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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023177505
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20231207BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20231207BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
G03G21/16 147
B65H5/06 J
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090222
(22)【出願日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 雅樹
【テーマコード(参考)】
2H171
2H270
3F049
【Fターム(参考)】
2H171FA04
2H171FA22
2H171GA01
2H171GA03
2H171GA04
2H171JA14
2H171JA16
2H171JA42
2H171LA03
2H171LA08
2H171LA18
2H270LC10
2H270MD10
2H270MD14
3F049DA12
3F049EA10
3F049LA01
3F049LB01
(57)【要約】
【課題】低コスト/省スペース/高画質/高スタッキング性を実現することが可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、搬送中の用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換え可能な、モータに接続された変速部10を有し、変速部10はモータの回転数を変えることなく、用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上で搬送中の用紙の位置に応じて前記用紙の搬送速度を切換え可能な、モータに接続された変速部を有する画像形成装置であって、
前記モータの回転数を変えることなく、前記用紙の位置に応じて前記用紙の搬送速度を切換える、画像形成装置。
【請求項2】
前記搬送経路上で搬送される前記用紙に押されて回転する回転部を有し、前記回転部が回転することで前記変速部が制御され、前記用紙の搬送速度が切換えられる、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変速部は遊星ギア機構を有し、
前記回転部が回転することで、前記遊星ギア機構の内歯車を停止させて速度を切換える、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置は排紙ローラ部を含み、
前記排紙ローラ部は前記変速部を含み、
前記排紙ローラ部の変速部は内歯車を含み、
前記内歯車の停止で前記排紙ローラ部は減速する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変速部は遊星ギア機構を有し、
前記排紙ローラ部の変速部は、前記遊星ギア機構の遊星キャリアが出力側として作動する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置は給紙搬送部を含み、
前記給紙搬送部は前記変速部を含み、
前記給紙搬送部の変速部は内歯車を含み、
前記給紙搬送部は前記内歯車の停止で増速する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変速部は遊星ギア機構を有し、
前記給紙搬送部の変速部は、前記遊星ギア機構の遊星キャリアが入力側として作動する、請求項6に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用紙の搬送速度を変更可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、用紙の搬送速度を変更可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置が提供されている。用紙の搬送位置に応じて定着部以降の搬送ローラの速度を独立したモータの速度を制御して変えることで用紙の搬送速度を変更することが、例えば、特開2009-057169号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-057169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の用紙の搬送速度を変更可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置は上記のように構成されていた。しかしながら、搬送速度を変えるには搬送ローラ別に独立したモータを用意する必要があった。
【0005】
