IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2023-177486インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法
<>
  • 特開-インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法 図1
  • 特開-インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法 図2
  • 特開-インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法 図3
  • 特開-インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法 図4
  • 特開-インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法 図5
  • 特開-インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177486
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231207BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090194
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】中川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋介
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AM30
4F209AR14
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN07
4F209PN09
4F209PN13
5F146AA31
5F146DA27
(57)【要約】
【課題】パターンを形成するインプリント領域外におけるインプリント材の硬化抑制が可能なインプリント装置を提供する。
【解決手段】パターン部を有する型を用いて、インプリント材が塗布された基板上の複数のインプリント領域に順次、インプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、パターン部へのインプリント材の充填を促進する第1の気体を供給する第1の気体供給部と、インプリント材の硬化を阻害する第2の気体を供給する第2の気体供給部と、基板上の第1インプリント領域のインプリント材から型を引き離した後、次にインプリント処理を行う第2インプリント領域のインプリント材にパターン部を接触させるまでの間に、型と基板の隙間の周囲の空間に第2の気体の供給を行うように第2の気体供給部を制御する制御部と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン部を有する型を用いて、インプリント材が塗布された基板上の複数のインプリント領域に順次、前記インプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記パターン部への前記インプリント材の充填を促進する第1の気体を供給する第1の気体供給部と、
前記インプリント材の硬化を阻害する第2の気体を供給する第2の気体供給部と、
前記基板上の第1インプリント領域の前記インプリント材から前記型を引き離した後、次にインプリント処理を行う第2インプリント領域の前記インプリント材に前記パターン部を接触させるまでの間に、前記型と前記基板の隙間の周囲の空間に前記第2の気体の供給を行うように前記第2の気体供給部を制御する制御部と、を有する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1インプリント領域から前記型を引き離す前に、前記型と前記基板の周囲に前記第1の気体を供給するように前記第1の気体供給部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記型と前記基板との間の空間の圧力が安定している間に前記第2の気体を供給するように前記第2の気体供給部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1インプリント領域から前記型を引き離した後、前記パターン部の直下に前記第2インプリント領域が来るまでの間に、前記第2の気体を供給するように前記第2の気体供給部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記パターン部の直下に前記第2インプリント領域が移動した後、前記第2インプリント領域の前記インプリント材への前記型の接触を開始するまでの間に、前記第2の気体を供給するように前記第2の気体供給部を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2インプリント領域に前記インプリント処理をする場合、前記第1インプリント領域から前記型を引き離した後、前記パターン部の直下に前記第2インプリント領域が来るまでの間に、前記パターン部と前記基板との間の間隔を変更することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記基板上のインプリント領域の位置に応じて前記第2の気体の供給流量を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板上のインプリント領域の位置に応じて前記第2の気体の供給時間を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記第1の気体供給部は、複数の気体供給口を有し、
前記制御部は、前記第2インプリント領域の前記基板上の位置に応じて前記第1の気体供給部の前記複数の気体供給口の内のいずれの気体供給口から前記第1の気体を供給するかを制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記第2の気体供給部は、複数の気体供給口を有し、
