(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177474
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】電力管理システム及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20231207BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231207BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090167
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 尚起
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB21
5G064DA03
5G066AA02
5G066KD01
5G066LA03
(57)【要約】
【課題】電力の需要調整を適切に行う電力管理システム等を提供する。
【解決手段】電力管理システム100は、所定地域で電力の需要調整を行う際、需要調整の対象となる需要家を選択する制御部を備え、制御部は、電力の調整力が所定値以上である大規模需要家30を優先的に需要調整の対象とする。制御部は、大規模需要家30における消費電力の予測値及び電力の調整力に基づいて、需要調整の対象となる大規模需要家30を選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定地域で電力の需要調整を行う際、需要調整の対象となる需要家を選択する制御部を備え、
前記制御部は、電力の調整力が所定値以上である大規模需要家を優先的に需要調整の対象とする電力管理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記大規模需要家における消費電力の予測値及び電力の調整力に基づいて、需要調整の対象となる前記大規模需要家を選択すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定地域で電力の需要調整を行う際に要する調整力の総量を複数の前記大規模需要家に分配し、
前記大規模需要家の調整力が大きいほど、前記調整力の総量から当該大規模需要家に分配される調整力の比率を高くすること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項4】
需要調整の対象となる前記大規模需要家の複数の機器のうち、需要調整の期間の少なくとも一部で停止又は出力抑制を行う機器を、当該機器の種類に基づいて選択する需要調整部を備えること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記需要調整部は、前記大規模需要家において需要調整の期間の少なくとも一部で停止させる機器を選択する際、台数制御が可能であるものから優先的に選択すること
を特徴とする請求項4に記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記需要調整部は、前記大規模需要家において需要調整の期間の少なくとも一部で停止又は出力抑制を行う機器を選択する際、当該機器の停止又は出力抑制を行った場合における前記大規模需要家の空調室の室内快適度が所定値以上となるように前記機器を選択すること
を特徴とする請求項4に記載の電力管理システム。
【請求項7】
前記需要調整部の処理の結果に基づいて、需要調整の対象となる前記大規模需要家の複数の前記機器の運転計画を作成する運転計画作成部と、
前記需要調整部によって選択された前記機器の停止又は出力抑制を、前記運転計画に基づく所定の時間帯に行う機器制御部と、を備えること
を特徴とする請求項4に記載の電力管理システム。
【請求項8】
所定の大規模需要家で需要調整が行われている場合において、当該大規模需要家でデスクワークが行われる部屋で離席した人の人数、又は前記部屋で移動している人の人数が、需要調整の開始時から所定値以上増加した場合、前記機器制御部は、当該大規模需要家における需要調整を緩和又は中断し、前記機器に含まれる空調機の稼働台数を増加させること
を特徴とする請求項7に記載の電力管理システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記所定地域に供給される再生可能エネルギの発電電力に不足分が生じることが予測される場合、需要調整で当該不足分の発電電力の節電を行う需要家として、前記大規模需要家を優先的に選択すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記所定地域に供給される再生可能エネルギの発電電力に余剰分が生じることが予測される場合、需要調整で当該余剰分の発電電力を消費する需要家として、前記大規模需要家を優先的に選択すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項11】
前記所定地域に存在する複数の前記大規模需要家のそれぞれに設けられる需要側管理装置を備えるとともに、
前記制御部を有し、それぞれの前記需要側管理装置との間で通信を行う電力管理装置を備え、
前記電力管理装置は、前記所定地域で電力の需要調整を行う際、当該所定地域に要する調整力の総量を複数の前記大規模需要家に分配し、当該大規模需要家の前記電力管理装置に分配後の調整力の値を含むデータを送信し、
前記需要側管理装置は、分配後の調整力の値に基づいて、当該大規模需要家に設けられる複数の機器の運転計画を作成すること
を特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項12】
