(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177458
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】空腸に対する8-OHdG濃度減少促進剤あるいはマロンジアルデヒド(MDA)濃度減少促進剤あるいはZIP4濃度増加促進剤あるいは血清亜鉛濃度増加促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/085 20060101AFI20231207BHJP
A61K 35/618 20150101ALI20231207BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231207BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20231207BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20231207BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231207BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20231207BHJP
【FI】
A61K31/085
A61K35/618
A61P43/00 111
A61P39/06
A61P39/02
A61P1/00
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090145
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】596161031
【氏名又は名称】株式会社渡辺オイスター研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貢
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀明
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD75
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB16
4C087CA06
4C087CA37
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZC02
4C087ZC37
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA27
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZC02
4C206ZC37
(57)【要約】
【課題】本発明は、空腸に対するMDA濃度減少の促進、8-OHdG濃度減少の促進、ZIP4濃度増加の促進および血清亜鉛濃度増加の促進がなされて酸化ストレス状態が改善できる空腸に対するMDA濃度減少促進剤あるいは8-OHdG濃度減少促進剤あるいはZIP4濃度増加促進剤あるいは血清亜鉛濃度増加促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中の8-OHdG 濃度低下促進剤。
【請求項2】
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中の8-OHdG 濃度低下促進剤。
【請求項3】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出した上清分画を有効成分とし、空腸中の8OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中の8-OHdG濃度低下促進剤。
【請求項4】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画を有効成分とし、空腸中の8OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中の8-OHdG濃度低下促進剤。
【請求項5】
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中の8-OHdG 濃度低下促進剤。
【請求項6】
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のMDA濃度低下促進剤。
【請求項7】
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のMDA濃度低下促進剤。
【請求項8】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出した、上清分画を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のMDA濃度低下促進剤。
