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特開2023-177500移動ロボット、移動部材、及び移動ロボットの移動部材の製造方法
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  • 特開-移動ロボット、移動部材、及び移動ロボットの移動部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177500
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】移動ロボット、移動部材、及び移動ロボットの移動部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
B62D55/253 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090217
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】520305432
【氏名又は名称】株式会社SoftRoid
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大川(山田) 駿
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩也
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 亮平
(57)【要約】
【課題】移動ロボットの走行時の安定性を向上させることを目的としている。
【解決手段】胴体と、前記胴体に設けられた移動部材とを備え、前記移動部材は、走行時に回転駆動させられる駆動部を有し、前記駆動部は、格子構造部を有し、前記格子構造部には、中空部が形成され、且つ、前記格子構造部は、荷重に応じて前記中空部が形状変形するように構成される、移動ロボットが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、前記胴体に設けられた移動部材とを備え、
前記移動部材は、走行時に回転駆動させられる駆動部を有し、
前記駆動部は、格子構造部を有し、
前記格子構造部には、中空部が形成され、且つ、前記格子構造部は、荷重に応じて前記中空部が形状変形するように構成される、移動ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の移動ロボットであって、
前記格子構造部は、線状構造体が前記移動部材の横幅方向に並ぶように配置されて構成され、
前記線状構造体は、互いに間隔をあけて配置された線状部を有し、
前記中空部は、前記線状部に囲まれている、移動ロボット。
【請求項3】
請求項2に記載の移動ロボットであって、
前記横幅方向に隣接する前記線状構造体を第1及び第2線状構造体としたとき、
第1線状構造体の前記線状部と第2線状構造体の前記線状部とが、交差している、移動ロボット。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の移動ロボットであって、
前記中空部は、前記横幅方向に延びている、移動ロボット。
【請求項5】
請求項4に記載の移動ロボットであって、
前記駆動部は、蓋部を更に有し、
前記蓋部は、前記中空部を閉塞するように、前記格子構造部の端部に設けられ、
前記格子構造部の前記端部は、前記移動部材の前記横幅方向における端部である、移動ロボット。
【請求項6】
請求項1に記載の移動ロボットであって、
前記格子構造部を構成する材料は、エラストマー、ゴム、及びシリコンのうちの少なくとも1つで構成されている、移動ロボット。
【請求項7】
請求項1に記載の移動ロボットであって、
前記移動部材は、中実である外層部を更に有し、
前記外層部は、前記格子構造部の少なくとも一部を覆うように設けられている、移動ロボット。
【請求項8】
移動ロボットに取り付けられる移動部材であって、
走行時に回転駆動させられる駆動部を備え、
前記駆動部は、格子構造部を有し、
前記格子構造部には、中空部が形成され、且つ、前記格子構造部は、荷重に応じて前記中空部が形状変形するように構成される、移動部材。
【請求項9】
3次元造形装置を用いる、移動ロボットの移動部材の製造方法であって、
造形ステップを備え、
前記移動部材は、走行時に回転駆動する駆動部を有し、前記駆動部は、中空部が形成された格子構造部を有し、