所定地域で電力の需要調整を行う際、需要調整の対象となる需要家を選択する場合において、電力の調整力が所定値以上である大規模需要家を優先的に需要調整の対象とする需要家選択処理を含む電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要調整に関する技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。すなわち、特許文献1には、「理想的なエネルギー需要の各時刻の値を、前記需要家に対して予測したエネルギー需要の各時刻の値、又は前記需要家のエネルギー需要の実績に応じて比例按分して、前記需要家について目標となるエネルギー需要の各時刻の値として提示する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、プラント(電力の供給側)の最適運転となるようにエネルギ需要が調整されるが、需要家側のエネルギ(電力)の調整力を高めるという点では改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、電力の需要調整を適切に行う電力管理システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る電力管理システムは、所定地域で電力の需要調整を行う際、需要調整の対象となる需要家を選択する制御部を備え、前記制御部は、電力の調整力が所定値以上である大規模需要家を優先的に需要調整の対象とすることとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力の需要調整を適切に行う電力管理システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電力管理システムを含む説明図である。
【
図2】実施形態に係る電力管理システムが備える電力管理装置のハードウェア構成を含むブロック図である。
【
図3】実施形態に係る電力管理システムが備える電力管理装置の機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る電力管理システムにおける需要家・機器情報の説明図である。
【
図5】実施形態に係る電力管理システムにおける機器稼働情報の説明図である。
【
図6】実施形態に係る電力管理システムにおける稼働スケジュール情報の説明図である。
【
図7】実施形態に係る電力管理システムにおける運転計画情報の説明図である。
【
図8】実施形態に係る電力管理システムにおける需要側管理装置の機能ブロック図である。
【
図9】実施形態に係る電力管理システムにおける室内快適度に関する説明図である。
【
図10】実施形態に係る電力管理システムにおける電力の調整力に関する説明図である。
【
図11】実施形態に係る電力管理システムの電力管理装置が行う処理のフローチャートである。
【
図12】実施形態に係る電力管理システムの需要側管理装置が行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
<電力管理システムの構成>
図1は、実施形態に係る電力管理システム100を含む説明図である。
電力管理システム100は、電力の需給バランスの調整を管理するシステムである。以下では、電力管理システム100の説明に先立って、まず、需要側に電力を供給する電力供給システム200について簡単に説明する。
【0010】
図1の例では、電力供給システム200は、太陽光発電所21や風力発電所22といった再生可能エネルギの発電設備や、他の発電設備23(火力発電所や原子力発電所)の他、配電設備24を含んで構成されている。また、電力供給システム200は、前記した構成の他に、複数の大規模需要家30と、複数の小規模需要家40と、電力事業者端末50と、を含んで構成されている。
【0011】
なお、再生可能エネルギの発電設備の例として、
図1には太陽光発電所21や風力発電所22を示しているが、これに限定されるものではない。すなわち、再生可能エネルギの発電設備として、例えば、バイオマス発電や地熱発電、潮流発電、温度差発電といった発電設備が設けられてもよい。また、
図1の例では、3つの大規模需要家30と、2つの小規模需要家40と、を示しているが、実際には、大規模需要家30や小規模需要家40のそれぞれが所定地域に多数存在している。
【0012】
太陽光発電所21や風力発電所22の他、発電設備23や配電設備24、複数の大規模需要家30、複数の小規模需要家40は、送電線L1を介して所定に接続されている。そして、太陽光発電所21、風力発電所22、及び発電設備23の発電電力が、配電設備24や送電線L1を介して、大規模需要家30や小規模需要家40に所定に供給されるようになっている。
図1に示す電力事業者端末50は、発電設備23等を運用する電力事業者のコンピュータである。電力事業者端末50は、太陽光発電所21や風力発電所22、発電設備23、配電設備24との間で通信線(
図1の破線)を介して接続されている。
【0013】
図1に示す電力管理システム100は、電力管理装置10と、複数の需要側管理装置31と、を含んで構成されている。電力管理装置10は、電力の需給バランスを管理し、必要に応じて、電力の需要調整に関する所定の信号を複数の需要側管理装置31に送信する。このような電力管理装置10を運用する主体として、例えば、地方自治体や発電事業者、開発事業者(ディベロッパー)が挙げられる。
【0014】
図1に示すように、電力管理装置10は、それぞれの需要側管理装置31に通信線(
図1の破線)を介して接続されるとともに、電力事業者端末50にも通信線を介して接続されている。なお、電力の「需要調整」とは、所定地域の各需要家に供給可能な電力の総量の不足又は過剰が予測された場合、電力の需供バランスが崩れないように、需要側で使用する電力を減少又は増加させることである。
