(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177460
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】蒸菓子用の品質改良剤及び蒸菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20231207BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20231207BHJP
A21D 8/04 20060101ALI20231207BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20231207BHJP
A21D 13/31 20170101ALI20231207BHJP
【FI】
A23G3/34 105
A21D13/00
A21D8/04
A21D13/80
A21D13/31
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090147
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】500204496
【氏名又は名称】大宮糧食工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横田 政栄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小川 直子
(72)【発明者】
【氏名】大川 賢人
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GG02
4B014GG03
4B014GG04
4B014GG10
4B014GG11
4B014GG14
4B014GG15
4B014GK01
4B014GK03
4B014GK09
4B014GP02
4B014GP14
4B014GQ06
4B032DB01
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4B032DB07
4B032DB40
4B032DG02
4B032DG07
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4B032DK02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK41
4B032DK47
4B032DK51
4B032DK70
4B032DL06
4B032DP08
4B032DP25
4B032DP46
4B032DP48
(57)【要約】
【課題】蒸菓子用の品質改良剤及び蒸菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地を蒸し加熱して製造される蒸菓子用の品質改良剤であって、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼとを含有する蒸菓子用品質改良剤及び当該蒸菓子用品質改良剤を用いた製造方法である。更に、当該蒸菓子用品質改良剤はグルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼから選ばれた少なくとも1種が含有されることが好ましい。これにより、所定時間経過後も、パサつきがなくしっとり感と柔らかさがあり、かつボリューム感のある蒸菓子を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地を蒸し加熱して製造される蒸菓子用の品質改良剤であって、エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、リパーゼと、キシラナーゼとを含有することを特徴とする蒸菓子用品質改良剤。
【請求項2】
更に、グルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼから選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1記載の蒸菓子用品質改良剤。
【請求項3】
更に、グルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼを含有する、請求項1記載の蒸菓子用品質改良剤。
【請求項4】
前記生地は、更に卵由来の原料を含有するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸菓子用品質改良剤。
【請求項5】
前記蒸菓子は、蒸パン、蒸ケーキ、蒸饅頭、枠蒸し、蒸ブッセ、中華饅頭、がんずき、黒糖饅頭、蓬饅頭、マーライコ、蒸カステラ、蒸どら焼きから選ばれた1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸菓子用品質改良剤。
【請求項6】
澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地を蒸し加熱する、蒸菓子の製造方法において、前記生地に請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸菓子用品質改良剤を含有させることを特徴とする蒸菓子の製造方法。
【請求項7】
