(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177452
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】燃焼監視装置、及び、燃焼監視プログラム
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20231207BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F23N5/24 106A
F23N5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090137
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】西山 武志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山縣 謙一
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003FA02
3K003FB04
3K003FB05
3K003GA03
(57)【要約】
【課題】燃焼装置の不調をユーザに適切に把握させる。
【解決手段】燃焼監視装置20は、燃焼装置のメインバーナに供給された燃料量と、燃料量がメインバーナに供給されたときのフレームレベルの平均値及びばらつき度と、の複数の組を取得する情報取得部21Aを備える。燃焼監視装置20は、さらに、情報取得部21Aにより取得された前記複数の組に基づく、燃料量とフレームレベルの平均値との関係を示すグラフ、及び、燃料量とフレームレベルのばらつき度との関係を示すグラフをディスプレイ24に表示させる処理を実行する情報処理部21Bを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置のバーナに供給された燃料量と、前記燃料量が前記バーナに供給されたときの前記バーナの火炎の活発度の大きさ及び当該活発度のばらつき度の少なくとも一方と、の複数の組を取得する情報取得部と、
前記情報取得部により取得された前記複数の組に基づく前記燃料量と前記大きさ及び前記ばらつき度の少なくとも一方との関係を示すグラフを表示部に表示させる処理を実行する情報処理部と、
を備える燃焼監視装置。
【請求項2】
前記活発度は、前記バーナの火炎によって生じた火炎検出器での放電の一定時間当たりの回数により表される、
請求項1に記載の燃焼監視装置。
【請求項3】
前記複数の組のそれぞれは、前記大きさ及び前記ばらつき度の両者を含み、
前記グラフは、前記燃料量を第1軸とし前記大きさを第2軸とした座標系に前記燃料量と前記大きさとをプロットした第1グラフと、前記燃料量を第1軸とし前記ばらつき度を第2軸とした座標系に前記燃料量と前記ばらつき度とをプロットした第2グラフと、を含む、
請求項1に記載の燃焼監視装置。
【請求項4】
前記第1グラフ及び前記第2グラフのそれぞれには、前記燃焼装置が正常のときの正常範囲が示される、
請求項3に記載の燃焼監視装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、前記燃焼装置が正常のときの前記燃料量と前記大きさ及び前記ばらつき度との複数の組を取得し、
前記情報処理部は、前記複数の組に基づいて前記正常範囲を特定する、
請求項4に記載の燃焼監視装置。
【請求項6】
前記グラフは、前記燃料量を第1軸とし前記大きさ及び前記ばらつき度の少なくとも一方を第2軸とした座標系に、前記複数の組をプロットしたグラフであり、
前記情報処理部は、前記複数の組を、複数の図形により前記座標系にそれぞれプロットし、
前記複数の図形のそれぞれは、重なってプロットされたときに、重なった部分の色が濃くなるように半透明である、
請求項1に記載の燃焼監視装置。
【請求項7】
前記複数の組のそれぞれは、前記大きさ及び前記ばらつき度の両者を含み、
前記グラフは、前記燃料量と前記大きさと前記ばらつき度とのそれぞれの時間変化を表すトレンドグラフを含む、
請求項1に記載の燃焼監視装置。
【請求項8】
前記情報処理部は、前記複数の組のうちの予め定められた数以上の組が予め定められた正常範囲外となったときに前記燃焼装置が正常でないと判別し、その旨を出力する、
請求項1に記載の燃焼監視装置。
【請求項9】
コンピュータに、
燃焼装置のバーナに供給された燃料量と、前記燃料量が前記バーナに供給されたときの前記バーナの火炎の活発度の大きさ及び当該活発度のばらつき度の少なくとも一方と、の複数の組を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにより取得された前記複数の組に基づく前記燃料量と前記大きさ及び前記ばらつき度の少なくとも一方との関係を示すグラフを表示部に表示させる処理を実行する情報処理ステップと、
を実行させる燃焼監視プログラム。
【請求項10】
前記情報処理ステップは、前記複数の組のうちの予め定められた数以上の組が予め定められた正常範囲外となったときに前記燃焼装置が正常でないと判別し、その旨を出力するステップを含む、
請求項9に記載の燃焼監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置を監視する、燃焼監視装置、及び、燃焼監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼シーケンスを構成する複数のサブシーケンス(特許文献1では、「パイロット点火(トライアル)」、「パイロットオンリー」、「メイン着火」、及び、「メイン安定」)それぞれ毎にバーナの火炎の活発度(特許文献1ではフレーム電圧)を監視する技術が開示されている。この技術では、監視対象であるバーナの火炎の活発度がサブシーケンスごとに定められている所定の範囲からずれていた場合、燃焼装置に不調が生じていると判別する。ユーザは、この判別結果を確認することで、燃焼装置に不調が生じていることを把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、バーナの火炎の活発度のみを監視するため、ユーザに燃焼装置の不調を適切に把握させることができない場合がある。例えば、火炎の活発度のみの監視では、把握できない種類の不調も考えられるからである。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、燃焼装置の不調をユーザに適切に把握させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る燃焼監視装置は、燃焼装置のバーナに供給された燃料量と、前記燃料量が前記バーナに供給されたときの前記バーナの火炎の活発度の大きさ及び当該活発度のばらつき度の少なくとも一方と、の複数の組を取得する情報取得部と、前記情報取得部により取得された前記複数の組に基づく前記燃料量と前記大きさ及び前記ばらつき度の少なくとも一方との関係を示すグラフを表示部に表示させる処理を実行する情報処理部と、を備える。