【0015】
例えば、夏季の暑い日や冬季の寒い日には、空調等に使用される時々刻々の電力が大きくなりやすい。一方、太陽光発電所21や風力発電所22といった再生可能エネルギの発電電力は、天候や風速といった自然条件で変動する。仮に、所定地域で使用される電力が、供給可能な電力を超えることが予測される場合には、電力の需給バランスが崩れないように、需要側で使用する電力を通常時よりも抑えることが望ましい。また、所定地域への供給電力が需要電力を上回ることが予測される場合には、電力の需給バランスが崩れないように、需要側の電力の消費や蓄電を促進することが望ましい。
【0016】
そこで、本実施形態では、電力の需要調整を要する場合、電力管理装置10が、需要調整の対象として大規模需要家30を優先的に選択するようにしている。大規模需要家30は、小規模需要家40に比べて、まとまった量の調整力を継続的に供給できることが多いからである。つまり、多数の小規模需要家40が個別に需要調整を行う場合よりも、主に大規模需要家30が需要調整を行うことで、運転計画に基づく所定のタイミングに合わせて、大きな調整力を発揮できる。なお、電力の「調整力」とは、電力系統の安定化を図る際に電力需要の大きさを調整する能力である。
【0017】
また、大規模需要家30とは、電力の調整力(例えば、過去の所定期間における調整力の平均値)が所定値以上の需要家である。このような大規模需要家30として、デパートや百貨店、スーパーといった商業施設の他、ホテル、市役所、区役所、学校、スポーツ施設、工場等が挙げられる。他方の小規模需要家40とは、大規模需要家30に該当しない需要家である。
【0018】
図1に示す需要側管理装置31は、電力管理装置10から受信するデータに基づいて、大規模需要家30に設けられている機器(電力を消費する機器)を制御する。
図1に示すように、需要側管理装置31は、所定地域に存在する複数の大規模需要家30や複数の小規模需要家40のそれぞれに設けられ、通信線(
図1の破線)を介して、電力管理装置10に接続されている。なお、所定地域に存在する大規模需要家30及び小規模需要家40の全てに需要側管理装置31が設けられている必要は特になく、一部の大規模需要家30等に設けられてもよい。
【0019】
図2は、電力管理装置10のハードウェア構成を含むブロック図である。
なお、
図2では、小規模需要家40(
図1参照)に設けられる需要側管理装置31の図示を省略している。
図2に示すように、電力管理装置10は、ハードウェア構成として、記憶部11と、メモリ12と、プロセッサ13と、入力部14と、出力部15と、通信部16と、を備えている。記憶部11には、OS(Operating System)や所定のプログラムが予め格納されている。このような記憶部11として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリが用いられる。
【0020】
メモリ12には、所定のプログラムやデータが格納される。このようなメモリ12は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリと、を含んで構成されている。プロセッサ13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、メモリ12に格納されたプログラムを読み出して、所定の処理を実行する。
【0021】
入力部14は、例えば、ユーザによって操作されるキーボードやマウス、所定のボタン、ポインティングディバイスである。出力部15は、例えば、ディスプレイやスピーカである。なお、タッチパネルのように、表示等を行う出力部15がデータ入力の機能を兼ね備えるようにしてもよい。通信部16は、需要側管理装置31との間で有線又は無線のネットワークN1を介して、所定に通信を行う。このような通信部16として、例えば、LAN(Local Area Network)アダプタが用いられる。
なお、電力管理装置10は、一つのコンピュータで構成されていてもよいが、信号線やネットワークを介して、複数のコンピュータ(図示せず)が所定に接続された構成であってもよい。
【0022】
図2に示すように、それぞれの大規模需要家30に設けられた需要側管理装置31は、ネットワークN1を介して、電力管理装置10に接続されている。なお、需要側管理装置31のハードウェア構成は、電力管理装置10のハードウェア構成と同様であるから、その説明を省略する。
【0023】
図2に示すスマートメータ61は、大規模需要家30の時々刻々の消費電力(需要電力)を検出するものである。なお、一つの大規模需要家30に複数のスマートメータ61が設置されていてもよい。また、
図2には図示していないが、小規模需要家40(
図1参照)にもスマートメータ61が設置されている。
【0024】
図2に示す温熱感検出器62は、大規模需要家30の部屋の温度・湿度の検出値に基づいて、人の感じる暑さ・寒さの度合いを示す温熱感の値を検出する。このような温熱感検出器62は、例えば、大規模需要家30において空調機(図示せず)が設置されている一つ又は複数の空調室(図示せず)に設けられている。
【0025】
なお、大規模需要家30に設けられるセンサ類は、スマートメータ61や温熱感検出器62に限定されるものではない。例えば、大規模需要家30(デパートやホテルや公共施設等)における人の混雑度を検出するセンサが設けられてもよい。また、大規模需要家30の躯体(コンクリート等の骨組み)の蓄熱量を検出するセンサが設けられるようにしてもよい。スマートメータ61や温熱感検出器62を含むセンサ類の検出値は、需要側管理装置31に出力される。また、少なくともスマートメータ61の検出値は、需要側管理装置31及びネットワークN1を順次に介して、電力管理装置10に送信される。
