(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177477
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20231207BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20231207BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F11/04
B60R16/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090172
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】町田 朝
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB04
3F333CA09
3F333FA09
3F333FG05
(57)【要約】
【課題】装置支持体に対し着脱可能な可搬型バッテリを備えながら、可搬型バッテリが装置支持体から取り外されることにより作業機械が不安定になることを防止することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】高所作業車1は、走行可能な車体2に設けられた旋回台20、ブーム30および作業台40により構成される昇降装置を備え、可搬型バッテリ80が取出し可能に載置されるバッテリ載置スペースLS1が車体2に設けられている。高所作業車1は、昇降装置が格納姿勢でない場合は、可搬型バッテリ80のバッテリ載置スペースLS1からの取出しを規制するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置支持体と、前記装置支持体に設けられた作業装置と、可搬型バッテリとを備え、前記可搬型バッテリが取出し可能に載置されるバッテリ載置部が前記装置支持体に設けられた作業機械であって、
前記作業装置の姿勢が所定条件を満たさない場合は、前記可搬型バッテリの前記バッテリ載置部からの取出しを規制するように構成されることを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記所定条件は、前記作業装置が格納姿勢であるという条件を含むことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記バッテリ載置部に載置された複数の前記可搬型バッテリを覆うとともに前記可搬型バッテリを出し入れ可能な大きさの開口部および当該開口部を開閉可能な扉部を有するカバー部材と、
前記扉部を閉扉した状態でロック可能な閉扉ロック装置と、を備え、
前記閉扉ロック装置により前記扉部をロックすることで、前記カバー部材により覆われた前記可搬型バッテリの前記バッテリ載置部からの取出しを規制するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記バッテリ載置部に載置された前記可搬型バッテリを係止可能な係止部材と、
前記係止部材を前記可搬型バッテリを係止した状態でロック可能な係止ロック装置と、を備え、
前記係止ロック装置により前記係止部材をロックすることで、前記係止部材により係止された前記可搬型バッテリの前記バッテリ載置部からの取出しを規制するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項5】
前記バッテリ載置部に載置された前記可搬型バッテリの個数に応じて、前記作業装置の作業可能範囲を設定可能に構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型バッテリを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穴掘建柱用のアースオーガ装置や、運搬する荷物を車体に設けられた荷台から積み下ろしするための装置、高所作業を行うために作業員や機材を昇降する昇降装置など、それぞれの作業に適した作業装置を備えた作業機械として作業車が知られている。このような作業車として、作業車に装備された電動装置(作業装置を作動させる油圧を発生する油圧ポンプの駆動源となる電動モータ等)などに電力を供給可能なバッテリを備えているものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような作業機械(作業車)は、自然災害の被災地における復旧作業などに用いられる場合があるが、そのような作業現場においては電力供給網が遮断されていることが十分に考えられることから、作業機械のバッテリを作業装置以外の用途(例えば自然災害の避難場所における携帯電話機の充電や、照明装置の電源など)にも利用可能となれば被災地においてさらに有益な支援が可能となる。