前記生地は、前記澱粉質原料100質量部に対して、前記膨張剤0.5~10.0質量部、前記糖類5~120質量部を含有する、請求項6記載の蒸菓子の製造方法。
【請求項8】
前記生地中の含有量として、前記澱粉質原料100gに対して、前記エキソマルトテトラオヒドロラーゼが5.0~20.0U、前記リパーゼが0.100~1.000U、前記キシラナーゼが10.0~100.0Uとなるように、前記蒸菓子用品質改良剤の組成及び添加量を調整する、請求項6記載の蒸菓子の製造方法。
【請求項9】
請求項2又は3記載の蒸菓子用品質改良剤を用い、前記グルコースオキシダーゼを含有する場合は、その含有量が前記澱粉質原料100gに対して0.0010~0.0200Uとなるように、前記ホスホリパーゼを含有する場合は、その含有量が前記澱粉質原料100gに対して500~1750Uとなるように、前記蒸菓子用品質改良剤の組成及び添加量を調整する、請求項6記載の蒸菓子の製造方法。
【請求項10】
前記生地として、更に卵原料を含有するものを用いる、請求項6記載の蒸菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸菓子を製造する際に用いられる蒸菓子用の品質改良剤及び蒸菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸菓子は、蒸して作られる菓子であり、本発明では、蒸パン、蒸ケーキ、蒸饅頭、枠蒸し、蒸ブッセ、中華饅頭、がんずき、黒糖饅頭、蓬饅頭、マーライコ、蒸カステラ、蒸どら焼き等を含む意味で用いている。
【0003】
蒸菓子が抱える問題としては、澱粉の老化の問題があった。すなわち、蒸し工程直後において蒸菓子は、小麦粉等に含まれている澱粉質のアミロース、アミロペクチン等の澱粉分子のマトリクス構造に水分子が比較的均一に分散して保持されているので、柔軟性のある構造となっている。時間経過により保持された水分子が、蒸発するなどして均一性、分散性が失われると、澱粉分子が再結晶化する傾向がある。これにより、蒸し工程から所定時間経過した蒸菓子については、硬さやパサつきが目立つようになる。
【0004】
下記特許文献1には、蒸パンの独特のふんわり感を長期間にわたって維持することを課題として、グルコアミラーゼ、プロテイングルタミナーゼ、リパーゼなどを含有する蒸パン用の品質改良剤が記載されている。
【0005】
一方、焼菓子用の品質改良剤として、例えば下記特許文献2には、エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、キシラナーゼと、ホスホリパーゼとを含有することを特徴とする焼菓子用品質改良剤が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献3には、マルトテトラオース生成酵素、ヘミセルラーゼ、リパーゼからなる群から選択される少なくとも1つを配合することを含む、澱粉含有食品及び澱粉含有食品の中間加工品について開示されている。また、当該澱粉含有食品の中間加工品としてパン生地が挙げられており、当該パン生地を焼成しビニール袋に入れたパンが、所定時間経過後もしっとり感、柔らかさ、口どけの良さ、弾力に優れていたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2012/117879号公報
【特許文献2】特開2020-022372号公報
【特許文献3】特開2019-97570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1には、リパーゼを添加することにより、蒸パンのソフトネスや弾力性が4日間に亘って維持されることが記載されているが、本発明者らの研究によれば、未だ十分とは言えなかった。
【0009】
また、前記特許文献2には、エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、キシラナーゼと、ホスホリパーゼとを含有する焼菓子用品質改良剤が記載され、前記特許文献3には、マルトテトラオース生成酵素、ヘミセルラーゼ、リパーゼからなる群から選択される少なくとも1つを配合したパン生地が記載されているが、いずれも焼成して作られる、パンや焼菓子についての効果を確認しているのみであり、蒸菓子についての効果は確認されていない。
【0010】
焼成して作られるパンや、焼菓子と、蒸菓子とは、加熱手段が異なるだけでなく、原料配合や、イースト発酵の有無や、求められる食感なども異なっている。このため、焼成して作られる、パンや焼菓子について効果があったとしても、蒸菓子に対して有効かどうかは、当業者であっても予測できないことであった。
【0011】
本発明の目的は、蒸し加熱してから所定時間経過後も、パサつきがなくしっとり感と柔らかさがあり、かつボリューム感のある蒸菓子を提供することができる蒸菓子用の品質改良剤及び蒸菓子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の蒸菓子用品質改良剤は、澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地を蒸し加熱して製造される蒸菓子用の品質改良剤であって、エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、リパーゼと、キシラナーゼとを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の蒸菓子用品質改良剤は、更に、グルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼから選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の蒸菓子用品質改良剤は、更に、グルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼを含有することが好ましい。
