(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177476
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】ロックボルト施工装置及びロックボルト施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090170
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】595056675
【氏名又は名称】サンドビック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚
(72)【発明者】
【氏名】小山内 快和
(57)【要約】
【課題】一連のロックボルト施工作業を機械化して、より効率化できると共に、ロックボルト施工装置を小型化して、現場の設置スペースを省スペース化できる。
【解決手段】地山200に穿孔201を形成する穿孔形成部6と、水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を穿孔201にエア圧で打ち込む進退自在な移送ホース7の打出部71と、セメント系定着材カプセル100が打ち込まれた穿孔201にロックボルト110を押し込むロックボルト押込部8とが、回動動作で穿孔201に対応する位置に切替配置可能に設けられ、打出部71に水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を移送する移送ホース7の装填部73に、移送ホース7に高圧エアを供給する高圧エア供給部9が取り付けられ、装填部73の周辺にセメント系定着材カプセル100が水浸漬される浸漬タンク10が設置されているロックボルト施工装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に穿孔を形成する穿孔形成部と、水浸漬状態のセメント系定着材カプセルを前記穿孔にエア圧で打ち込む進退自在な移送ホースの打出部と、前記セメント系定着材カプセルが打ち込まれた前記穿孔にロックボルトを押し込むロックボルト押込部とが、前記穿孔の延びる方向を軸方向とする回動動作により、前記穿孔に対応する位置に切替配置可能に設けられ、
前記打出部に水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルを移送する前記移送ホースの装填部に、前記移送ホースに高圧エアを供給する高圧エア供給部が取り付けられ、
水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルが装填される前記装填部の周辺に、セメント系定着材カプセルが水浸漬される浸漬タンクが設置されていることを特徴とするロックボルト施工装置。
【請求項2】
請求項1記載のロックボルト施工装置を用いるロックボルト施工方法であって、
前記穿孔形成部で地山に穿孔を形成すると共に、前記穿孔の形成中にセメント系定着材カプセルを前記浸漬タンクで水浸漬する第1工程と、
前記穿孔の位置に前記移送ホースの前記打出部を配置し、前記打出部の先端部を前記穿孔に内挿して水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルを前記穿孔にエア圧で打ち込む第2工程と、
前記穿孔から前記打出部の先端部を抜き出して前記ロックボルト押込部を前記穿孔の位置に配置し、水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルが内装された前記穿孔にロックボルトを押し込む第3工程と、を備えることを特徴とするロックボルト施工方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記穿孔に内挿されない前記打出部の先端部近傍の箇所に形成されたエア抜き孔から、水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルの打ち込み時にエア抜きすることを特徴とする請求項2記載のロックボルト施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の地山の穿孔にセメント系定着材を充填してロックボルトを打設するロックボルト施工装置及びロックボルト施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの地山にセメント系定着材を充填してロックボルトを打設する施工装置として特許文献1のロックボルト施工装置がある。特許文献1のロックボルト施工装置は、穿孔ロッドを備える穿孔部と、ロックボルトを挿入するロックボルト挿入部と、穿孔部とロックボルト挿入部との間に配置された、グラウト材を穿孔内に充填する注入ホースを進退自在に保持するグラウト材充填部とを並列して設け、先端の回転当接支点部をトンネル壁面に押し当て固定した状態で、穿孔部とロックボルト挿入部とグラウト材充填部とが回転当接支点部を回転中心として揺動可能な構成としたものである。
【0003】