【0005】
そこで、作業装置を支持する装置支持体(例えば、作業車における車体)に対し着脱可能な可搬型バッテリを作業機械に搭載しておき、必要に応じて可搬型バッテリを装置支持体から取り外して作業装置以外の用途に使用できるようにすれば、利便性をより向上させることができる。しかしながら、可搬型バッテリを任意に取り外せるようにしてしまうと、作業装置の姿勢によっては、可搬型バッテリが取り外された際に、取り外された可搬型バッテリの分だけ機械重量(例えば、作業車における車両重量)が減少することによって、作業機械の重心位置や重量バランスが悪くなり作業機械が不安定になる虞がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、装置支持体に対し着脱可能な可搬型バッテリを備えながら、可搬型バッテリが装置支持体から取り外されることにより作業機械が不安定になることを防止することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業機械は、装置支持体(例えば、実施形態における車体2)と、前記装置支持体に設けられた作業装置(例えば、実施形態における旋回台20、ブーム30および作業台40により構成される昇降装置)と、可搬型バッテリとを備え、前記可搬型バッテリが取出し可能に載置されるバッテリ載置部が前記装置支持体に設けられた作業機械(例えば、実施形態における高所作業車1)であって、前記作業装置の姿勢が所定条件を満たさない場合は、前記可搬型バッテリの前記バッテリ載置部からの取出しを規制するように構成される。
【0008】
上記構成の作業機械において、前記所定条件は、前記作業装置が格納姿勢であるという条件を含むことが好ましい。
【0009】
上記構成の作業機械において、前記バッテリ載置部に載置された複数の前記可搬型バッテリを覆うとともに前記可搬型バッテリを出し入れ可能な大きさの開口部および当該開口部を開閉可能な扉部を有するカバー部材と、前記扉部を閉扉した状態でロック可能な閉扉ロック装置と、を備え、前記閉扉ロック装置により前記扉部をロックすることで、前記カバー部材により覆われた前記可搬型バッテリの前記バッテリ載置部からの取出しを規制するように構成されることが好ましい。
【0010】
上記構成の作業機械において、前記バッテリ載置部に載置された前記可搬型バッテリを係止可能な係止部材と、前記係止部材を前記可搬型バッテリを係止した状態でロック可能な係止ロック装置と、を備え、前記係止ロック装置により前記係止部材をロックすることで、前記係止部材により係止された前記可搬型バッテリの前記バッテリ載置部からの取出しを規制するように構成されることが好ましい。
【0011】
上記構成の作業機械において、前記バッテリ載置部に載置された前記可搬型バッテリの個数に応じて、前記作業装置の作業可能範囲を設定可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る作業機械によれば、作業装置の姿勢が所定条件(例えば、当該姿勢のときに可搬型バッテリが取り出されても作業機械の安定性に悪影響が及ばないという条件)を満たさない場合は、可搬型バッテリのバッテリ載置部からの取出しが規制されるので、可搬型バッテリが取り出されたことによって作業機械の重心位置や重量バランスが悪くなり作業機械が不安定になることを防止することが可能となる。
【0013】
また、上記構成の作業機械において、バッテリ載置部に載置された可搬型バッテリの個数に応じて、作業装置の許容作業範囲を設定可能に構成することで、可搬型バッテリの個数に応じて作業装置の作業可能範囲を適正に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態である高所作業車の左側の側面を示す側面図である。
【
図2】上記高所作業車の右側の側面を示す側面図である。
【
図3】上記高所作業車の作動制御に関する構成を示すブロック図である。
【
図4】上記高所作業車のスロットインロック式のバッテリ載置スペースの構成を示す斜視図である。
【
図5】上記スロットインロック式のバッテリ載置スペースで用いられるバッテリ係止部材の構成を示す概略図である。
【
図6】上記高所作業車の扉ロック式のバッテリ載置スペースの構成を示す斜視図である。
【
図7】上記高所作業車の昇降装置が格納姿勢のときの状態を例示する概略図である。
【
図8】上記高所作業車の昇降装置が作業姿勢のときの状態を例示する概略図である。
【
図9】上記高所作業車の可搬型バッテリのロック制御および昇降装置の作業範囲設定に関する構成を示すブロック図である。
【
図10】上記高所作業車のスロットインロック式の係止ロックに関する情報を表形式で示す図である。
