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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177446
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】歩行者衝突検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B60R19/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090126
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(57)【要約】
【課題】歩行者との衝突を良好に検出する。
【解決手段】歩行者衝突検知装置10では、アブソーバ30の前面30Cに上側リブ32及び下側リブ34が左右方向に断続的に延在されており、上側リブ32と下側リブ34との間に圧力チューブ42が設けられている。ここで、上側リブ32及び下側リブ34が、支持カバー50における支持プレート51の挿通孔51Aを挿通して、支持プレート51がアブソーバ30の前面を前側から覆っている。また、支持プレート51が圧力チューブ42を後側から支持しており、支持カバー50の後端部を構成するリヤフランジ54及びリヤフランジ55が、バンパビーム20の前側に隣接配置されている。このため、歩行者と車両Vとの前面衝突時に、支持プレート51から圧力チューブ42への反力を効果的に作用させることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在されたバンパビームと、
前記バンパビームの車両前側に隣接して配置され、車幅方向に延在されたアブソーバと、
前記アブソーバの前面から車両前側へ突出すると共に、車幅方向に断続的に延在された上側リブと、
前記上側リブの下側において前記アブソーバの前面から車両前側へ突出すると共に、車幅方向に断続的に延在された下側リブと、
車幅方向に延在され且つ前記上側リブと前記下側リブとの間に配置された圧力チューブを含んで構成され、前記圧力チューブの圧力変化に応じた信号を出力する衝突検知センサと、
前記アブソーバの前面を車両前側から覆うと共に前記上側リブ及び前記下側リブが挿通された挿通孔を有する支持部を含んで構成され、前記バンパビームの車両前側に隣接して配置されたカバーと、
を備え、
前記支持部が、前記圧力チューブを車両後側から支持している歩行者衝突検知装置。
【請求項2】
前記カバーは、
前記支持部の上端部から車両後側へ延出され、前記アブソーバの車両上側に隣接して配置された上壁と、
前記支持部の下端部から車両後側へ延出され、前記アブソーバの車両下側に隣接して配置された下壁と、
を含んで構成されている請求項1に記載の歩行者衝突検知装置。
【請求項3】
前記上側リブの剛性が、前記下側リブの剛性と比べて低い請求項1又は請求項2に記載の歩行者衝突検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者衝突検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両では、歩行者衝突検知装置が車両の前端部に設けられており、歩行者衝突検知装置によって、歩行者の車両への衝突を検知するようになっている。歩行者衝突検知装置では、例えば、フォーム材(アブソーバ)が、バンパ支持部材(バンパビーム)の前側に隣接して配置されており、検出チューブ(圧力チューブ)が、フォーム材の前面に形成された溝部に挿入されている(下記特許文献1参照)。歩行者と車両の前面衝突時には、バンパカバーによって、車両後側への衝突荷重が検出チューブに入力されて、バンパカバー及びフォーム材によって検出チューブが前後方向に圧縮変形する(押し潰される)。これにより、検出チューブ内の圧力が変化することで、歩行者衝突検知装置が歩行者と車両との衝突を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-519375710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記歩行者衝突検知装置では、以下に示す点において、改善の余地がある。すなわち、上記歩行者衝突検知装置では、車両後側への衝突荷重がバンパカバーによってフォーム材の前端部及び検出チューブに入力される。このとき、衝突荷重によって、フォーム材の前端部が後側へ変位するようにフォーム材が変形する。このため、フォーム材から検出チューブに作用する反力が低くなり、検出チューブの変形量が小さくなる。