そのため、独立したモータを複数用意する必要があり、通紙センサや、それによるモータの回転速度の変更制御を行なう必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、独立したモータも紙の位置を検知するセンサも別の動力源も用いること無く、紙の搬送力だけで動作可能な変速機で瞬時に速度切換え可能であり、低コスト/省スペース/高画質/高スタッキング性を実現することが可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る画像形成装置は、搬送経路上で搬送中の用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換え可能な、モータに接続された変速部を有する。画像形成装置は、モータの回転数を変えることなく、用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換える。
【0008】
好ましくは、搬送経路上で搬送される用紙に押されて回転する回転部を有し、回転部が回転することで変速部が制御され,用紙の搬送速度が切換えられる。
【0009】
さらに好ましくは、変速部は遊星ギア機構を有し、回転部が回転することで、遊星ギア機構の内歯車を停止させて速度を切換える。
【0010】
本開示の一実施の形態においては、画像形成装置は排紙ローラ部を含み、排紙ローラ部は変速部を含み、排紙ローラ部の変速部は内歯車を含み、内歯車の停止で排紙ローラ部は減速する。
【0011】
変速部は遊星ギア機構を有し、排紙ローラ部の変速部は、遊星ギア機構の遊星キャリアが出力側として作動するようにしてもよい。
【0012】
本開示の他の実施の形態においては、画像形成装置は給紙搬送部を含み、給紙搬送部は変速部を含み、給紙搬送部の変速部は内歯車を含み、給紙搬送部は内歯車の停止で増速するようにしてもよい。
【0013】
変速部は遊星ギア機構を有し、給紙搬送部の変速部は、遊星ギア機構の遊星キャリアが入力側として作動するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、画像形成装置は、モータの回転数を変えることなく、用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換えることができ、用紙の搬送タイミングによって用紙の搬送スピードを可変させ、最適な速度で搬送する。
【0015】
その結果、低コスト/省スペース/高画質/高スタッキング性を実現することが可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置を提供できる。
【0016】
本開示の上述の目的、その他の目的、特徴及び利点は、図面を参照して行なう後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施の形態に係る用紙の搬送速度を切換える変速部の基本構造を示す斜視図である。
図2A】変速部が増速機構として作動する場合の、中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図2B図2Aにおいて、矢印2B-2Bで示した部分の矢視図である。
図2C図2Bに示した第1遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図2D図2Bに示した第2遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図3A】変速部が通常速度で作動する場合の、中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図3B図3Aにおいて、矢印3B-3Bで示す部分の矢視図である。
図3C図3Bに示した第1遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図3D図3Bに示した第2遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図4A】変速部が速度減速機構として作動する場合の、中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図4B図4Aにおいて、矢印4B-4Bで示す部分の矢視図である。
図4C図4Bに示した第1遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図4D図4Bに示した第2遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図5A】変速部が通常速度出力機構として作動する場合の、中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図5B図5Aにおいて、矢印5B-5Bで示す部分の矢視図である。
図5C図5Bに示した第1遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図5D図5Bに示した第2遊星歯車が個別に回転した状態を示す図である。
図6】第2内歯車と係止部との係合状態を説明する模式的な側面図である。
図7A】本開示の第1実施の形態に係る変速部がターボ給紙をする場合の変速部の中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図7B】ターボ給紙が行われる給紙部と係止部を示す図である。