【請求項9】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のMDA濃度低下促進剤。
【請求項10】
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のMDA濃度低下促進剤。
【請求項11】
3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のZIP4濃度増加促進剤。
【請求項12】
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のZIP4濃度増加促進剤。
【請求項13】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出した上清分画を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のZIP4濃度増加促進剤
【請求項14】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のZIP4濃度増加促進剤。
【請求項15】
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とする空腸中のZIP4濃度増加促進剤。
【請求項16】
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とする血清中亜鉛濃度増加誘導剤。
【請求項17】
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とする血清中亜鉛濃度増加誘導剤。
【請求項18】
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とする血清中亜鉛濃度増加誘導剤。
【請求項19】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出したDHMBAを含有する上清分画を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とする血清中亜鉛濃度増加誘導剤。
【請求項20】
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿したDHMBAを含有する沈殿分画を有効成分として、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とする血清中亜鉛濃度増加誘導剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空腸に対する8-OHdG濃度減少促進剤 、MDA濃度減少促進剤、ZIP4濃度増加促進剤および血清亜鉛濃度増加促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明者らは、2型糖尿病患者にマガキ軟体抽出分画(例えばカキ肉を抽出液内に浸し、該カキ肉から各種成分を抽出した分画)を例えば12週間投与し、血清中亜鉛濃度の有意な上昇を確認した。
【0003】
ところが、マガキ軟体抽出沈殿分画と上清分画の混合分画(例えばカキ肉を抽出液内に浸し、該カキ肉から各種成分を抽出した抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画と上清の上清分画)には、血清中亜鉛濃度を有意に増加させるほどの亜鉛を含有していないため、この結果を生じたメカニズムに困惑した。
【0004】
そこで、腸管における亜鉛吸収メカニズムに検証の焦点をおき、かつ、マガキ軟体抽出分画の腸管における亜鉛吸収メカニズムに対する影響を探察した。
【0005】
亜鉛は十二指腸、空腸で吸収されるが、主に空腸で吸収される。亜鉛の吸収には、腸管における亜鉛輸送体ZIP4が必須の機能を果たしていると考察される。
【0006】
従来、亜鉛欠乏状態においては、腸管でのZIP4発現量が増加するとの報告がなされている。しかるに本件発明者らは、低亜鉛食餌投与のラット十二指腸において、ZIP4濃度の増加を観察し、前記「亜鉛欠乏状態においては、腸管でのZIP4発現量が増加する」との従来報告と同様な結果を得ることが出来た。
【0007】
しかしながら、低亜鉛食餌投与における空腸では、ZIP4濃度の減少が観察された。亜鉛欠乏食を摂取したラットにおけるZIP4濃度の発現変化は、亜鉛欠乏の程度の違いだけでなく、腸管の部位の違いに起因する可能性が考えられる。
【0008】
一方、興味深い報告としては、亜鉛欠乏に対する感受性を有するトウモロコシ系の根と新芽では、H2O2濃度は、劇的に増加し、ZIP4 transporter遺伝子の発現は増加しなかった。
【0009】
他方、亜鉛含有量が低い土壌での栽培に対する耐性を有するトウモロコシ系の根と新芽では、ZIP4 transporter遺伝子の発現は増加を示し、抗酸化防御がZIP4transporter遺伝子の発現の増加に影響すると報告されている。
