(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177464
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090152
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢司
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BD02
3E172BD05
3E172DA90
3E172HA05
3E172HA08
3E172HA14
3E172JA09
3E172KA03
3E172KA19
3E172KA22
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】圧縮部に吸入されるボイルオフガスである水素ガスの温度を適切に管理する。
【解決手段】圧縮機ユニット10は、水素ガスを圧縮するレシプロ式の圧縮機構によって構成された圧縮部12と、クーラ14と、プレヒータ16と、スピルバック部33と、調整手段31と、制御部39aと、を備える。吸込流路21は、プレヒータ16を経由する第1経路部29a及びプレヒータ16を経由しない第2経路部29cを有する。調整手段31は、第1経路部29aを流通する水素ガスの流量を調整するとともに第2経路部29cを流通する水素ガスの流量を調整する。制御部39aは、圧縮部12の吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように調整手段31を制御する。前記予め定められた温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給する圧縮機ユニットであって、
吸込流路を流れた前記水素ガスを圧縮するとともに圧縮されたガスを吐出流路に吐出するレシプロ式の圧縮機構によって構成された圧縮部と、
前記吐出流路に吐出された水素ガスを冷却する水冷式又は空冷式のクーラと、
前記圧縮部に吸入される前の水素ガスと、前記圧縮部から吐出された後の水素ガスであって前記クーラに向かって流れる水素ガスとを熱交換可能なプレヒータと、
前記圧縮部から吐出された後の水素ガスを前記吸込流路における前記プレヒータよりも下流側又は上流側の部分に戻すスピルバック流路を含むスピルバック部と、
前記吸込流路において、前記スピルバック流路の接続部と前記圧縮部との間に配置される温度センサと、を備え、
前記吐出流路または前記吸込流路が、水素ガスの流れ方向に沿って二股に分かれた後互いに合流する第1経路部及び第2経路部を有し、前記第1経路部が前記プレヒータを経由する一方で、前記第2経路部が前記プレヒータを経由しておらず、
前記圧縮機ユニットはさらに、
前記第1経路部を流通する水素ガスの流量を調整するとともに前記第2経路部を流通する水素ガスの流量を調整する調整手段と、
前記温度センサによって取得された吸込温度を参照し、前記吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、前記調整手段を制御する制御部と、
を備え、
前記予め定められた温度範囲は空気の液化温度に基づく基準温度よりも高い、圧縮機ユニット。
【請求項2】
液体水素貯槽から0℃未満の可燃性のボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給する圧縮機ユニットであって、
吸込流路を流れた前記水素ガスを圧縮するとともに圧縮されたガスを吐出流路に吐出するレシプロ式の圧縮機構によって構成された圧縮部と、
前記吐出流路に吐出された水素ガスを冷却する水冷式又は空冷式のクーラと、
前記圧縮部に吸入される前の水素ガスと、前記圧縮部から吐出された後の水素ガスであって前記クーラに向かって流れる水素ガスとを熱交換可能なプレヒータと、
前記吐出流路において、前記プレヒータと前記圧縮部との間に配置される温度センサと、
前記圧縮部から吐出された後の水素ガスを前記吸込流路における前記プレヒータよりも下流側又は上流側の部分に戻すスピルバック部と、を備え、
前記吐出流路または前記吸込流路が、水素ガスの流れ方向に沿って二股に分かれ後互いに合流する第1経路部及び第2経路部を有し、前記第1経路部が前記プレヒータを経由する一方で、前記第2経路部が前記プレヒータを経由しておらず、
前記圧縮機ユニットはさらに、
前記第1経路部を流通する水素ガスの流量を調整するとともに、前記第2経路部を流通する水素ガスの流量を調整する調整手段と、
前記温度センサによって取得された吐出温度に基づき、前記圧縮部の吸込温度を推定する計算部と、
前記推定された吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように前記調整手段を制御する制御部と、
を備え、
前記予め定められた温度範囲は空気の液化温度に基づく基準温度よりも高い、圧縮機ユニット。
【請求項3】
前記調整手段が、前記第1経路部と前記第2経路部との分岐点上に設けられた三方弁によって構成されている、請求項1または2に記載の圧縮機ユニット。
【請求項4】
前記調整手段が、前記第1経路部に設けられた開度調整が可能な弁と、前記第2経路部に設けられた開度調整が可能な弁と、によって構成されている、請求項1または2に記載の圧縮機ユニット。
【請求項5】
前記調整手段が、前記第1経路部に設けられた開度調整可能な弁と、前記第2経路部に設けられ、水素ガスの流量を抑制するための絞り部と、によって構成される、請求項1または2に記載の圧縮機ユニット。
【請求項6】
前記制御部は、前記吸込温度を参照し、前記吸込温度が予め定められた上限温度以上のときに前記第1経路部での水素ガスの流通を停止するように前記調整手段を制御するとともに、前記吸込温度が前記上限温度未満のときに前記吸込温度が予め定められた前記温度範囲内になるように、前記調整手段を制御する、請求項1または2に記載の圧縮機ユニット。
【請求項7】
前記吸込流路が、外気からの入熱を抑制するための断熱材を備える、請求項1または2に記載の圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス(LNG)、液体水素(LH2)などの低温のボイルオフガス(BOG)を圧縮機によって回収してエンジン等の需要先に供給することが行われている。特にLH2から発生したボイルオフガスは非常に低温である。このため、圧縮機がそのままボイルオフガスを吸入する構成を採用すると、極低温に適した材料を選択する必要があったり、熱変形量を考慮した設計条件を採用したり、厳重な断熱処理を実施したりする必要がある等の制約がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-172870号公報