【0007】
前記活発度は、前記バーナの火炎によって生じた火炎検出器での放電の一定時間当たりの回数により表されてもよい。
【0008】
前記複数の組のそれぞれは、前記大きさ及び前記ばらつき度の両者を含み、前記グラフは、前記燃料量を第1軸とし前記大きさを第2軸とした座標系に前記燃料量と前記大きさとをプロットした第1グラフと、前記燃料量を第1軸とし前記ばらつき度を第2軸とした座標系に前記燃料量と前記ばらつき度とをプロットした第2グラフと、を含んでもよい。
【0009】
前記第1グラフ及び前記第2グラフのそれぞれには、前記燃焼装置が正常のときの正常範囲が示されてもよい。
【0010】
前記情報取得部は、前記燃焼装置が正常のときの前記燃料量と前記大きさ及び前記ばらつき度との複数の組を取得し、前記情報処理部は、前記複数の組に基づいて前記正常範囲を特定してもよい。
【0011】
前記グラフは、前記燃料量を第1軸とし前記大きさ及び前記ばらつき度の少なくとも一方を第2軸とした座標系に、前記複数の組をプロットしたグラフであり、前記情報処理部は、前記複数の組を、複数の図形により前記座標系にそれぞれプロットし、前記複数の図形のそれぞれは、重なってプロットされたときに、重なった部分の色が濃くなるように半透明であってもよい。
【0012】
前記複数の組のそれぞれは、前記大きさ及び前記ばらつき度の両者を含み、前記グラフは、前記燃料量と前記大きさと前記ばらつき度とのそれぞれの時間変化を表すトレンドグラフを含んでもよい。
【0013】
前記情報処理部は、前記複数の組のうちの予め定められた数以上の組が予め定められた正常範囲外となったときに前記燃焼装置が正常でないと判別し、その旨を出力してもよい。
【0014】
本発明に係る燃焼監視プログラムは、コンピュータに、燃焼装置のバーナに供給された燃料量と、前記燃料量が前記バーナに供給されたときの前記バーナの火炎の活発度の大きさ及び当該活発度のばらつき度の少なくとも一方と、の複数の組を取得する情報取得ステップと、前記情報取得ステップにより取得された前記複数の組に基づく前記燃料量と前記大きさ及び前記ばらつき度の少なくとも一方との関係を示すグラフを表示部に表示させる処理を実行する情報処理ステップと、を実行させる。
【0015】
前記情報処理ステップは、前記複数の組のうちの予め定められた数以上の組が予め定められた正常範囲外となったときに前記燃焼装置が正常でないと判別し、その旨を出力するステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、燃焼装置の不調をユーザに適切に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る燃焼監視装置を有する加熱システムの構成図である。
【
図2】
図2は、燃焼制御装置で実行される燃焼シーケンスのフローチャートである。
【
図3】
図3は、燃焼監視装置のハードウェア構成図である。
【
図5】
図5は、情報取得処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、ティーチングデータテーブルの構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、比較データテーブルの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、正常範囲特定処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、ティーチングデータを、燃料量をX軸、フレームレベルの平均値をY軸にとった座標系にプロットしたグラフ(散布図)を示す図である。
【
図11】
図11は、ティーチングデータを、燃料量をX軸、フレームレベルの平均値のばらつき度をY軸にとった座標系にプロットし、正常範囲を足したグラフ(散布図)を示す図である。
【
図12】
図12は、比較データを、燃料量をX軸、フレームレベルの平均値をY軸にとった座標系にプロットし、正常範囲を足したグラフ(散布図)を示す図である。
【
図13】
図13は、比較データを、燃料量をX軸、フレームレベルのばらつき度をY軸にとった座標系にプロットし、正常範囲を足したグラフ(散布図)を示す図である。
【
図15】
図15は、他の比較データを、燃料量をX軸、フレームレベルの平均値をY軸にとった座標系にプロットし、正常範囲を足した他のグラフ(散布図)を示す図である。
【
図16】
図16は、比較データをプロットするときの図形を説明するための図である。
【
図17】
図17は、燃料量、フレームレベルの平均値、及び、フレームレベルのばらつき度の各時間変化を示すトレンドグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0019】
(実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る燃焼監視装置20は、燃焼システム10に使用される。燃焼監視装置20は、燃焼システム10の燃焼装置30の不調(不調の有無及びその原因のうちの少なくとも前者)をユーザに適切に把握させるため、燃焼装置30、特に、メインバーナ42に供給される燃料量、及び、メインバーナ42の火炎の活発度(特にフレームレベル)を監視する。「不調」とは、ここでは、燃焼装置30が、例えば断火が生じて燃焼を行えない状態といった重度の異常が生じた状態となる前の、加熱を行うことが可能な軽度の異常をいう。不調は、重度の異常の予兆ともいえる。不調が放置されると重度の異常が生じ得る。
【0020】
燃焼システム10は、燃焼監視装置20の他、燃焼を行う燃焼装置30と、燃焼装置30を制御する燃焼制御装置71と、燃焼制御装置71に各種指示を行う温調計75と、を備えている。以下、燃焼装置30、燃焼制御装置71、及び温調計75を先に説明してから燃焼監視装置20について説明する。