前記制御部は、前記第2インプリント領域の前記基板上の位置に応じて前記第2の気体供給部の前記複数の気体供給口の内のいずれの気体供給口から前記第2の気体を供給するかを制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記第1の気体供給部の気体供給口の数よりも、前記第2の気体供給部の気体供給口の数の方が多いことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記第1の気体供給部の前記複数の気体供給口は、前記型の外周に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のインプリント装置。
【請求項13】
前記第2の気体供給部の前記複数の気体供給口は、前記型の外周に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のインプリント装置。
【請求項14】
前記第2インプリント領域は、前記第1インプリント領域の隣の領域であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項15】
パターン部を有する型を用いて、インプリント材が塗布された基板上の複数のインプリント領域に順次、前記インプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント方法において、
前記パターン部への前記インプリント材の充填を促進する第1の気体を供給する第1の気体供給工程と、
前記インプリント材の硬化を阻害する第2の気体を供給する第2の気体供給工程と、
前記第2の気体供給工程において、前記基板上の第1インプリント領域の前記インプリント材から前記型を引き離した後、次にインプリント処理を行う第2インプリント領域の前記インプリント材に前記パターン部を接触させるまでの間に、前記型と前記基板の隙間の周囲の空間に前記第2の気体の供給を行うことを特徴とするインプリント方法。
【請求項16】
請求項1に記載のインプリント装置を用いて前記基板に前記パターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターン形成工程で前記パターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上のインプリント材をモールド(型)で成形(成型)して硬化させ、基板上にパターンを形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術はインプリント技術と呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細のパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術の一つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置は、基板上に塗布された光硬化性のインプリント材にモールドを接触させ(押印)、光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離す(離型)ことで、基板上にパターンを形成する。ここで、押印の際、型とインプリント材との間の空気(残留ガス)が未硬化のインプリント材に気泡として混入して未充填欠陥(パターン欠陥)が生じることがある。
【0004】
そこで、特許文献1では、モールドと基板との間の空間をインプリント材に対して溶解性が高いまたは拡散性が高いガス、或いは、その両方であり、酸素を含まないガス(以下、単に「ガス」という)で飽和させることにより、気泡の残留を抑止している。また、特許文献2のインプリント装置は、型とインプリント材とを接触させた状態でガスの供給を行い、型とインプリント材を引き離す際に型と基板との間の空間にガスを供給する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007-509769号公報
【特許文献2】特開2019-91741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記インプリント装置において、パターン形成対象のインプリント領域のインプリント材が充分に硬化するのに必要な光(照射光)を照射する際、当該インプリント領域外で隣接する領域に供給されているインプリント材にも光が照射されてしまうる場合がある。この場合、パターン形成対象のインプリント領域外で隣接する領域に供給されているインプリント材の一部が硬化しうる。このため、基板上の複数のインプリント領域にパターンを順次形成する場合、パターン形成前にインプリント材の一部が硬化してしまいパターン形成不良が発生してしまう可能性がある。
【0007】
光硬化法を採用したインプリント装置に用いられるインプリント材は、供給されている領域上の空間に酸素が存在すると硬化が阻害される特性を有する。ここで、基板と型との間隙の空間を特許文献1や2の方法を用いて上記ガスで満たした状態でインプリント材を硬化させる場合、パターンを形成するインプリント領域外で隣接する領域又は近傍の領域上には、酸素が存在しない状態となる。そのため、この状態で光を照射すると、パターンを形成するインプリント領域外で隣接する領域又は近傍の領域上のインプリント材の一部が硬化してしまうことがある。
【0008】