そして、このロックボルト施工装置は、上段側の練混ぜ用ミキサー装置部と下段側のグラウト材圧送ポンプ装置部で構成されるグラウト材供給装置を有し、セメント、水、細骨材などのセメント系グラウト材の各材料が練混ぜ用ミキサー装置部に投入され、練混ぜが完了したセメント系グラウト材がグラウト材圧送ポンプ装置部から注入ホースを介して地山の穿孔内に送り出されて充填されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1のロックボルト施工装置は、地山に穿孔を形成する作業と、穿孔にセメント系定着材を注入する作業と、セメント系定着材が注入された穿孔にロックボルトを挿入する作業という一連のロックボルト施工作業を機械化して、効率化を図っているという利点がある。
【0006】
しかしながら、穿孔にセメント系定着材を注入する際に、現場で、セメント系グラウト材の構成材料のそれぞれを適量ずつ練混ぜ用ミキサー装置部に投入するという煩雑な作業が必要となるため、作業の効率化を図る点で未だ不十分である。また、特許文献1のロックボルト施工装置における、上段側の練混ぜ用ミキサー装置部と下段側のグラウト材圧送ポンプ装置部で構成されるグラウト材供給装置は大きさが嵩張るため、ロックボルト施工装置も大型化してしまう。ロックボルト施工装置が大型化すると狭い作業空間で使用することが難しくなるため、小型化することができるロックボルト施工装置が望まれる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、地山に穿孔を形成する作業と、穿孔にセメント系定着材を供給する作業と、セメント系定着材が供給された穿孔にロックボルトを挿入する作業という一連のロックボルト施工作業を機械化して、より効率化を図ることができると共に、ロックボルト施工装置を小型化して、現場の設置スペースを省スペース化することができるロックボルト施工装置及びロックボルト施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロックボルト施工装置は、地山に穿孔を形成する穿孔形成部と、水浸漬状態のセメント系定着材カプセルを前記穿孔にエア圧で打ち込む進退自在な移送ホースの打出部と、前記セメント系定着材カプセルが打ち込まれた前記穿孔にロックボルトを押し込むロックボルト押込部とが、前記穿孔の延びる方向を軸方向とする回動動作により、前記穿孔に対応する位置に切替配置可能に設けられ、前記打出部に水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルを移送する前記移送ホースの装填部に、前記移送ホースに高圧エアを供給する高圧エア供給部が取り付けられ、水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルが装填される前記装填部の周辺に、セメント系定着材カプセルが水浸漬される浸漬タンクが設置されていることを特徴とする。
これによれば、移送ホースの打出部に水浸漬状態のセメント系定着材カプセルを移送する移送ホースの装填部の周辺に、セメント系定着材カプセルを水浸漬する浸漬タンクを設置することにより、一人の作業者がセメント系定着材カプセルの水浸漬を行って移送ホースの装填部に装填することが可能となり、穿孔にセメント系定着材を供給する作業を省力化、効率化することができる。従って、地山に穿孔を形成する作業と、穿孔にセメント系定着材を供給する作業と、セメント系定着材が供給された穿孔にロックボルトを挿入する作業という一連のロックボルト施工作業を機械化して、より効率化を図ることができる。また、水浸漬したセメント系定着材カプセルの移動を最小限に留めることができ、穿孔の外で水浸漬状態のセメント系定着材カプセルが破損することを防止することができる。また、練混ぜ用ミキサー装置部とグラウト材圧送ポンプ装置部で構成される大きさが嵩張るグラウト材供給装置を設ける必要が無いため、ロックボルト施工装置を小型化して、現場の設置スペースを省スペース化することができる。
【0009】
本発明のロックボルト施工方法は、本発明のロックボルト施工装置を用いるロックボルト施工方法であって、前記穿孔形成部で地山に穿孔を形成すると共に、前記穿孔の形成中にセメント系定着材カプセルを前記浸漬タンクで水浸漬する第1工程と、前記穿孔の位置に前記移送ホースの前記打出部を配置し、前記打出部の先端部を前記穿孔に内挿して水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルを前記穿孔にエア圧で打ち込む第2工程と、前記穿孔から前記打出部の先端部を抜き出して前記ロックボルト押込部を前記穿孔の位置に配置し、水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルが内装された前記穿孔にロックボルトを押し込む第3工程と、を備えることを特徴とする。
これによれば、ロックボルト施工装置を操作する一人の作業者が穿孔形成の進展状況を把握しながらセメント系定着材カプセルの水浸漬を並行して行うことができ、地山に穿孔を形成する作業と、穿孔にセメント系定着材を供給する作業と、セメント系定着材が供給された穿孔にロックボルトを挿入する作業という一連のロックボルト施工作業をより一層効率化することができる。
【0010】
本発明のロックボルト施工方法は、前記第2工程において、前記穿孔に内挿されない前記打出部の先端部近傍の箇所に形成されたエア抜き孔から、水浸漬状態の前記セメント系定着材カプセルの打ち込み時にエア抜きすることを特徴とする。
