(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177428
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】糸くずフィルターユニット及び洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/10 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
D06F39/10 E
D06F39/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090087
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 由佳
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA11
3B166AE01
3B166AE02
3B166BA56
3B166BA72
3B166BA86
3B166CA01
3B166CB01
3B166CB11
3B166DB03
3B166DB13
3B166DB17
3B166DD01
3B166DD02
3B166DD03
3B166DD06
3B166GA04
3B166GA12
(57)【要約】
【課題】糸くずの掃除を簡単に行える糸くずフィルターユニットを提供する。
【解決手段】糸くずフィルターユニット100は、前面カバー10、後面カバー30及び前面カバー10と後面カバー30との間に位置する中間板50を含む。前面カバー10は、洗濯水が通過する通水窓12と、通水窓を通過する洗濯水中の混じり物を濾過するフィルター部材13とを有し、後面カバー30は、上部が前面カバー10の上部に回動可能に連結されていて、前面カバー10と平行になった閉じた状態と、下部が前面カバー10の下部から離れた開いた状態とに変位可能である。中間板50は、後面カバー30を閉じた状態では、前面板11と一定の隙間を空けて位置し、後面カバー30を開いた状態では、その正面が下方を向くように傾斜する。後面カバー30には、上方に、循環する洗濯水を中間板50と前面板との間の隙間55へ導入する入口36が形成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯兼脱水槽の側部に設けられた洗濯水を循環させる循環水路に着脱可能に取り付けられ、洗濯水に含まれる糸くずを捕獲する糸くずフィルターユニットであって、
前記糸くずフィルターユニットは、前面カバー、後面カバー及び前面カバーと後面カバーとの間に位置する中間板を含み、
前記前面カバーは、縦長形状の前面板と、前記前面板に形成され、前記前面板の裏面側から表面側へと洗濯水が通過する通水窓と、前記通水窓に取り付けられ、前記通水窓を通過する洗濯水中の混じり物を濾過するフィルター部材とを有し、
前記後面カバーは、上部が前記前面カバーの上部に回動可能に連結されていて、前記前面カバーと平行になった閉じた状態と、下部が前記前面カバーの下部から離れた開いた状態とに変位可能であり、
前記中間板は、上端は前記前面カバーに沿って上下に移動可能に保持されており、下端は前記後面カバーの下端と回動自在に連結されていて、前記後面カバーを閉じた状態では、前記前面板の後方で、前記後面カバーと平行に、かつ、前記前面板と一定の隙間を空けて位置し、前記後面カバーを開いた状態では、上端が前記前面カバーに沿って下方へ移動し、その正面が下方を向くように傾斜するものであり、
前記後面カバーには、上方に、循環する洗濯水を前記中間板と前記前面板との間の前記隙間へ導入する入口が形成されていることを特徴とする、糸くずフィルターユニット。
【請求項2】
前記前面板に形成された通水窓は、正面視において、前記前面板の中央及び下方の領域に配列された複数の通水窓を含むことを特徴とする、請求項1に記載の糸くずフィルターユニット。
【請求項3】
前記後面カバーは、前記後面カバーを閉じた状態において、前記前面板の後方において、前記通水窓と一定の隙間を空けて対向する後面板を含み、
前記後面板の正面には、当該正面から直角に突出する多数本のピンが立設され、
前記中間板には、前記後面カバーを閉じた状態において、前記多数本のピンを受け入れる多数の小孔が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糸くずフィルターユニット。
【請求項4】
前記前面カバーは、
前記前面板の左右両側辺から後方へ突出する左右側壁を有し、
前記左右側壁部には、それぞれ、前記中間板の上端の上下方向への移動を案内するガイド溝が形成されており、
前記中間板には、上端から左右側方へ突出し、前記ガイド溝と係合する突部が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載の糸くずフィルターユニット。
【請求項5】