そこで、本発明においては、パターンを形成するインプリント領域外におけるインプリント材の硬化抑制が可能なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、パターン部を有する型を用いて、インプリント材が塗布された基板上の複数のインプリント領域に順次、インプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、パターン部へのインプリント材の充填を促進する第1の気体を供給する第1の気体供給部と、インプリント材の硬化を阻害する第2の気体を供給する第2の気体供給部と、基板上の第1インプリント領域のインプリント材から型を引き離した後、次にインプリント処理を行う第2インプリント領域のインプリント材にパターン部を接触させるまでの間に、型と基板の隙間の周囲の空間に第2の気体の供給を行うように第2の気体供給部を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パターンを形成するインプリント領域外におけるインプリント材の硬化抑制が可能なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係るインプリント装置を示す概略図である。
図2】実施例1に係るインプリント装置による気体供給処理と硬化処理を示した図である。
図3】実施例1のインプリント装置による気体供給処理と硬化処理を示すフローチャートである。
図4】実施例1に係る気体供給タイミングの一例を示した図である。
図5】実施例1に係るインプリント処理を最初に行うインプリント領域における気体供給処理と硬化処理を示した図である。
図6】物品の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例や図を用いて説明する。尚、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。また、以下の図においては、基板2上のインプリント材7に対して照射光21を照射する照明系の光軸と平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内においてX軸及びY軸が互いに直交するX軸およびY軸を取る。
【0013】
<実施例1>
図1は、本発明のインプリント装置1の概略構成を示す図である。図1(A)はインプリント装置1を-Y方向から見た図であり、図1(B)はモールド4の周辺を+Z方向から-Z方向に見た図である。
【0014】
実施例1に係るインプリント装置1は、半導体デバイスなどのデバイスの製造に使用され、被処理である基板2上の未硬化のインプリント材(樹脂)7をモールド4で成形し、基板2上にインプリント材のパターンを形成する装置である。なお、ここでは光硬化法を採用したインプリント装置として以下説明する。
【0015】
基板2上にインプリント材7のパターンを形成するために行うインプリント処理(インプリント工程)を以下に説明する。実施例1では、基板2上には複数のインプリント領域8が設定されており、このインプリント領域に順次インプリント処理を実施することで基板2上に複数のインプリン材のパターンが形成される。
【0016】
インプリント処理として、モールド4と基板2とが所定の位置関係に位置決めされた後、モールド保持部6を-Z方向に移動し、パターン部5をインプリント領域8のインプリント材7に接触させる(接触工程)。次に、モールド4のパターン部5をインプリント材7に接触させた状態でインプリント材7を硬化させる(硬化工程)。次に、インプリント領域8のインプリント材7からモールド4のパターン部5を引き離す(離型工程)。この一連の工程を行うことで基板2上にインプリント材のパターンを形成することができる。このインプリント処理は、基板2上におけるパターンを形成するインプリント領域8毎に行う。また、上記したインプリント処理に、接触工程の前にインプリント材7を基板2のインプリント領域8上に塗布(供給)する工程(塗布工程)を含めてもよい。
【0017】
基板2は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板であり、この被処理面には、モールド4に形成されたパターン部5によりパターン成形されるインプリント材7が塗布される。また基板2は、ガリ砒素ウエハ、複合接着ウエハ、石英を材料に含むガラスウエハ、液晶パネル基板、レクチルなど各種基板でもよい。また、外形形状も円形だけでなく方形などでもよく、その場合、後述する基板チャック200の外形も基板2の外形に合わせた形状にすればよい。
【0018】
モールド(型)4は、矩形の外周形状を有し、基板2の表面に対向する面(パターン面)に3次元状に形成されたパターン(回路パターンなどの基板2に転写すべき凹凸パターン)を備えたパターン部(メサ部)5を有する。モールド4は、紫外線等の照射光21を透過させることが可能な材料、例えば、石英で構成される。また、モールド4は、光照射部20より照射される照射光21が照射される面に、平面形状が円形で、かつ、ある程度の深さのキャビティを有していてもよい。
【0019】
インプリント材7は、紫外線等の照射光21を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂であり、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。光硬化性樹脂は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。実施例1では基板2上の全面にインプリント材7が付与(供給、塗布)された状態で基板2が基板ステージ3に保持される。
【0020】
尚、インプリント材7は、基板2上に付与(塗布)する際には、スピンコータやスリットコートにより基板2上に膜状に付与されてもよい。また、液体噴射ヘッド等の供給装置により、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板2上に付与されてもよい。
【0021】
実施例1におけるインプリント装置1は、基板ステージ3と、モールド保持部6と、気体供給部と、第1の気体制御部11と、第2の気体制御部14と、制御部と、光照射部20と、を有する。
【0022】
基板ステージ3は、基板2を保持し、モールド4と基板2上のインプリント領域8とインプリント材7との接触(押し付け)に際してモールド4とインプリント領域8との位置合わせを実施する。即ち、基板ステージ3は、基板2を相対的に移動させてモールド4とインプリント領域8との位置合わせを実施する基板移動部として機能する。