したがって、上記歩行者衝突検知装置では、歩行者と車両との衝突時に検出チューブを良好に変形させて、歩行者との衝突を検知するという点において、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、歩行者との衝突を良好に検出することができる歩行者衝突検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、車幅方向に延在されたバンパビームと、前記バンパビームの車両前側に隣接して配置され、車幅方向に延在されたアブソーバと、前記アブソーバの前面から車両前側へ突出すると共に、車幅方向に断続的に延在された上側リブと、前記上側リブの下側において前記アブソーバの前面から車両前側へ突出すると共に、車幅方向に断続的に延在された下側リブと、車幅方向に延在され且つ前記上側リブと前記下側リブとの間に配置された圧力チューブを含んで構成され、前記圧力チューブの圧力変化に応じた信号を出力する衝突検知センサと、前記アブソーバの前面を車両前側から覆うと共に前記上側リブ及び前記下側リブが挿通された挿通孔を有する支持部を含んで構成され、前記バンパビームの車両前側に隣接して配置されたカバーと、を備え、前記支持部が、前記圧力チューブを車両後側から支持している歩行者衝突検知装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、歩行者との衝突を良好に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る歩行者衝突検知装置を示す模式的な平面図である。
図2図1に示される歩行者衝突検知装置の左側から見た断面図(図1の2-2線拡大断面図)である。
図3図2に示される支持カバーのアブソーバへの組付け状態を示す一部破断した斜視図である。
図4】車両と歩行者との前面衝突時における歩行者衝突検知装置の動作を模式的に示す図3に対応する断面図である。
図5】車両と歩行者以外の衝突体との前面衝突時における歩行者衝突検知装置の動作を模式的に示す図3に対応する断面図である。
図6図3に示されるアブソーバの上側リブの変形例を示す図3に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係る歩行者衝突検知装置10について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、歩行者衝突検知装置10が適用された車両(自動車)Vの車両前側を示し、矢印UPは車両上側を示し、矢印LHは車両左側(車幅方向一方側)を示している。以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向を示すものとする。
【0010】
図1及び図2に示されるように、歩行者衝突検知装置10は、車両Vの前端部に配置されて、衝突体の車両Vへの衝突を検知する装置として構成されている。歩行者衝突検知装置10は、車両Vの骨格部材を構成するバンパビーム20と、バンパビーム20の前側に配置されたアブソーバ30と、アブソーバ30に組付けられたカバーとしての支持カバー50と、を含んで構成されている。また、歩行者衝突検知装置10は、衝突検知センサ40を有している。以下、歩行者衝突検知装置10の各構成について説明する。
【0011】
(バンパビーム20について)
バンパビーム20は、左右方向(車幅方向)に延在されると共に、バンパビーム20の長手方向から見た断面視で略矩形閉断面形状に形成されている。バンパビーム20は、バンパビーム20の前端部を構成するフロントパネル22と、バンパビーム20の後部を構成するリヤパネル24と、を含んで構成されている。
【0012】
フロントパネル22は、金属板材によって構成されると共に、前後方向を板厚方向とし且つ左右方向に延在されている。また、フロントパネル22の上下方向中間部には、後側へ一段窪んだ凹部22Aが形成されている。そして、フロントパネル22における凹部22Aよりも上側部分が上側フランジ部22Bとして構成され、フロントパネル22における凹部22Aよりも下側部分が下側フランジ部22Cとして構成されている。
【0013】
リヤパネル24は、フロントパネル22と同様に金属板材によって構成されると共に、左右方向に延在されている。リヤパネル24は、その長手方向から見て、前側へ開放された略ハット形状に形成されている。そして、リヤパネル24の上端部がフロントパネル22の上側フランジ部22Bに接合され、リヤパネル24の下端部が、フロントパネル22の下側フランジ部22Cに接合されている。
【0014】
バンパビーム20の後側には、車両Vの骨格を構成する左右一対のフロントサイドフレーム60が設けられており、フロントサイドフレーム60は、前後方向に延在されている。そして、バンパビーム20の車幅方向両端部が、クラッシュボックス62を介して、フロントサイドフレーム60の前端部に連結されている。