【0015】
本発明の蒸菓子用品質改良剤が適用される前記生地は、更に卵由来の原料を含有する生地であることが好ましい。
【0016】
本発明の蒸菓子用品質改良剤が適用される蒸菓子は、蒸パン、蒸ケーキ、蒸饅頭、枠蒸し、蒸ブッセ、中華饅頭、がんずき、黒糖饅頭、蓬饅頭、マーライコ、蒸カステラ、蒸どら焼きから選ばれた1種であることが好ましい。
【0017】
一方、本発明の蒸菓子の製造方法は、澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地を蒸し加熱する、蒸菓子の製造方法において、前記生地に前記蒸菓子用品質改良剤を含有させることを特徴とする。
【0018】
本発明の蒸菓子の製造方法において、前記生地は、前記澱粉質原料100質量部に対して、前記膨張剤0.5~10.0質量部、前記糖類5~120質量部を含有することが好ましい。
【0019】
本発明の蒸菓子の製造方法においては、前記生地中の含有量として、前記澱粉質原料100gに対して、前記エキソマルトテトラオヒドロラーゼが5.0~20.0U、前記リパーゼが0.100~1.000U、前記キシラナーゼが10.0~100.0Uとなるように、前記蒸菓子用品質改良剤の組成及び添加量を調整することが好ましい。
【0020】
本発明の蒸菓子の製造方法は、前記蒸菓子用品質改良剤のうちグルコースオキシダーゼ及び/又はホスホリパーゼを含有する蒸菓子用品質改良剤を用い、前記グルコースオキシダーゼを含有する場合は、その含有量が前記澱粉質原料100gに対して0.0010~0.0200Uとなるように、前記ホスホリパーゼを含有する場合は、その含有量が前記澱粉質原料100gに対して500~1750Uとなるように、前記蒸菓子用品質改良剤の組成及び添加量を調整することが好ましい。
【0021】
本発明の蒸菓子の製造方法は、前記生地として、更に卵原料を含有するものを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明による蒸菓子用品質改良剤及び蒸菓子の製造方法によれば、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを用いるので、保水の維持に寄与できるマルトテトラオース等の糖類を有効に生成させて、澱粉の老化による劣化(パサつき感)を抑制することができる。また、これに加えて、リパーゼとキシラナーゼが併用されているので、蒸菓子のボリューム感を増加させることができる。なお、3種の酵素は単独で用いるよりも、併用する方が、蒸菓子の食感の劣化をより抑制し、ボリューム感の増加効果が優れている。よって、見た目の商品価値に優れ、長期保管にも適した蒸菓子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、好ましい態様を挙げて、詳しく説明する。
【0024】
(本発明の対象とする蒸菓子について)
本発明は、蒸菓子の品質改良の技術に関するものである。本発明の対象となる蒸菓子は、澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地を蒸し加熱して製造されるものである。このような蒸菓子としては、例えば、蒸パン、蒸ケーキ、蒸饅頭、枠蒸し、蒸ブッセ、中華饅頭、がんずき、黒糖饅頭、蓬饅頭、マーライコ、蒸カステラ、蒸どら焼き等が挙げられる。ただし、本発明の対象とする蒸菓子は、上記に挙げた蒸菓子に限定されるものではなく、生産工程に蒸す工程を有する菓子であればよい。
【0025】
蒸菓子に含まれる澱粉質原料としては、通常製菓に用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、薄力粉、中力粉、強力粉等の小麦粉、大麦粉、米粉、大豆粉、白玉粉などの穀粉等であってよく、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉などの澱粉素材等であってよく、その種類や由来に特に制限はない。また、場合によっては、その澱粉質原料は、物理的・化学的あるいは酵素的処理を加えることによって天然澱粉の特性を改良した、加工澱粉等であってよく、より具体的には、例えば、リン酸架橋澱粉、酸化澱粉、酢酸澱粉等であってもよい。これらの穀粉や澱粉素材は、それぞれの複数種類を併用も可能であり、穀粉と澱粉素材とを併用も可能である。なお、複数種類の澱粉質原料を併用したときの上記糖類との質量比は、その併用した澱粉質原料の合計量として求められる。
【0026】
蒸菓子に用いる膨張剤(ベーキングパウダー)としては、食品に添加されるものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、アルカリ性剤やガス発生源として、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどから選ばれた少なくとも一種を含み、酸性剤として、酒石酸、フマル酸、及びそれらの塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、及びグルコノデルタラクトン、塩化アンモニウムなどから選ばれた少なくとも一種を含むものが挙げられる。