前記造形ステップでは、前記3次元造形装置を用いて前記格子構造部を造形する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボット、移動部材、及び移動ロボットの移動部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無端のベルトと、ベルトの周囲に配置された複数の突起を備えたクローラ(移動部材)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-258088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、接地面に砂・ホコリがある状況では、クローラと接地面との間の摩擦係数が小さくなり、凝着摩擦力が低下する。特許文献1に記載のクローラは、接地面の状況によっては、クローラに発生させる摩擦力が確保しにくくなり、走行時の安定性が損なわれる、という課題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、移動ロボットの走行時の安定性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、胴体と、前記胴体に設けられた移動部材とを備え、前記移動部材は、走行時に回転駆動させられる駆動部を有し、前記駆動部は、格子構造部を有し、前記格子構造部には、中空部が形成され、且つ、前記格子構造部は、荷重に応じて前記中空部が形状変形するように構成される、移動ロボットが提供される。
【0007】
本発明によれば、移動部材の駆動部は格子構造部を有しており、この格子構造部は、荷重に応じて形状変形するように構成されている。このため、走行時において、移動部材の駆動部が接地面上にくると、駆動部が荷重を受けて、中空部が円滑に形状変形する。これにより、移動部材の変形損失摩擦力を向上させることでき、走行時の安定性を向上させることができる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
(1)胴体と、前記胴体に設けられた移動部材とを備え、前記移動部材は、走行時に回転駆動させられる駆動部を有し、前記駆動部は、格子構造部を有し、前記格子構造部には、中空部が形成され、且つ、前記格子構造部は、荷重に応じて前記中空部が形状変形するように構成される、移動ロボット。
(2)(1)に記載の移動ロボットであって、前記格子構造部は、線状構造体が前記移動部材の横幅方向に並ぶように配置されて構成され、前記線状構造体は、互いに間隔をあけて配置された線状部を有し、前記中空部は、前記線状部に囲まれている、移動ロボット。
(3)(2)に記載の移動ロボットであって、前記横幅方向に隣接する前記線状構造体を第1及び第2線状構造体としたとき、第1線状構造体の前記線状部と第2線状構造体の前記線状部とが、交差している、移動ロボット。
(4)(2)又は(3)に記載の移動ロボットであって、前記中空部は、前記横幅方向に延びている、移動ロボット。
(5)(4)に記載の移動ロボットであって、前記駆動部は、蓋部を更に有し、前記蓋部は、前記中空部を閉塞するように、前記格子構造部の端部に設けられ、前記格子構造部の前記端部は、前記移動部材の前記横幅方向における端部である、移動ロボット。
(6)(1)~(5)の何れか1つに記載の移動ロボットであって、前記格子構造部を構成する材料は、エラストマー、ゴム、及びシリコンのうちの少なくとも1つで構成されている、移動ロボット。
(7)(1)~(6)の何れか1つに記載の移動ロボットであって、前記移動部材は、中実である外層部を更に有し、前記外層部は、前記格子構造部の少なくとも一部を覆うように設けられている、移動ロボット。
(8)移動ロボットに取り付けられる移動部材であって、走行時に回転駆動させられる駆動部を備え、前記駆動部は、格子構造部を有し、前記格子構造部には、中空部が形成され、且つ、前記格子構造部は、荷重に応じて前記中空部が形状変形するように構成される、移動部材。
(9)3次元造形装置を用いる、移動ロボットの移動部材の製造方法であって、造形ステップを備え、前記移動部材は、走行時に回転駆動する駆動部を有し、前記駆動部は、中空部が形成された格子構造部を有し、前記造形ステップでは、前記3次元造形装置を用いて前記格子構造部を造形する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは、実施形態に係る移動ロボット100の斜視図である。図1Bは、図1Aに示す移動ロボット100からクローラ10及びカバー20Aを取り外した状態における、図1Aに示す領域Bの拡大図である。