【0026】
その他、電力管理装置10が、ネットワークN1を介して所定の外部データを取得するようにしてもよい。このような外部データとして、例えば、天気予報を含む気象情報の他、所定地域の電力需要に関する統計データが挙げられる。また、外部データとして、所定地域の地図データや交通量を示すデータの他、道路交通センサス(全国道路・街路交通情勢調査)の調査結果のデータが含まれていてもよい。その他にも、所定地域の住民の位置情報に基づく人流データや、SNS(Social Networking Service)でやり取りされた所定地域に関するデータが外部データに含まれていてもよい。なお、以下の説明では、大規模需要家30の符号を適宜に省略することがあるものとする。
【0027】
図3は、電力管理システムが備える電力管理装置10の機能ブロック図である。
図3に示すように、電力管理装置10は、その機能的な構成として、記憶部17と、制御部18と、通信インタフェース19と、を備えている。記憶部17には、需要家・機器情報17aと、機器稼働情報17bと、稼働スケジュール情報17cと、運転計画情報17dと、が格納されている。制御部18は、データ取得部18aと、需要家選択部18bと、を備えている。
【0028】
図4は、電力管理システムにおける需要家・機器情報17aの説明図である。
図4に示す需要家・機器情報17a(
図3も参照)は、所定地域の需要家や、その需要家に設けられた機器に関する情報である。
図4に示す「需要家ID」は、所定地域のそれぞれの需要家に割り振られる識別情報である。また、「需要家の規模」は、その需要家が大規模需要家であるか、それとも小規模需要家であるかを示すデータである。
【0029】
図4に示す「機器ID」は、需要家に設けられた機器に割り振られる識別情報である。また、「機器の種類」は、需要家に設けられた機器の種類である。
図4の例では、機器が「空調機」、「給湯機」、及び「その他」(照明やコンピュータ等)の3つに分類されている。
図4に示す「定格電力」は、需要家に設けられる機器の定格電力の値である。このような需要家・機器情報17aは、例えば、需要家の需要側管理装置31(
図1参照)から電力管理装置10(
図1参照)に提供され、記憶部17(
図3参照)に予め格納されている。
【0030】
図5は、電力管理システムにおける機器稼働情報17bの説明図である。
図5に示す機器稼働情報17b(
図3も参照)は、需要家で実際に稼働している機器を示す情報である。なお、
図5に示す「需要家ID」、「需要家の規模」、「機器ID」、及び「機器の種類」については、前記した需要家・機器情報17a(
図4参照)と同様であるから、説明を省略する。
図5に示す「稼働状況」は、現時点(機器稼働情報17bの取得時)における機器の実際の稼働状況(稼動中又は停止)を示すデータである。また、「消費電力」は、現時点における各機器の実際の消費電力である。なお、各機器の消費電力は、スマートメータ61(
図2参照)によって検出される。
【0031】
図6は、電力管理システムにおける稼働スケジュール情報17cの説明図である。
図6に示す稼働スケジュール情報17c(
図3も参照)は、将来の各時間帯における需要家の予測需要電力量を含むデータである。なお、
図6に示す「需要家ID」や「需要家の規模」については、前記した需要家・機器情報17a(
図4参照)と同様であるから、説明を省略する。
図6に示す「予測対象日」や「予測対象時刻」は、所定の需要家の需要電力を予測する際の対象となる日付や時間帯である。例えば、2022年1月1日の0時0分~0時30分の時間帯については、その予測対象時刻が「00:30」として示されている。
【0032】
図6に示す「予測需要電力量」は、所定の需要家における需要電力量の予測値である。また、各時間帯の天候の他、平日/休日の区別を示すデータが稼働スケジュール情報17cに含まれている。そして、過去の需要電力の履歴や天候や平日/休日の区別の他、気温の予測値や所定のイベントの有無等に基づいて、各時間帯の需要電力量(予測需要電力量)が予測されるようになっている。このような稼働スケジュール情報17cは、それぞれの需要家の需要側管理装置31(
図1参照)で個別に作成され、電力管理装置10(
図1参照)に送信される。
【0033】
図7は、電力管理システムにおける運転計画情報の説明図である。
なお、
図7の各タイムチャートの横軸は時刻であり、縦軸は機器で使用(消費)される電力の概算値である。例えば、機器IDがM0001である空調機の冬季の運転計画では、8:00~21:00の時間帯において、定格電力XXX1(
図4の需要家・機器情報17aも参照)で空調機が駆動される。また、例えば、機器IDがM0002である空調機の運転計画では、8:00~11:00及び18:00~21:00の時間帯において、定格電力XXX2(
図4の需要家・機器情報17aも参照)で空調機が駆動される。
【0034】
なお、
図7には、機器IDがM0001、M0002、M0003の3台の機器(空調機)の運転計画を示しているが、実際には、需要家のそれぞれの機器(
図4も参照)の運転計画が設定されている。また、需要家において運転計画のとおりに各機器が稼働されるとは限らず、運転計画とは異なる時間帯に機器が稼働又は停止されることもある。また、需要調整の要請に伴って、運転計画が変更されることもある。このような場合には、需要調整に伴う変更後の運転計画情報17d(
図3参照)が、需要家IDに対応付けて、その需要家の需要側管理装置31(
図1参照)から電力管理装置10(
図1参照)に提供される。
【0035】
図3に示すデータ取得部18aは、通信インタフェース19を介して、需要側管理装置31(