【0027】
蒸菓子に含まれる糖類としては、一般的に製菓に使用される糖類であってよく、その糖類は複数種類を併用してよく、特に制限はない。すなわち、糖類の分類としては、単糖類(炭素数により三炭糖、五炭糖、六炭糖がある)、二糖類、少糖類(オリゴ糖類)、多糖類等であるが、このうち、一般的に製菓に使用される糖類としては、二単糖を中心とし、酸や酵素で澱粉を分解した澱粉糖やオリゴ糖類等であってよく、より具体的には、葡萄糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、水飴、各種液糖、各種オリゴ糖、蜂蜜、黒糖等が挙げられる。なお、複数種類の糖類を併用したときの上記澱粉質原料との質量比は、その併用した糖類の合計量として求められる。
【0028】
蒸菓子の原料としては、上記の他に、卵原料を含んでいてもよい。卵としては、鶏卵が一般的ではあるが、これに限定されるものではなく、例えば鶉(ウズラ)、アヒル、鴨、ホロホロ鳥等食用になるいかなる卵であってもよい。また、卵原料は、卵殻から分離された状態である全卵は勿論、これを分離させた卵黄や卵白であってもよい。更に卵原料は、液状に限らず、それから加工して得られる粉末状及び凍結状の原料であってもよく、それらの卵原料に殺菌処理等を施した加工卵、または、それらの混合物であってもよく、卵原料としての性質を失わない限り、糖類、多糖類、pH調整剤、調味料等が含有されたものでもよい。
【0029】
蒸菓子の原料としては、その他に、牛乳、粉乳などの乳原料、バター、植物油などの油脂類、塩、醤油、老抽王、みりん、味噌、塩化カリウム、グリシンなどの調味料、ラム酒、ブランデー、日本酒、バニラなどの風味材、かぼちゃ、さつまいも、豆、レモンなどの副原料、レーズン、ナッツ類、甘納豆などの具材を含有していてもよい。なお、生地で具材を包餡させて蒸すことにより、具材入りの蒸菓子を作ることもできる。包餡させる具材としては、特に限定されず、様々な具材を用いることができる。例えば、肉まんの場合は、豚肉、牛肉、鶏肉等の肉類、ふかひれ、ズワイガニ、ホタテ等の魚介類、玉ねぎ、白ネギ、生姜、タケノコ等の野菜類、椎茸等の茸類、砂糖、塩、しょうゆ等の調味料、片栗粉等の澱粉類などが用いられ、あんまんの場合は、こしあん、つぶあん、ごまあんなどが用いられ、その他、カレー、ピザの具材、肉の角煮、チャーシュー、チョコレート、ネギチャーシュー、漬け物等、様々な具材を用いることができる。
【0030】
本発明の蒸菓子の生地の配合は、特に限定されないが、澱粉質原料を100質量部としたとき、膨張剤0.5~10質量部、糖類5~120質量部、水20~100質量部含有することが好ましい。なお、牛乳を添加する場合は、牛乳中に含まれる水分も上記水の質量として加算する。また、卵原料を含有する場合は、液卵換算で、澱粉質原料100質量部に対して、卵原料を20~160質量部含有することが好ましい。
【0031】
(本発明の品質改良剤について)
本発明の品質改良剤は、上記のような蒸菓子に適用される品質改良剤であって、エキソマルトテトラオヒドロラーゼと、リパーゼと、キシラナーゼとを含有することを特徴とする。また、グルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼから選ばれた少なくとも1種、更には、グルコースオキシダーゼ及びホスホリパーゼを含有することが好ましい。
【0032】
(エキソマルトテトラオヒドロラーゼについて)
本発明に用いるエキソマルトテトラオヒドロラーゼとしては、アミロース等の多糖類のα(1→4)-グルカン構造を加水分解して、非還元末端からマルトテトラオース単位を生成する活性を備えた酵素(EC 3.2.1.60、別名:Glucan 1,4-alpha-maltotetraohydrolase)であればよく、その由来、調製法等に、特に制限はない(以下では「エキソマルトテトラオヒドロラーゼ」を「G4アミラーゼ」と表記する場合がある)。例えば、シュードモナス・サッカロフィラ(Pseudomonas saccharophila)やシュードモナス・スツゼリ(Pseudomonas stuzeri)等のシュードモナス種微生物等に由来する天然の酵素が知られているので、そのような由来のものを用いればよい。また、例えば、食品に使用可能な酵素製剤として、商品名「POWERFresh 3050 GF」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「POWERFresh 3150」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「POWERFresh 4150」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「POWERSoft 7033」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「デナベイクEXTRA」(ナガセケムテックス株式会社製)等が知られているので、そのような市販の酵素製剤を用いてもよい。
【0033】