【0021】
燃焼装置30は、燃焼設備40と、燃料供給系統50と、空気供給系統60と、制御モータMと、開度センサMSと、を備えている。
【0022】
燃焼設備40は、燃焼室R内で燃料ガスを燃焼させる。燃焼設備40は、燃焼室Rを形成している燃焼炉41と、燃料ガスを燃焼させて燃焼室R内を加熱するメインバーナ42と、燃料を燃焼させてメインバーナ42を着火するパイロットバーナ43と、パイロットバーナ43を点火する点火装置(イグナイター)44と、を備えている。
【0023】
燃焼設備40は、さらに、メインバーナ42及びパイロットバーナ43の火炎の活発度を検出する火炎検出器45と、燃焼室R内の温度を検出する温度センサ46と、を備えている。火炎の活発度は、火炎がどの程度活発に発生しているかを示す度合いであり、ここでは、火炎の強度とする。火炎検出器45は、メインバーナ42又はパイロットバーナ43の火炎から放射される電磁波(例えば紫外線)により放電する放電管(例えば紫外線チューブ)を備える。火炎検出器45は、電磁波を受けたときの放電管の放電により、この電磁波つまり火炎を検出する。放電により発生する放電電流は燃焼制御装置71に入力される。
【0024】
燃料供給系統50は、外部からの燃料ガスを燃焼設備40に供給する。燃料供給系統50は、燃焼設備40に供給される燃料ガスが流れる燃料流路51を備えている。燃料流路51は、外部から燃料ガスが供給される主流路51Aと、主流路51Aが分岐した第1流路51Bおよび第2流路51Cと、を含む。第1流路51Bはメインバーナ42に接続され、第2流路51Cはパイロットバーナ43に接続されている。
【0025】
燃料供給系統50は、さらに、第1流路51Bに設けられたメインバルブ54A及び54Bと、第2流路51Cに設けられたパイロットバルブ54C及び54Dと、を備える。メインバルブ54A及び54Bは、第1流路51Bを開閉する。パイロットバルブ54C及び54Dは、第2流路51Cを開閉する。燃料供給系統50は、主流路51Aに設けられた燃料流量調整用のダンパ55と、第1流路51Bを流れる、つまり、メインバーナ42に供給される燃料量を燃料ガスの流量のかたちで検出する燃料流量計56と、をさらに備える。
【0026】
空気供給系統60は、燃焼設備40に空気を供給する。空気供給系統60は、燃焼設備40のメインバーナ42に空気を供給する空気流路61と、空気流路61に空気を流すブロワ62と、を備えている。空気供給系統60は、空気流路61に設けられた空気流量調整用のダンパ65と、空気流路61を流れる、つまり、メインバーナ42に供給される空気量を空気の流量のかたちで検出する空気流量計66と、をさらに備える。
【0027】
燃料又は空気流量調整用のダンパ55及び65は、制御モータMにより動作して、燃料流路51(第1流路51B)及び空気流路61の開度を制御する。ダンパ55及び65は、リンケージ機構により連動して動作する。これにより、ダンパ55及び65の各開度が連動する。ダンパ55及び65は、他の構成により連動するように構成されてもよい。例えば、ダンパ65を、空気供給系統60の空気流路61の空気の圧力が導入される均圧弁としてもよい。均圧弁であるダンパ65は、空気流路61の空気の圧力と燃料流路51の第1流路51Bの燃料の圧力とが均一になるように動作する。
【0028】
ダンパ55及び65の開度は、メインバーナ42に供給される燃料と空気との比である空燃比が所望の比率を維持するように連動する。ダンパ55及び65の各開度によって、メインバーナ42に供給される燃料量及び空気量が調整され、これにより、各バーナの火炎の活発度が調整され、その結果、燃焼室Rを加熱する加熱温度が制御される。
【0029】
制御モータMには、回転軸の回転角度などを検出することでダンパ55及び65の開度を検出する開度センサMSが設けられる。開度センサMSが検出する開度は、ダンパ55及び65の開度を制御するために制御モータMをフィードバック制御する際のフィードバック値として使用される。
【0030】
燃焼制御装置71は、PLC(Programmable Logic Controller)、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成される。燃焼制御装置71は、バーナコントローラとも呼ばれる。
【0031】
燃焼制御装置71には、火炎検出器45がバーナ42又は43の火炎つまり電磁波を検出したときに出力する放電電流が入力される。燃焼制御装置71は、当該放電電流が流れる抵抗の両端の電位差などを積分して火炎の活発度を表すフレーム電圧(フレーム電流でもよい。以下同じ)を生成する。さらに、燃焼制御装置71は、前記の電位差などに基づいて放電を示す放電パルス信号(例えば電圧信号)を生成する。燃焼制御装置71は、放電パルス信号から放電頻度を示す数値であるフレームレベルを生成する。具体的に、燃焼制御装置71は、放電パルス信号に基づいて一定時間(例えば、0.1秒又は1秒)当たりの放電パルスの数つまり放電回数Nをカウントする。燃焼制御装置71は、カウントした放電回数Nに基づき、当該放電回数により表されるフレームレベルFlを導出する。フレームレベルFlの導出方法は任意であるが、ここでは下記式(1)により導出されるものとする。式中、Nmaxは、前記の一定時間当たりの最大放電回数である。フレームレベルFlは、ここでは100分率で表されるが、N/Nmaxのみで表されてもよい。
Fl=(N/Nmax)*100・・・(1)
【0032】
上記のフレーム電圧、フレームレベルは、いずれも火炎の活発度を示す数値である。フレーム電圧は、下記燃焼シーケンスで使用され、フレームレベルは、後述のように燃焼監視装置20で使用される。フレームレベルは、フレーム電圧に比べ、火炎の変化に対する応答性が良い。フレーム電圧は、バーナ42又は43の火炎の着火及び消火(断火を含む)の検出に使用される。フレームレベルは、後で説明するように、燃焼装置30の不調の監視に使用される。
【0033】
燃焼制御装置71は、燃焼室R内を加熱するため、予め定められた燃焼シーケンスに従って燃焼装置30を制御する。燃焼シーケンスは、
図2に示すように、「プレパージ」(ステップS1)、「パイロット点火」(ステップS2)、「パイロットオンリー」(ステップS3)、「メイン着火」(ステップS4)、「メイン安定」(ステップS5)、「定常燃焼」(ステップS6)といったサブシーケンスを含む。燃焼シーケンス開始時、燃料供給系統50のバルブ54A~54Dは閉じられているものとする。