前記左右側壁部において、前記ガイド溝は、上端が前記前面板の近傍に位置し、下方へ向かうに従って前記前面板から遠ざかるように後方へ延びる直線状の長溝を含むことを特徴とする、請求項4に記載の糸くずフィルターユニット。
【請求項6】
前記ガイド溝は、前記直線状の長溝の下端に滑らかに連設され、前記前面板から遠ざかる方向に角度が変えられた追加溝を含むことを特徴とする、請求項5に記載の糸くずフィルターユニット。
【請求項7】
外形を構成する筺体と、
前記筺体内に支持された水槽と、
前記水槽内に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽の側部に設けられた洗濯水を循環させる循環水路と、
前記循環水路に取り付けられた請求項1~6のいずれか一項に記載の糸くずフィルターユニットと、を含むことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関し、特に、糸くずを捕獲する糸くずフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の洗濯機においては、糸くずフィルターに溜まった糸くずの掃除は洗濯の度に行うよう推奨されているが、掃除に手間がかかり面倒である。また、洗濯後の濡れた糸くずに触りたくないといった理由で、掃除が疎かになりがちである。しかし、糸くずフィルターの掃除を放置すると、糸くずの捕獲ができなくなったり、洗濯物に糸くずが付着する等の不具合が生じる。
【0003】
従来の糸くずフィルターは、溜まった糸くずに触らないと除去できないタイプのものが大半であったが、近年は、直接糸くずに触らなくても除去できるものが提案されている。
【0004】
特許文献1には、糸くずの除去を容易に清潔に行える糸くずフィルターが提案されている。特許文献1に提案された糸くずフィルターは、前面カバー及び後面カバーという2部品構成になっており、糸くず除去時には、2部品をバラバラにして、前面カバーで後面カバーに付着した糸くずを掻き取るというものである。この糸くずフィルターは、糸くずを除去する際に、直接糸くずに触らなくてもよいが、ア.2部品を分解して外す、イ.一方の部品で他方の部品に溜まった糸くずを掻き取る、ウ.元通りに2部品を組み立てる、という3工程が必要である。よって、糸くず除去時の作業が煩雑で、また、掻き取り方を間違えると、きれいに掻き取れないといった使い難さがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、糸くずフィルターに溜まった糸くずの掃除を簡単に行える糸くずフィルターユニット及び当該糸くずフィルターユニットを備える洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗濯兼脱水槽の側部に設けられた洗濯水を循環させる循環水路に着脱可能に取り付けられ、洗濯水に含まれる糸くずを捕獲する糸くずフィルターユニットであって、前記糸くずフィルターユニットは、前面カバー、後面カバー及び前面カバーと後面カバーとの間に位置する中間板を含み、前記前面カバーは、縦長形状の前面板と、前記前面板に形成され、前記前面板の裏面側から表面側へと洗濯水が通過する通水窓と、前記通水窓に取り付けられ、前記通水窓を通過する洗濯水中の混じり物を濾過するフィルター部材とを有し、前記後面カバーは、上部が前記前面カバーの上部に回動可能に連結されていて、前記前面カバーと平行になった閉じた状態と、下部が前記前面カバーの下部から離れた開いた状態とに変位可能であり、前記中間板は、上端は前記前面カバーに沿って上下に移動可能に保持されており、下端は前記後面カバーの下端と回動自在に連結されていて、前記後面カバーを閉じた状態では、前記前面板の後方で、前記後面カバーと平行に、かつ、前記前面板と一定の隙間を空けて位置し、前記後面カバーを開いた状態では、上端が前記前面カバーに沿って下方へ移動し、その正面が下方を向くように傾斜するものであり、前記後面カバーには、上方に、循環する洗濯水を前記中間板と前記前面板との間の前記隙間へ導入する入口が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記前面板に形成された通水窓は、正面視において、前記前面板の中央及び下方の領域に配列された複数の通水窓を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記後面カバーは、前記後面カバーを閉じた状態において、前記前面板の後方において、前記通水窓と一定の隙間を空けて対向する後面板を含み、前記後面板の正面には、当該正面から直角に突出する多数本のピンが立設され、前記中間板には、前記後面カバーを閉じた状態において、前記多数本のピンを受け入れる多数の小孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記前面カバーは、前記前面板の左右両側辺から後方へ突出する左右側壁を有し、前記左右側壁部には、それぞれ、前記中間板の上端の上下方向への移動を案内するガイド溝が形成されており、前記中間板には、上端から左右側方へ突出し、前記ガイド溝と係