図2図2Aは、図1Aに示す移動ロボット100が備えるクローラ10の斜視図である。図2Bは、図2Aに示す領域Bの拡大図である。図2A及び図2Bは、クローラ10の一部を切断し、内部構造が見えるように示している。
図3図3は、図1Aに示す移動ロボット100から取り外した円環状のクローラ10の一部を示している。図3では、クローラ10の内面2A及び外面2Bが円形状をなすような状態のクローラ10を示している。
図4図4は、クローラ10の格子構造部1A、外層部1C及び連結部2の構成説明図である。図4では、格子構造部1A、外層部1C及び連結部2が線状樹脂で構成されている様子を示している。
図5図5A図5Cは、格子構造部1Aの線状構造体1A1~1A3の一例である。
図6図6は、格子構造部1A、蓋部1B、外層部1C及び連結部2を造形している様子を示す斜視図である。図6における凸Pは、ノズル30が走査するときにおける造形体(クローラ10)の各層の起点となる位置を模式的に示したものである。
図7図7は、蓋部1Bの斜視図である。図7における凸Pは、ノズル30が走査するときにおける起点となる位置を模式的に示している。
図8図8は、段差50を登っている状態における格子構造部1Aを模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
1.構成説明
移動ロボット100は、クローラ型の移動方式を採用しており、障害(例えば段差等)を乗り越えることが可能であり、多様な地形を移動可能である。実施形態に係る移動ロボット100は、図1Aに示すように、一対のクローラ10と、胴体20と、駆動機構21と、マウント部22とを備えている。クローラ10は、移動部材の一例である。
【0012】
1-1 クローラ10
クローラ10は、胴体20に設けられた環状の部材(無限軌道の部材)であり、キャタピラ(登録商標)に対応する機能を有する。クローラ10は、樹脂で構成されている。また、クローラ10は、図2Aに示すように、駆動部群1tと、連結部2とを備えている。駆動部群1tは、複数の駆動部1から構成されている。駆動部1が、後述する格子構造部1Aを備えることで、クローラ10は変形損失摩擦力を向上させることが可能となっている。
【0013】
1-1-1 駆動部1
駆動部1は、移動ロボット100が走行時に回転駆動させられる部分である。実施形態では、駆動部1は、露出しており、駆動部1は接地面(路面)に直に接地することになる。
【0014】
図3に示すように、駆動部1を側面視したときにおいて、駆動部1は、突き出るように形成されている。具体的には、駆動部1には、頂部c1と、一対の基端部c2とが形成されており、駆動部1は、基端部c2から頂部c1に向かって突き出るように形成されている。頂部c1及び一対の基端部c2は、図2Aに示す横幅方向Arに平行に延びている。また、駆動部1には、図2B及び図3に示すように、基端部c2から頂部c1にかけて延びる曲面c3が形成されている。曲面c3は、駆動部1内から駆動部1外へむかって凸をなすように形成されている。
【0015】
駆動部1の寸法の一例を以下に説明する。
クローラ10は円環状に構成されており、駆動部1の寸法は、図3に示すように、クローラ10を胴体20から取り外し、円環状に配置した状態の駆動部1の寸法を説明する。
好ましくは、駆動部1の基端部c2間の幅D1(mm)は、例えば、20,24,28,32,36,40,44,48,52,56,60,64,68,72,76,80,84,88,92,96,100,104,108,112,116,120,124,128,132,136,140であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
好ましくは、隣接する駆動部1間の外面2Bの幅D2(mm)は、例えば、2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、幅D2は、外面2Bのうち、基端部c2間の弧状部分の距離に対応する。
【0017】
好ましくは、駆動部1の突出幅D3(mm)は、例えば、10,14,18,22,26,30,34,38,42,46,50,54,58,62,66,70,74,78,82,86,90,94,98,102,106,110,114,118,122,126,130,134,138,142,146,150であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