つまり、酸化状態によってZIP4 transporter遺伝子の発現が影響されることが、トウモロコシの根において確認された。
【0010】
本発明においては、低亜鉛食投与により空腸中亜鉛濃度の低下に誘導された、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性低下によって、ラット空腸中に活性酸素が増加し、それに関連した現象が生じることが予測される。つまり空腸中MDA濃度の増加、8-OHdG濃度の増加、ZIP4濃度の低下、血清Zn濃度の低下などで示される酸化ストレス状態が生じることが予測されるのである。
【0011】
しかして、本件発明者らは、前記酸化ストレスの状態に対して、抗酸化作用を有するマガキ軟体抽出分画のそれぞれの分画、つまり、沈殿分画、上清分画そして、マガキ軟体部から抽出された成分、特に3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)、さらには、合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)(DHMBA)を前記ラットに投与することによって、前記酸化ストレス状態にいかなる変化が生ずるか、換言すれば3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を投与することにより、酸化ストレス状態の改善によって、空腸に対するMDA濃度減少の促進、8-OHdG濃度減少の促進、ZIP4濃度増加の促進および血清亜鉛濃度増加の促進がなされるかを検証したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、酸化ストレスの状態に対して、抗酸化作用を有するマガキ軟体抽出分画のそれぞれの分画、つまり、沈殿分画、上清分画から抽出された成分、特に3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)、さらには、合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)(DHMBA)をラットに投与することによって検証された、空腸に対するMDA濃度減少の促進、8-OHdG濃度減少の促進、ZIP4濃度増加の促進および血清亜鉛濃度増加の促進がなされて酸化ストレス状態が改善できる空腸に対するMDA濃度減少促進剤あるいは8-OHdG濃度減少促進剤あるいはZIP4濃度増加促進剤あるいは血清亜鉛濃度増加促進剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出した上清分画を有効成分とし、空腸中の8OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画を有効成分とし、空腸中の8OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の8-OHdG 濃度を低下させる8-OHdG 濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出した、上清分画を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のMDA濃度を低下させるMDA濃度低下促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出した上清分画を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿した沈殿分画を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中のZIP4濃度を増加させるZIP4濃度増加促進作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後上清み抽出物を取り出したDHMBAを含有する上清分画を有効成分とし、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とし、
または、
カキ肉から抽出された抽出液を攪拌しその後沈殿したDHMBAを含有する沈殿分画を有効成分として、血清中亜鉛濃度の増加を誘導させる作用を有する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化ストレスの状態に対して、抗酸化作用を有するマガキ軟体抽出分画のそれぞれの分画、つまり、沈殿分画、上清分画から抽出された成分、特に3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)、さらには、合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)(DHMBA)をラットに投与することによって検証された、酸化ストレス状態が改善して、空腸に対するMDA濃度減少の促進、8-OHdG濃度減少の促進、ZIP4濃度増加の促進および血清亜鉛濃度増加の促進がなされるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】標準食、低亜鉛食の空腸中SOD濃度の説明図である。