合する突部が備えられていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記左右側壁部において、前記ガイド溝は、上端が前記前面板の近傍に位置し、下方へ向かうに従って前記前面板から遠ざかるように後方へ延びる直線状の長溝を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記ガイド溝は、前記直線状の長溝の下端に滑らかに連設され、前記前面板から遠ざかる方向に角度が変えられた追加溝を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明は、外形を構成する筺体と、前記筺体内に支持された水槽と、前記水槽内に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽の側部に設けられた洗濯水を循環させる循環水路と、前記循環水路に取り付けられた前記糸くずフィルターユニットとを含む洗濯機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、循環水路を循環される洗濯水は、後面カバーの上方に形成された入口から、前面板と中間板との間に区画された隙間に上方から注がれる。隙間に注がれた洗濯水は、前面板に形成された通水窓を通って洗濯兼脱水槽内へ戻る。通水窓には、フィルター部材が取り付けられている。よって、通水窓を洗濯水が通過する際に、洗濯水はフィルター部材で濾過され、洗濯水中の混じり物、つまり主として糸くずは、フィルター部材に捕獲される。より詳しくは、フィルター部材の背面側に糸くずが付着する。
【0015】
洗濯工程の後に行われる脱水工程では、洗濯水が排水され、洗濯兼脱水槽が高速で回転される。そのため、フィルター部材の背面側に付着した糸くずは遠心力でフィルター部材から剥がされ、中間板(の正面)に張り付く。
【0016】
糸くずフィルターユニットの掃除を行う場合は、糸くずフィルターユニットを循環水路から取り外し、前面カバーに対して後面カバーを開いた状態にする。後面カバーを開いた状態では、中間板はその正面が下を向くように傾斜する。よって、遠心力でフィルター部材から剥がされ、中間板の正面に張り付いた糸くずは、重力により、又は、軽く衝撃を与えることで、簡単に中間板から落下する。従って、糸くずの掃除処理が容易に行える。
【0017】
本発明によれば、前面板に複数の通水窓が形成されているから、前面板と中間板との隙間へ流入して複数の通水窓を通過する洗濯水は、各通水窓に設けられたフィルター部材により濾過されて糸くずが捕獲される。複数の通水窓を設けることにより、各通水窓のフィルター部材により、効率の良い糸くず捕獲が行える。
【0018】
複数の通水窓は、前面板の中央及び下方の領域に設けられているから、上方から前面板及び中間板の隙間へ注がれた洗濯水は、勢い良く通水窓を通過する。よって、通水窓に設けられたフィルター部材は効率良く糸くずの捕獲を行う。
【0019】
本発明によれば、中間板に多数の小孔が形成され、これらの小孔から後面板に立設されたピンが突出する。脱水工程により、フィルター部材の糸くずは遠心力でフィルター部材から剥がされて中間板(の正面)に張り付くが、小孔及びピンにより、中間板への糸くずの密着を抑えることができる。
【0020】
糸くずフィルターユニットを循環水路から取り外し、後面カバーを開いた状態に変位させると、中間板は後面カバーの下端を中心に回動して、中間板の上端は後面板から離れる方向に動く。そのため、ピンは中間板の小孔から抜け、ピンに張り付いた糸くずは小孔で刮げ落とされる。
【0021】
よって、より簡単に中間板から付着した糸くずを落下させることができる。
【0022】
本発明によれば、前面カバーには左右側壁部が設けられ、左右側壁部にガイド溝が形成されているから、後面カバーを開く際に、中間板の上端はガイド溝に案内されてスムーズに下方へ移動する。
【0023】
本発明によれば、ガイド溝は下方へ向かうに従って前面板から遠ざかるように延びる直線状の長溝を含むので、中間板(の正面)を下方に向けることができる。
【0024】
さらに、前面板から遠ざかる方向に角度が変えられた追加溝を設けると、後面カバーを閉じる際に、中間板の上端がガイド溝に沿って移動し易くなり、後面カバーを閉じる操作をスムーズに行うことができる。
【0025】
本発明によれば、糸くずの掃除処理を容易に行える洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例に係る洗濯機の斜視図であり、洗濯兼脱水槽以外の構成を省略して描いた図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る洗濯兼脱水槽の平面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る洗濯兼脱水槽の縦断面図(
図2の線A-Aに沿う断面図)である。
【