【0015】
(アブソーバ30について)
アブソーバ30は、発泡樹脂材すなわちウレタンフォーム等によって構成されている。アブソーバ30は、左右方向を長手方向とする略長尺状に形成されると共に、バンパビーム20の凹部22Aの前側に隣接して配置されている。アブソーバ30は、長手方向から見た断面視で、略台形状に形成されている。具体的には、アブソーバ30の上面30Aが、左右方向から見て、後側へ向かうに従い上側へ若干傾斜しており、アブソーバ30の下面30Bが、左右方向から見て、後側へ向かうに従い下側へ若干傾斜している。そして、アブソーバ30の後面が、バンパビーム20の凹部22Aの前面に固定されている。
【0016】
図3にも示されるように、アブソーバ30の前面30Cの上端部には、上側リブ32が一体に設けられている。上側リブ32は、上下方向を厚み方向とし且つ左右方向に延在されたリブ状に形成されると共に、左右方向に断続的に延在されている。すなわち、上側リブ32は、複数の上側リブ部32Aによって構成されている。複数の上側リブ部32Aは、左右方向を長手方向とする略直方体ブロック状に形成されて、左右方向に所定の間隔を空けて並んで配置されている。
【0017】
アブソーバ30の前面30Cの下端部には、上側リブ32の下側において、下側リブ34が一体に設けられている。下側リブ34は、上側リブ32と同様に、上下方向を厚み方向とし且つ左右方向に延在されたリブ状に形成されると共に、左右方向に断続的に延在されている。すなわち、下側リブ34は、複数の下側リブ部34Aによって構成されており、複数の下側リブ部34Aが、左右方向に延在された略直方体ブロック状に形成されて、左右方向に所定の間隔を空けて並んで配置されている。
【0018】
上側リブ部32A及び下側リブ部34Aの厚み寸法(上下方向の寸法)、左右方向の寸法、及び前後方向の寸法は、それぞれ同じ寸法に設定されている。すなわち、本実施の形態では、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aの形状が一致しており、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aの剛性が、同じに設定されている。また、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aの左右方向の位置は、同じ位置に設定されている。すなわち、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aが上下方向に所定の間隔を空けて対向して配置されており、アブソーバ30における上側リブ部32Aと下側リブ部34Aの間の領域(空間)が、後述する圧力チューブ42を収容するためのチューブ収容部30Dとして構成されている。
【0019】
また、アブソーバ30の前側には、バンパカバー64が設けられている。バンパカバー64は、車両Vの前端を構成すると共に、車幅方向に延在されており、図示しない所定の位置で、車体に固定されている。これにより、バンパカバー64によって、アブソーバ30が前側から覆われている。
【0020】
(衝突検知センサ40について)
衝突検知センサ40は、圧力チューブ42と、圧力チューブ42の圧力変化に応じた信号を出力する圧力センサ44(広義には、圧力検出器として把握される要素である)と、を含んで構成されている。
【0021】
圧力チューブ42は、左右方向を長手方向とする長尺状に形成されると共に、断面略円環状の中空構造体として構成されている。圧力チューブ42は、アブソーバ30のチューブ収容部30D内に収容されている。具体的には、圧力チューブ42が、下側リブ34の上側に隣接配置されると共に、上側リブ32の下側に離間して配置されている。すなわち、圧力チューブ42の直径は、上下方向におけるチューブ収容部30Dの寸法よりも小さく設定されており、上側リブ32と圧力チューブ42との間には、間隙Gが形成されている。なお、間隙Gの上下方向の寸法は所定の寸法に設定されており、後述する、歩行者以外の衝突体と車両Vとの衝突時に、圧力チューブ42の変形を抑制するように設定されている。
【0022】
圧力センサ44は、圧力チューブ42の長手方向両端部に設けられると共に、図示しない位置において車体に固定されている。圧力センサ44は、ECU46(広義には、衝突判定部として把握される要素である)に電気的に接続されている。そして、圧力チューブ42が変形することで、圧力チューブ42内の圧力変化に応じた信号が圧力センサ44からECU46へ出力されるようになっている。
【0023】
