、板状の基材2と、基材2の表面を覆う表皮材3と、を備え、表皮材3は、光ファイバー5が構成糸として織り込まれた織物6を有し、基材2の裏面の端部には、表皮材3の端部から露出する複数の光ファイバー5を基材2の裏面に沿うようにまとめる束ね構造21A~21Cが設けられている。なお、本内装材1A~1Cは、内装製品41を構成する部材であることができる(図1参照)。
【0013】
基材2の平面形状は特に限定されない。基材2は、例えば長尺状に形成されていることができる。また、基材2の裏面には、ベース部材43(即ち内装製品41を構成する他の部材)に締結される締結部10(具体的に締結ボス)が設けられていることができる(図4参照)。この締結部10は、基材2の少なくとも一辺部2a、2b(例えば基材2の長尺方向に沿う一辺部2a、2b)に沿って複数設けられていることができる。また、締結部10とベース部材43の締結形態は特に限定されず、ネジ締結、嵌合締結、止め具締結、接着締結などのうちの1種又は2種以上の組み合わせを適宜選択できる。具体的に、締結部10とベース部材43に設けられた取付部11とはビス12により締結されることができる(図3参照)。また、複数の締結部10の全部又は一部は、基材2の外縁から30mm(特に20mm)以内の領域に設けられていることができる。さらに、基材2の裏面には、少なくとも一辺部2a、2bに沿って基材2の変形防止用の補強リブ14が突設されていることができる。
【0014】
なお、締結部10は、内装材1A~1Cの意匠の見切りD1、D2(即ち内装材1A~1Cと他の内装材44、45との合わせ部位;内装材1A~1Cの意匠面に対する他の内装材44、45の当接部位)の近傍に設定することが求められる(図3参照)。
【0015】
基材2の材質は特に限定されない。基材2は、熱可塑性樹脂を含んでいることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン(特にポリプロピレン)、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール及びABS等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。さらに、基材は、上記の熱可塑性樹脂と補強繊維とを含んでいることができる。この補強繊維としては、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)や有機繊維(植物繊維、動物繊維等の天然繊維、またはポリエステル、ポリアミド、アラミド等の樹脂繊維)を利用できる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、植物性繊維には、靭皮系植物繊維(例えば、ケナフ、フラックス、ジュート、ヘンプ、ラミー等)、葉脈系植物繊維(例えば、アバカ、サイザル、アガベ等)、木質系植物繊維(例えば、広葉樹及び針葉樹等から採取された植物繊維等)、その他の植物繊維(ココヤシ殻繊維、オイルパーム空果房繊維、稲わら繊維、麦わら繊維、タケ繊維、綿等)が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。なお、ベース部材の材質は特に限定されない。ベース部材は、上記の基材と同じ材質であることができる。
【0016】
表皮材3は、基材2の表面の全部又は一部を覆うものである。表皮材3は、接着剤等により基材2の表面に接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。また、表皮材3の平面形状は特に限定されない。表皮材は、例えば長尺状に形成されていることができる。さらに、表皮材3は、基材2と同じ平面形状に形成されていてもよいし、基材2と異なる平面形状に形成されていてもよい。
【0017】
表皮材3は、光ファイバー5が構成糸として織り込まれた織物6を有する(図8参照)。この表皮材3(即ち織物6)の端部から複数の光ファイバー5が露出(即ち延出)している。これら複数の光ファイバー5は、その先端側がスリーブ8や熱収縮チューブなどにより結束されることで光ファイバー束Bをなすことができる。この光ファイバー束Bは、表皮材3の少なくとも一辺部3b(例えば表皮材3の長尺方向に沿う一辺部3b)に沿って複数設けられていることができる。さらに、光ファイバー束Bと連なる表皮材3の端部は、基材2の裏面側に折り返されておらず、基材2の表面の端部に配置されていることができる(図2参照)。
【0018】
表皮材3は、織物6と、織物6の裏面に積層されるクッション層7と、を有することができる(図8参照)。クッション層7の材質は特に限定されないが、軟質ポリウレタンフォームからなるシート材が用いられることが多い。また、十分なクッション性を有する限り、他の軟質樹脂フォームを用いることもできる。
【0019】