本発明の好ましい態様においては、上記G4アミラーゼとして、シュードモナス・サッカロフィラやシュードモナス・スツゼリに由来する親酵素に、所定の変異を導入して、熱安定性が高められた酵素が知られているので、そのような改変酵素を用いてもよい(特表2002-509720号公報、特表2007-526752号公報、特表2008-505632号公報、特表2009-540818号公報)。その場合、酵素の至適温度としては、45℃以上であることが好ましく、45~80℃であることがより好ましく、55~75℃であることが更により好ましい。これによれば、生地の作成から蒸し工程までの経温履歴の間に、比較的高温下で酵素が作用し、ひいては酵素が生地中で糊化状態の澱粉分子に十分に接触するように該酵素を作用させることができ、澱粉の老化による食感の劣化をより有効に抑制することができる。なお、上記の市販の酵素製剤のうちの商品名「POWERFresh 3050 GF」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「POWERFresh 3150」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「POWERFresh 4150」(ダニスコジャパン株式会社製)、商品名「POWERSoft 7033」(ダニスコジャパン株式会社製)は、G4アミラーゼの至適温度として少なくとも55℃以上を示す酵素製剤である。また、このように至適温度の高められた改変酵素を任意に得るには、当業者に周知の変異作成手段により、G4アミラーゼをコードする遺伝子に変異を導入した後、その変異遺伝子を宿主微生物に導入して、高温で酵素活性の高い菌株を単離する、等のスクリーニングを行うことにより得ることができる。
【0034】
本発明において、G4アミラーゼの力価は、下記方法により測定することができる。すなわち、可溶性でんぷんの水溶液(1w/v%)を基質溶液として、酵素を添加し、40℃で10分間反応させた後に、可溶性でんぷんの分解により生成した還元末端を、常法に従いSomogy-Nelson法により測定する。1U(ユニット)の力価は、40℃で10分間に1mgのグルコースに相当する還元力を生成するに要する酵素量とする。蒸菓子原料の澱粉質原料100gに対するG4アミラーゼの添加量は、5.0~20.0Uが好ましく、7.0~17.5Uがより好ましい。
【0035】
(リパーゼについて)
本発明で用いるリパーゼは、中性脂肪を加水分解することで脂肪酸とグリセリンに分解する反応を触媒する酵素であればよく、その作用様式や由来等に特に制限はない。例えば、食品に添加可能な酵素製剤として、商品名「リリパーゼA-10D」(ナガセケムテックス株式会社製)、商品名「リポパン50BG」(ノボザイムズジャパン株式会社製)、商品名「リポパンプライム」(ノボザイムズジャパン株式会社製)、商品名「リパーゼDF「アマノ」15」(天野エンザイム株式会社製)、商品名「BakeZyme L80.000B」(ディー・エス・エムジャパン株式会社製)等が知られているので、そのような市販の酵素製剤を用いてもよい。
【0036】
本発明において、リパーゼの力価は、食品添加物公定書のリパーゼ活性試験法の第3法に基づいて測定することができる。すなわち、酵素反応によりパルミチン酸p-ニトロフェニルから遊離するp-ニトロフェノールを吸光度計(吸光度:405nm)により定量する。力価は、パルミチン酸p-ニトロフェニル(C:16)を基質として、30℃、pH8.0において1分間に1μmolの基質を分解するのに要する酵素活性を1U(ユニット)とする。蒸菓子原料の澱粉質原料100gに対するリパーゼの添加量は、0.100~1.000Uが好ましく、0.250~0.500Uがより好ましい。
【0037】
(キシラナーゼについて)
本発明に用いるキシラナーゼとしては、ヘミセルロース、アラビノキシラン等の多糖類のキシラン構造(キシロースがβ1→4結合した構造)を加水分解する活性を備えた酵素であればよく、エンドキシラナーゼ、エキソキシラナーゼ、β-キシロシダーゼ等であってよく、その作用様式や由来等に、特に制限はない。例えば、食品に使用可能な酵素製剤として、商品名「セルロシン HC100」(エイチビィアイ株式会社製)、商品名「スクラーゼX」(三菱ケミカルフーズ株式会社製)、商品名「Pentopan 500 BG」(ノボザイムズ ジャパン株式会社製)、商品名「BakeZyme BXP 5001 BG」(DSM株式会社製)等が知られているので、そのような市販の酵素製剤を用いてもよい。
【0038】
本発明において、キシラナーゼの力価は、アズリン色素架橋小麦アラビノキシランを基質として酵素と反応させ、加水分解により解離された染色断片の吸光度を測定し、キシロース生成量に換算することにより測定できる。1U(ユニット)の力価は、アラビノキシラン基質から40℃の条件下でキシロースを1分間当たり1μmol解離するに要する酵素量とする。蒸菓子原料の澱粉質原料100gに対するキシラナーゼの添加量は、10.0~100.0Uが好ましく、22.5~67.5Uがより好ましい。
【0039】
(グルコースオキシダーゼについて)
本発明におけるグルコースオキシダーゼとしては、グルコースを基質とし酸素存在下で作用させることで過酸化水素を生成させる酵素であればよく、その作用様式や由来等に、特に制限はない。例えば、食品に使用可能な酵素製剤として、商品名「スミチームPGO」(新日本化学工業株式会社製)、商品名「ハイデラーゼ15」((天野エンザイム株式会社製)、商品名「GRINDAMYL S757」(ダニスコジャパン株式会社製)等が知られているので、そのような市販の酵素製剤を用いてもよい。