図7C】変速部が給紙部で通常速度で給紙する場合の変速部の中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図7D】通常速度で給紙する給紙部と係止部を示す図である。
図8A】本開示の第2実施の形態における排紙部と係止部の位置関係を示す図である。
図8B】変速部が排紙部で通常速度で使用される場合の変速部の中央歯車の通る軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図8C】変速部が排紙部で通常速度で使用される場合のアクチュエータの具体的構成及び作動状態を示す図である。
図9A】本開示の第2実施の形態における排紙部と係止部の位置関係を示す図である。
図9B】変速部が排紙部で減速状態で使用される場合の変速部の中央歯車の通る軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図である。
図9C】排紙部が減速状態で使用される場合のアクチュエータの具体的構成及び作動状態を示す図である。
図10】変速部が排紙ローラの減速に使用される場合の排紙ローラ駆動部が設けられる画像形成装置における取付け位置を示す斜視図である。
図11A】変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において速度変化のない場合の変速部の作動状態を示す図である。
図11B】変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において速度変化のない場合の変速部の実際の構成を示す平面図である。
図11C図11Bにおいて、矢印11C-11Cで示す部分の矢視図である。
図12A】変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において減速状態の場合の変速部の作動状態を示す図である。
図12B】変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において減速状態の場合の変速部の実際の構成を示す平面図である。
図12C図12Bにおいて、矢印12C-12Cで示す部分の矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、本開示の一実施形態に係る用紙の搬送速度を切換える機構の要部となる、変速部の基本構造について説明する。変速部は遊星ギア機構で構成されており、図1は変速部10の基本構造を示す斜視図である。図1を参照して、変速部10は中央歯車11と、中央歯車11に係合する第1及び第2遊星歯車12,13と、第1及び第2遊星歯車12,13に、その外周で係合する第1及び第2内歯車14,15と、を含み、中央歯車11や第1内歯車14が入力軸や出力軸となる。
【0019】
なお、第1内歯車14の外周にはギアが設けられ、外部に設けられた第1外歯車16と係合する。第2内歯車15の外周には鋸歯18が設けられており、鋸歯18に係止部17が係合している。また、中央歯車11は、第1外歯車16とは逆側の外部に設けられた第2外歯車19aと係合している。
【0020】
なお、この実施の形態においては、中央歯車11が遊星キャリアとして作動する。
【0021】
図2Aは、図1に示した変速部10が速度増速機構として作動する場合の中央歯車11の軸11aの方向に切断した状態を示す模式的な図であり、図2Bは、図2Aにおいて、矢印2B-2Bで示した部分の矢視図であり、図2C及び図2Dは、図2Bに示した第1遊星歯車12及び第2遊星歯車13が個別に回転した状態を示す図である。図2Bにおいては、第1及び第2内歯車14,15は同軸で同一形状であるが、理解の容易のために、ずれたように示している。図2C及び図2Dにおいては、それぞれの第1及び第2遊星歯車12,13が個別に係合する第1及び第2内歯車14,15のうちの一方のみを示している。
【0022】
次に、この変速部10が入力回転速度に対して2倍の回転速度を出力する速度増速機構として作動する場合について説明する。図2A図2Dを参照して、中央歯車11が回転すると、それによって、中央歯車の軸11aに接続された第1及び第2遊星歯車12,13が中央歯車の軸11aの中心を軸に回転する。この速度増速の場合は、第2内歯車15が図1に示したように係止部17でロックされている。
【0023】
ここで、図2Aにおいて、中央歯車11は、軸11aを介して第1及び第2遊星歯車12,13に入力される。図2Bに示すように、第1及び第2遊星歯車12,13は、軸11aと同じ回転速度で中央歯車の軸11aの中心を軸に時計回り(右回り)(図中矢印で示す)に回転する。すると、第2内歯車15がロックされているので第1遊星歯車12は第1遊星歯車12の軸を中心に反時計回り(左回り)に回転し、第1遊星歯車12と噛み合っている第2遊星歯車13は第1遊星歯車12と逆の時計回りに第2遊星歯車13の軸を中心に回転される。
【0024】
さらに、第1内歯車14は、内側で噛み合っている第2遊星歯車13から第2遊星歯車13の軸を中心の時計回りの回転により、時計回りに回転させられるとともに、第2遊星歯車13が中央歯車の軸11aの中心を軸に時計回りにも回転しているので2つの回転が合わせられて入力の回転数に対して増速で回転する。
【0025】