【
図2】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+上清分画群の空腸中8-OHdG濃度の説明図である。
【
図3】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+沈殿分画群の空腸中8-OHdG濃度の説明図である。
【
図4】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+合成DHMBA群の空腸中8-OHdG濃度の説明図である。
【
図5】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+上清分画群の空腸中MDA濃度の説明図である。
【
図6】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+上清分画群の空腸中ZIP4濃度の説明図である。
【
図7】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+沈殿分画群の空腸中ZIP4濃度の説明図である。
【
図8】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+合成DHMBA群の空腸中ZIP4濃度の説明図である。
【
図9】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+上清分画群におけるMDA濃度とZIP濃度の相関を説明する説明図である。
【
図10】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+沈殿分画群におけるMDA濃度とZIP濃度の相関を説明する説明図である。
【
図11】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+合成DHMBA群におけるMDA濃度とZIP濃度の相関を説明する説明図である。
【
図12】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+合成DHMBA群の血清中亜鉛濃度を説明する説明図である。
【
図13】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+合成DHMBA群における空腸中ZIP濃度と血清中亜鉛濃度の相関を説明する説明図である。
【
図14】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+上清分画群における空腸中ZIP濃度と血清中亜鉛濃度の相関を説明する説明図である。
【
図15】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+沈殿分画群における空腸中ZIP濃度と血清中亜鉛濃度の相関を説明する説明図である。
【
図16】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+合成DHMBA群における空腸中MDA濃度と血清中亜鉛濃度の相関を説明する説明図である。
【
図17】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+上清分画群における空腸中MDA濃度と血清中亜鉛濃度の相関を説明する説明図である。
【
図18】標準食、低亜鉛食、低亜鉛食+沈殿分画群における空腸中MDA濃度と血清中亜鉛濃度の相関を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例)
本発明は、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分とし、空腸中の酸化ストレス状態の改善が促進し、MDA濃度減少の促進、8-OHdG濃度減少の促進、ZIP4濃度増加の促進および血清亜鉛濃度増加の促進がなされる促進剤を製造し、製造された前記各種促進剤を提供するものである。
【0018】
前記促進剤は、カキ肉を抽出液に浸し、該抽出液に浸したカキ肉から抽出された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を有効成分にして製造される。尚、3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)は合成の3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)であっても構わない。
【0019】
そして、前記促進剤の製造に際し、空腸中の酸化ストレス状態が改善し、MDA濃度減少の促進、8-OHdG濃度減少の促進、ZIP4濃度増加の促進および血清亜鉛濃度増加の促進ができるかの動物実験を行い、それを確認したものである。
【0020】
