IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人名古屋大学の特許一覧

<>
  • 特開-シーリング材及び構造体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177469
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】シーリング材及び構造体
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20231207BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20231207BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09K3/10 G
E21D11/38 A
E04B1/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090158
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刈茅 孝一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 朱音
(72)【発明者】
【氏名】黒田 健夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英一
【テーマコード(参考)】
2D155
2E001
4H017
【Fターム(参考)】
2D155HA02
2E001DA01
2E001EA01
2E001GA08
2E001HD11
4H017AA04
4H017AA24
4H017AA25
4H017AB08
4H017AB15
4H017AC04
4H017AD02
4H017AE03
(57)【要約】
【課題】シーリングした箇所及びその周囲の防水性を高め、構造物を長期に安定した状態に保持することができるシーリング材を提供する。
【解決手段】本発明に係るシーリング材は、樹脂と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能であり、前記難水溶性塩の比重が2.0以上であり、20℃での前記難水溶性塩の水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、
前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能であり、
前記難水溶性塩の比重が2.0以上であり、
20℃での前記難水溶性塩の水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である、シーリング材。
【請求項2】
前記難水溶性塩が、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄である、請求項1に記載のシーリング材。
【請求項3】
前記イオン放出性化合物が、陽イオンを放出可能な化合物を含み、
前記陽イオンを放出可能な化合物が、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムである、請求項1又は2に記載のシーリング材。
【請求項4】
前記イオン放出性化合物が、陰イオンを放出可能な化合物を含み、
前記陰イオンを放出可能な化合物が、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムである、請求項1又は2に記載のシーリング材。
【請求項5】
前記樹脂が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のシーリング材。
【請求項6】
前記樹脂が、硬化性樹脂を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のシーリング材。
【請求項7】
シーリング対象部を有するシーリング対象物と、
前記シーリング対象部に配置されたシーリング物とを備え、
前記シーリング物が、請求項1~6のいずれか1項に記載のシーリング材により形成されている、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に用いることができるシーリング材に関する。また、本発明は、上記シーリング材を用いた構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物、トンネル、及び地下鉄等の構造物では、構造物における亀裂や部材間の接合部等の空隙(間隙)に、防水性を高める目的で、シーリング材が用いられることがある。上記シーリング材としては、例えば、シリコーン系シーリング材、ウレタン系シーリング材、及びアクリル系シーリング材等が挙げられる。
【0003】
下記の特許文献1には、ヒマシ油系ポリオールと、可塑剤と、アミン触媒と、整泡剤と、有機ポリイソシアネートとを含み、かつ、ポリオキシプロピレングリコールを含まない、シーリング用ポリウレタン樹脂組成物が開示されている。
【0004】
下記の特許文献2には、複数の遮水シートと、上記遮水シートの間に配置された修復シートとを備える複合シートが開示されている。該複合シートでは、上記修復シートは、バインダー樹脂と、吸水性ポリマーとを含み、上記バインダー樹脂100重量部に対して、上記吸水性ポリマーの含有量が特定の範囲内である。上記特許文献2には、上記遮水シートに孔が開き漏水した場合に、上記修復シートが該孔を塞いで修復する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2015/147125A1
【特許文献2】特開2005-066461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載されているような従来のシーリング材を用いて、構造物における空隙(間隙)にシーリングした場合には、シーリングしてからある程度の期間が経過するまでは、シーリングした箇所の漏水を防止する(防水性を高める)ことができる。
【0007】
しかしながら、従来のシーリング材では、樹脂成分が徐々に劣化して、シーリング材と構造物との界面において、界面剥離が生じることがある。また、季節変動や繰り返しの振動及び伸縮によっても、シーリング材と構造物との界面において、界面剥離が生じることがある。このため、従来のシーリング材では、シーリング後に、外部応力や環境条件の変化等により、シーリングした箇所の周囲の構造物又は地盤に新たな亀裂や微細な空隙が発生すると、漏水が発生し、補修が必要となる。
【0008】
従来、既設の構造物及び構造物の周囲を、長期間にわたり自己治癒的に修復又は強化する方法は知られていない。
【0009】
本発明の目的は、シーリングした箇所及びその周囲の防水性を高め、構造物を長期に安定した状態に保持することができるシーリング材を提供することである。また、本発明の目的は、上記シーリング材を用いた構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、樹脂と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含み、前記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能であり、前記難水溶性塩の比重が2.0以上であり、20℃での前記難水溶性塩の水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である、シーリング材が提供される。
【0011】
本発明に係るシーリング材のある特定の局面では、前記難水溶性塩が、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄である。
【0012】
本発明に係るシーリング材のある特定の局面では、前記イオン放出性化合物が、陽イオンを放出可能な化合物を含み、前記陽イオンを放出可能な化合物が、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムである。
【0013】
本発明に係るシーリング材のある特定の局面では、前記イオン放出性化合物が、陰イオンを放出可能な化合物を含み、前記陰イオンを放出可能な化合物が、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムである。
【0014】