ここでは、図2B図2Dに、第1及び第2遊星歯車12,13、ならびに第1及び第2内歯車14,15の回転数を円弧状の矢印の長さで示している。すなわち、図2Cに示すように、第1及び第2遊星歯車12,13が中央歯車の軸11aの中心を軸に1/2回転する間に、第1内歯車14は1/2回転以上回転する。
【0026】
すなわち、この場合は図2Aにおいて「入力」と表示しているように中央歯車11が入力歯車になり、第1内歯車14が入力に対して増速した出力歯車になる。
【0027】
本開示の一実施の形態では入力回転数に対して2倍の回転数としている。
【0028】
なお、ここでは、第2内歯車15の外周に設けられた鋸歯については図示を省略している。また、図2Aで、第1及び第2遊星歯車12,13に示した対向する太字の矢印は、中央歯車11の軸11aによる回転によって、第1遊星歯車12が逆時計方向に回転し、第2遊星歯車13が時計方向に回転することを示している。
【0029】
次に、この変速部10が入力回転速度に対して1倍の回転速度を出力する通常速度出力機構として作動する場合について説明する。図3A図3Dは、この場合の図2A図2Dに対応する図である。また第2遊星歯車13は第2遊星歯車13の軸を中心に時計回りには回転するが、反時計回りには回転しないワンウエイ機構が設けられている。等速の場合は、第2内歯車15が係止部17でロックされていないため、第1内歯車14と第2内歯車15とは連動して回転する。
【0030】
ここでも、図3B図3Dに、第1及び第2遊星歯車12,13、ならびに第1及び第2内歯車14,15の回転数を円弧状の矢印の長さで示している。すなわち、図3Bに示すように、第1及び第2遊星歯車12,13が中央歯車の軸11aの中心を軸に1/2回転する間に、第1及び第2内歯車14,15もそれぞれ1/2回転する。
【0031】
すなわち、この場合は図3Aにおいて「入力」と表示しているように中央歯車11が入力歯車になり、第1内歯車14が出力1倍の出力歯車になる。
【0032】
また、ここで、第1及び第2内歯車14,15に示した太字の矢印は、それぞれの内歯車が同一の速度で連れ回りすることを示している。
【0033】
次に、この変速部10が入力回転速度に対して半分の回転速度を出力する速度減速機構として作動する場合について説明する。図4A図4Dは、この場合の図2A図2Dに対応する図である。図4A図4Dを参照して、この場合は、第1内歯車14が入力歯車になる。第1内歯車14が時計回りに回転すると、それによって、第1内歯車14に係合した第1及び第2遊星歯車12,13が中央歯車の軸11aの中心を軸に時計回りに回転する。
【0034】
ここで、図4Aにおいて、第2内歯車15が係止部17でロックされている。
【0035】
第2内歯車15がロックされているので第2内歯車15の内側で噛み合っている第1遊星歯車12は第1遊星歯車12の軸を中心に反時計回りに回転し、第1遊星歯車12に噛み合っている第2遊星歯車13は時計回りに回転する。
【0036】
第2遊星歯車13が時計回りに回転することにより出力の中央歯車11は入力の第1内歯車14の内部で噛み合っているので相対的に反時計方向に移動することになり、時計回りに回転する入力の第1内歯車14に対して出力の中央歯車11が減速することになる。
【0037】
例えば、図4Cに示すように、第1内歯車14が1/2回転すると、第2の遊星歯車13が1/2回転し、それらに接続された中央歯車11は、1/4回転する。このようにして、変速部10が入力回転速度に対して半分の回転速度を出力する速度減速機構として作動する。
【0038】
すなわち、この場合は図4Aにおいて「入力」と表示しているように第1内歯車14が入力歯車になり、中央歯車11が出力1/2倍の出力歯車になる。
【0039】
次に、この変速部10が入力回転速度に対して等倍の回転速度を出力する通常速度出力機構として作動する場合について説明する。図5A図5Dは、この場合の図4A図4Dに対応する図である。また第2遊星歯車13は第2遊星歯車13の軸を中心に時計回りには回転するが、反時計回りには回転しないワンウエイ機構が設けられている。図5A図5Dを参照して、この場合は、第1内歯車14が入力歯車になる。第1内歯車14が回転すると、それによって、第1内歯車14に係合した第1及び第2遊星歯車12,13が回転する。
【0040】
ここで、図5Aにおいて、第2内歯車15は係止部17でロックされていないため、第1内歯車14と連動して回転する。そして、図5Cに示すように、第1内歯車14が1回転すると、第2の遊星歯車13が1/2回転し、それらに接続された中央歯車11は、1/2回転する。このようにして、変速部10が入力回転速度に対して等倍の回転速度を出力する通常速度出力機構として作動する。
【0041】
すなわち、この場合は図5Aにおいて「入力」と表示しているように第1内歯車14が入力歯車になり、中央歯車11が出力1倍の出力歯車になる。
【0042】
次に、上記した係止部17のロック機構について説明する。図6は、第2内歯車15の外周部と係止部17との係合状態を説明する模式的な側面図である。ここでは、第2内歯車15は、その外周部のみが示されている。図6に示すように、第2内歯車15は、図中矢印で示すように時計回りに回転し、その外周部に設けられた鋸歯18に係合可能に係止部17が支点17aを中心に回動可能に設けられている。通常は、係止部17は、第2内歯車15から離れた位置にあるが、後に説明するように、用紙が所定の位置に到達するとバネ力等によって支点17aを中心として係止部17が作動し、図中太い矢印で示すように第2内歯車15の鋸歯18に係合する。なお、係止部17が作動していないロックフリー時は第1内歯車14(図4A図5A等参照)と第2内歯車15とは図示の無いブレーキでつながっており連れ周りする。