好ましくは、図2Aに示す駆動部1の横幅D4(mm)は、例えば、20,24,28,32,36,40,44,48,52,56,60,64,68,72,76,80,84,88,92,96,100,104,108,112,116,120,124,128,132,136,140であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
駆動部1は、格子構造部1Aと、蓋部1Bと、外層部1Cとを備えている。以下に、駆動部1の構成要素について説明する。
【0020】
<格子構造部1A>
格子構造部1Aは、図2B及び図4に示すように、駆動部1の内部に設けられている。換言すると、格子構造部1Aは、蓋部1B、外層部1C及び連結部2に囲まれるように設けられている。格子構造部1Aは、駆動部1(外層部1C)が接地面に接地している状態において、胴体20等の荷重に応じて円滑に形状変形するように構成されている。具体的には、駆動部1(外層部1C)が接地面に接地している状態では、外層部1Cが、胴体20等の荷重に対応する反力を接地面から受けて、駆動部1の内側に寄せられるように形状変形する。この形状変形に伴って、格子構造部1Aが外層部1Cに押され、円滑に形状変形する。なお、駆動部1が回転駆動させられて、駆動部1(外層部1C)が接地面に接地しなくなると、格子構造部1Aや外層部1Cの形状が復元して、元の形状に戻る。
【0021】
格子構造部1Aは、線状構造体が積層されて構成されている。換言すると、格子構造部1Aは、線状構造体が、図2Aに示すクローラ10の横幅方向Arに並ぶように配置されて構成されている。図5A図5Cに示すように、実施形態では、格子構造部1Aは、3種類の線状構造体(線状構造体1A1~1A3)を備えている。格子構造部1Aは、線状構造体1A1、線状構造体1A2及び線状構造体1A3の順番で繰り返し積層されることで構成されている。線状構造体1A1及び線状構造体1A2の対、線状構造体1A2及び線状構造体1A3の対、線状構造体1A3及び線状構造体1A1の対は、第1及び第2線状構造体の一例である。
【0022】
各線状構造体(線状構造体1A1~1A3)は、線状部g1と、溝部g2と、接続部g3とを備えている。各線状構造体は、3Dプリンタのノズル30(図6参照)から線状樹脂が2次元走査されることで形成されている。
【0023】
線状部g1は、直線状に形成され、隣接する線状部g1同士は、互いに間隔をあけて配置されている。線状構造体1A1の線状部g1と線状構造体1A2の線状部g1とは、交差しており、その角度は60度である。なお、線状構造体1A2の線状部g1と線状構造体1A3の線状部g1も、交差しており、その角度は60度である。また、線状構造体1A3の線状部g1と線状構造体1A1の線状部g1も、交差しており、その角度は60度である。なお、ここでは、線状構造体1A1の線状部g1と線状構造体1A2の線状部g1との交差する角度が60度であるものとして説明しているが、これに限定されるものではなく、60度以外の角度であってもよい。また、線状部g1の形状は、直線状に限定されるものではなく、曲線状であってもよいし、直線状部分と曲線状部分とが混在するような形状であってもよい。更に、交差する角度は、クローラ10を駆動機構21から取り外し、クローラ10の蓋部1Bを平面上に載置した状態における角度として定義することができる。
【0024】
溝部g2は、隣接する線状部g1間に形成されおり、線状部g1と平行に延びている。
接続部g3は、隣接する線状部g1同士を接続している。実施形態では、各線状構造体が、いわゆる一筆書きで構成される線状樹脂で構成されているため、線状部g1同士が、接続部g3を介して接続されている。なお、各線状構造体は、一筆書きの構成に限定されるものではない。つまり、各線状構造体は、必ずしも接続部g3を備えている必要はない。また、実施形態では、接続部g3は、格子構造部1Aの形状の輪郭(外層部1C及び連結部2によって規定される輪郭)に沿うように形成されている。
【0025】
格子構造部1Aには、中空部1A4が形成されている。中空部1A4は、格子構造部1Aの格子の1つに対応している。より具体的には、中空部1A4は、正三角形であるため、1つの中空部1A4は、3つの頂点と、3つの辺とで構成される。中空部1A4は、各線状構造体(線状構造体1A1~1A3)における隣接する線状部g1の間の領域に形成されている。実施形態では、中空部1A4は、線状構造体1A1~1A3の線状部g1に囲まれる3角形(3次元的には3角柱)状の空間に対応している。中空部1A4は、線状構造体1A1~1A3の積層方向に平行に延びている。なお、線状構造体1A1~1A3の積層方向は、図2Aに示すクローラ10の横幅方向Arに平行である。駆動部1は中空部1A4を備えることで、クローラ10に荷重が加わったときに、中空部1A4の空間がすみやかに潰れたり、変形したりし、駆動部1が円滑に形状変形する。