【0034】
燃焼制御装置71は、プレバージにおいて、制御モータMを駆動し、ダンパ65を高開度位置に制御するとともに、空気供給系統60のブロワ62を動作させる。これにより、メインバーナ42を介して燃焼室R内に新鮮な空気が送風され、燃焼室R内に残留した燃料ガスが外部に排出される。プレバージは、一定時間行われる。燃焼制御装置71は、ダンパ55及び65の開度を制御する際、開度センサMSが検出した開度をフィードバック値として制御モータMをフィードバック制御する(以下、開度の制御について同じ)。
【0035】
燃焼制御装置71は、プレバージのあと、ダンパ55及び65を低開度位置に制御する。その後、燃焼制御装置71は、燃料供給系統50のパイロットバルブ54C及び54Dを開状態に制御してパイロットバーナ43への燃料供給を開始するとともに、点火装置44を動作させて点火スパークを発生させるパイロット点火を実行する。これにより、パイロットバーナ43が点火する。燃焼制御装置71は、上記のフレーム電圧(火炎の活発度)が所定値を超えたときに、パイロットバーナ43の点火を検出する。この検出後、燃焼制御装置71は、所定期間待機することでパイロットバーナ43の火炎を安定させるパイロットオンリーを実行する。
【0036】
パイロットオンリーのあと、燃焼制御装置71は、燃料供給系統50のメインバルブ54A及び54Bを開状態に制御してメインバーナ42への燃料供給を開始するメイン着火を実行する。これにより、パイロットバーナ43の火炎を種火としてメインバーナ42が着火する。燃焼制御装置71は、メインバルブ54A及び54Bを開状態としてから一定期間経過後、メイン着火が終了したとして、燃料供給系統50のパイロットバルブ54C及び54Dを閉じ、パイロットバーナ43の火炎を消す。その後、燃焼制御装置71は、メインバーナ42の火炎を安定させるため、一定期間待機するメイン安定を実行する。
【0037】
燃焼制御装置71は、メイン安定のあと、定常燃焼に移行する。燃焼室R内は、メインバーナ42の定常燃焼により加熱される。燃焼制御装置71は、定常燃焼において、ダンパ55及び65の開度を制御モータMを介して制御することで、メインバーナ42への空気及び燃料の流量を制御し、これにより、メインバーナ42の火力(火炎の活発度)を制御する(詳細は後述)。燃焼制御装置71は、定常燃焼終了のタイミングにおいて、燃料供給系統50のメインバルブ54A及び54Bを閉じ、メインバーナ42の火炎を消す。定常燃焼後にポストバージが行われてもよい。
【0038】
燃焼制御装置71は、現在燃焼シーケンスを実行しているか否かと、燃焼シーケンスを実行している場合の現在のサブシーケンスとを示すシーケンス番号を記憶している。例えば、燃焼シーケンスを実行していない状態は、シーケンス番号として「0」が割り当てられている。サブシーケンスであるプレパージ、パイロット点火、パイロットオンリー、メイン着火、メイン安定、定常燃焼には、シーケンス番号として、「1」~「6」の各番号がそれぞれ割り当てられている。燃焼制御装置71は、燃焼シーケンスの実行開始、サブシーケンスの切り替わりなどに基づいて自身が記憶しているシーケンス番号を更新する。
【0039】
図1に戻り、温調計75は、燃焼シーケンスの開始、及び、定常燃焼の終了(燃焼シーケンスの終了タイミング)を燃焼制御装置71に対して指示する。さらに、温調計75は、温度センサ46が検出した温度をフィードバック値として、燃焼室R内の温度が目標温度となるよう燃焼制御装置71に対して指示を行う。温調計75は、定常燃焼での燃料及び空気の各流量などを、フィードバック値と目標温度との関係で指示する。温調計75は、燃料及び空気の各流量を指示する際、当該各流量を目標値として燃焼制御装置71に供給する。燃焼制御装置71は、供給された目標値から目標開度を導出し、各ダンパ55及び65の開度が目標開度となるよう、開度センサMSからの開度をフィードバック値としたフィードバック制御を制御モータMに対して行う。なお、燃焼制御装置71は、流量計56及び66によりそれぞれ検出されるメインバーナ42への燃料量及び空気量をフィードバック値としたフィーバック制御により目標開度を制御してもよい。
【0040】
図1の燃焼監視装置20は、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成されている。燃焼監視装置20は、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ21と、プロセッサ21のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)22と、プロセッサ21により実行される燃焼監視プログラムを記憶する不揮発性の記憶装置23と、を備える。記憶装置23は、ティーチングデータテーブル、比較データテーブル、燃焼回数カウント値、及び、正常範囲データも記憶する(詳細は後述)。燃焼監視装置20は、さらに、後述の各種画面を表示するディスプレイ24と、ユーザにより操作される操作装置25と、プロセッサ21が燃焼制御装置71及び温調計75と通信を行うための通信モジュール26と、を備える。
【0041】
この実施の形態では、プロセッサ21は、記憶装置23に記憶された燃焼監視プログラムを実行することにより、
図4に示す、情報取得部21A、及び、情報処理部21Bとして動作する。
【0042】
情報取得部21Aは、燃焼制御装置71、温調計75などから各種データを定期的(例えば、0.1秒又は1秒ごと)に収集して日時などとともに記憶装置23に格納するデータコレクタとして機能する。前記の日時は、各種データの取得日時として情報取得部21Aにより付与されてもよいし、燃焼制御装置71などが各種データを取得したときの日時として燃焼制御装置71から供給されてもよい。情報取得部21Aにより収集される各種データには、燃焼制御装置71からの燃料量及びフレームレベルが含まれる。燃料量は、燃料流量計56により検出されたメインバーナ42への燃料量である。情報取得部21Aは、定期的に収集されるフレームレベルのうち、所定期間(例えば、5秒)におけるフレームレベルの平均値及びばらつき度を導出する。ばらつき度は、所定期間における複数のフレームレベルのばらつきの度合いであり、例えば、分散又は標準偏差である。このようにして、情報取得部21Aは、燃料量のほか、フレームレベルの平均値及びばらつき度を取得する。
【0043】
情報取得部21Aは、燃料量とフレームレベルの平均値及びばらつき度とを取得するための処理として、