【
図11】上記高所作業車の扉ロック式の扉ロックに関する情報を表形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1および
図2は本発明の一実施形態に係る作業機械としての高所作業車1の側面外観を示しており、
図1は高所作業車1の前方に向かって左側の側面を示し、
図2は高所作業車1の前方に向かって右側の側面を示している。なお、
図2において
図1と同じ構成については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。以下、主にこれらの図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0016】
高所作業車1は、
図1および
図2に示すように、車体2の前部に運転キャブ7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。タイヤ車輪5は、左前輪5Flおよび右前輪5Frからなる前輪5Fと、左後輪5Rlおよび右後輪5Rrからなる後輪5Rによって構成されている。車体2は、左前輪5Fl、右前輪5Fr、左後輪5Rlおよび右後輪5Rrが配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレームとからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0017】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置が設けられている。ジャッキ装置は、前輪5Fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10Fと、後輪5Rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10Rとを有して構成される。詳細には、左前輪5Flの後方に左フロントジャッキ10Flが配設され、右前輪5Frの後方に右フロントジャッキ10Frが配設され、左後輪5Rlの後方に左リアジャッキ10Rlが配設され、右後輪5Rrの後方に右リアジャッキ10Rrが配設されている。各ジャッキ10F,10Rは、各内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。
【0018】
また、左フロントジャッキ10Fl、右フロントジャッキ10Fr、左リアジャッキ10Rlおよび右リアジャッキ10Rrには、各々、アウトリガ装置(図示略)が設けられている。各アウトリガ装置の内部にはアウトリガシリンダ12(
図3参照)が設けられており、アウトリガシリンダ12を伸縮させることで対応するジャッキ装置を車体2の幅方向(
図1の紙面手前から奥/紙面奥から手前へ向かう方向)に水平移動させる。具体的には、アウトリガシリンダ12を伸長させることでジャッキ装置を車体2の側面から外側方へ張り出す方向へ移動させる。また、伸長させたアウトリガシリンダ12を収縮させることで車体2の側面から外側方へ張り出したジャッキ装置を車体2へ収納する方向へ移動させる。車体2の後端部には、各ジャッキ装置およびアウトリガ装置や、後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0019】
図1に示すように、車体2の左側のサブフレームの下側において、左後輪5Rlと左リアジャッキ10Rlとの間にはバッテリ載置スペースLS1が設けられており、このバッテリ載置スペースLS1には車体2から個々に着脱自在な3つの可搬型バッテリ80(例えばリチウムイオンバッテリにより構成される)が載置されている。このバッテリ載置スペースLS1の前方近傍には、2つのジャッキベース13(路面に敷いて、伸長するジャッキ装置の先端部を受けるもの)と2つの輪止め14が収容されている。また、車体2の左側部には作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が2つ、上下に重ねて設けられている。左フロントジャッキ10Flの後側、かつ下側の工具箱26の下方には、後述する油圧ポンプ52(
図3を参照)およびポンプ駆動モータ53(
図3を参照)を収容したパワーユニット51が取り付けられている。
【0020】
図2に示すように、車体2の右側部かつサブフレームの下側において、右後輪5Rrと右リアジャッキ10Rrとの間にはバッテリ載置スペースLS2が設けられており、このバッテリ載置スペースLS2には固定具Fxによって車体2に固定された固定設置バッテ