図1参照)等から所定のデータを取得する。
図3に示す需要家選択部18bは、電力事業者端末50(
図1参照)から需要調整の要請を受信した場合、需要調整の対象となる需要家を選択する。
図3に示す通信インタフェース19は、電力事業者端末50(
図1参照)や複数の需要側管理装置31(
図1参照)との間で所定のデータ通信を行う。
【0036】
図8は、需要側管理装置31の機能ブロック図である。
図8に示すように、需要側管理装置31は、その機能的な構成として、記憶部311と、制御部312と、通信インタフェース313と、を備えている。記憶部311には、機器情報311aと、機器稼働情報311bと、稼働スケジュール情報311cと、稼働条件情報311dと、室内快適度情報311eと、運転計画情報311fと、が格納されている。制御部312は、データ取得部312aと、需要算出部312bと、需要調整部312cと、室内快適度判定部312dと、運転計画作成部312eと、機器制御部312fと、を備えている。
【0037】
図8に示す機器情報311aは、例えば、需要家に設けられる機器の機器IDに、その機器の種類や定格電力が対応付けられているデータである。なお、「需要家ID」(
図4参照)や「需要家の規模」(
図4参照)といったデータを付ける必要が特にない点以外は、機器情報311aは、前記した需要家・機器情報17a(
図4参照)と同様である。
また、
図8に示す機器稼働情報311b、稼働スケジュール情報311c、及び運転計画情報311fは、需要側管理装置31から電力管理装置10(
図1参照)に提供される。したがって、
図8に示す機器稼働情報311b、稼働スケジュール情報311c、及び運転計画情報311fは、電力管理装置10(
図3参照)の記憶部17に格納されているもの(
図5、
図6、
図7も参照)と同様であるから、その説明を省略する。
【0038】
図8に示す稼働条件情報311dは、需要調整において所定の機器の停止又は出力抑制を行う際の条件を示すデータである。なお、「出力抑制」とは、需要調整を行わない場合よりも機器の出力を減少させることである。例えば、大規模需要家では、省エネルギ化を図るために、空調負荷の大きさに応じて空調機の稼働台数を増減させる台数制御が行われることが多い。このような台数制御に関するデータが稼働条件情報311dに含まれるようにしてもよい。
【0039】
また、需要調整において、複数の空調機のうちの一部を停止させる場合の室内の快適性を考慮した上で、稼働条件情報311dが設定されるようにしてもよい。例えば、需要調整を行う際の調整力の大きさの他、需要調整の時間帯や、室内の温熱感の値に対応付けて、需要調整の際に停止させる機器の種類や台数がデータテーブル等の形式で稼働条件情報311dとして設定されている。
【0040】
図8に示す室内快適度情報311eは、室内快適度の予測値を含むデータである。室内快適度とは、需要家の部屋における空調の快適さの度合いを示す数値である。例えば、需要調整に伴って一部の空調機を停止した場合、空調の効きが悪くなり、室内快適度が低下することがある。そこで、本実施形態では、需要調整を行った場合の室内快適度を制御部312が予測し、その予測結果である室内快適度が所定値以上となるように、機器の停止や出力抑制を行うようにしている。
【0041】
図9は、室内快適度に関する説明図である。
なお、
図9の横軸は、空調機の最大出力を「1」とした場合の運転目標値(出力の目標値)である。なお、横軸の左端の運転目標値が「1」(最大出力)であり、横軸の右側に向かうにつれて運転目標値が小さくなっている。
図9の縦軸は、空調の快適さの度合いを示す室内快適度である。
図9に示す複数の○印は、所定の運転目標値で空調運転を行った場合の室内快適度をプロットしたものである。
図9に示す曲線C1は、複数の点(○印)に基づいて、室内快適度を所定にモデル化した曲線である。このような室内快適度のデータは、事前の実験等に基づいて予め取得されている。そして、例えば、需要調整を行う場合の空調機の運転目標値に基づいて、室内快適度が予測されるようになっている。
【0042】
図8に示すデータ取得部312aは、通信インタフェース313を介して、電力管理装置10(
図1参照)から所定のデータを取得する。需要算出部312bは、電力管理装置10(
図1参照)から需要調整の要請があった場合、需要家における業務の遂行や室内の快適性を維持するために最低限必要となるエネルギ(必要エネルギ)を算出する。
【0043】
図10は、電力の調整力に関する説明図である。
なお、
図10の縦軸は、所定地域で使用可能なエネルギ(電力)である。このエネルギには、必要エネルギと、調整力と、再生可能エネルギの売電分と、が含まれている。
図10に示す「必要エネルギの総量」は、所定地域において、各需要家が業務の遂行や室内の快適性を維持するために最低限必要となるエネルギの総量である。需要調整に伴って節電が行われる際には、必要エネルギが確保されるように需要家の各機器が所定に停止又は出力抑制される。
【0044】
図10に示す「調整力の総量」は、所定地域において、電力系統の安定化を図るために電力需要の大きさを調整する能力である。所定地域の需要家が調整力の一部又は全部を電力系統に提供することで、需要調整が行われる。
図10に示す「再エネ売電分の総量」は、所定地域で発電される再生可能エネルギの売電分の総量である。
【0045】
図8に示す需要調整部312cは、需要調整として所定の需要家に割り振られた調整力と、需要家の必要エネルギと、前記した稼働条件情報311dと、に基づいて、需要家の各機器の中で停止又は出力抑制を行う機器を選択する。
図8に示す室内快適度判定部312dは、需要家において需要調整を行った場合の部屋(空調室)の室内快適度が所定値以上であるか否かを判定する。