図5に示す情報取得処理を実行する。情報取得部21Aは、燃焼制御装置71と通信し、燃焼制御装置71が記憶しているシーケンス番号を監視し、シーケンス番号が「4」(メイン着火)から「5」(メイン安定)に変化したことを検出したことを契機として
図5に示す処理を行う。情報取得部21Aは、さらに、シーケンス番号が「0」から「1」に変化したときに、記憶装置23が記憶している燃焼回数カウント値を1増加させる。これにより、燃焼システム10の運用開始からの燃焼シーケンスの通算実行回数つまり通算燃焼回数がカウントされる。他の例として、情報取得部21Aは、シーケンス番号が「6」(定常燃焼)に変化したときに燃焼回数カウント値を1増加させて通算燃焼回数(定常燃焼が行われた通算燃焼回数)をカウントしてもよい。これらのように、燃焼回数カウント値は、通算燃焼回数を示す。
図5に示す情報取得処理は、シーケンス番号が「6」から「0」に変化したことを契機として終了する。
【0044】
図5に示す情報取得処理において、情報取得部21Aは、メイン安定又は定常燃焼における予め定められた複数タイミングのうちのいずれかのタイミングが到来するまで待機する(ステップS11)。情報取得部21Aは、シーケンス番号が「5」に変化したタイミングからの経過時間を計時し、計時した経過時間が前記複数タイミングのいずれかの時間に達したときに、前記の複数タイミングのうちのいずれかのタイミングが到来したと判別する。
【0045】
情報取得部21Aは、前記の複数タイミングのうちのいずれかのタイミングが到来した場合(ステップS11;Yes)、現在から開始される所定期間(ここでは、5秒)の間に定期的(例えば、1秒ごと)に収集される各種データをバッファし、バッファした当該各種データから燃料量及びフレームレベルを抽出する(ステップS12)。
【0046】
情報取得部21Aは、抽出した複数の燃料量の平均をとり、前記所定期間における複数の燃料量の平均値を導出する(ステップS13A)。情報取得部21Aは、さらに、抽出した複数のフレームレベルの平均度及びばらつき度を算出することで、前記所定期間における複数のフレームレベルの平均値及びばらつき度を導出する(ステップS13B)。ステップS13A及びS13Bにより、情報取得部21Aは、燃料量(ここでは平均値)、及び、当該燃料量のときのフレームレベルの平均値及びばらつき度を取得する。燃料量は、上記所定期間における平均値の他、上記所定期間における複数の燃料流量のいずれか(代表値、中央値など)、合計値などであってもよい。このように、燃料量は、上記所定期間における燃料ガスの量の大小を表す値であればよい。
【0047】
情報取得部21Aは、取得した燃料量とフレームレベルの平均値及びばらつき度とを、これらの組の正常範囲(詳細は後述)を規定するためのティーチングデータとするか決定する(ステップS14)。情報取得部21Aは、現在の燃焼回数カウント値が所定値以下の場合、取得した前記の組をティーチングデータと決定する。所定値は、燃焼システム10(特に燃焼装置30)がまだ正常に動作することが担保された燃焼回数としてあらかじめ設定される。このため、ティーチングデータは、燃焼システム10が正常のときの燃料量とフレームレベルの平均値及びばらつき度との組のデータとなる。
【0048】
情報取得部21Aは、前記で取得した組をティーチングデータとする場合(ステップS14;Yes)、記憶装置23のティーチングデータテーブルに前記の組を格納する(ステップS15)。この場合、前記の組とともに、これらの取得日時及び燃焼回数(燃焼回数カウント値)も格納される。取得日時は、情報取得部21Aがフレームレベルの平均値などを導出したタイミングでカレンダ部などを参照して取得する現在日時であっても、当該日時に関連する日時、例えば、上記所定期間において燃焼制御装置71から燃料量などのデータとともに順次供給される日時のいずれかでもよい。なお、フレームレベルの平均値に替えて、上記一定期間における複数のフレームレベルのいずれか(中央値、代表値など)が採用されてもよい(以下、平均値について同じ)。
【0049】
図6に示すように、ティーチングデータテーブルには、燃料量、フレームレベルの平均値、フレームレベルのばらつき度、取得日時、及び、燃焼回数が互いに対応づけられて格納される。
【0050】
情報取得部21Aは、現在の燃焼回数カウント値が所定値を超える場合、前記で取得した組を、ティーチングデータとはせずに、ティーチングデータに基づく正常範囲と比較表示される比較データとすると決定する(ステップS14;No)。この場合、情報取得部21Aは、記憶装置23に設けられた比較データテーブルに前記の組を格納する(ステップS16)。この場合も上記と同様、前記の組とともに、これらの取得日時及び燃焼回数(燃焼回数カウント値)が格納される。
【0051】
図7に示すように、比較データテーブルには、燃料量、フレームレベルの平均値、フレームレベルのばらつき度、取得日時、及び、燃焼回数が互いに対応づけられて格納される。
【0052】
ステップS15又はS16のあと、情報取得部21Aは、再度ステップS11の処理を実行する。
【0053】
図4に戻り、情報処理部21Bは、ティーチングデータテーブルのティーチングデータに基づいて、燃焼システム10(特に燃焼装置30)が正常であるときに燃料量と当該燃料量のときのフレームレベルの平均値とが取り得る値の範囲としての正常範囲を特定する正常範囲特定処理を実行する。当該処理は、ティーチングデータテーブルに一定数のティーチングデータが格納されたことを契機として実行される。
【0054】
情報処理部21Bは、正常範囲特定処理として、
図8に示す処理を実行する。情報処理部21Bは、当該処理において、まず、ティーチングデータテーブルに記録されている、燃料量と当該燃料量に対応付けられたフレームレベルの平均値との組からなるティーチングデータをすべて読み出す(ステップS21)。情報処理部21Bは、その後、読みだした全組に基づいて正常範囲C10(
図10参照)を特定する(ステップS22)。
【0055】
正常範囲C10の特定は、任意の方法により行われる。例えば、情報処理部21Bは、燃料量を一定区分ごとに区切り、各区分についてカーネル密度推定(Kernel Density Estimation)などを用いてフレームレベルの平均値の正常の範囲を特定し、各区分の正常の範囲をつなげて全体の正常範囲C10とする。正常範囲の特定に使用するティーチングデータの数が少ない場合、情報処理部21Bは、任意の方法によってティーチングデータを増やしてもよい。他の例として、情報処理部21Bは、読みだした全組を、燃料量をX軸とし、フレームレベルの平均値をY軸とした直交座標系にプロットしたグラフ(