これによれば、セメント系定着材カプセルを穿孔内に飛ばすために送り込まれたエアのうち穿孔内から押し戻されてくるエアをエア抜き孔から噴出させ、穿孔の奥で跳ね返られたエアが移送ホースの打出部やセメント系定着材カプセルを押し戻すことを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地山に穿孔を形成する作業と、穿孔にセメント系定着材を供給する作業と、セメント系定着材が供給された穿孔にロックボルトを挿入する作業という一連のロックボルト施工作業を機械化して、より効率化を図ることができると共に、ロックボルト施工装置を小型化して、現場の設置スペースを省スペース化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による実施形態のロックボルト施工装置を示す側面説明図。
【
図2】実施形態のロックボルト施工装置における移送ホースの装填部の周辺を示す模式図。
【
図3】実施形態のロックボルト施工装置で打ち込まれるセメント系定着材カプセルの断面図。
【
図4】実施形態のロックボルト施工装置におけるボルティングヘッドの斜視説明図。
【
図5】(a)~(c)は穿孔時、セメント系定着材カプセル打ち込み時、ロックボルト押込み時におけるボルティングヘッドの切り替えを説明する模式説明図。
【
図6】(a)~(e)は実施形態のロックボルト施工装置によるロックボルトの施工手順を説明する工程説明図。
【
図7】(a)~(c)はセメント系定着材カプセル打ち込み時におけるエア抜きを説明する説明図。
【
図8】実施形態のロックボルト施工装置を用いてロックボルトが打設されたトンネルの横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態のロックボルト施工装置〕
本発明による実施形態のロックボルト施工装置1は、
図1に示すように、自走式の車体2で構成され、車体2の前方にブーム3が延設され、ブーム3の先端部にボルティングヘッド4が設けられている。ブーム3は、油圧シリンダとヒンジ部が組み合わされた動作機構により、車体2に対して旋回動作、伏仰動作が可能になっている。また、ボルティングヘッド4は、油圧シリンダとヒンジ部が組み合わされた動作機構により、ブーム3に対して旋回動作、伏仰動作が可能になっている。ブーム3の動作機構と、ボルティングヘッド4の動作機構は、車体2の操作席21の周辺に設置された操作盤5で操作される(
図2参照)。
【0014】
ボルティングヘッド4には、
図4に示すように、地山200に穿孔201を形成する穿孔形成部6と、水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を穿孔201にエア圧で打ち込む進退自在な移送ホース7の打出部71と、セメント系定着材カプセル100が打ち込まれた穿孔201にロックボルト110を押し込むロックボルト押込部8が設けられており、穿孔形成部6と、移送ホース7の打出部71と、ロックボルト押込部8は、穿孔201の延びる方向を軸方向とする回動動作により、穿孔201に対応する位置に切替配置することが可能になっている(
図4の太線矢印参照)。
【0015】
ボルティングヘッド4の先端部には、突起状の軸心アンカー41が前方に突出して形成されている。軸心アンカー41は、穿孔形成部6と、移送ホース7の打出部71と、ロックボルト押込部8の回動動作を行う際に、トンネル等の地山200の壁面に押し付けられて回動動作の回転軸を固定、支持するようになっている。
【0016】
穿孔形成部6には、ガイドシェル61に沿って削岩機62が進退自在に設けられ、削岩機62から前方に延びる穿孔ロッド63がセントラライザー64で保持されている。地山200への穿孔形成時には、穿孔201を形成すべき位置に穿孔形成部6を配置し、削岩機62を前進し、削岩機62で回転力と打撃力が与えられる穿孔ロッド63及び穿孔ロッド63の先端に取り付けられている削孔ビット65により(
図6(a)参照)、穿孔ラインL1の延長上において地山200に穿孔201を形成する。
【0017】
移送ホース7は例えばポリエチレンホースのような柔軟性があるホースで形成され、移送ホース7の打出部71は、移送ホース7の先端側に取り付けられているローラー送り装置72のローラーが正逆回転することにより、進退自在に構成されている(
図2の太線矢印参照)。移送ホース7で打出部71にエア圧で移送された水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100は、打出部71から打出ラインL2に沿って地山200の穿孔201内に打ち込まれる。
【0018】
ロックボルト押込部8は、ガイドシェル81と、ガイドシェル81に沿って進退自在に設けられているロックボルト送り装置82とから構成され、ロックボルト送り装置82にロックボルト110を供給するロックボルトマガジン83がガイドシェル81に隣接して設けられている。ロックボルト110の打設時には、ロックボルトマガジン83がボルト打設ラインL3にロックボルト110を移動するように回動し、ボルト打設ラインL3に移動されたロックボルト110がロックボルト送り装置82で地山200の穿孔201内に打設される。