図4】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットを正面側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットを背面側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットの正面図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットの縦断面図(
図6の線B-Bに沿う断面図)である。
【
図8】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットを背面側から見た斜視図であり、後面カバーが開いた状態を示す図である。
【
図9】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットの右側面図であり、後面カバーが開いた状態を示す図である。
【
図10】本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニットを正面側から見た斜視図であり、後面カバーが開いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明をする。
【0028】
[洗濯機の説明]
図1は、本発明の一実施例に係る洗濯機1の斜視図である。洗濯機1は、外形を構成する筺体2と、筺体2内に、防振支持された水槽(図示せず)を設け、その中に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽3とを含む。
図1では、洗濯兼脱水槽3以外の構成については省略又は簡素化して描かれている。
【0029】
図2は、洗濯兼脱水槽3の平面図であり、
図3は、洗濯兼脱水槽3の縦断面図(
図2の線A-Aに沿う断面図)である。
【0030】
図1~3を参照して、洗濯兼脱水槽3は、有底円筒形状をし、その側壁には多数の脱水孔4が形成され、上部の開口周囲には、振動低減用の流体バランサ5が備えられている。
洗濯兼脱水槽3の中央底部には、回転翼6が配設されている。回転翼6の上面には、洗濯水及び洗濯物を攪拌するための複数の攪拌突起7が放射状に形成されている。回転翼6の下面には、回転により水を汲み上げる揚水羽根8が設けられている。
【0031】
洗濯兼脱水槽3の下方には、図示しない駆動部が連結されていて、駆動部によって、洗濯兼脱水槽3及び回転翼6の両方、又は、回転翼6のみが回転される。
【0032】
洗濯兼脱水槽3の内周側壁部には、洗濯水を循環させる循環水路9が構成されている。回転翼6の回転時に、回転翼6の下面の揚水羽根8により汲み上げられる洗濯水は、循環水路9に送り込まれて循環水路9を上昇する。
【0033】
本発明の一実施例に係る糸くずフィルターユニット100は、洗濯兼脱水槽3の内側壁に、洗濯兼脱水槽3内を臨むように配置される。糸くずフィルターユニット100は、循環水路9に着脱可能に取り付けられ、循環水路9を循環する洗濯水に含まれる糸くずを捕獲するものである。
【0034】
[糸くずフィルターユニットの説明]
図4は、糸くずフィルターユニット100を正面側から見た斜視図であり、
図5は、糸くずフィルターユニット100を背面側から見た斜視図である。
図6は、糸くずフィルターユニット100の正面図であり、
図7は、糸くずフィルターユニット100の縦断面図(
図6の線B-Bに沿う断面図)である。
図8は、後面カバー30を開いた状態の糸くずフィルターユニット100を背面側から見た斜視図である。
図9は、後面カバー30を開いた状態の糸くずフィルターユニット100の右側面図である。
図10は、後面カバー30を開いた状態の糸くず付すユニット100を正面側から見た斜視図である。
【0035】
図4~
図10を参照して、糸くずフィルターユニット100は、前面カバー10と、後面カバー30と、前面カバー10及び後面カバー30の間に位置し、糸くずを溜める役割をする中間板50の3部材を含んでいる。
【0036】
前面カバー10は、例えば縦長形状をした前面板11を有する。前面板11は、上下方向に直線状で、左右方向には、左右両側が僅かに後方へ曲がる板状である。なお、前面板11は、左右方向も直線状の平板であってもよいし、左右方向に全体が前方に向かって緩く凸湾曲する曲板状や、左右方向に全体が前方に向かって緩く凹湾曲する曲板状であってもよい。
【0037】
図4及び
図6に示すように、前面板11には、正面視において、中央及び下方の領域に複数の通水窓12が形成されている。各通水窓12は、正面視において、角が丸められた縦長の長方形状で、例えば左右方向に4個、上下方向に4個の計16個の通水窓12が行列状に配列されている。各通水窓12は、前面板11の裏面側から表面側へ洗濯水が通過するように開放され、通過する洗濯水中の混じり物を濾過するフィルター部材13が嵌め込まれている。フィルター部材13は、例えばナイロンやポリエステル等により網目状に形成されたネット部材であってもよい。なお、フィルター部材13については、