【0040】
グルコースオキシダーゼによって、生成された過酸化水素がS-S結合の形成を促し、蒸菓子に形成されたグルテンネットワークを強化することでボリューム感のある蒸菓子を提供することができる。
【0041】
本発明において、グルコースオキシダーゼの力価は、グルコースを基質として、酸素存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることで過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素に還元型ABTS存在下でペルオキシダーゼを作用させることで生成した酸化型ABTSが呈する色調を、波長 420nm で測定して定量し、40℃、pH5.6で1分間に1μmolの過酸化水素を生成するのに必要な酵素量を1U(ユニット)とする。蒸菓子原料の澱粉質原料100gに対するグルコースオキシダーゼの添加量は、0.0010~0.0200Uが好ましく、0.0050~0.0150Uがより好ましい。
【0042】
(ホスホリパーゼについて)
本発明に用いるホスホリパーゼとしては、卵レシチン、大豆レシチン等のリン脂質から脂肪酸を遊離したり、リン酸ジエステル結合を加水分解したりする活性を備えた酵素であればよく、ホスホリパーゼA、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD等であってよく、その作用様式や由来等に、特に制限はない。例えば、食品に使用可能な酵素製剤として商品名「ホスホリパーゼA1」(三菱ケミカルフーズ株式会社製)、商品名「Cakezyme Smart」(DSM株式会社製)、商品名「デナベイクRICH」(ナガセケムテックス株式会社製)、商品名「PLA2ナガセ10P/R」(ナガセケムテックス株式会社製)等が知られているので、そのような市販の酵素製剤を用いてもよい。
【0043】
本発明において、ホスホリパーゼの力価は、大豆レシチンを基質として、酵素を添加し、37℃で10分間反応させる。生成された遊離脂肪酸を、非エステル結合型遊離脂肪酸測定キットNEFA Cテストワコー(富士フィルム和光純薬株式会社製)により定量する。1U(ユニット)の活性は、37℃にて1分間で1μmolの遊離脂肪酸を生成するのに要する酵素量とする。蒸菓子原料の澱粉質原料100gに対するホスホリパーゼの添加量は、500~1750Uが好ましく、750~1000Uがより好ましい。
【0044】
本発明の好ましい態様においては、上記ホスホリパーゼとして、ホスホリパーゼA2(EC 3.1.1.4)を用いることが好ましい。ホスホリパーゼA2は、グリセロリン脂質のsn-2位のエステル結合を加水分解する活性を備えた酵素である。ホスホリパーゼA2によって、特に、蒸菓子の原料に卵や液卵、乾燥卵、加糖卵、凍結卵、殺菌卵等の卵の加工品を含む場合、その卵原料に含まれる卵レシチンから乳化力の高いリゾレシチンを生成させて、食感のより良好な蒸菓子を得ることができる。
【0045】
(品質改良剤の形態)
上記の酵素は、同一の組成物中に含有せしめて、蒸菓子用品質改良剤の形態としてもよい。これによれば、その改良剤を添加するだけで、上記の酵素を一度に生地中に含有せしめることができる。この場合、その組成物の形態中には、本発明の作用効果に影響を与えない限り、上記酵素以外にも、適宜他の成分を含有せしめてもよい。他の成分としては、例えば、賦形剤、膨張剤、pH調整剤、酵素、増粘多糖類、乳化剤、乳化剤と重合リン酸塩との混合物、乳製品、エキス類、糖質、甘味料、発酵風味料、酵母、無機塩類、保存料等が挙げられる。蒸菓子用品質改良剤の形態として同一の組成物中に含有される他の成分の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
【0046】
(蒸菓子の製造方法について)
本発明の蒸菓子の製造方法は、澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、水とを含有する生地に、本発明の品質改良剤を含有させて、所定形状に成形し、蒸し加熱する方法である。品質改良剤の添加は、各原料の混合時に一緒に添加してもよく、各原料を混合して生地を作成した後に添加してもよい。生地の作成は、澱粉質原料と、膨張剤と、糖類と、前記品質改良剤と、水とを含有する原料を、ミキサー等で混合することにより形成できる。
【0047】
生地の成形は、例えば、所定の型への流し込み、押出成形、包餡機を用いた包餡などの各種の方法を採用できる。包餡機を用いる場合は、包餡させる具材として、前述した各種の原料を用いることができる。また、生地を蒸煮等によって一次加熱して、ある程度α化してから包餡機にかけることもできる。
【0048】
生地を成形した後、例えば、蒸し器などに入れて蒸気加熱することにより、本発明の蒸菓子を得ることができる。蒸し器としては、例えば株式会社品川工業所製の「サンキュウボイラー」(商品名)などの装置を用いることができる。
【0049】
こうして得られる本発明の蒸菓子は、比容積が大きく、しっとり感と、柔らかさが優れており、製造後、何日かの期間、例えば5~14日程度の期間が経過しても、上記しっとり感と柔らかさを維持することができる。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。なお、以下に本実施例で使用した酵素を挙げる。