【0019】
穿孔形成部6と、移送ホース7の打出部71と、ロックボルト押込部8は、
図5に示すように、ボルティングヘッド4に設けられた位置決めシリンダー42の伸縮により、軸心アンカー41を回転中心として弧状に回転移動され、それぞれ穿孔時、セメント系定着材カプセル100の打ち込み時、ロックボルト110の押込み時において、穿孔201に対応する位置に切替配置される。
【0020】
打出部71に水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を移送する移送ホース7の装填部73には、移送ホース7に高圧エアを供給する高圧エア供給部9が取り付けられている。本実施形態における高圧エア供給部9は、エアコンプレッサー91と、エアコンプレッサー91から延びるエア供給チューブの先端に設けられたエア開閉バルブ92とから構成され、エア開閉バルブ92が移送ホース7の装填部73に取り付けられている。エア開閉バルブ92は、操作盤5の操作によって開閉制御され、開状態で移送ホース7にエアコンプレッサー91の高圧エアが供給される。
【0021】
水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100が装填される移送ホース7の装填部73の周辺には、セメント系定着材カプセル100が水浸漬される浸漬タンク10が設置されており、本実施形態では、移送ホース7の装填部73と、浸漬タンク10と、操作盤5のいずれもが、車体2の操作席21の周辺に設置されている。また、移送ホース7の装填部73には、仕切りバルブ74が設けられ、水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を1本又は複数本の必要本数だけ装填部73から移送ホース7に装填し、仕切りバルブ74を閉めてからエア開閉バルブ92を開放して高圧エアを送り込み、移送ホース7の打出部71から水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を打ち出すようになっている。
【0022】
移送ホース7で打ち込まれるセメント系定着材カプセル100は、
図3に示すように、セメント、細骨材、混和剤で構成されるドライミックスモルタル101を透水性袋状包材102で包んだものであり、穿孔201に挿入する直前に例えば5分程度水に浸漬して使用される。セメント系定着材カプセル100には、包材が破れやすいように補強メッシュ等で補強されていない透水性袋状包材102で包まれたものを用いると好適であり、又、高圧エアで吹き飛ばしやすいように、例えば、直径が26mm~36mm程度のカプセルであれば長さが300mm~600mm程度が望ましく、即ち、人力施工される通常のセメント系定着材カプセルの半分程度の長さを有するセメント系定着材カプセル100を用いると好適である。
【0023】
本実施形態のロックボルト施工装置1でロックボルト110を施工する際には、トンネルの坑壁等の地山200の穿孔201を形成すべき位置に穿孔形成部6を配置し、削岩機62を前進して削岩機62で穿孔ロッド63及び削孔ビット65に回転力と打撃力を与え、穿孔形成部6で穿孔201を形成する(
図6(a)参照)。穿孔201の形成後には、
図6(b)に示すように、削岩機62を後退して穿孔ロッド63及び削孔ビット65を穿孔201から抜き出し、穿孔201内の切粉を削孔水を注入して取り除く。
【0024】
また、車体2の操作席21に着座している作業者は、前述の穿孔形成部6で地山200に穿孔201を形成する工程と並行して、穿孔201の形成中に、所要数のセメント系定着材カプセル100を浸漬タンク10に貯水されている水Wに浸漬しておく。
【0025】
そして、突起状の軸心アンカー41を地山壁面に押し付けて回転軸を安定させた状態で、穿孔201の位置に、移送ホース7の打出部71を回転動作で配置し、
図6(c)に示すように、移送ホース7の打出部71の例えば10cm~20cm程度の先端部分を穿孔201に内挿すると共に、移送ホース7の装填部73から移送ホース7に所要数の水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を装填し、仕切りバルブ74を閉める。この状態で、エア開閉バルブ92を開放して移送ホース7に例えば4×10
5~7×10
5Pa程度の高圧エアを送り込み、移送ホース7の打出部71から水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100をエア圧で穿孔201に打ち込む。
【0026】
この際、穿孔201に内挿されない移送ホース7の打出部71の先端部近傍の箇所に例えば直径10mm前後等のエア抜き孔75を形成しておき、水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100をエア圧で穿孔201に打ち込む時に穿孔内から押し戻されてくるエア抜きをすると、穿孔201内に吹き込まれたエアARでセメント系定着材カプセル100が押し戻されることを防止できて好適である(
図7参照)。
【0027】