【特許文献2】特開2001-65795号公報
【特許文献3】特開平3-92700号公報
【特許文献4】特開2019-27590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では次のような問題が指摘されている。「近年、新たなエネルギ源として、水素が注目されている。エネルギ源として水素を利用する場合にも、天然ガスのように、貯蔵及び輸送時には、液化した状態とすることが想定されている。しかし、水素は、液化温度が空気の液化温度よりも低いという特性を有する。そのため、天然ガス等を対象とした往復動圧縮機といった設備をそのまま水素に適用すると、極低温の液体水素に起因する不具合が生じる可能性がある。例えば、液体水素が供給される装置の周辺に液化空気を生じさせてしまう。」
【0005】
すなわち特許文献1では、極低温の液体水素に起因する不具合を防止するという課題が検討されている。また、極低温の流体が供給される装置には、配管など高性能な断熱が施工しやすいもの(例えば真空領域を設けたもの)もあるが、運転中の振動を伴う動機械や、点検開口部を通して定期的なメンテナンスを必要とする設備(例えば往復動圧縮機など)等のように、高性能な断熱が非常に難しいものもあるという課題もある。
【0006】
下記特許文献2~4に開示されているように、圧縮機に吸入される前のボイルオフガスを加熱可能な熱交換器を設けることが知られている。一方、過度に吸込ガスを加熱すると、ガス体積の膨張により、圧縮動力が大きくなるとともに動力(エネルギー)のロスとなるため、適切な範囲で吸込み温度をコントロールすることが求められている。
【0007】
特許文献2に開示された圧縮機ユニットでは、
図12に示すように、圧縮部102から吐出されたボイルオフガスによって圧縮部102に吸入される前のボイルオフガスを加熱する熱交換器104が設けられている。この圧縮機ユニットでは、ガス処理量に応じて熱交換器104を流れる流量を変えることは可能である。しかしながら、タンク100から導出されたボイルオフガスの全量が熱交換器104に流入する構成となっているので、ガス処理量に応じて流量を変えることができるだけであり、圧縮部102に吸入されるガス温度が所定温度になるように、熱交換器104を流れる流量を調整することはできない。
【0008】
これに対し、特許文献3に開示された圧縮機ユニットでは、
図13に示すように、熱交換器112をバイパスするバイパス管114が設けられている。このバイパス管114に弁114aが設けられ、バイパス管114の弁114aの開閉制御を行うことにより、熱交換器112を通過するガス量を調整することが可能となっている。このため、弁114aの開閉制御により、圧縮部116に吸入されるボイルオフガスの温度を調整できるかもしれない。しかしながら、特許文献3の圧縮機ユニットでは、たとえ弁114aが全開にある状態でも、弁114a自体の圧損によって熱交換器112にもボイルオフガスが流入してしまうことがある。このため、圧縮部116に吸入されるガス温度を適正範囲に収まるように制御することは困難である。
【0009】
なお特許文献4にも、
図14に示すように、圧縮部121に吸入される前のボイルオフガスと圧縮部121から吐出された後のボイルオフガスとを熱交換させる熱交換器123が示されている。しかし、この熱交換器123は圧縮部121で圧縮された後のボイルオフガスを再液化するためのものであるため、圧縮部121の下流に配置されたクーラ125によって冷却されたボイルオフガスが熱交換器123に導入される。したがって、引用文献3では、圧縮部121に吸入される蒸発ガスを十分に加温するという観点では不利である。しかも、特許文献4では、特許文献3のように、圧縮部121に吸入されるガスの温度が高くなり過ぎることが起こり難いため、圧縮部121に吸入されるボイルオフガスの温度を調整することを考慮していない。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮機ユニットにおいてレシプロ式の圧縮部に吸入されるボイルオフガスである水素ガスの温度を適切に管理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一局面に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給する圧縮機ユニットであって、吸込流路を流れた前記水素ガスを圧縮するとともに圧縮されたガスを吐出流路に吐出するレシプロ式の圧縮機構によって構成された圧縮部と、前記吐出流路に吐出された水素ガスを冷却する水冷式又は空冷式のクーラと、前記圧縮部に吸入される前の水素ガスと前記圧縮部から吐出された後の水素ガスであって前記クーラに向かって流れる水素ガスとを熱交換可能なプレヒータと、前記圧縮部から吐出された後の水素ガスを前記吸込流路における前記プレヒータよりも下流側又は上流側の部分に戻すスピルバック流路を含むスピルバック部と、前記吸込流路において、前記スピルバック流路の接続部と前記圧縮部との間に配置される温度センサと、を備える。前記吐出流路または前記吸込流路は、水素ガスの流れ方向に沿って二股に分かれた後互いに合流する第1経路部及び第2経路部を有し、前記第1経路部が前記プレヒータを経由する一方で、前記第2経路部が前記プレヒータを経由していない。前記圧縮機ユニットはさらに、前記第1経路部を流通する水素ガスの流量を調整するとともに前記第2経路部を流通する水素ガスの流量を調整する調整手段と、前記温度センサによって取得された吸込温度を参照し、前記吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、前記調整手段を制御する制御部と、を備える。前記予め定められた温度範囲は空気の液化温度に基づく基準温度よりも高い。
【0012】