本発明に係るシーリング材のある特定の局面では、前記樹脂が、熱可塑性樹脂を含む。
【0015】
本発明に係るシーリング材のある特定の局面では、前記樹脂が、硬化性樹脂を含む。
【0016】
本発明の広い局面によれば、シーリング対象部を有するシーリング対象物と、前記シーリング対象部に配置されたシーリング物とを備え、前記シーリング物が、上述したシーリング材により形成されている、構造体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るシーリング材は、樹脂と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物とを含む。本発明に係るシーリング材では、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係るシーリング材では、上記難水溶性塩の比重が2.0以上であり、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である。本発明に係るシーリング材では、上記の構成が備えられているので、シーリングした箇所及びその周囲の防水性を高め、構造物を長期に安定した状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るシーリング材を用いた、構造体の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0020】
(シーリング材)
本発明に係るシーリング材は、樹脂と、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(以下、「イオン放出性化合物」と記載することがある)とを含む。本発明に係るシーリング材では、上記イオン放出性化合物が、難水溶性塩を生成可能である。本発明に係るシーリング材では、上記難水溶性塩の比重が2.0以上であり、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である。本発明に係るシーリング材は、難水溶性塩生成用シーリング材である。
【0021】
本発明に係るシーリング材では、上記の構成が備えられているので、シーリングした箇所及びその周囲の防水性を高め、構造物を長期に安定した状態に保持することができる。より具体的には、シーリング対象物のシーリング対象部にシーリング材が配置された状態で、上記シーリング材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、難水溶性塩が生成され、コンクリーションが形成される。これにより、シーリングした箇所及びその周囲が緻密化され、漏水を効果的に防ぐ(防水性を高める)ことができ、構造物を長期に安定した状態に保持する(耐久性を高める)ことができる。本発明は、構造物の予防保全に寄与する。本発明は、新設の構造物及び既設の構造物の双方の予防保全に寄与する。
【0022】
本発明に係るシーリング材では、シーリングした箇所において、上記シーリング材が、地盤又は構造物に付着した水分等と接触した場合には、上記シーリング材中の上記イオン放出性化合物がイオンを放出することにより、水分等とシーリング材との接触面において、難水溶性塩を生成可能である。すなわち、本発明に係るシーリング材は、上記シーリング材の表面に、難水溶性塩の層を生成可能である。生成した難水溶性塩により、シーリングした箇所及びその周囲の強度はさらに高められる。なお、上記難水溶性塩は、通常、数カ月~数年をかけて生成すると考えられる。また、生成した難水溶性塩により、シーリング材と水分とのさらなる接触が効果的に抑えられ、シーリング材の劣化及び構造物の劣化を効果的に抑えることができる。なお、上記シーリング材中の樹脂が硬化性樹脂を含む場合には、生成した難水溶性塩により、上記硬化性樹脂の硬化反応後のシーリング材の劣化を効果的に抑えることができ、シーリング材の硬化物(シーリング物)の劣化を効果的に抑えることができる。また、上記シーリング材中の樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合には、生成した難水溶性塩により、成形後の上記シーリング材の劣化を効果的に抑えることができ、シーリング材の成形体(シーリング物)の劣化を効果的に抑えることができる。
【0023】
上記シーリング材では、上記難水溶性塩の比重が2.0以上である。外部応力に対する耐久性をより一層高める観点からは、上記難水溶性塩の比重は、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.5以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは3.5以下である。
【0024】
上記難水溶性塩の比重は、電子天秤精密比重計を用いて、液浸法により測定することができる。上記電子天秤精密比重計としては、アズワン社製「電子比重計EDM2103」等が挙げられる。
【0025】
上記シーリング材では、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である。シーリングした箇所及びその周囲の防水性をより一層高める観点からは、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度は、好ましくは8.0×10-4mol/L以下、より好ましくは5.0×10-4mol/L以下、さらに好ましくは2.0×10-4mol/L以下である。20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度の下限は、特に限定されない。20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度は、1.0×10-10mol/L以上であってもよく、1.0×10-9mol/L以上であってもよい。
【0026】
20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度は、以下の方法で測定することができる。純水100gに対して、難水溶性塩10gを添加して、20℃で10分間撹拌を行う。その後、溶液部分を蒸発皿に10g分取し、100℃で水分を完全に除去する。蒸発皿上に残った難水溶性塩の重量から、20℃での上記難水溶性塩の水に対する溶解度を算出する。
【0027】
上記シーリング材の23℃での粘度(η23)は、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは10000mPa・s以上であり、好ましくは2000000mPa・s以下、より好ましくは1000000mPa・s以下である。上記粘度(η23)が上記下限以上及び上記上限以下であると、シーリング材を容易に充填(注入)することができ、作業性を高めることができる。なお、上記粘度(η23)は、配合成分の種類及び配合量により適宜調整することができる。
【0028】
上記粘度(η23)は、例えば、B型粘度計(FUNGILAB社製「VISCOSTAR」)等を用いて、23℃及び20rpmの条件で測定することができる。
【0029】
また、本発明に係るシーリング材は、シーリングする箇所が乾燥状態であっても、湿潤状態であっても用いることができる。さらに、本発明に係るシーリング材は、シーリングする箇所から水が流出している場合であっても、用いることができる。このため、本発明に係るシーリング材は、様々な用途の構造物を保全することができる。
【0030】
上記構造物としては、特に限定されない。上記構造物としては、コンクリート構造物等が挙げられる。上記コンクリート構造物としては、建築物、地下トンネル、海底トンネル、山岳トンネル、及び配管等の外表面上に配置された絶縁体(グラウト部)等が挙げられる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記構造物は、コンクリート構造物であることが好ましい。上記構造物は、地下構造物であってもよい。
【0031】
本発明に係るシーリング材は、構造物における空隙(間隙)に好適に用いられる。本発明に係るシーリング材は、構造物におけるひび割れ又は亀裂に好適に用いられる。本発明に係るシーリング材は、構造物における部材間の接合部の間隙(目地)に好適に用いられる。また、本発明に係るシーリング材は、構造物と該構造物の背面の地盤との境界部に好適に用いられる。さらに、本発明に係るシーリング材は、シース材に好適に用いられる。具体的には、本発明に係るシーリング材は、アンカー、ケーブル、及び配管等の外表面上に配置された絶縁体(グラウト部)のシース材に好適に用いられる。本発明に係るシーリング材は、アンカー、ケーブル、及び配管等の外表面上に配置された絶縁体の外表面の保護に好適に用いられる。
