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特開2023-177455オイルミストセパレータ及びオイルミストセパレータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177455
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】オイルミストセパレータ及びオイルミストセパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
F01M13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090140
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀 竜弥
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015BD24
3G015BE05
3G015BF05
3G015DA04
(57)【要約】
【課題】オイルがブローバイガスから分離されやすくなるオイルミストセパレータを提供する。
【解決手段】オイルミストセパレータは、内燃機関のブローバイガスからミスト状のオイルを分離するオイルミストセパレータであって、オイルミストセパレータの内部におけるブローバイガスの流れ方向の下流側を下流側とするとき、オイルミストセパレータの内部にブローバイガスを導入する導入口14と、導入口14の下流側に位置し、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離する分離部17,24及び分離部17,24で分離されたオイルをオイルミストセパレータの外部に排出するオイル排出部18を有する複数の分岐通路16,23と、複数の分岐通路16,23の下流側に位置し、ブローバイガスをオイルミストセパレータの外部に排出する排出口19,25と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のブローバイガスからミスト状のオイルを分離するオイルミストセパレータであって、
前記オイルミストセパレータの内部におけるブローバイガスの流れ方向の下流側を下流側とするとき、
前記オイルミストセパレータの内部にブローバイガスを導入する導入口と、
前記導入口の下流側に位置し、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離する分離部及び前記分離部で分離されたオイルを前記オイルミストセパレータの外部に排出するオイル排出部を有する複数の分岐通路と、
前記複数の分岐通路の下流側に位置し、ブローバイガスを前記オイルミストセパレータの外部に排出する排出口と、を備える、
オイルミストセパレータ。
【請求項2】
前記複数の分岐通路は、第1分岐通路及び第2分岐通路を含み、
前記第1分岐通路を構成する第1ケースと、
前記第2分岐通路を構成する第2ケースと、を備え、
前記導入口は、前記第1ケースのみに設けられており、
前記第1ケースには、前記第1分岐通路と前記第2分岐通路とを連通する連通部が設けられている、
請求項1に記載のオイルミストセパレータ。
【請求項3】
前記排出口は、前記第1ケースに設けられている第1排出口と、前記第2ケースに設けられている第2排出口と、含む、
請求項2に記載のオイルミストセパレータ。
【請求項4】
前記第1ケースは、第1底壁、前記第1底壁に対向する第1頂壁、及び前記第1底壁と前記第1頂壁との間に設けられる第1周壁を備えており、
前記第2ケースは、前記第1頂壁に対向する第2頂壁、及び前記第1頂壁と前記第2頂壁との間に設けられる第2周壁を備えており、
前記連通部は、前記第1頂壁に設けられており、
前記第2周壁の周縁は、前記第1頂壁に接合されている、
請求項2または請求項3に記載のオイルミストセパレータ。
【請求項5】
請求項4に記載のオイルミストセパレータの製造方法であって、
型本体に対して着脱自在に構成され、前記連通部を成形する入れ子型を前記型本体に取り付けた状態の第1成形型を用いて前記第1ケースを成形する工程と、
第2成形型を用いて前記第2ケースを成形する工程と、
前記第1ケースに対して前記第2ケースを接合する工程と、を備える、
オイルミストセパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルミストセパレータ及びオイルミストセパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、クランクケース内のブローバイガスを吸気通路に還流するPCV(Positive Crankcase Ventilation)通路が設けられている。PCV通路の途中には、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離するオイルミストセパレータが設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示のオイルミストセパレータは、ブローバイガスが流入する流入口及びブローバイガスが流出する流出口を有するケースを備えている。ケースの内部には、ブローバイガスに含まれるオイルを分離する分離部が設けられている。