リ70(例えばリチウムイオンバッテリにより構成される)が設置されている。このバッテリ載置スペースLS2の前方近傍には、2つのジャッキベース13と2つの輪止め14が収容されている。また、バッテリ載置スペースLS2と、右リアジャッキ10Rrとの間には外部のAC100V~200V電源と接続するための通常充電用コンセント15と、外部の急速充電器と接続するための急速充電用コンセント16とが設けられている。
【0021】
右後輪5Rrの前側には、高所作業車1のエンジンからの排気ガスが排出されるマフラー17が設けられている。また車体2のサブフレームの上側において、右フロントジャッキ10Frの背後から右後輪5Rrの位置までは、作業現場で使用される工事用具を積載することができる荷台スペースが設けられており、この荷台スペースの側面には側あおり板18が開閉自在に取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、車体2における運転キャブ7の背後の架装領域におけるサブフレーム上には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回作動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏作動させることができる。また、車体2における運転キャブ7の背後の架装領域には、ブーム30を後述する格納姿勢で支持するブーム受け台28が設けられている。
【0023】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(
図3を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り作動(水平旋回作動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。高所作業車1では、作業装置としての昇降装置が、旋回台20、ブーム30および作業台40を有して構成される。
【0024】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。このため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0025】
次に、主に
図3を参照して、上述した上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号に基づいて、前述したジャッキシリンダ11、アウトリガシリンダ12、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31および首振りモータ34等を含む各油圧アクチュエータの作動制御などを行うための構成について説明する。
【0026】
図3に示すように、高所作業車1は、上述した各油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、各油圧アクチュエータの作動を制御するコントローラ60と、を備えている。油圧ユニット50は、
図1に示したパワーユニット51に収容されている油圧ポンプ52およびポンプ駆動モータ53と、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブ54とを有して構成される。
【0027】
ポンプ駆動モータ53は、電力供給装置90から供給される電力によって回転駆動され、これにより油圧ポンプ52を作動させて制御バルブ54へ作動油を吐出する。より詳細には、車両(例えば下部操作装置27)に設けられた架装部電源スイッチ8が、作業を開始するときにオフからオンに操作されると、コントローラ60により架装部電源がオン状態とされて電力供給装置90からポンプ駆動モータ53に電力が供給可能となる。そして、電力供給装置90から供給される電力によってポンプ駆動モータ53が回転駆動され、これにより油圧ポンプ52から制御バルブ54に作動油が吐出される。
【0028】
制御バルブ54は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、アウトリガシリンダ12に対応する電磁比例制御バルブV2、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV3、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV4、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV5、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV6を有している。
【0029】
