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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177457
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20231207BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090142
(22)【出願日】2022-06-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日:令和3年11月30日 販売した場所:株式会社オートセット(大阪府門真市岸和田3丁目46番25号)
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 勇人
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 隆明
【テーマコード(参考)】
2D015
3G091
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3G091AA05
3G091AB04
3G091BA14
3G091CA17
3G091DB10
3G091EA37
(57)【要約】
【課題】液体還元剤の適切な補充量を作業者が容易に把握することが可能な報知手段を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載されたエンジンパワーユニット及びエンジンからの排ガスを液体還元剤(尿素水)により浄化する排ガス浄化装置とを備えた建設機械において、液体還元剤が貯留される還元剤タンク34と、該還元剤タンクを収容する収容ケース35と、還元剤タンクに内蔵される液面高さ検知部とを有し、収容ケースの内側には、還元剤タンクと独立して配置され、該還元剤タンクに補充される液体還元剤の液面高さが設定閾値に達したときに、補充完了状態であることを報知する報知手段(照光ブザー装置)36が設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載されたエンジンパワーユニット及びエンジンからの排ガスを液体還元剤により浄化する排ガス浄化装置とを備えた建設機械において、
前記液体還元剤が貯留される還元剤タンクと、該還元剤タンクを収容する収容ケースと、前記還元剤タンクに内蔵される液面高さ検知部とを有し、
前記収容ケースの内側には、前記還元剤タンクと独立して配置され、該還元剤タンクに補充される前記液体還元剤の液面高さが設定閾値に達したときに、補充完了状態であることを報知する報知手段が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記報知手段は、音を発して報知する音出力部を備えていることを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記報知手段は、光を発して報知する発光部を備えていることを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【請求項4】
前記報知手段は、前記収容ケースの内側面に磁力で保持するマグネットを備えていることを特徴とする請求項3記載の建設機械。
【請求項5】
前記報知手段に動作指令を与えるコントローラを備え、
前記コントローラは、前記液面高さ検知部の検知結果に基づいて、前記液体還元剤の液面高さが前記閾値の下側から上昇し該閾値を超えた時に前記動作指令を与えることを特徴とする請求項1又は4記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関し、詳しくは、排ガス浄化装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機やクレーン、油圧ショベルなどの建設機械は、排ガス規制に対応した排ガス浄化装置を備えている。この種の排ガス浄化装置には、還元剤として尿素水を用いた選択還元型触媒装置(SCR)があり、排ガス中のNOxをSCR触媒によって高度に浄化するものである。尿素水を貯留した還元剤タンクは、例えば、油圧ショベルでは、エンジンが搭載される旋回体において、昇降用足場の一部を兼ねたケース(箱体)に収容されている。これにより、尿素水の補充を行う際には安定した作業足場が得られる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-167681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