この圧縮機ユニットでは、調整手段によって、プレヒータを経由する水素ガスの流量とプレヒータを経由しない水素ガスの流量とを調整する。さらに、圧縮部に吸入される水素ガスの温度が所定温度範囲に収まるように調整手段が制御される。したがって、圧縮部の吸込温度を適切に管理することができる。加えて、クーラに流入する前の水素ガス(吐出ガス)の熱を利用することにより、吸込温度を適切に加温することができる。さらに、吸込流路に対するスピルバック流路の接続部が温度センサよりも上流に位置するため、スピルバック部によって吸込流路に戻された水素ガスにより温度センサの検出ガス温度が変化した場合においても、圧縮部に吸入される水素ガスの温度を適切な範囲に収めることができる。しかも、圧縮部に吸入される水素ガスの温度範囲を所定の基準温度よりも高くすることができるため、支燃性ガスである酸素の液化が発生することを回避できる。
【0013】
本発明の他の一局面に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽から0℃未満の可燃性のボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給する圧縮機ユニットであって、吸込流路を流れた前記水素ガスを圧縮するとともに圧縮されたガスを吐出流路に吐出するレシプロ式の圧縮機構によって構成された圧縮部と、前記吐出流路に吐出された水素ガスを冷却する水冷式又は空冷式のクーラと、前記圧縮部に吸入される前の水素ガスと前記圧縮部から吐出された後の水素ガスであって前記クーラに向かって流れる水素ガスとを熱交換可能なプレヒータと、前記吐出流路において、前記プレヒータと前記圧縮部との間に配置される温度センサと、前記圧縮部から吐出された後の水素ガスを前記吸込流路における前記プレヒータよりも下流側又は上流側の部分に戻すスピルバック部と、を備える。前記吐出流路または前記吸込流路は、水素ガスの流れ方向に沿って二股に分かれ後互いに合流する第1経路部及び第2経路部を有し、前記第1経路部が前記プレヒータを経由する一方で、前記第2経路部が前記プレヒータを経由していない。前記圧縮機ユニットはさらに、前記第1経路部を流通する水素ガスの流量を調整するとともに、前記第2経路部を流通する水素ガスの流量を調整する調整手段と、前記温度センサによって取得された吐出温度に基づき、前記圧縮部の吸込温度を推定する計算部と、前記推定された吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように前記調整手段を制御する制御部と、を備える。前記予め定められた温度範囲は空気の液化温度に基づく基準温度よりも高い。
【0014】
この圧縮機ユニットでは、調整手段によって、プレヒータを経由する水素ガスの流量とプレヒータを経由しない水素ガスの流量とを調整する。さらに、圧縮部に吸入される水素ガスの温度が所定温度範囲に収まるように調整手段が制御される。したがって、圧縮部の吸込温度を適切に管理することができる。加えて、クーラに流入する前の水素ガス(吐出ガス)の熱を利用することにより、吸込温度を適切に加温することができる。しかも、圧縮部に吸入される水素ガスの温度範囲を所定の基準温度よりも高くすることができるため、支燃性ガスである酸素の液化が発生することを回避できる。
【0015】
前記調整手段は、前記第1経路部と前記第2経路部との分岐点上に設けられた三方弁によって構成されていてもよい。この態様では、1つの弁でプレヒータに向かう水素ガスの流量とプレヒータを経由しない水素ガスの流量をそれぞれ調整することができ、構成の簡素化に資する。
【0016】
前記調整手段は、前記第1経路部に設けられた開度調整が可能な弁と、前記第2経路部に設けられた開度調整が可能な弁と、によって構成されていてもよい。
【0017】
前記調整手段は、前記第1経路部に設けられた開度調整可能な弁と、前記第2経路部に設けられ、水素ガスの流量を抑制するための絞り部と、によって構成されていてもよい。
【0018】
前記制御部は、前記吸込温度を参照し、前記吸込温度が予め定められた上限温度以上のときに前記第1経路部での水素ガスの流通を停止するように前記調整手段を制御するとともに、前記吸込温度が前記上限温度未満のときに前記吸込温度が予め定められた前記温度範囲内になるように、前記調整手段を制御してもよい。この態様では、吸込温度が予め定められた上限温度以上のときにプレヒータでの水素ガスの流通を停止するため、圧縮部に吸入される水素ガスの温度が高くなり過ぎないようにすることができる。
【0019】
前記吸込流路は、外気からの入熱を抑制するための断熱材を備えてもよい。この態様では、吸込流路において意図しない入熱を抑制することにより、吸込温度制御をより適切にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、圧縮機ユニットにおいてレシプロ式の圧縮部に吸入されるボイルオフガスである水素ガスの温度を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図3】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る圧縮機ユニットにおける制御部の制御動作を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットにおける制御部の制御動作を説明するための図である。
【
図7】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図9】第3実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図10】第4実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図11】第5実施形態に係る圧縮機ユニットの構成を概略的に示す図である。
【
図12】従来の圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図13】従来の圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図14】従来の圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、回収した水素ガスを圧縮して需要先に供給するように構成されている。水素ガスであるボイルオフガスは約-250℃である。需要先としては発電設備、ボイラ、船舶等のエンジン等が挙げられる。
【0024】
図1に示すように、圧縮機ユニット10は、水素ガスを圧縮するための圧縮部12と、圧縮部12で圧縮された水素ガスを冷却するクーラ14と、圧縮部12に吸入される前の水素ガスを加熱するプレヒータ16と、を備えている。
【0025】