【0046】
図8に示す運転計画作成部312eは、需要調整部312cの処理の結果に基づいて、需要調整の対象となる大規模需要家等の複数の機器の運転計画を作成する。運転計画作成部312eによって作成された運転計画情報311fは、記憶部311に格納される他、ネットワークN1(
図2参照)を介して、電力管理装置10(
図2参照)に送信される。
図8に示す機器制御部312fは、需要調整部312cによって選択された機器の停止又は出力抑制を、運転計画に基づく所定の時間帯に行う。
【0047】
図11は、電力管理装置が行う処理のフローチャートである(適宜、
図3も参照)。
ステップS101において電力管理装置10は、需要調整の要請があったか否かを判定する。このような需要調整の要請は、例えば、電力事業者端末50(
図1参照)から電力管理装置10に送信される。なお、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギが所定地域で売電される場合において、売電の際の契約電力を達成するために需要調整が行われることもある。
【0048】
ステップS101において需要調整の要請があった場合(S101:Yes)、電力管理装置10の処理はステップS102に進む。また、ステップS101において需要調整の要請がない場合、電力管理装置10は一連の処理を終了する(END)。
ステップS102において電力管理装置10は、機器稼働情報311b等を取得する。すなわち、電力管理装置10は、所定地域の各需要家における機器稼働情報311bの他、今後の各需要家の調整力に関するデータをそれぞれの需要側管理装置31から取得する。
【0049】
ステップS104において電力管理装置10は、需要調整の対象とする需要家を選択し、調整力を分配する。まず、電力管理装置10の制御部18(
図3の需要家選択部18b)は、所定地域で電力の需要調整を行う際、需要調整の対象となる需要家を選択する(需要家選択処理)。ここで、制御部18は、所定地域に存在する大規模需要家を優先的に需要調整の対象とする。例えば、制御部18は、大規模需要家における消費電力の予測値及び電力の調整力に基づいて、需要調整の対象となる大規模需要家を選択する。このように大規模需要家を優先的に需要調整の対象にすることで、電力の調整力が確保されやすくなる。また、大規模需要家は、複数種類の機器を多数有していることが多いため、過度な生産調整や需要抑制を回避しつつ、まとまった量の調整力を電力系統に提供できる。
【0050】
そして、制御部18は、所定地域で電力の需要調整を行う際に要する調整力の総量を複数の大規模需要家に分配する(S104の一部)。例えば、制御部18は、大規模需要家の調整力が大きいほど、調整力の総量から当該大規模需要家に分配される調整力の比率を高くする。調整力が大きいほど、需要調整の際にまとまった量の調整力を大規模需要家から電力系統に提供できるからである。
なお、大規模需要家に割り当てられる調整力の大きさは、その大規模需要家の実際の調整力の上限値よりも小さいものとする。また、大規模需要家等に割り当てられる調整力の大きさが、各時間帯(需要調整に含まれる各時間帯)で一定である必要は特にない。
【0051】
ステップS105において電力管理装置10は、分配後の調整力の値を含むデータを需要側管理装置31(
図1参照)に送信する。すなわち、電力管理装置10は、分配後の調整力の値が需要家IDに対応付けられた所定のデータを、需要調整の対象となる大規模需要家等の需要側管理装置31(
図1参照)に送信する。ステップS105の処理を行った後、電力管理装置10は一連の処理を終了する(END)。このように、電力管理装置10は、所定地域で電力の需要調整を行う際、所定地域に要する調整力の総量を複数の大規模需要家に分配し、当該大規模需要家の電力管理装置10に分配後の調整力の値を含むデータを送信する。
【0052】
なお、所定地域に存在する大規模需要家の全てに需要調整を要請する必要は特になく、一部の大規模需要家を需要調整の対象にしてもよい。また、大規模需要家の他、小規模需要家にも需要調整を要請するようにしてもよい。
【0053】
また、制御部18は、所定地域に供給される再生可能エネルギの発電電力に不足分が生じることが予測される場合、需要調整で当該不足分の発電電力の節電を行う需要家として、大規模需要家を優先的に選択するようにしてもよい。大規模需要家から供給される調整力を再生可能エネルギの発電電力に足し合わせることで、所定の契約電力以上の電力を供給することが可能になる。
【0054】
また、制御部18は、所定地域に供給される再生可能エネルギの発電電力に余剰分が生じることが予測される場合、需要調整で当該余剰分の発電電力を消費する需要家として、大規模需要家を優先的に選択するようにしてもよい。大規模需要家では、空調等で比較的大きな電力を消費できることが多いため、電力系統における需給バランスが維持されやすくなる。
【0055】
図12は、需要側管理装置が行う処理のフローチャートである(適宜、
図8も参照)。
なお、
図12に示す一連の処理は、需要調整が要請される複数の需要家の需要側管理装置31のそれぞれで行われる。
ステップS201において需要側管理装置31は、分配後の調整力の値(需要調整のために需要家に要請される調整力)を含むデータを電力管理装置10(
図1参照)から受信したか否かを判定する。分配後の調整力の値を含むデータを電力管理装置10から受信していない場合(S201:No)、需要側管理装置31はステップS201の処理を繰り返す。また、分配後の調整力の値を含むデータを電力管理装置10から受信した場合(S201:Yes)、需要側管理装置31の処理はステップS202に進む。
【0056】