上部操作装置45または下部操作装置27の操作により出力された操作信号がコントローラ60に入力されると、コントローラ60は、その操作信号に応じた指令信号を制御バルブ54へ出力する。この制御バルブ54は、コントローラ60からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V6のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ52から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向および供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向および作動速度を制御する。この結果、上部操作装置45または下部操作装置27によって、前述したジャッキ装置およびアウトリガ装置の伸縮作動、旋回台20の旋回作動、ブーム30の起伏作動、ブーム30の伸縮作動、作業台40の首振り作動などの操作を行うことができる。
【0030】
電力供給装置90は、
図3に示した固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80、通常充電用コンセント15および急速充電用コンセント16と接続されており、通常充電用コンセント15および急速充電用コンセント16から供給された電力を車体2に設けられている電動装置に対して供給する。また、通常充電用コンセント15および急速充電用コンセント16から供給された電力を固定設置バッテリ70、可搬型バッテリ80およびDC-DCコンバータ(図示せず)を介して車両バッテリ(図示せず)に供給する。電力供給装置90はDC-ACインバータ93に対して直流電圧を出力し、DC-ACインバータ93は、電力供給装置90から供給された直流電圧をAC100Vに変換して車体2に設けられたサービスコンセント19から出力する。
【0031】
次に、主に
図4~
図6を参照して、可搬型バッテリ80が載置されるバッテリ載置スペースLS1の構成について説明する。
図4および
図5は、一態様のバッテリ載置スペースLS1に関する図であり、
図6は、別態様のバッテリ載置スペースLS1に関する図である。
図4に示すバッテリ載置スペースLS1は、載置ベース板101の上に設けられた4枚の仕切板102により区画形成された3つのバッテリ載置部103を備えている。隣接する仕切板102同士の間隔は、可搬型バッテリ80の横幅よりも若干広くなっており、各バッテリ載置部103は、可搬型バッテリ80を立てた状態で受容できるようになっている。
【0032】
可搬型バッテリ80は、持ち手82を有する直方体状のバッテリケース81内にリチウムイオンバッテリのバッテリモジュール(図示せず)を収容して構成されている。バッテリケース81の各角部には、持ち運びの際にバッテリケース81が損傷することを防ぐための保護具が装着されているが、その図示は省略している。可搬型バッテリ80は、持ち手82を掴みながら、バッテリ載置部103内に載置したり、バッテリ載置部103内から取り出したりできるようになっている。バッテリ載置部103内に載置された可搬型バッテリ80は、電力供給装置90と電気的に接続され、電力供給装置90を介して、車体2に設けられている電動装置に対して電力を供給することが可能となる。バッテリ載置部103内から取り出された可搬型バッテリ80は、例えば、被災地等において持ち運びできる緊急用の電源として利用することができる。
【0033】
載置スペースLS1の載置ベース板101には、
図4に示すように、各バッテリ載置部103に対応して、バッテリ係止部材105(
図5を参照)の先端部が突出したり引っ込んだりする孔部106が形成されている。バッテリ係止部材105は、
図5に示すように、その基端部を中心に揺動可能に構成されており、バッテリ載置部103内に載置された可搬型バッテリ80を係止したり係止解除したりできるようになっている。また、バッテリ係止部材105は、係止ロック装置107により作動されるように構成されている。係止ロック装置107は、例えば、バッテリ係止部材105を揺動させる電動モータ(図示せず)等を有して構成され、バッテリ載置部103内に載置された可搬型バッテリ80を係止した状態のバッテリ係止部材105をその係止状態が維持されるようにロックしたり、係止状態を解除するためにロック解除したりできるようになっている。また、係止ロック装置107は、コントローラ60により、バッテリ係止部材105のロック(「係止ロック」とも称する)が有効とされたり無効とされたりするように制御されるように構成されている。
【0034】