【0023】
また、基板ステージ3は、各軸方向に移動可能とするステージ駆動機構(不図示)を有する。ステージ駆動機構は、X軸及びY軸の各方向に対して、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、Z軸方向の位置調整のための駆動系や、基板2のθ方向の位置調整機能、または基板2の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成としてもよい。
【0024】
モールド保持部6は、モールド4を保持しながら、モールド4を移動させる駆動機構を有する。モールド保持部6は、モールド4における照射光21の照射面の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることでモールド4の保持が可能である。
【0025】
モールド保持部6は、モールド4と基板2上のインプリント材7との押し付け、または引き離しを選択的に行うようにモールド4を各軸方向に相対的に移動させる移動部としても機能する。また、モールド4の高精度な位置決めに対応するために、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。さらに、Z軸方向だけでなく、X軸方向やY軸方向、または各軸のθ方向の位置調整機能や、モールド4の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成としてもよい。
【0026】
なお、インプリント装置1におけるモールド4のパターン部5のインプリント材7との接触及び引き離し動作は、モールド4をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ3をZ軸方向に移動させることで実現してもよい。または、その双方を相対的に移動させてもよい。
【0027】
気体供給部(不図示)は、第1の気体供給部10と、第2の気体供給部13により構成される。第1の気体供給部10は、モールド4と基板2との間の空間、即ち、モールド4と基板2の隙間の周囲の空間に、パターン部へのインプリント材の充填を促進する第1の気体9を供給する。第1の気体供給部10が、第1の気体9を供給することでモールド4と基板2との間の空間を第1の気体9に置換する。
【0028】
ここで、インプリント材7を硬化させるときにモールド4とインプリント材7との間に気泡が含まれると、気泡の箇所にはインプリント材7が充填されず、硬化物のパターンに欠損が生じてしまう可能性がある。そのため、第1の気体供給部10が供給する第1の気体9は、インプリント材7を硬化させる際に酸素阻害を抑制するため空気より酸素濃度が低い気体であって、押印時に、モールド4またはインプリント材7に透過しやすい透過性ガスを使用することが好ましい。尚、第1の気体9は、酸素を含まない気体であることがより好ましい。
【0029】
透過性ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)等の希ガスが用いられる。さらに第1の気体9は、窒素ガス、及び凝縮性ガス(例えば、ペンタフルオロプロパン(PFP))等の少なくとも1つを含むガスであってもよい。
【0030】
第1の気体供給部10は、図1(B)に示すように、複数の気体供給口として、気体供給口10a、10b、10c、10dを有する。第1の気体供給部10が供給する第1の気体9は、当該気体供給口10a、10b、10c、10dからモールド4と基板2との間の空間に供給される。また、図1(B)に示すように気体供給口10a、10b、10c、10dは、モールド4を取り囲むようにモールド4の外周に配置される。尚、第1の気体供給部10は、上記のように4つの気体供給口を有しているが、これは一例であり、4つ以上であってもよい。
【0031】
第1の気体制御部11は、CPUやメモリ(記憶部)などを含み、少なくとも1つのコンピュータで構成される。第1の気体制御部11は、第1の気体供給部10に回線を介して接続し、第1の気体供給部10を制御する。第1の気体供給部10を制御することで、気体供給口10a、10b、10c、10dごとに第1の気体9の供給量または供給時間が制御される。即ち、第1の気体制御部11は、基板2上のインプリント領域8の位置に応じて、第1の気体供給部10を制御し、気体供給口10a、10b、10c、10dから供給する第1の気体9の供給量または供給時間を制御することができる。また、第1の気体制御部11は、気体供給口10a、10b、10c、10dごとに第1の気体9の供給量や供給時間の制御に加え、第1の気体9の供給の開始及び供給の停止を制御することができる。
【0032】
第2の気体供給部13は、モールド4と基板2との間の空間、即ちモールド4と基板2の隙間の周囲の空間に第2の気体12を供給する。第2の気体供給部13が、第2の気体12を供給することで、パターン部5近傍の第2の気体12の濃度を上昇させることができる。第2の気体供給部13が供給する第2の気体12は、照射光21の照射によるインプリント材7の硬化を阻害する気体であり、例えば、酸素を含む気体である。
【0033】
第2の気体供給部13は、図1(B)に示すように、複数の気体供給口として、気体供給口13a、13b、13c、13dを有する。第2の気体12は、第2の気体供給部13の気体供給口13a、13b、13c、13dからモールド4と基板2との間の空間に供給される。また、図1(B)に示すように気体供給口13a、13b、13c、13dは、モールド4を取り囲むようにモールド4の外周に配置される。尚、第2の気体供給部13は、図1(B)に示すように8つの気体供給口を有しているが、これは一例であり、8つ以上又は8つ以下であってもよい。尚、図1(B)に示すように、第1の気体供給部10が有する気体供給口の数よりも第2の気体供給部13が有する気体供給口の数が多いように構成されることが好ましい。
【0034】