尿素水の補充作業は、還元剤タンクの側面に設けられたレベルゲージ(液面高さ表示)を見ながら行うことで、尿素水の溢れを防止できるものである。しかしながら、杭打機などの特殊建設機械では、エンジンメーカが設定している還元剤タンクにレベルゲージを装備していないことが多々ある。また、レベルゲージを装備した汎用品であっても、還元剤タンクは、ケース内に収められていることに起因してレベルゲージの視認性低下を招きやすく、そこに作業者の注意が向いていない状態や、死角に入ってしまった状態では、表示として役に立たないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、液体還元剤の適切な補充量を作業者が容易に把握することが可能な報知手段を備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、下部走行体と、該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に搭載されたエンジンパワーユニット及びエンジンからの排ガスを液体還元剤により浄化する排ガス浄化装置とを備えた建設機械において、前記液体還元剤が貯留される還元剤タンクと、該還元剤タンクを収容する収容ケースと、前記還元剤タンクに内蔵される液面高さ検知部とを有し、前記収容ケースの内側には、前記還元剤タンクと独立して配置され、該還元剤タンクに補充される前記液体還元剤の液面高さが設定閾値に達したときに、補充完了状態であることを報知する報知手段が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記報知手段は、音を発して報知する音出力部を備えていることを特徴としている。さらに、前記報知手段は、光を発して報知する発光部を備えていることを特徴としている。加えて、前記報知手段は、前記収容ケースの内側面に磁力で保持するマグネットを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、前記報知手段に動作指令を与えるコントローラを備え、前記コントローラは、前記液面高さ検知部の検知結果に基づいて、前記液体還元剤の液面高さが前記閾値の下側から上昇し該閾値を超えた時に前記動作指令を与えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建設機械によれば、還元剤タンクの収容ケース内に還元剤タンクとは独立して配置した報知手段を設け、この報知手段が、還元剤タンクに補充される液体還元剤の液面高さが設定閾値に達したときに、補充完了状態を報知するので、従来からの手法に比べて報知手段の独立性が重視され、付設の液面高さ表示に頼ることなく補充完了状態を知ることが可能となり、なりがンクを収容する収容ケースの知る能となり、従来では液体還元剤の適切な補充量を作業者が容易に把握することができる。
【0010】
また、報知手段が音を発して報知する音出力部を備えているので、液面高さ表示を常時監視する必要がなく補充作業に集中でき、さらには、光を発して報知する発光部を備えているので、音と相俟って光で補充完了状態をより積極的に知らせることができ、作業者に対する報知がより確実なものとなる。加えて、収容ケースの内側面に磁力で保持するマグネットを備えているので、発光部の位置や光軸方向の変更が容易に行え、後改造の場合でも収容ケースに追加工を必要としないことから、安価で実用性に優れたものである。
【0011】
また、報知手段に対するコントローラの動作指令を液体還元剤の液面高さが設定閾値の下側から上昇し該閾値を超えた時に与えるので、電源投入時に満水レベルを検知して不意に発報が行われることを防止できる。すなわち、液体還元剤を補充している作業者が居る場合のみ報知することが可能となり、運用上の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の建設機械の一形態例を示す杭打機の側面図である。
図2】同じく平面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】還元剤タンクを収容する収容構造の側面図である。
図5】同じく平面図である。
図6】同じく正面図である。
図7図6のB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図7は、本発明を建設機械の一例である杭打機に適用した一形態例を示している。杭打機11は、図1乃至図3に示すように、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回ベアリング13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14とで構成されたベースマシン15と、上部旋回体14の前部に立設したリーダ16と、該リーダ16を後方から支持する起伏シリンダ17とを備えている。また、上部旋回体14の前部には、リーダ16を起伏可能に支持するリーダサポート18が設けられ、上部旋回体14の前部上方には、配管を支持する配管案内アーム19が設けられている。さらに、上部旋回体14の前後左右の4箇所に安定用のジャッキ20が設けられるとともに、上部旋回体14の後端部に杭打機11のバランスをとるためのカウンタウエイト21が搭載されている。
【0014】