図9参照)を生成し、生成したグラフをディスプレイ24に表示させてもよい。この場合、当該グラフを見たユーザが操作装置25を操作して、正常範囲C10をディスプレイ24上で指定してもよい。情報処理部21Bは、指定された範囲を正常範囲C10として特定する。正常範囲C10が設定されたグラフを
図10に示す。なお、
図9及び
図10の各グラフのプロット数は、実際よりも少なく描かれている(他のグラフについても同じ)。
【0056】
情報処理部21Bは、特定した正常範囲C10を示す正常範囲データを記憶装置23に記録する(ステップS23)。
【0057】
情報処理部21Bは、ティーチングデータテーブルのティーチングデータに基づいて、燃焼システム10(特に燃焼装置30)が正常であるときに燃料量と当該燃料量のときのフレームレベルのばらつき度とが取り得る値の範囲としての正常範囲C20を特定する処理も行う。当該処理の説明は、上記フレームレベルの平均値についての正常範囲C10を特定する処理の説明と同様である(平均値がばらつき度に読み替えられる)。正常範囲C20が設定されたグラフを
図11に示す。
【0058】
以上のようにして、情報処理部21Bは、燃料量とフレームレベルの平均値との組の正常範囲C10、及び、燃料量とフレームレベルのばらつき度との組の正常範囲C20を特定する。
【0059】
図2の情報処理部21Bは、さらに、比較データテーブルに記録されている燃料量と当該流量に対応付けられたフレームレベルの平均値及びばらつき度との全組の少なくとも一部かつ複数の組を、前記の直交座標系にプロットして、当該複数の組がプロットされたグラフ(
図12及び
図13参照)を生成する。ここでは、横軸にフレームレベルの平均値をとった第1グラフ(
図12)と、横軸にフレームレベルのばらつき度をとった第2グラフ(
図13)とが生成される。第1グラフには正常範囲C10も表示され、第2グラフには正常範囲C20も表示される。情報処理部21Bは、生成した第1グラフ及び第2グラフをディスプレイ24に表示させる。
【0060】
情報処理部21Bは、上記グラフの表示について、例えば、
図14に示すグラフ表示処理を実行する。この処理は、正常範囲C10及びC20の特定後、任意のタイミング(例えば、グラフの表示の指示が操作装置25に入力されたとき)に開始される。
【0061】
情報処理部21Bは、まず、比較データテーブルに記録されている比較データ(燃料量、フレームレベルの平均値、フレームレベルのばらつき度の組)のうち、現在から一定時間遡った又は最も多い燃焼回数から一定回数遡った期間内の日時又は燃焼回数に対応する比較データを、最近の比較データとして読み出す(ステップS31)。情報処理部21Bは、読みだした最近の比較データを前記直交座標系にプロットしたグラフであって、プロットされた前記比較データ(以下、比較データプロットともいう)と、上記で特定した正常範囲C10及びC20とが重畳表示されたグラフ、つまり、
図12及び
図13のような第1グラフ及び第2グラフを生成する(ステップS32)。情報処理部21Bは、生成したグラフをディスプレイ24に表示させる(ステップS33)。
【0062】
ユーザは、ディスプレイ24に表示されたグラフを見て、プロットされた比較データプロットと正常範囲C10又はC20との比較により、燃焼装置30に不調が生じているかを判断する。比較データプロットが正常範囲内であれば、燃焼装置30は正常で不調は生じていない。全比較データプロットのうちの一定数以上の比較データプロットが、
図12及び
図13に示すように正常範囲C10又はC20から外れている場合、燃焼装置30に不調が生じていると判断される。
【0063】
フレームレベルの平均値は、火炎からの紫外線の強さに関連し、火炎の活発度のほか、火炎検出器45の不具合などにも関連する。火炎検出器45の不具合としては、火炎検出器45が備える、火炎からの電磁波を透過して放電管に導く窓が汚れている、火炎検出器45が位置ずれして前記の窓が紫外線が入射しにくい向きになっているなどがあげられる。これら不具合は、フレームレベルの平均値は、全燃料量にわたって全体的に低下する。
図12は、その様子を示す。従って、
図12のグラフは、火炎検出器45の不具合を理由とする燃焼装置30の不調をユーザに把握させることができる。なお、リンケージ機構などの不具合により空燃比が全体的に悪くなり、フレームレベルの平均値が全燃料量にわたって全体的に低下する場合もある。このようなことが考えられる場合、
図12のグラフは、火炎検出器45の不具合又は空燃比の悪化が理由と考えられる燃焼装置30の不調をユーザに把握させることができる。
【0064】
フレームレベルのばらつき度は、火炎が安定していないとき(火炎のリフトなども含む)に大きくなる。火炎が安定しない現象の理由としては、ダンパ55又は65の不具合などによる燃料量や空気量の揺らぎがあげられる。
図13の例では、燃料量が多い領域において火炎が安定しなくなっている。
図13のグラフは、燃料量が多い領域において火炎が安定しなくなっている不調、及び、燃料量や空気量の揺らぎなどがその理由の候補である旨をユーザに把握させることができる。
【0065】
燃料量が変わるとメインバーナ42の火炎形状も変化する。フレームレベルの平均値が高い傾向にある場合、火炎監視が確実にでき、低い傾向にある場合、失火しやすくなる。他方、フレームレベルのばらつき度は少ない方が確実な火炎監視ができる。前記の平均値及びばらつき度の2つをくみあわせてみることにより火炎監視しやすいまたは火炎監視しづらい、燃料量のポイント及びそのポイントでの火炎の安定度合いが可視化でき、それを分析することにより、失火しやすい(又は火炎検出しづらい)燃料量や火炎が安定していない燃料量が確認できる。
【0066】
燃焼シーケンスにおけるメイン安定の期間(燃料量が小さい期間)及びその後の定常燃焼が安定する期間(燃料量が大きい期間)のみティーチングデータ及び比較データが取得されてもよい。このようなときのグラフを
図15に示す。なお、
図15は、フレームレベルの平均値についてのグラフであるが、ばらつき度についても同様である。これらのようなグラフでも不調の把握は可能となる。例えば、
図15の例では、比較データプロットのプロット位置のばらつきが正常範囲に比して大きく、何等かの不調が起きていることが示唆される。