【0032】
また、廃棄物の最終処分場では、コンクリート構造物と地盤との境界部に防水シートが設置されることがある。さらに、トンネルを開削する工法の一つであるNATM工法では、トンネル(覆工コンクリート)とトンネルの背面の地盤との境界部に防水シートが設置されることがある。本発明に係るシーリング材は、上記防水シートの材料に好適に用いられる。
【0033】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、上記シーリング材は、コンクリートを含むシーリング対象物用のシーリング材であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、上記シーリング材は、コンクリート構造物用のシーリング材であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点から、上記シーリング材は、コンクリートを含むシーリング対象物のシーリング対象部に配置されて用いられることが好ましい。上記シーリング材は、地盤及びコンクリートを含むシーリング対象物用のシーリング材であってもよい。上記シーリング材は、地盤及びコンクリートを含むシーリング対象物のシーリング対象部に配置されて用いられてもよい。
【0034】
以下、本発明に係るシーリング材に用いられる各成分の詳細などを説明する。
【0035】
<樹脂>
上記シーリング材は、樹脂を含む。
【0036】
上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、及び硬化性樹脂等が挙げられる。シーリング材を押出成形又は射出成形により容易に成形する観点からは、上記樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。シーリング材を注入又は塗工によりシーリング対象部に良好にシーリングする観点からは、上記樹脂は、硬化性樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0038】
上記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体(EPDM)、イソブチレン-イソプレン共重合体、ポリスチレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0039】
上記硬化性樹脂としては、変性シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレア樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、及びナフトキサジン樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記硬化性樹脂は、1液硬化型の硬化性樹脂であってもよく、2液硬化型の硬化性樹脂であってもよい。上記1液硬化型の硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、及び湿気硬化性樹脂等が挙げられる。上記2液硬化型の硬化性樹脂は、硬化剤と併用して用いられる。現場での作業性を高める観点からは、上記硬化性樹脂は、湿気硬化性樹脂を含むことが好ましく、湿気硬化性樹脂であることが好ましい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよく、硬化剤と併用されなくてもよい。
【0041】
弾性を高める観点からは、上記硬化性樹脂は、変性シリコーン樹脂を含むことが好ましく、変性シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0042】
現場での作業性を高める観点からは、上記変性シリコーン樹脂は、湿気硬化性変性シリコーン樹脂であることが好ましい。湿気硬化性変性シリコーン樹脂は、加水分解性ケイ素基を有する。上記加水分解性ケイ素基を有する変性シリコーン樹脂は、ポリエーテル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー又はアクリル系ポリマーを主鎖(加水分解性ケイ素基を除く部分)として有する。したがって、上記主鎖の材料となるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー又はアクリル系モノマー等が挙げられる。上記重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。上記重合体が共重合体である場合、用いられるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー成分、アクリル系モノマー、及びビニル系モノマー等が挙げられる。変性シリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記アルキレンオキサイド系モノマーとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイド等が挙げられる。硬化後の伸び及び粘性的な取扱性を良好にする観点から、上記アルキレンオキサイド系モノマーは、プロピレンオキサイドを重合することにより得られる、ポリプロピレンオキサイドであることが好ましい。
【0044】
上記オレフィン系モノマーとしては、イソブチレン等が挙げられる。
【0045】
上記アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシプロピルフタル酸等が挙げられる。なお、アクリル系ポリマーが、他のビニルモノマー成分が共重合されたものである場合、加水分解性ケイ素基を有するビニルモノマー成分を共重合することにより加水分解性ケイ素基を導入することができる。
【0046】
耐候性を高める観点からは、上記変性シリコーン樹脂における上記主鎖は、アクリル系モノマーに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0047】
耐候性を高める観点からは、上記変性シリコーン樹脂における上記主鎖100重量%中、アクリル系モノマーに由来する構造単位の含有率は、好ましくは5重量%以上、好ましくは20重量%以下である。
【0048】
上記加水分解性ケイ素基としては、特に限定されないが、ハロゲン化シリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基、及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0049】
上記加水分解性ケイ素基におけるケイ素原子に結合した加水分解性基の数は、好ましくは1以上であり、好ましくは3以下である。1個のケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、2種以上であってもよい。上記加水分解性基と非加水分解性基とが1個のケイ素原子に結合していてもよい。安定性に優れ、取扱いが容易であることから、上記加水分解性ケイ素基は、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0050】
上記硬化性樹脂が上記変性シリコーン樹脂を含む場合に、上記硬化性樹脂は、シラノール縮合触媒を含むことが好ましい。上記硬化性樹脂は、上記変性シリコーン樹脂と、シラノール縮合触媒とを含むことが好ましい。上記シラノール縮合触媒を用いることにより、変性シリコーン樹脂を短時間で硬化させることができる。上記シラノール縮合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記シラノール縮合触媒としては、モノアルキル錫エステル及びジアルキル錫エステル等の錫触媒、ポリ(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート樹脂、並びに有機チタネート等が挙げられる。
【0052】
上記モノアルキル錫エステルとしては、例えば、ブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)等が挙げられる。上記ジアルキル錫エステルとしては、例えば、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、オクタン酸第一錫等が挙げられる。