リーダ16は、複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、上端部にはトップシーブ22が、下端部には下部ガイド23がそれぞれ装着されており、リーダ16の前面には作業装置の一例であるオーガ24が昇降可能に装着されている。オーガ24は、油圧で回転駆動され、出力軸に連結した施工部材(例えば鋼管杭)に回転力を付与するものである。
【0015】
オーガ24の上下には、リーダ16の下端部に設けられた駆動スプロケット25と、上端部に設けられた従動スプロケット26との間に架け渡された昇降用チェーン27の両端がそれぞれ取り付けられ、チェーン式の昇降装置を構成する。昇降装置は、駆動スプロケット25を油圧で回転駆動し、該駆動スプロケット25と従動スプロケット26とに掛け回された昇降用チェーン27を上下方向に移動させることにより、リーダ16の前面に沿ってオーガ24を昇降させる。
【0016】
上部旋回体14は、下面に旋回ベアリング13が取り付けられる矩形箱状のメインフレーム28と、該メインフレーム28の上部旋回体幅方向(図2の上下方向)の両側部に枠組みされたフロアフレーム29,30とが一体に結合されているフレーム体を有している。右側のフロアフレーム30上の前部には、オーガ24や上部旋回体14、下部走行体12などを駆動させる操作がなされる運転室31が設置されている。また、右側のフロアフレーム30上の後部には、作動油タンクなどの油圧機器を収容する機器収容ハウス32が設けられている。一方、左側のフロアフレーム29上には、エンジンの駆動を受けて圧油を供給するための油圧源装置として、エンジンパワーユニットや、これに付属する排ガス浄化装置などの複数の関連機器を収容するエンジン収容ハウス33が設けられている。
【0017】
各ハウス32,33は、略矩形箱型に形成され、複数の点検扉がそれぞれ設けられている。また、エンジン収容ハウス33の前部側には、階段33a及び転落防止用の手摺33bが設けられており、ハウスに上がって車体上の機器の保守などが行えるようになっている(図2)。
【0018】
エンジンパワーユニットは、図示は省略するが、フロアフレーム29上に防振状態で搭載されたエンジンと、該エンジンにおける冷却ファンの存在側とは反対側となる後部側に、片持ち状に取り付けられた油圧ポンプ装置とを有して構成されている。また、フロアフレーム29上のエンジンの前部側には、冷却ファンと対面して配置されたラジエータが設けられている。さらに、エンジン収容ハウス33内における階段33aの真下付近には燃料タンクが配置されている。
【0019】
排ガス浄化装置は、例えば、液体還元剤として尿素水を用いるSCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元型触媒)や、排気管のSCRに対して上流側に配置されるとともに、排気管内の排ガスに向けて尿素水を噴射する噴射ノズルなどを有している。これにより、燃焼後の排ガスは、排ガス浄化装置で浄化処理がなされた後、排気管に案内されて排気口から外部に排出される。
【0020】
ところで、フロアフレーム29は、エンジンパワーユニットに加え、排ガス浄化装置など多くの機器が搭載されることから、その外形寸法が前後方向(図2の左右方向)に大きくなっている。とりわけ、車体のコンパクト性が求められる小型の杭打機11では、尿素水を貯留する還元剤タンクをハウス33内に収めるのが難しいことから、車体の限定されたスペースである前ジャッキ20とフロアフレーム29との間の空間Sにおいて、還元剤タンク34の搭載がなされている。
【0021】
こうした狭隘部における還元剤タンク34の収容構造は、それ自体が足場となるので、頑丈な収容ケース35に還元剤タンク34が収められている。もっとも、尿素水は比較的高い頻度で補充が行われることから、補充時の作業性に配慮が必要である。しかしながら、収容ケース35は、還元剤タンクによく見られるレベルゲージ(液面高さ表示)に対して死角を作りやすく、補充作業と同時に表示を目視確認するのが難しい。そこで、杭打機11には、還元剤タンク34の収容構造において、尿素水の適切な補充量を作業者が容易に把握することが可能な報知手段を備えている。
【0022】
以下では、還元剤タンク(尿素水タンク)34及びその収容ケース35、報知手段36について、図4乃至図7を参照しながら説明する。還元剤タンク34は、例えば、エンジンメーカの指定品とされるが、貯留する尿素水の液面を目視で確認することが可能なレベルゲージを備えず、主に、タンク本体37と、内蔵される電気回路として、タンク本体37内に貯留する尿素水の液面高さ(レベル)を検知する液面高さ検知部とを備えている。
【0023】
タンク本体37は、金属製又は樹脂製であって内部が中空な直方体状に形成されており、前面(上部旋回体幅方向の外側面(図6では右側))の上部において、外向き傾斜状の給液口にキャップ38が着脱可能に設けられている。
【0024】
液面高さ検知部は、図示は省略するが、例えば、磁石を備えたリング状のフロートと、これを貫通してフロートの移動を案内するガイドシャフトと、該ガイドシャフトの軸方向に設けられた複数のリードスイッチとを有している。これにより、尿素水の液量に応じてフロートが上下方向に移動すると、対応する複数のリードスイッチが開閉して液面高さを検知することが可能である。