ケースの下部には、分離部で分離されたオイルをケースの下方に位置するシリンダヘッドの内部に排出するオイル排出部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-127899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、機関出力の最大値の大きい内燃機関(以下、高出力型の内燃機関)においては、機関出力の最大値の小さい内燃機関(以下、低出力型の内燃機関)に比べて高出力での機関運転が行われることが多い。このため、高出力型の内燃機関においては、多くのブローバイガスが発生することで、オイルミストセパレータの内部を流れるブローバイガスの流速も大きくなりやすい。その結果、低出力型の内燃機関に用いられるオイルミストセパレータを、高出力型の内燃機関に対して適用すると、以下の不都合が生じる。すなわち、分離部においてブローバイガスから分離されたオイルが、オイル排出部から外部に排出される前に、ブローバイガスによって吸気通路に持ち去られやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのオイルミストセパレータは、内燃機関のブローバイガスからミスト状のオイルを分離するオイルミストセパレータであって、前記オイルミストセパレータの内部におけるブローバイガスの流れ方向の下流側を下流側とするとき、前記オイルミストセパレータの内部にブローバイガスを導入する導入口と、前記導入口の下流側に位置し、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離する分離部及び前記分離部で分離されたオイルを前記オイルミストセパレータの外部に排出するオイル排出部を有する複数の分岐通路と、前記複数の分岐通路の下流側に位置し、ブローバイガスを前記オイルミストセパレータの外部に排出する排出口と、を備える。
【0007】
同構成によれば、オイルミストセパレータが複数の分岐通路を有しているため、複数の分岐通路を有していない構成、すなわち通路が分岐していない構成に比べて、通路の断面積の総和が大きくなる。これにより、各分岐通路を流れるブローバイガスの流速を低下させることができる。その結果、ブローバイガスがオイルミストセパレータの内部を通過するのに要する時間が長くなる。したがって、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルがブローバイガスから分離されやすくなる。また、ブローバイガスの流速が低下することで、分離部において分離されたオイルがオイル排出部から排出される前にブローバイガスによって持ち去られにくくなる。したがって、吸気通路に還流されるブローバイガスに含まれるオイルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係るオイルミストセパレータの断面図である。
図2図2は、同実施形態に係る第1ケースを成形する様子を表す側面視の断面図である。
図3図3は、同実施形態に係る第2ケースを成形する様子を表す側面視の断面図である。
図4図4は、比較例に係るオイルミストセパレータの側面視の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図4を参照して、オイルミストセパレータの一実施形態について説明する。
図1に示すように、オイルミストセパレータは、内燃機関のクランクケース内のブローバイガスを吸気通路に還流するPCV通路の途中に設けられている。
【0010】
なお、以降において、オイルミストセパレータの内部におけるブローバイガスの流れ方向の下流側を下流側として説明することがある。
オイルミストセパレータは、第1ケース10及び第2ケース20を備えている。
【0011】
オイルミストセパレータには、ホース30が接続されている。
<第1ケース10>
図1に示すように、第1ケース10は、第1底壁11及びケース本体10Aを備えている。
【0012】
第1底壁11は、図1の左右方向において延在している。
なお、以降において、第1底壁11の延在方向を単に延在方向Xとして説明する。また、図1の上下方向を単に上下方向Yとして説明する。また、延在方向Xと上下方向Yの双方に直交する方向を幅方向Zとして説明する。
【0013】
ケース本体10Aは、第1頂壁12及び第1周壁13を有している。
第1頂壁12は、第1底壁11の上方に位置するとともに第1底壁11に対向している。第1周壁13は、第1頂壁12の周縁から下方に突出している。第1周壁13は、第1頂壁12の全周にわたって設けられている。
【0014】
第1周壁13の下側の周縁は、第1底壁11の周縁に接合されている。
第1底壁11には、第1ケース10の内部にブローバイガスを導入する導入口14が設けられている。導入口14は、延在方向Xにおいて第1底壁11の一側(同図の左側)に位置している。
【0015】
第1周壁13には、ブローバイガスを第1ケース10の外部に排出する第1排出口19が設けられている。第1排出口19は、延在方向Xにおいて導入口14とは反対側(同図の右側)に位置している。第1排出口19は、筒状であり、第1周壁13から第1ケース10の外方に突出している。
【0016】
第1頂壁12の下面には、第1衝突板17が設けられている。第1衝突板17は、第1底壁11に向かって突出している。第1衝突板17と第1底壁11との間には、ブローバイガスが通過するための隙間17aが設けられている。第1衝突板17は、延在方向Xにおいて導入口14と第1排出口19との間に位置している。