また、ECU46は、圧力センサ44の出力信号に基づいて、圧力チューブ42内の圧力変化値を算出し、圧力変化値が閾値を超えるか否かを判断して、バンパカバー64への衝突体が、歩行者であるのか、小動物等の歩行者以外の衝突体であるのかを判定するようになっている。詳しくは、圧力チューブ42内の圧力変化値が閾値以上の場合には、ECU46が、衝突体を歩行者であると判定し、圧力チューブ42内の圧力変化値が閾値よりも小さい場合には、ECU46が、衝突体を歩行者以外であると判定する。
【0024】
(支持カバー50について)
支持カバー50は、アブソーバ30を前側から覆うようにバンパビーム20の前側に隣接配置されている。支持カバー50は、左右方向に延在されると共に、その長手方向から見て、後側へ開放された略ハット形状に形成されている。具体的には、支持カバー50は、前後方向を板厚方向とする支持部としての支持プレート51と、支持プレート51の上端部から後側へ延出された上壁52と、支持プレート51の下端部から後側へ延出された下壁53と、上壁52の後端部から上側へ延出され且つ支持カバー50の後端部を構成するリヤフランジ54と、下壁53の後端部から下側へ延出され且つ支持カバー50の後端部を構成するリヤフランジ55と、を含んで構成されている。
【0025】
上壁52は、アブソーバ30の上面30Aに沿って後側へ向かうに従い上側へ若干傾斜しており、上面30Aの上側に隣接して配置されている。下壁53は、アブソーバ30の下面30Bに沿って後側へ向かうに従い下側へ若干傾斜しており、下面30Bの下側に隣接して配置されている。リヤフランジ54は、バンパビーム20の前側に隣接して配置されると共に、バンパビーム20における上側フランジ部22Bの下側に隣接配置されている。リヤフランジ55は、バンパビーム20の前側に隣接して配置されると共に、バンパビーム20における下側フランジ部22Cの上側に隣接配置されている。すなわち、支持カバー50の後端部が、バンパビーム20の凹部22Aによって上下方向外側から挟み込まれるように配置されている。これにより、支持カバー50の後側への移動が、バンパビーム20によって制限されると共に、支持カバー50の後端部の上下方向の変位が凹部22Aによって制限されている。支持カバー50は、アブソーバ30に固定されておらず、例えば、アブソーバ30の前後方向の圧縮変形時には、アブソーバ30が、支持カバー50に対して相対変位するようになっている。
【0026】
支持プレート51には、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aに対応する位置において、複数の挿通孔51Aが貫通形成されている。挿通孔51Aは、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aに対応して、左右方向を長手方向とする略矩形長孔状に形成されている。そして、上側リブ部32A及び下側リブ部34Aが挿通孔51A内を挿通して、支持プレート51がアブソーバ30の前面30Cの前側に隣接して配置されている。また、前述した圧力チューブ42は、支持プレート51の前側に隣接配置されると共に、上側リブ32及び下側リブ34よりも前側へ突出しないように、圧力チューブ42の直径が設定されている。すなわち、支持プレート51は、圧力チューブ42を後側から支持する支持部として機能するように構成されている。
【0027】
また、支持カバー50は、硬質の合成樹脂材によって構成されており、前後方向において、所定の剛性を有している。具体的には、歩行者と車両Vとの衝突時には、支持カバー50が塑性変形せずに、支持カバー50(支持プレート51)の圧力チューブ42に対する支持性能を確保するように構成されている。
【0028】
(作用効果)
次に、歩行者と車両Vとの前面衝突時における歩行者衝突検知装置10の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
図4に示されるように、車両Vの歩行者との前面衝突では、歩行者の脚部がバンパカバー64に当たり、後側への衝突荷重F1がバンパカバー64に入力されて、バンパカバー64が後側へ変位する。このため、バンパカバー64が、アブソーバ30の前端部(すなわち、上側リブ32及び下側リブ34)を押圧する。これにより、上側リブ32及び下側リブ34を含むアブソーバ30の前端部が後側へ変位するように、アブソーバ30が前後方向に圧縮変形する。
【0030】
一方、支持カバー50のリヤフランジ54及びリヤフランジ55は、バンパビーム20の前側に隣接配置されて、支持カバー50の後側への移動がバンパビーム20によって制限されている。また、支持カバー50は、アブソーバ30に固定されていない。このため、上側リブ32及び下側リブ34が、支持カバー50の支持プレート51に対して後側に変位するように、アブソーバ30が変形する。また、このときには、支持プレート51による圧力チューブ42の支持機能が維持された状態で、バンパカバー64が圧力チューブ42を押圧する。これにより、圧力チューブ42がバンパカバー64及び支持カバー50によって前後方向に挟み込まれて、圧縮変形する。