【0053】
上記有機チタネートとしては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシルチタネート)トリエタノールアミンチタネート等のチタンアルコキシド類、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、オクチレングリコレート等のチタンキレート類等が挙げられる。
【0054】
上記変性シリコーン樹脂100重量部に対して、上記シリコーン縮合触媒の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記シリコーン縮合触媒の含有量が上記下限以上であると、変性シリコーン樹脂を含む樹脂層の材料を短時間で硬化させることができ、樹脂層を短時間で良好に得ることができる。上記シリコーン縮合触媒の含有量が上記上限以下であると、樹脂層の接着強度を高めることができる。
【0055】
上記シリコーン樹脂としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0056】
上記シリコーン樹脂の硬化剤(架橋剤)としては、SiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、フェニルメチルハイドロジェンポリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、及び両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0057】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、及びこれらの水添化物等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のエステル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びこれらの水添化物等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等のトリスフェノール型の多官能エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂等の含窒素環型多官能エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂等の縮環型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;エーテルエステル型エポキシ樹脂;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式構造を有するエポキシ樹脂;ウレタン型エポキシ樹脂;ポリブタジエン及びアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム骨格を有するゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0058】
上記硬化性樹脂が上記エポキシ樹脂を含む場合に、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤(エポキシ硬化剤)を含むことが好ましい。すなわち、上記硬化性成分は、上記エポキシ樹脂と、エポキシ硬化剤とを含むことが好ましい。
【0059】
上記エポキシ樹脂の硬化剤(エポキシ硬化剤)としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、アミド化合物、及びシアノ化合物等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上記アミド化合物としては、ポリアミド等が挙げられる。上記シアノ化合物としては、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0060】
上記エポキシ樹脂は、活性アミンがブロックされており、水分などの所定の条件下で活性化するケチミンなどの潜在型硬化剤であってもよい。例えばケチミンは、水分がない状態では安定に存在するが、水分の存在によって一般に一級アミンとなり、エポキシ樹脂と反応する。具体的には、2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,10-ジフェニール-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、3,11-ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、3,11-ジエチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,20,22-テトラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン、及び2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエン等が挙げられる。
【0061】
上記エポキシ樹脂と上記エポキシ硬化剤とを反応させることにより、エポキシ樹脂の硬化物を得ることができる。
【0062】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ樹脂は、芳香族骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、又はビスフェノールF型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0063】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記エポキシ硬化剤は、アミン系硬化剤(アミン化合物)であることが好ましい。
【0064】
ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを硬化反応させることにより、ウレタン樹脂を得ることができる。上記ポリオール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン又はα-メチル-ε-カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0065】
上記イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。上記芳香族ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。上記脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0066】
本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮させる観点からは、上記ポリオール化合物の硬化剤(イソシアネート化合物)は、ジフェニルメタンジイソシアネート、又はトルエンジイソシアネートであることが好ましい。
【0067】
上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物との配合比は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との種類の組み合わせによって適宜変更可能である。上記ポリイソシアネート化合物の配合量は、上記ポリオール化合物の水酸基量と、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基量(NCO量)とが等量となる量であることが好ましい。
【0068】
上記フェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール、及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0069】
上記フェノール樹脂の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、及びパラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0070】