【0067】
以上のように、この実施の形態では、情報取得部21Aが、燃焼装置30のメインバーナ42に供給された燃料量と、この燃料量がメインバーナ42に供給されたときのフレームレベルの平均値及び当該フレームレベルのばらつき度と、の複数の組(比較データ、特に、ステップS31で読み出される最近の比較データ)を取得する。情報処理部21Bは、情報取得部21Aにより取得された複数の組に基づく、燃料量とフレームレベルの平均値との関係を示す第1グラフ(
図12)、及び、燃料量とフレームレベルのばらつき度との関係を示す第2グラフ(
図13)をディスプレイ24に表示させる処理を実行する。これにより、当該これらグラフを確認したユーザは、プロットされた比較データプロットの位置、特にここでは、正常範囲C10及びC20との対比により、燃焼装置30に不調が生じているかを適切に把握できる。特に、メインバーナ42の火炎の活発度のみの監視では把握できない不調、例えば、燃料量全体に及ぶフレームレベルの平均値の低下から分かる火炎検出器45の不具合、及び、ある燃料量における火炎の不安定などの不調をユーザに把握させることができる。
【0068】
また、
図12及び
図13から明らかなように正常範囲C10及びC20は、燃料量の値に応じてその範囲が変化するので、正常範囲が適切に設定され、ユーザは、不調の有無を適切に把握できる。
【0069】
また、上記の活発度は、バーナの火炎によって生じた火炎検出器54での放電の一定時間当たりの回数(フレームレベル)により表される。このような活発度は、火炎の変化に対する応答性が良く、火炎の変化(特に、ばらつき度)をとらえるのに好適である。
【0070】
比較データとティーチングデータに採用される情報は、例えば、メインバーナ42の火炎の活発度の大きさ及びばらつき度であればよい。活発度は、フレームレベルの他、フレーム電圧などにより表されてもよい。活発度の大きさとは、活発度の大小により増減する値であればよく、活発度そのものであってもよい。活発度の大きさの例としては、上記フレームレベルの平均値の他、上記所定期間におけるフレームレベルの代表値又は中央値、又は、あるタイミングでのフレームレベルが挙げられる。
【0071】
情報処理部21Bは、上記複数の比較データである上記複数の組のそれぞれを、図形(ここでは、円)により座標系にプロットするが、
図16に示すようにプロットされる複数の図形P(比較データプロット)のそれぞれは、重なってプロットされたときに、重なった部分の色が濃くなるように半透明であるとよい。これにより、色が濃くなっているところに前記の組が集中していることがわかり、例えば、正常範囲S10又はC20の外で色が濃くなった部分があれば、上記不調が発生している可能性が高いことをユーザに把握させることができる。なお、上記フレームレベルの平均値などの活発度の大きさと燃料量との組が
図12のような散布図としてプロットされることで、フレームレベルのばらつきが表される。また、プロットされる組が活発度の大きさ(特に、平均値ではなく、フレームレベルの代表値などやあるタイミングでのフレームレベル)を含む場合、色の濃淡により、各燃料量に対する活発度の分布及び平均などが把握される。
【0072】
ティーチングデータ、比較データ、正常範囲などは、燃焼室Rで加熱されるワークの種類及び又は量に応じて分けられてもよい。例えば、ワークの種類及び又は量は、燃焼装置30の過去の稼働実績から特定できるので、ティーチングデータテーブル、比較データテーブルを構成する各レコードを、上記取得日時又は燃焼回数に基づいて、ワークの種類及び又は量ごとに分ける。正常範囲の特定や、グラフへのプロットは、ワークの種類及び又は量ごとに分けられたデータごとに別々に行われてもよい。これにより、ワークの種類及び又は量ごとに、上記グラフが生成され、各グラフを比較することで、不調の把握がより詳細になる他、燃焼装置30と相性の良い(燃焼効率などが良い)ワークの種類又は量が把握される。また、比較データを、時系列に沿って複数グループに分けて、各グループについてグラフを生成することで、燃焼装置の経時的な劣化も把握されるが、さらに、上記ワークの種類及び又は量ごとにグラフを分けることで、これらごとの経時的な劣化の進み方なども把握可能となる。
【0073】
(変形例)
上記実施の形態の構成は、任意に変更可能である。以下変形例を例示する。各変形例は、少なくとも一部同士組み合わせることもできる。
【0074】
(変形例1)
燃焼装置30の構成は、任意である。例えば、燃焼装置30は、パイロットバーナ43がないメインバーナ42のみを有するタイプであってもよい。また、燃焼装置30は、パイロットバーナ43を常時点火させた状態としてもよい。この場合、メインバーナ42用の火炎検出器と、パイロットバーナ43用の火炎検出器と、を用意してもよい。
【0075】
(変形例2)
上記第1グラフと第2グラフとは重畳して表示されてもよい。各グラフに正常範囲C10又はC20が表示されなくてもよい。正常範囲がなくても、プロットされた比較データプロットのグラフ内の位置又は複数の比較データプロットのばらつき具合により、燃焼装置30の不調をユーザに適切に把握させることができる。
【0076】
(変形例3)
情報取得部21Aで取得される情報は、火炎の活発度の大きさとばらつき度とのいずれかのみであってもよい。表示されるグラフも、上記第1グラフ及び第2グラフのうちの一方のみであってもよい。これによっても燃焼装置30の不調をユーザに適切に把握させることができる。
【0077】
(変形例4)
正常範囲C10及びC20は、ティーチングデータ、つまり、燃焼装置30が正常のときに取得された燃料量と火炎の活発度の大きさ及びばらつき度との組によらず、ユーザなどによりあらかじめ設定されてもよい。ただし、ティーチングデータを用いた方が、燃焼装置30の個々のクセが反映され、不調をより適切にユーザに把握させることができる。
【0078】
(変形例5)
ティーチングデータ及び比較データとして採用される上記組は、燃焼室Rの温度が高いときなどに限定されてもよい。ティーチングデータ又は比較データとして採用される組で、突発的な異常値がある場合、当該組は採用されずに削除されてもよい。
【0079】
(変形例6)
正常範囲は、正常と判定される閾値の異なる複数段階の正常範囲により表されてもよい。例えば、正常範囲C10よりも範囲の広い正常範囲が正常範囲C10に重畳されて表示されてもよい。
【0080】
(変形例7)