【0043】
このような係止部17の動作によって、第1内歯車14と第2内歯車15とは、第1内歯車14のみが回転する場合と、両者が連動して回転する場合とが生じる。
【0044】
次に、画像形成装置の用紙搬送装置に設ける、上記した変速部10の具体的な使用状態について説明する。
【0045】
[第1実施の形態]
まず、本開示の第1実施の形態として、変速部10が画像形成装置の給紙部に適用された場合について図7A図7Dを参照して説明する。ここでは、低速度/コスト機のような、1つのモータで給紙部を駆動する場合に、上記した変速部10を使用する場合について説明する。
【0046】
図7Aは本開示の第1実施の形態に係る、変速部10がターボ給紙(通常の2倍の速度での給紙)をする場合の変速部の中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図であり、図7Bはターボ給紙が行われる給紙部と係止部との位置関係を示す図である。図7Cは、変速部10が給紙部で通常速度で給紙する場合の変速部10の中央歯車の軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図であり、図7Dは、この場合の給紙部と係止部との位置関係を示す図である。
【0047】
図7B及び図7Dを参照して、画像形成装置の定着ユニットの直前に設けられる用紙の給紙搬送経路21aに設けられた給紙ローラ22a,22bやPSローラ23a,23bに挟まれて搬送される用紙20、及び係止部17(図6参照)を作動させるアクチュエータ25の配置と、それらの作動状態が示されている。
【0048】
この実施の形態においては、紙の種類、ローラの劣化、環境条件による給紙時の遅れを補うように、給紙時はターボ給紙によって給紙ローラ22a,22bの回転速度を増速し、PSローラ23a,23bに用紙20が噛みこめば、通常のプロセス速度である通常速度に落とすように制御している。具体的には、次のように図示のない給紙モータを制御する。
【0049】
まず、図7A図7Bに示すように、係止部を作動させるアクチュエータ25が設置される設定箇所を通過するまでは、用紙20を2倍の速度でターボ搬送する。このとき、変速部10は、図2A図2Dで示したように、中央歯車(遊星キャリア)11の軸11aが入力軸になり、第1内歯車14が出力軸となり、通常の2倍の速度で用紙が供給される。
【0050】
用紙がアクチュエータ25の設置される設定箇所を通過した後は、図7C図7Dに示すように通常速度の設定となる。なお、アクチュエータ25の作動は係止部の作動と連動しており、その詳細については後で説明する。
【0051】
以上のように、この実施の形態においては、モータの回転数を変えることなく、用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換えている。
[第2実施の形態]
次に、本開示の第2実施の形態について説明する。第2実施の形態においては、画像形成装置の排紙部にこの変速部10を適用する。
【0052】
図8Aは、本開示の第2実施の形態における排紙部と係止部の位置関係を示す図であり、
搬送ローラ27a、27b、排紙ローラ28a、28bで排紙ローラ28a、28bの下流に排紙トレイ(図示無し)がある。
【0053】
図8Bは、変速部が排紙部で通常速度で使用される場合の変速部の中央歯車の通る軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図であり、図8Cは、変速部が排紙部で通常速度で使用される場合の係止部に対応するアクチュエータの具体的構成及び作動状態を示す図である。
【0054】
すなわち、図8A図8Cは、この場合の用紙20が、アクチュエータ25が設けられた所定の設定箇所を通過するまでの状態を示す図である。この場合、用紙20が所定の設定箇所を通過するまでは、通常速度である1倍で用紙20を搬送する。
【0055】
一方、図9Aは、この実施の形態における変速部が排紙部で、減速状態で使用される場合の排紙部と係止部の位置関係を示す図であり、図9Bは、この場合の変速部の中央歯車の通る軸方向に切断した状態を示す模式的な断面図であり、図9Cは、この場合のアクチュエータの具体的構成及び作動状態を示す図である。
【0056】
すなわち、図9A図9Cは、この場合の用紙20が、アクチュエータ25が設けられた所定の設定箇所を通過した後の状態等を示す図である。この場合、用紙20が所定の設定箇所を通過した後は、通常速度の半分の速度で用紙20を搬送する。このような動作を行なうために、所定の設定箇所にはアクチュエータ25が設置されている。
【0057】
まず、図8Aを参照して、ここでは、用紙20が定着部から用紙20が搬送されて搬送ローラ27a、27bを通過して、用紙20がアクチュエータ25を押し上げて排紙ローラ28a、28bを通過する際の状態を示している。
【0058】