第2の気体制御部14は、CPUやメモリ(記憶部)などを含み、少なくとも1つのコンピュータで構成される。第2の気体制御部14は、第2の気体供給部13に回線を介して接続し、第2の気体供給部13を制御する。第2の気体供給部13を制御することで、気体供給口13a、13b、13c、13dごとに第2の気体12の供給量または供給時間が制御される。即ち、第2の気体制御部14は、基板2上のインプリント領域8の位置に応じて、第2の気体供給部13を制御し、気体供給口13a、13b、13c、13dから供給する第2の気体12の供給量または供給時間を制御することができる。また、第2の気体制御部14は、気体供給口13a、13b、13c、13dごとに第2の気体12の供給量または供給時間の制御に加え、第2の気体12の供給の開始及び供給の停止を制御することができる。
【0035】
制御部(不図示)は、CPUやメモリ(記憶部)などを含み、少なくとも1つのコンピュータで構成される。制御部は、インプリント装置1の各構成要素に回線を介して接続される。また、制御部は、メモリに格納されたプログラムに従って、インプリント装置1全体の各構成要素の動作調整などを統括的に制御する。また、制御部は、インプリント装置1の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよい。さらに、インプリント装置1の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置1とは別の場所に設置し遠隔で制御してもよい。
【0036】
また、制御部は、第1の気体制御部11及び第2の気体制御部14に回線を介して接続され、それぞれの制御部を制御する。即ち、第1の気体供給部10を制御し、気体供給口10a、10b、10c、10dから供給する第1の気体9の供給量及び供給時間の制御に加え、第1の気体9の供給の開始及び供給の停止も制御することができる。さらに、第2の気体供給部13を制御し、気体供給口13a、13b、13c、13dから供給する第1の気体9の供給量及び供給時間の制御に加え、第1の気体9の供給の開始及び供給の停止も制御することができる。
【0037】
光照射部20は、インプリント処理の際に、基板2上のインプリント材7に対して照射光21を照射する。光照射部20は、不図示の露光光源と、当該露光光源から照射された照射光21をインプリントに適切な光に調整する光学素子とから構成される。
【0038】
インプリント材7は、前述のように、少なくとも、重合性化合物および光重合開始剤を含む。インプリント材7の硬化は、照射光21が照射された光重合開始剤から発生するラジカルによって重合性化合物が重合反応を起こすことによって引き起こされる。酸素は、照射光21の照射によって光重合開始剤から発生したラジカルと反応してラジカルを消失させる。これによって、重合性化合物の重合反応が阻害される。これは、インプリント材7の硬化が阻害されることを意味する。
【0039】
ここで、基板2上のインプリント領域8のインプリント材7にパターン部5が接触した状態で、パターン部5近傍に第2の気体12が供給されることで、当該インプリント領域8外で隣接する領域上のインプリント材7の硬化が阻害(抑制)することができる。
【0040】
図2は、実施例1に係る気体供給処理と硬化処理の一例を示した図である。図2(A)は、インプリント領域80のインプリント材7にモールド4のパターン部5を接触させている状態を示す図である。図2(B)は、インプリント領域80からモールド4を引き離している状態を示す図である。図2(C)は、インプリント領域80からインプリント領域81にモールド4を移動させている状態を示す図である。図2(D)は、パターン部5をインプリント領域81のインプリント材7に接触させインプリント材7を充填させている状態を示す図である。図2(E)は、インプリント領域81のインプリント材7に照射光21を照射し、パターン部5に充填されたインプリント材7を硬化させている状態を示す図である。図3は、実施例1のインプリント装置による気体供給と硬化処理を示すフローチャートである。図4は、実施例1に係る気体供給タイミングの一例を示した図である。
【0041】
ここで、図2及び図3のフローチャートを参照して、インプリント領域80とインプリント領域80と隣り合うインプリント領域81の順にインプリント処理を行う場合における実施例1の気体供給方法の一例を以下に説明する。なお、図3のフローチャートで示す各動作(処理)は、制御部がコンピュータプログラムを実行することによって、制御される。
【0042】
尚、あるインプリント領域にインプリント処理をする直前にインプリント処理をするインプリント領域を事前インプリント領域(直前インプリント領域)とも呼ぶ。この場合は、インプリント領域80が事前インプリント領域(第1インプリント領域)に該当する。またここでいう、あるインプリント領域とは、所定のインプリント領域ともいい、この場合は、インプリント領域81が所定のインプリント領域(第2インプリント領域)に該当する。
【0043】
まず、ステップS101では、制御部は、ステージ駆動機構を駆動させて、モールド4のパターン部5がインプリント領域81の直上となるように基板ステージ3を移動させ、位置合わせを行う。次に、図2(A)に示すように、制御部は、インプリント領域80にパターンを形成する際、インプリント領域80上のインプリント材7とパターン部5が接触している状態でモールド4を引き離す前に第1の気体9の供給をする(第1の気体供給工程)。尚、パターン部5にインプリント材7が充填中または充填済みの状態であっても、パターン部5がインプリント材7と接触している状態であれば何れのタイミングでも第1の気体9を供給してよい。
【0044】
この時、第1の気体9は、インプリント領域80(第1インプリント領域)の次にパターン形成を行うインプリント領域81(第2インプリント領域)側に配置された第1の気体供給部10の気体供給口より供給することが好ましい。尚、ここではインプリント領域80の次にインプリント領域81にパターンを形成するものとして説明しているため、図2(A)に示すように気体供給口10aから第1の気体9の供給している。しかし、何れのインプリント領域であっても、上記と同様に次にパターン形成を行うインプリント領域側に配置された気体供給口より第1の気体9を供給することが好ましい。