上記ビニルエステル樹脂としては、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応物等が挙げられる。上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、並びに1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族系グリシジルエーテル類等が挙げられる。上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。上記エポキシ樹脂と、上記アクリル酸及び上記メタクリル酸との反応物としては、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
上記ビニルエステル樹脂の硬化剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーベンゾエート、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0072】
上記硬化性樹脂が上記ビニルエステル樹脂を含む場合に、該硬化性成分は、ラジカル重合性不飽和単量体を含んでいてもよい。上記ラジカル重合性不飽和単量体としては、スチレンモノマー、スチレンのα-,o-,m-,p-アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド及び(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド等のビニル樹脂;シトラコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド等のモノマレイミド樹脂;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0073】
上記シーリング材100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0074】
上記シーリング材100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0075】
上記シーリング材100重量%中、上記硬化性樹脂の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記硬化性樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0076】
上記シーリング材100重量%中、上記湿気硬化性樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記湿気硬化性樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0077】
上記シーリング材100重量%中、上記変性シリコーン樹脂の含有量は、好ましくは35重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上であり、好ましくは97重量%以下、より好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下、特に好ましくは80重量%以下である。上記変性シリコーン樹脂の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。
【0078】
<イオン放出性化合物>
上記シーリング材は、陽イオン又は陰イオンを放出可能なイオン放出性化合物(イオン放出性化合物)を含む。上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩を生成可能である。
【0079】
上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物であってもよく、陰イオンを放出可能な化合物であってもよく、陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物であってもよく、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物であってもよい。上記イオン放出性化合物は、陽イオンを放出可能な化合物を含んでいてもよく、陰イオンを放出可能な化合物を含んでいてもよく、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物とを含んでいてもよい。上記イオン放出性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記イオン放出性化合物は、地盤又は構造物に付着した水分等との接触により、難水溶性塩を生成することが好ましい。上記シーリング材を配置した箇所に至った水又は湿気により、上記イオン放出性化合物より陽イオン又は陰イオンが放出されることが好ましい。具体的には、上記イオン放出性化合物が陽イオンを放出可能な化合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陽イオンと、水分等に溶解した陰イオンとが化学反応し、難水溶性塩が形成されることが好ましい。上記イオン放出性化合物が陰イオンを放出可能な化合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陰イオンと、水分等に溶解した陽イオンとが化学反応し、難水溶性塩が形成されることが好ましい。また、上記イオン放出性化合物が、陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物、又は陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物である場合には、上記イオン放出性化合物から放出された陽イオンと陰イオンとが、水分等を媒体に移動し、出会ったポイントで難水溶性塩が形成されることが好ましい。
【0081】
上記イオン放出性化合物は、無機塩であってもよく、イオン交換樹脂であってもよく、イオン錯体であってもよい。
【0082】
上記イオン放出性化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。上記イオン放出性化合物は、これらのイオン放出性化合物であることが好ましい。これらのイオン放出性化合物は、難水溶性塩をより一層効果的に生成可能である。
【0083】
上記陽イオンを放出可能な化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、及び炭酸水素カルシウム等が挙げられる。上記陽イオンを放出可能な化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0084】
上記陽イオンを放出可能な化合物は、ケイ酸カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、又は炭酸水素カルシウムであることが好ましい。上記陽イオンを放出可能な化合物が上記の好ましい化合物であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陽イオンを放出可能な化合物は、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、又は乳酸バリウムであることがより好ましく、乳酸カルシウムであることがさらに好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陽イオンを放出可能な化合物は、カルシウムイオンを放出可能な化合物であることが好ましく、有機酸カルシウム塩であることがより好ましい。上記有機酸カルシウム塩としては、酢酸カルシウム、及び乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0085】
上記陰イオンを放出可能な化合物としては、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カルシウム等が挙げられる。上記陰イオンを放出可能な化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、リン酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、又は炭酸水素カルシウムであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、リン酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであることがより好ましく、炭酸水素ナトリウムであることがさらに好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記陰イオンを放出可能な化合物は、炭酸水素イオン(重炭酸イオン)又は炭酸イオンを放出可能な化合物であることが好ましい。