ステップS202において需要側管理装置31は、需要算出部312bによって、需要家の必要エネルギを算出する。前記したように、必要エネルギとは、需要家における業務の遂行や室内の快適性を維持するために最低限必要となるエネルギ(電力)である。このような必要エネルギは、需要家における機器の種類や台数の他、現時点の時間帯や温熱感検出器62(
図2参照)の検出値、平日・休日の区別等に基づいて算出される。
【0057】
ステップS203において需要側管理装置31は、需要調整部312cによって、各時間帯で停止又は出力抑制を行う機器を選択する。すなわち、需要側管理装置31は、稼働条件情報311dに基づいて、需要家の各機器の中で停止又は出力抑制を行う機器を将来の各時間帯(需要調整に含まれる各時間帯)で選択する。このとき、需要側管理装置31は、ステップS202で算出した必要エネルギが満たされるように、停止又は出力抑制の対象となる機器を選択する。
【0058】
例えば、空調機は、稼働台数を減らしたり、設定温度を変更したりすることで節電できることが多い。したがって、停止又は出力抑制を行う機器を需要調整部312cが選択する際、需要家に設けられた空調機の中から優先的に選択するようにしてもよい。このように、需要調整部312cは、需要調整の対象となる大規模需要家の複数の機器のうち、需要調整の期間の少なくとも一部で停止又は出力抑制を行う機器を、当該機器の種類に基づいて選択する。これによって、需要調整の際に停止又は出力抑制の対象となる機器を適切に選択できる他、需要調整部312cの処理時間を短縮できる。
【0059】
また、需要調整部312cは、大規模需要家において需要調整の期間の少なくとも一部で停止させる機器を選択する際、台数制御が可能であるものから優先的に選択するようにしてもよい。このような機器として、例えば、空調機やコジェネレーション発電機、熱源ボイラが挙げられる。このような台数制御において機器の定格運転を行うことで、機器の消費電力を抑制できる。需要調整部312cは、大規模需要家等に割り振られた調整力の値に基づいて、台数制御における機器の各時間帯での稼働台数を算出する。そして、需要調整部312cは、大規模需要家における残りの機器について、各時間帯で停止又は出力抑制するものを決定する。
【0060】
次に、ステップS204において需要側管理装置31は、室内快適度判定部312dによって、空調室の室内快適度が所定値以上であるか否かを判定する。すなわち、需要側管理装置31は、将来の各時間帯(需要調整に含まれる各時間帯)で、需要家の空調室における室内快適度が所定値以上であるか否かを判定する。前記した「所定値」は、需要家での業務や快適性に支障が生じないか否かの判定基準となる閾値であり、予め設定されている。なお、室内快適度は、例えば、空調機の出力値(
図9の運転目標値)に基づいて算出される。ステップS204において、各空調室の室内快適度が所定値以上である場合(S204:Yes)、需要側管理装置31の処理はステップS205に進む。
【0061】
また、ステップS204において室内快適度が所定値未満である空調室が存在する場合(S204:No)、需要側管理装置31の処理はステップS203に戻る。そして、ステップS203において需要側管理装置31は、停止又は出力抑制を行う機器を選択し直す。例えば、需要側管理装置31は、所定の時間帯における空調機の運転台数を増やすようにしてもよい。これによって、空調室における室内快適度が高められる。このように、需要調整部312cは、大規模需要家において需要調整の期間の少なくとも一部で停止又は出力抑制を行う機器を選択する際、当該機器の停止又は出力抑制を行った場合における大規模需要家の空調室の室内快適度が所定値以上となるように機器を選択する。
【0062】
ステップS205において需要側管理装置31は、運転計画作成部312eによって、機器の運転計画を作成・送信する。すなわち、需要側管理装置31は、ステップS203の処理結果に基づき、将来の各時間帯(需要調整に含まれる時間帯)における各機器の運転又は停止の他、各機器の出力を含む運転計画を作成する。そして、需要側管理装置31は、運転計画情報311fを電力管理装置10(
図1参照)に送信する。これによって、電力管理装置10(
図1参照)は、所定の需要家が需要調整に応じる際の具体的な運転計画を把握できる。
【0063】
次に、ステップS206において需要側管理装置31は、機器制御部312fによって、運転計画に基づいて機器を制御する。すなわち、需要側管理装置31は、ステップS205で作成した運転計画に沿って、ステップS203で選択した機器の停止又は出力抑制を所定の時間帯で行う。なお、ステップS206の処理では、需要家の人(例えば、管理者や従業員)が機器の制御を手動で行う必要が特にない。したがって、需要家側の作業負担を軽減できる他、需要調整に応じた運転計画を確実に実行できる。ステップS206の処理を行った後、需要側管理装置31は一連の処理を終了する(END)。
【0064】
なお、
図12では図示を省略しているが、所定の大規模需要家で需要調整が行われている場合において、当該大規模需要家でデスクワークが行われる部屋で離席した人の人数、又は部屋で移動している人の人数が、需要調整の開始時から所定値以上増加した場合、機器制御部312fが次の処理を行うようにしてもよい。すなわち、機器制御部312fが、当該大規模需要家における需要調整を緩和又は中断し、機器に含まれる空調機の稼働台数を増加させるようにしてもよい。空調の効きが悪いと人が感じた場合、デスクワークの席から離席したり、移動したりする傾向があるからである。
なお、需要調整の「緩和」とは、需要家が電力系統に提供する調整力を少なくすることである。また、大規模需要家の部屋には、人を認識して、その位置を特定するカメラ(図示せず)が設置されているものとする。機器制御部312fが需要調整を緩和又は中断し、空調機の稼働台数を増加させることで、需要家における空調の効きがよくなるため、空調の快適性の低下を抑制できる。