水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を穿孔201に打ち込んだ後には、穿孔201から打出部71の先端部を抜き出し、突起状の軸心アンカー41を地山壁面に押し付けて回転軸を安定させた状態で、穿孔201の位置に、ロックボルト押込部8を回転動作で配置し、水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100が所要数内装された穿孔201にロックボルト110を押し込む(
図6(d)参照)。
【0028】
穿孔201内の水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100の透水性袋状包材102はロックボルト110の押込みで破れ、ドライミックスモルタル101が水浸漬されて構成された定着材103が穿孔201とロックボルト110との間に充填されて、ロックボルト110が打設、定着される(
図6(e)参照)。このようにロックボルト施工装置1で打設されるロックボルト110は、例えば
図8に示すように、トンネル空間Tから周囲の地山200に放射状に打設される。
【0029】
本実施形態によれば、移送ホース7の打出部71に水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100を移送する移送ホース7の装填部73の周辺に、セメント系定着材カプセル100を水浸漬する浸漬タンク10を設置することにより、一人の作業者がセメント系定着材カプセル100の水浸漬を行って移送ホース7の装填部73に装填することが可能となり、穿孔201にセメント系定着材100を供給する作業を省力化、効率化することができる。従って、地山200に穿孔201を形成する作業と、穿孔201にセメント系定着材100を供給する作業と、セメント系定着材100が供給された穿孔201にロックボルト110を挿入する作業という一連のロックボルト施工作業を機械化して、より効率化を図ることができる。また、水浸漬したセメント系定着材カプセル100の移動を最小限に留めることができ、穿孔201の外で水浸漬状態のセメント系定着材カプセル100が破損することを防止することができる。また、練混ぜ用ミキサー装置部とグラウト材圧送ポンプ装置部で構成される大きさが嵩張るグラウト材供給装置を設ける必要が無いため、ロックボルト施工装置1を小型化して、現場の設置スペースを省スペース化することができる。
【0030】
また、穿孔201の形成中に、セメント系定着材カプセル100を浸漬タンク10で水浸漬する作業を行う施工工程によれば、ロックボルト施工装置1を操作する一人の作業者が穿孔形成の進展状況を把握しながらセメント系定着材カプセル100の水浸漬を並行して行うことができ、地山200に穿孔201を形成する作業と、穿孔201にセメント系定着材100を供給する作業と、セメント系定着材100が供給された穿孔201にロックボルト110を挿入する作業という一連のロックボルト施工作業をより一層効率化することができる。
【0031】
また、穿孔201に内挿されない移送ホース7の打出部71の先端部近傍の箇所にエア抜き孔75を形成する構成によれば、セメント系定着材カプセル100を穿孔201内に飛ばすために送り込まれたエアのうち穿孔内から押し戻されてくるエアをエア抜き孔75から噴出させ、穿孔201の奥で跳ね返られたエアが移送ホース7の打出部71や打ち込んだセメント系定着材カプセル100を押し戻すことを防止することができる。
【0032】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例も含まれる。
【0033】
例えば上記実施形態では軸心アンカー41を地山壁面に押し付けて回動動作の回転軸を安定させる構成としたが、軸心アンカー41の地山壁面への押し付けを行わなくても、穿孔形成部6と移送ホース7の打出部71とロックボルト押込部8の回動動作の回転軸を保持できる場合には、本発明のロックボルト施工装置は、軸心アンカー41を設けない構成とすることも可能である。また、移送ホース7の装填部73に取り付けられ、移送ホース7に高圧エアを供給する高圧エア供給部の構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えばトンネル坑壁の周囲の地山にロックボルトを打設する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…ロックボルト施工装置 2…車体 21…操作席 3…ブーム 4…ボルティングヘッド 41…軸心アンカー 42…位置決めシリンダー 5…操作盤 6…穿孔形成部 61…ガイドシェル 62…削岩機 63…穿孔ロッド 64…セントラライザー 65…削孔ビット 7…移送ホース 71…打出部 72…ローラー送り装置 73…装填部 74…仕切りバルブ 75…エア抜き孔 8…ロックボルト押込部 81…ガイドシェル 82…ロックボルト送り装置 83…ロックボルトマガジン 9…高圧エア供給部 91…エアコンプレッサー 92…エア開閉バルブ 10…浸漬タンク 100…セメント系定着材カプセル 101…ドライミックスモルタル 102…透水性袋状包材 103…定着材 110…ロックボルト 200…地山 201…穿孔 L1…穿孔ライン L2…打出ライン L3…ボルト打設ライン W…水 AR…エア T…トンネル空間