【0026】
格子構造部1Aを構成する材料(線状樹脂)は、例えば、熱可塑性樹脂であり、エラストマーを採用することができ、例えばスチレン系エラストマーを採用することができる。その他に、格子構造部1Aを構成する材料は、例えば、ゴム又はシリコンを採用することもできる。また、格子構造部1Aを構成する材料は、エラストマー、ゴム、及びシリコンを少なくとも1つ含むものであってもよく、例えば、格子構造部1Aが、エラストマーで構成される部分と、ゴムで構成される部分とを含んでいてもよい。
また、格子構造部1Aを構成する材料(線状樹脂)のショア硬さは、具体的には例えば、A5,A6,A7,A8,A9,A10,A11,A12,A13,A14,A15,A16,A17,A18,A19,A20,A21,A22,A23,A24,A25,A26,A27,A28,A29,A30である。また、格子構造部1Aを構成する材料(線状樹脂)のショア硬さは、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内で定義してもよく、例えば、当該ショア硬さは、A5~A30である。なお、格子構造部1Aを構成する線状樹脂は、ショア硬さがA5~A30の範囲内であれば、異なるショア硬さのものが使用されていてもよい。
【0027】
ここで、格子構造部1Aの構成要素の寸法について説明する。
好ましくは、格子構造部1Aを構成する線状樹脂の径d1(mm)は、例えば、0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、線状樹脂の径d1は、格子構造部1Aの各部において一定値であってもよいし、格子構造部1Aの各部において異なっていてもよい。
【0028】
中空部1A4の隙間の最大幅d2(mm)は、例えば、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、最大幅d2は、中空部1A4の任意の2点の対向幅と、中空部1A4を構成する辺の幅と、のうち最も長い幅を指している。実施形態では、中空部1A4が正三角形であるため、最大幅d2は、正三角形の1辺の長さに対応している。なお、中空部1A4の隙間の最大幅d2は、格子構造部1Aの各部において、一定値であってもよいし、格子構造部1Aの各部において異なっていてもよい。
【0029】
<蓋部1B>
蓋部1Bは、中空部1A4を閉塞するように、格子構造部1Aの端部(実施形態では両端部)に設けられている。ここで、格子構造部1Aの端部は、クローラ10の横幅方向Ar(図2A参照)における端部である。蓋部1Bは、図6及び図7に示すように、環状の線状樹脂が複数敷き詰められて構成された板状部材であり、中実である。すなわち、蓋部1Bを構成する大きさが異なる環状の線状樹脂は、図6に示す方向Brに敷き詰められている。なお、方向Brは、蓋部1Bの中心部から外側部へ向かう方向である。また、蓋部1Bには隙間(中空部)が形成されていてもよいが、蓋部1Bの隙間(中空部)の総面積は、格子構造部1Aを側面視したときの中空部1A4の総面積よりも小さいものとする。なお、蓋部1Bに隙間が形成されていることで、中空部1A4内の空気が当該隙間から排出され、中空部1A4の変形が促される。
【0030】
駆動部1が蓋部1Bを備えることで、中空部1A4内に異物(例えば、砂や小石等)が入り込むことを抑制することができる。また、蓋部1Bは中実である分、格子構造部1Aと比較して、変形しにくいため、駆動部1に耐久性をもたせることができる他、駆動部1に適度な剛性をもたせることができ、駆動部1の復元力を向上させることができる。
【0031】
実施形態では、蓋部1Bは、図3に示すように駆動部1の側面における最外部となっているため、露出している。また、図7に示すように、蓋部1Bは、横幅方向Arにおける1層の線状構造体(線状樹脂)で構成されている。なお、蓋部1Bは、横幅方向Arにおいて複数積層された線状構造体で構成されていてもよい。
【0032】
実施形態では、蓋部1Bは、格子構造部1Aを構成する樹脂と同じ材料で構成されているが、異なっていてもよい。
【0033】
<外層部1C>
外層部1Cは、格子構造部1Aの外側に設けられている。外層部1Cは、格子構造部1Aの少なくとも一部を覆うように設けられている。具体的には、外層部1Cは、駆動部1と接地面との接触面(接地面)となっており、曲面c3を形成している。つまり、外層部1Cは、一方の基端部c2から頂部c1を経て他方の基端部c2へかけて延びている湾曲板状部材である。また、外層部1Cは、線状樹脂が敷き詰められて構成されており、中実である。駆動部1が外層部1Cを備えることで、格子状に構成されて相対的に破損しやすい格子構造部1Aを効果的に保護することができる。