【0051】
[酵素]
G4アミラーゼ:「POWERFresh3050GF」(ダニスコジャパン株式会社製)力価3500U/g
リパーゼ:「リポパンプライム」(ノボザイムズジャパン株式会社製)力価10U/g
キシラナーゼ:「Pentopan500BG」(ノボザイムズ ジャパン株式会社製)力価1500U/g
グルコースオキシダーゼ:「GRINDAMYL S757」(ダニスコジャパン株式会社製)力価 1U/g
ホスホリパーゼ:「PLA2ナガセ10P/R」(ナガセケムテックス株式会社製)力価 100000U/g
【0052】
[試験例]
下記表1に示す基本配合原料に、各種酵素製剤を添加して生地を作成し、この生地を用いて蒸パンを製造した。これらの蒸パンについて、比容積の測定と官能評価を行った。
【0053】
【0054】
ミキサー(KENMIX製KMM-770)を使用して、水に上白糖を溶かし、それと薄力粉、ベーキングパウダー、前記各酵素を含む製剤を合わせ、生地を作成した。なお、酵素製剤は表2の配合で形成した。
得られた生地の75g分を、グラシン紙をセットした型に流し込み、蒸し器で15分間蒸した。
【0055】
【0056】
[比容積の測定]
できあがった蒸パンを無作為に5個選び出し、それらの重量を測定した。その後、菜種置換法によってシリンダーで体積を測定した。最後に体積を重量で割ることで、比容積(ml/g)を算出した。
【0057】
[官能評価方法]
蒸し上がり1日経過後の蒸パンの食感について官能評価を行った。官能評価では、パネラー8~10人に試食してもらい、酵素を添加しないControlを基準として、それと比べて「しっとり感」、「柔らかさ」が「非常に悪い・悪い・変わらない・良い・非常に良い」の5段階で評価した。そして、非常に悪い→1点、悪い→2点、変わらない→3点、良い→4点、非常に良い→5点で集計して、パネル人数に応じた平均値を算出した。
以下、使用した酵素製剤毎に、試験結果を示す。
【0058】
[試験例1:G4アミラーゼ単体の試験(蒸パン)]
G4アミラーゼ単体を上記蒸パンに0~350.0Uで添加した場合の、蒸パンの比容積及び官能評価の結果を表3に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0059】
【0060】
G4アミラーゼ単体では添加量が増えるほど、比容積が減少したが、老化による食感の低下は抑制された。その効果は、7.0~17.5Uが好適であり、17.5Uが最も好適であった。そのため、G4アミラーゼの最適な添加量は17.5Uであると確認した。
【0061】
[試験例2:リパーゼ単体の試験(蒸パン)]
リパーゼ単体を上記蒸パンに0~0.500Uの範囲内で添加した場合の、蒸パンの比容積及び官能評価の結果を表4に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0062】
【0063】
リパーゼ単体では添加量が増えるほど、比容積が増加した。その効果は、0.250~0.500Uが好適であり、0.375Uが最も好適であった。そのため、リパーゼの最適な添加量は0.375Uであると確認した。
【0064】
[試験例3:キシラナーゼ単体の試験(蒸パン)]
キシラナーゼ単体を上記蒸パンに0~90.0Uで添加した場合の、蒸パンの比容積及び官能評価の結果を表5に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0065】
【0066】
キシラナーゼ単体では添加量が増えるほど比容積が増加しやすくなったが、添加量が増えすぎると比容積が減少した。その効果は22.5~67.5Uが好適であり、45.0Uが最も好適であった。キシラナーゼの最適な添加量は45.0Uであると確認した。
【0067】
[試験例4:G4アミラーゼ・リパーゼ・キシラナーゼの組み合わせ試験(蒸パン)]
G4アミラーゼ、リパーゼ及びキシラナーゼを上記蒸パンに添加した場合の、蒸パンの比容積及び官能評価の結果を表6に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0068】
【0069】
試験例4-2に示すように、G4アミラーゼ単体では比容積が減少する傾向がある。また、試験例4-5、4-7に示すように、リパーゼ単体、キシラナーゼ単体では、比容積は良好になるが、老化抑制効果は十分でなかった。試験例4-3、4-4、4-6に示すように、G4アミラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼのうち、2つの組合せでは、比容積、老化抑制のいずれかが未だ十分ではなかった。これに対して、G4アミラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼの全てを組み合わせた試験例4-8では、比容積が増加しており、老化も抑制されていた。そのため、最適な組み合わせは4-8であると確認した。なお、試験例4-8は本発明の実施例に該当する。
【0070】
[試験例5:G4アミラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼ、グルコースオキシダーゼの組み合わせ試験(蒸パン)]