【0045】
インプリント領域80のインプリント材7とパターン部5とが接触している状態においては、モールド4と基板2との間隙がパターン部5の厚みht分しかなく非常に狭い。よって、モールド4と基板2との間の流体抵抗が非常に高く、充填中に供給される第1の気体9は、ほとんどモールド4と基板2との間には侵入せず、モールド4と第1の気体供給部10との間の空間の第1の気体9の濃度を高めることになる。
【0046】
尚、パターン部5にインプリント材の充填が完了したら、光照射部20からの光をインプリント領域80上のインプリント材7に照射しインプリント材7を硬化させる(硬化工程)。インプリント材7の硬化は、パターン部5がインプリント材7に接触した状態で行う。
【0047】
次に、ステップS102では、制御部は、図2(B)に示すように、パターン部5をインプリント領域80から引き離す(離型工程)。モールド4の周囲の空間が第1の気体9で満たされている状態で、インプリント領域80からパターン部5を引き離すと、モールド4と基板2との間隙の体積が大きくなりモールド4の周囲の空間に対して低圧(負圧)となる。これにより、流れF1が起こり、第1の気体9がモールド4と基板2の間に引き込まれる(X軸の+方向(図中左側方向)に引き込まれる)。
【0048】
尚、パターン部5をインプリント領域80から引き離す際には、図2(C)に示すように、モールド4と基板2との間隙がH1となるまで離す。H1は、Z方向におけるモールド4の基板2側の面から基板2の表面までの距離を示す。尚、H1は、従来の離型工程における引き離し距離より小さい値とならなければ、何れであってもよく任意に設定することができる。
【0049】
次に、ステップS103では、制御部は、モールド4と基板2とがH1まで離れた後に、パターン部5がインプリント領域80から次にパターンを形成するインプリント領域であるインプリント領域81の直上に配置されるように基板ステージ3を移動させる。
【0050】
この時、第1の気体9は、基板ステージ3の移動に伴うクエット流れF2でX軸の+方向に図2(B)時より、さらに引き込まれる。この時、上記した離型動作が完了し、モールド4と基板2との間隙がH1になっていると、モールド4と基板2との間は充填中と比べて流体抵抗が低くなる。
【0051】
次に、ステップS104では、第2の気体供給部13は第2の気体12を供給する(第2の気体供給工程)。この時、パターン部5がインプリント領域80から次にパターンを形成するインプリント領域であるインプリント領域81のインプリント材7にモールド4のパターン部5を接触させるまでの間に第2の気体を供給すればよい。尚、インプリント領域80からモールド4を引き離した後、パターン部5の直下にインプリント領域81が来るまでの間に第2の気体供給部から第2の気体を供給することが好ましい。
【0052】
これにより、モールド4と基板2との間でポアズイユ流れF3が起こり、第2の気体12がモールド4と基板2の間の空間に侵入する。ただし、この時、モールド4と基板2との間の体積は一定なので、モールド4と基板2との間の圧力もモールド4の周囲の空間に対して常圧となる。この時、発生するポアズイユ流れF3は、離型動作時に発生する流れF1より小さな流れになるため、大量の第2の気体12がモールド4と基板2との間に侵入して、第1の気体9の濃度を大きく低下させることはない。
【0053】
次に、ステップS105では、図2(D)に示すように、パターン部5をインプリント領域81のインプリント材7に接触させ、パターン部5にインプリント材7を充填させる。この時、パターン部5とインプリント領域81との間に引き込まれた第1の気体9がパターン部5とインプリント領域81が近づく間に押し広げられる。そのため、インプリント領域81上が充分に第1の気体9で置換された状態でパターン部5をインプリント材7に押し付けることができる。
【0054】
また、この時、モールド4と基板2との間隙がH1の間に供給された第2の気体12はパターン部5の周囲の空間の第2の気体12の濃度を上昇させている。即ち、パターン部5の周囲の空間の酸素濃度を上げている。尚、第2の気体12の供給量は、パターン部5とインプリント材7を接触させた時の充填性を阻害しない範囲の量に抑えておくことが望ましい。
【0055】
次に、ステップS106では、図2(E)に示すように、インプリント材7の充填が完了したインプリント領域81に照射光21を照射し、パターン部5に充填されたインプリント材7を硬化させる。この時、パターン部5に充填されたインプリント材7を充分に硬化するのに必要な照射光21を照射すると、照射光21の照射領域が図2(E)に示す黒破線のようにインプリント領域81外で隣接するインプリント領域まで広がることがある。
【0056】
実施例1では、インプリント領域81外で隣接するインプリント領域、特に後にインプリント予定の未硬化のインプリント材7上の空間にはインプリント材の硬化阻害する第2の気体12が供給されている。そのため、後にインプリント予定のインプリント領域上の未硬化のインプリント材7の硬化を抑制することができる。
【0057】
ここで、上記したインプリント領域80が第1ショットの場合、即ち、基板2において最初にインプリント処理をする領域である場合、インプリント領域80とパターン部5との間の空間における気体供給方法について、図5を参照して説明する。
【0058】
図5は、実施例1に係る基板2の最初にインプリント処理をするインプリント領域における気体供給と硬化処理を示した図である。尚、図5の例においても、インプリント領域80が事前インプリント領域(第1インプリント領域)として、インプリント領域81を所定のインプリント領域(第2インプリント領域)とする。また、図2の説明と重複する箇所は説明を省略する。
【0059】
まずは、図5(A)に示すように、モールド4と基板2との間隙がH1である状態で且つインプリント領域80が気体供給口10aの方向に位置した状態で、第1の気体9を供給する。次に、図5(B)に示すように、パターン部5直下にインプリント領域80が来るように基板ステージ3を移動させる。