織物6は、構成糸(タテ糸及びヨコ糸)によって製織された布帛であり、その織り組織は特に限定されない。具体的には、例えば、平織り、綾織り、朱子織り等の種々の織り組織を採用することができる。織物6の構成糸には、光ファイバー5が少なくとも用いられている。光ファイバー5としては、芯(コア層)と鞘(クラッド層)との芯鞘構造(多層構造)を有し、コア層とクラッド層との屈折率が異なっている種々の光ファイバー5を採用することができる。光ファイバー5は、一端側から入射された光が周面の一部又は全てから出射される側面発光型の光ファイバー5であってもよいし、一端側から入射された光が他端側から出射される端面発光型の光ファイバー5であってもよい。特に、側面発光型の光ファイバー5を採用する場合、光源9からの光を光ファイバー5の織り込まれた織物6(即ち表皮材3)の表面から出射することができるため、意匠性や演出効果をより高めることができる。
【0020】
光ファイバー5は、織物を構成するタテ糸及びヨコ糸の少なくとも一方に用いられており、特に、ヨコ糸に用いられた形態とすることができる。光ファイバー5がタテ糸として用いられている場合、タテ糸としての光ファイバー5の割合は、全てのタテ糸の本数を100%とした場合に、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上80%以下、更に好ましくは30%以上70%以下である。また、光ファイバー5がヨコ糸として用いられている場合、ヨコ糸としての光ファイバーの割合は、全てのヨコ糸の本数を100%とした場合に、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上80%以下、更に好ましくは30%以上70%以下である。なお、光ファイバー4の直径は特に限定されないが、製織性や汎用性の観点から、0.25~3mmであることが好ましく、より好ましくは0.1~1mmである。
【0021】
織物6を構成する光ファイバー5以外の構成糸(以下、「他の構成糸」ともいう)の種類は特に限定されないが、植物系及び動物系の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、合成樹脂からなる合成繊維等を材料とするものを採用することができる。合成繊維を構成する樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0022】
織物6を構成する他の構成糸において、タテ糸及びヨコ糸には、同一の糸が用いられていてもよいし、異なる糸が用いられていてもよい。また、タテ糸に用いられる他の構成糸は、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されていてもよい。同様に、ヨコ糸に用いられる他の構成糸は、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されていてもよい。また、他の構成糸の繊度は特に限定されないが、例えば、100dtex以上1000dtex以下であることが好ましく、より好ましくは200dtex以上700dtex以下、更に好ましくは300dtex以上500dtex以下である。
【0023】
束ね構造21A~21Cは、複数の光ファイバー5(即ち光ファイバー束B)を基材2の裏面に沿うようにまとめるための構造物である。この束ね構造21A~21Cは、基材2と別物で基材2の裏面に後付けされてもよいが、部品点数の低減等の観点から、基材2と一体成形(具体的に一体成型)されることが好ましい。また、束ね構造21A~21Cは、基材2の外縁から20mm(特に10mm)以内の領域に設けられていることができる。さらに、束ね構造21A~21Cは、基材2の裏面の端部のみに設けられていてもよいし、基材2の裏面の端部に加えて、基材2の裏面の端部から内側に離れた部位にも設けられていてもよい(図11参照)。
【0024】
束ね構造21A~21Cの個数は特に限定されないが、基材2の少なくとも一辺部2bに沿って複数設けられていることができる(図4参照)。これら複数の束ね構造21A~21Cのそれぞれは、所定本数(例えば、100本等)の光ファイバー5をまとめることができる。なお、各束ね構造21A~21Cでまとめる光ファイバー5の本数は、2以上の束ね構造において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
束ね構造21Aは、例えば図5及び図6に示すように、基材2の裏面上に立ち上げられた立壁22を有し、立壁22には、複数の光ファイバー5(即ち光ファイバー束B)が挿通可能な挿通孔23が形成されていることができる。この束ね構造21Aでは、光ファイバー束Bを先端側から挿通孔23に挿入し、光ファイバー束Bの根元側B1(即ち表皮材3の端部の近傍側)を挿通孔23に挿通して絞ることで、光ファイバー束Bを基材2の裏面に沿うようにロープ状又は帯状などにまとめることができる。