【0065】
また、需要調整が行われた後、大規模需要家の管理者が従業員等に需要調整の間の生産性や空調の快適性についてアンケートをとり、その結果を室内快適度判定部312d(
図8参照)のプログラムの修正等に反映させるようにしてもよい。このような評価方式において、室内快適度がPMV(Predicted Mean Vote)等の指標で表されるようにしてもよい。また、室内の人の移動データの他、需要家におけるエネルギの消費量に基づいて、工場等の需要家における生産性の低下の有無を制御部312(
図8参照)が判定するようにしてもよい。そして、生産性の低下量が所定値以上になった場合、制御部312が需要調整を緩和又は中断するようにしてもよい。
【0066】
<効果>
本実施形態によれば、所定地域において需要調整を行う際、電力管理装置10が需要調整の対象として大規模需要家を優先的に選択する。これによって、大規模需要家からまとまった調整力を電力系統に供給できるため、需要調整に要する調整力が確保されやすくなる。
また、需要側管理装置31は、室内快適度が所定値以上となるように、停止又は出力抑制を行う機器を選択する。これによって、大規模需要家における業務遂行や空調の快適性に支障が生じることを抑制できる。
【0067】
また、本実施形態では、供給電力が過剰になることが予測された場合の需要調整(いわゆる上げDR:Demand Response)の他、供給電力が不足することが予測された場合の需要調整(いわゆる下げDR)にも適切に対応できる。
また、電力事業者等から需要調整の要請があった場合、電力管理装置10が大規模需要家等に所定の調整力を割り振り、各機器の停止や出力抑制といった細かい処理を需要側管理装置31が行う。このような構成によれば、電力管理装置10の処理負荷を軽減できる。また、複数の需要側管理装置31で並行して処理が進められるため、全体の処理(
図11、
図12の処理)に要する時間を大幅に短縮できる。
【0068】
≪変形例≫
以上、本発明に係る電力管理システム100等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、需要調整を行う際に需要側管理装置31(
図8参照)の機器制御部312f(
図8参照)が需要家の各機器を制御する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、所定の運転計画に基づいて、人が手動で機器の運転や停止を行うようにしてもよい。
【0069】
また、実施形態では、太陽光発電所21(
図1参照)や風力発電所22(
図1参照)から所定地域に再生可能エネルギが供給される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、所定地域への電力の供給源が火力発電所や原子力発電所であり、再生可能エネルギの発電設備が特に含まれない場合にも実施形態を適用できる。
【0070】
また、実施形態では、需要家に設けられる機器が、空調機・給湯機・その他の機器の3つに分類される場合について説明したが、機器の分類の仕方は適宜に変更可能である。また、需要家に設けられる機器に蓄電池が含まれるようにしてもよい。そして、例えば、供給電力が不足する場合には蓄電池への蓄電を停止(又は、単位時間当たりの蓄電量を減少)させるようにしてもよい。一方、供給電力が過剰である場合には蓄電池への蓄電を開始(又は、単位時間当たりの蓄電量を増加)させるようにしてもよい。なお、前記した蓄電池には、電気自動車等の移動体のバッテリも含まれる。
【0071】
また、電力管理装置10や需要側管理装置31の処理結果が、ネットワークN1(
図2参照)を介して、ユーザの情報端末(図示せず)に送信されるようにしてもよい。このような情報端末として、スマートフォンや携帯電話、タブレット、パソコン、ウェアラブル端末等が用いられる。
【0072】
また、実施形態では、電力管理システム100(
図1参照)が電力管理装置10及び需要側管理装置31を備える場合について説明したが、これに限らない。例えば、電力管理装置10が需要側管理装置31の機能も兼ね備えるようにし、需要側管理装置31を適宜に省略するようにしてもよい。また、実施形態で説明した需要側管理装置31の機能の一部を電力管理装置10が担うことで、需要側管理装置31の処理負荷を低減するようにしてもよい。
【0073】
また、実施形態は、所定地域において電力の供給力を確保するバーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)にも適用できる。
また、電力管理システム100が実行する電力管理方法のプログラムは、通信線を介して提供できる他、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0074】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0075】
100 電力管理システム
10 電力管理装置
17 記憶部
17a 需要家・機器情報
17b 機器稼働情報
17c 稼働スケジュール情報
17d 運転計画情報
18 制御部
18a データ取得部
18b 需要家選択部
19 通信インタフェース
31 需要側管理装置
311a 機器情報
311b 機器稼働情報
311c 稼働スケジュール情報
311d 稼働条件情報
311e 室内快適度情報
311f 運転計画情報
312a データ取得部
312b 需要算出部
312c 需要調整部
312d 室内快適度判定部
312e 運転計画作成部
312f 機器制御部
30 大規模需要家(需要家)
40 小規模需要家(需要家)
50 電力事業者端末