【0087】
上記陽イオンと陰イオンとの双方を放出可能な化合物としては、炭酸水素カルシウム等が挙げられる。
【0088】
難水溶性塩をより一層を良好に生成する観点からは、上記シーリング材は、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物との混合物であることが好ましく、カルシウムイオンを放出可能な化合物と炭酸水素イオン又は炭酸イオンを放出可能な化合物との混合物であることがより好ましい。難水溶性塩をより一層を良好に生成する観点からは、上記シーリング材は、陽イオンを放出可能な化合物と陰イオンを放出可能な化合物とを含むことが好ましく、カルシウムイオンを放出可能な化合物と炭酸水素イオン又は炭酸イオンを放出可能な化合物とを含むことがより好ましい。
【0089】
上記難水溶性塩としては、以下の化合物等が挙げられる。炭酸カルシウム(比重:2.71、20℃での水に対する溶解度:1.5×10-4mol/L)。炭酸バリウム(比重:4.29、20℃での水に対する溶解度:1.25×10-4mol/L)。リン酸カルシウム(比重:3.14、20℃での水に対する溶解度:6.5×10-5mol/L)。水酸化鉄(比重:3.40、20℃での水に対する溶解度:5.0×10-6mol/L)。
【0090】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記難水溶性塩は、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩として、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、又は水酸化鉄を生成可能であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記難水溶性塩は、炭酸カルシウムであることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記イオン放出性化合物は、難水溶性塩として、炭酸カルシウムを生成可能であることが好ましい。
【0091】
上記イオン放出性化合物は、粒子状であってもよい。上記イオン放出性化合物は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状であってもよい。上記イオン放出性化合物は、球状であることが好ましい。
【0092】
上記イオン放出性化合物の粒子径は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。上記イオン放出性化合物の粒子径が上記下限以上であると、上記イオン放出性化合物が後述するコーティング剤により良好に被覆され、シーリング材中及びシーリング物中での上記イオン放出性化合物の分散性を高めることができる。また、上記イオン放出性化合物の粒子径が上記下限以上であると、シーリング材をシーリング対象部に充填する際の粘度を良好にし、シーリング材の配置性を高めることができる。上記イオン放出性化合物の粒子径が上記上限以下であると、シーリング材中及びシーリング物中での上記イオン放出性化合物の分散性を高めることができる。
【0093】
上記イオン放出性化合物の粒子径は、平均粒子径であることが好ましい。上記平均粒子径は、数平均粒子径を示す。上記イオン放出性化合物の平均粒子径は、任意のイオン放出性化合物50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0094】
上記シーリング材では、上記イオン放出性化合物の表面が、コーティング剤により被覆されていてもよい。上記イオン放出性化合物は、マイクロカプセルの内包物であってもよい。上記イオン放出性化合物が無機塩である場合に、上記シーリング材では、上記イオン放出性化合物の表面が、コーティング剤により被覆されていることが好ましい。上記イオン放出性化合物が無機塩である場合に、上記シーリング材は、上記イオン放出性化合物を内包物として含有するマイクロカプセルを含んでいることが好ましい。上記イオン放出性化合物の表面がコーティング剤により被覆されているか、又は、上記イオン放出性化合物がマイクロカプセルの内包物であると、上記イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量を制御することができる。
【0095】
上記コーティング剤により被覆されたイオン放出性化合物は、水又は湿気等の水分がシーリング材(又はシーリング物)と接触し、該水分が上記コーティング剤の内部に拡散浸入したときに、陽イオン又は陰イオンを放出可能であることが好ましい。上記コーティング剤により被覆されたイオン放出性化合物は、上記コーティング剤中の空隙より陽イオン又は陰イオンを放出可能であってもよい。上記コーティング剤により被覆されたイオン放出性化合物は、上記コーティング剤の内部に拡散し、陽イオン又は陰イオンを放出可能であってもよい。これらの場合には、イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0096】
上記マイクロカプセルは、上記イオン放出性化合物を放出可能であることが好ましい。上記マイクロカプセルは、水又は湿気等の水分と接触したときに、マイクロカプセルを構成する膜が崩壊することが好ましい。この場合には、イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御することができる。
【0097】
上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び上記イオン放出性化合物の表面を被覆するためのコーティング剤の材料は、上記イオン放出性化合物の種類により適宜選択することができる。上記マイクロカプセルを構成する膜の材料及び上記イオン放出性化合物の表面を被覆するためのコーティング剤の材料は、カップリング剤又は樹脂を含むことが好ましい。この場合には、シーリング材中及びシーリング物中での上記イオン放出性化合物の分散性を高め、陽イオン又は陰イオンを放出する時期及び量を良好に制御することができる。また、マイクロカプセルを構成する膜の厚みを均一にすることができ、上記イオン放出性化合物の表面をコーティング剤により均一に被覆することができる。
【0098】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤等が挙げられる。
【0099】
上記樹脂としては、水溶性樹脂、熱可塑性樹脂、及び硬化性樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記シーリング材に含まれる樹脂と、上記コーティング剤の材料に含まれる樹脂とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0100】
上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、及びメチルセルロース等が挙げられる。
【0101】
上記熱可塑性樹脂及び上記硬化性樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂等が挙げられる。
【0102】
イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記コーティング剤の材料に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことがより好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことがさらに好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることが特に好ましい。
【0103】
上記マイクロカプセルを構成する膜の厚み及び上記コーティング剤による被覆層の厚みは、特に限定されない。イオン放出性化合物から陽イオン又は陰イオンが放出される時期及び量をより一層良好に制御する観点からは、上記マイクロカプセルを構成する膜の厚み及び上記コーティング剤の被覆層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0104】
上記シーリング材100重量%中、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、上記シーリング材を用いてシーリングした後の構造物の外観を良好にし、シーリングした箇所及びその周囲の強度を高めることができる。