【0034】
外層部1Cは、横幅方向Arにおいて、一対の蓋部1Bの積層数と、格子構造部1Aの積層数とをあわせた数だけ積層されている。外層部1Cは、図7に示すように、線状樹脂で構成されている。外層部1Cを構成する線状樹脂は、隣接する駆動部1(隣接する蓋部1B及び隣接する格子構造部1A)の外層部1Cにかけて延びている。なお、この線状樹脂は、全ての駆動部1の外層部1Cにかけて延びていてもよい。この場合には、外層部1Cは、全ての駆動部1の外層部1Cにかけて延びる1本の線状樹脂が、横幅方向Arに積層されて構成される。
【0035】
また、実施形態では、外層部1Cは、方向Brにおいては1層で構成されているが、これに限定されるものではなく、方向Brにおいて複数層で構成されていてもよい。また、外層部1Cを構成する線状樹脂の方向Brにおける積層数は、例えば、1,2,3,4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0036】
実施形態では、外層部1Cは、格子構造部1Aを構成する樹脂と同じ材料で構成されているが、異なっていてもよい。例えば、外層部1Cは、接地面に直に接触する部分であるため、外層部1Cの耐久性が高くなるように構成してもよい。例えば、外層部1Cを、格子構造部1Aを構成する樹脂よりも耐久性が高い樹脂(例えば、PET樹脂等)で構成してもよいし、また、外層部1Cの構成樹脂の径を格子構造部1Aの線状樹脂の径d1よりも太くしてもよいし、外層部1Cの構成樹脂のショア硬さを、格子構造部1Aのショア硬さよりも高くしてもよい。更に、実施形態では、上述した蓋部1Bや外層部1Cが、線状樹脂で構成されているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、金型等による成形品で構成されていてもよい。
【0037】
1-1-2 連結部2
連結部2は、図3図6及び図7に示すように、環状部材であり、外面2Bには駆動部群1tが設けられている。連結部2の内面2Aは、後述するプーリー21Bに装着された無端ベルト21C(図1B参照)に接着剤で固定される。連結部2は、線状樹脂がクローラ10の径方向に複数敷き詰められた環状体が横幅方向Arに積層されて構成されている。
【0038】
図3に示すように、連結部2の厚みD5(mm)は、具体的には例えば、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
1-2 胴体20
胴体20は、駆動機構21等の各種機器が搭載可能に構成され、また、左右に一対のクローラ10が設けられている。また、胴体20には、モーター等の動作を制御するための制御装置(図示省略)が搭載されている。また、胴体20には、外部の装置(例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話機、ノートPC等の情報処理装置であるが、その種類は問わない)からの遠隔操作で移動するための通信手段を搭載していてもてよい。
【0040】
1-3 駆動機構21
駆動機構21は、シャフト21Aと、プーリー21Bと、無端ベルト21Cとを備えている。シャフト21Aは、図1Bに示すように、プーリー21Bに連結しており、プーリー21Bを回転可能に構成されている。シャフト21Aは、不図示のモーターから駆動力を与えられる。プーリー21Bは、無端ベルト21Cに掛けられており、シャフト21Aの動力を無端ベルト21Cに伝達するように構成されている。無端ベルト21Cは、帯状の環状部材である。無端ベルト21Cは、外面がクローラ10の連結部2の内面2Aに接着剤で固定され、内面がプーリー21Bに係合している。なお、無端ベルト21Cは、図1Bにおいては図示省略されているが、プーリー21Bの凹凸に係合しやすいように、凹凸が形成されていることが好ましい。
【0041】
1-4 マウント部22
マウント部22は、胴体20から上方に突き出すように設けられている。マウント部22には、例えば各種センサやカメラ等を取付可能である。
【0042】
2.クローラ10の製造方法
実施形態に係る移動ロボット100のクローラ10(クローラ10の全体)は、線状樹脂を吐出するノズル30を備えた3次元造形装置(3Dプリンタ)で製造可能である。実施形態に係る製造方法では、FDM(Fused Deposition Modeling)方式を採用しており、熱で溶融された熱可塑性樹脂をノズル30から吐出して各層を形成していく。