すなわち、所定の成分からなる低亜鉛食を所定のラットに摂取させると、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の活性が低下し、ラット空腸中に活性酸素が増加し、空腸中MDA濃度の増加、8-OHdG濃度の増加、ZIP4濃度の低下、血清Zn濃度の低下などを起こすものとなる。
【0021】
これに対して、例えばカキ肉を抽出液に浸し、浸したカキ肉から抽出液内に流出した3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)を取り出し、これをラットの食事である低亜鉛食に加えたものである。
【0022】
尚、前記抽出液に流出したカキ肉の3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)は、前記抽出液を攪拌し、所定時間経過後に沈殿した沈殿分画、上清の上清分画ではその分量などが異なることが確認されている。
【0023】
しかして、上記の事情を踏まえた上で、カキ肉から抽出された抗酸化作用を有する3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)、さらには、合成された3、5-ジヒドロキシ-4-メトキシベンジルアルコール(3、5-dihydroxy-4-methoxybenzyl alcohol)(以下、DHMBAとも称する)を前記ラットに投与すると、ラット空腸中のMDA、8-OHdG、ZIP4、血清Znの濃度がいかに変化するかが検証できて認識できる。
【0024】
かかる検証により前記各々の促進剤の製造に際し、優れた効能が確認でき、かつ酸化ストレス状態に有効に対処できる促進剤を製造できて提供できるものとなる。
【0025】
ここで、動物実験の概要につき説明する。
(実験方法)
実験動物としてはSlc/SD 雄性ラット (4週齢)を用いた。
(群分けと食餌)
前記ラットを下記の如く群分けし、食餌を下記の如くとした。
ここで、nはラットの個体数を示す。
【0026】
標準食群 (n=6):標準食を自由摂取
(標準食の亜鉛濃度:34.1mg zinc /kg diet)
尚、標準食の亜鉛濃度としては20mg zinc /kg diet~55mg zinc /kg dietが想定される)
(また、標準食のDHMBA濃度はゼロである )
【0027】
低亜鉛食群 (n=6) :低亜鉛食を自由摂取
(低亜鉛食の亜鉛濃度:3.9mg zinc /kg diet)
尚、低亜鉛食の亜鉛濃度としては2.5mg zinc /kg diet~10mg zinc /kg dietが想定される)
(また、低亜鉛食のDHMBA濃度はゼロである )
【0028】
低亜鉛食+上清分画群 (n=6) :低亜鉛食+マガキ抽出上清分画
低亜鉛食の亜鉛濃度については前記したとおりである。
また、マガキ抽出上清分画とは、例えばカキ肉を抽出液内に浸し、該カキ肉から各種成分を抽出した抽出液を攪拌しその後表面側の上清み抽出物を取り出した分画をいう。
そして、該上清分画でのDHMBA濃度は0.96μg/ratB.W.100g である。
尚、上清分画でのDHMBA濃度としては0.68μg/ratB.W.100g~2.38μg/ratB.W.100gが想定される。
【0029】
低亜鉛食+沈殿分画群 (n=6) :低亜鉛食+マガキ抽出沈殿分画
低亜鉛食の亜鉛濃度については前記したとおりである。
そして、マガキ抽出沈殿分画とは、例えばカキ肉を抽出液内に浸し、該カキ肉から各種成分を抽出した抽出液を攪拌しその後沈殿した抽出物を取り出した分画をいう。尚、該沈殿分画を強制経口投与したが、その分画での亜鉛濃度は0.894μg/dayであり、無視できる亜鉛量と考えられる。
そして、該沈殿分画でのDHMBA濃度は0.38μg/ratB.W.100g である。
尚、沈殿分画のDHMBA濃度としては、0.1μg /rat B.W.100g~0.5μg /rat B.W.100g )が想定される
【0030】
低亜鉛食+合成DHMBA群 (n=6) :低亜鉛食+合成DHMBA
低亜鉛食の亜鉛濃度については前記したとおりであり、亜鉛濃度:3.9mg zinc / kg dietである。
合成DHMBAとは、カキ肉からDHMBAを抽出したのではなく、化学的に合成してDHMBAを生成したものである。そして、そのDHMBA濃度は7.9mg/rat B.W.100gである。
尚、生成の状態により合成DHMBAのDHMBA濃度としては5mg/rat B.W.100g~15mg/ratB.W.100gの幅が想定される。
【0031】
(試験スケジュール)
[1] 予備飼育期間(7日間)
供試動物入荷時より本飼育開始前日まで予備飼育を行い、個別飼育( n=1/ cage)にて馴化した。予備飼育期間中は標準食を給餌し、群分けは予備飼育終了日の体重を考慮して行った。
[2] 本飼育期間(7日間)