圧縮部12は、吸込流路21を介して液体水素貯槽23に接続される。したがって、液体水素貯槽23内で発生した液化ガスのボイルオフガスは吸込流路21を通して圧縮部12に吸入される。圧縮部12は、レシプロ式の圧縮機構によって構成されている。すなわち、
図2に示すように、圧縮部12は、シリンダ部211と、ピストン212と、ピストンロッド213と、一対の吸込弁214と、一対の吐出弁215とを有している。ピストン212及びピストンロッド213は図略のクランク機構に接続される。シリンダ部211内でピストン212が往復移動することにより、圧縮室内で水素ガスが圧縮される。
図2では、ダブルアクティング構造の圧縮部12を示しているが、圧縮部12は、シングルアクティング構造が採用されてもよい。
【0026】
なお、
図1では便宜上圧縮部12を1つの台形で示しているが、圧縮部12は必ずしも1段式である必要はなく、複数の圧縮段により構成されていてもよい。すなわち、圧縮部12は、直列に接続された複数のシリンダ部211内においてそれぞれピストン212により水素ガスが順次圧縮されて昇圧される構成とされてもよい。他の実施形態においても同様である。
【0027】
吸込流路21は、外気からの入熱を抑制するための断熱材26を備えている。なお、断熱材26を省略してもよい。また、吐出流路25にも断熱材(図示省略)が設けられていてもよい。
【0028】
クーラ14は吐出流路25に配置されている。クーラ14は、水冷式であってもよく、空冷式であってもよい。クーラ14によって冷却された水素ガスは需要先28に送られる。
【0029】
プレヒータ16は、圧縮部12に吸入される前の水素ガスと、圧縮部12から吐出された後の水素ガスとを熱交換させて、圧縮部12に吸入される前の水素ガスを加熱するように構成されている。プレヒータ16は、吐出流路25おけるクーラ14よりも上流側の部位に接続されている。プレヒータ16では、クーラ14に向かって流れる水素ガスによって、圧縮部12に向かって吸込流路21を流れる水素ガスが加熱されるため、クーラ14で冷却された後の水素ガスで加熱する構成と異なり、水素ガスを効果的に加熱できる。
【0030】
プレヒータ16は、吐出流路25における第1経路部29aに接続されている。すなわち、吐出流路25は、上流経路部29bと、上流経路部29bから二股に分かれた後、互いに合流する第1経路部29a及び第2経路部29cと、第1経路部29a及び第2経路部29cから合流した水素ガスが流れる下流経路部29dと、を有する。上流経路部29bは圧縮部12に接続されている。下流経路部29dは需要先28まで延びている。
【0031】
第1経路部29aは、プレヒータ16を経由しているため、圧縮部12から吐出された水素ガスのうちの少なくとも一部がプレヒータ16に流入可能となっている。プレヒータ16は、吸込流路21にも接続されているため、第1経路部29aを流れる水素ガスによって、吸込流路21を流れる水素ガスを加熱可能となっている。一方、第2経路部29cは、プレヒータ16を経由していない。
【0032】
下流経路部29dにはクーラ14が接続されている。すなわち、吐出流路25において、クーラ14はプレヒータ16よりも下流側に配置されている。このため、プレヒータ16は、クーラ14で冷却される前の水素ガスで、吸込流路21を流れる水素ガスを加熱する。
【0033】
吐出流路25には、第1経路部29aを流通する水素ガスの流量を調整するとともに第2経路部29cを流通する水素ガスの流量を調整する調整手段31が設けられている。
図1に示す例では、調整手段31は、第1経路部29aと第2経路部29cとの分岐点上に設けられた三方弁31aによって構成されている。三方弁31aは、上流経路部29bを流れる水素ガスを、第1経路部29aと第2経路部29cとに振り分けるように構成されている。このため、三方弁31aの弁体(図示省略)の向き又は位置を変えることにより、三方弁31aは、上流経路部29bを流れる流量の全量が第1経路部29aに流れる状態(第2経路部29c側を閉弁)から、上流経路部29bを流れる流量の全量が第2経路部29cに流れる状態(第1経路部29a側及びプレヒータ16側を閉弁)まで、第1経路部29a及び第2経路部29cへの振り分け割合を変更可能に構成されている。
【0034】
なお、
図1の構成では、三方弁31aは、上流経路部29bと第1経路部29aと第2経路部29cとが接続する部位に配置されているが、これに代え、三方弁31aは、第1経路部29aと第2経路部29cと下流経路部29dとが接続する部位に配置されてもよい。
【0035】
圧縮機ユニット10には、圧縮部12から吐出された後の水素ガスを吸込流路21に戻すためのスピルバック部33が設けられている。スピルバック部33は、スピルバック流路33aと、スピルバック流路33aに配置された開度調整可能な弁からなるスピルバック弁33bと、を有する。スピルバック流路33aの一端部は、吐出流路25におけるクーラ14よりも下流側の部分に接続され、他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも下流側の部分に接続されている。つまり、スピルバック流路33aを流れた水素ガスは、吸込流路21におけるプレヒータ16と圧縮部12との間において、プレヒータ16を通過した水素ガスと合流する。スピルバック流路33aにおけるスピルバック弁33bよりも下流側の部分は、外気からの入熱を抑制するための断熱材34を備えている。ただし、この断熱材34は省略可能である。なお、
図3に示すように、スピルバック流路33aの他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも上流側の部分に接続されてもよい。
【0036】
吐出流路25には、吐出流路25を流れる水素ガスの圧力を検出する圧力センサ36が設けられている。圧力センサ36は、吐出流路25におけるスピルバック流路33aの接続部よりも下流に位置している。
【0037】
吸込流路21には、吸込流路21を流れる水素ガスの温度を検出する温度センサ37が設けられている。温度センサ37は、吸込流路21において、スピルバック流路33aの接続部と圧縮部12との間に配置されている。したがって、温度センサ37は、プレヒータ16で加熱された後の水素ガス(スピルバック流路33aを水素ガスが流れるときは、さらに、スピルバック流路33aから水素ガスが合流した後の水素ガス)の温度を取得することができる。
【0038】