【0031】
また、アブソーバ30が前後方向に圧縮変形するときには、アブソーバ30が上下方向外側へ膨らむように変形するため(図4の矢印A参照)、アブソーバ30の上側リブ32及び下側リブ34が上下方向内側へ変位するようになる(図4の矢印B参照)。すなわち、下側リブ34が、圧力チューブ42と共に上側に変位すると共に、上側リブ32が下側に変位する。換言すると、上側リブ32及び下側リブ34が、互いに接近して、圧力チューブ42を上下方向両側から挟み込む。これにより、圧力チューブ42が上下方向に圧縮変形する。以上により、歩行者と車両Vとの衝突では、圧力チューブ42が前後方向及び上下方向に圧縮変形する。よって、歩行者と車両Vとの衝突時における圧力チューブ42の変形量を大きくすることができると共に、圧力チューブ42内の圧力変化を大きくすることができる。その結果、ECU46において、バンパカバー64への衝突体が歩行者であることを検知する。
【0032】
なお、小動物等の歩行者以外の衝突体と車両Vとの前面衝突では、当該衝突体がバンパカバー64の下部に当たる。このため、図5に示されるように、主として、後斜め上方側への衝突荷重F2が、バンパカバー64に入力されると共に、アブソーバ30の前端部(下側リブ34)に入力される。衝突荷重F2がアブソーバ30の下側リブ34に入力されると、下側リブ34が、押し潰されながら、後斜め上方側へ変位する。これにより、下側リブ34の変位によって圧力チューブ42がチューブ収容部30D内を上側へ移動するが、圧力チューブ42と上側リブ32との間には、間隙Gが形成されているため、圧力チューブ42の上側への変位を間隙Gが吸収する。このため、上側リブ32及び下側リブ34による圧力チューブ42の上下方向の圧縮変形が抑制される。よって、歩行者以外の衝突体と車両Vとの衝突時における圧力チューブ42の変形量を小さくすることができると共に、圧力チューブ42内の圧力変化を小さくすることができる。その結果、ECU46において、バンパカバー64への衝突体が歩行者以外の小動物等であることを検知する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の歩行者衝突検知装置10では、アブソーバ30の前面30Cに上側リブ32及び下側リブ34が左右方向に断続的に延在されており、上側リブ32と下側リブ34との間に圧力チューブ42が設けられている。ここで、上側リブ32及び下側リブ34が、支持カバー50における支持プレート51の挿通孔51Aを挿通して、支持プレート51がアブソーバ30の前面を前側から覆っている。また、支持プレート51が圧力チューブ42を後側から支持しており、支持カバー50の後端部を構成するリヤフランジ54及びリヤフランジ55が、バンパビーム20の前側に隣接配置されている。このため、上述のように、歩行者と車両Vとの前面衝突時に、後側への衝突荷重F1がアブソーバ30の上側リブ32及び下側リブ34に入力されて、アブソーバ30の圧縮変形に伴ってアブソーバ30の前端部が後側へ変位しても、支持カバー50(支持プレート51)の後側への移動を、バンパビーム20によって制限することができる。すなわち、支持プレート51の圧力チューブ42に対する支持機能を維持することができる。これにより、支持プレート51から圧力チューブ42への反力を効果的に作用させることができる。その結果、バンパカバー64及び支持プレート51によって圧力チューブ42を前後方向に良好に圧縮変形させて、圧力チューブ42の変形量を大きくすることができる。したがって、歩行者との衝突を良好に検出することができる。
【0034】
また、支持カバー50の上壁52は、支持プレート51の上端部から後側へ延出されると共に、アブソーバ30の上側に隣接配置されている。さらに、支持カバー50の下壁53は、支持プレート51の下端部から後側へ延出されると共に、アブソーバ30の下側に隣接配置されている。このため、上述のように、後側への衝突荷重F1がアブソーバ30の前端部に入力されて、アブソーバ30が上下方向外側へ膨らむときには、アブソーバ30の前端部が、支持カバー50の上壁52及び下壁53を上下方向外側へ押圧する。これにより、支持カバー50の支持プレート51には、上下方向外側の引張力f(図4参照)が作用する。その結果、歩行者と車両Vとの前面衝突時に、支持プレート51から圧力チューブ42に作用する前側への反力を一層効果的に作用させることができる。これにより、圧力チューブ42を前後方向に一層良好に圧縮変形させることができる。