【0060】
この時、第1の気体9は、基板ステージ3の移動に伴うクエット流れF2により、モールド4と基板2の間に引き込まれる(X軸の+方向(図中左側方向)に引き込まれる)。これにより、インプリント領域80とパターン部5との間の空間を第1の気体9で満たすことができる。次に、図5(C)に示すように、第2の気体12を供給する。これにより、モールド4と基板2との間でポアズイユ流れF3が起こり、第2の気体12がモールド4と基板2の間の空間に侵入する。
【0061】
次に、図5(D)に示すように、パターン部5をインプリント領域80のインプリント材7に接触させ、パターン部5にインプリント材7を充填させる。この時、モールド4と基板2との間隙がH1の間に供給された第2の気体12は、パターン部5の周囲の空間の第2の気体12の濃度、つまり酸素濃度を上げている。
【0062】
次に、図5(E)に示すように、パターン部5にインプリント材7の充填が完了したインプリント領域80に照射光21を照射し、パターン部5に充填されたインプリント材7を硬化させる。この時、照射光21の照射領域が黒破線のようにインプリント領域81まで広がることがあるが、インプリント領域81の未硬化のインプリント材7上の空間にはインプリント材の硬化を阻害する第2の気体12が供給されている。そのため、インプリント領域81上のインプリント材7の硬化を抑制することができる。以降のインプリント領域におけるインプリント処理では、図3に示すような処理順で順次インプリント処理を実施して行く。
【0063】
以上のように、実施例1によれば、モールド4のパターン部5へのインプリント材7の充填の促進に加え、パターンを形成するインプリント領域外で隣接する領域のインプリント材7の硬化抑制を可能とするインプリント装置1を提供することができる。
【0064】
尚、事前インプリント領域(第1インプリント領域)から所定のインプリント領域(第2インプリント領域)が位置する方向に向けて移動する方向に対して前方に位置する気体供給口から第1の気体9または第2の気体12を供給してもよい。
【0065】
尚、気体供給口10a、10b、10c、10dが配置される位置は、モールド4を取り囲む位置(4方向から囲む位置)にあるのであれば、図1(B)に示している位置に限らず、図1(B)に示している位置とは異なる位置に配置してもよい。また、気体供給口13a、13b、13c、13dが配置される位置は、モールド4を取り囲む位置(4方向から囲む位置)にあるのであれば、図1(B)に示している位置に限らず、図1(B)に示している位置とは異なる位置に配置してもよい
【0066】
尚、第1の気体供給部10は、第1の気体9の供給だけではなく、周囲の気体を吸引することができる吸引機能を備えていてもよい。また、第2の気体供給部13は、第2の気体12の供給だけでなく、周囲の気体を吸引することができる吸引機能を備えていてもよい。
【0067】
<実施例2>
以下、本発明の実施例2に係るインプリント装置1について説明する。実施例2として言及しない事項は、実施例1に従う。また、実施例2のインプリント装置1は実施例1のインプリント装置1と同様の構成であるため、インプリント装置1の構成の説明は省略する。実施例2では、第2の気体12の供給タイミングを実施例1と異なるタイミングで供給させる。第2の気体12の供給タイミング以外の気体供給と硬化処理については実施例1と同様であるため、重複する箇所は説明を省略する。
【0068】
実施例2においては、事前インプリント領域であるインプリント領域80の離型動作が完了し、モールド4と基板2との間の距離が一定となり、モールド4と基板2との間の圧力が一定となったら第2の気体12の供給を開始する。具体的には、モールド4の引き離し動作が完了した後であって、次にパターンを形成するインプリント領域への移動前(動作を停止している状態)で、モールド4と基板2との間の圧力が安定している状態となった際に、第2の気体12を供給する。この際の第2の気体12の供給は、次にパターンを形成するインプリント領域であるインプリント領域81に移動する前に供給を終了させてもよい。
【0069】
または、第2の気体12の供給は、インプリント領域80から次にパターンを形成するインプリント領域81への移動が完了してから供給を開始し、当該インプリント領域81のインプリント材7にパターン部5を接触させる前に供給を終了させてもよい。
【0070】
これにより、基板ステージ3の移動中は、第2の気体12は供給されない。基板ステージ3の移動中は、モールド4と基板2との間で不要な圧力変動や間隙距離変動が起こりうる。その状態で第2の気体12を供給すると供給量制御の精度が低下し、パターン部5の周囲の酸素濃度制御の精度が低下する恐れがある。
【0071】
以上のように、実施例2のインプリント装置1によれば、実施例1の効果に加え、基板ステージ3の移動中は、第2の気体12を供給しないことでより高精度にパターン部5の周囲の酸素濃度を制御できる。
【0072】
<実施例3>
以下、本発明の実施例3のインプリント装置1について説明する。実施例3として言及しない事項は、実施例1及び実施例2に従う。また、実施例3のインプリント装置1は実施例1のインプリント装置1と同様の構成であるため、インプリント装置1の構成の説明は省略する。実施例3では、第2の気体12の供給量を実施例1とは異なる量となるように制御する一例を示す。第2の気体12の供給量が異なる以外の気体供給処理と硬化処理については実施例1と同様であるため、重複する箇所は説明を省略する。
【0073】
実施例3においては、事前インプリント領域であるインプリント領域80の離型動作完了後から次にパターンを形成するインプリント領域81にパターン部5の直下が来るまでの間に、モールド4と基板2との間の間隔であるH1を変更する。H1の変更は、制御部が、通常の離型工程時よりもH1が大きくなるようにモールド4と基板2との引き離し距離を制御する。これにより、パターン部5と基板2の表面との距離が変更される。また、インプリント領域80の離型動作完了後から次のインプリント領域81のインプリント材7にパターン部5が接触するまでの間に、H1を変更するようにしてもよい。