図6の正面図においてのみ、薄墨を付して表しており、それ以外の図においては、図面表記の便宜上、省略されている。
【0038】
前面板11には、正面視において、上方の領域に、通水窓12と同じ形状の角が丸められた縦長の長方形状部14が、例えば左右方向に4個、上下方向に2個の計8個が設けられている。これら8個の長方形状部14は、意匠的な観点で前面板11の上方領域に設けられた模様で、各長方形状部14は、洗濯水が通過できる通水窓ではない。
【0039】
前面カバー10の左右両側の上部は、互いに内側に向かって湾曲しており、上端中央に弾力性のある係止用クリップ15が、前面カバー10と一体に形成されている。また、係止用クリップ15の下方には、係止用クリップ15の操作をし易いように、指入れ凹部16が形成されている。
【0040】
前面カバー10の下縁には、後方へ延びる底壁17が備えられている。底壁17の下面前方には、係止用突条18が突設されている。
【0041】
糸くずフィルターユニット100を循環水路9に装着する際には、前面カバー10の下縁の係止用突条18を循環水路9の取付部位に嵌め、前面カバー10の上部を後方(循環水路9側)へ変位させる。そして、係止用クリップ15のフック151が循環水路9に嵌まることにより、糸くずフィルターユニット100の循環水路9への装着が完了する。
【0042】
糸くずフィルターユニット100を循環水路9から取り外す際には、係止用クリップ15をつまみ、フック151の係合を解除して、前面カバー10の上部を前方へ変位させ、その後、係止用突条18が循環水路9から外れるように前面カバー10を軽く上方へ持ち上げればよい。
【0043】
図5、
図8を主として参照して、前面カバー10には、前面板11の左右両側辺近傍から後方へ突出する側壁部19が備えられている。左右の側壁部19は、左右対称な形状をしている。
【0044】
後面カバー30は、右側板31及び左側板32と、右側板31及び左側板32の上方を繋ぐ上連結部33と、右側板31及び左側板32の間を塞ぐ後面板34とを含む。上連結部33は、右側板31及び左側板32の上方を各側板31、32の後方側で繋いでおり、その下辺331は、後面カバー30における上方に位置している。後面板34は、右側板31及び左側板32の間を各側板31、32の前方側で繋いでいる。後面板34の上辺341は、上連結部33の下辺331よりも上下方向に一定寸法下方側に位置し、かつ、上連結部33の下辺331よりも前方側に位置している。
【0045】
このため、後面カバー30の背面には、右側板31、左側板32及び後面板34で囲まれた上下方向に長手をした洗濯水の水路35が区画されている。この水路35の上端には、後面板34の上辺341と、上連結部33の下辺331との隙間によって区画された洗濯水の入口36が形成されている。
【0046】
後面カバー30の右側板31及び左側板32の外側面間の寸法W1と、前面カバー10の左右側壁部19の内側面間の寸法W2とは、W1<W2とされている。このため、後面カバー30は、前面カバー10の左右の側壁部19間に納まる。
【0047】
後面カバー30の右側板31及び左側板32の上部は、それぞれ、前面カバー10の側壁部19の上部と、例えば、支軸ピン37により、回動可能に連結されている。そして、後面カバー30は、前面カバー10と平行になった閉じた状態(
図4~
図7に示す状態)と、後面カバー30の下部が前面カバー10の下部から後方へ離れた開いた状態(
図8~
図10に示す状態)とに変位可能である。
【0048】
中間板50は、例えば、左右方向の幅が後面カバー30の右側板31及び左側板32の内側面間の寸法W3より僅かに小さく、上下方向の長さが後面板34の高さとほぼ等しい正面視が縦長長方形状の平板を有している。
【0049】
中間板50の下端には、後面カバー30の下端と回動自在に連結する連結部材51が備えられている。連結部材51は、中間板50の下端両側を後面カバー30の右側板31及び左側板32に回動自在に連結する連結ピン52を含んでいてもよい。
【0050】
中間板50の上端は、前面カバー10に沿って上下に移動可能である。より具体的には、前面カバー10の左右の側壁部19には、それぞれ、ガイド溝としてのスライド用溝穴20が設けられている。そして、前面カバー10の上端は、スライド用溝穴20に案内されて上下に移動する。
【0051】
スライド用溝穴20の上端201は、前面板11の近傍、つまり側壁部19の前方寄りに位置している。スライド用溝穴20の下端203は、側壁部19の後方寄りに位置している。
【0052】
また、スライド用溝穴20の下方寄りの途中部には、角度変更点202が形成されている。スライド用溝穴20は、上端201から角度変更点202まで、前面板11から遠ざかるように、下方に向かって斜め後方へ直線状に延びる上部溝穴21と、角度変更点202から下端203まで、後方に向かって斜めに延びる下部溝穴22とを含む。
【0053】
中間板50の上端には、左右に突出する保持ピン53が設けられ、保持ピン53がスライド用溝穴20に案内されてスライド用溝穴20を上端201から下端203へと、又、下端203から上端201へと移動し得る。