【0017】
第1底壁11には、第1衝突板17で分離されたオイルを第1ケース10の外部に排出するオイル排出部18が設けられている。オイル排出部18は、延在方向Xにおいて第1衝突板17と第1排出口19との間に位置している。
【0018】
第1頂壁12における導入口14の上方には、第1頂壁12を貫通する連通部15が設けられている。
第1ケース10は、硬質樹脂製である。
【0019】
<第2ケース20>
図1に示すように、第2ケース20は、第1頂壁12の上側に設けられている。第2ケース20は、第2頂壁21及び第2周壁22を有している。
【0020】
第2頂壁21は、第1頂壁12に対向している。
第2周壁22は、第2頂壁21の周縁から下方に突出している。
第2周壁22の下側の周縁26は、第1頂壁12の上面に接合されている。上記連通部15は、周縁26の内周側に位置している。したがって、第1ケース10の内部と第2ケース20の内部とは、連通部15を通じて連通されている。
【0021】
第2周壁22には、ブローバイガスを第2ケース20の外部に排出する第2排出口25が設けられている。
第2排出口25は、延在方向Xにおいて連通部15とは反対側(同図の右側)に位置している。第2排出口25は、筒状であり、第2周壁22から第2ケース20の外方に突出している。第2排出口25と第1排出口19とは、互いに平行に突出している。
【0022】
第2頂壁21の下面には、第2衝突板24が設けられている。第2衝突板24は、第1頂壁12に向かって突出している。第2衝突板24と第1頂壁12との間には、ブローバイガスが通過するための隙間24aが設けられている。第2衝突板24は、延在方向Xにおいて連通部15と第2排出口25との間に位置している。
【0023】
第1頂壁12には、第2衝突板24で分離されたオイルを第1ケース10の内部、すなわち第2ケース20の外部に排出するオイル排出部27が設けられている。オイル排出部27は、延在方向Xにおいて第2衝突板24と第2排出口25との間に位置している。また、オイル排出部27は、幅方向Zにおいて第2排出口25とは異なる位置に設けられている。
【0024】
第2ケース20は、硬質樹脂製である。
第1衝突板17及び第2衝突板24が、本開示に係る分離部を構成している。また、第1ケース10が、本開示に係る第1分岐通路16を構成している。また、第2ケース20が、第2分岐通路23を構成している。したがって、第2分岐通路23は、連通部15によって第1分岐通路16と連通されている。
【0025】
<ホース30>
図1に示すように、ホース30は、いずれも筒状の第1接続部31、第2接続部32、及び合流部33を有している。
【0026】
第1接続部31は、第1排出口19に接続されている。
第2接続部32は、第2排出口25に接続されている。
合流部33は、第1接続部31及び第2接続部32の双方の下流側に連なるとともに図示しない吸気通路に接続されている。
【0027】
次に、オイルミストセパレータの製造方法について説明する。
上記製造方法は、第1ケース10を成形する工程と、第2ケース20を成形する工程と、第1ケース10に対して第2ケース20を接合する工程とを備えている。
【0028】
<第1ケース10を成形する工程>
第1ケース10を成形する工程は、ケース本体10Aを成形する工程と、第1底壁11を成形する工程と、ケース本体10Aに対して第1底壁11を接合する工程とを備えている。
【0029】
まず、ケース本体10Aを成形する工程について説明する。
図2に示すように、ケース本体10Aを成形する第1成形型40は、第1上型41、第1下型42、及びスライド型43を備えている。
【0030】
第1上型41及び第1下型42は、上下方向Yにおいて相対移動可能に構成されている。スライド型43は、延在方向Xにおいてスライド可能に構成されている。
第1上型41、第1下型42、及びスライド型43によって形成されるキャビティ44に対して、ゲート41cを通じて溶融樹脂を射出することにより、ケース本体10Aが成形される。
【0031】
第1上型41及び第1下型42によって第1頂壁12及び第1周壁13が成形される。第1下型42によって第1衝突板17が成形される。また、スライド型43によって第1排出口19の内周面及び端面が成形される。
【0032】
本実施形態では、第1上型41は、型本体41aと、型本体41aに対して着脱自在に構成される入れ子型41bとを備えている。入れ子型41bによって連通部15が成形される。
【0033】
こうして成形されたケース本体10Aに対して、別途成形された第1底壁11を接合することで第1ケース10が形成される。ケース本体10Aと第1底壁11とは、例えば溶着により接合される。
【0034】
<第2ケース20を成形する工程>
図3に示すように、第2ケース20を成形する第2成形型50は、第2上型51、第2下型52、及びスライド型53を備えている。
【0035】
第2上型51及び第2下型52は、上下方向Yにおいて相対移動可能に構成されている。スライド型53は、延在方向Xにおいてスライド可能に構成されている。
第2上型51、第2下型52、及びスライド型53によって形成されるキャビティ54に対して、ゲート51cを通じて溶融樹脂を射出することにより、第2ケース20が成形される。