本飼育開始日より、標準食群については標準食を、低亜鉛食群、低亜鉛食+沈 澱分画群、低亜鉛食+上清分画群、低亜鉛食+合成DHMBA群の4群については低亜鉛食を給餌し、自由摂取とした。5日目と6日目には、標準食群ならびに低亜鉛食群は0.5%メチルセルロース溶液を、低亜鉛食+上清分画群はマガキ抽出上清分画を、低亜鉛食+沈澱分画群はマガキ抽出沈殿分画を、低亜鉛食+合成DHMBA群は合成DHMBAを強制経口投与した。試験対象物の投与量は0.5mL/100g B.W.とした。そして、6日目の試験対象物投与から24時間後に解剖し、臓器摘出を行った。
【0032】
(測定項目)
空腸のSOD濃度、MDA濃度、8-OHdG濃度、ZIP4濃度、血清中亜鉛濃度を測定した。
【0033】
SOD濃度について
SOD(Superoxide dismutase)とは活性酸素を除去する力を持つ酵素をいう。SODは、細胞内のミトコンドリア内に多く存在しており、活性酸素による酸化ストレスから体を守る機能を有する。
SODは,スーパーオキシドを過酸化水素と酸素に変える、すなわち,2・O2 -+2H+→H2O2+O2という反応を触媒する酵素である。もともとこの反応は酵素なしでもきわめて速く進む反応であるにもかかわらず SOD が存在するということは、スーパーオキシドを少しでも早く消去することが生体にとって重要であることを示している。真核生物の細胞質には,活性中心に銅と亜鉛を含む CuZn-SOD が存在する。
よって、SOD(Superoxide Dismutase)濃度が低下すると、酸化ストレス状態が高まる。
【0034】
MDA濃度について
MDAとは、マロンジアルデヒドのことである。MDAは脂質過酸化分解生成物の一つであり、脂質過酸化の主要なマーカーとして用いられている。細胞や組織サンプル中の脂質過酸化の指標として酸化ストレス状態などが検証できる。MDA濃度の増加は酸化ストレス状態が高まったことを示す。
MDAは水酸化ラジカル(・OH)などによって生じる。不飽和脂肪酸は水酸化ラジカル(・OH)などに酸化されると脂質過酸化分解生成物になり、次いで、最終生成物がMDAになる。臓器内に水酸化ラジカル(・OH)などが高濃度であるとMDA濃度は高い。MDA濃度の低下は、・OHが減少したことを意味する。
【0035】
8-OHdG濃度について
8-OHdGとは、グアニン塩基が酸化によって8-ヒドロキシ-デオキシグアノシン(8-OHdG)に変化した物質のことである。DNAはアデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類の塩基から構成されている。DNAは活性酸素によって酸化損傷を受けることが知られており、グアニン塩基は酸化によって8-OHdGに変化する。この8-OHdGは遺伝子DNAの修復過程で遺伝子本体から切り出され、血液を経て尿中に排泄される。さらに8-OHdGは比較的安定な物質で、生体内で代謝や分解されることなく尿中に速やかに排泄されることから、活性酸素による生体損傷を鋭敏に反映する優れたバイオマーカーとして用いられている。
dGはDNAの4種類の塩基のうち最も酸化還元電位が低いため、活性酸素種による酸化を受けやすい。
このためdGの主要な酸化生成物である8-OHdGは活性酸素種による生体への影響を鋭敏に反映する。8-OHdG濃度の増加は酸化ストレス状態が高まったことを示す。
【0036】
ZIP4濃度について
生体内での亜鉛ホメオスタシスの維持には、亜鉛輸送体が機能している。消化管での亜鉛吸収機構については亜鉛輸送体ZIP4が働く(ZIP4:ZRT, IRT-like protein 4 )。
ZIP4は、膜貫通型タンパク質であり、空腸腔から空腸細胞へ亜鉛を輸送する。
【0037】
血清Zn濃度について
亜鉛はヒトに必須のミネラルで、生体内では鉄に次いで多く、骨、筋肉、皮膚、毛髪、肝臓、味蕾、精巣などに多く含まれている。生体内での役割は300種類以上の酵素の活性に不可欠で、不足すると味覚異常、皮膚炎、脱毛、貧血、口内炎、下痢、男性性機能障害、易感染性(免疫低下)、骨粗鬆症などの多様な症状を引き起こす。さらに、肝硬変、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、慢性腎臓病患者の多くで亜鉛欠乏症が指摘されている。
【0038】
(結果および考察)
図1 のように、低亜鉛食群の空腸中SOD濃度3.07±0.42 U/mg of jejunumは、標準食群の5.85±0.61 U/mg of jejunumより有意に低下した。これより、低亜鉛食の摂取によるSOD濃度の低下が確認された。SOD(Superoxide Dismutase)濃度が低下すると、酸化ストレス状態が高まる。
次に、
図2のように、低亜鉛食+上清分画群の空腸中8-OHdG濃度7.23±0.64は、低亜鉛食群の8-OHdG濃度9.31±0.29より有意に低いものであった。また低亜鉛食を摂取しているにも関わらず、標準食の8-OHdG濃度との間に有意差が見られなく、標準食と同レベルまで8-OHdG濃度は低下した。
よって、これより、空腸における低亜鉛食+上清分画群における上清分画のDHMBAによっての8-OHdG 濃度低下が促進され、これによりDNA抗酸化作用が確認された。
【0039】