【0054】
さらに、本実施例に係る糸くずフィルターユニット100は、後面板34の正面から直角に突出する多数のピン38が立設されている。また、中間板50には、後面板34に立設されたピン38を受け入れる多数の小孔54が穿設されている。
【0055】
図7に示すように、後面カバー30が閉じた状態では、後面板34の正面に中間板50が隙間を空けずに重なるように配置される。このとき、後面板34に立設された多数のピン38は、中間板50に穿設された多数の小孔54を貫通して、中間板50の正面から前方へ突出する。
【0056】
そして、前面板11の背面と中間板50の正面との間には、一定寸法Dの隙間55が確保されている。
【0057】
糸くずフィルターユニット100が循環水路9に取り付けられた状態では、回転翼6の回転により、揚水羽根8の作用によって、循環水路9へ洗濯水がポンプアップされる。循環水路9を上昇する洗濯水は、糸くずフィルターユニット100の後面カバー30の後方に区画された水路35を通り、後面板34の上方に形成された入口36から隙間55へと流入する。そして、隙間55へ流入する洗濯水は、多数のピン38に当たりながら下方へ流れ、前面板11に形成された通水窓12を通って洗濯兼脱水槽3内へ戻る。洗濯水が通水窓12を通過する際には、通水窓12に取り付けられたフィルター部材13によって洗濯水中の混じり物、つまり主として糸くずが、フィルター部材13によって濾過され、捕獲される。
【0058】
フィルター部材13で捕獲された糸くずは、その後の脱水工程において、洗濯兼脱水槽3が高速で回転されることにより、遠心力によってフィルター部材13から剥がされ、中間板50の正面に張り付く。
【0059】
糸くずフィルターユニット100を掃除する場合は、糸くずフィルターユニット100を循環水路9から取り外す。そして、前面カバー10から後面カバー30を開いた状態にする。後面カバー30を開くと、中間板50は正面が下を向くように傾斜する。よって,遠心力でフィルター部材13から剥がされ、中間板50の正面に張り付いた糸くずは、重力により、又は、軽く衝撃を与えることで、簡単に中間板50から落下する。
【0060】
なお、後面板34に立設したピン38の内、下方2割程度のピン38は、後面カバー30を閉じた状態で、 中間板50の小孔54からピン38の先端が頭を出す程度の高さが低いピン38とするのが望ましい。中間板50の下方に糸くずを溜めるスペースが確保できるからである。
【0061】
図5、
図8及び
図9を主として参照して、後面カバー30には、右側板31及び左側板32の下方部に、下後方から上方へ切り込まれた切欠溝40が形成され、側板31、32の一部にばね部41が設けられている。ばね部41には、その下端に操作部42が形成され、その側面に外方へ突出する突部43が形成されている。
【0062】
一方、前面カバー10の側壁部19の下方部には、後面カバー30の操作部42に対応する位置に、後方から略半円形に切り欠かれた切欠部25が形成され、突部43に対応する位置に、突部43が係合する小孔26が形成されている。
【0063】
後面カバー30を開く際は、右側板31及び左側板32に形成された操作部42を手指でつまみ、ばね部41を内側へ撓らせ、小孔26から突部43を外して、その状態で後面カバー30を回動させる。
【0064】
逆に、後面カバー30を閉じた際には、小孔26に突部43が嵌まり、後面カバー30が閉じた状態に保持される。
【0065】
このように、後面カバー30に、ばね部41、操作部42及び突部43を設けたことにより、後面カバー30の開閉を容易かつ確実に行える。
【0066】
[糸くずフィルターユニットの変形例]
上記実施例として説明した糸くずフィルターユニット100は、後面板34に複数のピン38を立設し、中間板50にピン38を受け入れる小孔54を形成した構成を説明した。
【0067】
しかし、上記構成に替えて、後面板にピンを立設せず、従って、中間板に小孔を形成しない構成であってもよい。この場合、フィルター部材13から剥がされて中間板の正面に張り付いた糸くずが、中間板から落下し易いように、例えば、中間板の正面を摩擦係数の小さな平滑面としてもよい。あるいは、中間板の正面が、例えば、上下方向又は左右方向に緩く波打つ面としてもよい。
【0068】
本発明は、上記実施の形態において説明した構成に限定されるものではなく、請求項記載の特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 洗濯機
2 筺体
3 洗濯兼脱水槽
6 回転翼
8 揚水羽根
9 循環水路
10 前面カバー
11 前面板
12 通水窓
13 フィルター部材
19 側壁部
20 スライド用溝穴
30 後面カバー
31 右側板
32 左側板
33 上連結部
34 後面板
341 上辺
35 水路
36 入口
37 支軸ピン
38 ピン
50 中間板
51 連結部材
52 連結ピン
53 保持ピン
54 小孔
55 隙間
100 糸くずフィルターユニット