【0036】
第2上型51及び第2下型52によって第2頂壁21及び第2周壁22が成形される。第2下型52によって第2衝突板24が成形される。また、スライド型53によって第2排出口25の内周面及び端面が成形される。
【0037】
最後に、第1ケース10に対して第2ケース20を接合することにより、オイルミストセパレータが製造される。第1ケース10と第2ケース20とは、例えば溶着により接合される。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
内燃機関のクランクケース内のブローバイガスは、図示しないPCV通路を介して、導入口14から第1ケース10内に導入される。
【0039】
導入口14から第1ケース10内に導入されたブローバイガスの一部は、第1ケース10内を第1排出口19に向かって移動する。このとき、ブローバイガスが第1衝突板17に衝突することで、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルが分離される。分離されたオイルは、第1衝突板17を伝って第1底壁11上に移動する。そして、オイルは、オイル排出部18を通じて第1ケース10の下方、すなわち外部に排出される。
【0040】
また、導入口14から第1ケース10内に導入されたブローバイガスの残りは、第2ケース20内を第2排出口25に向かって移動する。このとき、ブローバイガスが第2衝突板24に衝突することで、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルが分離される。分離されたオイルは、第2衝突板24を伝って第1頂壁12上に移動する。そして、オイルは、オイル排出部27を通じて第1ケース10の内部に排出され、その後、オイル排出部18を通じて第1ケース10の下方、すなわち外部に排出される。
【0041】
また、第1排出口19及び第2排出口25を通じて排出されたブローバイガスは、ホース30を介して内燃機関の吸気通路に吸入される。
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0042】
(1)オイルミストセパレータは、第1分岐通路16と、第2分岐通路23とを備える。
こうした構成によれば、図4に示すような複数の分岐通路を有していない構成、すなわち通路が分岐していない構成に比べて、通路の断面積の総和が大きくなる。これにより、第1分岐通路16及び第2分岐通路23を流れるブローバイガスの流速を低下させることができる。その結果、ブローバイガスがオイルミストセパレータの内部を通過するのに要する時間が長くなる。したがって、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルがブローバイガスから分離されやすくなる。また、ブローバイガスの流速が低下することで、第1衝突板17及び第2衝突板24において分離されたオイルがオイル排出部18,27から排出される前にブローバイガスによって持ち去られにくくなる。したがって、吸気通路に還流されるブローバイガスに含まれるオイルを低減することができる。
【0043】
(2)第1分岐通路16は第1ケース10によって構成され、第2分岐通路23は第2ケース20によって構成される。第1ケース10には、連通部15が設けられている。
こうした構成によれば、第1ケース10に設けられた導入口14から第1ケース10の内部に導入されたブローバイガスの一部が第1ケース10の第1衝突板17に向かって流れるようになる。一方、残りのブローバイガスは、第2ケース20の第2衝突板24に向かって流れるようになる。このため、第2ケース20には、導入口を設けなくて済む。したがって、オイルミストセパレータの構成を簡単にすることができる。
【0044】
(3)オイルミストセパレータは、第1ケース10に設けられている第1排出口19と、第2ケース20に設けられている第2排出口25とを備える。
例えば第2ケース20の第2排出口25を省略し、オイル排出部27を通じて第2ケース20内のブローバイガスを第1ケース10内に戻す構成が考えられる。この場合、排出口は、第1ケース10のみに設けられることになる。ただし、この場合、第2ケース20の第2衝突板24において分離されたオイルが、第2ケース20内を流れるブローバイガスによって第1ケース10内に持ち去られた後、第1ケース10内を流れるブローバイガスによって吸気通路に持ち去られるおそれがある。
【0045】
この点、上記構成によれば、第1ケース10に第1排出口19が設けられるとともに、第2ケース20に第2排出口25が設けられている。このため、第2ケース20内を流れるブローバイガスは第2排出口25を通じて外部に排出されるので、当該ブローバイガスが第1ケース10内に流入することがない。これにより、上述した問題の発生を回避できる。したがって、吸気通路に還流されるブローバイガスに含まれるオイルを一層低減することができる。
【0046】
(4)連通部15は、第1頂壁12に設けられている。第2周壁22の周縁26は、第1頂壁12に接合されている。
こうした構成によれば、第2周壁22の周縁26を、第1頂壁12に接合することによってオイルミストセパレータが形成される。このため、既存のケースの頂壁に連通部15を設けるといった簡単な設計変更を行うことによって第1ケース10を形成できる。また、第2頂壁21及び第2周壁22を有する一方、底壁を有していない簡単な構成の第2ケース20を第1ケース10に対して接合することによって、オイルミストセパレータを形成できる。したがって、オイルミストセパレータの構成を簡単にできる。