【0074】
第2の気体12の供給時にモールド4と基板2との間で発生するポアズイユ流れF3は、モールド4と基板2との距離H1に依存する。ここで、H1が大きいほど流量は増加する。よって、H1を変更することでモールド4と基板2との間に侵入する第2の気体12の供給量を制御することができる。
【0075】
また、基板2上のインプリント領域8の位置に応じて、第2の気体12の供給量を変更してもよい。基板2を基板ステージ3に搭載したとき、基板2と基板ステージ3との間で段差及び隙間が生じる場合がある。この場合、インプリント領域8が基板2の外周部(基板2の端部)に位置すると第2の気体12を供給したときモールド4と基板2との間の空間に侵入する第2の気体12の量が、インプリント領域8が基板2の中央部に位置する場合と比べて変化することがある。
【0076】
よって、インプリント領域8の基板2上の位置に応じて、第2の気体供給部13から供給する第2の気体12の供給流量または供給時間の少なくとも一方を調整するように制御してもよい。これにより、基板2上のインプリント領域8の位置によらずパターン部5の周囲の第2の気体12の濃度(酸素濃度)を所望の値に制御することができる。
【0077】
以上のように、実施例3のインプリント装置1によれば、実施例1の硬化に加え、第2の気体12の供給量を制御することで高精度にパターン部5の周囲の酸素濃度を制御できる。
【0078】
<物品製造方法に係る実施例>
本実施例にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施例の物品の製造方法は、基板に塗布された組成物に上記のインプリント装置1を用いてパターンを形成する工程(基板に処理を行う工程)と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、組成物剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施例の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0079】
インプリント装置1を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、モールド(型)等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。モールドとしては、インプリント等の基板処理用のモールド等が挙げられる。
【0080】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、組成物マスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチングまたはイオン注入等が行われた後、組成物マスクは除去される。
【0081】
次に、物品の具体的な製造方法について図6を参照して説明する。図6(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面に組成物3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になった組成物3zが基板1z上に付与された様子を示している。
【0082】
図6(B)に示すように、モールド4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板1z上の組成物3zに向け、対向させる。図6(C)に示すように、組成物3zが付与された基板1zとモールド4zとを接触させ、圧力を加える(接触工程)。組成物3zはモールド4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を、モールド4zを透して照射すると、組成物3zは硬化する(硬化工程)。このとき本実施例では、装置内で取得した分光感度特性に基づき、最適光重合度となるような照射量で組成物に光を照射することが可能となる。
【0083】
図6(D)に示すように、組成物3zを硬化させた後、モールド4zと基板1zを引き離すと、基板1z上に組成物3zの硬化物のパターンが形成される(パターン形成工程、成形工程)。この硬化物のパターンは、モールド4zの凹部が硬化物の凸部に、モールド4zの凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、組成物3zにモールド4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0084】
図6(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図6(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。尚、モールド4zとして、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用のモールドを用いた例について述べたが、凹凸パターンがない平面部を有する平面テンプレートであってもよい。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、上述の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0086】
また、上述した各実施例における制御の一部または全部を上述した各実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワークまたは各種記憶媒体を介してインプリント装置1等に供給するようにしてもよい。そしてそのインプリント装置1等におけるコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0087】
1 インプリント装置
2 基板
4 モールド
5 パターン部
7 インプリント材
8 インプリント領域
9 第1の気体
10 第1の気体供給部
12 第2の気体
13 第2の気体供給部
21 照射光

図1
図2
図3
図4
図5
図6