係止ロック装置107は、係止ロックが有効とされると、可搬型バッテリ80が載置されているバッテリ載置部103において、その可搬型バッテリ80をバッテリ係止部材105により係止させるとともに、その係止状態が維持されるようにロックする。このとき、可搬型バッテリ80をバッテリ載置部103から取り出すことはできなくなる。一方、係止ロックが無効とされると、可搬型バッテリ80が載置されているバッテリ載置部103において、その可搬型バッテリ80のバッテリ係止部材105による係止が解除され、バッテリ係止部材105を孔部106内に引っ込める。このとき、可搬型バッテリ80をバッテリ載置部103から取り出すことが可能となる。なお、係止ロックが有効とされた場合でも無効とされた場合でも、可搬型バッテリ80が載置されていないバッテリ載置部103においては、係止ロック装置107によりバッテリ係止部材105が孔部106内に引っ込んだ状態とされる。そのため、可搬型バッテリ80が載置されていないバッテリ載置部103に可搬型バッテリ80を載置することはできる。
【0035】
図6に示す別態様(「扉ロック式」とも称する)のバッテリ載置スペースLS1は、載置ベース板101上に載置された可搬型バッテリ80を覆うカバー部材110を備えている。このカバー部材110は、カバー部材110内に可搬型バッテリ80を出し入れ可能な大きさの開口部111を有しており、その開口部111には、当該開口部111を開閉するカバー扉112が上開き揺動可能に設けられている。このカバー扉112は、作業者が手動で開閉操作するようになっている。なお、カバー部材110内の構成は
図4に示すものと同様であり(但し、上述のバッテリ係止部材105、孔部106および係止ロック装置107は備えていない)、詳細な説明は省略する。
【0036】
カバー部材110には、カバー扉ロック装置108が設けられている。このカバー扉ロック装置108は、カバー扉112を閉じた状態で係止する扉係止部材や当該扉係止部材を作動させる電磁ソレノイド(いずれも図示せず)等を有して構成され、カバー扉112
が開口部111を閉鎖した状態を維持するようにカバー扉112をロックしたり、開口部111を開放できるようにするためにカバー扉112をロック解除したりできるようになっている。また、カバー扉ロック装置108は、コントローラ60により、カバー扉112のロック(「扉ロック」とも称する)が有効とされたり無効とされたりするように制御されるように構成されている。
【0037】
カバー扉ロック装置108は、扉ロックが有効とされると、カバー扉112が開口部111を閉鎖した状態を維持するようにカバー扉112をロックする。このとき、可搬型バッテリ80をカバー部材110内のいずれのバッテリ載置部103からも取り出すことができなくなり、いずれのバッテリ載置部103に対しても載置することができなくなる。一方、扉ロックが無効とされると、カバー扉ロック装置108は、カバー扉112の係止を解除する。このとき、カバー扉112を開けることが可能となり、可搬型バッテリ80が載置されたバッテリ載置部103から可搬型バッテリ80を取り出すこと、および可搬型バッテリ80が載置されていないバッテリ載置部103に可搬型バッテリ80を載置することができるようになる。なお、以下の説明では、係止ロック装置107とカバー扉ロック装置108とのことを特に区別しないときは、これらを総称して、可搬型バッテリロック装置109ともいう。
【0038】
上記のように可搬型バッテリ80は、バッテリ載置スペースLS1に載置したり、バッテリ載置スペースLS1から取り出したりすることができる。しかしながら、持ち運びできるとはいっても可搬型バッテリ80はかなりの重量物である。そのため、可搬型バッテリ80を任意のタイミングで取り出せるようにしてしまうと、昇降装置(ブーム30等)の姿勢によっては、可搬型バッテリ80が取り外された際に、取り外された可搬型バッテリ80の分だけ車両重量が減少することによって、高所作業車1の重心位置や重量バランスが悪くなり高所作業車1が不安定になる虞がある。そこで、高所作業車1では、昇降装置を取り出せるタイミングに制限を設けるとともに、載置されている可搬型バッテリ80の個数に応じて、昇降装置の作業可能範囲を設定できるようにしている。
【0039】
以下、主に
図7~
図11を参照して、可搬型バッテリ80を取り出すことが可能となる条件や、昇降装置の作業可能範囲の設定について説明する。なお、以下の説明において昇降装置の格納姿勢とは、
図7に示すように、車体2がフロントジャッキ10Fおよびリアジャッキ10Rにより水平に持ち上げ支持され、ブーム30が縮んだ状態でブーム受台28に支持されている状態のときの姿勢をいう。また、昇降装置の作業姿勢とは、
図8に示すように、車体2がフロントジャッキ10Fおよびリアジャッキ10Rにより水平に持ち上げ支持され、ブーム30がブーム受台28から離れた状態のときの姿勢をいう。
【0040】
高所作業車1には、昇降装置の姿勢を検出したり、可搬型バッテリ80の搭載個数を検出したりするため、種々の検出装置が配設されており、それらの検出装置から出力される検出信号がコントローラ60に入力されるようになっている。例えば、コントローラ60には、