【0026】
立壁22は、基材2の一辺部2bに沿う方向に延びるように配置されていることができる。また、立壁22は、補強リブ14から離間して配置されていてもよいし(図7(a)参照)、補強リブ14に繋がるように配置されていてもよい(図7(b)(c)参照)。立壁22の基部の両側面が補強リブ14に繋がることで、立壁22に基材2の変形防止機能の役割を持たせることができる。なお、補強リブ14には、立壁22と対応する位置に切欠き部15が形成されていることができる。この切欠き部15は、通常、挿通孔23を形成するスライドコアのための空間として利用される。
【0027】
立壁22には、1つの光ファイバー束Bが挿通される1つの挿通孔23(例えば円形状の挿通孔23)が形成されていてもよいし(図6参照)、複数の光ファイバー束B(特に隣り合う2つの光ファイバー束B)が挿通される1つの挿通孔23(例えば長孔状又は楕円状の挿通孔23)が形成されてもよいし(図9(a)参照)、複数の光ファイバー束B(特に隣り合う2つの光ファイバー束B)のそれぞれが挿通される複数の挿通孔23(例えば円形状の挿通孔23)が形成されていてもよい(図9(b)参照)。
【0028】
挿通孔23には、光ファイバー束Bの先端側が挿入される側にその挿入をガイドするR面(即ち湾曲面)24が形成されていることができる(図2参照)。このR面24は、通常、挿通孔23の全周にわたって形成されている。さらに、挿通孔23の形状は特に限定されず、例えば円形状、長孔形状、楕円形状、多角形状などを採用できる。なお、挿通孔23の形状、大きさなどによって、光ファイバー束Bのまとめられる形状(例えばロープ状、帯状など)が決められる。
【0029】
束ね構造21Bは、例えば図10に示すように、基材2の裏面上に立ち上げられて互いに対向する一対の立壁32を有し、一対の立壁32の各先端側には、複数の光ファイバー5(即ち光ファイバー束B)を一対の立壁32の間に挿入可能な鉤状部33が設けられていることができる。この束ね構造21Bでは、光ファイバー束Bの根本側B1(即ち表皮材3の端部の近傍側)を各鉤状部33の直上から各鉤状部33の間に挿し込んで、各鉤状部33が互いに離間するように一対の立壁32を弾性変形させて、光ファイバー束Bの根元側B1を一対の立壁32の間に挿入して絞ることで、光ファイバー束Bを基材2の裏面に沿うようにロープ状又は帯状などにまとめることができる。この光ファイバー束Bのまとめ状態では、各鉤状部33により光ファイバー束Bの抜け出しが抑制される。さらに、光ファイバー束Bのまとめ状態では、光ファイバー束Bの根元側B1は、一対の立壁32の立上り方向の先端部の間に配置されていてもよいし、一対の立壁32の立上り方向の中間部や基部に配置されていてもよい。なお、一対の立壁32の間には、1つの光ファイバー束Bが挿入されてもよいし、複数の光ファイバー束B(特に隣り合う2つの光ファイバー束B)が挿入されてもよい。
【0030】
一対の立壁32のそれぞれは、同じ肉厚で形成されていてもよいが、弾性変形性等の観点から、基材2の裏面と連なる薄肉部32aと、一端側が薄肉部32aと連なり他端側が鉤状部33と連なる厚肉部32bと、を有することが好ましい。また、一対の立壁32は、各立壁32の対向方向と直交する方向の位置を一致させて配置されていてもよいが、指先操作により弾性変形させる場合の操作性等の観点から、各立壁32の対向方向と直交する方向の位置をずらして配置されていることが好ましい(図10(c)参照)。また、一対の立壁32は、基材2の裏面に対して垂直に設けられていてもよいが、光ファイバー束Bを効果的にまとめ得る等の観点から、先端部に向かうに連れて互いに近づくように基材2の裏面上に設けられていることが好ましい。さらに、各鉤状部32において光ファイバー束Bが挿し込まれる側には、その挿し込みをガイドするための湾曲面34が形成されていることができる。
【0031】
束ね構造21Cは、例えば図12に示すように、基材2の裏面上に立ち上げられる立壁37と、立壁37の先端側から側方に延びる横壁38、横壁38の先端側に設けられる鉤状部39と、を備えることができる。この束ね構造21Cでは、光ファイバー束Bの根元側B1(即ち表皮材3の端部の近傍側)を鉤状部39の側方から挿し込んで、鉤状部39が基材2の裏面から離間するように横壁38を弾性変形させて、光ファイバー束Bの根元側B1を横壁38と基材2の裏面の間に挿入して絞ることで、光ファイバー束Bを基材2の裏面に沿うようにロープ状又は帯状などにまとめることができる。この光ファイバー束Bのまとめ状態では、鉤状部39により光ファイバー束Bの抜け出しが抑制される。
【0032】
横壁38は、同じ肉厚で形成されていてもよいが、弾性変形性等の観点から、立壁37と連なる薄肉部38aと、一端側が薄肉部38aと連なり他端側が鉤状部39と連なる厚肉部38bと、を有することが好ましい。さらに、基材2の裏面にはスライバー束Bの側方への拡がりを規制する規制片41が設けられていることができる。