圧力センサ36は検出圧力を示す信号を出力し、温度センサ37は取得温度(吸込温度)を示す信号を出力する。圧力センサ36からの信号及び温度センサ37からの信号は、コントローラ39に入力される。コントローラ39は、圧縮機ユニット10の各種動作を制御するコンピュータであり、このコンピュータにより実行されるコントローラ39の機能には、制御部39aと、スピルバック制御部39bと、が含まれる。制御部39aは、温度センサ37によって取得された吸込温度を参照しつつ調整手段31を制御するように構成された機能部である。スピルバック制御部39bは、圧力センサ36の検出圧力に基づいてスピルバック弁33bを制御するように構成された機能部である。
【0039】
ここで、制御部39aによる制御動作を
図4を参照しつつ説明する。制御部39aは、吸込温度(温度T)が予め定められた目標温度T1以下かどうかを判定する(ステップST13)。なお、目標温度T1は後述の基準温度よりも高い温度に設定される。
【0040】
吸込温度(温度T)が目標温度T1以下の場合には、制御部39aは、プレヒータ16を迂回する流量が減り且つプレヒータ16に流れる流量が増えるように調整手段31を制御する(ステップST14)。すなわち、調整手段31としての三方弁31aは、第2経路部29c側の開度が小さくなり且つ第1経路部29a側の開度が大きくなるように制御される。これにより、プレヒータ16において、吸込流路21を流れる水素ガスの加熱量が増大するため、吸込温度(温度T)が高くなる。
【0041】
一方、吸込温度(温度T)が目標温度T1よりも高い場合には、制御部39aは、プレヒータ16を迂回する流量が増え且つプレヒータ16に流れる流量が減るように調整手段31を制御する(ステップST15)。すなわち、調整手段31としての三方弁31aは、第2経路部29c側の開度が大きくなり且つ第1経路部29a側の開度が小さくなるように制御される。これにより、プレヒータ16において、吸込流路21を流れる水素ガスの加熱量が低減するため、吸込温度(温度T)が低くなる。すなわち、制御部39aは、吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように調整手段31を制御する。当該温度範囲は所定の基準温度よりも高い。
【0042】
この基準温度は空気の液化温度に基づき設定される。具体的には、基準温度は空気の液化温度であることが好ましい。ただし、圧縮部12において外気に触れる部材(シリンダ部211等)の外表面が空気の液化温度よりも高くなるのであれば、基準温度を空気の液化温度未満とすることもできる。また、吸込流路21の配管や計装品の外表面の温度が空気の液化温度よりも高くなるように基準温度が設定されてもよい。これにより、水素ガスの冷熱により圧縮部12や吸込流路21の周囲の空気が冷却されても、空気が液化してしまうことが防止される。
【0043】
スピルバック制御部39bは、圧力センサ36による検出圧力が予め定められた設定圧力になるように、スピルバック弁33bを制御する。すなわち、圧力センサ36による検出圧力が設定圧力よりも高い場合には、スピルバック弁33bの開度を大きくするようにスピルバック弁33bを制御する。これにより、クーラ14を通過した水素ガスのうち吸込流路21に戻される水素ガスの流量が増えるため、需要先28に供給される水素ガスの圧力が低減する。一方、検出圧力が設定圧力未満の場合には、スピルバック弁33bの開度を小さくするようにスピルバック弁33bを制御する。これにより、クーラ14を通過した水素ガスのうち吸込流路21に戻される水素ガスの流量が減るため、需要先28に供給される水素ガスの圧力が上昇する。また、検出圧力が設定圧力に一致する場合には、スピルバック弁33bの開度は変更されない。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、調整手段31によって、プレヒータ16を経由する水素ガスの流量を調整するとともに、プレヒータ16を経由しない水素ガスの流量をも調整する。さらに、圧縮部12に吸入される水素ガスの温度が所定温度範囲に収まるように調整手段31が制御される。したがって、圧縮部12の吸込温度を適切に管理することができる。加えて、クーラ14に流入する前の水素ガス(吐出ガス)の熱を利用することにより、吸込温度を適切に加温することができる。さらに、吸込流路21に対するスピルバック流路33aの接続部が温度センサ37よりも上流に位置するため、スピルバック部33によって吸込流路21に戻された水素ガスにより温度センサ37の検出ガス温度が変化した場合においても、圧縮部12に吸入される水素ガスの温度を適切な範囲に収めることができる。しかも、圧縮部12に吸入される水素ガスの温度を上述の基準温度よりも高くすることができるため、支燃性ガスである酸素の液化が発生することを回避できる。
【0045】
また本実施形態では、調整手段31が三方弁31aによって構成されている。このため、1つの弁でプレヒータ16に向かう水素ガスの流量とプレヒータ16を経由しない水素ガスの流量をそれぞれ調整することができ、構成の簡素化に資する。
【0046】
また本実施形態では、吸込流路21が断熱材26を備えるため、吸込流路21において意図しない入熱を抑制することができ、それにより吸込温度制御をより適切にすることができる。
【0047】
図1では、調整手段31が三方弁31aによって構成された例を示しているが、これに限られない。
図5に示すように、調整手段31は、第1経路部29aに設けられた開度調整が可能な第1弁31bと、第2経路部29cに設けられた開度調整が可能な第2弁31cとによって構成されてもよい。
【0048】
ここで、
図5に示す変形例における制御部39aによる制御動作を
図6を参照しつつ説明する。なお、スピルバック制御部39bの動作は第1実施形態と同様であり、詳細は割愛する。制御部39aは、温度センサ37によって取得された吸込温度(温度T)が予め定められた上限温度T2以上であるかどうか判定する(ステップST11)。吸込温度(温度T)が上限温度T2以上の場合には、制御部39aは、第1経路部29aでの水素ガスの流通を停止するように調整手段31を制御する(ステップST12)。この場合、第1弁31bが閉じられ、第2弁31cが全開される。これにより、圧縮部12から吐出された水素ガスのプレヒータ16への流入は停止される。したがって、吸込流路21を流れる水素ガスは、プレヒータ16で加熱されることなく圧縮部12に吸入される。このため、圧縮部12に吸入される水素ガスの温度(吸込温度)が過剰に高くなることを抑制できる。
【0049】
一方、吸込温度(温度T)が上限温度T2未満の場合には、