具体的には、クローラ10の製造方法は、造形ステップを備えている。
造形ステップでは、ノズル30を走査させながらノズル30か線状樹脂を吐出させることでクローラ10(駆動部1及び連結部2)を造形する。
【0043】
造形ステップは、下層造形ステップと、中間層造形ステップと、上層造形ステップとを有する。積層方向は、図2Aに示す横幅方向Arに対応している。これらの各ステップに関して、図6図7に示す凸Pが、各層の走査開始位置となる。
下層造形ステップでは、蓋部1Bと、外層部1Cと、連結部2を造形していく。実施形態では、下層造形ステップで造形される構造体は、1層のみである。
中間層造形ステップでは、格子構造部1Aと、外層部1Cと、連結部2を造形していく。中間層造形ステップで造形される構造体の積層数は、格子構造部1Aの積層数と同じである。
上層造形ステップでは、蓋部1Bと、外層部1Cと、連結部2を造形していく。実施形態では、上層造形ステップで造形される構造体は、1層のみである。
【0044】
下層造形ステップ、中間層造形ステップ及び上層造形ステップにおいて、外層部1Cを形成する場合には、ある任意の1つの層内に複数ある駆動部1の外層部1Cを、1本の線状樹脂で形成するように、ノズル30の走査ルートが設定されているとよい。
【0045】
中間層造形ステップにおいて、ノズル30が格子構造部1Aを造形している場合には、外層部1Cや連結部2との境界位置にノズル30が至ると、ノズル30が外層部1Cや連結部2との境界に沿うように、ノズル30の走査ルートが設定されているとよい。実施形態において、ノズル30が外層部1Cや連結部2に沿うように走査された結果、接続部g3(図5A図5C参照)が形成されている。
また、格子構造部1Aを形成する場合には、ある任意の1つの層内に複数ある駆動部1の格子構造部1Aを、1本の線状樹脂で形成するように、ノズル30の走査ルートが設定されていてもよい。
【0046】
3.作用・効果
摩擦力は、凝着摩擦力と変形損失摩擦力とに分けることができる。
凝着摩擦力は、荷重が一定の場合、駆動部1と接地面との接触面積(接地面積)を大きくすることで、増大させることが可能である。しかしながら、例えば、接地面に砂・ホコリがある状況では、駆動部1と接地面との間の摩擦係数が小さくなるので、凝着摩擦力が低下しやすい。
それに対し、変形損失摩擦力は、駆動部1の変形体積を大きくすることで、増加させることができる。実施形態に係る移動ロボット100のクローラ10の駆動部1は、格子構造(格子構造部1A)を備えているので、クローラ10が変形しやすくなっており、変形損失摩擦力が向上する。その結果、クローラ10と接地面との間の摩擦力の低下を抑制可能である。特に、段差や階段を走行する場合には、駆動部1かかる圧力(駆動部1の接触面における単位面積あたりの圧力)が高まって駆動部1の変形がより促されるため、摩擦力の低下を効果的に抑制可能であり、移動ロボット100の走行時の安定性を向上させることができる。
【0047】
具体的には、駆動機構21によりクローラ10が駆動されることで、移動ロボット100は移動する。移動ロボット100が段差50(図8参照)を乗り越える場合には、段差50の角に駆動部1が付き当てられることになり、駆動部1と段差50との接触面積(接地面積)が小さくなる。このため、駆動部1を変形させる力が接触箇所に集中する。このとき、駆動部1の格子構造部1Aが中空部1A4を有するため、中空部1A4の空洞が狭くなるように圧縮され、格子構造部1Aが低応力で円滑に形状変形する。これにより、クローラ10の変形損失摩擦力が向上し、クローラ10の摩擦力の確保がしにくくなることを抑制することができ、移動ロボット100の走行時の安定性を向上させることができる。
【0048】
格子構造部1Aが低応力で円滑に形状変形するため、図8に示すように、段差50の形状に追従するように変形する。このため、接地面に対する接触面積を拡大させやすく、凝着摩擦力も効果的に向上させることが可能である。
【0049】
また、図8に示すように、中空部1A4の空洞が狭くなるように格子構造部1Aが圧縮されたときに、中空部1A4には、変形可能な空洞が無くなる、又は、その空洞の体積が非常に小さくなるため、駆動部1の弾性力が向上し、移動ロボット100の荷重を確実に支えることが可能である。
【0050】
4.その他実施形態
実施形態では、格子構造部1Aの格子形状(中空部1A4の側面視形状)が、正三角形であるものとして説明したが、これに限定されるものではない。格子構造部1Aの格子形状は、正n角形(nは4以上の自然数)であってもよい。また、格子構造部1Aの格子形状の各辺は等しくなくてもよく、例えば、直角三角形(nが3の場合)であってもよいし、長方形(nが4の場合)であってもよい。