【0033】
本内装材の用途は特に限定されない。本内装材としては、例えば、車両用のドアトリム、インストルメントパネル、ルーフトリム、フロアトリム、ラゲージトリム、リヤサイドトリム、リヤパーシェル、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレスト、センターコンソール、オーバヘッドコンソール、サンバイザー、シートなどの内装製品を構成する車両用内装材が挙げられる。さらに、ソファや椅子などの家具を構成する内装材であってもよい。
【実施例0034】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「内装材」として、車両用ドアトリム41を構成するオーナメント1Aを例示する。
【0035】
車両用ドアトリム41は、図1図3に示すように、金属製のインナパネル(図示省略)を車室内側から覆う板状のトリム本体42を備えている。このトリム本体42は、車室内側の意匠面を形成するオーナメント1A、アッパーボード44及びロアボード45を備えている。
【0036】
本実施例に係るオーナメント1Aは、板状の基材2と、基材2の表面を覆う表皮材3と、を備えている。このオーナメント1Aは、上下方向においてアッパーボード44とロアボード45との間に配置されている。また、オーナメント1Aの表面の上端部の表面(即ち意匠面)には、アッパーボード44の下端部が当接しており、この当接部位によりオーナメント1Aの意匠の見切りD1が形成されている。さらに、オーナメント1Aの表面の下端部の表面(即ち意匠面)には、ロアボード45の上端部が当接しており、この当接部位によりオーナメント1Aの意匠の見切りD2が形成されている。なお、ドアトリム4を構成するベース部材43は、オーナメント1Aの裏面と対向するように配置されている(図3参照)。
【0037】
基材2は、車両前後方向Aに長尺状(具体的に長尺四角形状)に形成されている(図4参照)。この基材2の裏面には、ベース部材43に締結される締結部10(具体的に締結ボス)が設けられている。この締結部10は、基材2の上辺部2a及び下辺部2bに沿って複数設けられている。さらに、締結部10とベース部材43に設けられた取付部19とはビス12により締結される(図3参照)。さらに、基材2の裏面には、上辺部2a及び下辺部2bに沿って線状に延びる基材の変形防止用の補強リブ14が突設されている。
【0038】
表皮材3は、車両前後方向Aに長尺状(具体的に長尺四角形状)に形成されている。この表皮材3は、側面発光型の光ファイバー5が構成糸として織り込まれた織物6と、織物6の裏面に積層されるクッション層7と、を備えている(図8参照)。また、表皮材3の端部から複数の光ファイバー5が露出している。これら複数の光ファイバー5は、その先端側がスリーブ8などにより結束されることで光ファイバー束Bをなしている。この光ファイバー束Bは、表皮材3の下辺部3bに沿って複数(図4中で7つ)設けられている。さらに、表皮材3が基材2の表面に貼り付けられた状態では、光ファイバー束Bと連なる表皮材3の端部(具体的に下辺部3b)は、基材2の裏面側に折り返されておらず、基材2の表面の端部に配置されている(図2参照)。
【0039】
なお、光ファイバー束Bの先端側(即ちスリーブ8などによる結束側)には、LED等の光源9からの光が入射される(図8参照)。これにより、光源9からの光が表皮材3の表面から出射されて、意匠性や演出効果をより高められる。なお、光源9は、基材2の裏面に設けられた保持部(図示省略)に保持される。
【0040】
基材2の裏面の端部には、図4に示すように、表皮材3の端部から露出する光ファイバー束Bを基材2の裏面に沿ってまとめる束ね構造21Aが設けられている。この束ね構造21Aは、基材2の下辺部2bに沿って複数(図4中で7つ)設けられている。
【0041】
束ね構造21Aは、図5及び図6に示すように、基材2の裏面上に立ち上げられた矩形状の立壁22を有している。この立壁22には、光ファイバー束Bが挿通可能な円形状の挿通孔23が形成されている。
【0042】
立壁22は、基材22の一辺部2bに沿う方向に延びるように配置されている。この立壁22は、基材2の下辺部2bに設けられた補強リブ14から離間して配置されている(図7(a)参照)。
【0043】
挿通孔23は、スリーブ8の外径(例えば5mm)よりも大きな外径(例えば7mm)を有している。この挿通孔23には、光ファイバー束Bの先端側が挿入される側にその挿入をガイドするR面(即ち湾曲面)24が形成されている(図2参照)。このR面24は、挿通孔23の全周にわたって形成されている。
【0044】