図4と同様に、制御部39aは、吸込温度(温度T)が予め定められた目標温度T1以下かどうかを判定する(ステップST13)。このとき調整手段31は、少なくとも第1経路部29a側に開放されているため、圧縮部12から吐出された水素ガスの少なくとも一部はプレヒータ16に導入される。なお、目標温度T1は上限温度T2よりも低い温度である。
【0050】
吸込温度(温度T)が目標温度T1以下の場合には、制御部39aは、プレヒータ16を迂回する流量が減り且つプレヒータ16に流れる流量が増えるように調整手段31を制御する(ステップST14)。すなわち、第2弁31cの開度が小さくなるように第2弁31cが制御されるとともに第1弁31bの開度が大きくなるように第1弁31bが制御される。これにより、吐出ガスのうちプレヒータ16を通過するガス流量が増えるととともにプレヒータ16を迂回するガス流量が減る。
【0051】
一方、吸込温度(温度T)が目標温度T1よりも高い場合には、制御部39aは、プレヒータ16を迂回する流量が増え且つプレヒータ16に流れる流量が減るように調整手段31を制御する(ステップST15)。すなわち、第2弁31cの開度が大きくなるように第2弁31cが制御されるとともに第1弁31bの開度が小さくなるように第1弁31bが制御される。これにより、吐出ガスのうちプレヒータ16を通過するガス流量が減るととともにプレヒータ16を迂回するガス流量が増える。すなわち、吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、圧縮部12から吐出された水素ガスのプレヒータ16への流入が調整される。
【0052】
なお、
図5に示す構成では、制御部39aによる制御動作が
図4に基づき行われてもよい(すなわち、
図6からステップST11,12が省略されてもよい)。また、
図1の構成において、上述のステップST11及びST12を実行するようにしてもよい。
【0053】
調整手段31は、
図7に示すように、第1経路部29aに設けられた開度調整可能な弁31dと、第2経路部29cに設けられた絞り部31eと、によって構成されてもよい。絞り部31eは、第2経路部29cを流れる水素ガスの流量を抑制する。このため、弁31dが全開された場合には、圧縮部12から吐出された水素ガスのほぼ全量は第1経路部29aを流れる。一方で、弁31dが閉じられた場合には、圧縮部12から吐出された水素ガスの全量は第2経路部29cを流れる。
【0054】
この構成の場合、制御部39aは
図6と同様の制御動作をする。
図6のステップST12においては、第1経路部29aの弁31dが閉じられる。これにより、圧縮部12から吐出された水素ガスのプレヒータ16への流入は停止される。また、ステップST14においては、弁31dの開度が大きくなるように弁31dが制御される。これにより、プレヒータ16を通過するガス流量が増えるととともに絞り部31eを通過するガス流量が減る。またステップST15においては、弁31dの開度が小さくなるように弁31dが制御される。これにより、プレヒータ16を通過するガス流量が減るととともに絞り部31eを通過するガス流量が増える。すなわち、吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、圧縮部12から吐出された水素ガスのプレヒータ16への流入が調整される。なお、
図7に示す構成では、制御部39aが
図4と同様の制御動作を行ってもよい。
【0055】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
第1実施形態では、吐出流路25が第1経路部29aと第2経路部29cを有するのに対し、第2実施形態では、吸込流路21が第1経路部29aと第2経路部29cとを有する。すなわち、吸込流路21は、上流経路部29bと、上流経路部29bから二股に分かれた後、互いに合流する第1経路部29a及び第2経路部29cと、第1経路部29a及び第2経路部29cから合流した水素ガスが流れる下流経路部29dと、を有する。
【0057】
上流経路部29bは液体水素貯槽23に接続される。下流経路部29dは圧縮部12に接続されている。第1経路部29aはプレヒータ16を経由し、第2経路部29cはプレヒータ16を迂回している。
【0058】
スピルバック流路33aは、一端部が吐出流路25におけるクーラ14よりも下流側の部分に接続され、他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも下流側の部分に接続されている。すなわち、スピルバック流路33aの他端部は吸込流路21における下流経路部29dに接続されている。
【0059】
調整手段31は、第1経路部29aに設けられた開度調整が可能な第1弁31bと、第2経路部29cに設けられた開度調整が可能な第2弁31cとによって構成されている。この場合、吸込温度(温度T)が上限温度T2以上の場合の
図6のステップST12においては、第1弁31bが閉じられ、第2弁31cが全開される。これにより、液体水素貯槽23から圧縮部12に向かう水素ガスがプレヒータ16に流入することはなくなる。したがって、水素ガスが圧縮部12に流入する前にプレヒータ16で加熱されることはない。
【0060】
また、吸込温度(温度T)が目標温度T1以下の場合の
図6のステップST14においては、第2弁31cの開度が小さくなるように第2弁31cが制御されるとともに第1弁31bの開度が大きくなるように第1弁31bが制御される。これにより、プレヒータ16を通過するガス流量が増えるととともにプレヒータ16を迂回するガス流量が減る。また、吸込温度(温度T)が目標温度T1よりも高い場合のステップST15においては、第2弁31cの開度が大きくなるように第2弁31cが制御されるとともに第1弁31bの開度が小さくなるように第1弁31bが制御される。これにより、プレヒータ16を通過するガス流量が減るととともにプレヒータ16を迂回するガス流量が増える。すなわち、吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、水素ガスのプレヒータ16への流入が調整される。
【0061】
なお、
図8では、調整手段31が第1弁31bと第2弁31cとによって構成された例を示すが、調整手段31は、第1経路部29aと第2経路部29cとの分岐点上に設けられた三方弁によって構成されてもよい。また、調整手段31は、第1経路部29aに配置された弁と、第2経路部29cに配置された絞り部とによって構成されてもよい。