【0025】
複数のリードスイッチは、フロートの移動方向(図6の矢印A)と平行に配置され、一端側は共に結線されて検出端子に接続され、他端側は入力端子(電源)に対して直列に接続された複数個の抵抗間の接続点にそれぞれ接続されている。検出端子から先は、各フレーム(フレーム体)28,29,30を経由して運転室31内に引き込む配線処理がなされ、図3に示すように、コントローラ(エンジンコントローラ)39の接続端子に接続されている。
【0026】
尿素水の供給又は消費によってフロートの上下移動が行われると、複数のリードスイッチのいずれかがオン状態となって、液面高さ検知部の内部抵抗の大きさが変化する。これにより、コントローラ39は、内部抵抗の大きさに応じた電源電圧の変化に基づいて、尿素水の液面高さを特定し、尿素水残量表示として運転席の見やすい位置、例えばモニタ画面(図示せず)に表示させる。
【0027】
収容ケース35は、金属製の筐体であって、還元剤タンク34の形状に対応した直方体状に形成され、還元剤タンク34を収容するうえで、空間的な余裕を持たせており、前面(上部旋回体幅方向の外側面(図6では右側))が上部旋回体14の側面と面一をなし(図2)、その上部において、キャップ38の着脱及び尿素水の補充作業を行うスペースとして開口部40が設けられている。
【0028】
開口部40は、収容ケース35にヒンジ41を介して取り付けられた略L字形状の蓋体42で閉じられており、この閉状態から、取っ手42aに指をかけて蓋体42を跳ね上げ、ヒンジ41を中心に回動させると、図6の想像線で示すように、下端の移動軌跡が円弧Cを描きながら、最終的に全体が略くの字となる姿勢で保持される。このとき、図7図6の矢視B)に示すように、閉じ状態では内側面であった蓋体42の板面が回動して外側面へと反転することで、板面に貼付された銘板(補充作業上の注意)43が、蓋体42を操作した作業者と対面して表示される。
【0029】
報知手段36は、収容ケース35内において還元剤タンク34と独立して配置されるもので、収容ケース35の内側面(板面)に磁力で保持するマグネット44を備えるとともに、防塵・防水性を備えた本体部36aに、音を発して報知する音出力部と、光を発して報知する発光部とが両方組み込まれた小型の照光ブザー装置である。
【0030】
マグネット44は、平面円形状の磁石からなり、一方の面がブラケット36bを介して本体部36aに固定され、他方の面が磁力で収容ケース35の内側面に密着することで、収容ケース35に着脱可能に取り付けられる。磁力の強さは報知手段36が振動などで落下しない程度の強さとなっている。
【0031】
これにより、報知手段36は、収容ケース35の内側面と、還元剤タンク34の一側面との間に設けられた比較的狭いスペースにて、発光部の光軸方向(伝播方向)を開口部40の外方に向けて任意の位置に調節することが可能である。そして、電気配線36cについては、マグネット44の取付位置や向きの変更を考慮して、収容ケース35内に一定の弛みを有する長さ部分(図示せず)を有し、それ以外の長さ部分は、液面高さ検知部の配線に倣う形で引き回され、配線末端がコントローラ39の接続端子に接続されている。
【0032】
音出力部及び発光部は、液面高さ検知部の検知結果に基づいた動作指令を受けて、つまり、還元剤タンク34に補充される尿素水の液面高さが設定閾値に達したときに、コントローラ39からの動作指令を受けて、尿素水を補充している作業者に対して補充完了状態であることを知らせる発報を行う。発報は、音であれば尿素水の補充停止を促す程度の高いブザー音(電子音)を鳴動させ、光であれば所定の色を点灯あるいは点滅させる。
【0033】
設定閾値は、図6の破線Lで示すように、例えば、還元剤タンク34に尿素水が満たされた状態(満水レベル)の85%の値が用いられる。コントローラ39は、電源を起動(スタータスイッチオン)してから5秒以降で、かつ、補充される尿素水の液面高さが閾値Lの下側から上昇し該閾値Lを超えた時、つまり、尿素水残量比が85%未満から85%以上に変化した時に、報知手段36に対して動作指令を与えるように制御がなされる。つまり、エンジンを始動させても、液面高さに上昇変化が起こらなければ、コントローラ39による動作指令は行われない。ここで、コントローラ39の動作指令(電気信号)には、実給水作業とのタイムラグがあるため、レベル補正可能とされている。
【0034】
このように形成された杭打機11を使用して、消費した尿素水の補充作業を行う場合、運転席の尿素水残量表示(尿素水レベル低下)に基づいて、適宜なタイミングでエンジンを停止させる。このエンジン停止状態から、エンジンのスタータスイッチをオン状態とし、コントローラ39を起動させる。そして、足場(例えば踏み台)を使用して収容ケース35に近づき、蓋体42を跳ね上げて開口部40を外に臨ませた状態で(図6の想像線)、キャップ38を外して給液口を露出させる。
【0035】
ここで、仮にスタータスイッチのオフ状態で補充作業に着手した場合でも、銘板43の表示「・・・スタータスイッチを「ON」位置にしてください。・・・」が目に入ることから、尿素水の補充作業に関して予備知識や経験の少ない作業者に注意喚起がなされる(図7)。