【0047】
(5)入れ子型41bを型本体41aに取り付けた状態の第1成形型40を用いることによって、連通部15を有する第1ケース10を成形するようにした。
ここで、入れ子型41bが取り付けられていない第1成形型40を用いることによって、図4に示す連通部15を有していないケースを成形することができる。
【0048】
したがって、本実施形態における第1ケース10と、複数の分岐通路を有していない構成、すなわち通路が分岐していない構成のオイルミストセパレータを構成するケースとを、共通の型本体41aを用いて製造することができる。
【0049】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
・上記実施形態では、第1ケース10と第2ケース20とを上下方向Yにおいて隣り合うように配置したが、第1ケース10と第2ケース20とを幅方向Zにおいて隣り合うように配置してもよい。この場合、連通部15を第1ケース10の第1周壁13に設ければよい。
【0051】
・第1ケース10と第2ケース20とを互いに離間させて配置することもできる。この場合、第2周壁22の下部開口を覆う第2底壁を設けるとともに、第1ケース10と第2ケース20とをホースなどによって連通するようにすればよい。こうした構成によれば、第1分岐通路16と第2分岐通路23とを互いに離間させて配置することが可能であるため、オイルミストセパレータの形状の自由度を高めることができる。
【0052】
・ブローバイガスの分岐通路は、3つ以上でもよい。この場合、分岐通路の数に応じて分岐通路を構成するケースを設けることで、オイルミストセパレータを具現化できる。
・本開示に係る分離部は、第1衝突板17及び第2衝突板24のような板部に限定されない。例えば、ブローバイガスが通過可能な多孔質部材によって分離部を構成することもできる。
【0053】
上記実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]内燃機関のブローバイガスからミスト状のオイルを分離するオイルミストセパレータであって、前記オイルミストセパレータの内部におけるブローバイガスの流れ方向の下流側を下流側とするとき、前記オイルミストセパレータの内部にブローバイガスを導入する導入口と、前記導入口の下流側に位置し、ブローバイガスに含まれるミスト状のオイルを分離する分離部及び前記分離部で分離されたオイルを前記オイルミストセパレータの外部に排出するオイル排出部を有する複数の分岐通路と、前記複数の分岐通路の下流側に位置し、ブローバイガスを前記オイルミストセパレータの外部に排出する排出口と、を備える、オイルミストセパレータ。
【0054】
[付記2]前記複数の分岐通路は、第1分岐通路及び第2分岐通路を含み、前記第1分岐通路を構成する第1ケースと、前記第2分岐通路を構成する第2ケースと、を備え、前記導入口は、前記第1ケースのみに設けられており、前記第1ケース及び前記第2ケースには、前記第1分岐通路と前記第2分岐通路とを連通する連通部が設けられている、[付記1]に記載のオイルミストセパレータ。
【0055】
[付記3]前記排出口は、前記第1ケースに設けられている第1排出口と、前記第2ケースに設けられている第2排出口と、含む、[付記2]に記載のオイルミストセパレータ。
【0056】
[付記4]前記第1ケースは、第1底壁、前記第1底壁に対向する第1頂壁、及び前記第1底壁と前記第1頂壁との間に設けられる第1周壁を備えており、前記第2ケースは、前記第1頂壁に対向する第2頂壁、及び前記第1頂壁と前記第2頂壁との間に設けられる第2周壁を備えており、前記連通部は、前記第1頂壁に設けられており、前記第2周壁の周縁部は、第1頂壁に接合されている、[付記2]または[付記3]に記載のオイルミストセパレータ。
【0057】
[付記5][付記2]~[付記4]のいずれか1つに記載のオイルミストセパレータの製造方法であって、型本体に対して着脱自在に構成され、前記連通部を成形する入れ子型を前記型本体に取り付けた状態の第1成形型を用いて前記第1ケースを成形する工程と、第2成形型を用いて前記第2ケースを成形する工程と、前記第1ケースに対して前記第2ケースを接合する工程と、を備える、オイルミストセパレータの製造方法。
【符号の説明】
【0058】
10…第1ケース
10A…ケース本体
11…第1底壁
12…第1頂壁
13…第1周壁
14…導入口
15…連通部
16…第1分岐通路(分岐通路)
17…第1衝突板(分離部)
17a…隙間
18…オイル排出部
19…第1排出口(排出口)
20…第2ケース
21…第2頂壁
22…第2周壁
23…第2分岐通路(分岐通路)
24…第2衝突板(分離部)
24a…隙間
25…第2排出口(排出口)
26…周縁
27…オイル排出部
30…ホース
31…第1接続部
32…第2接続部
33…合流部
40…第1成形型
41…第1上型
41a…型本体
41b…入れ子型
41c…ゲート
42…第1下型
43…スライド型
44…キャビティ
50…第2成形型
51…第2上型
51c…ゲート
52…第2下型
53…スライド型
54…キャビティ
図1
図2
図3
図4