図3のように、低亜鉛食群の空腸中 8-OHdG 濃度9.31±0.29 ng/g of jejunumは、標準食群の6.82 ± 0.56 ng/g of jejunumより有意に増加した。これは、空腸の活性酸素の増加によるものと思われ、これにより、低亜鉛食の摂取により酸化ストレスが誘導されたことが確認された。
これに対し、低亜鉛食+沈殿分画群の 8-OHdG 濃度は、低亜鉛食群の 8-OHdG 濃度より有意に低く、また低亜鉛食を摂取しているにも関わらず、標準食の8-OHdG濃度との間に有意差が見られなく、標準食と同レベルまで8-OHdG濃度は低下した。これより、空腸における低亜鉛食+沈殿分画群における沈殿分画によっての8-OHdG 濃度低下が促進され、これによりDNA抗酸化作用が確認された。
【0040】
図4のように、低亜鉛食+合成DHMBA群の8-OHdG濃度7.81±0.49は、低亜鉛食群の8-OHdG濃度9.31±-0.29より有意に低いものであった。また低亜鉛食を摂取しているにも関わらず、標準食の8-OHdG濃度との間に有意差が見られなく、標準食と同レベルまで8-OHdG濃度は低下した。
よって、これより、空腸における低亜鉛食+合成DHMBA分画群における合成DHMBAによっての8-OHdG 濃度低下が促進されたためのDNA抗酸化作用が確認された。
【0041】
図5 のように、低亜鉛食群の空腸中MDA濃度6.67±0.47 mg/g of jejunumは、標準食群の4.53±0.26 mg/g of jejunumより有意に増加した。これより、低亜鉛食の摂取によるSOD濃度の低下に起因する活性酸素の増加(酸化ストレス)が確認される。
【0042】
これに対し、低亜鉛食+上清分画群のMDA濃度は、低亜鉛食群のMDA濃度より有意に低く、また低亜鉛食を摂取しているにも関わらず、標準食のMDA濃度との間に有意差が見られなく、標準食と同レベルまでMDA濃度が低下した。これより、空腸における低亜鉛食+上清分画群の上清分画でのDHMBAにより不飽和脂肪酸に対する抗酸化作用が確認された。
【0043】
図6のように、低亜鉛食+上清分画群のZIP4濃度7.41±0.44 pg/mgは、低亜鉛食群のZIP4濃度4.38±0.33 pg/mgより有意に高かった。また低亜鉛食を摂取しているにも関わらず、標準食のZIP4濃度との間に有意差が見られなく、標準食と同レベルまでZIP4濃度は増加した。
これにより低亜鉛食+上清分画群における上清分画のDHMBAによってZIP4濃度増加促進作用が確認された。
【0044】
次に、
図7のように、低亜鉛食群の ZIP4 濃度4.38±0.33 pg/mgは、標準食群のZIP4濃度8.89±0.71 pg/mgより有意に低下した。
これに対し、低亜鉛食+沈殿分画群のZIP4濃度6.76±0.67 pg/mgは、低亜鉛食群のZIP4濃度4.38±0.33 pg/mgより有意に高かった。また低亜鉛食を摂取しているにも関わらず、標準食のZIP4濃度との間に有意差が見られなく、標準食と同レベルまでZIP4濃度は増加した。これにより低亜鉛食+沈殿分画群によってZIP4濃度増加促進作用が確認された。
【0045】
次いで
図8のように、低亜鉛食+合成DHMBA分画群のZIP4濃度6.44±0.76pg/mgは、低亜鉛食群のZIP4濃度4.38±0.33 pg/mgより有意に高かった。
よってこれにより低亜鉛食+合成DHMBA群の合成DHMBAによってのZIP4濃度増加促進作用が確認された。
【0046】
図9は空腸中のMDA濃度とZIP4濃度の相関を示す図である。
図9に示す様に、低亜鉛食の摂取によって誘導された空腸中の活性酸素量の増加(MDAの増加)に伴い、ZIP4値の減少が誘導されたことを確認すると共に、低亜鉛食+上清分画群において、抗酸化機能を有する上清分画のDHMBA摂取により空腸中の活性酸素量の減少(MDAの減少)に伴い、ZIP4値の増加が誘導されることが確認できた。
【0047】
図10に示すように、低亜鉛食の摂取によって誘導された空腸中の活性酸素量の増加(MDAの増加)に伴い、ZIP4値の減少が誘導された。
次いで、低亜鉛食+沈殿分画群においては、抗酸化機能を有する摂取による空腸中の活性酸素量の減少(MDAの減少)に伴い、ZIP4値の増加が誘導されることが確認できた。
【0048】
図11によっては、低亜鉛食の摂取によって誘導された空腸中の活性酸素量の増加(MDAの増加)に伴い、ZIP4値の減少が誘導されたことを確認すると共に、低亜鉛食の摂取によって誘導された空腸中の活性酸素量の増加(MDAの増加)に伴い、ZIP4値の減少が誘導されたことを確認すると共に、低亜鉛食+合成DHMBA分画群において、抗酸化機能を有する合成DHMBA分画のDHMBA摂取により空腸中の活性酸素量の減少(MDAの減少)に伴い、ZIP4値の増加が誘導されることが確認できた。
【0049】
上記
図9、
図10、
図11に示す様に空腸中のMDA濃度とZIP4濃度の間には密接な相関があることが確認できる。
すなわち、前記したように、トウモロコシの根と新芽のみにおいては、酸化ストレスではZIP4は増加しないが、抗酸化防御によるZIP4の増加は報告されていた。