【0035】
また、上述のように、支持カバー50の上壁52がアブソーバ30の上側に隣接配置され、支持カバー50の下壁53がアブソーバ30の下側に隣接配置されている。これにより、支持カバー50をアブソーバ30に非固定状態に組付けた後の、支持カバー50の組付状態を良好に維持することができる。
【0036】
また、支持カバー50のリヤフランジ54が、バンパビーム20における凹部22Aの上端部の前側に隣接配置され、支持カバー50のリヤフランジ55が、バンパビーム20における凹部22Aの下端部の前側に隣接配置されている。このため、支持カバー50の後端部が上下方向外側に開くことをバンパビーム20の凹部22Aによって抑制できる。これにより、歩行者と車両Vとの前面衝突時に、バンパビーム20によって支持カバー50を良好に支持しつつ、支持プレート51の後側への変位を抑制できる。その結果、支持プレート51の圧力チューブ42に対する支持性能を良好に維持することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、アブソーバ30の上側リブ32の曲げ剛性と下側リブ34の曲げ剛性が同じになるように、上側リブ32及び下側リブ34の形状が設定されている。これに代えて、上側リブ32の曲げ剛性を下側リブ34の曲げ剛性よりも低くしてもよい。例えば、図示は省略するが、上側リブ32の左右方向又は上下方向の寸法を下側リブ34の左右方向又は上下方向の寸法よりも短く設定して、上側リブ32の曲げ剛性を下側リブ34の曲げ剛性よりも低くしてもよい。また、図6に示されるように、上下方向又は左右方向に延在されたスリット32Bを上側リブ32の上側リブ部32Aに形成して、上側リブ32の曲げ剛性を下側リブ34の曲げ剛性よりも低くしてもよい(図6では、上下方向に延在されたスリット32Bを上側リブ部32Aに形成した例を示している)。これにより、歩行者と車両Vとの衝突時における圧力チューブ42の変形量を一層大きくすることができる。
【0038】
すなわち、上述のように、車両Vの歩行者との前面衝突では、歩行者の脚部がバンパカバー64に当たることで、バンパカバー64が後側へ変位して、後側への衝突荷重F1がバンパカバー64からアブソーバ30の前端部(すなわち、上側リブ32及び下側リブ34)に入力される。そして、歩行者の脚部のバンパカバー64への衝突後、歩行者が車両Vのフード上に倒れ込むようになる。このため、衝突荷重F1の向きが、後斜め下方側へと変化して、主として、後斜め下方側の衝突荷重F1が上側リブ32に入力されるようになる。ここで、図6に示される例では、上側リブ32の曲げ剛性が下側リブ34の曲げ剛性よりも低く設定されているため、後斜め下方側への衝突荷重F1によって、上側リブ32を後斜め下方側へ容易に変位させることができる。これにより、上側リブ32及び下側リブ34によって圧力チューブ42を上下方向に良好に押し潰すことができる。したがって、歩行者と車両Vとの衝突時における圧力チューブ42の変形量を一層大きくすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、支持カバー50のリヤフランジ54及びリヤフランジ55がバンパビーム20の凹部22A内に配置されて、凹部22Aによってリヤフランジ54及びリヤフランジ55の上下方向外側への変位を制限している。これに代えて、例えば、止具等を用いて、支持カバー50のリヤフランジ54及びリヤフランジ55をバンパビーム20に固定してもよい。この場合には、バンパビーム20において凹部22Aを省略してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、圧力チューブ42が、リヤフランジ55の上側に隣接配置されているが、圧力チューブ42をチューブ収容部30Dの上下方向中央部に配置するように構成してもよい。例えば、下側リブ部34Aの上面に複数のリブを形成して、圧力チューブ42をチューブ収容部30Dの上下方向中央部に配置するように構成してもよい。
【0041】
また、本実施形態のアブソーバ30の下側リブ部34Aの前端部に、上側へ突出した突出部34B(図2参照)を形成して、突出部34Bによって圧力チューブ42の前側への移動を制限してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 歩行者衝突検知装置
20 バンパビーム
30 アブソーバ
32 上側リブ
34 下側リブ
40 衝突検知センサ
42 圧力チューブ
50 支持カバー(カバー)
51 支持プレート(支持部)
51A 挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6