図9に示すように、可搬型バッテリ検出器120からバッテリ載置スペースLS1に載置された可搬型バッテリ80の個数に応じたバッテリ載置数検出信号が入力される。また例えば、コントローラ60には、ブーム旋回角センサ121からブーム30(旋回台20)の旋回角度に応じた旋回角度検出信号が入力され、ブーム起伏角センサ122からブーム30の起伏角度に応じた起伏角度検出信号が入力され、ブーム長センサ123からブーム30の伸長量に応じた伸長量検出信号が入力され、作業台旋回角センサ124から作業台40の旋回角度に応じた旋回角度検出信号が入力される。
【0041】
また例えば、コントローラ60には、ジャッキ張出量センサ125からフロントジャッキ10Fおよびリアジャッキ10Rの車体側方への張り出し量に応じた張出量検出信号が入力され、ジャッキ接地センサ126からフロントジャッキ10Fおよびリアジャッキ1
0Rの接地検出信号が入力される。また例えば、コントローラ60には、走行速度センサ128から高所作業車1の走行速度に応じた走行速度検出信号が入力され、運転キャブ施錠センサ129から運転キャブ7の施錠状態に応じた運転キャブ施錠検出信号が入力される。また、コントローラ60には、架装部電源スイッチ8からのオン/オフ信号が入力される。
【0042】
可搬型バッテリ検出器120からのバッテリ載置数検出信号によりバッテリ載置スペースLS1に載置された可搬型バッテリ80の個数が分かる。ブーム旋回角センサ121からの旋回角度検出信号、ブーム起伏角センサ122からの起伏角度検出信号、ブーム長センサ123からの伸長量検出信号、作業台旋回角センサ124からの旋回角度検出信号、ジャッキ張出量センサ125からの張出量検出信号、およびジャッキ接地センサ126からの接地検出信号により、昇降装置が格納姿勢であるか作業姿勢であるかが分かる。走行センサ128からの走行速度検出信号により、車体2が走行しているか否かが分かる。運転キャブ施錠センサ129からの運転キャブ施錠検出信号により、運転キャブ7が施錠された状態であるのか否かが分かる。架装部電源スイッチ8からのオン/オフ信号により、架装部電源がオン状態であるかオフ状態であるのかが分かる。
【0043】
コントローラ60は、
図9に示すように、可搬型バッテリロック制御部61と、作業範囲設定部63とを有している。可搬型バッテリロック制御部61には、可搬型バッテリロック装置109のロック(係止ロックまたは扉ロック)を有効とするか無効とするかを決めるための状況データが記憶されている。可搬型バッテリロック制御部61は、架装部電源スイッチ8からのオン/オフ信号および各検出装置から出力される検出信号に基づき、上記状況データに合致する状況であるか否かを判別し、当該判別に基づき、可搬型バッテリロック装置109のロックを有効とするか無効とする。作業範囲設定部63には、車体2を転倒させることなくブーム30の先端部(作業台40)を移動させることのできる領域として定められた作業可能範囲のデータが記憶されている。また、作業範囲設定部63には、可搬型バッテリ80の載置個数(本例では、0~3個のいずれか)に対応する作業可能範囲のデータが記憶されている。作業範囲設定部63は、可搬型バッテリ検出器120からのバッテリ載置数検出信号に基づいて、作業可能範囲のデータ群の中から可搬型バッテリ80の載置個数に応じた作業可能範囲のデータを読み出す。そして、作業範囲設定部63は、読み出された作業可能範囲のデータを、現在の可搬型バッテリ80の載置個数により許容できるブーム30の先端部の移動可能領域として設定する。
【0044】
なお、作業範囲設定部63による作業可能範囲(移動可能領域)の設定は、初期設定と再設定とがある。初期設定は、作業開始時に行われる。具体的には、格納姿勢にある昇降装置を作動開始する時点(架装部電源がオン状態であることが必要条件となる)において、そのときの可搬型バッテリ80の載置個数に基づき行われる。初期設定を行うことで、可搬型バッテリ80の載置個数に応じて昇降装置の作業可能範囲を適正に設定した状態で作業を開始することができる。再設定は、作業再開時や作業中(いずれも架装部電源がオン状態であることが必要条件となる)に、可搬型バッテリ80の載置個数が変化した場合に行われることがある。再設定を行うことで、可搬型バッテリ80の載置個数の変化に対応して昇降装置の作業可能範囲を適正に設定し直すことができる。
【0045】
図10に、運転キャブ施錠、走行時、架装部電源オンで格納姿勢、架装部電源オフで格納姿勢、架装部電源オンで作業姿勢、架装部電源オフで作業姿勢という各状況下で、スロットインロック式での係止ロックが有効とされるか無効とされるかについて示している。また、
図10には、各状況下で作業可能範囲を再設定するか否かについても示している。