【0062】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0063】
(第3実施形態)
図9は本発明の第3実施形態を示す。尚、ここでは第1及び第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
第3実施形態では、クーラ14で冷却された後の水素ガスを圧縮する第2圧縮部42と、第2圧縮部42によって圧縮された水素ガスを冷却する第2クーラ44と、をさらに備えている。
【0065】
クーラ14、第2圧縮部42及び第2クーラ44は吐出流路25に設けられている。第2圧縮部42は、レシプロ式の圧縮機構によって構成されている。すなわち、第2圧縮部42は、圧縮部12と同様にシリンダ部と、ピストンと、ピストンロッドと、一対の吸込弁と、一対の吐出弁とを有している。なお、
図9では便宜上第2圧縮部42を1つの台形で示しているが、第2圧縮部42は必ずしも1段式である必要はなく、複数の圧縮段により構成されていてもよい。
【0066】
第2圧縮部42は圧縮部12と共通のクランク機構により駆動される。換言すれば、第2圧縮部42は圧縮部12と共に、単一の複数段式レシプロ圧縮機を構成する。なお、第2圧縮部42は圧縮部12とは独立したレシプロ圧縮機として構成されてもよい。
【0067】
クーラ14は、第2圧縮部42に吸入される水素ガスを冷却するインタークーラとして機能し、第2クーラ44は、第2圧縮部42から吐出された水素ガスを冷却するアフタークーラとして機能する。第2クーラ44もクーラ14と同様に、水冷式であってもよく、空冷式であってもよい。第2クーラ44によって冷却された水素ガスは需要先28に送られる。
【0068】
スピルバック部33は、第1スピルバック部45と第2スピルバック部46とを含む。なお、スピルバック部33は、第2スピルバック部46のみを含む構成であってもよい。つまり、中間段スピルバック部である第1スピルバック部45は省略可能である。
【0069】
第1スピルバック部45は、第1スピルバック流路45aと、第1スピルバック流路45aに配置された開度調整可能な弁からなる第1スピルバック弁45bと、を有する。第1スピルバック流路45aの一端部は、吐出流路25におけるクーラ14と第2圧縮部42との間の部分に接続され、他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも下流側の部分に接続されている。第1スピルバック流路45aにおける第1スピルバック弁45bよりも下流側の部位は、外気からの入熱を抑制するための断熱材48を備えている。ただし、この断熱材48は省略可能である。なお、第1スピルバック流路45aの他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも上流側の部分に接続されてもよい。
【0070】
第2スピルバック部46は、第2スピルバック流路46aと、第2スピルバック流路46aに配置された開度調整可能な弁からなる第2スピルバック弁46bと、を有する。第2スピルバック流路46aの一端部は、吐出流路25における第2クーラ44よりも下流側の部分に接続され、他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも下流側の部分に接続されている。第2スピルバック流路46aにおける第2スピルバック弁46bよりも下流側の部位は、外気からの入熱を抑制するための断熱材49を備えている。ただし、この断熱材49は省略可能である。なお、第2スピルバック流路46aの他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16よりも上流側の部分に接続されてもよい。
【0071】
吐出流路25には、第2クーラ44を通過した水素ガスの圧力を検出する第2圧力センサ51が設けられている。第2圧力センサ51は、吐出流路25における第2スピルバック流路46aの接続部よりも下流に位置している。
【0072】
スピルバック制御部39bは、圧力センサ36の検出圧力に基づいて第1スピルバック弁45bを制御するとともに、第2圧力センサ51の検出圧力に基づいて第2スピルバック弁46bを制御する。
【0073】
なお、
図9には、調整手段31が三方弁31aによって構成された例が示されているが、調整手段31は、
図5に示す場合と同様に、第1経路部29aに設けられた開度調整が可能な第1弁と、第2経路部29cに設けられた開度調整が可能な第2弁と、によって構成されてもよい。また、調整手段31は、
図7に示す場合と同様に、第1経路部29aに設けられた開度調整可能な弁と、第2経路部29cに設けられた絞り部と、によって構成されてもよい。
【0074】
図9では、吐出流路25が第1経路部29aと第2経路部29cを有する例が示されているが、これに代え、
図8に示す場合と同様に、吸込流路21が第1経路部29aと第2経路部29cとを有してもよい。
【0075】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0076】
(第4実施形態)
図10は本発明の第4実施形態を示す。尚、ここでは第1及び第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
第4実施形態では、圧縮部12で圧縮される前の水素ガスを圧縮する前段圧縮部55と、前段圧縮部55によって圧縮された水素ガスを冷却する中間段クーラ57と、中間段スピルバック部59と、をさらに備えている。
【0078】
前段圧縮部55及び中間段クーラ57は吸込流路21に設けられている。前段圧縮部55は、レシプロ式の圧縮機構によって構成されている。すなわち、前段圧縮部55は、圧縮部12と同様にシリンダ部と、ピストンと、ピストンロッドと、一対の吸込弁と、一対の吐出弁とを有している。なお、
図10では便宜上前段圧縮部55を1つの台形で示しているが、前段圧縮部55は必ずしも1段式である必要はなく、複数の圧縮段により構成されていてもよい。
【0079】
前段圧縮部55は圧縮部12と共通のクランク機構により駆動される。換言すれば、前段圧縮部55は圧縮部12と共に、単一の複数段式レシプロ圧縮機を構成する。なお、前段圧縮部55は圧縮部12とは独立したレシプロ圧縮機として構成されてもよい。
【0080】
吸込流路21における液体水素貯槽23から前段圧縮部55の部分には、外気からの入熱を抑制するための断熱材26が設けられている。