試験例4-8であるG4アミラーゼ17.5U、リパーゼ0.375U、キシラナーゼ45.0Uの組み合わせに、グルコースオキシダーゼを、その添加量を変えて、前記試験例と同様にして蒸パンを製造し、各蒸パンの比容積を測定すると共に、官能評価を行った。その結果を表7に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0071】
【0072】
グルコースオキシダーゼの添加によって比容積が増加したが、添加量が増えすぎると比容積が減少する傾向があった。その効果は0.0050~0.0150Uで好適であり、0.0100Uが最も好適であると確認した。グルコースオキシダーゼの最適な添加量は0.0100Uであると確認した。なお、試験例5-1~5-6は、本発明の実施例に該当する。
【0073】
[試験例6:G4アミラーゼ・リパーゼ・キシラナーゼにホスホリパーゼを添加した組み合わせ試験(蒸ケーキ)]
G4アミラーゼ・リパーゼ・キシラナーゼにホスホリパーゼを添加した酵素製剤を用いて、卵の配合された蒸ケーキを製造し、比容積の測定と官能評価を実施した。蒸ケーキは下記の表8の配合で製造した。
【表8】
【0074】
ミキサー(KENMIX社製 商品名:KMM-770)を使用して、液卵に上白糖を溶かし、それと薄力粉、ベーキングパウダー、下記各酵素を含む製剤を合わせ混合する。更にサラダ油、製菓用濃縮乳、醤油を加えて混合生地を作成した。得られた生地の65g分を、グラシン紙をセットした型に流し込み、蒸し器で15分間蒸した。
【0075】
酵素製剤は、試験例4-8であるG4アミラーゼ17.5U、リパーゼ0.375U、キシラナーゼ45.0Uを組み合わせた製剤をベースにして、これにホスホリパーゼを、添加量を変えて添加することにより調製した。こうして得られた蒸ケーキの比容積及び官能評価を表9に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0076】
【0077】
表9に示されるように、ホスホリパーゼの添加量が増えると、比容積が増加しやすくなり、しっとり感・柔らかさが増したが、増えすぎると比容積が減少しベタ付きやすくなった。その効果は、750~1000Uで好適であり、750Uが最も好適であった。ホスホリパーゼの最適な添加量は750Uであると確認した。なお、試験例6-1~6-5は本発明の実施例に該当する。
【0078】
[試験例7:G4アミラーゼ・リパーゼ・キシラナーゼにグルコースオキシダーゼ及び/又はホスホリパーゼを添加した組み合わせ試験(蒸パン)]
G4アミラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼに、グルコースオキシダーゼ及び/又はホスホリパーゼを添加した酵素製剤を用いて、試験例1~5と同様にして蒸パンを製造し、得られた蒸パンの比容積を測定すると共に、官能評価を行った。その結果を表10に示す。なお、酵素添加量は、薄力粉100g当たりの力価で表した。
【0079】
【0080】
試験例7-4で比容積が増加しており、しっとり感・柔らかさが優れていることを確認した。最適な組み合わせは試験例7-4であると確認した。なお、試験例7-1~7-4は本発明の実施例に該当する。
【0081】
[酵素製剤を使用した実施例1(蒸ケーキ)]
下記表11に示す基本配合に、同表に示す酵素製剤を添加して、蒸ケーキを製造した(実施例1)。酵素製剤の配合量は、基本配合原料100gに対する力価で記載した。また、酵素製剤を添加しない他は、同じ配合で蒸ケーキを製造した(比較例1)。得られた蒸ケーキの比容積の比較及び官能評価を行い、その結果を表12に示した。なお、蒸ケーキの製法、並びに、比容積の計測法及び官能評価の手法は試験例6と同様である。
【表11】
【0082】
【0083】
表12に示すように、酵素製剤を添加した蒸ケーキである実施例1は、酵素製剤を添加しなかった蒸ケーキである比較例1と比較すると、比容積が大きく、食感もしっとり感があり柔らかさがあった。
【0084】
[酵素製剤を使用した実施例2(蒸饅頭)]
表13に示す配合で水と卵黄を混合した液卵に上白糖を溶かし、それと薄力粉、ベーキングパウダー、上記酵素製剤を合わせ蒸饅頭生地を作成した(実施例2)。なお、酵素製剤を添加しないで同様に蒸饅頭生地を作成した(比較例2)。得られた生地15gで餡30gを包餡し、蒸し器で15分間蒸して蒸饅頭を製造した。こうして得られた蒸饅頭について、比容積の比較及び官能評価を行い、その結果を表14に示した。
【0085】
【0086】
【0087】
表14に示すように、酵素製剤を添加した蒸饅頭である実施例2は、酵素製剤を添加しなかった蒸饅頭である比較例2と比較すると、比容積が大きく、食感もしっとり感があり柔らかさがあった。
【0088】
[酵素製剤を使用した実施例3(蒸パン)]
表15に示す配合で水と液卵を混合し、液糖と上白糖を溶かし、それと薄力粉、米粉、ベーキングパウダー、上記各酵素を含む製剤を合わせ蒸パン生地を作成した(実施例3)。なお、酵素製剤を添加しないで同様に蒸パン生地を作成した(比較例3)。得られた生地の70g分を、グラシン紙をセットした型に流し込み、蒸し器で15分間蒸して蒸パンを製造した。こうして得られた蒸パンについて、比容積の比較及び官能評価を行い、その結果を表16に示した。
【表15】
【0089】
【0090】
表16に示すように、酵素製剤を添加した蒸パンである実施例3は、酵素製剤を添加しなかった蒸パンである比較例3と比較すると、比容積が大きく、食感もしっとり感があり柔らかさがあった。