図10に示すように、スロットインロック式での係止ロックは、運転キャブ施錠、走行時、架装部電源オンで作業姿勢、架装部電源オフで作業姿勢という各状況下では有効とされる。係止ロックが有効とされた場合、可搬型バッテリ80の追加載置は可となる一方、可
搬型バッテリ80の取出しは不可となる。また、スロットインロック式での係止ロックは、架装部電源オンで格納姿勢という状況下または架装部電源オフで格納姿勢という状況下では、無効とされる。係止ロックが無効とされた場合、可搬型バッテリ80の追加載置も、可搬型バッテリ80の取出しも可となる。運転キャブ施錠の状況下において係止ロックを有効とすることで、可搬型バッテリ80の盗難を防止することが可能となる。また、走行時の状況下において係止ロックを有効とすることで、可搬型バッテリ80の走行時の脱落を防止することが可能となる。
【0046】
また、作業可能範囲の再設定は、運転キャブ施錠、走行時、架装部電源オフで格納姿勢、架装部電源オフで作業姿勢という各状況下では行われず、架装部電源オンで格納姿勢という状況下では行われる。また、架装部電源オンで作業姿勢という状況下では、可搬型バッテリ80が追加載置された場合に行われる。
【0047】
図11に、運転キャブ施錠、走行時、架装部電源オンで格納姿勢、架装部電源オフで格納姿勢、架装部電源オンで作業姿勢、架装部電源オフで作業姿勢という各状況下で、扉ロック式での扉ロックが有効とされるか無効とされるかについて示している。また、
図11には、各状況下で作業可能範囲を再設定するか否かについても示している。
図11に示すように、扉ロック式での扉ロックは、スロットインロック式での係止ロックと同様に、運転キャブ施錠、走行時、架装部電源オンで作業姿勢、架装部電源オフで作業姿勢という各状況下では有効とされる。係止ロックが有効とされた場合、可搬型バッテリ80の追加載置も、可搬型バッテリ80の取出しも不可となる。また、扉ロック式での扉ロックは、架装部電源オンで格納姿勢または架装部電源オフで格納姿勢の状況下では、無効とされる。係止ロックが無効とされた場合、可搬型バッテリ80の追加載置も、可搬型バッテリ80の取出しも可となる。運転キャブ施錠の状況下において係止ロックを有効とすることで、可搬型バッテリ80の盗難を防止することが可能となる点、走行時の状況下において係止ロックを有効とすることで、可搬型バッテリ80の走行時の脱落を防止することが可能となる点は、スロットインロック式の場合と同様である。
【0048】
また、作業可能範囲の再設定は、運転キャブ施錠、走行時、架装部電源オフで格納姿勢、架装部電源オンで作業姿勢、架装部電源オフで作業姿勢という各状況下では行われず、架装部電源オンで格納姿勢という状況下では行われる。
【0049】
以上説明したように、高所作業車1では、昇降装置が格納姿勢でない場合は可搬型バッテリ80のバッテリ載置スペースLS1からの取出しが規制される。そのため、昇降装置が作業姿勢である場合に可搬型バッテリが取り出されたことによって、作業中の高所作業車1の重心位置や重量バランスが悪くなり高所作業車1が不安定になって転倒する危険性が増すことを防止することが可能となる。
【0050】
上述の実施形態においては、昇降装置が作業姿勢である場合は可搬型バッテリの取出しが規制されるが、作業姿勢ではあっても、可搬型バッテリの取出しより車体の安定性が低下する可能性が僅少と判断できる場合は、可搬型バッテリの取出しを行えるようにしてもよい。
【0051】
上述の実施形態においては、スロットインロック式の係止ロックに用いる係止部材が車体側に設けられているが、可搬型バッテリ側に係止部材を設けてもよい。また、機械的な係止部材を設けるのではなく、例えば、磁力により可搬型バッテリを保持するように構成してもよい。
【0052】
上述の実施形態では、本発明に係る作業機械として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、例えば自走式の高所
作業車に対しても適用可能である。また、穴掘建柱車やクレーン車などの他の作業車に本発明を適用してもよい。また、走行可能な作業車以外の作業機械、例えば、所定箇所に設置されて作業装置を作動させる作業機械(例えば、設置型高所作業機械)に対しても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 高所作業車
2 車体
10F フロントジャッキ
10R リアジャッキ
20 旋回台
28 ブーム受台
30 ブーム
40 作業台
52 油圧ポンプ
60 コントローラ
70 固定設置バッテリ
80 可搬型バッテリ
102 仕切板
103 バッテリ載置部
105 バッテリ係止部材
107 係止ロック装置
108 カバー扉ロック装置
110 カバー部材
112 カバー扉