【0105】
上記樹脂100重量部に対して、上記イオン放出性化合物の含有量は、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、特に好ましくは20重量部以上であり、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、さらに好ましくは70重量部以下である。上記イオン放出性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物の含有量が上記上限以下であると、シーリング材をシーリング対象部に充填する際の粘度を良好にし、シーリング材の配置性を高めることができる。
【0106】
上記シーリング材100重量%中、上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が、上記下限以上及び上記上限以下であると、陽イオン又は陰イオンがより一層効果的に放出され、難水溶性塩が良好に生成される。結果として、シーリングした箇所及びその周囲がより一層緻密化され、構造物をより一層長期に安定した状態に保持することができる。上記イオン放出性化合物及び上記コーティング剤の合計の含有量が上記上限以下であると、シーリング材をシーリング対象部に充填する際の粘度を良好にし、シーリング材の配置性を高めることができる。
【0107】
<他の成分>
上記シーリング材は、必要に応じて、上記樹脂、上記イオン放出性化合物、及び上記コーティング剤以外の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、反応触媒、反応促進剤、架橋剤、吸水剤、整泡剤、酸化防止剤、及び着色剤等が挙げられる。
【0108】
(構造体及び構造体の製造方法)
本発明に係るシーリング材を用いて、構造体を得ることができる。上記構造体は、シーリング対象部を有するシーリング対象物と、上記シーリング対象部に配置されたシーリング物とを備えることが好ましい。上記シーリング物は、上記シーリング材により形成されていることが好ましい。上記シーリング物は、上記シーリング材中の樹脂(硬化性樹脂)が硬化されて形成されていてもよい。上記シーリング物は、上記シーリング材の硬化物であってもよい。上記シーリング物は、上記シーリング材が押出成形又は射出成形されて形成されていてもよい。上記シーリング物は、上記シーリング材の成形体であってもよい。
【0109】
上記シーリング物中(上記シーリング材の硬化物中又は上記シーリング材の成形体中)の上記イオン放出性化合物は、上記樹脂中又は上記硬化性樹脂の硬化物中に分散していることが好ましい。
【0110】
上記シーリング物は、防水シートであってもよく、防水部材であってもよい。上記シーリング物の形状は、シート状であってもよい。上記シーリング物の形状がシート状である場合に、上記シーリング物の厚みは、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。上記シーリング物の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、シーリングした箇所及びその周囲の防水性を高めることができる。
【0111】
上記構造体の製造方法は、(1A)シーリング対象物のシーリング対象部に、上記シーリング材を配置する配置工程と、(2A)上記シーリング材中の上記樹脂を硬化させる硬化工程とを備えることが好ましい。また、上記構造体の製造方法は、(1B)上記シーリング材を押出成形又は射出成形してシーリング物を形成する成形工程と、(2B)シーリング対象物のシーリング対象部に、上記シーリング物を配置する配置工程とを備えていてもよい。
【0112】
上記構造体の製造方法では、上記シーリング対象部に配置されたシーリング物を備える構造体が得られる。上記構造体では、シーリングした箇所及びその周囲を緻密化することができ、長期に安定した状態に保持することができる。
【0113】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記シーリング対象物は、コンクリートを含むことが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記シーリング対象物は、コンクリート構造物であることが好ましい。上記シーリング対象物は、地盤を含んでいてもよい。上記シーリング対象部は、空隙であってもよく、上記シーリング対象物の外表面であってもよい。上記シーリング対象部は、上記コンクリート構造物の空隙又は上記コンクリート構造物の外表面であることが好ましい。上記コンクリート構造物の空隙は、上記コンクリート構造物における亀裂であってもよく、上記コンクリート構造物における部材間の接合部の間隙であってもよく、上記コンクリート構造物と地盤との境界部であってもよい。上記コンクリート構造物の外表面としては、配管等の外表面上に配置された絶縁体(グラウト部)の外表面等が挙げられる。
【0114】
上記シーリング材は、シーリング対象部に充填して用いられてもよい。シーリング対象部に上記シーリング材を充填する方法は、特に限定されない。シーリング対象部に上記シーリング材を充填する方法としては、構造物に構造物の前面から背面まで貫通する注入口を形成し、該注入口よりシーリング対象部にシーリング材を注入する方法等が挙げられる。上記シーリング材の注入量は、充填する箇所(シーリング対象部)のサイズ等に応じて適宜変更可能である。上記シーリング材は、裏込め工法により充填されてもよい。
【0115】
上記シーリング材を充填(注入)する際の圧力は、シーリング材の粘度、充填する箇所(シーリング対象部)のサイズ等に応じて、適宜変更可能である。上記シーリング材は、高圧で充填(注入)されてもよく、低圧で充填(注入)されてもよい。高圧で充填する場合の圧力は、0.5MPa以上24MPa以下であることが好ましい。低圧で充填する場合の圧力は、0.01MPa以上0.5MPa以下であることが好ましい。シーリング対象部の細部へのシーリング材の注入性を高める観点からは、上記シーリング材を注入する際の圧力は、0.1MPa以上4MPa以下であることが好ましい。
【0116】
図1は、本発明の一実施形態に係るシーリング材を用いた、構造体の製造方法の一例を説明するための模式図である。
【0117】
構造物100は、コンクリート構造物である。構造物100と、地盤102との間には、シーリング対象部(空隙)103が生じている。
【0118】
シーリング材の供給装置5は、注入ガン51とタンク52とを備える。タンク52には、上記シーリング材が充填されている。
【0119】
まず、構造物100の前面から背面に向かって、所定の角度で穿孔し、注入口101を形成する。次いで、注入プラグ1と、注入ガン51とを接続する。その後、コンプレッサーを用いて、シーリング材を注入口101よりシーリング対象部103に充填(注入)する(配置工程)。上記配置工程の前に、上記シーリング材が構造物の前面より流出することを防ぐために、構造物の前面側に、注入プラグの周囲を覆うように注入プレートを設置してもよい。
【0120】
次に、上記シーリング材中の樹脂が硬化性樹脂を含む場合には、上記シーリング材中の上記硬化性樹脂を硬化させる(硬化工程)。このようにして、構造体を得ることができる。上記構造体は、上記シーリング対象部に充填された充填物として、上記シーリング材の硬化物を備える。上記構造体では、上記シーリング材の硬化物が形成されている。
【0121】
上記シーリング材の硬化物は、上記樹脂(硬化性樹脂)の硬化物と、上記イオン放出性化合物とを含むことが好ましい。上記シーリング材の硬化物中の上記イオン放出性化合物は、陽イオン又は陰イオンを放出可能な化合物である。上記シーリング材の硬化物中の上記イオン放出性化合物は、上記シーリング材の硬化物の内部又は表面に、難水溶性塩を生成可能である。上記シーリング材の硬化物中の上記イオン放出性化合物は、上記樹脂(硬化性樹脂)の硬化物中に分散していることが好ましい。
【0122】
上記構造体では、シーリングした箇所及びその周囲を緻密化することができ、長期に安定した状態に保持することができる。
【0123】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0124】
以下の材料を用意した。
【0125】
(樹脂)
硬化性樹脂A(湿気硬化型変性シリコーン樹脂、積水化学工業社製「インフラガード430S」)