【0050】
しかるに本発明によって、さらに、哺乳類であるラットの空腸において、酸化ストレスにより亜鉛輸送体ZIP4が減少するが、抗酸化物質であるDHMBの投与による活性酸素の消去(MDAの減少)に伴いZIP4の増加が確認されたのである。
【0051】
図12は、標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+合成DHMBA食群における血清中亜鉛濃度の変化について検証したものである。
合成DHMBA分画には、亜鉛の含有量はゼロである。そして、低亜鉛食群での摂取時と低亜鉛食+合成DHMBA食群での摂取時では、亜鉛の摂取量は、同じである。
【0052】
しかしながら、同じ量の亜鉛を摂取したのにもかかわらず、低亜鉛食+合成DHMBA食群の血清中亜鉛濃度が、低亜鉛食の血清亜鉛濃度より有意に高い。これは、合成DHMBA分画の合成DHMBAが、亜鉛の吸収量を増加させたことを意味するものである。
よって、
図12に示す様に、DHMBAが酸化ストレス状態において血清中亜鉛濃度を増加させる機能性関与成分であることが確認された。
【0053】
次に、
図13は標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+合成DHMBA分画群において空腸中ZIP4濃度と血清中亜鉛濃度の相関について考察したものであり、
図14は、標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+上清分画群において空腸中ZIP4濃度と血清中亜鉛濃度の相関について考察したものであり、
図15は標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+沈殿分画群において空腸中ZIP4濃度と血清中亜鉛濃度の相関について考察した図である。
【0054】
次に、
図13の空腸中のZIP4濃度と血清中亜鉛濃度の相関に示したように、標準食群・低亜鉛食群・低亜鉛食+合成DHMBA分画群の3群において、空腸中のZIP4の増加に伴い、血清中亜鉛濃度の増加が示された。
しかるに、低亜鉛食+合成DHMBA分画群においても合成DHMBA分画群の合成DHMBAの投与により、空腸中のZIP4の増加に伴い、血清中亜鉛濃度が増加することが確認できたのである。
【0055】
また、
図14の空腸中のZIP4濃度と血清中亜鉛濃度の相関に示したように、標準食群・低亜鉛食群・低亜鉛食+上清分画群の3群において、空腸中のZIP4の増加に伴い、血清中亜鉛濃度の増加が示された。
しかるに、低亜鉛食+上清分画群においては上清分画が有するDHMBAの投与により、空腸中のZIP4の増加に伴い、血清中亜鉛濃度が増加することが確認できた。
【0056】
図15の空腸中のZIP4濃度と血清中亜鉛濃度の相関に示したように、標準食群・低亜鉛食群・低亜鉛食+沈殿分画群の3群において、空腸中のZIP4の増加に伴い、血清中亜鉛濃度の増加が示された。
しかるに、低亜鉛食+沈殿分画群においては沈殿分画が有するDHMBAの投与により、空腸中のZIP4の増加に伴い、血清中亜鉛濃度が増加することが確認できた。
【0057】
図16は標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+合成DHMBA分画群において空腸中MDA濃度と血清中亜鉛濃度の相関について考察したものである。
図17は、標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+上清分画群において空腸中MDA濃度と血清中亜鉛濃度の相関について考察したものであり、
図18は標準食群、低亜鉛食群及び低亜鉛食+沈殿分画群において空腸中MDA濃度と血清中亜鉛濃度の相関について考察したものであり、上記の
図16、
図17、
図18により空腸中のMDA濃度と血清中亜鉛濃度の間に有意な逆相関が認められた。
【0058】
図16により、低亜鉛食+合成DHMBA群においては、合成DHMBAの摂取による空腸中のMDA濃度の減少(水酸化ラジカルの減少)に伴い、血清中亜鉛濃度が上昇することが確認された。この現象は、
図13~15で確認したように、空腸中活性酸素の減少(空腸中MDAの減少)によりZIP4濃度が増加し、それに伴い、空腸MDA濃度の減少が血清への亜鉛供給を増加したことを意味すると考えられる。
【0059】
図17により低亜鉛食+上清分画群においては上清分画のDHMBA摂取による空腸中のMDA濃度の減少に伴い、血清中亜鉛濃度が上昇することが確認された。
【0060】
図18の低亜鉛食+沈殿分画群においては沈殿分画のDHMBA摂取による空腸中のMDA濃度の減少に伴い、血清中亜鉛濃度が上昇することが確認された。
【0061】
図17と
図18においても
図16に示されたように、
図13~
図15で確認したように、空腸中活性酸素の減少(空腸中MDAの減少)によりZIP4濃度が増加し、それに伴い、空腸MDA濃度の減少が血清への亜鉛供給を増加したことを意味すると考えられる。