情報処理部21Bは、上記各グラフに加え又は代えて、燃料量と火炎の活発度の大きさと当該活発度のばらつき度との関係を示す他のグラフとして、これらそれぞれの時間変化を表すトレンドグラフを表示する処理を行ってもよい。例えば、情報処理部21Bは、
図17に示すような、比較データなどに基づいて燃料量とフレームレベルの平均値とフレームレベルのばらつき度とのそれぞれの時間変化を表すトレンドグラフをディスプレイ24に表示する。このトレンドグラフでは、比較データテーブルにおける同じ行(レコード)の燃料量とフレームレベルの平均値とフレームレベルのばらつき度とが同時刻つまり縦軸に沿って並ぶ。
【0081】
上記トレンドグラフにより、ユーザは、フレームレベルの平均値又はばらつき度が大きく変化した時の燃料量の変動の有無を確認できる。そして、ユーザは、後者の変動により前者の変動があったのかまたは後者が変動していないにもかかわらず前者の変動があったのかも確認できる。そして、ユーザは、後者が変動していないにもかかわらず前者の変動があった期間がトレンドグラフ内に存在した場合に、不調の可能性を把握できる。このようにして、ユーザは、時間変化から燃焼装置30の不調を適切に把握できる。また、トレンドグラフにより、火炎の挙動がわかるようになり、不調の把握も含め、燃焼装置30の効果的な管理ができる。
【0082】
(変形例8)
情報処理部21Bは、情報取得部11Aにより取得された上記複数の組(比較データ)のうちの予め定められた数以上の組が、正常範囲C10又はC20などの予め定められた正常範囲外となったときに燃焼装置30が正常でないつまり不調であると判別し、その旨を出力してもよい。情報処理部21Bは、例えば、第1グラフ及び第2グラフを生成するときに、各グラフについて、正常範囲C10又はC20外にプロットされた上記組(比較データプロット)の数をカウントし、第1グラフ又は第2グラフにおけるカウント数又はその合計が、所定数以上のときに不調と判別し、その旨を外部出力(例えば報知)する。例えば、情報処理部21Bは、その旨をディスプレイ24に表示するか、不図示のスピーカなどにより音声出力するか、他の装置に出力する。また、上記のように、比較データプロットの正常範囲C10又はC20からの外れ方により不調の種類及び又は原因が分かるので、情報処理部21Bは、機械学習などにより、前記外れ方と不調の種類及び又は原因との関係を学習し、不調の旨の外部出力のときに、不調の種類及び又は原因なども外部出力してもよい。
【0083】
なお、情報処理部21Bは、上記グラフを表示するための処理を行わなくてもよい。つまり、燃焼監視装置20は、前記の燃料量と、前記メインバーナ42の火炎の活発度及び当該活発度のばらつき度の少なくとも一方と、の複数の組を取得する情報取得部21Aと、情報取得部21Aにより取得された前記複数の組のうちの予め定められた数以上の組が予め定められた正常範囲外となったときに燃焼装置30が正常でないと判別し、その旨を出力する情報処理部21Bと、を備えるものであってもよい。
【0084】
(変形例9)
情報取得部21Aは、開度センサMSが検出した弁開度、又は、制御モータMに入力する操作量などを燃焼制御装置71から取得し、取得した値のときのCV値(容量係数)を導出してもよい。この場合、情報取得部21Aは、導出したCV値に基づいて公知の方法により燃料量を導出してもよい。この場合、ダンパ55の一次側の燃料ガスの圧力と二次側の燃料ガスの圧力とをそれぞれ計測する2つの圧力センサを設ける。情報取得部21Aは、2つの圧力センサが計測した各圧力を燃焼制御装置71などを介して取得し、前記CV値に加え、前記で取得した各圧力に基づいて燃料ガスの流量である燃料量を導出する。燃料量は、上記のような操作量、フィードバックされる弁開度など、その増減が燃料量の増減と連動する量により表されてもよい。
【0085】
(変形例10)
ダンパ55及び65は、燃焼制御装置71により個別に制御されてもよい。この場合でも、各開度が一定の比率となるように各開度が制御されるとよい。
【0086】
(変形例11)
情報処理部21Bは、例えば、上記各種グラフを表示部に表示させる処理を実行すればよい。従って、情報処理部21Bは、ユーザの表示端末などの外部装置にグラフを表示してもよい。さらに、他の例として、情報処理部21Bは、前記処理として、グラフを生成せず、複数の比較データ、正常範囲のデータなどを外部装置に送信する処理を行い、当該外部装置にグラフの生成及び表示の処理を実行させてもよい。
【0087】
(変形例12)
燃料ガスに替えて、液体燃料、気液混合燃料などの他の燃料が使用されてもよい。
【0088】
(変形例13)
燃焼監視装置20のハードウェア構成は任意である。燃焼監視装置20は、燃焼制御装置71及び温調計75と他の外部機器とを接続するゲートウェイとして構成されてもよい。情報取得部21A及び情報処理部21Bの少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及び、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの各種の論理回路から構成されてもよい。前記各部21A及び21Bのうちの少なくとも一部は、燃焼制御装置71又は温調計75が備えてもよい。燃焼監視装置20は、サーバコンピュータ、クラウドコンピュータ等であってもよい。燃焼監視装置20などの各装置は、装置の構成要素が一つの筐体にまとめられた装置の他、装置の構成要素が複数の筐体に分散して収容されたシステムを含む。燃焼監視プログラムは、上記記憶装置23など、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記録されればよい。上記状態値などは、揮発性の記憶装置であるRAMなどの他の記憶部に一定期間のみ記録されてもよい。
【0089】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0090】
10…燃焼システム、20…燃焼監視装置、21…プロセッサ、21A…情報取得部、21B…情報処理部、23…記憶装置、24…ディスプレイ、25…操作装置、40…燃焼設備、42…メインバーナ、43…パイロットバーナ、44…点火装置、45…火炎検出器、46…温度センサ、50…燃料供給系統、55…ダンパ、56…燃料流量計、60…空気供給系統、65…ダンパ、66…空気流量計、71…燃焼制御装置、75…温調計、M…制御モータ、MS…開度センサ、P…図形、C10…正常範囲、C20…正常範囲。