硬化性樹脂B(2液硬化型の変性シリコーン樹脂、旭化成社製「ワッカーシリコン」、主剤(M4470)96重量%:硬化剤(CATALYST T40)4重量%)
熱可塑性樹脂C(エチレン-酢酸ビニル共重合体、東ソー社製「EVAウルトラセン#636」)
【0126】
(イオン放出性化合物)
陽イオンを放出可能な化合物:
乳酸カルシウム(ナカライテスク社製、平均粒子径50μm)
乳酸バリウム(富士フイルム和光純薬社製、粉末)
陰イオンを放出可能な化合物:
炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径107μm)
炭酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、平均粒子径100μm)
リン酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、粉末)
ケイ酸ナトリウム(ナカライタスク社製「オルトケイ酸ナトリウム(NaSiO)」)
【0127】
(実施例1)
シーリング材の作製:
硬化性樹脂A100重量部と、乳酸カルシウム25重量部と、炭酸水素ナトリウム25重量部とを混合して、シーリング材を得た。
【0128】
試験体の作製:
コンクリート板(幅150mm×奥行300mm×厚み40mm)を2枚用意し、各コンクリート板の側面(奥行300mm×厚み40mmの面)にグラインダーで切削して亀裂をつけ、亀裂のある面同士が接するように並べた。2枚のコンクリート板の接合部の境界をシーリング対象部として、得られたシーリング材を幅40mm、厚み2mmで塗布して、コンクリート板上にシーリング材が配置された試験体を得た。
【0129】
(実施例2)
硬化性樹脂A100重量部と、炭酸水素ナトリウム30重量部とを混合して、シーリング材を得た。得られたシーリング材を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、試験体を得た。
【0130】
(実施例3)
シーリング材の作製:
硬化性樹脂Bの主剤96重量部と、乳酸カルシウム35重量部と、炭酸水素ナトリウム35重量部とを混合した後、硬化性樹脂Bの硬化剤4重量部をさらに混合して、シーリング材を得た。
【0131】
試験体の作製:
開口部を一つ有するパイプ(PVC製、直径50mm×長さ200mm)を用意し、パイプの内面に離形剤を塗布した。得られたシーリング材を、パイプの内部に注入し、24時間後に、パイプから取り出して、直径50mm×長さ200mmのシーリング材の硬化物(シーリング物)を得た。次に、コンクリートブロック(幅200mm×奥行200mm×高さ150mm)を用意し、コンクリートブロックの上面の中央から下面の中央に向かって、直径50mmの貫通穴を開けた。次いで、コンクリートブロックの貫通孔に、得られたシーリング材の硬化物を挿入し、コンクリートブロックの上面及び下面からシーリング材の硬化物の両端がはみ出した試験体を得た。
【0132】
(実施例4)
硬化性樹脂Bの主剤96重量部と、乳酸バリウム25重量部と、炭酸ナトリウム25重量部とを混合した後、硬化性樹脂Bの硬化剤4重量部をさらに混合して、シーリング材を得た。得られたシーリング材を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、試験体を得た。
【0133】
(実施例5)
硬化性樹脂Bの主剤96重量部と、乳酸カルシウム25重量部と、リン酸水素ナトリウム25重量部とを混合した後、硬化性樹脂Bの硬化剤4重量部をさらに混合して、シーリング材を得た。得られたシーリング材を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、試験体を得た。
【0134】
(実施例6)
シーリング材の作製:
熱可塑性樹脂C100重量部と、乳酸カルシウム25重量部と、炭酸水素ナトリウム25重量部とを、2軸混錬押出機で溶融混合して、シーリング材(ペレット)を得た。
【0135】
試験体の作製:
得られたシーリング材(ペレット)を、195℃で2軸混錬押出機を用いてTダイより押出成形し、防水シート(シーリング物、幅400mm×厚み1mm)を得た。コンクリート型枠(幅400mm×奥行400mm×厚み400mm)の内部に砂岩ブロック(幅400mm×奥行400mm×厚み150mm)を配置し、砂岩ブロックの上面に、得られた防水シートを配置した。さらに、防水シートの砂岩ブロック側とは反対の表面上に、コンクリートを流し込み、2か月養生してコンクリート型枠から外し、砂岩ブロック層と、防水シートと、コンクリート層とを有する試験体を得た。
【0136】
(比較例1)
イオン放出性化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、シーリング材及び試験体を得た。
【0137】
(比較例2)
イオン放出性化合物を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして、シーリング材及び試験体を得た。
【0138】
(比較例3)
硬化性樹脂Bの主剤96重量部と、乳酸カルシウム35重量部と、ケイ酸ナトリウム35重量部とを混合した後、硬化性樹脂Bの硬化剤4重量部をさらに混合して、シーリング材を得た。得られたシーリング材を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、試験体を得た。
【0139】
(比較例4)
イオン放出性化合物を用いなかったこと以外は、実施例6と同様にして、シーリング材(ペレット)及び試験体を得た。
【0140】
(評価)
(1)防水性及び耐久性
実施例1、実施例2及び比較例1で得られた試験体を、30mmの高さまで水を張った水槽に、シーリングした箇所が上面になるように2か月浸漬して、硬化性樹脂Aを硬化させた。その後、各試験体からシーリング材の硬化物を剥離し、2枚のコンクリート板の境界部に粒子が析出しているか否かを目視で詳細に観察した。また、実施例3~5及び比較例2、3で得られた試験体を、50mmの高さまで水を張った水槽に、貫通孔の向きが水面と平行になるように2か月浸漬した。コンクリートブロックからシーリング材の硬化物を除去し、コンクリートブロックとシーリング材の硬化物との境界部(貫通孔の表面)及びシーリング材の硬化物の両端に粒子が析出しているか否かを目視で詳細に観察した。さらに、実施例6及び比較例4で得られた試験体を、100mmの高さまで水を張った水槽に、コンクリート層側が上面になるように2か月浸漬して、砂岩ブロック層の内部の空隙及びコンクリート層の表面に粒子が析出しているか否かを目視で詳細に観察した。なお、砂岩ブロック層の内部の空隙は、試験体を奥行方向と平行に切断し、断面を顕微鏡により観察した。
【0141】
粒子が析出している試験体については、該粒子の比重及び20℃での水に対する溶解度を、上述した方法で測定した。防水性及び耐久性を、比重が2.0以上であり、かつ、20℃での水に対する溶解度が1.0×10-3mol/L以下である難水溶性塩(難水溶性塩X)の生成の有無で判定した。
【0142】
[防水性及び耐久性の判定基準]
○:難水溶性塩Xが生成している
×:難水溶性塩Xが生成していない
【0143】
実施例1~3及び実施例6では、難水溶性塩Xとして、炭酸カルシウム(比重:2.71、20℃での水に対する溶解度:1.5×10-4mol/L)が生成していた。実施例4では、難水溶性塩Xとして、炭酸バリウム(比重:4.29、20℃での水に対する溶解度:1.25×10-4mol/L)が生成していた。実施例5では、難水溶性塩Xとして、リン酸カルシウム(比重:3.14、20℃での水に対する溶解度:6.5×10-5mol/L)が生成していた。
【0144】
なお、比較例3では、難水溶性塩として、ケイ酸カルシウム(比重:0.29、20℃での水に対する溶解度:5.8×10-4mol/L)が生成していたが、ケイ酸カルシウムは結晶構造が脆いため、貫通孔の周囲及びシーリング材の硬化物の周囲を緻密化することができず、ひび割れが生じていた。結果として、比較例3では、シーリングした箇所及びその周囲の防水性及び耐久性を十分に高めることができなかった。
【0145】
シーリング材の構成及び結果を下記の表1~2に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【符号の説明】
【0148】
1…注入プラグ
5…供給装置
51…注入ガン
52…タンク
100…構造物
101…注入口
102…地盤
103…シーリング対象部(空隙)
図1