【0081】
中間段クーラ57は、圧縮部12に吸入される前の水素ガスを冷却するインタークーラとして機能し、クーラ14は、圧縮部12から吐出された水素ガスを冷却するアフタークーラとして機能する。中間段クーラ57もクーラ14と同様に、水冷式であってもよく、空冷式であってもよい。クーラ14によって冷却された水素ガスは需要先28に送られる。
【0082】
中間段スピルバック部59は、中間段スピルバック流路59aと、中間段スピルバック流路59aに配置された開度調整可能な弁からなる中間段スピルバック弁59bと、を有する。中間段スピルバック流路59aの一端部は、吸込流路21における中間段クーラ57と圧縮部12との間の部位に接続され、他端部は、吸込流路21におけるプレヒータ16と前段圧縮部55との間の部分に接続されている。中間段スピルバック流路59aにおける中間段スピルバック弁59bよりも下流側の部位は、外気からの入熱を抑制するための断熱材48を備えている。
【0083】
吸込流路21には、中間段クーラ57を通過した水素ガスの圧力を検出する中間段圧力センサ61が設けられている。中間段圧力センサ61は、吸込流路21における中間段スピルバック流路59aの接続部よりも下流に位置している。したがって、中間段圧力センサ61は、圧縮部12に吸入される水素ガスの圧力を検出できる。
【0084】
スピルバック制御部39bは、中間段圧力センサ61の検出圧力に基づいて中間段スピルバック弁59bを制御するとともに、圧力センサ36の検出圧力に基づいてスピルバック弁33bを制御する。
【0085】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第3実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0086】
(第5実施形態)
図11は本発明の第5実施形態を示す。尚、ここでは第1~第4実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
第1実施形態では、温度センサ37が吸込流路21に位置して吸込温度を直接検出する。これに対し、第5実施形態では、温度センサ37が吐出流路25に位置して吐出温度を検出するように構成されている。温度センサ37は、吐出流路25における上流経路部29bに配置されている。すなわち、温度センサ37は、吐出流路25においてプレヒータ16と圧縮部12との間に配置される。
【0088】
コントローラ39の機能には、温度センサ37によって取得された吐出温度に基づき、圧縮部12の吸込温度を推定する計算部39cが含まれる。計算部39cは、コントローラ39に記憶された、吐出温度と吸込温度とを関連付ける関係式、マップ等を用いて、吐出温度から吸込温度を導出するように構成されている。関係式は、例えば、圧縮部12において水素ガスが断熱圧縮されると仮定した関係式であって、吸込圧力、吸込温度、吐出圧力及び吐出温度の間の関係を規定した関係式であってもよい。マップは、予備的な試験によって得られたデータのマップであって、吸込温度と吐出温度とを関連付けるように構成されたマップであってもよい。
【0089】
図4に示すフローにおいて、ステップST13が実行される前に、計算部39cによって吐出温度に基づいて吸込温度が推定され、ステップST13においては、計算部39cによって推定された吸込温度が用いられる。これ以外の制御フローは、
図4のフローと同じである。
【0090】
したがって、本実施形態では、調整手段31によって、プレヒータ16を経由する水素ガスの流量を調整するとともに、プレヒータ16を経由しない水素ガスの流量をも調整する。さらに、圧縮部12に吸入される水素ガスの温度が所定温度範囲に収まるように調整手段31が制御される。したがって、圧縮部12の吸込温度を適切に管理することができる。加えて、クーラ14に流入する前の水素ガス(吐出ガス)の熱を利用することにより、吸込温度を適切に加温することができる。
【0091】
なお、
図11には、調整手段31が三方弁31aによって構成された例が示されているが、調整手段31は、
図5に示す場合と同様に、第1経路部29aに設けられた開度調整が可能な第1弁31bと、第2経路部29cに設けられた開度調整が可能な第2弁31cと、によって構成されてもよい。また、調整手段31は、
図7に示す場合と同様に、第1経路部29aに設けられた開度調整可能な弁31dと、第2経路部29cに設けられた絞り部31eと、によって構成されてもよい。
【0092】
図11では、吐出流路25が第1経路部29aと第2経路部29cを有する例が示されているが、これに代え、
図8に示す場合と同様に吸込流路21が第1経路部29aと第2経路部29cとを有してもよい。また、
図9に示す場合と同様に第2圧縮部及び第2クーラをさらに備えていてもよい。この場合、スピルバック部33は第1スピルバック部と第2スピルバック部とを有してもよい。また、
図10に示す構成と同様、前段圧縮部55と中間段クーラ57と中間段スピルバック部59とを備えた構成としてもよい。また、
図11の構成において、
図6に示す制御動作が行われてもよい。
【0093】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第4実施形態の説明を第5実施形態に援用することができる。
【0094】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0095】
図1に示す圧縮機ユニット10では、吸込流路21に設けられた圧力センサの検出値に基づきスピルバック弁33bが制御されてもよい。また、圧力センサ36及び吸込流路21に設けられた圧力センサの両方に基づいてスピルバック弁33bが制御されてもよい。さらに、圧力センサ36に代えて流量センサに基づきスピルバック弁33bが制御されてもよい。他の実施形態におけるスピルバック弁についても同様である。
【符号の説明】
【0096】
10 :圧縮機ユニット
12 :圧縮部
14 :クーラ
16 :プレヒータ
21 :吸込流路
23 :液体水素貯槽
25 :吐出流路
26 :断熱材
28 :需要先
29a :第1経路部
29c :第2経路部
31 :調整手段
31a :三方弁
31b :第1弁
31c :第2弁
31d :弁
31e :絞り部
33 :スピルバック部
33a :スピルバック流路
33b :スピルバック弁
37 :温度センサ
39a :制御部
39c :計算部