次に、上記構成のオーナメント1Aの作用効果について説明する。基材2の表面に表皮材3を貼り付ける際に、表皮材3の端部から露出する熊手状の光ファイバー束B(図8参照)を基材2の裏面側に折り返しつつ、その先端側を挿通孔23に挿入して、光ファイバー束Bの根本側B1を挿通孔23に挿通する。これにより、光ファイバー束Bは、根本側B1が絞られて基材2の裏面に沿うようにロープ状にまとめられる(図5参照)。
【0045】
本実施例のオーナメント1Aによると、表皮材3は、光ファイバー5が構成糸として織り込まれた織物6を有し、基材2の裏面の端部には、表皮材3の端部から露出する複数の光ファイバー5を基材2の裏面に沿うようにまとめる束ね構造21Aが設けられている。これにより、ドアトリム41を構成するベース部材43との締結部10を基材2の裏面の外縁寄り側に設定して意匠の見切りD2に近づけることができる。
【0046】
また、本実施例では、束ね構造21Aは立壁22を有し、立壁22には挿通孔23が形成されている。これにより、複数の光ファイバー5を挿通孔23に挿通することで簡易にまとめることができる。
【0047】
さらに、本実施例では、束ね構造21Aは基材2の下辺部2bに沿って複数設けられている。これにより、表皮材3の端部から露出する複数の光ファイバー5を所定本数毎に分けて各束ね構造21Aでまとめることができる。
【0048】
次に、他の形態に係るオーナメント1Bについて説明するが、上記オーナメント1Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略する。
【0049】
本オーナメント1Bは、上記束ね構造21Aの代わりに束ね構造21Bを備えている。この束ね構造21Bは、図10に示すように、基材2の裏面上に立ち上げられて互いに対向する一対の立壁32を有している。これら一対の立壁32の各先端側には、光ファイバー束Bの根本側B1を一対の立壁32の間に挿入可能な挿入口36を形成する鉤状部33が設けられている。
【0050】
一対の立壁32のそれぞれは、基材2の裏面と連なる薄肉部32aと、一端側が薄肉部32aと連なり他端側が鉤状部33と連なる厚肉部32bと、を有している。また、一対の立壁32は、各立壁32の対向方向と直交する方向の位置をずらして配置されている。さらに、一対の立壁32は、先端側に向かうに連れて互いに近づくように基材2の裏面上に設けられている。さらに、各鉤状部33において光ファイバー束Bの根元側B1が挿し込まれる側には、その挿し込みをガイドするための湾曲面34が形成されている。
【0051】
本束ね構造21Bでは、指先操作により各鉤状部33を互いに離間させつつ、光ファイバー束Bの根元側B1を各鉤状部33の直上から各鉤状部33の間に挿し込んで一対の立壁32の間に挿入して絞ることで、光ファイバー束Bは基材2の裏面に沿うようにロープ状にまとめられる。このまとめ状態では、各鉤状部33により光ファイバー束Bの抜け出しが抑制される。なお、一対の立壁32の間への光ファイバー束Bの挿入は、指先操作により各鉤状部33を離間させずに行われてもよい。
【0052】
本オーナメント1Bによると、上記オーナメント1Aと略同様の作用効果を奏するとともに、束ね構造21Bは一対の立壁32を有し、一対の立壁32の各先端側には鉤状部33が設けられているので、複数の光ファイバー5を各鉤状部33から一対の立壁32の間に挿入することで簡易にまとめることができる。さらに、各鉤状部33により一対の立壁32の間に挿入された複数の光ファイバー5の抜け出しが抑制される。
【0053】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、表皮材3の下辺部3bに沿って複数の光ファイバー束Bを設け、基材2の下辺部2bに沿って複数の束ね構造21A、21Bを設けるオーナメント1A、1Bを例示したが、これに限定されず、例えば表皮材3の上辺部3aに沿って複数の光ファイバー束Bを設け、基材2の上辺部2aに沿って複数の束ね構造21A、21Bを設けるオーナメント1A、1Bとしてもよい。さらに、表皮材3の上辺部3a及び下辺部3bに沿って複数の光ファイバー束Bを設け、基材2の上辺部2a及び下辺部2bに沿って複数の束ね構造21A、21Bを設けるオーナメント1A、1Bとしてもよい。
【0054】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、表皮材の端部から露出する複数の光ファイバーを基材の裏面の端部でまとめる技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0056】
1A~1C;オーナメント(内装材)、2;基材、2b;下辺部(一辺部)、3;表皮材、5;光ファイバー、6;織物、10;締結部、21A~21C;束ね構造、22;立壁、23;挿通孔、32;一対の立壁、33;鉤状部、41;車両用ドアトリム、D1,D2;意匠の見切り。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14