この場合の変速部10の入力は図8Bに示すように、第1内歯車14であり、出力は中央歯車(遊星キャリア)11の軸11aである。用紙20がアクチュエータ25を押し上げて、図8Bに示すように変速部10の第2内歯車15は図5で説明したようにロック状態になく、第1内歯車14と連動し、中央歯車11の軸11aの出力、即ち図8Aの排紙ローラ28a、28bは1倍になる。
【0059】
この場合のアクチュエータ25の具体的構成及び作動状態を図8Cに示す。図8Cに示すように、アクチュエータ25は鋸歯25bを外周に有する回転円板(回転部)25aと、その接線方向で、且つ用紙20の上を滑るように配置された棒部材25cと、を有し、棒部材25cは支点25dで支持されており、用紙20が搬送されているときは回転円板25aの接線方向に傾斜して非作動状態にある。
【0060】
次に、用紙20が設定箇所を通過した後の状態について、図9A図9Cを参照して説明する。図9Aに示すように、用紙20が排紙搬送経路21bの設定箇所を通過すると、変速部10の入力は図9Bに示すように、第1内歯車14であり、出力は中央歯車11の軸11aである。アクチュエータ25が用紙通過と重力により回転し、図9Bに示すように変速部10の第2内歯車15ロックが作動し、中央歯車11の軸11aの出力、即ち図8Aの排紙ローラ28a、28bは減速する。
【0061】
なお、この場合のアクチュエータ25の作動状態を図9Cに示す。図9Cに示すように、用紙20がアクチュエータ25通過すると、それまで用紙で支持されていた棒部材25cは支点25dを中心に下方に落下し、その上端部で回転円板の鋸歯25bに係合して回転円板25aをロックし、変速部10の第2内歯車15のロックが作動する。すなわち、用紙が設定箇所を通過することによってアクチュエータ25を駆動し、それによって、第2内歯車15のロック有無に可変され、出力となる中央歯車11が可変する。
【0062】
以上のように、この実施の形態においても、モータの回転数を変えることなく、用紙の位置に応じて用紙の搬送速度を切換えている。
【0063】
また、図8C図9Cに示すように、搬送される用紙に押されて支点25dを中心に回転する回転部(棒部材25c)を有し、回転部が回転することで変速部が制御され、用紙の搬送速度が切換えられている。
【0064】
ここで、アクチュエータ25自体は、ロックを外すだけなので、軽負荷で可能である。また、遊星機構次第で、容易に負荷の軽減が可能になる。
[第3実施の形態]
次に、本開示に係る変速部10が排紙ローラの減速に使用される場合について説明する。図10は、この場合の、変速部10を含む排紙ローラ駆動部31が設けられる画像形成装置における取付け位置を示す斜視図であり、図11A図11Cは排紙ローラに速度変化のない状態を示す図である。図11Aは、変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において速度変化のない場合の変速部の作動状態を示す図であり、図11Bは、変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において速度変化のない場合の変速部の実際の構成を示す平面図であり、図11Cは、図11Bにおいて、矢印11C-11Cで示す部分の矢視図である。
【0065】
一方、図12A図12Cは、排紙ローラの減速状態を示す図である。図12Aは、変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において減速状態の場合の変速部の作動状態を示す図であり、図12Bは、変速部が排紙ローラの減速に使用される場合において減速状態の場合の変速部の実際の構成を示す平面図であり、図12Cは、図12Bにおいて、矢印12C-12Cで示す部分の矢視図である。
【0066】
このように、排紙ローラ駆動部31で排紙ローラを減速することで、排紙時の用紙のスタッキング性能を向上させる。
【0067】
また、この実施の形態においては、モータの回転数(入力回転数)は変えずに、遊星歯車を用いた変速部を用いることで排紙ローラの速度を1/2倍に減速している。
【0068】
まず、図10を参照して、変速部10を含む排紙ローラ駆動部31が設けられる画像形成装置における位置は画像形成装置本体の操作用タッチパネルが設けられる正面の右側端部である。ここでは、排紙ローラ駆動部31全体が大きく明示されているが、実際には画像形成装置の本体内に収納されている。
【0069】
なお、図10は、モータ32が前方向に設けられて中央歯車11は見えないが、基本的に図1と同様である。
【0070】
また、ここに表示されている各要素の参照番号は、先に説明した図1、及び後に説明する図11A図11C等で説明するものと同様である。
【0071】
まず、排紙ローラに速度変化のない場合について説明する。図11Aは排紙ローラ駆動部の要部として作動する変速部10の中央歯車11の軸11aを通る模式的な断面図である。この状態では第2内歯車15が係止部17でロックされているため、第1内歯車14は、モータの回転入力と等倍の出力になる。
【0072】