【0036】
用意した補充用容器(例えば容量10L)にノズルを装着し、これを抱えて足場に上がった後は、給液口にノズルを挿して容器を傾けることによって尿素水の補充が開始される。ここで、タンク34内の液面高さが満水レベルに向けて上昇を始めてから、ほどなくして容器内の尿素水が尽き、1回目の補充作業が終わる。そして、2回目の補充作業に取りかかった時点で、還元剤タンク34の容量の半分以上(尿素水残量比50%以上)が回復した状態となって、液面高さが満水レベルに近づいていく。
【0037】
そして、液面高さが閾値Lの下側から上昇し該閾値Lを超えた時(尿素水残量比が85%未満から85%以上に変化した時)に、コントローラ39から報知手段36に対して動作指令が与えられる。一方、動作指令を受けた報知手段36は、尿素水を補充している作業者に対して音と光の両方による発報を行い、尿素水の補充が完了した状態であることを知らせる。これにより、補充完了状態を明確に把握した作業者は、容器に残量があっても無理に使い切ろうとはせずに、速やかに補充作業を終わらせることができる。
【0038】
このように、本発明の建設機械によれば、還元剤タンク34の収容ケース35内に還元剤タンク34とは独立して配置した報知手段36を設け、この報知手段36が、還元剤タンク34に補充される液体還元剤の液面高さが設定閾値Lに達したときに、補充完了状態を報知するので、従来からの手法に比べて報知手段36の独立性が重視され、付設の液面高さ表示に頼ることなく補充完了状態を知ることが可能となり、なりがンクを収容する収容ケースの知る能となり、従来では液体還元剤の適切な補充量を作業者が容易に把握することができる。
【0039】
また、報知手段36が音を発して報知する音出力部を備えているので、液面高さ表示を常時監視する必要がなく補充作業に集中でき、さらには、光を発して報知する発光部を備えているので、音と相俟って光で補充完了状態をより積極的に知らせることができ、作業者に対する報知がより確実なものとなる。加えて、収容ケース35の内側面に磁力で保持するマグネット44を備えているので、発光部の位置や光軸方向の変更が容易に行え、後改造の場合でも収容ケース35に追加工を必要としないことから、安価で実用性に優れたものである。
【0040】
また、報知手段36に対するコントローラ39の動作指令を液体還元剤の液面高さが設定閾値Lの下側から上昇し該閾値Lを超えた時に与えるので、電源投入時(スタータスイッチオン時)に満水レベルを検知して不意に発報が行われることを防止できる。すなわち、液体還元剤を補充している作業者が居る場合のみ報知することが可能となり、運用上の利便性を向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、還元剤タンクやその収容ケースの形状、配置などは任意であり、建設機械の旋回体の構造に基づいて適宜変更を加えることができる。また、液体還元剤の種類は尿素水に限定されず、例えば、還元触媒の種類に応じて、尿素水以外の他の液体を用いることができる。さらに、報知手段は、音と光の両方を発する仕様に限定されず、作業者の注意が向くものであれば音(音声を含む)だけ発する仕様であってもよい。加えて、液面高さの設定閾値やその補正についても任意であり、液体還元剤の補充作業が行われる作業環境を考慮して設定することができる。
【0042】
また、コントローラや液面高さ検知部などの電気回路は既存の構成を流用できることから、品質にも優れ、後改造で追加する場合は、信号配線及びランプ・ブザー装置を用意するだけの簡単な構成であるから、作業の手間や工賃、コストも非常に安価に抑えることができる。そして、巧みに付した注意銘板、すなわち、補充作業のときだけ出現する表示によって運用上の安全、安心が確保される。さらに、建設機械として杭打機を例示したが、これに限られず、アースドリルやクレーンなど、エンジンパワーユニットに付属の排ガス浄化装置を備えた各種建設機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
11…杭打機、12…下部走行体、13…旋回ベアリング、14…上部旋回体、15…ベースマシン、16…リーダ、17…起伏シリンダ、18…リーダサポート、19…配管案内アーム、20…ジャッキ、21…カウンタウエイト、22…トップシーブ、23…下部ガイド、24…オーガ、25…駆動スプロケット、26…従動スプロケット、27…昇降用チェーン、28…メインフレーム、29,30…フロアフレーム、31…運転室、32…機器収容ハウス、33…エンジン収容ハウス、33a…階段、33b…手摺、34…還元剤タンク、35…収容ケース、36…報知手段、36a…本体部、36b…ブラケット、36c…電気配線、37…タンク本体、38…キャップ、39…コントローラ、40…開口部、41…ヒンジ、42…蓋体、42a…取っ手、43…銘板、44…マグネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7