【0051】
中空部1A4の形状(側面視形状)は、格子構造部1A内において一様である必要はなく、複数の形状を有するものであってもよい。例えば、実施形態では、中空部1A4の形状が、正三角形であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、格子構造部1Aは、n1角形(n1は3以上の整数)の中空部1A4とn2角形(n2は3以上であってn1とは異なる整数)の中空部1A4とを備えていてもよい。
【0052】
任意の線状構造体に対し、横幅方向Arに2番目に近接する線状構造体を第2近接の線状構造体と定義する。このとき、任意の線状構造体(例えば、線状構造体1A1)と、当該線状構造体の第2近接の線状構造体(例えば、線状構造体1A3)とは、少なくとも一部が接触していてもよい。また、任意の線状構造体と、当該線状構造体の第2近接の線状構造体との間には、隙間が形成され、非接触となっていてもよい。このように隙間が形成されていることで、格子構造部1Aがねじれるように変形しやすくなり、移動ロボット100の走行時の安定性を向上させる効果を期待することができる。
【0053】
実施形態では、駆動部1が直に接地面に接地(接触)する形態であったがこれに限定されるものではない。クローラ10は、例えば、駆動部1の外側に駆動部1とは別部材のカバー部材が装着されていてもよい。このカバー部材は駆動部1を構成する素材よりも耐摩耗性が高いことが好ましい。クローラ10がカバー部材を備えることで駆動部1の表面を保護することができる。
【0054】
実施形態では、移動ロボット100が、胴体20の左右に、一対のクローラ10が設けられている構成を採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、移動ロボット100は、胴体20の下に、1つのクローラ10が設けられた構成であってもよい。
【0055】
実施形態では、クローラ10が連結部2を備えているがこれに限定されるものではなく、連結部2を備えていなくてもよい。つまり、駆動部1が連結部2を介して連結されておらず、駆動部1同士が独立していてもよい。この場合には、例えば、無端ベルト21Cに駆動部1を固定すればよい。
【0056】
実施形態では、移動ロボット100がクローラ10を備えている形態を一例として説明したが、これに限定されるものではない。移動ロボット100は、クローラ10の代わりに、車輪に取り付けられるタイヤで構成されていてもよい。つまり、移動部材は、1つの駆動部1が円環状に構成された形態であってもよい。この場合には、タイヤが実施形態で説明した格子構造部1Aを備える。また、移動部材としてのタイヤは、任意で、蓋部1Bや外層部1Cを備えていてもよい。
【0057】
実施形態に係る製造方法では、3次元造形装置のノズル30を走査することで積層構造を造形する方式(FDM方式)を説明したが、これに限定されるものではない。実施形態に係る製造方法は、光造形方式を採用してもよい。例えば、3次元造形装置が、UV光を照射可能な光照射部を備えており、UV光を液体の光硬化性樹脂に照射して硬化させるSLA(Stereolithography Apparatus)方式を採用することができる。
その他に、インクジェットヘッドから噴射した樹脂をUV光で硬化させて形成した構造体を積層させる方式(マテリアルジェッティング方式)を採用することもできるし、粉末状の素材にレーザーを照射して焼結させて構造体を形成する粉末焼結積層造形方式を採用することもできる。
このように、実施形態とは、製造方法が異なっていても、同じ形状の駆動部1を形成可能である。なお、上述した製造方式を採用する場合でも、実施形態で説明した、下層造形ステップ、中間層造形ステップ及び上層造形ステップを順次実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 :駆動部
1A :格子構造部
1A1 :線状構造体
1A2 :線状構造体
1A3 :線状構造体
1A4 :中空部
1B :蓋部
1C :外層部
2 :連結部
2A :内面
2B :外面
10 :クローラ
20 :胴体
20A :カバー
21 :駆動機構
21A :シャフト
21B :プーリー
21C :無端ベルト
22 :マウント部
30 :ノズル
50 :段差
100 :移動ロボット
c1 :頂部
c2 :基端部
c3 :曲面
g1 :線状部
g2 :溝部
g3 :接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8