図11Bは変速部10の実際の構成を示す平面図であり、図11Cは、図11Bにおいて、矢印11C-11Cで示す方向から見た矢視図である。図11B及び図11Cを参照して、モータ32の出力軸33に係合した中央歯車11は第1及び第2遊星歯車12,13を回転させる。これらの遊星歯車は第1及び第2内歯車14,15に係合する。中央歯車11は第2外歯車19aに係合し、第2外歯車19aは、排紙ローラ歯車となる第3外歯車19bに係合し、その回転軸となる第1排紙ローラ回転軸35を回転させる。第1排紙ローラ回転軸35には、それぞれが対になって用紙を挟んで排出する第1左排紙ローラ対36a,36b及び第1右排紙ローラ対37a,37bが設けられている。
【0073】
同様に、第1内歯車14は、第1外歯車16に係合し、その歯車軸である第2排紙ローラ回転軸39を回転させる。第2排紙ローラ回転軸39には、それぞれが対になって用紙を挟んで排出する第2左排紙ローラ対40a,40b及び第2右排紙ローラ対41a,41bが設けられている。
【0074】
図11Bに示すように、用紙20は、第1左排紙ローラ対36a,36b及び第2左排紙ローラ対40a,40bによって、図中太い矢印で示すように搬送される。
【0075】
なお、ここでは、第2内歯車15をロックするために係止部17が第2内歯車15に係止するように、アクチュエータ25の棒部材25cは非作動状態にある。この状態が係止部17に伝達するように棒部材25cは連結部材25eで係止部17と接続されている。
【0076】
次に、排紙ローラが減速状態にある場合について説明する。基本的な構成は図11A図11Cと同様であるので、図12A図12Cに示す各構成要素に図11A図11Cと同じ参照番号を付している。ここでは、モータ32の出力に対してその出力を1/2倍にして第1内歯車14から出力するように、排紙ローラ駆動部31は構成されている。
【0077】
図12Aは排紙ローラ駆動部31の要部として作動する変速部10の中央歯車11の軸を通る模式的な断面図であり、図11Aに対応する。ここでは、図11Cに示すように、第2内歯車15が係止部17でロックされていないため、第1内歯車14と第2内歯車15とは連動して回転し、第1内歯車14からの出力はモータ回転の半分になる。
【0078】
図12Bは変速部10の実際の構成を示す平面図であり、図12Cは、図12Bにおいて、矢印12C-12Cで示す方向から見た矢視図である。図12B及び図12Cを参照して、モータ32の出力軸33に係合した中央歯車11は第1及び第2遊星歯車12,13を回転させる。これらの第1及び第2遊星歯車12,13は第1及び第2内歯車14,15に係合する。中央歯車11は第2外歯車19aを介して、排紙ローラ歯車となる第3外歯車19bに係合し、第1排紙ローラ回転軸35を回転させる。第1排紙ローラ回転軸35には、それぞれが対になって用紙を挟んで排出する第1左排紙ローラ対36a,36b(図10参照)及び第1右排紙ローラ対37a,37bが設けられ、第1内歯車14は、第1外歯車16に係合し、第2排紙ローラ回転軸39を回転させる。第2排紙ローラ回転軸39には、それぞれが対になって用紙を挟んで排出する第2左排紙ローラ対40a,40b及び第2右排紙ローラ対41a,41bが設けられている。
【0079】
図12Bに示すように、用紙20は、第1左排紙ローラ対36a,36b及び第1左排紙ローラ対36a,36bによって、図中太い矢印で示すように搬送される。ここでは、用紙の搬送速度を矢印の大きさで示しており、図12Bに示すように、用紙の搬送速度は、図11Bの場合の半分である。
【0080】
また、ここでは、図12Cに示すように第2内歯車15は係止部17でロックされていない。この状態ではアクチュエータ25の棒部材25cは作動状態にあり、この状態が係止部17に伝達するように連結部材25eで係止部17と接続されているためである。
【0081】
なお、上記実施の形態においては、係止部を作動させるアクチュエータの構成として所定の支点で支持された棒状部材からなるアクチュエータを用いた場合について説明したが、これに限らず、任意の形式のアクチュエータを用いても良い。
【0082】
本開示は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他の種々な形で実施することができる。そのため、上述の実施形態は例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本開示の特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示によれば、低コスト/省スペース/高画質/高スタッキング性を実現することが可能な用紙搬送装置を有する画像形成装置を提供できるため、画像形成装置として有用である。
【符号の説明】
【0084】
10 変速部
11 中央歯車(遊星キャリア)
12 第1遊星歯車
13 第2遊星歯車
14 第1内歯車
15 第2内歯車
16 第1外歯車
17 係止部
18 鋸歯
19a 第2外歯車
19b 第3外歯車
20 用紙
21a 給紙搬送経路
21b 排紙搬送経路
22a,22b 給紙ローラ
23a,23b PSローラ
25 アクチュエータ
25a 回転円板(回転部)
27a,27b 第1排紙ローラ
28a,28b 第2排紙ローラ
31 排紙ローラ駆動部
32 モータ
33 モータの出力軸
35 第1排紙ローラ回転軸
36 第1左排紙ローラ
37 第1右排紙ローラ
39 第2排紙ローラ回転軸
40 第2左排紙ローラ
41 第2右排紙ローラ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C